説明

薬剤ピッキング方法及び装置

【課題】ピッキング効率・精度の向上及びピッキングミスの確実な低減を可能にする。
【解決手段】薬剤棚の多数の薬品庫には、ランプとピッキングすべき薬剤の数量を表示する数量表示部が設けられている。各調剤者のIDを登録するとともに特定色を指定して、処方箋ごとに指定される調剤者が最初にピッキングすべき薬品庫のIDカラーのランプを点滅させ、後順位の薬品庫のランプをすべて点灯させる。最初の薬品庫からのピッキングを終了すると、次順位の薬品庫のランプを点灯から点滅に変える。点灯から点滅に変える薬品庫の順序を調剤者の移動距離が最短となるように決定し、ランプにより調剤者を誘導するようにした。点灯から点滅に変える薬品庫の順序は、薬剤棚の薬品庫の一端の列から他端の列の方向に移動するように決めることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤ピッキング方法及び同方法を用いる装置、とくにピッキング作業効率の向上とピッキングミス(調剤過誤)の防止に強く配慮したものに関する。
【背景技術】
【0002】
薬局では、薬剤棚に保管された多種類の薬剤の中から処方箋に基づいて所定の薬剤を所定量だけ取り出す調剤作業(本願においては、これを薬剤ピッキング、又は単にピッキングという場合がある。)を行い、その調剤済み薬剤を、監査した後、患者に手渡している。
【0003】
往時は、処方箋を見ながらその指示に従いピッキングを行っていたので、ピッキング作業効率が良くないばかりでなく、ピッキングミスをしてしまうことがあった。例えば、薬剤棚の薬剤を種類別に収容保管している薬品庫のなかの所定の薬品庫でなく、誤って隣の薬品庫から薬剤をピッキングしてしまうとか、調剤後に手元に残った薬剤を誤って別の薬品庫に戻してしまう等があった。また、多くの来局患者のために複数の調剤者が同時にピッキング作業を行う場合は、ピッキングミスの可能性が高くなる。ピッキングミスは重大な結果を招くことがあるので、万一ピッキングミスが発生した時は、その原因究明と再発防止のため、そのミスをした調剤者は誰かを特定する必要があるが、旧来のピッキング方法ではその特定が難しい場合があった。
【0004】
さらに、監査工程においては、監査人が調剤済み薬剤を処方箋と照らし合せて目視確認するが、数百種類以上の薬剤を対象にすることもあり、形状、外観又は色が類似する薬剤も少なくないので、場合により調剤過誤が監査において発見されずに通過してしまう危険性があった。
【0005】
そのため、ピッキング作業効率の向上とピッキングミスの防止を図ったピッキングシステムが、これまでに種々提案された。
特許文献1には、一般商品を取り扱う物流用ピッキングシステムにおいて、商品棚の商品を種類別に収容保管する各商品庫ごとに、点灯動作及び点滅動作が可能なランプと数量表示部とを有するピッキング指示装置を設けるとともに、配送指示データに基づいて所定の商品庫のランプを、取り出すべき商品の数量が1個の場合は点灯動作させ、取り出すべき商品の数量が2個以上の場合は点滅動作させるとともに、数量表示部にピッキングすべき商品の数量を表示する制御装置を設け、ピッキングを終了した時に終了スイッチを手動操作することによりランプの点灯又は点滅及び数量表示を停止することが開示されている。
しかし、この先行技術は、ピッキングすべき商品を収容するすべての商品庫において同時に点灯動作又は点滅動作をするだけであるので、作業者は取り出すべき商品の数量が1個か2個以上かが判るに過ぎないから、ランプが点灯動作又は点滅動作をしている商品庫を随意の順序で選択してピッキングを行うことができる。従って、ピッキング作業が常に効率良く行われるとは限らない。また、一人の作業者がピッキング作業を終了するたびに、次の作業者のためにピッキングすべき商品庫を順次表示するシステムであるため、このような物流におけるピッキングシステムを薬局の薬剤ピッキングに転用する場合は、一度に複数の調剤者が各別の処方箋に基づいて行う同時ピッキングや追い越しピッキングができないので、作業効率の面から改善が求められていた。
【0006】
特許文献2には、同文献に記載された特許文献3(実用新案登録第3024113号公報)に、調剤台における薬剤ピッキングミス防止装置の先行技術として、薬剤棚の多数の種類の薬剤を収容している各薬品庫に固有の識別コードを発信する発信部を備えるともに、調剤台に設けた制御部にその各識別コードを登録し、いずれかの薬品庫を調剤台に持ち運んで載せた時に調剤台に設けた受信部の受信した識別コード信号に対応する識別コードを表示器に表示させ、その表示された識別コードと処方箋とを調剤者が照合して、ピッキングの正誤を確認することが記載されている旨、そして、その薬剤棚は常に開放状態にあるため、薬剤棚に置かれている薬品庫が必要な調剤作業以外にも取り出される危険性があり、在庫の管理が不十分である点が指摘されている。
【0007】
そこで、特許文献2の発明は、ピッキングミス防止機能の強化と薬剤在庫管理が可能な薬剤ピッキングシステムを提供することを目的として、多数の薬品庫の内の特定の薬品庫を選択してそれに指令を与える指令手段と、薬品庫のそれぞれに設けられ、常時は各薬品庫を引き出し不能又は開扉不能な状態にし、指令手段により選択された薬品庫を引き出し可能又は開扉可能な状態にする開閉手段とを備えることにより、開くべき薬品庫を間違えることが無くピッキングミスを防止でき、必要のない薬品庫は開放不可能であるので在庫管理が確実である点、及び、指令手段は、複数の薬品庫の内の2個以上が同時に開くことが無いように薬品庫を選択することとすれば、常に1つの種類の薬剤しか作業の対象とならないため、薬剤ピッキングミスを防止できる点が記載されている。
しかし、この発明においても、ピッキングすべき薬剤の種類が複数である場合の指令手段による薬品庫の選択順序、及び複数人の調剤者によりピッキング作業を行う場合のピッキング順序などについては,一顧もされていない。従って、ピッキング作業効率の向上の要望に応えるには限度があり、また、同時ピッキングや追い越しピッキングは不可能である。さらに、調剤済み薬剤と各調剤者との対応関係の明確化の要望に応えることもできない。
【0008】
特許文献3には、従来の薬剤ピッキング支援システムにおいては、ピッキングミス防止策が完全には機能していないことに鑑みて、ピッキング作業効率の向上を図るとともに、ピッキングミスを効果的に防止できる薬剤ピッキングシステム及び方法が提案された。
その提案された薬剤ピッキングシステムは、調剤者が調剤受付をする受付装置と、多数の薬品庫を備える薬剤棚に設けられた調剤管理装置と、調剤者が携帯する端末装置とからなり、前記受付装置は受付表示部と受付制御部とを有し、その受付制御部は、処方箋の処方調剤データに基づき受付表示部に薬剤出庫画面を表示させ、調剤者が調剤者として自分を指定すると処方調剤データと調剤者データを調剤管理装置に送り、その調剤管理装置から終了信号を受けるとピッキングされた薬剤の薬剤名を端末装置に送るものであり、前記調剤管理装置は、薬品庫に設けられた表示部と、薬品庫の内部に設けられたピッキング終了スイッチと、受付装置から送られた調剤者データに基づいて表示部に調剤者表示を開始させ、端末装置から送られたID信号を調剤者データと照合し、ピッキング終了スイッチが操作され、かつ、薬品庫が閉じられたときに、表示部の調剤者表示を終了させ、当該薬剤のピッキングが終了したことを示す終了信号を受付装置へ送る薬品庫制御部とを備えたものであり、前記端末装置は、端末表示部と、受付装置から送られた薬剤名を端末表示部に表示させ、調剤管理装置へID信号を送り、確認終了信号を受付装置へ送る端末制御部とを備えたものである。
【0009】
上記の構成による効果として、受付装置と調剤管理装置と端末装置とを連携させて各ステップで幾重にもチェックを重ねることにより、ピッキングミスを効果的に防止することができる旨が、特許文献3に記載されている。
そのほかの技術的事項及び効果として、各表示部に複数色の個別表示ランプ(LED)と代表表示ランプを設け、受付装置から送られた調剤者データに基づいて対応色の個別表示ランプと代表表示ランプを点灯させることにより、調剤者を該当薬剤のある薬品庫へ誘導する効果が得られる点(0033)、調剤者表示を色分けにより視覚的にわかり易く表示できる点、複数の調剤者が同じ薬剤を同時にピッキングすることが可能になる点(0029)、及び各ランプの点滅や点滅速度の違いの組み合わせにより、多数人の同時ピッキングが可能になる点(0029)が記載されている。さらに、受信したIDデータが調剤者データと不一致の場合は警告信号が端末装置から発させられるので、ピッキングミスを予知でき、受付装置に記録される点が記載されている(0035)。
【特許文献1】特開2001−341817号公報
【特許文献2】特開2004−209027号公報
【特許文献3】特開2006−4119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記先行技術はいずれも、ピッキング作業効率の向上、ピッキングミスの確実な防止、ピッキング精度の向上、及び薬剤在庫管理を充分に機能しているとは言えない。
【0011】
そこで、本発明の第1の目的は、ピッキング作業効率の向上、ピッキング精度の向上及びピッキングミスの確実な低減を図ることができる薬剤ピッキング方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、その薬剤ピッキング方法を実現するための薬剤ピッキング装置を提供することにある。
また、本発明の第3の目的は、調剤済み薬剤の監査を容易かつ確実に行える薬剤ピッキング装置を提供することにある。
さらに、本発明の第4の目的は、調剤業務の支援の仕方を改善することにより、同時ピッキング及び追い越しピッキングをも可能として、ピッキング作業効率のさらなる向上を図ることができる薬剤ピッキング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記第1の目的を達成するため、本発明による薬剤ピッキング方法は、次のステップからなっていることを特徴としている。すなわち、
(a)当日ピッキング作業を行う調剤者の識別コード(以下、IDという。)を登録するステップ、
(b)調剤者に調剤開始が可能であることを音声(ブザー又はメロディ)で知らせるステップ、
(c)処方箋に基づき入力された処方調剤データに基づき、当該薬剤を収容している薬品庫を検索し、検索された薬品庫に設けてある数量表示部にピッキングすべき薬剤の数量を表示し、その薬品庫に設けてある所定の色で発光する複数のランプのうち調剤作業を行う者として指定された調剤者のIDに対して予め定められた色と同色のランプを、最初にピッキングすべき薬品庫のランプは点滅させるとともに、後順位でピッキングすべき薬品庫のすべてのランプは点灯させるステップ、
(d)各薬品庫に設けられた受信器が調剤者の指先に装着した調剤者ID発信器から登録されているIDと一致するIDを受信した時、前記点滅させたランプを点灯に変えるステップ、
(e)ランプが点滅から点灯に変えられた薬品庫に設けられたピッキング終了スイッチが操作され、かつ、その薬品庫の扉が閉じられたことを検知したことに基づき、前記点滅から点灯に変えられたランプを消灯するとともに、前記数量表示部の表示を消去し、当該処方箋の処方調剤データに基づきピッキングすべき薬品庫がほかにある場合には、点灯させてあるランプのうち次順位でピッキングすべき薬品庫のランプを順次点灯から点滅に変えるステップからなり、
(f)前記ランプが点灯から点滅に変えられる薬品庫の順序を調剤者がピッキングするための移動距離が最短距離となるように決定することを特徴としている(請求項1)。
【0013】
上記方法においては、当日ピッキング作業を行う調剤者のIDを登録し、登録を受けた調剤者が調剤を開始するときはその調剤者について指定された色のランプが動作されるので、調剤者とピッキング結果(調剤済み薬剤)との対応関係が取れる。また、ピッキング作業当日にIDを登録し、色の指定を受けるので、調剤者が色の認識を誤ることがないとともに、当日調剤業務を行わない調剤者のIDは個人認証の対象から外されるので、ピッキングを行う場合の個人認証処理速度が速くなる。調剤開始が可能なことが音声で知らされるから、当該調剤者は準備作業に目が奪われていても、調剤開始が可能であることを知ることができる。ピッキングすべき薬品庫の全てが点灯表示されるので、ピッキングすべき全数を視覚的に把握することができ、心の準備ができる。複数のピッキングすべき薬品庫がある場合に、最初にピッキングすべき薬品庫のランプが点滅され、その余の薬品庫のランプは点灯され、ピッキングすべき順番になると点灯から点滅に変わるので、ピッキング順序誘導効果が大きく、その誘導順序が調剤者の移動距離が最短距離となるように決定されるので、ピッキング効率が格段に向上し、また、複数の調剤者が同時にピッキングを行うこともできる。
【0014】
上記ピッキング方法において、ランプが点灯から点滅に変えられる薬品庫の順序は、薬剤棚の一端の薬品庫の列から他端の薬品庫の列の方向に移動するように決めることが望ましい(請求項2)。
また、上記ピッキング方法において、ランプを点滅から点灯に変えた後、そのランプが設けてある薬品庫の受信器がそのランプを点滅から点灯に変える前に受信したIDと同じIDを再び受信する前にその薬品庫の扉が閉じられたことを検知したときは、警報音を出すことが好ましい(請求項3)。
【0015】
上記第2の目的を達成する薬剤ピッキング装置は、
(1)薬剤棚と、調剤支援パソコンと、調剤者識別コード発信器(以下、調剤者ID発信器という。)とからなり、
(2)前記薬剤棚は、薬剤を種類ごとに区分けして保管する多数の薬品庫を有し、
(2a)前記各薬品庫には、互いに異なる色で発光するランプと、前記調剤支援パソコンから与えられる制御信号によりそのランプの点滅、点灯又は消灯を制御するランプ制御部と、ピッキングすべき薬剤の数量を表示する数量表示器と、前記調剤者ID発信器を触れ又は近接させたときに調剤者IDを受信して前記調剤支援パソコンに送る調剤者識別コード受信器(以下、調剤者ID受信器という。)と、薬品庫から所定数量の薬剤をピッキングした後に操作されるピッキング終了スイッチと、当該薬品庫の扉の開閉を検知する扉開閉センサとが設けてあり、
(3)前記調剤支援パソコンは、ピッキングを行う調剤者のIDを登録する調剤者登録手段と、前記薬剤棚のいずれかの薬品庫の調剤者ID受信器から送られてくるIDを登録されたIDと照合する調剤者認証手段と、処方箋に基づき入力された処方調剤データを基に当該薬剤を収容している薬品庫を検索して、ピッキングすべき薬品庫を決定する薬品庫決定手段と、決定された薬品庫から調剤者がピッキングするための移動距離が最短距離となるようにピッキングすべき薬品庫の順序を決定するピッキング順序決定手段と、最初にピッキングすべき薬品庫のピッキング終了スイッチからの終了信号に基づきピッキング順序を1薬品庫ずつ順次繰り上げるピッキング順序繰り上げ手段と、前記薬品庫決定手段により決定されたピッキングすべき薬品庫に調剤者ID、ピッキング順序データ及び薬剤数量データを送る送信手段とを有し、
(4)前記各薬品庫のランプ制御部は、受信した前記調剤者IDに基づいて当該調剤者IDに対応する色のランプを動作させ、かつ、受信したピッキング順序データが最先順位データであるときはそのランプを点滅させ、後順位データであるときはそのランプを点灯させ、前記調剤者認証手段により調剤者が認証された旨の信号を受けたときは、点滅させてあるランプを点灯に変え、ピッキング終了信号を受けた時はその点灯しているランプを消灯するものであることを特徴としている(請求項4)。
【0016】
上記ピッキング順序決定手段は、ランプが点灯から点滅に変えられる薬品庫のロケーション表示を、薬剤棚の一端の薬品庫の列から他端の薬品庫の列の方向に移動するものであることが望ましい(請求項5)。
【0017】
上記調剤者ID発信器はRFIDチップを内蔵した指ぬきであり、薬品庫に設けられる調剤者ID受信器はRFIDリーダであることが好ましい(請求項6)。また、指ぬきは薬品庫のいずれかのランプの発光色と同じ色を有することが望ましい(請求項7)。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の薬剤ピッキング方法によれば、第1に、処方調剤データに基づき、薬剤棚の薬品庫のうちピッキングすべき全ての薬品庫のランプを点滅又は点灯させるので、ピッキング開始時点でピッキングすべき薬品庫の数と存在位置を把握することができる。従って、ピッキング前の心の準備ができる。第2に、最初にピッキングすべき薬品庫のランプは点滅させ、後順位でピッキングすべき薬品庫のランプはピッキングすべき順番になると点灯から点滅に変えられるので、順序誘導効果が得られる。すなわち、調剤者は自ら順序を考えることなく、システムが決定する最大作業効率を実現する順序に誘導される。第3に、ランプが点滅する薬品庫にはピッキングすべき薬剤の数量が表示されているので、その表示を見ながら正確に所定数量の薬剤をピッキングすることができ、複数種類の薬剤名が列記されている処方箋を見ながらの調剤業務に基づくピッキングミスを排除することができる。第4に、次順位でピッキングすべき薬品庫のランプを順次点灯から点滅に変える方向を移動距離が最短距離となるように決定するので、一連のピッキング作業を円滑かつ高効率的に行うことができる。第5に、各調剤者に対しては薬品庫のロケーションが異なる色のランプで表示されるので、複数の調剤者が自他識別しながら同時ピッキング又は追い越しピッキングを行うこともできる。第6に、調剤者は指先に装着した調剤者ID発信器をランプが点滅している薬品庫に設けてある調剤者ID受信器に触れ又近接したとき、その調剤者について予め登録されているIDと一致するIDを読み取った場合に、その薬品庫からの薬剤のピッキングが許容されるので、他の薬品庫からのピッキングミスを阻止される。
【0019】
請求項2の発明によれば、ピッキング順序が、薬剤棚の一端の薬品庫の列から他端の薬品庫の列の方向に移動するように決められるので、複数の調剤者が互いに衝突することなく同時ピッキングを行うことができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、ピッキングされる薬品庫の受信器がランプが点滅から点灯に変える前に受信したIDと同じIDを再び受信せずにその薬品庫の扉が閉じられたときは、警報音が出されるので、調剤進行管理に必要な調剤者認証が済んでいないことをその調剤者に知らせて、調剤者認証操作を履行させることができる。
【0021】
請求項4の発明による薬剤ピッキングシステムによれば、調剤支援パソコン、ランプと数量表示器と調剤者ID受信器を備えた多数の薬品庫から構成された薬剤棚、及び各調剤者が指に装着した調剤者ID発信器を連携させたチェックにより、ピッキングミスを大幅に低減し、ピッキング作業精度の向上と作業効率の向上ができるとともに、同時ピッキングもできるという優れた効果が得られる。
【0022】
請求項5の発明によれば、請求項2の発明と同様に、複数の調剤者が互いに衝突することなく同時ピッキングを行うことができる。
【0023】
請求項6の発明によれば、調剤者は指先に装着した指ぬきをランプが点滅している薬品庫に設けてあるRFIDリーダに触れ又近接したとき、その調剤者について予め登録されているIDと一致するIDを読み取った場合に、その薬品庫からの薬剤のピッキングが許容されるので、他の薬品庫からのピッキングミスを阻止することができ、高いピッキングミス防止効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
<構成の説明>
図1は、本発明方法を実施するための薬剤ピッキング装置の構成を概略的に示す概念図、図2はレセコンの構成を示すブロック図、図3は調剤管理パソコンの構成を示すブロック図、図4は調剤管理パソコンの表示部に表示される処方調剤シート画面の一例を示す図、図5はレセコンにおける処方箋入力のフローチャート、図6は薬剤棚の一つの薬品庫の拡大正面図、図7は薬品庫制御装置の構成を示すブロック図、図8は識別信号発信器の一例を示す斜視図、図9は調剤ピッキングのフローチャート、図10は調剤監査のフローチャート、図11は受付窓口における薬剤引き渡し業務のフローチャート、図12は他の実施態様による調剤支援パソコンの機能を示すブロック図である。
【0025】
この実施の形態に係る薬剤ピッキング装置は、図1に示すように、レセコン1と、調剤管理パソコン2と、薬剤棚3と、調剤者ID発信器4とから構成されている。以下に、各構成要素について、順次詳細に説明する。
【0026】
[レセコン]
レセコン1は、レセプトコンピュータの略称である。レセコン1は、薬局の受付に設置され、図2に示すように、入力部11と送受信部12とデータ処理部13と表示部14とを有する。
従来と同様に、受付窓口で患者から処方箋を受け取ると、オペレータが入力部11から入力作業者IDを入力し、次に処方箋記載事項及び処方調剤データを入力する。処方箋記載事項及び処方調剤データは、送受信部12を介して病院からオンラインで受信する場合もある。初めての患者の場合には「お薬についてのアンケート」に記入してもらい、現在服薬中の薬やアレルギーの有無等について確認し、そのデータを入力する。再来患者の場合は、前回処方調剤データを基に修正項目のみ入力する。これらの入力データに基づき、レセコン1のデータ処理部13により、薬歴禁忌情報シート、処方調剤シート、服薬情報文のデータシート画面が作成される。
本発明においては、レセコン1の送受信部12は、後述される調剤管理パソコン2の送受信部22及び薬剤棚3の各薬品庫の送受信部と接続されている。
【0027】
レセコン1には、本発明の目的を達成するため、前記データ処理部13の中に調剤進行管理部13Eが含まれる。この調剤進行管理部13Eの機能は、この薬剤ピッキングシステムによるピッキング作業に携わる調剤者の認証機能と、認証され、指定された調剤者がピッキングをすべき薬剤が収容されている薬品庫の場所を表示するロケーション表示機能と、ロケーション表示をされた薬品庫が複数ある場合にピッキングすべき薬品庫の順序を一定の基準に従って決定するピッキング順序決定機能と、最先順位の薬品庫からのピッキングを終了したときに、次順位の薬品庫を最先順位に繰り上げるピッキング順序繰り上げ機能である。これらの機能については、後に詳述される。ピッキング順序を決定する一定の基準とは、決定された薬品庫から調剤者がピッキングするための移動距離が最短距離となる順序である。ピッキング順序は、ランプが点灯から点滅に変えられる薬品庫のロケーション表示を、薬剤棚の一端の薬品庫の列から他端の薬品庫の列の方向に移動する方法により決定することが好ましい。
【0028】
レセコン1には、処方箋管理データベース、薬剤管理データベース及び調剤管理データベースを格納するデータ管理サーバSが接続されていて、これのデータはリアルタイムで更新される。
【0029】
[調剤管理パソコン]
調剤管理パソコン2は、調剤室に設置され、図3に示すように、入力部21と送受信部22とデータ処理部23と表示部24とを有しており、主として、調剤責任者及び調剤者による調剤の有無及び調剤進捗状況確認のために使用され、当日ピッキングを行う調剤者の登録、現実にピッキングを行う際に各薬品庫にアクセスする調剤者の認証を行う。
【0030】
調剤管理パソコン2は、レセコン1と同じデータが共有できる調剤画面確認専用機であり、入力部21からのデータ入力は、調剤者登録・調剤責任者登録・調剤監査終了済み入力等以外は基本的にできない仕組みになっている。
調剤者及び調剤責任者は、調剤作業開始前に調剤管理パソコン2の入力部21を操作して、その日の調剤者のIDを登録することができる。調剤者登録が行われるときは、そのIDに対して固有の色が指定され、IDにその色指定データが付加して格納される。調剤者ごとに異なる色が指定されるようになっている。この色は、後述される薬品庫に設けてある複数のランプのそれぞれの色と同じ色である。
【0031】
調剤管理パソコン2の送受信部22は、レセコン1の送受信部12との間で送受信でき、表示部24にはレセコン1から受けた薬歴禁忌情報シート、処方調剤シート、服薬情報文がレセコン1と共通に表示される。
一連の調剤作業進捗状況は、調剤管理パソコンにおいて最大5人分が「処方調剤シート」画面にて確認できる。もちろん、この画面は、受付におけるレセコンでも画面メニューを選択して確認できる仕組みになっている。
図4に示すように、処方調剤シート画面には、調剤者氏名及び対応ランプ色・調剤責任者名・例示的に最大5人分の処方箋及びそのピッキング作業の進捗状況を示す薬剤毎の完了ボックス(調剤未:白抜き、完了:青表示)・調剤完了入力アイコンが表示される。処方調剤シート画面については、後述されるピッキングの実行動作との関連で詳細に説明する。
【0032】
レセコン1及び調剤管理パソコン2の作用を図5に基づいて説明する。受付窓口で患者から処方箋を受け取る(P11)と、受付のオペレータがその処方箋の処方調剤データと、現在服用中の薬剤やアレルギーの有無等のデータをレセコン1の入力部11から入力する(P12)。この入力により、薬歴禁忌情報シート、処方調剤シート、服薬情報文のデータシートの画面が作成される。この入力が済んだ処方箋は調剤室に渡されるので、調剤責任者はその処方箋と薬歴禁忌情報シートとの照合確認をして、薬剤の重複投与や相互作用などがある場合は、当該処方医に連絡をとり疑義照会を行う(P13)。次に、調剤責任者は、調剤管理パソコン2の表示部24を見て、ID登録を受けて表示されている複数の調剤者の中から当該処方箋の調剤をすべき者を入力部21で指定することができる(P14)。なお、監査行程において、調剤責任者が監査完了の際に完了アイコンをクリックすると、監査完了がレセコン1に通知されるようになっている。
【0033】
調剤管理パソコン2の表示部24の処方調剤シート画面(図4)には、5人分の処方箋が表示されるが、次の患者の調剤要求が発生するまで、調剤完了画面は表示を保持される。なお、患者氏名又は受付番号又は来局日付等のキーワードで過去の調剤記録データを検索できるようになっている。
【0034】
調剤責任者が、当該処方箋の調剤をすべき者を指定すると、そのID信号と調剤されるべき処方調剤データがレセコン1に送られ、レセコン1の調剤進行管理部13Eは、そのID信号と処方調剤データとに基づいて演算処理を行い、後述される薬剤棚3の所定の薬品庫の制御装置(薬品庫制御装置)に、当該薬品庫におけるピッキングを行うためにそれぞれ必要な制御信号を送受信部12を介して送るようになっている。
【0035】
[薬剤棚及び薬品庫]
薬剤棚3は、好ましい実施例においては、図1に示すように、調剤室に設置された調剤テーブル3Aの上に又はこれに近接して設けられ、薬剤を種類別に区分けして保管する多数の薬品庫301,302,...〜30n を有する。薬品庫は、指定された薬品庫からのピッキングの順序性を容易に認識できるようにするため、可能な限り、行列を整然と揃えて配設されている。
図6に一つの薬品庫30を代表的に示すように、いずれの薬品庫にも共通の構成要素として、その薬品庫の上部の薬剤の出し入れ時にも見え易く、操作し易い位置に部品取付パネル30aが設けられ、その部品取付パネル30aに表示部31と、ピッキング終了スイッチ32と、調剤者ID受信器33と、扉開閉センサ34と、薬品庫制御装置35とが取り付けられている。
【0036】
表示部31は、ピッキングすべき薬剤を保管している薬品庫の存在位置(ロケーション)を表示するためのランプL(L1〜L5)と、ピッキングすべき薬剤の数量を一例として3桁数字で表示する数量表示器NDとを有する。ランプLは調剤者の最大数、一例として5人に対応して5個のランプL1〜L5が設けられていて、個々のランプは、特定の調剤者を色で表示するために予め定められた互いに異なる色を発光するものである。これにより、調剤者は自分がピッキングすべき薬品庫を明確に識別することができるので、ピッキング作業効率が向上する。また、レセコン1の調剤進行管理部13Eからの制御信号に基づき、後述されるように所定のランプが点滅、点灯又は消灯される。
【0037】
ピッキング終了スイッチ32は、当該薬品庫から所定数量の薬剤のピッキングを終了したときに当該調剤者により操作されるものである。調剤者ID受信器33は、後述されるように、ピッキングを行う調剤者が指先に装着している調剤者認証用の調剤者ID発信器4が接触又は近接された時にその発信器が出すID信号を受信するものである。このような調剤者ID受信器33には、本発明の一つの特徴として、RFID( Radio Freqency Identification Data:無線個人認証用データ)を読み取るための接触式又は近接式のリ ーダ(RFIDリーダ)が用いられている。扉開閉センサ34は、当該薬品庫の扉の開状態及び閉状態を検知するためのものである。
【0038】
また、薬品庫制御装置35は、マイコン(マイクロコンピュータ)で構成され、レセコン1の送受信部12との間で通信する送受信部35aと、ランプLを点滅、点灯又は消灯させるランプ制御部35bと、数量表示部NDを駆動させる表示制御部35cとから構成されている。薬品庫の扉に電子錠が設けられる場合は、錠制御部35dが付加される。ランプ制御部35bは、後述されるように、レセコン1から送られる制御信号に基づいて当該薬品庫の表示部31のランプL1〜L5のうち当該ID信号に対応して予め定めてある特定色のランプを点滅動作又は点灯動作させ、表示制御部35cは数量表示器NDの表示動作を制御するものである。
【0039】
さらに、好ましい実施例においては、薬剤棚3の中央上部に、一つの電子音の発生機能を備えた報音部(ブザー部)3Bが設けられている。
【0040】
[調剤者認証用指ぬき]
本発明による薬剤ピッキングシステムを用いてのピッキング作業を行う調剤者は、図8に例示するような調剤者ID発信器4を指先に装着する。調剤者ID発信器4は、これに限定されないが、微小なRFIDチップで構成され、指ぬき41に内蔵されていることが好ましい。調剤者ID発信器4を内蔵した指ぬき41は、利き手の指先、例えば右手人差し指に、調剤者ID発信器4が指の裏側(手のひらと反対側)に向くように嵌めて装着される。指ぬきは調剤者に対してランプと対応させて予め定めてある色(特定のランプと同じ色)を有している。この調剤者ID発信器4は、当該調剤者に対して予め割付けたID信号を送信するものである。調剤者ID発信器4内蔵の指ぬき41に代えて、RFIDチップを先端に付着した手袋を用いることもできる。調剤者は指ぬき(又は手袋。以下、同じ。)41を嵌めた手をその指ぬきと同色のランプが点滅している薬品庫の扉を開けるため、例えば、摘み30’を把持するために近づけた際に、その指ぬきの調剤者ID発信器4を調剤者ID受信器33に触れると、調剤者ID発信器4からその調剤者のID信号が調剤者ID受信器33により読み取られるようになっている。
【0041】
<作用の説明>
[薬剤ピッキング]
続いて、上記構成により薬剤ピッキングを行うときの作用について、図9のフローチャートに基づいて説明する。
調剤責任者はまず調剤管理パソコン2において、当日ピッキング作業を行う調剤者のIDを登録する(P21)。ID登録が済んだ後、登録した調剤者の中から調剤を行う者を指定すると、調剤管理パソコン2はその旨をレセコン1に送るので、レセコンの調剤進行管理部13Eは、薬剤棚の上部に設けられたブザー3Bを間欠鳴動(0.2秒間を2回)させて調剤者に調剤開始を知らせる。また、調剤管理パソコン2は指定された各調剤者に調剤させるべき処方調剤データを一つの処方箋ごとに割り振り、当該調剤者のIDデータと処方調剤データとをレセコン1に送る(P22)。
【0042】
レセコン1の調剤進行管理部13Eは受けたIDデータと処方調剤データとに基づいて、薬剤棚3の所定の薬品庫の表示部31を制御するための演算処理を行い、その演算処理結果に基づいて所定の薬品庫の薬品庫制御装置35に制御信号を与えるようになっている。その制御信号は、所定の薬品庫のランプのうちIDデータにより決定される所定色のランプを点滅、点灯又は消灯させる信号と、数量表示部にピッキングすべき薬剤の数量を表示させる信号である。
【0043】
所定のランプを動作させるため、レセコン1の調剤進行管理部13Eは、受けた処方調剤データに含まれる薬剤コードを薬剤棚3の薬品庫の番地コードに置換して、ランプを動作させるべきロケーションを決定する(P23)。そして、処方調剤データに複数の薬剤コードが含まれる場合は、置換された番地コードを薬剤棚3の薬品庫の配列順番に従って並べ替える。例えば、図1の薬剤棚3の各列の薬品庫の左1列目の上側から下側に、次いで左2列目の上側から下側へ、以下同様に右1列目の上側から下側への順序に並べ替える。並べ替え後の番地コードは一時格納部に格納され、最初の番地コードに対応する薬品庫のランプに対しては点滅動作をさせるための制御信号が当該薬品庫の薬品庫制御装置35に与えられ、それ以外の番地コードに対応する薬品庫のランプに対しては点灯動作をさせるための制御信号が与えられる。
【0044】
このように、ピッキングすべき薬品庫の全てが所定色で同時に点滅又は点灯されるので、ランプの色で複数の調剤者のうち誰の作業かを目視確認することができる。また、担当調剤者はピッキングすべき薬品庫の数を当初に認識することができる。さらに、最初にピッキングすべき薬品庫には点滅表示されるので、調剤者を誘導する効果が得られる。
【0045】
担当調剤者は、調剤者認証用として調剤者IDを格納したRFIDチップを内蔵した色付き指ぬき41を指先に嵌める。そして、その指ぬきを嵌めた手をその指ぬきと同色のランプが点滅している薬品庫の摘みにこれを把持するために接近して、その指ぬきを調剤者ID受信器33に触れると、RFIDチップから読み出したID信号が薬品庫制御装置35を介してレセコン1に送られ、レセコンのデータ処理部13はそのIDを登録されているIDと照合して、調剤者認証処理を行う(P24)。
【0046】
調剤者のIDが認証されると、認証済み信号をそのID信号を送ってきた薬品庫30の薬品庫制御装置35に送る。これに基づき、薬品庫制御装置35は点滅していたランプを点灯に変える(P24)。これにより、調剤者にID認証が正常に行われたことを知らせる。指ぬき41を用いる場合は、調剤者はID認証のために特別の動作を行う必要はなく、点滅している薬品庫から薬剤をピッキングするために指ぬきを嵌めている手をその薬品庫の扉に近づける動作の延長又はその動作途中で、その指ぬき41を調剤者ID受信器33に触れるだけで、自動的にID認証処理が行われる。従って、ID認証を受ける動作によりピッキング作業の効率が低下されることがない。数量表示部NDには、このID認証が正常になされたときに、数量を表示するようにしても良い。
【0047】
次に、認証された調剤者は、当該薬品庫の扉を開けて、その数量表示部に示されている数量の薬剤をピッキングする(P25)。携帯端末を用いるID認証方式でなく、指先に嵌める指ぬき41を用いるので、また、数量表示部により数量が表示されるので、往時の処方箋を片手に持ち、見ながらの作業と異なり、ハンズフリーピッキングを行うことができる。
【0048】
ピッキング後に残った薬剤がその調剤者により取り出された薬品庫に戻され、その薬品庫の扉が閉められる(P26)と、扉開閉センサ34がこれを検知し、閉検知信号が薬品庫制御装置35からレセコン1に送られるので、レセコン1の調剤進行管理部13Eは当該薬品庫の扉が閉じられたことを認識する。好ましい実施例では、この実質的なピッキング終了時は、扉を閉める前にRFIDによる認証操作を行うことが求められる。扉を閉じる手が調剤者ID受信器33に触れることにより、ID認証処理が行われる。また、調剤者はピッキングを終わったときは、その薬品庫のピッキング終了スイッチ32を操作することを求められている。そのピッキング終了スイッチ32を操作すると、終了信号がレセコン1の調剤進行管理部13Eに送られるので、調剤進行管理部13Eは、扉開閉センサ34の閉検知とピッキング終了スイッチ押下(P27)とのアンド条件が満足されたことにより、その薬品庫の点灯していたランプを消灯し、かつ、数量表示部NDの数量表示を終止させる(P27)。
【0049】
一つの処方箋についてピッキングすべき薬品庫が複数である場合は、レセコンの調剤進行管理部13Eは、ピッキング順位格納部の次順位の番地コードを最先順位に繰り上げて、薬品庫制御装置35のランプ制御部35bの作用の下に次にピッキングすべき薬品庫のランプを点灯から点滅に変えるようになっている。その薬品庫に対するピッキングが終了したときにさらに未ピッキングの薬品庫がある場合(P28においてN)は、順次同様に、ピッキングを終了した薬品庫のランプの消灯、次にピッキングをすべき薬品庫のランプの点灯から点滅への変更(P23,P24)が行われる。このようにして、調剤者を逐次、ピッキングすべき次の薬品庫に誘導する。ピッキングすべき薬品庫の順序は、レセコンの調剤進行管理部13Eの演算により、調剤者の移動方向と各薬品庫の位置を考慮して、移動距離が最短になって最大の作業効率が得られるように、決定される。
【0050】
従って、調剤者は自ら効率的な順番を考えずに、自分に指定された同色の点滅するランプを追って作業を続ければよいので、ランプによる誘導により非常に効率的にピッキングを行うことができる。そして、ランプは調剤者の数に応じて複数色で発光し、一定の方向に誘導するので、複数の調剤者が同時にピッキングを行う同時ピッキングや、先の調剤者を追い越してピッキングを続ける追い越しピッキングを行うこともできる。しかも、各薬品庫ごとにID認証が行われるから、同時ピッキング、追い越しピッキングのいずれにおいても、互いに他の調剤者がピッキングすべき薬品庫からピッキングしてしまう誤りがされる虞はない。
【0051】
レセコン1の調剤進行管理部13Eは、各薬品庫のピッキング終了スイッチ32が操作されるたびに、当該処方箋に係る調剤(ピッキング)がすべて完了したか否かを、処方調剤データに基づいて判断する(P28)。完了していない場合(P28においてN)は、ステップP23に戻り、次の薬品庫のランプ制御及び数量表示を行う。これに対し、当該処方箋に係る調剤がすべて完了したと判断したとき(P28においてY)は、最後のランプの点灯を消灯するとともに、最後のランプ又はピッキングした全てのランプを2回点滅させ、同時にブザー3Bを2回短鳴動させて(P29)、当該処方箋に基づく調剤の完了を光と音でその担当調剤者に通知する。
【0052】
一人の患者(一つの処方箋)に対する調剤が完了した後は、次の患者(次の処方箋)に対する調剤処理が行われる(P210)。
調剤管理パソコンには、ピッキン作業に関わる調剤棚の動きがリアルタイムでロギング(記録)される。すなわち、上述した一連のピッキング作業(ランプ点滅、調剤者認証、ランプ点灯、薬品庫扉閉、ピッキング終了、スイッチ押下、ランプ消灯等)において、変化点の入力情報とその時刻を全て記録している。これにより、なんらかのピッキングミスが万が一発生したとしても、どの調剤者の時に、いつの時点で、何の作業時に異常が発生したのかのトレーサビリティを担保しており当該要因に特定できるため、作業改善策が立てやすい。
【0053】
[調剤監査]
調剤済みの薬剤については、調剤責任者により調剤管理パソコン2の支援を受けながら、調剤監査がなされる。調剤監査業務は、図10のフローチャートに示される手順で行われる。すなわち、調剤管理パソコン2の入力部21において調剤責任者のID登録がされる(P31)。調剤責任者は、調剤管理パソコン2の表示部24の処方調剤シート画面にて調剤進捗状況を確認し(P32)、次いで、同画面から調剤完了を確認した後、当該処方薬の内容や服用方法等を示した服薬情報文をその調剤管理パソコン2に接続されているプリンタ6に印字出力させる(P33)。そして、調剤責任者は、最後に、調剤者により調剤された薬剤と処方調剤シート画面とを照合確認して、現物照合を行う(P34)。
【0054】
[薬剤引き渡し]
上記のようにして調剤監査を経た薬剤は、受付窓口において患者に次のようにして引き渡される。この受付窓口における薬剤引き渡し業務のフローを図11のフローチャートに基づいて説明する。すなわち、調剤された薬剤は、受付窓口で薬剤師が患者に見せ、患者の相談に応じながら投薬・服薬指導を行う(P41)。次に、患者に薬剤とともに服薬情報文を手渡す(P42)。そして、レセコン1の入力部11を操作して、薬剤代金の会計処理及び処方箋調剤の一連業務データの保存処理をすることにより、処方箋調剤業務が完結する(P43)。
【0055】
<総括説明>
続いて、上述された本発明によるピッキング方法において重要な事項について総括的に説明する。
[調剤者監視手段]
本発明の目的を達成するためには、薬剤棚に設けた薬品庫にアクセスする調剤者の監視と薬品庫から出し入れする薬剤の監視とが必要である。具体的には、薬剤棚の各薬品庫には表示部とRFIDを読み取るための接触式又は近接式のリーダを付設した。また、調剤者は、調剤者ID発信器を内蔵した色付き指ぬきを指先に装着する。指ぬきはランプと同色のものが同数用意されており、調剤者は自分のIDカラーの指ぬきと同色のランプの調剤作業が容易にできる。調剤者のIDカラーは基本的に固定であり、日々変わるというような紛らわしいことはしないことが好ましい。
【0056】
調剤者ID発信器を埋め込んだ指ぬきを用いる本調剤者監視方式は、調剤者に専用端末を手持ちさせたり、あるいはリストバンド固定型専用端末をつけさせる等の調剤者に負担をかけるものでなく、自然なピッキング動作の中で行われるので、精度の高い監視方式であり、処方箋や端末の手持ち不要なハンズフリーピッキングを実現することができる。
【0057】
このピッキングシステムにおいては、薬品庫にアクセスする調剤者は、最初に指ぬき41を調剤者ID受信器33に触れることが求められる。指ぬきを調剤者ID受信器33に触れると、調剤者ID発信器4から読み取ったIDがレセコン1に送信され、登録されているIDか否かにより、調剤者ID認証が行われる。レセコンが調剤者を認証したことを示す信号を送信すると、調剤進行管理部は、ランプの点滅動作を点灯動作に変えて、レセコンがその指ぬき41を調剤者ID受信器33に触れた者が正しい調剤者であると確認したことを示す。
【0058】
RFIDによる認証操作は、薬品庫から薬剤を取り出す前と薬剤を戻す前に必要な所作である。もし、正しい調剤者以外の調剤者のアクセスを認識した場合は、薬剤棚3に配置されたブザー3Bが短鳴動(0.5秒)し、調剤者へ注意喚起するシステムになっている。正しい調剤者と確認されないまま、薬品庫の扉を不用意に開けると、扉開閉センサ34がこれを検知し、異常操作としてブザーが長鳴動(2秒)して操作者に警告を発する。また、所定の調剤業務時間帯以外に薬品庫の扉が開けられた場合はブザーが連続鳴動して周囲に異常発生を通知する。薬品庫に扉が設けられず、薬剤が入ったボックスやトレー等を薬品庫から直接出入れする場合は、扉開閉センサに代えて、ボックス等の有無検知センサを用いれば、上記と同様の機能を果たすことができる。
【0059】
[ピッキング位置の予告及びピッキング順序の誘導]
調剤進行管理部13Eは、一つの処方箋について調剤作業を行うとき、ピッキングすべき全ての薬品庫のランプを動作させる。その際に、最初にピッキングすべき薬品庫のランプには点滅動作させ、そのほかにピッキングすべき薬品庫がある場合は、それらの薬品庫のランプを点灯(連続点灯)動作させる。そして、最初のピッキングを終了した後、順次、次にピッキングすべき薬品庫のランプの点灯動作を点滅動作に変える。これにより、ランプは、調剤者に対してピッキング位置の予告及びピッキング順序の誘導を行う機能を有する。
各薬品庫に、薬剤棚において同時に調剤作業が可能な最大調剤者数と等しい数のランプを備え、それぞれのランプを各調剤者に指定された色で色分けをするので、複数の調剤者が同時にピッキング作業を行う場合も、それぞれ自分に指定された色のランプによる順序誘導に従って、互いに紛れることなく、ピッキング作業を遂行することができる。
【0060】
[同時ピッキング]
各薬品庫のランプL1〜L5は、例えば、赤・緑・オレンジ・青・白の5色を表示でき、最大5人の調剤者による同時作業を可能としている。また、追い越しピッキングを可能としている。すなわち、調剤者は各々決められた色のランプが点滅する薬品庫から、数量表示部NDに示された量の薬剤をピッキングすればよい。処方箋を見ながらのピッキングに対して、非常に心理的負担が軽減されるとともに、作業が平易になり作業効率向上に寄与する。
【0061】
ランプの同時点滅は、薬剤棚全体でも赤・緑・オレンジ・青・白が各1個所だけである。ランプ色により複数の調剤者の内、誰の作業かを目で認識できる。また、調剤対象のランプの点灯の数で、調剤すべき薬剤の全数がひと目で認識できる。最初に調剤する薬剤はランプ点滅により誘導し、2番目以降の薬剤は点灯表示する。1番目の薬剤調剤が完了すると2番目の薬剤ランプが点滅誘導を開始する。以降も同じ動きをする。複数の薬剤をピッキングする場合のピッキング順位は、全調剤者について薬剤棚の左列から右列又はその逆と定めることが良い。これにより、調剤者は無駄な移動が発生せず、最適な距離移動でのピッキングが可能となるほか、複数の調剤者は衝突することなく、円滑に同時ピッキング又は追い越しピッキングを行うことができる。
【0062】
[薬剤出し入れ管理手段]
薬品庫から薬剤を取り出し、調剤して残り薬剤を元の薬品庫に戻し薬品庫の扉を閉めると、扉開閉センサ34が閉扉を検知する。さらに、ピッキング終了スイッチ32を押下すると該薬剤のピッキング終了をレセコン1が認識して、当該薬品庫の表示部31の表示(ランプ及び数量表示部)を全て消灯する。(1種類の薬剤ピッキング正常終了)
【0063】
もし、RFIDによる認証操作をしないまま誤って扉を閉めた場合は、異常操作としてブザーが例えば0.5秒間程度、短鳴動するともに、数量表示部NDが点滅表示に変わり、注意を喚起する。従って、取り出した薬剤の残りを元の薬品庫に戻し忘れることが防止される。この場合は、扉を開けることにより点滅表示が点灯表示に復旧する。そこで、その後正しい認証操作をし、その後に扉を閉めればよい。
【0064】
薬剤棚の各薬品庫の扉に電子錠を設けた場合は、薬品庫から薬剤を取り出す前にRFIDによる認証操作をする時に認証されたときは電子錠は解錠され、薬剤を戻す前にRFIDによる認証操作をする時に認証されたときは扉が閉められた後に電子錠が施錠されるように構成される。
【0065】
レセコン1は処方箋に従い、次の薬剤ピッキング指示のため当該のランプを点滅させて、調剤者へ通知する。すなわち、レセコンは調剤者へ薬剤1種類毎に調剤指示し、正常完了を確認しながら次の指示を出す仕組みになっている。すなわち、同一調剤者に対して2個以上のランプが点滅することはなく(現在のピッキングを正常終了するまでは、次の薬剤ピッキングに移行させない)、調剤者を簡明に作業誘導できるので、ピッキングミスを低減し、作業精度が向上する。
また、一つの処方箋に対するピッキングの開始時点と終了時点にブザーを2回短鳴動させることにより、視覚に頼りがちな薬剤ピッキング環境の中でピッキングの開始と終了を音声により明確に認識することができる。これは作業効率の向上に資する。
【0066】
[トレーサビリティ]
さらに、レセコン1では、ピッキング作業全体における受付番号・患者名・調剤者名・薬剤名・薬剤毎の調剤時刻・ID認証時刻・薬品庫扉閉時刻等の調剤履歴記録をロギングする機能を有しており、ピッキング業務に関わるトレーサビリティを担保している。
また、図4に例示されたように、処方調剤シート画面において5人分の調剤進捗状況が一目で分る工夫がされている。
図4に示された処方調剤シート画面には、表示項目として、5つの処方箋A〜Eについて、処方箋入力者氏名、受付番号、受付時間、処方箋発行病院名、処方箋番号、患者ID、保険番号、患者氏名、生年月日、年齢、性別、処方内容としての薬剤名(又は薬剤コード)、調剤者氏名、調剤責任者氏名、調剤開始時刻、調剤完了時刻、調剤監査結果、及び患者への薬剤手渡し時刻が表示され、それぞれの処方箋に対応して、入力内容が表示される。調剤者氏名の欄には、登録された調剤者5人の氏名とそれぞれのIDカラー(赤・緑・オレンジ・青・白)が表示されている。
そして、各処方箋に対する調剤進捗状況は、次のように表示されている。すなわち、
処方箋Aについては、ピッキング完了、調剤監査終了、患者への薬剤手渡し済み。つまり、処方箋Aのための一連の調剤業務が完了したことが示されている。
処方箋Bについては、ピッキング完了、現在調剤監査中。
処方箋Cについては、ピッキング作業中。
処方箋Dについては、処方箋入力完了。調剤責任者が本処方箋の調剤者として神崎早苗(IDカラーは青)を指定。なお、調剤者が入力されると、自動的に調剤開始時間が表示される。
処方箋Eについては、処方箋入力中。なお、入力が完了すると、調剤者氏名欄(所定の色付き)が点滅して、調剤者の指定入力が誘導される。
また、処方内容欄の「薬禁」又は「服情」のアイコンをクリックすることにより、薬歴禁忌情報シート又は服薬情報文の画面を開くことができる。
これにより、調剤責任者は、調剤された薬剤と処方箋(処方調剤シート)との現物による調剤監査だけではなく、調剤作業途上でのチェックもできる。すなわち、本発明により、調剤作業自動チェックの他に、調剤責任者による調剤薬剤と処方箋との現物監査を行う仕組みができて、ダブルチェック(調剤監査の二重化)システムが構築できた。
【0067】
上記実施例においては、調剤者登録、調剤者指定、調剤者認証、処方調剤データに基づくピッキングすべき薬品庫の決定、一つの薬品庫からのピッキング終了後のピッキング順序繰り上げの各機能を、それぞれレセコン1及び調剤管理パソコン2により実現した。これらの機能を実現する部分のみをとらえて、特許請求の範囲においてはこれを調剤支援パソコンと表現した。このような調剤支援パソコンは、レセコン1及び調剤管理パソコン2を用いることに代えて、これらから独立したパソコンとすることも出来ることは多言を要しない。この場合の調剤支援パソコンの構成は、図12に例示するものとなる。
【0068】
<実施の形態の特長>
上記実施の形態による特長を挙げると、次の通りである。
(1)ピッキングにおいて、調剤者監視及び薬剤監視を同時に実現した。
(2)調剤者監視手段として、RFIDチップ内蔵の指ぬき方式を案出したので、ハンズ フリーピッキングを実現した。従来は、携帯端末を片手に持つか腕に装着してのピッキング作業であった。
(3)ランプの色分け又は点滅速度の差異により、複数調剤者による同時ピッキング及び 追い越しピッキングを可能にし、さらに調剤過誤を大幅に低減させる高精度なピッキングシステムである。
実現手段として、ランプの色分け又は点滅速度の差異による視覚認識と、開始ブザー/終了ブザーの音色又はメロディの違い等による聴覚認識を兼ね備えた、二重化個別調剤者認識方式であるので、調剤者は互いに自己の作業領域を容易に識別して同時ピッキング及び追い越しピッキングができる。
(4)調剤責任者は、調剤管理パソコンによりピッキング作業進捗状況をも確認できる。
(中間監査の実現)
(5)開始ブザー/終了ブザーは、調剤場所の雰囲気や好みにより、各種の単音ブザー音 又はメロディ音から調剤者が選択できる仕組みになっていて、調剤作業環境にも配慮している。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明方法を実施するための薬剤ピッキングシステムの構成を概略的に示す概念図。
【図2】レセコンの構成を示すブロック図。
【図3】調剤管理パソコンの構成を示すブロック図。
【図4】調剤管理パソコンの表示部に表示される処方調剤シート画面の一例を示す図。
【図5】レセコンにおける処方箋入力のフローチャート。
【図6】薬剤棚の一つの薬品庫の拡大正面図。
【図7】薬品庫制御装置の構成を示すブロック図。
【図8】調剤者識別信号発信器の一例を示す斜視図。
【図9】調剤ピッキングのフローチャート。
【図10】調剤監査のフローチャート。
【図11】受付窓口における薬剤引き渡し業務のフローチャート。
【図12】他の実施態様による調剤支援パソコンの機能を示すブロック図。
【符号の説明】
【0070】
R 処方箋
1 レセコン
2 調剤管理パソコン
3 薬剤棚
30,301,302〜30n 薬品庫
31 表示部
L,L1,L2,L3〜Ln ランプ
ND 数量表示部
32 ピッキング終了スイッチ
33 調剤者ID受信器
34 扉開閉センサ
35 薬品庫制御装置
3B ブザー
4 調剤者ID発信器(RFIDチップ)
41 指ぬき

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤棚を構成する、薬剤を種類ごとに区分けして保管する多数の薬品庫のうち、処方箋に記載された薬剤を保管する薬品庫から所定量の薬剤を調剤者が取り出す薬剤ピッキング方法において、
(a)当日ピッキング作業を行う調剤者の識別コードを登録するステップ、
(b)前記登録された調剤者のうち現実にピッキング作業を行う調剤者として指定された調剤者に調剤開始が可能であることを音声で知らせるステップ、
(c)処方箋に基づき入力された処方調剤データを基に、当該薬剤を保管している薬品庫を検索し、検索された薬品庫に設けてある数量表示部にピッキングすべき薬剤の数量を表示するとともに、その薬品庫に設けてある複数のランプのうち前記指定された調剤者の識別コードに対応して予め定められた色で発光するするランプを、最初にピッキングすべき薬品庫のランプは点滅させ、後順位でピッキングすべき薬品庫のすべてのランプは点灯させるステップ、
(d)各薬品庫に設けられた受信器が調剤者の指先に装着した調剤者識別コード発信器から登録されている調剤者識別コードと一致する調剤者識別コードを受信した時、前記点滅させたランプを点灯に変えるステップ、
(e)ランプが点滅から点灯に変えられた薬品庫に設けられたピッキング終了スイッチが操作され、かつ、その薬品庫の扉が閉じられたことを検知したことに基づき、前記点滅から点灯に変えられたランプを消灯するとともに、前記数量表示部の表示を消去し、当該処方箋の処方調剤データに基づきピッキングすべき薬品庫がほかにある場合には、点灯させてあるランプのうち次順位でピッキングすべき薬品庫のランプを順次点灯から点滅に変えるステップからなり、
(f)前記ランプが点灯から点滅に変えられる薬品庫の順序を、調剤者がピッキングするための移動距離が最短距離となるように決定することを特徴とする薬剤ピッキング方法。
【請求項2】
ランプが点灯から点滅に変えられる薬品庫の順序を、薬剤棚の一端の薬品庫の列から他端の薬品庫の列の方向に移動するように決めることを特徴とする請求項1に記載の薬剤ピッキング方法。
【請求項3】
ランプを点滅から点灯に変えた後、そのランプが設けてある薬品庫の受信器がそのランプを点滅から点灯に変える前に受信した調剤者識別コードと同じ調剤者識別コードを再び受信する前にその薬品庫の扉が閉じられたことを検知したときは、警報音を出すことを特徴とする請求項1に記載の薬剤ピッキング方法。
【請求項4】
薬剤棚と、調剤支援パソコンと、調剤者識別コード発信器とからなり、
前記薬剤棚は、薬剤を種類ごとに区分けして保管する多数の薬品庫を有し、
前記各薬品庫には、互いに異なる色で発光するランプと、前記調剤支援パソコンから与えられる制御信号によりそのランプの点滅、点灯又は消灯を制御するランプ制御部と、ピッキングすべき薬剤の数量を表示する数量表示器と、前記調剤者識別コード発信器を触れ又は近接させたときに調剤者識別コードを受信して前記調剤支援パソコンに送る調剤者識別コード受信器と、薬品庫から所定数量の薬剤をピッキングした後に操作されるピッキング終了スイッチと、当該薬品庫の扉の開閉を検知する扉開閉センサとが設けてあり、
前記調剤支援パソコンは、ピッキングを行う調剤者の識別コードを登録する調剤者登録手段と、前記薬剤棚のいずれかの薬品庫の調剤者識別コード受信器から送られてくる調剤者識別コードを登録された調剤者識別コードと照合する調剤者認証手段と、処方箋に基づき入力された処方調剤データを基に当該薬剤を収容している薬品庫を検索して、ピッキングすべき薬品庫を決定する薬品庫決定手段と、決定された薬品庫から調剤者がピッキングするための移動距離が最短距離となるようにピッキングすべき薬品庫の順序を決定するピッキング順序決定手段と、最初にピッキングすべき薬品庫のピッキング終了スイッチからの終了信号に基づきピッキング順序を1薬品庫ずつ順次繰り上げるピッキング順序繰り上げ手段と、前記薬品庫決定手段により決定されたピッキングすべき薬品庫に調剤者識別コード、ピッキング順序データ及び薬剤数量データを送る送信手段とを有し、
前記各薬品庫のランプ制御部は、受信した前記調剤者識別コードに基づいて当該識別コードに対応する色のランプを動作させ、かつ、受信したピッキング順序データが最先順位データであるときはそのランプを点滅させ、後順位データであるときはそのランプを点灯させ、前記調剤者認証手段により調剤者が認証された旨の信号を受けたときは、点滅させてあるランプを点灯に変え、ピッキング終了信号を受けた時はその点灯しているランプを消灯するものである薬剤ピッキング装置。
【請求項5】
ピッキング順序決定手段は、ランプが点灯から点滅に変えられる薬品庫のロケーション表示を、薬剤棚の一端の薬品庫の列から他端の薬品庫の列の方向に移動するものであることを特徴とする請求項4に記載の薬剤ピッキング装置。
【請求項6】
調剤者識別コード発信器はRFIDチップを内蔵した指ぬきであり、薬品庫に設けられる調剤者識別コード受信器はRFIDリーダである請求項4又は5に記載の薬剤ピッキング装置。
【請求項7】
指ぬきは薬品庫のいずれかのランプの発光色と同じ色を有することを特徴とする請求項6に記載の薬剤ピッキング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−289536(P2007−289536A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122819(P2006−122819)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000146663)株式会社新興製作所 (60)
【Fターム(参考)】