説明

薄膜形成用スパッタリングターゲット、誘電体薄膜、光ディスク及びその製造方法

【課題】 誘電体保護膜としての特性を維持しながら、酸化物薄膜中の遊離酸素を無くし、誘電体保護膜中に存在する水や酸素の拡散を抑制する。
【解決手段】 光ディスクなどの誘電体保護膜を形成する誘電体材料として、酸化ニオブと、酸化ケイ素又は酸化チタンとの混合酸化物薄膜を使用する。好適な例では、スパッタリングによる酸化物薄膜の形成において、酸化ニオブを主成分として酸化ケイ素を1〜30重量%添加されてなるターゲットを使用する。また、上記の酸化物薄膜は好ましくは窒素雰囲気中で成膜される。酸素を欠損させたターゲットを使用し、微量に窒素を添加してスパッタリングを行うことにより窒素含有酸化物薄膜を作製する。これにより、完全な酸化物と同等の特性を持ちながら、還元作用が少なくバリヤ性の高い薄膜を作製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物薄膜の形成手法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機追記型ディスク、相変化ディスク、光磁気ディスクなどの記録型光ディスクにおいて、無機材料の記録膜は酸素あるいは水と反応して酸化物や水酸化物に変質するため、時間とともに使えなくなってしまう。それを防ぐために、光ディスクには透明な誘電体の保護膜が設けられている。同様に、プラズマディスプレイや電子発光ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイの表示素子も、酸素や水との反応による腐食を抑制するために透明な保護膜が設けられている。なお、上記のような記録膜や表示素子膜を総称して媒体膜と呼ぶ。
【0003】
酸化物薄膜は、記録ディスクの誘電体保護層やフラットパネルディスプレイの保護層として有効な薄膜である。成膜方法としては様々な方法がとられているが、成膜時間の短縮と、成膜装置が単純で済むという理由からスパッタリング法が多く用いられている。その際、成膜時間を短縮するために、スパッタリングレートの低い酸化物ではなく、予め酸化物から酸素を部分的に欠損させておいてスパッタ効率の高いターゲットを作製し、成膜時に酸素を導入して反応性スパッタリングによって上記の薄膜を作製する方法が従来多く用いられてきた。また、このような酸素を欠損したターゲットは金属としての導電性も向上するためDCスパッタリングが可能となり、設備をより安価にできるという利点も有している。
【0004】
従来、酸化物薄膜を形成する際には、以下のいずれかの方法が標準的に採用されている。
【0005】
(A)金属ターゲットを使用して酸素を含む雰囲気で反応させながら堆積して酸素薄膜を形成する方法
(B)酸化物ターゲットを使用して、そのまま或いは酸素欠損を埋める程度の微量の酸素を添加して、欠損酸素に対する補填を行いながら薄膜を形成する方法
しかし、上記(A)、(B)の方法は共に酸化物薄膜の酸素量が過多、不安定である為に、酸化物薄膜が多用される光ディスクの誘電体保護層やフラットパネルディスプレイ、半導体等の応用分野においては、形成された酸素が過多又は不安定な酸化膜の経時的な劣化や特性変動が課題となっている。
【0006】
例えば酸素過多の酸化物薄膜では過多の酸素が遊離してしまうので、その酸化物薄膜が、隣接して形成される金属層やその他の層と活性な場合には、それらの層との界面で反応して生成物を形成し、層間での有用な特性を劣化させる現象が生じる。
【0007】
それを避けるために、窒化物の窒素や酸化物の酸素を還元雰囲気中で欠損させて成膜する手法が知られている(特許文献1を参照)。しかし、この手法により十分な効果が得られるまで窒素や酸素を欠損させると、保護膜の光学特性が変化してしまう。具体的には、保護膜によるの光吸収が増え、透明保護膜としての効果を損なうという問題があった。
【0008】
また、酸素欠損状態の場合には還元作用がより働くために、酸素の欠損量が経時的に増加して酸化膜形成の目的に対して適した効果をもたらさない、継続させない等の課題を有してしまう。
【0009】
このような観点から、酸化物薄膜を形成する製造装置や形成用の材料には様々な工夫が施されてきたが、未だ本質的に改善される手法は得られておらず、現状においては課題として残存している。
【0010】
【特許文献1】特開平1−133229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題には上記のようなものが例として挙げられる。本発明は、透明誘電体保護膜としての特性を維持しながら、酸化物薄膜中の遊離酸素を無くし、透明誘電体保護膜中に存在する水や酸素の拡散を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明では、薄膜形成用スパッタリングターゲットは、酸化チタンを主成分として、酸素が欠損した酸化二オブを含有することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明では、誘電体保護膜は、酸化チタン又は酸化二オブを主成分とし、化学量論組成より酸素が欠損していることを特徴とする。
【0014】
請求項14に記載の発明では、誘電体保護膜製造方法は、酸素が欠損した酸化二オブを主成分とし、酸化ケイ素を1〜30重量%含有し、前記酸化二オブの化学量論組成比がニオブ原子対酸素原子が2対3であるスパッタリングターゲットを用いて、スパッタリングを行う工程を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の好適な実施形態では、光ディスクなどの誘電体保護膜を形成する誘電体材料として、酸化ニオブと、酸化ケイ素又は酸化チタンとの混合酸化物薄膜を使用する。光ディスクの保護膜などに使用される誘電体材料としては、硫化亜鉛(ZnS)と酸化ケイ素(SiO2)の混合酸化物などが既知であるが、環境への配慮から硫化亜鉛の代替物として酸化ニオブを使用し、亜鉛(Zn)を不使用とする。好適な例では、スパッタリングによる酸化物薄膜の形成において、酸化ニオブを主成分として酸化ケイ素を1〜30重量%添加されてなるターゲットを使用することが好ましい。
【0016】
酸化ケイ素の添加は透明誘電体保護膜に求められる透明性を向上する効果があるが、波長400nmの光で見た時の薄膜の屈折率はNbが2.4であるのに対して、酸化ケイ素は1.7しかない。図1に、透明誘電体保護膜に含まれる酸化ケイ素の比率と、透明誘電体保護膜の屈折率との関係を示す。光ディスク用途においては反射率を確保する為に2.0以上の高屈折率が要求される為、酸化ケイ素は最大でも30重量%までの添加が望ましい。ただし透明誘電体保護膜として要求される光学特性が許すのであれば、30重量%を超える量の酸化ケイ素が添加されても何ら問題は無い。
【0017】
誘電体保護膜として機能する酸化物薄膜は、理論組成値がNbである低電気抵抗の酸化ニオブを主成分とし、酸化ケイ素及び酸化チタンのいずれか一種以上を含有してなる複合酸化物であることが好ましい。導電性を有するNbを使用することによりDCスパッタリングによる薄膜形成が可能となる。また、酸化ケイ素又は酸化チタンを含有することにより、誘電体保護膜として要求される透明性を得ることができる。
【0018】
上記の複合酸化物は、窒素雰囲気中で薄膜化されることが好ましい。上記の酸化物薄膜は、前述のようにスパッタリングレートなどの観点から、酸素を欠損させたターゲットを使用し、成膜時に酸素を導入する反応性スパッタリングにより作製することが好ましい。しかし、酸素を導入した反応性スパッタリングにより成膜した場合は、酸化物薄膜が遊離酸素を含有していたり、過酸化状態となっている。過酸化状態の酸化物は還元作用が強く、遊離酸素も隣接する他の金属などの酸化作用を有するため、光ディスクなどにおいて誘電体保護層に隣接する記録膜や反射膜が酸化したり、酸化物を構成していた金属と反応するなどの悪影響が生じて、保存耐久性を著しく劣化させる。そこで、酸素を欠損させたターゲットを使用し、微量に窒素を添加してスパッタリングを行うことにより窒素含有酸化物薄膜を作製する。これにより、完全な酸化物と同等の特性を持ちながら、還元作用が少なくバリヤ性の高い薄膜を作製することができる。
【0019】
このようにして作製された複合酸化物は、光ディスクの誘電体保護層として好適である。特に、光ディスクにおいて、当該誘電体保護層に隣接する層が、Al及びAgの少なくとも1つの金属を含む場合や、記録再生や発光など、使用によりBi、Feといった酸化し易い金属が反応生成される性質を有する場合には、上記のように還元作用が少ない窒素含有酸化物薄膜を使用することにより、それらの金属との反応を防止することができ、光ディスクの特性劣化を防止することができるので非常に好ましい。
【0020】
また、本発明の好適な実施形態では、光ディスクの製造方法において、窒素を混入することにより、酸化物薄膜の酸素欠損を補填したスパッタリングにより誘電体保護層を形成する工程を有する。このように、スパッタリングプロセス中に、微量の酸素を添加する代わりに窒素を添加して酸化物の価数欠損部を窒素で補填することにより、窒素含有酸化物薄膜を形成する。酸化物の価数欠損部に窒素原子が混入された酸化物薄膜は、含有窒素が酸素欠損状態の酸化物の還元作用を抑止するため、要求される酸化物の特性を維持した状態で材料的な安定化を実現することができる。よって、この窒素含有酸化物薄膜を誘電体保護層とすることにより、隣接する記録膜や反射膜との反応を防止することができ、記録再生などを繰り返し行っても劣化の少ない光ディスクを製造することができる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の好適な実施例について図面を参照して説明する。
【0022】
図2に本発明の実施例に係るスパッタリング装置を模式的に示す。スパッタリング装置100は、チャンバー10内に、相互に対向して配置された陰極11と陽極12とを備える。陰極11上には金属、酸化物などのターゲット20が配置され、陽極12上には薄膜形成などの対象となる基板13が配置される。チャンバー10にはアルゴンなどの不活性ガスを導入するための導入口16と、図示しない真空ポンプに接続された配管17が設けられている。陰極11と陽極12には、高圧直流電源15が接続されている。
【0023】
スパッタリングプロセスにおいては、真空ポンプによりチャンバー10内を真空状態とし、アルゴンガスを導入しつつ、陰極11と陽極12の間に直流高電圧を印加する。これにより、イオン化したアルゴン(Ar)14をターゲット20に衝突させ、はじき飛ばされたターゲット物質22が、陽極12上に配置された基板13上に薄膜21として成膜される。なお、反応性スパッタリングを行う場合は、アルゴンガスとともに、微量の酸素(O)又は窒素(N)をチャンバー10内に導入する。
【0024】
図3に、実施例に係る光ディスクの構造を模式的に示す。図3(a)は光ディスク50の外観を示し、図3(b)は光ディスク50の層構造を示す。図3(b)に示すように、光ディスク50は、基板51上に、反射膜層52、誘電体保護層53、記録膜層54、誘電体保護層55及びカバー層56が積層形成されてなる。本発明による酸化物薄膜は、誘電体保護層53及び55として光ディスク50上に形成される。
【0025】
次に、光ディスク50の各実施例及び比較例について図4を参照して説明する。図4(a)は実施例及び比較例による光ディスクの各層の厚さを示す。図4(b)は各実施例及び比較例による誘電体保護層の成膜において使用したターゲット組成及びスパッタリング成膜雰囲気ガス、並びに作製された酸化物薄膜の光学定数として屈折率及び消衰係数を示す。なお、消衰係数は薄膜による光吸収の度合いを示し、数値が大きいほど光吸収が大きいことを示す。比較のために誘電体保護層以外の材料は全て同一とした。ポリカーボネート樹脂からなる厚さ1.1mm、直径12cmのディスク状の基板51には、0.320μmピッチのスパイラル溝が設けられている。この基板51の上に、銀合金からなる反射膜層52、誘電体保護層53、Bi−Ge−Nからなる記録膜層54、誘電体保護層55をこの順にスパッタ法によって積層した。更に、この上から紫外線硬化樹脂を接着剤に使用してポリカーボネートシートを貼り合わせて、厚さ0.1mmの光入射側基板(カバー層)56を作製した。
【0026】
実施例1−a〜1−cは、いずれもスパッタリングにおけるターゲットとして、ニオブ酸化物(Nb)と酸化ケイ素(SiO)の混合物を使用したものである。ターゲットであるNb−SiOにおいて、SiOの量はいずれも18重量%である。
【0027】
スパッタリングプロセスに使用する雰囲気ガスは、実施例1−aではアルゴンに3%の酸素を0.2Paのガス圧で加えたものであり、実施例1−bではアルゴンに5%の酸素を0.2Paのガス圧で加えたものであり、実施例1−cではアルゴンに5%の窒素を0.4Paのガス圧で加えたものである。
【0028】
実施例2−a及び2−bは、スパッタリングにおけるターゲットとして、ニオブ酸化物(Nb)と酸化チタン(TiO)の混合物を使用したものであり、TiOの量はいずれも96重量%である。また、スパッタリングプロセスに使用する雰囲気ガスは、実施例2−aではアルゴンに3%の酸素を0.2Paのガス圧で加えたものであり、実施例2−bではアルゴンに5%の窒素を0.4Paのガス圧で加えたものである。
【0029】
また、比較例1−aは、スパッタリングにおけるターゲットとして、ニオブ酸化物(Nb)と酸化ケイ素(SiO)の混合物を使用したものであり、SiOの量は18重量%である。また、スパッタリングプロセスに使用する雰囲気ガスは、アルゴンに5%の酸素を0.4Paのガス圧で加えたものである。
【0030】
図4(c)は各実施例及び比較例による光ディスクの特性(ジッタ)を示す。測定条件としては、誘電体保護層53及び55として上記の酸化物薄膜を形成した光ディスクの、光入射側に凸な案内溝面に、線速度4.92m/sで波長405nm、対物レンズの開口数0.85の光ヘッドを用いて、1−7変調のランダムパターンを記録した、記録にはマルチパルス型のストラテジーを用い、ウィンドウ幅は15.15nsecとした。
【0031】
図4(c)から理解されるように、全ての実施例において、良好なジッタが得られており、連続再生を行ってもジッタの著しい悪化は見られない。
【0032】
これに対し、比較例1−aでは、連続再生によりジッタ値が悪化しており、初期ジッタに対しての劣化が初期ジッタ比率で20%生じていて、良好な値を維持できていない。図4(b)からわかるように、比較例1−aと実施例1−bは、スパッタリング成膜雰囲気ガスの圧力が比較例の方が高く(実施例1−b:0.2Pa、比較例1−a:0.4Pa)、比較例1−aでは酸化物薄膜は酸素が過多の状態(過酸化状態)になっているため、特性の劣化が生じていると理解される。即ち、この記録ディスクでは、記録によって記録膜中に酸化しやすい金属ビスマスが生じる形になっているため、比較例の成膜方法により酸化物が過酸化状態になるように作製した光ディスクでは、遊離酸素が記録直後から生成した金属ビスマスと急激に反応して反応物を作り、ディスクの特性が劣化してしまうことが明確である。
【0033】
これに対し、実施例1−a及び1−bのように適量の酸素添加で作製した光ディスクにおいては、図4(c)に示すように特性の劣化を抑制することができ、材料的には十分な誘電体保護膜としての性能を有することが確認できた。
【0034】
但し、実施例1−a及び1−b並びに比較例1−aの成膜雰囲気ガスを比較すると理解されるように、酸素を導入したスパッタリングによる成膜方法においては、酸素導入流量とガス圧の調整を厳密に行わなければならない。そこで、酸素導入量及びガス圧の微妙な調整を行う代わりに、実施例1−cにおいては、酸素の代わりに窒素を微量に添加して成膜を行ったところ、作製された酸化物薄膜は誘電体保護層としての特性を維持しており、特性の劣化は見られていない。このように窒素を導入したスパッタリングにより成膜された酸化物薄膜は、酸化物の価数欠損部に窒素原子が混入されており、含有窒素が酸素欠損状態の酸化物の還元作用を抑止する。これにより、誘電体保護層が接触する膜との界面での反応を効果的に抑制することができ、要求する酸化物の特性を維持した状態で材料的な安定化を実現することができる。
【0035】
実施例1−a〜1−cはターゲットとしてニオブ酸化物(Nb)と酸化ケイ素(SiO)の混合物を使用したものであるが、実施例2−a及び2−bはターゲットとしてニオブ酸化物(Nb)と酸化チタン(TiO)の混合物を使用したものである。実施例2−aは酸素を添加したスパッタリングにより成膜したものであり、実施例2−bは窒素を添加したスパッタリングにより成膜したものである。図4(c)に示すように、実施例2−a及び2−bの光ディスクも、連続再生による特性(ジッタ)の劣化は見られない。よって、ターゲットに酸化チタンの混合物を使用した場合でも、成膜される酸化物薄膜は誘電体保護層としての性能を満足することがわかる。
【0036】
[変形例]
本発明は、酸化ニオブを主成分とし、酸化ケイ素及び酸化チタンのいずれか一種を含有してなるターゲットを用い、スパッタリング法により、光ディスクなど記録媒体の保護層として機能する酸化物薄膜を生成する点に特徴を有する。よって、本発明による酸化物薄膜を適用する記録媒体において他の膜の種類には制限はなく、例えば記録膜にSbTeなどの相変化材料を用いた書換型記録ディスクや記録膜に色素膜を用いた有機色素型記録ディスクなど、保護層を有する各種の光ディスクに適用が可能である。また、反射膜としてAl合金を用いたディスクにも適用可能である。
【0037】
また、本発明による酸化物薄膜を適用する記録媒体はその層構造にも制限はなく、例えば光入射側基板やカバー層が無い構成の記録媒体、保護層、記録膜層、反射層以外に更に他の材料の層を追加した構成の記録媒体、反射膜層が2層である構成の記録媒体、光入射側又は光反射側の基板の位置に更に記録媒体構成が1つ以上追加されていて多層記録が可能な構成の記録媒体、再生専用ディスクなどの記録媒体、ディスク以外の形状、例えばカード型の記録媒体など、各種の記録媒体に本発明を適用することが可能である。
【0038】
また、上記の実施例では本発明による酸化物薄膜を光ディスクに適用しているが、本発明による酸化物薄膜はフラットパネルディスプレイや半導体素子の透明保護膜としても適用可能である。これは、保護層として求められている性能(透明性、酸化防止、還元防止など)がほぼ同様であるからである。
【0039】
また、上記の実施例では、酸化ニオブと酸化ケイ素又は酸化チタンとを含有する1つのターゲットを使用したスパッタリングを行う例を示したが、その代わりに、酸化ニオブと、酸化ケイ素又は酸化チタンをそれぞれターゲットとし、コ・スパッタリング(co-sputtering)によって複数のターゲットから同時に成膜する手法を採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】透明誘電体保護膜に含まれる酸化ケイ素比率と、その透明誘電体保護膜の屈折率との関係を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例に係るスパッタリング装置を模式的に示す。
【図3】実施例に係る光ディスクの構造を模式的に示す。
【図4】図4(a)は実施例及び比較例による光ディスクの各層の厚さを示し、図4(b)は各実施例及び比較例による誘電体保護層の成膜において使用したターゲット組成及びスパッタリング成膜雰囲気ガス並びに作製された酸化物薄膜の光学定数を示し、図4(c)は各実施例及び比較例による光ディスクの特性(ジッタ)を示す。
【符号の説明】
【0041】
10 チャンバー
11 陰極
12 陽極
13 基板
15 高圧直流電源
20 ターゲット
21 薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタンを主成分として、酸素が欠損した酸化二オブを含有することを特徴とする薄膜形成用スパッタリングターゲット。
【請求項2】
前記酸素が欠損した酸化二オブにおいて、ニオブ原子と酸素原子の化学量論組成比が2対3であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成用スパッタリングターゲット。
【請求項3】
前記酸化チタンの含有率が略96重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜形成用スパッタリングターゲット。
【請求項4】
酸化チタン又は酸化二オブを主成分とし、化学量論組成より酸素が欠損していることを特徴とする誘電体保護膜。
【請求項5】
酸化チタンを主成分とし、前記酸化チタンを96重量%含有し、且つ、酸化二オブを含むことを特徴とする請求項4に記載の誘電体保護膜。
【請求項6】
酸化二オブを主成分とし、酸化ケイ素を1〜30重量%含むことを特徴とする請求項4に記載の誘電体保護膜。
【請求項7】
窒素を含むことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項に記載の誘電体保護膜。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれか一項に記載の誘電体保護膜を有することを特徴とする光ディスク。
【請求項9】
請求項4乃至7のいずれか一項に記載の誘電体保護膜を有することを特徴とするフラットパネルディスプレイ。
【請求項10】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行う工程を含む誘電体保護膜製造方法。
【請求項11】
前記スパッタリングを行う工程は、不活性ガスに窒素若しくは酸素を混入した雰囲気中でスパッタリングを行うことを特徴とする請求項10に記載の誘電体保護膜製造方法。
【請求項12】
前記雰囲気は、酸素を3%添加した不活性ガスであることを特徴とする請求項11に記載の誘電体保護膜製造方法。
【請求項13】
前記雰囲気は、窒素を5%添加した不活性ガスであることを特徴とする請求項11に記載の誘電体保護膜製造方法。
【請求項14】
酸素が欠損した酸化二オブを主成分とし、酸化ケイ素を1〜30重量%含有し、前記酸化二オブの化学量論組成比がニオブ原子対酸素原子が2対3であるスパッタリングターゲットを用いて、スパッタリングを行う工程を含む誘電体保護膜製造方法。
【請求項15】
前記スパッタリングを行う工程は、不活性ガスに窒素若しくは酸素を混入した雰囲気中でスパッタリングを行うことを特徴とする請求項14に記載の誘電体保護膜製造方法。
【請求項16】
前記雰囲気は、酸素を5%添加した不活性ガスであり、且つ、圧力が0.2Pa以下であることを特徴とする請求項15に記載の誘電体保護膜製造方法。
【請求項17】
前記雰囲気は、酸素を3%添加した不活性ガスであり、且つ圧力が0.4Pa以下であることを特徴とする請求項15に記載の誘電体保護膜製造方法。
【請求項18】
前記雰囲気は、窒素を5%添加した不活性ガスであり、且つ圧力が0.4Pa以下であることを特徴とする請求項15に記載の誘電体保護膜製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−45666(P2006−45666A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156967(P2005−156967)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(502322420)デプト株式会社 (4)
【Fターム(参考)】