説明

蛍光体を用いた発光器具

【課題】 青色および赤色の蛍光体粉体の用途を提供すること。
【解決手段】 330〜500nmの波長の光を発する発光光源と、蛍光体とを含む照明器具において、上記蛍光体は、金属元素M(ただし、Mは、Mn、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素)と、Alと、Oと、Nと、元素A(ただし、Aは、C、Si、Ge、Sn、B、Ga、In、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Gd、Lu、Ti、Zr、Hf、Ta、Wから選ばれる1種または2種以上の元素)とを含む化合物を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AlN結晶またはAlN固溶体結晶を母体結晶とする蛍光体の用途に関する。さらに詳細には、該用途は該蛍光体の有する性質、すなわち400nm以上700nm以下、中でも450nm以上520nm以下の波長にピークを持つ光を発する特性を利用した照明器具および画像表示装置の発光器具に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体は、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)、白色発光ダイオード(LED)などに用いられている。これらのいずれの用途においても、蛍光体を発光させるためには、蛍光体を励起するためのエネルギーを蛍光体に供給する必要があり、蛍光体は真空紫外線、紫外線、電子線、青色光などの高いエネルギーを有した励起源により励起されて、可視光線を発する。
【0003】
しかしながら、蛍光体は前記のような励起源に曝される結果、蛍光体の輝度が低下するという問題があり、輝度低下のない蛍光体が求められている。そのため、従来のケイ酸塩蛍光体、リン酸塩蛍光体、アルミン酸塩蛍光体、硫化物蛍光体などの蛍光体に代わり、輝度低下の少ない蛍光体として、サイアロン蛍光体、酸窒化物蛍光体、窒化物蛍光体が提案されている。
【0004】
このサイアロン蛍光体の一例は、概略以下に述べるような製造プロセスによって製造される。まず、窒化ケイ素(Si)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化ユーロピウム(Eu)、を所定のモル比に混合し、1気圧(0.1MPa)の窒素中において、1700℃の温度で1時間保持してホットプレス法により焼成して製造される(例えば、特許文献1参照)。このプロセスで得られるEuイオンを付活したαサイアロンは、450から500nmの青色光で励起されて550から600nmの黄色の光を発する蛍光体となることが報告されている。また、β型サイアロンに希土類元素を添加した蛍光体(特許文献2参照)が知られており、Tb、Yb、Agを付活したものは525nmから545nmの緑色を発光する蛍光体となることが示されている。さらに、β型サイアロンにEu2+を付活した緑色の蛍光体(特許文献3参照)が知られている。
【0005】
酸窒化物蛍光体の一例は、JEM相やLaSi11相を母体とするものがある。JEM相(LaAl(Si6−zAl)N10−z)を母体結晶として、Ceを付活させた青色蛍光体(特許文献4参照)、LaSi11を母体結晶としてCeを付活させた青色蛍光体(特許文献5参照)が知られている。
【0006】
窒化物蛍光体の一例は、CaAlSiNを母体結晶としてEuを付活させた赤色蛍光体(特許文献6参照)が知られている。また、AlNを母体結晶とする蛍光体として、非特許文献1には、AlN:Eu3+を室温でマグネトロンスパッタリング法により非晶質セラミックス薄膜を合成し、580nm〜640nmに発光ピークを有するオレンジ色あるいは赤色蛍光体が得られたと報告されている。非特許文献2には、非晶質AlN薄膜にTb3+を付活した蛍光体が電子線励起で543nmにピークを持つ緑色に発光すると報告されている。非特許文献3にはAlN薄膜にGd3+を付活した蛍光体が報告されている。しかし、これらのAlN基の蛍光体はいずれも非晶質の薄膜であり、白色LEDやディスプレイの用途には不向きであった。
【0007】
【特許文献1】特開2002−363554号公報
【特許文献2】特開昭60−206889号公報
【特許文献3】特願2004−070894号(特開2005−255895号公報)
【特許文献4】特願2003−208409号
【特許文献5】特願2003−346013号(特開2005−112922号公報)
【特許文献6】特願2004−41502号(特開2005−235934号公報)
【非特許文献1】Meghan L. Caldwell、et al、MRS Internet Journal Nitride Semiconductor Research、vol.6、No.13、p.1〜8、(2001)
【非特許文献2】H.H.Richardson、et al、Applied Physics Letters、vol.80、No.12、p.2207〜2209、(2002)
【非特許文献3】U.Vetter、et al、Physics Letters、vol.83、No.11、p.2145〜2147、(2003)
【0008】
しかしながら、紫外LEDを励起源とする白色LEDやプラズマディスプレイなどの用途には、耐久性に優れ高い輝度を有するさまざまな色の蛍光体が求められている。青色に発光する窒化物あるいは酸窒化物蛍光体としては、JEM相およびLaSi11を母体とする蛍光体が報告されているが、輝度が十分とは言えず、より高輝度の蛍光体が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、このような要望に応えようとするものであり、従来の希土類付活サイアロン蛍光体より発光特性に優れ、従来の酸化物蛍光体よりも耐久性に優れる蛍光体粉体の用途を提供しようというものである。なかでも青色および赤色の蛍光体粉体の用途を提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らにおいては、かかる状況の下で、330〜500nmの波長の光を発する発光光源と、光源からの光により励起される蛍光体とを有する照明器具において、上記蛍光体として、金属元素M(ただし、Mは、Mn、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素)と、Alと、Oと、Nと、元素A(ただし、Aは、C、Si、Ge、Sn、B、Ga、In、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Gd、Lu、Ti、Zr、Hf、Ta、Wから選ばれる1種または2種以上の元素)とを含有する化合物を使用することにより、発光輝度に優れた照明器具となることを見出した。とりわけ、上記蛍光体としてAlN結晶またはAlN固溶体結晶に、少なくとも、金属元素M(ただし、Mは、Mn、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素)および酸素が固溶してなる酸窒化物について鋭意研究を重ねた結果、特定の組成領域範囲、特定の固溶状態および特定の結晶相を有するものは高い輝度を有し、さらに特定の組成範囲のものは450nm以上520nm以下の範囲の波長に発光ピークを持つ青色蛍光体となることを見出した。また、別の特定の組成範囲のものは580nm以上650nm以下の範囲の波長に発光ピークをもつ赤色蛍光体となることを見いだした。
【0011】
非特許文献1〜3によれば、AlN非晶質薄膜にEu3+、Tb3+、Gd3+を付活した薄膜が電子線励起で発光することが報告されているが、酸素を含むAlN結晶またはAlN固溶体結晶を母体とする無機化合物を蛍光体として使用しようと検討されたことはなかった。すなわち、特定の金属元素と酸素を固溶させたAlNまたはAlN固溶体結晶が紫外線および可視光や電子線またはX線で励起され高い輝度の発光を有する蛍光体として使用し得るという重要な発見は、本発明者らにおいて初めて見出した。本発明者は、この知見を基礎にしてさらに鋭意研究を重ねた結果、以下に記載する構成を講ずることによって特定波長領域で高い輝度の発光現象を示す蛍光体を用いた照明器具、画像表示装置を提供することに成功した。その構成は、以下に記載のとおりである。
【0012】
(1) 330〜500nmの波長の光を発する発光光源と、前記発光光源からの光により励起される蛍光体とを有する照明器具において、前記蛍光体は、金属元素M(ただし、Mは、Mn、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素)と、Alと、Oと、Nと、元素A(ただし、Aは、C、Si、Ge、Sn、B、Ga、In、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Gd、Lu、Ti、Zr、Hf、Ta、Wから選ばれる1種または2種以上の元素)とを含有する化合物を有することを特徴とする照明器具。
(2)前記発光光源は、330〜420nmの波長を有する光を発するLEDまたはLDであり、前記蛍光体は、前記光により520nm〜550nmの波長に発光ピークを持つ緑色光を発する緑色蛍光体と、前記光により600nm〜700nmの波長に発光ピークを持つ赤色光を発する赤色蛍光体とをさらに有し、前記化合物による青色光と前記緑色光と前記赤色光との混合により白色光を発するようにしてあることを特徴とする前記(1)項に記載の照明器具。
(3)前記発光光源は、330〜420nmの波長を有する光を発するLEDまたはLDであり、前記蛍光体は、前記光により520nm〜550nmの波長に発光ピークを持つ緑色光を発する緑色蛍光体と、前記光により550nm〜600nmの波長に発光ピークを持つ黄色光を発する黄色蛍光体と、前記光により600nm〜700nmの波長に発光ピークを持つ赤色光を発する赤色蛍光体とをさらに有し、前記化合物による青色光と前記緑色光と前記黄色光と前記赤色光との混合により白色光を発するようにしてあることを特徴とする前記(1)項に記載の照明器具。
(4)前記緑色蛍光体は、Euを付活剤としたβ−サイアロンであることを特徴とする前記(2)項および(3)項に記載の照明器具。
(5)前記赤色蛍光体は、Euを付活剤としたCaAlSiNまたはCaAlSiN固溶体結晶であることを特徴とする前記(2)項および(3)項に記載の照明器具。
(6)前記黄色蛍光体は、Euを付活剤としたCa−αサイアロンであることを特徴とする前記(3)項に記載の照明器具。
(7)前記化合物は、AlN結晶またはAlN固溶体結晶であることを特徴とする前記(1)〜(6)項のいずれかに記載の照明器具。
(8)前記AlN結晶またはAlN固溶体結晶は、ウルツ型AlN結晶構造、または、2Hδ、27R、21R、12H、15Rおよび8Hから選ばれるいずれかの結晶構造を持つことを特徴とする前記(7)項に記載の照明器具。
(9)前記化合物は、CuKα線を用いたX線回折による測定において、2θ値が少なくとも、32度以上35度以下、および、58度以上62度以下の範囲に、前記AlN結晶またはAlN固溶体結晶由来の回折ピークを持つことを特徴とする前記(7)項に記載の照明器具。
(10)前記32度以上35度以下の回折ピークが前記AlN結晶またはAlN固溶体結晶の(100)面由来であり、前記58度以上62度以下の回折ピークが前記AlN結晶またはAlN固溶体結晶の(110)面由来であることを特徴とする前記(9)項に記載の照明器具。
(11)前記化合物は、組成式MaAlbcde(式中、a+b+c+d+e=1とする)で示され、
0.00001≦ a ≦0.1・・・・・・・・・・(i)
0.4≦ b ≦0.55・・・・・・・・・・・・・(ii)
0.001≦ c ≦0.1・・・・・・・・・・・・(iii)
0.4≦ d ≦0.55・・・・・・・・・・・・・(iv)
0.001≦ e ≦0.1・・・・・・・・・・・・(v)
以上の条件を満たす組成で表されることを特徴とする前記(1)項に記載の照明器具。
(12)前記化合物は、前記元素Aとして少なくともSiを含有し、前記金属元素Mとして少なくともEuを含有し、Euが2価であり、発光ピーク波長が450nm以上520nm以下の範囲であることを特徴とする前記(1)項に記載の照明器具。
(13)前記化合物は、前記金属元素Mとして少なくともMnを含有し、発光ピーク波長が560nm以上650nm以下の範囲であることを特徴とする前記(1)項に記載の照明器具。
(14)前記蛍光体は、前記AlN結晶またはAlN固溶体結晶晶と異なる結晶相あるいはアモルファス相をさらに含み、前記AlN結晶またはAlN固溶体結晶の含有量は10質量%以上であることを特徴とする前記(7)項に記載の照明器具。
(15)前記異なる結晶相あるいはアモルファス相が導電性を持つ無機物質であることを特徴とする前記(14)項に記載の照明器具。
(16)前記導電性を持つ無機物質が、Zn、Ga、In、Snから選ばれる1種または2種以上の元素を含有する酸化物、酸窒化物、または窒化物、あるいはこれらの混合物であることを特徴とする前記(15)項に記載の照明器具。
(17)電子線、電場、真空紫外線、または紫外線による励起源と、前記励起源からの励起光により励起される蛍光体とを有する画像表示装置において、前記蛍光体は、金属元素M(ただし、Mは、Mn、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素)と、Alと、Oと、Nと、元素A(ただし、Aは、C、Si、Ge、Sn、B、Ga、In、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Gd、Lu、Ti、Zr、Hf、Ta、Wから選ばれる1種または2種以上の元素)とを含有する化合物を有することを特徴とする。
(18)前記画像表示装置が、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)のいずれかであることを特徴とする前記(17)項に記載の画像表示装置。
(19)前記化合物は、AlN結晶またはAlN固溶体結晶であることを特徴とする前記(17)項に記載の画像表示装置。
(20)前記AlN結晶またはAlN固溶体結晶は、ウルツ型AlN結晶構造、または、2Hδ、27R、21R、12H、15Rおよび8Hから選ばれるいずれかの結晶構造を持つことを特徴とする前記(19)項に記載の画像表示装置。
(21)前記化合物は、CuKα線を用いたX線回折による測定において、2θ値が少なくとも、32度以上35度以下、および、58度以上62度以下の範囲に、前記AlN結晶またはAlN固溶体結晶由来の回折ピークを持つことを特徴とする前記(20)項に記載の画像表示装置。
(22)前記32度以上35度以下の回折ピークが前記AlN結晶またはAlN固溶体結晶の(100)面由来であり、前記58度以上62度以下の回折ピークが前記AlN結晶またはAlN固溶体結晶の(110)面由来であることを特徴とする前記(21)項に記載の画像表示装置。
(23)前記化合物は、組成式MaAlbcde(式中、a+b+c+d+e=1とする)で示され、
0.00001≦ a ≦0.1・・・・・・・・・・(i)
0.4≦ b ≦0.55・・・・・・・・・・・・・(ii)
0.001≦ c ≦0.1・・・・・・・・・・・・(iii)
0.4≦ d ≦0.55・・・・・・・・・・・・・(iv)
0.001≦ e ≦0.1・・・・・・・・・・・・(v)
以上の条件を満たす組成で表されることを特徴とする前記(17)項に記載の画像表示装置。
(24)前記化合物は、前記元素Aとして少なくともSiを含有し、前記金属元素Mとして少なくともEuを含有し、Euが2価であり、発光ピーク波長が450nm以上520nm以下の範囲であることを特徴とする前記(17)項に記載の画像表示装置。
(25)前記化合物は、前記金属元素Mとして少なくともMnを含有し、発光ピーク波長が560nm以上650nm以下の範囲であることを特徴とする前記(17)項に記載の画像表示装置。
(26)前記蛍光体は、前記AlN結晶またはAlN固溶体結晶と異なる結晶相あるいはアモルファス相をさらに含み、前記AlN結晶またはAlN固溶体結晶の含有量は10質量%以上であることを特徴とする前記(19)項に記載の画像表示装置。
(27)前記異なる結晶相あるいはアモルファス相が導電性を持つ無機物質であることを特徴とする前記(26)項に記載の画像表示装置。
(28)前記導電性を持つ無機物質が、Zn、Ga、In、Snから選ばれる1種または2種以上の元素を含有する酸化物、酸窒化物、または窒化物、あるいはこれらの混合物であることを特徴とする前記(27)項に記載の画像表示装置。
(29)前記化合物は青色蛍光体であり、前記励起源は電子線であることを特徴とする前記(24)項に記載の画像表示装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明の照明器具は、金属元素M(ただし、Mは、Mn、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素)と、Alと、Oと、Nと、元素A(ただし、Aは、C、Si、Ge、Sn、B、Ga、In、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Gd、Lu、Ti、Zr、Hf、Ta、Wから選ばれる1種または2種以上の元素)とを含有する化合物を蛍光体として用いることにより、発光輝度に優れる。とりわけ、蛍光体が、AlN結晶またはAlN固溶体結晶相を主成分として含有していることにより、従来のサイアロンや酸窒化物蛍光体と比べて400nm〜700nmの波長域での発光強度が高く、中でもEuを付活したものは青色や緑色の蛍光体として、Mnを付活したものは赤色蛍光体として優れている。励起源に曝された場合でも、この蛍光体は、輝度が低下することなく、VFD、FED、PDP、CRT、白色LEDなどとして安定に作動し、使用しえるという格別の作用効果が奏せられ、有用な蛍光体の用途を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例に基づいて詳しく説明する。
【0015】
本発明の蛍光体は、AlN結晶またはAlN固溶体結晶を主成分として含んでなるものである。AlN結晶はウルツ型の結晶構造を持つ結晶である。また、AlN固溶体結晶とはAlNにケイ素や酸素が添加された結晶であり、
2Hδ:Si2.40Al8.600.6011.40
27R:Al:1Al−7AlN
21R:Al:1Al−5AlN
12H:SiAl:1SiO−5AlN
15R:SiAl:1SiO−4AlN
8H:Si0.5Al3.52.52.5:0.5SiO−0.5Al−2.5AlNなどの結晶である。本発明ではこれらの結晶を母体結晶として用いることができる。AlN結晶またはAlN固溶体結晶は、X線回折や中性子線回折により同定することができ、純粋なAlN結晶またはAlN固溶体結晶と同一の回折を示す物質の他に、構成元素が他の元素と置き換わることにより格子定数が変化したものも本発明の一部である。
【0016】
本発明では、AlN結晶またはAlN固溶体結晶を母体結晶として、これに金属元素Mと酸素が固溶することにより優れた光学特性を持つ蛍光体となる。ここで、金属元素Mは光学活性なイオンとなる元素であり、Mn、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素であり、紫外線や電子線で励起することにより、これらの元素が発光して、400nmから700nmの範囲の波長にピークを持つ蛍光を発光する蛍光体となる。なかでも、Euを含むものは特に優れた青色から緑色の光を放つ高輝度蛍光体となる。また、Mnを含むものは赤色の高輝度蛍光体となる。酸素の効果に関しては、Mと酸素との組み合わせで母体結晶に固溶しやすくなり、結果として蛍光体の輝度向上に寄与していると考えられる。
【0017】
本発明の実施形態のひとつとして、少なくとも、金属元素Mと、Alと、Oと、Nと、元素A(ただし、Aは、C、Si、Ge、Sn、B、Ga、In、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Gd、Lu、Ti、Zr、Hf、Ta、Wから選ばれる1種または2種以上の元素)を含有する蛍光体がある。元素Aを含むことにより電荷が補償され、MとOとが固溶した結晶構造が安定化することにより、蛍光体の輝度が向上する。なかでも、元素AがSiである無機化合物は特に高輝度の蛍光体となる。
【0018】
AlN結晶またはAlN固溶体結晶の含有割合が高く、輝度が高い蛍光体が得られる組成としては、次の範囲の組成が良い。M(ただし、Mは、Mn、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素)、A(ただし、Aは、C、Si、Ge、Sn、B、Ga、In、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Gd、Lu、Ti、Zr、Hf、Ta、Wから選ばれる1種または2種以上の元素)および、Al、O、Nの元素を含有し、組成式MAl(式中、a+b+c+d+e=1とする)で示され、パラメータ、a、b、c、d、eは
0.00001≦ a ≦0.1・・・・・・・・・・(i)
0.4≦ b ≦0.55・・・・・・・・・・・・・(ii)
0.001≦ c ≦0.1・・・・・・・・・・・・(iii)
0.4≦ d ≦0.55・・・・・・・・・・・・・(iv)
0.001≦ e ≦0.1・・・・・・・・・・・・(v)
以上の条件を全て満たす値から選ばれる。aは発光中心となる元素Mの添加量を表し、原子比で0.00001以上0.1以下となるようにするのがよい。
【0019】
a値が0.00001より小さいと発光中心となるMの数が少ないため発光輝度が低下する。0.1より大きいとMイオン間の干渉により濃度消光を起こして輝度が低下する。bは母体結晶を構成するAl元素の量であり、原子比で0.4以上0.55以下となるようにするのがよい。
【0020】
b値がこの範囲をはずれると結晶中の結合が不安定になりAlN結晶またはAlN固溶体結晶以外の結晶相の生成割合が増え、発光強度が低下する。
【0021】
cはA元素の量であり、原子比で0.001以上0.1以下となるようにするのがよい。cが0.001より小さいと電荷補償の効果が少なく、MとOの固溶が阻害されて輝度が低下する。cが0.1より大きいとAlN結晶またはAlN固溶体結晶以外の結晶相の生成割合が増え、発光強度が低下する。
【0022】
dは窒素の量であり、原子比で0.4以上0.55以下となるようにするのがよい。d値がこの範囲をはずれるとAlN結晶またはAlN固溶体結晶以外の結晶相の生成割合が増え、発光強度が低下する。
【0023】
eは酸素の量であり、原子比で0.001以上0.1以下となるようにするのがよい。eが0.001より小さいとMの固溶が阻害されて輝度が低下する。eが0.1より大きいとAlN固溶体結晶以外の結晶相の生成割合が増え、発光強度が低下する。
【0024】
本発明の実施形態のひとつとして、MがEuであり、AがSiである蛍光体がある。なかでも、組成式EuAlSi(式中、a+b+c+d+e=1とする)で示され、パラメータ、a、b、c、d、eが、
0.00001≦ a ≦0.1・・・・・・・・・・(i)
0.4≦ b ≦0.55・・・・・・・・・・・・・(ii)
0.001≦ c ≦0.1・・・・・・・・・・・・(iii)
0.4≦ d ≦0.55・・・・・・・・・・・・・(iv)
0.001≦ e ≦0.1・・・・・・・・・・・・(v)
以上の条件を満たすものは、ピーク波長が450nm以上520nm以下の範囲の青色の蛍光体となる。ここで、Euは2価のEuとして発光に寄与する。
【0025】
本発明の実施形態の一つとして、MがMnである蛍光体は赤色の蛍光体となる。なかでも、組成式MnAlSi(式中、a+b+c+d+e=1とする)で示され、パラメータ、a、b、c、d、eが、
0.00001≦ a ≦0.1・・・・・・・・・・(i)
0.4≦ b ≦0.55・・・・・・・・・・・・・(ii)
0.001≦ c ≦0.1・・・・・・・・・・・・(iii)
0.4≦ d ≦0.55・・・・・・・・・・・・・(iv)
0.001≦ e ≦0.1・・・・・・・・・・・・(v)
以上の条件を満たすものは、ピーク波長が560nm以上650nm以下の範囲の赤色の蛍光体となる。
【0026】
MがMnである蛍光体は、長残光特性を有する。長残光とは励起源の照射を止めた後でも発光が続く現象であり、夜間や停電時の誘導灯や標識などに適した蛍光体である。本発明のMnを含む蛍光体は、励起光の照射を止めた後にも1/10以上の発光強度を維持する時間である残光時間が5秒以上である特性を有する。
【0027】
本発明の蛍光体を粉体として用いる場合は、樹脂への分散性や粉体の流動性などの点から平均粒径が0.1μm以上20μm以下が好ましい。また、粉体をこの範囲の単結晶粒子とすることにより、より発光輝度が向上する。
【0028】
本発明の蛍光体は、100nm以上500nm以下の波長を持つ紫外線または可視光で励起すると、効率よく発光するので好ましい。本発明の蛍光体は、電子線またはX線によっても励起することができる。
【0029】
本発明の蛍光体に励起源を照射することにより波長400nmから700nmの範囲の波長にピークを持つ蛍光を発光する。なかでも波長420nmから550nmの範囲の波長にピークを持つシャープな形状のスペクトルでは発光する色は、CIE色度座標上の(x、y)値で、0≦x≦0.3、0.1≦y≦0.95の値をとり、色純度が良い青、緑色である。
【0030】
本発明では、蛍光発光の点からは、その構成成分たるAlN結晶またはAlN固溶体結晶は、高純度で極力多く含むこと、できれば単相から構成されていることが望ましいが、特性が低下しない範囲で他の結晶相あるいはアモルファス相との混合物から構成することもできる。この場合、AlN結晶またはAlN固溶体結晶の含有量が10質量%以上、より好ましくは50質量%以上であることが高い輝度を得るために望ましい。本発明において主成分とする範囲は、AlN結晶またはAlN固溶体結晶の含有量が少なくとも10質量%以上である。含有量の割合はX線回折測定を行い、AlN結晶またはAlN固溶体結晶相とそれ以外の結晶相のそれぞれの相の最強ピークの強さの比から求めることができる。
【0031】
他の結晶相あるいはアモルファス相との混合物から構成される蛍光体において、導電性を持つ無機物質との混合物とすることができる。VFDやPDPなどにおいて、本発明の蛍光体を電子線で励起する場合には、蛍光体上に電子が溜まることなく外部に逃がすために、ある程度の導電性を持つことが好ましい。導電性物質としては、Zn、Ga、In、Snから選ばれる1種または2種以上の元素を含む酸化物、酸窒化物、または窒化物、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。なかでも、酸化インジウムとインジウム−スズ酸化物(ITO)は、蛍光強度の低下が少なく、導電性が高いため好ましい。
【0032】
本発明のEuを含む蛍光体は青、緑色に発色するが、黄色、赤色などの他の色との混合が必要な場合は、必要に応じてこれらの色を発色する無機蛍光体を混合することができる。
【0033】
本発明の蛍光体は、組成により励起スペクトルと蛍光スペクトルが異なり、これを適宜選択組み合わせることによって、さまざまな発光スペクトルを有してなるものに設定することができる。その態様は、用途に基づいて必要とされるスペクトルに設定すればよい。
【0034】
本発明の蛍光体の製造方法は特に規定しないが、一例として次の方法を挙げることができる。
【0035】
金属化合物の混合物であって焼成することにより、M、A、Si、Al、O、N、からなる組成物(ただし、Mは、Mn、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素であり、Aは、C、Si、Ge、Sn、B、Ga、In、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Gd、Lu、Ti、Zr、Hf、Ta、Wから選ばれる1種または2種以上の元素)を構成しうる原料混合物を、窒素雰囲気中において1500℃以上2200℃以下の温度範囲で焼成することにより本発明の蛍光体を製造することができる。最適焼成温度は組成により異なるので一概に規定できないが、MAlSi系(M=Eu、Ce、Yb)では1820℃以上2000℃以下の温度範囲で、高輝度の蛍光体が得られる。焼成温度が1500℃より低いと、発光中心となる元素MがAlN結晶またはAlN固溶体結晶中に固溶することなく酸素含有量が高い粒界相中に残留するため、酸化物ガラスをホストとする発光となって、光輝度の蛍光は得られない。また、焼成温度が2200℃以上では特殊な装置が必要となり工業的に好ましくない。
【0036】
非特許文献1〜3は室温での合成であり、非晶質の中に元素Mが固溶する。即ち、非特許文献1では同じEuを付活元素とした場合でも発光波長は600nm以上の赤色であり、本発明の蛍光体の発光波長である450〜520nmとは本質的に異なる。
【0037】
金属化合物の混合物は、Al、MおよびAの金属、酸化物、炭酸塩、窒化物、または酸窒化物から選ばれるMを含む金属化合物の混合物がよい。AがSiである場合は、特に窒化ケイ素と、窒化アルミニウムと、Mの酸化物の混合物がよい。これらは、反応性に富み、高純度な合成物を得ることができることに加えて、工業原料として生産されており入手しやすい利点がある。
【0038】
焼成時の反応性を向上させるために、必要に応じて金属化合物の混合物に、焼成温度以下の温度で液相を生成する無機化合物を添加することができる。無機化合物としては、反応温度で安定な液相を生成するものが好ましく、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Alの元素のフッ化物、塩化物、ヨウ化物、臭化物、あるいはリン酸塩が適している。さらに、これらの無機化合物は、単体で添加するほか2種以上を混合してもよい。なかでも、フッ化カルシウムおよびフッ化アルミニウムは合成の反応性を向上させる能力が高いため適している。無機化合物の添加量は特に規定しないが、出発原料である金属化合物の混合物100重量部に対して、0.1重量部以上10重量部以下で、特に効果が大きい。0.1重量部より少ないと反応性の向上が少なく、10重量部を越えると蛍光体の輝度が低下する。これらの無機化合物を添加して焼成すると、反応性が向上して、比較的短い時間で粒成長が促進されて粒径の大きな単結晶が成長し、蛍光体の輝度が向上する。
【0039】
窒素雰囲気は0.1MPa以上100MPa以下の圧力範囲のガス雰囲気がよい。より好ましくは、0.5MPa以上10MPa以下がよい。窒化ケイ素を原料として用いる場合、1820℃以上の温度に加熱すると窒素ガス雰囲気が0.1MPaより低いと、原料が熱分解するので好ましくない。0.5MPaより高いとほとんど分解しない。10MPaあれば十分であり、100MPa以上となると特殊な装置が必要となり、工業生産に向かない。
【0040】
粒径数μmの微粉末を出発原料とする場合、混合工程を終えた金属化合物の混合物は、粒径数μmの微粉末が数百μmから数mmの大きさに凝集した形態をなす(粉体凝集体と呼ぶ)。本発明では、粉体凝集体を嵩密度40%以下の充填率に保持した状態で焼成する。ここで、相対嵩密度とは、容器に充填された粉体の質量を容器の容積で割った値(嵩密度)と粉体の物質の真密度との比である。すなわち、通常のサイアロンの製造ではホットプレス法や金型成形後に焼成を行なっており粉体の充填率が高い状態で焼成されているが、本発明では、粉体に機械的な力を加えることなく、また予め金型などを用いて成形することなく、混合物の粉体凝集体の粒度をそろえたものを、そのままの状態で容器などに嵩密度40%以下の充填率で充填する。必要に応じて、該粉体凝集体を、ふるいや風力分級などを用いて、平均粒径500μm以下に造粒して粒度制御することができる。また、スプレードライヤなどを用いて直接的に500μm以下の形状に造粒してもよい。また、容器は窒化ホウ素製を用いると蛍光体との反応が少ない利点がある。
【0041】
嵩密度を40%以下の状態に保持したまま焼成するのは、原料粉末の周りに自由な空間がある状態で焼成すると、反応生成物が自由な空間に結晶成長することにより結晶同士の接触が少なくなり、表面欠陥が少ない結晶を合成することが出来るためである。これにより、輝度が高い蛍光体が得られる。嵩密度が40%を超えると焼成中に部分的に緻密化が起こって、緻密な焼結体となってしまい結晶成長の妨げとなり蛍光体の輝度が低下する。また微細な粉体が得られない。また、粉体凝集体の大きさは500μm以下が、焼成後の粉砕性に優れるため特に好ましい。
【0042】
次に、充填率40%以下の粉体凝集体を前記条件で焼成する。焼成に用いる炉は、焼成温度が高温であり焼成雰囲気が窒素であることから、金属抵抗加熱抵抗加熱方式または黒鉛抵抗加熱方式であり、炉の高温部の材料として炭素を用いた電気炉が好適である。焼成の手法は、常圧焼結法やガス圧焼結法などの外部から機械的な加圧を施さない焼結手法が、嵩密度を高く保ったまま焼成するために好ましい。
【0043】
焼成して得られた粉体凝集体が固く固着している場合は、例えばボールミル、ジェットミル等の工場的に通常用いられる粉砕機により粉砕する。なかでも、ボールミル粉砕は粒径の制御が容易である。このとき使用するボールおよびポットは、窒化ケイ素焼結体またはサイアロン焼結体製が好ましい。特に好ましくは、製品となる蛍光体と同組成のセラミックス焼結体製が好ましい。粉砕は平均粒径20μm以下となるまで施す。特に好ましくは平均粒径20nm以上5μm以下である。平均粒径が20μmを超えると粉体の流動性と樹脂への分散性が悪くなり、発光素子と組み合わせて発光装置を形成する際に部位により発光強度が不均一になる。20nm以下となると、粉体を取り扱う操作性が悪くなる。粉砕だけで目的の粒径が得られない場合は、分級を組み合わせることができる。分級の手法としては、篩い分け、風力分級、液体中での沈殿法などを用いることができる。
【0044】
さらに、焼成後に無機化合物を溶解する溶剤で洗浄することにより、焼成により得られた反応生成物に含まれるガラス相、第二相、または不純物相などの蛍光体以外の無機化合物の含有量を低減すると、蛍光体の輝度が向上する。このような溶剤としては、水および酸の水溶液を使用することができる。酸の水溶液としては、硫酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸、有機酸とフッ化水素酸の混合物などを使用することができる。なかでも、硫酸とフッ化水素酸の混合物は効果が大きい。この処理は、焼成温度以下の温度で液相を生成する無機化合物を添加して高温で焼成した反応生成物に対しては、特にその効果が大きい。
【0045】
以上の工程での微細な蛍光体粉末が得られるが、輝度をさらに向上させるには熱処理が効果的である。この場合は、焼成後の粉末、あるいは粉砕や分級により粒度調整された後の粉末を、1000℃以上で焼成温度以下の温度で熱処理することができる。1000℃より低い温度では、表面の欠陥除去の効果が少ない。焼成温度以上では粉砕した粉体どうしが再度固着するため好ましくない。熱処理に適した雰囲気は、蛍光体の組成により異なるが、窒素、空気、アンモニア、水素から選ばれる1種又は2種以上の混合雰囲気中を使用することができ、特に窒素雰囲気が欠陥除去効果に優れるため好ましい。
【0046】
以上のようにして得られる本発明の蛍光体は、通常の酸化物蛍光体や既存のサイアロン蛍光体と比べて、高輝度の可視光発光を持つことが特徴である。なかでも特定の組成では、420nm以上550nm以下の範囲にピークを持つ青、緑色の発光をすることが特徴であり、照明器具、画像表示装置に好適である。これに加えて、高温にさらしても劣化しないことから耐熱性に優れており、酸化雰囲気および水分環境下での長期間の安定性にも優れている。
【0047】
本発明の照明器具は、少なくとも発光光源と本発明の蛍光体を用いて構成される。照明器具としては、LED照明器具、蛍光ランプなどがある。LED照明器具では、本発明の蛍光体を用いて、特開平5−152609、特開平7−99345、特許公報第2927279号などに記載されているような公知の方法により製造することができる。この場合、発光光源は330〜500nmの波長の光を発するものが望ましく、中でも330〜420nmの紫外(または紫)LED発光素子またはLD発光素子と420〜500nmの青色LEDまたはLD発光素子が好ましい。
【0048】
これらの発光素子としては、GaNやInGaNなどの窒化物半導体からなるものがあり、組成を調整することにより所定の波長の光を発する発光光源となり得る。
【0049】
照明器具において本発明の蛍光体を単独で使用する方法の他に、他の発光特性を持つ蛍光体と併用することによって、所望の色を発する照明器具を構成することができる。この一例として、330〜420nmの紫外LEDまたはLD発光素子と、この波長で励起され520nm以上550nm以下の波長に発光ピークを持つ緑色蛍光体と、600nm以上700nm以下の波長に発光ピークを持つ赤色蛍光体と、本発明の青色蛍光体の組み合わせがある。このような緑色蛍光体としては特願2004−070894に記載のβ−サイアロン:Eu2+を、赤色蛍光体としては、特願2003−394855に記載のCaSiAlN:Eu2+を挙げることができる。この構成では、LEDまたはLDが発する紫外線が蛍光体に照射されると、赤、緑、青の3色の光が発せられ、これの混合により白色の照明器具となる。
【0050】
別の手法として、330〜420nmの紫外LEDまたはLD発光素子と、この波長で励起され520nm以上550nm以下の波長に発光ピークを持つ緑色蛍光体と、この波長で励起されて550nm以上600nm以下の波長に発光ピークを持つ黄色蛍光体と、この波長で励起されて600nm以上700nm以下の波長に発光ピークを持つ赤色蛍光体と、本発明の蛍光体との組み合わせがある。このような緑色蛍光体としては特願2004−070894に記載のβ−サイアロン:Eu2+を、このような黄色蛍光体としては特開2002−363554に記載のα−サイアロン:Eu2+や特開平9−218149に記載の(Y、Gd)(Al、Ga)12:Ceを、このような赤色蛍光体としては、特願2003−394855に記載のCaSiAlN:Euを挙げることができる。この構成では、LEDまたはLDが発する紫外光が蛍光体に照射されると、青、緑、黄、赤の4色の光が発せられ、光が混合されて白色または赤みがかった電球色の照明器具となる。
【0051】
本発明の画像表示装置は少なくも励起源と本発明の蛍光体で構成され、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)などがある。本発明の蛍光体は、100〜190nmの真空紫外線、190〜380nmの紫外線、電子線などの励起で発光することが確認されており、これらの励起源と本発明の蛍光体との組み合わせで、上記のような画像表示装置を構成することができる。
【0052】
次に本発明を以下に示す実施例によってさらに詳しく説明するが、これはあくまでも本発明を容易に理解するための一助として開示したものであって、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
原料粉末は、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93重量%、α型含有量92%の窒化ケイ素粉末、比表面積3.3m/g、酸素含有量0.79%の窒化アルミニウム粉末、純度99.9%の酸化ユーロピュウム粉末を用いた。
【0054】
組成式Eu0.002845Al0.463253Si0.028450.5011850.004267で示される化合物(表1に設計組成と原料粉末の混合組成を示す)を得るべく、窒化ケイ素粉末と窒化アルミニウム粉末と酸化ユーロピュウム粉末とを、各々6.389重量%、91.206重量%、2.405重量%となるように秤量し、窒化ケイ素焼結体製のポットと窒化ケイ素焼結体製のボールとn−ヘキサンを用いて湿式ボールミルにより2時間混合した。ロータリーエバポレータによりn−ヘキサンを除去し、混合粉体の乾燥物を得た。得られた混合物をメノウ乳鉢と乳棒を用いて粉砕した後に500μmのふるいを通すことにより流動性に優れる粉体凝集体を得た。この粉体凝集体を直径20mm高さ20mmの大きさの窒化ホウ素製るつぼに自然落下させて入れたところ、嵩密度は30体積%であった。嵩密度は、投入した粉体凝集体の重量とるつぼの内容積と粉体の真密度(3.1g/cm)から計算した。つぎに、るつぼを黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。焼成操作は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から800℃まで毎時500℃の速度で加熱し、800℃で純度が99.999体積%の窒素を導入してガス圧力を1MPaとし、毎時500℃で2000℃まで昇温し、2000℃で2時間保持した。
【0055】
合成した試料をメノウの乳鉢を用いて粉末に粉砕し、CuのKα線を用いた粉末X線回折測定(XRD)を行った。その結果、得られたチャートは図1に示すパターンを示し、ウルツ型AlN構造の結晶が生成していることがわかった。
【0056】
この粉末の発光スペクトルおよび励起スペクトルを蛍光分光光度計を用いて測定した結果、この粉末は334nmに励起スペクトルのピークがあり334nmの励起による発光スペクトルにおいて、471nmの青色光にピークがある蛍光体であることが分かった。ピークの発光強度は、1.402カウントであった。なおカウント値は測定装置や条件によって変化するため単位は任意単位である。すなわち、同一条件で測定した本実施例および比較例内でしか比較できない。本発明では、市販のYAG:Ce蛍光体(化成オプトニクス製、P46Y3)を450nmで励起した時の発光強度が1となるように規格化して示してある。
【0057】
この粉末を粗粉砕の後、テフロン(登録商標)ビーカの中でフッ化水素酸10mlと硫酸10mlと蒸留水380mlを加えて、室温で2時間攪拌処理を施した。蒸留水で十分に洗浄した後に、濾過乾燥を行った。粒度分布を測定したところ、図2に示すように1μmから10μmの粒径の粒子が大部分であり、その平均粒径は3.2μmであった。
【0058】
この粉末の形態を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。図3に示すように、それぞれの粒子は扁平板状の自形を持った孤立した粒子であることが確認された。
【0059】
この粉末に、波長365nmの光を発するランプで照射した結果、青色に発光することを確認した。この粉末の発光スペクトルおよび励起スペクトル(図4)を蛍光分光光度計を用いて測定した結果、この粉末は327nmに励起スペクトルのピークがあり327nmの励起による発光スペクトルにおいて、472nmの青色光にピークがある蛍光体であることが分かった。ピークの発光強度は、1.973カウントであった。すなわち、酸処理により発光強度が1.4倍に向上した。365nmの励起で発する光のCIE色度は、x=0.18、y=0.19の青色であった。電子線を当てたときの発光特性(カソードルミネッセンス、CL)を、CL検知器を備えたSEMで観察し、CL像を評価した。この装置は、電子線を照射して発生する可視光を検出して二次元情報である写真の画像として得ることにより、どの場所でどの波長の光が発光しているかを明らかにするものである。発光スペクトル観察により、この蛍光体は電子線で励起されて470nmの波長の青色発光を示すことが確認された。また、数十個の粒子を観察したCL像によれば、特定の部位が発光している箇所はなく粒子内が均一に青色に発光していることが確認された。また、特に強く発光している粒子はなく、数十個の全粒子が均一に青色に発光していることが確認された。
【0060】
【表1】

【0061】
(実施例2〜16)
実施例1と同じ原料粉末を用いて、表1に示す組成を得るべく、窒化ケイ素粉末と窒化アルミニウム粉末と酸化ユーロピュウム粉末とを所定量秤量し、窒化ケイ素焼結体製のポットと窒化ケイ素焼結体製のボールとn−ヘキサンを用いて湿式ボールミルにより2時間混合した。ロータリーエバポレータによりn−ヘキサンを除去し、混合粉体の乾燥物を得た。得られた混合物をメノウ乳鉢と乳棒を用いて粉砕した後に500μmのふるいを通すことにより流動性に優れる粉体凝集体を得た。この粉体凝集体を直径20mm高さ20mmの大きさの窒化ホウ素製るつぼに自然落下させて入れた。つぎに、るつぼを黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。焼成操作は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から800℃まで毎時500℃の速度で加熱し、800℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を1MPaとし、毎時500℃で1900℃まで昇温し、その温度で2時間保持した。X線回折によれば、得られた焼成物はすべてAlNまたはAlN固溶体を50質量%以上含んでおり、蛍光分光測定を行なったところ表2に示すように紫外線から可視光で励起されて471nm〜480nmの間の波長にピークを持つ青色を発する蛍光体が得られた。
【0062】
【表2】

【0063】
(実施例17〜61)
実施例1と同じ窒化ケイ素、窒化アルミニウム粉末および酸化ホウ素、窒化ホウ素、炭酸マンガン、酸化セリウム、酸化プラセオジウム、酸化ネオジム、酸化サマリウム、酸化ユーロピウム、酸化テルビウム、酸化ディスプロシウム粉末を原料として用いた。表3に示す組成を得るべく、原料粉末を表4に示す所定量秤量し、窒化ケイ素製の乳鉢と乳棒で10分間混合した。得られた混合物を500μmのふるいを通すことにより流動性に優れる粉体凝集体を得た。この粉体凝集体を直径20mm高さ20mmの大きさの窒化ホウ素製るつぼに自然落下させて入れた。つぎに、るつぼを黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。焼成操作は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から800℃まで毎時500℃の速度で加熱し、800℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を1MPaとし、毎時500℃で1900℃まで昇温し、その温度で2時間保持した。
【0064】
X線回折によれば、得られた焼成物はすべてAlNまたはAlN固溶体を50質量%以上含んでおり、蛍光分光測定を行なったところ表5に示すように紫外光で励起されて560nm〜650nmの間の波長にピークを持つ赤色を発する蛍光体が得られた。実施例27の励起発光スペクトルを図7に示す。247nmに励起スペクトルのピークがあり、この波長で励起したときに596nmの赤色光を発する。この蛍光体を用いて、247nmの波長の紫外励起光を30秒間照射した後に励起光を遮断した時の発光強度の変化を図8に示す。初期の発光強度から1/10の強度に変化する時間は30秒であり、4分後においても1/30の発光強度を維持した。
【表3】


【表4】


【表5】




【0065】
上記実施例に対し、比較例を記載する。
【比較例1】
【0066】
原料粉末は、比表面積3.3m/g、酸素含有量0.79%の窒化アルミニウム粉末と純度99.9%の酸化ユーロピュウム粉末を用いた。
【0067】
窒化アルミニウム粉末と酸化ユーロピュウム粉末とを、各々97.48重量%、2.52重量%となるように秤量し、実施例1と同様の工程で混合粉末を作製し、窒化ホウ素製るつぼに投入した。つぎに、るつぼを黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。焼成操作は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から800℃まで毎時500℃の速度で加熱し、800℃で純度が99.999体積%の窒素を導入してガス圧力を1MPaとし、毎時500℃で2000℃まで昇温し、2000℃で2時間保持した。
【0068】
この粉末の発光スペクトルおよび励起スペクトルを蛍光分光光度計を用いて測定した結果、334nmの励起による発光スペクトルにおいて、550nmにピークがあることが分かった。ピークの発光強度は、0.005カウントであった。なおカウント値は本実施例および比較例内で比較することができる。本発明では、市販のYAG:Ce蛍光体(化成オプトニクス製、P46Y3)を450nmで励起した時の発光強度が1となるように規格化して示してある。本比較例では、組成中にSiを含まないことから、Siを含むものと比べて発光強度が低かった。
【0069】
次に、本発明の窒化物からなる蛍光体を用いた照明器具について説明する。図5に、照明器具としての白色LEDの概略構造図を示す。発光素子として380nmの紫外LED2を用い、本発明の実施例1の蛍光体と、Ca0.75Eu0.25Si8.625A13.3751.12514.875の組成を持つCa−α−サイアロン:Euの黄色蛍光体とを樹脂層に分散させて紫外LED2上にかぶせた構造とする。導電性端子に電流を流すと、該LED2は380nmの光を発し、この光で黄色蛍光体および青色蛍光体が励起されて黄色および青色の光を発し、LEDの光と黄色および青色が混合されて白色の光を発する照明装置として機能する。この照明器具は、黄色蛍光体単体を用いた場合と比較して青色成分があるため演色性が高い。
【0070】
上記配合とは異なる配合設計によって作製した照明装置を示す。
【0071】
先ず、発光素子として380nmの紫外LEDを用い、本発明の実施例1の蛍光体と、特許文献3の実施例1に記載の緑色蛍光体(β−サイアロン:Eu)と特許文献6の実施例1に記載の赤色蛍光体(CaSiAlN:Eu)とを樹脂層に分散させて紫外LED上にかぶせた構造とする。導電性端子に電流を流すと、LEDは380nmの光を発し、この光で青色蛍光体と緑色蛍光体と赤色蛍光体とが励起されて青、緑、赤色の光を発し、これらの蛍光体からの光が混合されて白色の光を発する照明装置として機能する。
【0072】
次ぎに、本発明の窒化物蛍光体を用いた画像表示装置の設計例について説明する。図6は、画像表示装置としてのプラズマディスプレイパネルの原理的概略図である。赤色蛍光体(Y(PV)O:Eu)と緑色蛍光体(ZnSiO:Mn)と本発明の実施例1の青色蛍光体とがそれぞれのセル11、12、13の内面に塗布されている。電極14、15、16、17に通電するとセル中でXe放電により真空紫外線が発生し、これにより蛍光体が励起されて、赤、緑、青の可視光を発し、この光が保護層20、誘電体層19、ガラス基板22を介して外側から観察され、画像表示として機能する。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の窒化物蛍光体は、従来のサイアロンとは異なる青色または赤色の発光を示し、さらに励起源に曝された場合の蛍光体の輝度の低下が少ないので、VFD、FED、PDP、CRT、白色LEDなどに好適に使用される窒化物蛍光体である。今後、各種表示装置における材料設計において、大いに活用され、産業の発展に寄与するものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施例1の無機化合物のX線回折チャートを示す図。
【図2】実施例1の無機化合物の粒度分布を示す図。
【図3】実施例1の無機化合物の電子顕微鏡(SEM)観察結果を示す図
【図4】実施例1の蛍光測定による励起スペクトルと発光スペクトルを示す図。
【図5】本発明による照明器具(LED照明器具)の概略図を示す図。
【図6】本発明による画像表示装置(プラズマディスプレイパネル)の概略図。
【図7】実施例27の無機化合物の蛍光測定による励起スペクトルと発光スペクトルを示す図。
【図8】実施例27の無機化合物の長残光特性を示す図。
【符号の説明】
【0075】
1. 本発明の青色蛍光体(実施例1)と赤色蛍光体と緑色蛍光体との混合物、または本発明の青色蛍光体(実施例1)と黄色蛍光体との混合物。
2. LEDチップ。
3、4. 導電性端子。
5. ワイヤーボンド。
6. 樹脂層。
7. 容器。
8. 赤色蛍光体。
9. 緑色蛍光体。
10. 青色蛍光体。
11、12、13. 紫外線発光セル。
14、15、16、17. 電極。
18、19. 誘電体層。
20. 保護層。
21、22. ガラス基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
330〜500nmの波長の光を発する発光光源と、前記発光光源からの光により励起される蛍光体とを有する照明器具において、
前記蛍光体は、金属元素M(ただし、Mは、Mn、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素)と、Alと、Oと、Nと、元素A(ただし、Aは、C、Si、Ge、Sn、B、Ga、In、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Gd、Lu、Ti、Zr、Hf、Ta、Wから選ばれる1種または2種以上の元素)とを含有する化合物を有することを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記発光光源は、330〜420nmの波長を有する光を発するLEDまたはLDであり、
前記蛍光体は、前記光により520nm〜550nmの波長に発光ピークを持つ緑色光を発する緑色蛍光体と、前記光により600nm〜700nmの波長に発光ピークを持つ赤色光を発する赤色蛍光体とをさらに有し、前記化合物による青色光と前記緑色光と前記赤色光との混合により白色光を発するようにしてあることを特徴とする請求項1項に記載の照明器具。
【請求項3】
前記発光光源は、330〜420nmの波長を有する光を発するLEDまたはLDであり、
前記蛍光体は、前記光により520nm〜550nmの波長に発光ピークを持つ緑色光を発する緑色蛍光体と、前記光により550nm〜600nmの波長に発光ピークを持つ黄色光を発する黄色蛍光体と、前記光により600nm〜700nmの波長に発光ピークを持つ赤色光を発する赤色蛍光体とをさらに有し、前記化合物による青色光と前記緑色光と前記黄色光と前記赤色光との混合により白色光を発するようにしてあることを特徴とする請求項1項に記載の照明器具。
【請求項4】
前記緑色蛍光体は、Euを付活剤としたβ−サイアロンであることを特徴とする請求項2項および3項に記載の照明器具。
【請求項5】
前記赤色蛍光体は、Euを付活剤としたCaAlSiNまたはCaAlSiN固溶体結晶であることを特徴とする請求項2項および3項に記載の照明器具。
【請求項6】
前記黄色蛍光体は、Euを付活剤としたCa−αサイアロンであることを特徴とする請求項3項に記載の照明器具。
【請求項7】
前記化合物は、AlN結晶またはAlN固溶体結晶であることを特徴とする請求項1〜6項のいずれかに記載の照明器具。
【請求項8】
前記AlN結晶またはAlN固溶体結晶は、ウルツ型AlN結晶構造、または、2Hδ、27R、21R、12H、15Rおよび8Hから選ばれるいずれかの結晶構造を持つことを特徴とする請求項7項に記載の照明器具。
【請求項9】
前記化合物は、CuKα線を用いたX線回折による測定において、2θ値が少なくとも、32度以上35度以下、および、58度以上62度以下の範囲に、前記AlN結晶またはAlN固溶体結晶由来の回折ピークを持つことを特徴とする請求項7項に記載の照明器具。
【請求項10】
前記32度以上35度以下の回折ピークが前記AlN結晶またはAlN固溶体結晶の(100)面由来であり、前記58度以上62度以下の回折ピークが前記AlN結晶またはAlN固溶体結晶の(110)面由来であることを特徴とする請求項9項に記載の照明器具。
【請求項11】
前記化合物は、組成式MaAlbcde(式中、a+b+c+d+e=1とする)で示され、
0.00001≦ a ≦0.1・・・・・・・・・・(i)
0.4≦ b ≦0.55・・・・・・・・・・・・・(ii)
0.001≦ c ≦0.1・・・・・・・・・・・・(iii)
0.4≦ d ≦0.55・・・・・・・・・・・・・(iv)
0.001≦ e ≦0.1・・・・・・・・・・・・(v)
以上の条件を満たす組成で表されることを特徴とする請求項1項に記載の照明器具。
【請求項12】
前記化合物は、前記元素Aとして少なくともSiを含有し、前記金属元素Mとして少なくともEuを含有し、Euが2価であり、発光ピーク波長が450nm以上520nm以下の範囲であることを特徴とする請求項1項に記載の照明器具。
【請求項13】
前記化合物は、前記金属元素Mとして少なくともMnを含有し、発光ピーク波長が560nm以上650nm以下の範囲であることを特徴とする請求項1項に記載の照明器具。
【請求項14】
前記蛍光体は、前記AlN結晶またはAlN固溶体結晶晶と異なる結晶相あるいはアモルファス相をさらに含み、前記AlN結晶またはAlN固溶体結晶の含有量は10質量%以上であることを特徴とする請求項7項に記載の照明器具。
【請求項15】
前記異なる結晶相あるいはアモルファス相が導電性を持つ無機物質であることを特徴とする請求項14項に記載の照明器具。
【請求項16】
前記導電性を持つ無機物質が、Zn、Ga、In、Snから選ばれる1種または2種以上の元素を含有する酸化物、酸窒化物、または窒化物、あるいはこれらの混合物であることを特徴とする請求項15項に記載の照明器具。
【請求項17】
電子線、電場、真空紫外線、または紫外線による励起源と、前記励起源により励起される蛍光体とを有する画像表示装置において、
前記蛍光体は、金属元素M(ただし、Mは、Mn、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybから選ばれる1種または2種以上の元素)と、Alと、Oと、Nと、元素A(ただし、Aは、C、Si、Ge、Sn、B、Ga、In、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Gd、Lu、Ti、Zr、Hf、Ta、Wから選ばれる1種または2種以上の元素)とを含有する化合物を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項18】
前記画像表示装置が、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)のいずれかであることを特徴とする請求項17項に記載の画像表示装置。
【請求項19】
前記化合物は、AlN結晶またはAlN固溶体結晶であることを特徴とする請求項17項に記載の画像表示装置。
【請求項20】
前記AlN結晶またはAlN固溶体結晶は、ウルツ型AlN結晶構造、または、2Hδ、27R、21R、12H、15Rおよび8Hから選ばれるいずれかの結晶構造を持つことを特徴とする請求項19項に記載の画像表示装置。
【請求項21】
前記化合物は、CuKα線を用いたX線回折による測定において、2θ値が少なくとも、32度以上35度以下、および、58度以上62度以下の範囲に、前記AlN結晶またはAlN固溶体結晶由来の回折ピークを持つことを特徴とする請求項20項に記載の画像表示装置。
【請求項22】
前記32度以上35度以下の回折ピークが前記AlN結晶またはAlN固溶体結晶の(100)面由来であり、前記58度以上62度以下の回折ピークが前記AlN結晶またはAlN固溶体結晶の(110)面由来であることを特徴とする請求項21項に記載の画像表示装置。
【請求項23】
前記化合物は、組成式MaAlbcde(式中、a+b+c+d+e=1とする)で示され、
0.00001≦ a ≦0.1・・・・・・・・・・(i)
0.4≦ b ≦0.55・・・・・・・・・・・・・(ii)
0.001≦ c ≦0.1・・・・・・・・・・・・(iii)
0.4≦ d ≦0.55・・・・・・・・・・・・・(iv)
0.001≦ e ≦0.1・・・・・・・・・・・・(v)
以上の条件を満たす組成で表されることを特徴とする請求項17項に記載の画像表示装置。
【請求項24】
前記化合物は、前記元素Aとして少なくともSiを含有し、前記金属元素Mとして少なくともEuを含有し、Euが2価であり、発光ピーク波長が450nm以上520nm以下の範囲であることを特徴とする請求項17項に記載の画像表示装置。
【請求項25】
前記化合物は、前記金属元素Mとして少なくともMnを含有し、発光ピーク波長が560nm以上650nm以下の範囲であることを特徴とする請求項17項に記載の画像表示装置。
【請求項26】
前記蛍光体は、前記AlN結晶またはAlN固溶体結晶と異なる結晶相あるいはアモルファス相をさらに含み、前記AlN結晶またはAlN固溶体結晶の含有量は10質量%以上であることを特徴とする請求項19項に記載の画像表示装置。
【請求項27】
前記異なる結晶相あるいはアモルファス相が導電性を持つ無機物質であることを特徴とする請求項26項に記載の画像表示装置。
【請求項28】
前記導電性を持つ無機物質が、Zn、Ga、In、Snから選ばれる1種または2種以上の元素を含有する酸化物、酸窒化物、または窒化物、あるいはこれらの混合物であることを特徴とする請求項27項に記載の画像表示装置。
【請求項29】
前記化合物は青色蛍光体であり、前記励起源は電子線であることを特徴とする請求項24項に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−263209(P2008−263209A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125446(P2008−125446)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【分割の表示】特願2006−531808(P2006−531808)の分割
【原出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】