説明

薄膜金属層形成のための核形成層

可撓性ポリマー支持体に酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、又はこれらの混合物(混合した酸化物を含む)を含むシード層を適用し、シード層上に延伸性で可視光線透過性金属層を適用することにより、可撓性ポリマー支持体上に伝導性フィルムを形成する。シード層の酸化物は望ましくは、より均一若しくはより密度の高い方式で後に適用される金属層の付着を促進する又は導通性金属層のより早い形成(つまり、より薄い、適用された厚さの)を促進する。得られたフィルムは高い可視光線透過率及び低い電気抵抗を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2006年12月28日に出願された米国特許仮出願番号第60/882,389号の出願日の利益を主張し、その開示内容を参照することにより本明細書に援用する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は高い可視光線透過性、並びに低い電気抵抗を有する伝導性フィルムに関する。これらのフィルムは例えば、電磁干渉(EMI)シールド及び自動車用途に好適である。
【背景技術】
【0003】
光学フィルムは種々の用途に組み込まれている。これらのフィルムは時に、銀のような金属の薄膜を使用する。光学フィルムは有益な特性を得るために、可撓性基材上の様々な構造物で用いられている。光学フィルムの代表的な用途としては、日照調整フィルム、EMIシールドフィルム、窓用フィルム及び伝導性フィルムが挙げられる。これらのフィルムは高い可視光線透過性、及び、金属化されている場合は低い電気抵抗を有する必要があることが多い。
【0004】
伝導性金属層では、光学透過性と抵抗との間に比例関係が存在する。この関係により、高い可視光線透過性及び低い抵抗の両方、その微妙な均衡を有するフィルムを形成するという典型的な目的が生じる。なぜなら、いずれかの特性の性能が変化すると、他の特性に悪影響を与える可能性があるためである。金属層を形成するとき、金属が付着されると集塊する場合がある。これにより、不均質であるフィルムが生じ、高度に伝導性であるフィルム又は有効なシールドフィルムを提供するために、比較的厚い金属層の適用を必要とする場合がある。この島の集塊又は形成は光の透過性を減少させ、抵抗の増加を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高い光透過率及び高い電気伝導率を有する可撓性光学フィルム、並びにこのようなフィルムを調製する方法に対する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は1つの態様では、可撓性ポリマー支持体の伝導性フィルムを形成する方法であって、可撓性ポリマー支持体上に酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化スズ、又はこれらの混合物(混合した酸化物及びドープした酸化物を含む)を含有するシード層を形成する工程と、シード層上に延伸性で可視光線透過性金属層を適用させる工程と、を含む方法を提供する。
【0007】
第2の態様では、本発明は可撓性ポリマー支持体と、支持体の上に酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化スズ、又は混合物(混合した酸化物若しくはドープした酸化物を含む)を含有するシード層と、シード層の上に延伸性で可視光線透過性金属層と、を備える伝導性フィルムを提供する。
【0008】
第3の態様では、本発明はグレージング材料層及び伝導性で可視光線透過性フィルムを組み立てる工程を含む、グレージング物品の製造方法を提供する。フィルムは可撓性ポリマー支持体の上に酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、又は混合物(混合した酸化物及びドープした酸化物を含む)を含有するシード層の上に可視光線透過性金属層を有する。グレージング材料及びフィルムは共に接着され一体型物品にされる。
【0009】
開示したフィルム及び物品は適切な電気伝導性及び良好なEMIシールド性能を維持しながら、形成したとき、又は屈曲させる、曲げる、伸ばす、変形させる操作を行ったとき若しくは腐食条件に曝されたときの、層間剥離、破壊、又は腐食に対する抵抗性を上昇させることができる。1つの実施形態では、金属層はフィルムのかなりの面積上で、例えば、フィルムのEMIシールド、加熱、又は同様の機能性が望ましい部分上で実質的に導通性である。ある実施形態では、金属層はフィルム全体上で完全に導通性であってよく、他の実施形態では、金属層は所望の機能性(例えば、1つ又はそれ以上の周波数選択性表面又は別々の伝導性経路を提供する)のための限られた数の開口部、穴部、又はチャネルを画定するようにパターン化されていてよい。
【0010】
本発明のこれら及び他の態様は以下の「発明を実施するための形態」から明らかであろう。しかしながら、上記の「課題を解決するための手段」は決して請求される発明の主題を限定するものとして解釈するべきではなく、発明の主題は添付の「特許請求の範囲」によってのみ定義されるものである。尚、特許請求の範囲は手続き中に補正される場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】代表的な開示したフィルムの概略断面図。
【図1B】代表的な開示したフィルムの概略断面図。
【図1C】代表的な開示したフィルムの概略断面図。
【図1D】代表的な開示したフィルムの概略断面図。
【図1E】代表的な開示したフィルムの概略断面図。
【図2】以下に記載するフィルムを調製するための装置の概略図。
【図3】シード層を有さない、又は酸化チタン若しくは酸化亜鉛のシード層の上に付着させた、薄銀層フィルムの光の透過率及び表面抵抗率のグラフ表示。
【図4】様々なスパッタリング出力レベルで、酸化亜鉛のシード層及び銀の金属層を用いて調製した透過性実施形態を示すグラフ。
【図5】酸化亜鉛のシード層を用いて調製した実施形態の透過率及び反射率を示すグラフ。
【図6】酸化チタンのシード層を用いて調製した比較フィルムの透過率及び反射率を示すグラフ。
【0012】
図面の様々な図における類似する参照記号は類似する要素を示す。図中の要素は原寸に比例していない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
用語「a」、「an」、及び「the」は「少なくとも1つの」と互換的に用いられ、1つ以上の記載された要素を意味する。開示したコーティングされた物品内の種々の要素の位置について、「の上に」「上に」「最上部の」「下層の」等のような配向に関する用語を用いることにより、水平に配置された、上方に面する支持体に対する、要素の相対位置を指す。フィルム又は物品が、その製造中又は製造後に、空間内のいずれかの具体的な配向を有することを意図しない。
【0014】
用語「複合曲率」は表面又は物品に対して用いるとき、表面又は物品が、単一点から2つの異なる、非直線方向へ曲がることを意味する。
【0015】
用語「コポリマー」はランダム及びブロックコポリマーの両方を含む。
【0016】
用語「架橋」はポリマーに対して用いるとき、ポリマーが通常、架橋分子又は架橋基を介して、共有化学結合により共に結合し、網状ポリマーを形成するポリマー鎖を有することを意味する。架橋ポリマーは一般に不溶性を特徴とするが、適切な溶媒の存在下で膨潤性であってもよい。
【0017】
用語「延伸性」は金属層に対して用いるとき、可視光線透過性フィルムに組み込まれたときに、電気的導通を失うことなく、約0.25mの距離で裸眼により検出しても金属層の表面の明らかな不連続性が形成されておらず、面内方向に少なくとも約3%伸び得る層を指す。
【0018】
用語「赤外線反射性」は支持体、層、フィルム、又は物品に対して用いるとき、支持体、層、フィルム、又は物品が、ほぼ垂直な角度で(例えば、入射角約6°で)測定して、約700nm〜約4,000nmの波長域の少なくとも100nmの幅の帯域で少なくとも約50%の光を反射することを意味する。
【0019】
用語「光」は太陽光線の照射を意味する。
【0020】
用語「金属」は純粋な金属及び金属合金を含む。
【0021】
用語「非平面」は(例えば、ガラス又は他のグレージング材料の)表面又は物品に対して用いるとき、表面又は物品が導通性、断続的、単向性、又は複合曲率を有することを意味する。
【0022】
用語「光学的厚さ」は層に対して用いるとき、層の物理的厚さ×その面内屈折率を意味する。
【0023】
用語「光学的に透明」はフィルム又は積層されたグレージング物品に対して用いるとき、約1mの距離で裸眼により検出しても、フィルム又は物品に目で見て気づくほどのひずみ、くもり、又は傷がないことを意味する。
【0024】
用語「ポリマー」はホモポリマー及びコポリマー、並びに、例えば、共押出によって又は例えばエステル交換を含む反応によって、混和性ブレンド中で形成されてもよいホモポリマー又はコポリマーを含む。
【0025】
用語「可視光線透過性」又は「可視光線透過の」は支持体、層、フィルム、又は物品に対して用いるとき、支持体、層、フィルム、又は物品が550nmで50%超過の可視光線透過率を有することを意味する。
【0026】
用語「実質的に亀裂又はひだがなく」は積層されたグレージング物品のフィルムに対して用いるとき、約1m、好ましくは約0.5mの距離で裸眼により検出しても、フィルムに目に見える不連続が存在しないことを意味する。
【0027】
用語「実質的にしわがなく」は積層されたグレージング物品のフィルムに対して用いるとき、約1m、好ましくは約0.5mの距離で裸眼により検出しても、平滑フィルム表面の収縮により生じる小さな隆起又はしわが存在しないことを意味する。
【0028】
図1Aを参照して、例えばEMIシールドとして使用するための代表的なフィルムを、一般に110に示す。フィルム110は可視光線透過性プラスチックフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)から作製される)の形態の可撓性支持体112及び支持体112上の層の積み重ね体を備える。積み重ね体は支持体112の上に核形成酸化物シード層114(例えば、酸化亜鉛から作製される)と、シード層114の上に延伸性金属層116(例えば、銀又は銀合金から作製される)と、層116上に保護ポリマー層122(例えば、架橋アクリレートから作製される)とを含む。保護ポリマー層122は積み重ね体への損傷を制限し、また積み重ね体の光学特性を変化させることもできる。層116は必要に応じて、任意の電極124を介して接地することができる。シード層114、金属層116及び保護ポリマー層122はそれぞれ可視光線透過性(全体としてのフィルム110も同様に)であり、好ましくは少なくとも金属層116及び保護ポリマー層122は導通性である。シード層114は導通性である必要はなく、層116又は122より非常に薄くてよい。例えば、シード層114はより均一又はより密度の高い上層116の付着を助ける核形成部位として機能する一連の小さな島であってよい。
【0029】
図1Bでは、別の代表的なフィルムを、一般に120で示す。フィルム120はフィルム110に類似しているが、支持体112とシード層114との間にポリマーベースコート層132(例えば、架橋アクリレートから作製される)を含む。ベースコート層132は支持体112の表面の粗さ及び他の傷を平らにするのを補助し、平滑化層116の最終的な付着に役立つ。ベースコート層132は積み重ね体の光学特性を変化させることもできる。
【0030】
図1Cでは、第3の代表的なフィルムを、一般に130で示す。フィルム130はフィルム110に類似しているが、支持体112の上にファブリ・ペロー干渉積み重ね体126及びハードコート層134を含む。積み重ね体126は第1の可視光線透過性金属層116、可視光線透過性高分子スペーシング層118、及び第2の可視光線透過性金属層120を含む。層116及び120並びにその間にある高分子スペーシング層118の厚さは層116及び120が部分的に反射性であり、部分的に透過性であるように選択することができる。スペーシング層118は透過光の所望の通過帯域の中央の波長の約1/4〜1/2である光学的厚さを有する。波長が通過帯域内にある光は主に層116及び120を通じて透過する。波長が通過帯域外にある光は主に層116及び120で反射される。例えば、金属層116及び120並びにスペーシング層118の厚さはフィルムが可視光線透過性であり、赤外線反射性であるように選択することができる。ハードコート134は図1Bの層132のようなポリマーベースコート層よりも高い硬度(例えば、露出したハードコート上で鉛筆硬度試験を用いて測定したとき)を有する。ハードコート134は積み重ね体126及び保護ポリマー層122の直下に埋め込まれているにもかかわらず、ハードコート134は驚くべきことに、より柔らかなポリマーベースコート132上又は支持体112上にコーティングされた積み重ね体を有する物品に比較して、(例えば、磨耗耐性の改善又は物品130上で実施した鉛筆硬度試験により明らかなように)積み重ね体126に改善された耐久性を付与することができる。ハードコート層134は積み重ね体の光学特性を変化させることもできる。ハードコート134は望ましくは、適切に選択されたとき、このような粒子を含まず作製された物品と比較して、物品130を通る可視光線透過率を向上させることができる、フィルター粒子136(例えば、酸化亜鉛ナノ粒子のような高屈折率粒子から作製される)を含む。
【0031】
図1Dでは、別の代表的なフィルムを一般に140で示す。フィルム140はフィルム130に類似しているが、ハードコート134の代わりに透明ポリマーベースコート層132を含む。
【0032】
図1Eでは、更に別の代表的なフィルムを一般に160で示す。フィルム160はフィルム140に類似しているが、ポリマー層118と薄金属層120との間にシード層115(例えば、酸化亜鉛から作製される)、ポリマーベースコート層132の直下にハードコート層134を含む。層132及び134のいずれか又は両方は削除してもよく、それらの順序は逆でもよい。
【0033】
種々の可視光線透過性支持体を使用することができる。1つの実施形態では、支持体は550nmで少なくとも約70%の可視光線透過率を有する。代表的な支持体としては、ポリエステル(例えば、PET又はポリエチレンナフタレート)、ポリアクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、高密度又は低密度ポリエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンスルフィド及び環状オレフィンポリマー(例えば、トーパス・アドバンスト・ポリマーズ(Topas Advanced Polymers)製トーパス(TOPAS)(商標)及びゼオン・ケミカルズ(Zeon Chemicals, L.P.)製ゼオノール(ZEONOR)(商標))のような熱可塑性フィルム、並びに、セルロース誘導体、ポリイミド、ポリイミドベンゾキサゾール及びポリベンゾキサゾールのような熱硬化性フィルムを含む可撓性プラスチック材料が挙げられるが、これらに限定されない。支持体はまた、米国特許第7,215,473 B2号に記載されているもののような、多層光学フィルム(「MOF」)であってもよい。PET及びMOFから作製された支持体が好ましい。支持体は様々な厚さ、例えば約0.01〜約0.1mmの厚さを有することができる。しかしながら、支持体は例えば自己支持物品が望ましいとき、著しく厚くてもよい。このような自己支持物品は薄い可撓性支持体上に開示したコントロールフィルムを形成し、ガラス又はプラスチックパネルのような、より厚く非可撓性である又は可撓性の低い追加の支持体に、可撓性支持体を積層する又は別の方法で接合させることにより、作製することもできる。
【0034】
適用された層の平滑度、導通性、又は粘着性のうち1つ若しくはそれ以上は支持体の適切な前処理により強化することができる。1つの実施形態では、前処理レジメンは反応性又は非反応性大気圧(例えば、空気、窒素、酸素、又はアルゴンのような不活性ガス)の存在下における支持体の放電前処理(例えば、プラズマ、グロー放電、コロナ放電、誘電体バリア放電、又は大気圧放電)、化学的前処理、又は火炎前処理を包含する。これらの前処理は支持体又は上層の表面が、その後適用される層を受け入れられるよう補助することができる。別の実施形態では、支持体を、ポリマーベースコート層132又はハードコート層134の一方又は両方のような有機支持体コーティングでコーティングし、所望により、続いてプラズマ又は上記他の前処理のうち1つを用いて更に前処理する。使用するとき、有機ベースコート層は好ましくは、1種又はそれ以上の架橋アクリレートポリマーに基づく。有機ベースコート層がハードコート層である又はハードコート層を含む場合、ハードコートは好ましくは、米国特許第5,104,929号(ビルカディ(Bilkadi))に記載されている組成物のような無機酸化物粒子の分散物を含有するコーティング組成物に基づく。3M 906磨耗耐性コーティング(3M社(3M Co.))は好ましいハードコート組成物である。有機ベースコート層は溶液コーティング、ロールコーティング(例えば、グラビアロールコーティング)、又はスプレーコーティング(例えば、静電スプレーコーティング)を含む種々の技術を用いて適用し、次いで、例えば紫外線を用いて架橋することができる。有機ベースコート層(望ましくは、有機スペーシング層及びポリマー保護層も)は好ましくは、上記米国特許第7,215,473(B2)号、同第6,818,291(B2)号、同第6,929,864(B2)号、同第7,018,713(B2)号、及び本明細書に引用する文書に記載のように、放射線架橋可能なモノマー又はオリゴマー(例えば、アクリレートモノマー又はオリゴマー)のフラッシュ蒸発及び蒸着により適用され、続いて(例えば、電子ビーム装置、紫外線源、放電装置、又は他の好適な装置を用いて)その場で架橋される。有機支持体コーティングの所望の化学組成及び厚さは、ある程度支持体の性質に依存する。PET及びMOFの支持体の場合、支持体コーティングは例えば、アクリレートモノマー又はオリゴマーから形成することができ、例えば、導通性層を提供するのに十分な厚さ(例えば、数nm〜約2μm)を有してもよい。ベースコート層の厚さはフィルムの光学特性を強化する、例えば、積み重ね体を通る透過率を上昇させ、積み重ね体による反射を最小限に抑えるよう、調節することもできる。核形成酸化物シード層の支持体への接着は有機支持コーティングが接着促進又は耐食添加剤を含むことにより、更に改善することができる。好適な接着促進又は耐食添加剤としては、メルカプタン、酸(カルボン酸又は有機リン酸)、トリアゾール、染料、及び湿潤剤が挙げられる。具体的な接着促進添加剤、エチレングリコールビスチオグリコレートは米国特許第4,645,714号に記載されている。添加剤は望ましくは、シード層の過度な酸化又は他の分解を引き起こすことなく、シード層の接着を向上させるのに十分な量で存在する。
【0035】
様々な酸化物を、核形成酸化物シード層で使用することができる。複数のシード層を適用する場合、それらは同一であってもよく、異なってもよいが、同一であることが望ましい。シード層の酸化物は望ましくは、より均一若しくはより密度の高い方式で、後に適用される金属層の付着を促進する又は導通性金属層のより早い形成(つまり、より薄い、適用された厚さの)を促進する。適切な酸化物の選択は選択された支持体及び隣接する金属層に依存する可能性があるが、通常経験的に作製される。代表的なシード層の酸化物としては、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びこれらの混合物(混合した酸化物及びドープした酸化物を含む)が挙げられる。例えば、シード層は酸化亜鉛又はアルミニウム若しくは酸化アルミニウムでドープした酸化亜鉛を含有することができる。シード層はスパッタリング(例えば、平面又は回転マグネトロンスパッタリング)、蒸着(抵抗性又は電子ビーム蒸着)、化学蒸着、有機金属CVD(MOCVD)、プラズマCVD(プラズマ強化、支援、励起CVD)(PECVD)、イオンスパッタリング等のような、フィルムの金属化の分野で使用されている技術を用いて形成することができる。シード層は例えば、シード層の酸化物をスパッタリングすることにより直接又は酸化雰囲気中で前駆体金属をスパッタリングすることによりその場で、都合よく形成することができる。スパッタリングターゲットとしてはスパッタリングターゲットをより伝導性にするために、金属(例えば、アルミニウム、インジウム、スズ、又は亜鉛)又は酸化物(例えば、アルミナ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、酸化スズ、又は酸化亜鉛)を挙げることもできる。代表的なスパッタリングターゲットとしては、酸化亜鉛:アルミナ、酸化亜鉛:酸化ガリウム、酸化亜鉛:酸化スズ、酸化インジウム:酸化亜鉛、酸化インジウム:酸化スズ、酸化インジウム:酸化スズ:酸化亜鉛、インジウム:亜鉛、インジウム:スズ、インジウム:スズ:亜鉛、酸化インジウムガリウム亜鉛、又はZn(1−x)MgO:Al、MgIn(4−x)が挙げられる。これらの具体例としては、99:1及び98:2 酸化亜鉛:アルミナ、95:5 酸化亜鉛:酸化ガリウム、93:7 酸化亜鉛:酸化ガリウム、90:10 酸化インジウム:酸化亜鉛、90:10及び95:5 酸化インジウム:酸化スズ、約76:24〜約57:43 インジウム:亜鉛、並びに、90:10 インジウム:スズが挙げられる。複数のシード層は同じ厚さを有してもよく、異なる厚さを有してもよく、また、後に適用される金属層が、光吸収が最小限である均質なものになるように、それぞれ十分な厚さを有することが好ましい。シード層は得られるフィルム及びフィルムを使用する物品が所望の程度の可視光線透過率を有するように、十分に薄いことが好ましい。例えば、シード層は約20nm未満、約10nm未満、約8nm未満、約5nm未満、約4nm未満、又は約3nm未満の物理的厚さ(光学的厚さに対立するものとして)を有することができる。シード層は0nm超過、少なくとも0.5nm、又は少なくとも1nmの物理的厚さを有することもできる。1つの実施形態では、シード層は0超過かつ約5nm未満の物理的厚さを有する。第2の実施形態では、シード層は0超過かつ約4nm未満の物理的厚さを有する。第3の実施形態では、シード層は0超過かつ約3nm未満の物理的厚さを有する。
【0036】
種々の金属を、金属層で使用することができる。複数の金属層を使用するとき、それらは同一であってもよく、異なってもよいが、好ましくは同一である。代表的な金属としては銀、銅、ニッケル、クロム、貴金属(例えば、金、プラチナ、又はパラジウム)、及びこれらの合金が挙げられる。金属層はシード層について上記で述べたようなフィルムの金属化の分野の技術を用い、また非貴金属の場合は非酸化雰囲気を用いて形成することができる。金属層は導通性であるように十分厚く、開示されたフィルム及びフィルムを使用する物品が所望の程度の可視光線透過率を有するように十分薄い。金属層は通常、下層のシード層より厚い。1つの実施形態では、金属層は約5〜約50nmの物理的厚さを有する。別の実施形態では、金属層は約5〜約15nmの物理的厚さを有する。第3の実施形態では、金属層は約5〜約12nmの物理的厚さを有する。
【0037】
必要に応じて、層118のような追加の架橋高分子スペーシング層及び層120のような追加の金属層を、第1の金属層の上に適用することができる。例えば、3、4、5、又は6層の金属層を含む積み重ね体は幾つかの用途に望ましい特徴を提供することができる。特定の実施形態では、フィルムは各金属層が金属層の間に位置する架橋高分子スペーシング層を有する、2〜6層の金属層を含む積み重ね体を有することができる。
【0038】
図1C〜1Eに示す架橋高分子スペーシング層は第1の金属層116と第2の金属層120又は第2の核形成シード層115との間に位置し、様々な有機材料で形成することができる。必要に応じて、スペーシング層はロールコーティング(例えば、グラビアロールコーティング)又はスプレーコーティング(例えば、静電スプレーコーティング)のような従来のコーティング方法を用いて適用することができる。スペーシング層は好ましくは、例えば、架橋有機ベースコート層を用いるときに使用することができるもののような技術を用いて架橋される。架橋有機スペーシング層は非架橋有機スペーシング層に比べて幾つかの利点を有する。架橋有機スペーシング層は非架橋有機スペーシング層のように、熱によって感知できるほど溶融することも軟化することもなく、したがって、形成又は積層プロセス中、同時に温度及び圧力の影響を受けて著しく流動する、変形する、薄くなる可能性が低い。架橋有機スペーシング層は高度に溶媒耐性であり、一方非架橋有機スペーシング層はガソリン、油、トランスミッション液、窓ガラス用洗剤のような自動車用流体で見られるものを含む溶媒に溶解する又は感知できるほど軟化する場合がある。架橋有機スペーシング層は高い弾性率及び剛性、ひずみを与えたときの良好な弾性回復又は良好な弾性のような、同じポリマーから製作した非架橋有機スペーシング層に比べて望ましい物理的特性を有することもできる。好ましくは、スペーシング層は下層の金属層の上にその場で架橋される。スペーシング層は好ましくは、上記で述べた米国特許第6,818,291(B2)号、同第6,929,864(B2)号、同第7,018,713(B2)号、同第7,215,473(B2)号、並びに本明細書に引用する文書に記載されているように、フラッシュ蒸発、蒸着及びモノマー又はオリゴマーの架橋を包含するプロセスにより形成される。揮発可能な(メタ)アクリレートはこのようなプロセスで使用するのに好ましく、揮発可能なアクリレートは特に好ましい。コーティング効率は支持体を冷却することによって向上できる。特に好ましいモノマーとしては、単独で又はヘキサンジオールジアクリレート、エトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、シアノエチル(モノ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、アクリル酸イソデシル、ラウリルアクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジニトリルアクリレート、ペンタフルオロフェニルアクリレート、ニトロフェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAエポキシジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、フェニルチオエチルアクリレート、ナフチルオキシエチルアクリレート、UCBケミカルズ(UCB Chemicals)製のIRR−214環状ジアクリレート、ラッド−キュア社(Rad-Cure Corporation)製のエポキシアクリレートRDX80095、及びこれらの混合物のような、他の多官能性又は1官能性(メタ)アクリレートと組み合わせて使用される、多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。例えば、アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルナフタレン、アクリロニトリル、及びこれらの混合物等の様々な他の硬化性物質をスペーシング層に含むことができる。スペーシング層の物理的厚さはある程度その屈折率に依存し、ある程度開示したフィルムの所望の光学特性に依存する。好ましい光学的厚さは透過光については、所望の通過帯域の中央の波長の約1/4〜1/2である。赤外線排除干渉積み重ね体で使用する場合、架橋有機スペーシング層は例えば、約1.3〜約1.7の屈折率、約75〜約275nm(例えば、約100〜約150nm)の光学的厚さ、及び約50〜約210nm(例えば、約65〜約100nm)の対応する物理的厚さを有することができる。光学モデリングを使用して、好適な層の厚さを選択することができる。
【0039】
任意の追加の金属層の平滑度及び導通性、並びに下層(例えば、架橋高分子スペーシング層)への接着は好ましくは、上層の金属層の適用前に下層を適切に前処理することにより又は下層が好適な添加剤を含むことにより、強化される。代表的な前処理としては、スペーシング層のプラズマ前処理のような、上記支持体の前処理が挙げられる。
【0040】
開示したフィルムの最上層は所望により、層122のような好適な保護層である。様々な有機材料を用いて、ポリマー保護層を形成することができる。必要に応じて、保護層はロールコーティング(例えば、グラビアロールコーティング)又はスプレーコーティング(例えば、静電スプレーコーティング)のような、従来のコーティング方法を用いて適用することができる。保護層は好ましくは、例えば、架橋有機ベースコート層が用いられるときに使用することができるもののような技術を用いて架橋される。保護層はまた、別々に形成され、積層法を用いて適用されてもよい。好ましくは、保護層は上記で述べたような、フラッシュ蒸発、蒸着及びモノマー又はオリゴマーの架橋を用いて形成される。このような保護層で用いるための代表的なモノマー又はオリゴマーとしては、揮発可能な(メタ)アクリレートが挙げられる。保護層はまた、接着促進添加剤を含有してよい。代表的な添加剤としては、上記スペーシング層の添加剤が挙げられる。開示したフィルムを、ポリビニルブチラール(「PVB」)のような機械的エネルギー吸収材料のシートの間に積層する場合、保護層の屈折率は機械的エネルギー吸収材料と開示したフィルムとの間の屈折率の任意の差に起因する、境界面での反射を最小限に抑えるよう選択することができる。保護層は後処理され、保護層の機械的エネルギー吸収材料への接着を強化することもできる。代表的な後処理としては、上記のような支持体の前処理が挙げられる。1つの実施形態では、開示したフィルムの両面のプラズマ後処理を使用することができる。
【0041】
種々の機能層又は要素を開示したフィルムに添加して、特にフィルムの表面のうち1面で、その物理的若しくは化学的特性を変化させる又は改善することができる。このような層又はコーティングとしては、例えば、製造プロセス中、フィルムの取り扱いを容易にするための低摩擦コーティング又はスリップ粒子、フィルムに拡散特性を付与するため又はフィルムが別のフィルム若しくは表面の隣に位置するときの湿潤若しくはニュートン環を防ぐための粒子、感圧性接着剤又はホットメルト接着剤のような接着剤、隣接する層への接着を促進するための下塗剤、フィルムが接着剤ロールの形態で用いられるときに使用するための低接着バックサイズ(backsize)材料、並びに、1層又はそれ以上の金属層を介した電流、電圧感知又は電気容量感知を可能にするための電極を挙げることができる。機能層又はコーティングとしてはまた、例えば、PCT国際公開特許WO 01/96115(A1)号に記載されている機能層等の、飛散耐性、抗侵入、又は破壊−引裂耐性フィルム及びコーティングを挙げることができる。更なる機能層又はコーティングとしては米国特許第6,132,882号及び同第5,773,102号に記載されているもののような、振動減衰性又は吸音性フィルム層、並びに、水若しくは有機溶媒のような液体、又は酸素、水蒸気若しくは二酸化炭素のような気体から保護する、あるいはそれらへのフィルムの透過特性を変化させるためのバリア層を挙げることもできる。これらの機能性構成要素は1層又はそれ以上のフィルムの最外層に組み込むことができる又はそれらを別個のフィルム若しくはコーティングとして適用することができる。幾つかの用途では、染色フィルム層をフィルムに積層する、有色素コーティングをフィルムの表面に適用する、又はフィルムを製造するために用いられる1種又はそれ以上の材料に染料若しくは色素を含むこと等により、開示したフィルムの外観又は性能を変化させることが望ましい場合がある。染料又は色素は赤外線、紫外線、又は可視スペクトルの一部を含む、1つ若しくはそれ以上のスペクトルの選択された領域を吸収することができる。染料又は色素を用いて、特にフィルムが幾つかの周波数を透過させるが、他のものを反射する場合、開示したフィルムの特性を補完することができる。開示したフィルムで使用することができる、特に有用な有色素層は米国特許第6,811,867(B1)号に開示されている。この層はフィルム上の表面薄層として、積層、押出コーティング、又は共押出され得る。色素の充填量を約0.01〜約1.0重量%で変化させて、必要に応じて可視光線透過率を変化させることができる。紫外線吸収性カバー層の追加もまた、紫外線に曝露したとき不安定になる可能性のあるフィルムの任意の内層を保護するために、望ましい場合がある。開示したフィルムに追加することができる他の機能層又はコーティングとしては、例えば、帯電防止コーティング又はフィルム、難燃剤、紫外線安定剤、磨耗耐性又はハードコート材料、光学コーティング、防曇材料、磁気又は磁気光学コーティング若しくはフィルム、液晶パネル、エレクトロミック又はエレクトロルミネセンスパネル、写真乳剤、プリズムフィルム、及びホログラフィックフィルム若しくはホログラフィックフィルムイメージが挙げられる。更なる機能層又はコーティングは例えば、米国特許第6,368,699号、同第6,352,761号、及び同第6,830,713号に記載されている。開示したフィルムを、例えば、製品識別、位置確認情報、広告、警告、装飾、又は他の情報を表示するのに用いられるもののような、インク又は他の印刷されたしるしで処理することができる。スクリーン印刷、インクジェット印刷、熱転写印刷、凸版印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、点刻印刷、レーザー印刷等を含む種々の技術を用いて、開示したフィルム上に印刷することができ、また、1及び2成分インク、酸化的乾燥及び紫外線乾燥インク、溶解インク、分散インク、並びに100%インク系を含む種々のタイプのインクを用いることができる。
【0042】
電極を備えるとき、開示したフィルムはアンテナのような目的、電磁干渉(EMI)シールド、並びに、グレージング物、乗り物の窓及びディスプレイの除曇、くもり防止、除霜、又は防氷のような電気加熱したフィルムの用途のために用いることができる。電気加熱したフィルムの用途はかなりの通電容量を必要とする場合があるが、可視光線透明度を必要とするときは非常に薄い(かつ、それに応じて非常に脆弱である)金属又は金属合金層を使用しなければならない。電気加熱したフィルムの用途は米国特許第3,529,074号、同第4,782,216号、同第4,786,783号、同第5,324,374号及び同第5,332,888号に開示されている。電気加熱したフィルムは乗り物用の安全なグレージング物、例えば、自動車、飛行機、電車若しくは他の乗り物のフロントガラス、バックライト、サンルーフ又は側窓で特に関心を持たれている。このような物品内で低電圧で使用するための金属層は電気抵抗が低い、例えば、約20オーム/スクエア以下の抵抗を有することが望ましい。例えば、金属層は約5オーム/スクエア〜約20オーム/スクエアの抵抗、約7.5オーム/スクエア〜約15オーム/スクエアの抵抗、又は約7.5オーム/スクエア〜約10オーム/スクエアの抵抗を有することができる。
【0043】
開示したフィルム及び開示したフィルムを含む物品は好ましくは、垂直軸に沿って測定したとき、少なくとも約60%の、スペクトルの可視部における透過率(可視光線透過率)、Tvisを有する。別の実施形態では、フィルムは少なくとも約70%の可視光線透過率を有する。更に別の実施形態では、フィルムは少なくとも約75%の可視光線透過率を有する。
【0044】
開示したフィルムは広範な基材に接合又は積層することができる。典型的な基材材料としては、ガラス(絶縁、調質、積層、焼なまし、又は熱強化されていてよい)及びプラスチック(ポリカーボネート及びポリメチルメタクリレートのような)のようなグレージング材料が挙げられる。フィルムは非平面基材、特に複合曲率を有するものと接合することができる。フィルムは望ましくは延伸性があり、実質的に亀裂又はひだがなく、積層及び脱気プロセス中、このような非平面基材に適合することができる。開示したフィルムは配向され、所望によりフィルムが実質的にしわなく非平面基材に適合するのを補助するのに十分な条件下でヒートセットされることができる。これはフィルムが積層されるべき非平面基材が既知の形状又は曲率を有するとき、また、特に基材が既知の厳しい複合曲率を有するときに、特に有用である。各面内方向のフィルムの収縮を個々に制御することにより、フィルムを積層中、例えばニップロール積層又はオートクレーブ中に、制御された方式で収縮させることができる。例えば、フィルムが積層されるべき非平面基材が複合曲率を有する場合、フィルムの収縮を各面内方向で調整し、その方向の基材の特定の曲率特性を一致させることができる。最も収縮する面内のフィルム方向は最も小さな曲率、つまり最も大きな曲率半径を有する基材の寸法に揃えることができる。曲率半径に従った曲率の特性化に加えて又はその代わりに、必要に応じて他の測定値(基材の主表面により画定される幾何学的表面から測定される隆起又はくぼみ部の深さのような)を用いることもできる。典型的な非平面基材に積層する場合、フィルムの収縮は両方の面内方向において約0.4%超過、少なくとも1つの面内方向において約0.7%超過、又は少なくとも1つの面内方向において約1%超過であってよい。1つの実施形態では、全体のフィルムの収縮は端部剥離又は「プルイン(pull-in)」の低下に限られる。したがって、フィルムの収縮は各面内方向において約3%未満、又は各面内方向において約2.5%未満であってよい。収縮挙動は主に、使用されるフィルム又は基材材料、並びにフィルムの延伸比、ヒートセット温度、滞留時間及びトーイン(toe-in)(最大レイル設定に対する、測定したテンタヒートセット領域におけるレイル間隔の減少)のような要因により決定される。コーティングはフィルムの収縮特性を変化させることもできる。例えば、下塗剤コーティングは横断方向(「TD」)の収縮を約0.2%〜約0.4%減少させ、機械方向(「MD」)の収縮を約0.1〜0.3%増加させることができる。配向及びヒートセット設備は変化に富み、理想のプロセス設定は典型的には、各事例で経験的に決定される。標的とする収縮特性を有する物品を製造するための技術に関する更なる詳細は米国特許第6,797,396号に記載されている。MOF支持体を使用する物品を製造するための技術及び1又は2層のグレージング物を使用する積層体を製造するための技術に関する更なる詳細は米国特許第7,189,447(B2)号に記載されている。
【0045】
開示したフィルムを製造するために便利に用いることができる装置170の例を図2に示す。動力付きリール161a及び161bは支持体162を、装置170を貫いて前後に移動させる。温度制御された回転ドラム163並びにアイドラー163a及び163bはプラズマ前処理器164、シード金属又はシード金属酸化物スパッタリング適用器165、金属スパッタリング適用器166、蒸発器167、及び電子ビーム架橋装置168の側を通り過ぎる支持体162を保有する。液体モノマー又はオリゴマー169はリザーバ171から蒸発器167に供給される。装置170を最初に通過するとき、層114のような第1の核形成酸化物シード層、層116のような第1の金属層、及び必要に応じて層118のような有機スペーシング層を、支持体162上に適用又は形成することができる。有機スペーシング層は新しくコーティングされた支持体162を、リール161bからリール161aに巻き戻す間、第1の金属層の損傷を制限する一時的な保護層として機能することができる。装置170を2回目に通過させて、層115のような第2の核形成酸化物シード層、層120のような第2の金属層、及び層122のようなポリマー保護層を適用又は形成することができる。酸素、水蒸気、埃、及び他の大気中の汚染物質が種々の前処理、コーティング、架橋、及びスパッタリング工程に干渉するのを妨げるために、装置170を好適なチャンバ(図2には図示せず)内に入れ、真空下で維持する又は好適な不活性雰囲気を供給してよい。反応性気体(例えば、酸素又は水蒸気)を装置170に導入して(あるいは支持体又はチャンバ自体から気体放出してもよい)、意図的に干渉を引き起こす、例えば金属層を酸化物層に変換することもできる。
【0046】
本発明は以下の実施例において更に例示されるが、その中での全ての部、百分率及び比は特に指示がない限り重量基準である。
【実施例】
【0047】
(実施例1)
厚さ0.05mm(2ミル)のPET基材のロールを、図2に示すようなロールツーロール真空槽(roll to roll vacuum chamber)に搭載した。基材を30.5m/分(100フィート/分)のライン速度で、前方に流し、1.15Pa(8.6×10−3トール)の圧力で供給される、250sccmのアルゴンと180sccmの酸素の雰囲気中にて、4.0kWで亜鉛を反応的マグネトロンスパッタリングすることによりコーティングした。続いて、同じ通過中に、基材に、0.037Pa(2.8×10−4トール)で供給される、40sccmのアルゴンの雰囲気中にて、8kWで銀をマグネトロンスパッタリングした。フィルムは可視光線透過性かつ赤外線反射性であり、550nmで77.1%の光学透過率を示した。電気的特性を以下の表1に示す。デルコム(DELCOM)(商標)伝導率監視装置(デルコム・インスツルメンツ(Delcom Instruments, Inc.)を用いて伝導度を測定し、シート抵抗率を測定した伝導度値の逆数として算出した。フィルムは11.5オーム/スクエアのシート抵抗率を有していた。
【0048】
比較例1
厚さ0.05mmのPET基材のロールを、実施例1の真空槽に搭載した。基材を30.5m/分(100フィート/分)のライン速度で、前方に流し、0.037Pa(2.8×10−4トール)の圧力で供給される、40sccmのアルゴンの雰囲気中にて、8kWで銀をマグネトロンスパッタリングでコーティングした。得られたフィルムは550nmで66.2%の光学透過率を示し、18.7オーム/スクエアのシート抵抗率を有していた。シード層を有さずに作製されたこのフィルムは実施例1のフィルムより、可視光線透過率及び電気抵抗がともに低かった。
【0049】
比較例2
厚さ0.05mmのPET基材のロールを、実施例1の真空槽に搭載した。基材を33.5m/分(110フィート/分)のライン速度で、前方に流し、0.11Pa(8.1×10−4トール)の圧力で供給される、10sccmのアルゴンの雰囲気中にて、2.8kWでチタンをマグネトロンスパッタリングでコーティングした。金属性チタンの高いゲッタリング傾向のために、シード層は槽内での偶発的な酸素との反応を介して、又は支持体の寄与により、酸化チタンを形成すると推定される。続いて、同じ通過中に、基材に、0.16Pa(1.2×10−3トール)で供給される、140sccmのアルゴンの雰囲気中にて、8kWで銀をマグネトロンスパッタリングした。フィルムは550nmで64.9%の光学透過率を示した。シート抵抗率は10.5オーム/スクエアであった。亜鉛の標的ではなくチタンをスパッタリングターゲットとして用いて作製されたこのフィルムは実施例1及び比較例1の双方のフィルムより、可視光線透過率が低かった。
【0050】
【表1】

【0051】
図3は上記のように作製した一連のサンプルについて、550nmでの透過率とシート抵抗率を比較する。実施例1のフィルムと同様に作製したサンプルを、十字形と重ね合わせた、塗りつぶしていない方形を用いて示す。比較例1のフィルムと同様に作製したサンプルを、塗りつぶしていない菱形記号で示す。実施例2のフィルムと同様に作製したサンプルを、塗りつぶしている(つまり、黒くしている)方形を用いて示す。図3は全体としてみると、実施例1に従って作製したサンプルは他のサンプルに比較して、透過率及び伝導度が改善されていることを示す。
【0052】
(実施例3)
18.3m/分(60フィート/分)のライン速度及び98:2 酸化亜鉛:アルミナをシード層のスパッタリングターゲットとして用いた以外、実施例1の方法を用いて、PET基材に、1、4及び8kWで、酸化亜鉛:アルミナ核形成シード層をマグネトロンスパッタリングし、次いで2、3、4、5、6、8及び10kWで銀をマグネトロンスパッタリングした。得られたフィルムの光学特性を図4に示し、曲線A、B及びCはそれぞれ、1、4及び8kWのシード層の電力レベルに対応し、各個別の曲線に沿った点は銀の電力レベルの増加に対応する。銀の電力レベルの増加(また、多くの場合、シードの電力レベルの増加)は透過率レベルの低下に対応していた。
【0053】
(実施例4)
アクリレート/ZnO/Ag/アクリレート/ZnO/Ag/アクリレート積み重ね体構造において、架橋アクリレートベースコート層、第1の酸化亜鉛核形成シード層、第1の銀金属層、架橋アクリレートスペーシング層、第2の酸化亜鉛核形成シード層、第2の銀金属層、及び架橋アクリレート保護層をこの順番に含有する光学積み重ね体で、PET基材をコーティングした。架橋アクリレート層は全て、64%のIRR214アクリレート(UCBケミカルズ(UCB Chemicals))、28%のn−ラウリルアクリレート及び8%のエチレングリコールビスチオグリコレートの混合物を使用して作製し、米国特許第6,818,291(B2)号の一般法を用いて適用した。酸化亜鉛及び銀層を、実施例1の一般法を用いて適用した。得られたフィルムの透過率/反射率曲線を図5に示す。比較のための実行では、比較例2の一般法を用いて適用した酸化チタンシード層を用いて、同様のフィルムを調製した。得られたフィルムの透過率/反射率曲線を図6に示す。図5及び図6を比較して分かるように、図5の光学積み重ね体は概して、図6の光学積み重ね体より良好な光学特性を示した。
【0054】
本願明細書に記載の参考文献はその全文が参照することにより本明細書に組み込まれる。本開示の例示的実施形態を検討するとともに、本開示の範囲内の可能な変形例を参照してきた。本開示の範囲から逸脱することのない、本開示のこれらの及び他の変形及び修正が当業者には明らかであり、本開示及び以下に示す請求の範囲は本明細書に記載した例示的実施形態に限定されるものではないことを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性ポリマー支持体上に伝導性フィルムを形成する方法であって、
a)前記可撓性ポリマー支持体上に酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化スズ、又は混合した酸化物若しくはドープした酸化物を含むこれらの混合物を含有するシード層を形成する工程と、
b)前記シード層上に延伸性で可視光線透過性金属層を付着させる工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記支持体と前記シード層との間に有機支持体コーティングを形成する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シード層が酸化亜鉛を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記シード層が酸化亜鉛:アルミナ、酸化インジウム:酸化亜鉛、酸化インジウム:酸化スズ、酸化インジウム:酸化スズ:酸化亜鉛、インジウム:亜鉛、インジウム:スズ、酸化インジウムガリウム亜鉛、Zn(1−x)MgO:Al又はMgIn(4−x)を含有するスパッタリングターゲットを用いて形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記金属層が銀を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
c)前記金属層上に酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化スズ、又は混合した酸化物若しくはドープした酸化物を含むこれらの混合物を含有する第2のシード層を形成する工程と、
d)前記第2のシード層上に第2の延伸性で可視光線透過性金属層を付着させる工程と、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記金属層の間に高分子スペーシング層を形成して、赤外線排除性ファブリ・ペロー積み重ね体を提供する工程を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記シード層の物理的厚さが0超過かつ約5nm未満であり、前記金属層の物理的厚さが約5〜約50nmである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記フィルムが少なくとも約70%の可視光線透過率を有し、約20オーム/スクエア未満のシート抵抗率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
可撓性ポリマー支持体と、前記支持体の上に酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化スズ、又は混合した酸化物若しくはドープした酸化物を含むこれらの混合物を含有するシード層と、前記シード層の上に延伸性で可視光線透過性金属層と、を備える伝導性フィルム。
【請求項11】
前記支持体と前記シード層との間に有機支持体コーティングを更に備える、請求項10に記載のフィルム。
【請求項12】
前記シード層が酸化亜鉛を含有する、請求項10に記載のフィルム。
【請求項13】
前記酸化亜鉛がアルミニウム又は酸化アルミニウムでドープされている、請求項12に記載のフィルム。
【請求項14】
前記シード層が酸化インジウム:酸化亜鉛、酸化インジウム:酸化スズ、酸化インジウムガリウム亜鉛、Zn(1−x)MgO:Al又はMgIn(4−x)を含有する、請求項10に記載のフィルム。
【請求項15】
前記金属層の上に第2のシード層、前記第2のシード層の上に第2の金属層を更に備える、請求項10に記載のフィルム。
【請求項16】
前記金属層が、高分子スペーシング層により分離され、赤外線排除性ファブリ・ペロー積み重ね体を提供する、請求項15に記載のフィルム。
【請求項17】
前記第2の金属層の上に第3、第4、第5、又は第6のシード層と、第3、第4、第5、又は第6の金属層とを更に備え、前記金属層が高分子スペーシング層により分離され、赤外線排除性ファブリ・ペロー積み重ね体を提供する、請求項15に記載のフィルム。
【請求項18】
前記シード層の物理的厚さが0超過かつ約5nm未満であり、前記金属層の物理的厚さが約5〜約50nmである、請求項10に記載のフィルム。
【請求項19】
前記フィルムが少なくとも約70%の可視光線透過率を有し、約20オーム/スクエア未満のシート抵抗率を有する、請求項10に記載のフィルム。
【請求項20】
前記フィルムが約7.5〜約15オーム/スクエアのシート抵抗率を有する、請求項10に記載のフィルム。
【請求項21】
請求項10に記載の前記フィルムを備える電子デバイス。
【請求項22】
グレージング物品の製造方法であって、
a)グレージング材料の層と、可撓性ポリマー支持体、及び前記支持体の上に酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、又はこれらの混合物を含有するシード層と、前記シード層の上に延伸性で可視光線透過性金属層を備えるフィルムと、を組み立てる工程と、
b)前記グレージング材料及びフィルムを共に接着して一体型物品にする工程と、を含む、グレージング物品の製造方法。
【請求項23】
前記グレージング材料がガラスを含有し、前記グレージング物品が前記フィルムと前記ガラスとの間にエネルギー吸収層を更に備える、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記シード層が酸化亜鉛、酸化インジウム:酸化亜鉛、酸化インジウム:酸化スズ、Zn(1−x)MgO:Al、MgIn(4−x)又は酸化インジウムガリウム亜鉛を含有する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記金属層の上に少なくとも第2のシード層と、前記第2のシード層の上に少なくとも第2の金属層と、を更に備え、前記金属層が高分子スペーシング層により分離されて、赤外線排除性ファブリ・ペロー積み重ね体を提供し、前記シード層の物理的厚さが0超過かつ約5nm未満であり、前記金属層の物理的厚さが約5〜約50nmである、請求項22に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−514597(P2010−514597A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544300(P2009−544300)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/089095
【国際公開番号】WO2008/083308
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】