説明

血液透析、血液透析濾過、血液濾過または腹膜透析に関わる装置、システムおよび方法

本発明は血液透析、血液透析濾過、血液濾過または腹膜透析のための装置に関する。この装置は、透析および、または輸液が流れるように意図された少なくとも1つの導管10,14を備えている。この装置は、前記液体中の少なくとも1つの光学的に活性の物質を測定するための測定装置48を備えている。この測定装置48は、液体中の前記物質が前記液体を透過された偏光された光ビームに与える影響を測定することにより前記液体中の物質の濃度を測定するように構成されている。本発明はまた、このような装置を備えたシステムおよび解析および、または輸液中の光学的に活性の物質の濃度の測定を行う方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液透析、血液透析濾過、血液濾過または腹膜透析のための装置に関する。この装置は、透析および、または輸液(infusion fluid)が流れるように意図された少なくとも1つの導管を備えている。この装置は、前記液体中の少なくとも1つの物質を測定するための測定装置を備えている。
【0002】
本発明はまた、このような装置を備えたシステムおよび血液透析、血液透析濾過、血液濾過または腹膜透析に関する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
血液透析は、累積した代謝生成物を除去して天然または合成の半透膜を通した拡散のプロセス中にバッファを付加することにより血液の化学組成を補正するようにされた処理である。
【0004】
通常の種類の血液透析装置は当業者によく知られている。このような装置の一例は、欧州特許出願第EP-A2-904 789号の図1に関連して記載されている。血液透析装置は、腎臓障害のある患者を治療するために使用される。透析装置中には、透析流体(透析液)が準備されている。透析液は、血液透析装置の一部である透析器において透析を行うために使用される。透析液は、水と1以上の濃縮物を装置に供給することによりこの装置において準備されることができる。この装置はまた、患者に輸液を提供するように構成されることができる。このような輸液は透析液と同じであってもよいし、あるいはそれとは異なっていてもよい。血液透析装置は当業者によく知られているため、ここではその詳細の全ては説明されない。
【0005】
血液濾過は、高流速タイプの半透膜を通した限外濾過の結果としての対流輸送のプロセスにより、累積した代謝生成物を血液から除去するようにされた処理である;所望の重量損失を超えた濾過された液体の体積は無菌の発熱性物質のない輸液によって置換される。通常、純粋な血液濾過プロセスにおいては透析液は全く使用されない。
【0006】
血液透過濾過は、高流速タイプの半透膜を通った拡散および対流輸送の組合せにより、累積した代謝生成物を血液から除去するようにされた処理である;液体は限外濾過によって除去され、所望の重量損失を超えた濾過された液体の体積は無菌の発熱性物質のない輸液によって置換される。
【0007】
血液透過濾過だけでなく、血液透析および血液濾過の両者に対しても使用されることのできる装置が存在する。
【0008】
腹膜透析用の装置もまた存在する。腹膜透析においては、装置の一部である透析器は必要ない。その代り、患者の腹膜が透析膜として使用される。腹膜透析用の装置においてもまた、透析液および、または輸液が付加される。
【0009】
透析液または輸液中のある物質を測定する測定装置を上述した種類の装置に提供することが知られていることも述べなければならない。その装置は、たとえば、その装置中において水と混合された透析濃縮物の濃度を評価するために透析液の導電度を測定する測定装置を備えていてもよい。
【0010】
グルコース(ブドウ糖)または類似の物質を含む濃縮液が上述した種類の装置に追加されることが多い。しばしばグルコースは装置に供給される濃縮液として使用される。グルコース濃縮液は異なった種類の容器に入れられて使用されることができ、それらの容器から装置に供給される。このような濃縮液は異なったグルコース濃度にされることができるため、正しいグルコース濃度の濃縮液が確実に装置に供給されるようにすることが重要である。時として、グルコースを含む濃縮液はフレキシブルな液体バッグに入れられて使用される。このようなバッグは複数の室を有している。これらの室は、液体が装置に供給される前に異なった室の液体が互いに混合するように互いに接続されていなければならない。このような液体バッグにおいて、グルコース濃縮液は1つの室中に含まれることができる。この種の液体バッグでは、液体が装置に供給される前に異なった室の内容物が確実に互いに混合されているようにすることが重要である。人的要因による過ちが発生し、誤った濃度のグルコースの入った容器が当該装置に接続され、あるいは異なった室を有するフレキシブルな液体バッグが、液体が装置に供給される前に異なった室の内容物が互いに適切に混合されていない状態で装置に接続される可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上記の最初の文節に明確に述べられている種類の装置を提供することであり、また、このような装置に供給される、あるいは装置中において輸送される液体中の物質の濃度を測定することを可能にする装置を提供することである。別の目的は、装置に付加された物質の濃度に関して上述のような過ちの可能性を回避することを可能にする手段を備えた装置を提供することである。この物質は、グルコースまたは類似の物質であることができる。さらに別の目的は、この種の装置中において比較的簡単で廉価に構成されることのできるこのような手段を提供することである。さらに別の目的は、液体中のこのような物質の濃度が正しいか否かを信頼できる方式で検出するこのような装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的は、上記の最初の文節に明確に述べられた種類の装置によって達成される。すなわち、測定される前記物質は光学的に活性の物質であり、測定装置は、液体中の前記物質が前記液体を透過された偏光された光ビームに与える影響を測定することにより前記液体中の前記物質の濃度を測定するように構成されていることを特徴とする種類の装置によって達成される。
【0013】
したがって、本発明の発明者は、グルコースのような物質は光学的に活性の物質であるため、上述された装置は、液体中の物質が偏光された光ビームに与える影響を測定する測定装置を備えることができることを認識した。このような測定装置により、正しい濃度の物質が装置中に、あるいは装置を通って供給されることが確実になる。このような測定装置はまた構成が非常に簡単にすることが可能であり、高価であってはならない。
【0014】
これに関して、たとえば、グルコースは光学的に活性の物質であることが知られていることがあげられる。光学的に活性の物質の濃度は、偏光された光ビームをその物質を通って透過させることにより測定可能であることもまた知られている。たとえば、米国特許出願第US-A-5,357,960号には、生体内での光学的に活性の物質の定量測定のための方法および装置が記載されている。国際特許出願第01/84 121 A1号には、生体内における血液中の、たとえば、グルコースの濃度の偏光分析的測定のための方法および装置が記載されている。これらの文献に開示されている装置および方法は、生体内で測定される物質の濃度が非常に低いためにきわめて複雑である。しかしながら、本発明の発明者は、本発明による装置において測定される濃度が一般的に非常に高いことを認識している。したがって、本発明者は、本発明による装置中に配置された測定装置が非常に簡単に形成されことができ、当該物質の濃度の測定が依然として非常に正確であることを認識している。
【0015】
この文献における透析液および輸液という概念は、最終的な透析液または輸液だけでなく、その最終的な透析液または輸液を得るために別の濃縮液と混合され、および、または希釈された濃縮液も含むものであることを述べておかなければならない。
【0016】
この文献において“光”といったとき、この概念は可視波長範囲内の電磁放射だけでなく別の波長の電磁放射もまたカバーすることを意味されていることに注意すべきである。
【0017】
好ましい実施形態によると、装置は異なった物質の複数の入口を備えており、この装置は、前記入口を通って導入されたその異なった物質が前記装置中で互いに混合されるように構成されており、測定装置は、前記液体が装置中で前記入口を通って導入されたその他全ての物質と混合されることによりその最終的な形態で得られる前に、前記液体中の前記物質の濃度が測定されるように前記装置に、またはその中に位置されている。液体は、それがその他全ての物質と混合される前に、通常高い濃度の測定される物質を含んでいる。したがって、本発明は、液体が装置中でその最終的な形態になる前に、物質の濃度を測定するのにとくに有用である。
【0018】
前記複数の入口は、測定される液体が装置中に導入される第1の入口を備えていることが好ましく、測定装置は、前記第1の入口を介して導入された前記液体が前記複数の入口の他のものを介して導入されたその他全ての物質と装置中で混合される前に、前記液体中の前記物質の濃度が測定されるように前記装置に、またはその中に位置されている。したがって、この実施形態によると、物質の濃度は、装置中で液体が任意の他の物質と混合される前に測定される。それ故、とくに液体中の物質の濃度が高い。さらに、物質の濃度が間違っていることが分かった場合、装置への液体の供給を早い段階で中止することができる。
【0019】
別の実施形態によると、測定装置は100g/lより上である前記物質の濃度を測定するように設計されている。その測定装置は、とくに、前記液体中の、好ましくはグルコースの形態の糖の濃度を測定するように設計されることができる。物質の濃度が100g/lより上のとき、本発明の使用がとくに有効である。何故ならそれは、測定装置を非常に簡単な方法で設計することができるからである。濃縮液から装置に供給される、たとえば、グルコース等の濃度は通常100g/lよりも本質的に高いため、本発明による装置はとくに有用である。
【0020】
さらに別の実施形態によると、この装置は、前記液体中の前記物質の測定された濃度が予め定められた要求を満たさない場合に警告信号を発生するように構成された手段を備えている。この警告信号は、たとえば、ある方法が行われることを示す電気信号であってもよい。たとえば、その信号によって透析プロセスを中止させることもできるし、あるいは光または音響信号をこの装置のオペレータへの警告として生じさせることもできる。
【0021】
好ましい実施形態によると、装置は、前記装置中に、または前記装置への1つの入口に少なくとも1つの部分的に透明な導管を備えており、測定される液体はこの導管を通過し、前記測定装置は、少なくとも1つの部分的に透明な導管において測定される液体を通過される偏光された光ビームを生成するように位置されて構成されている。透明な導管を通って液体を通過させることにより、この透明な導管を通って、およびそれによってその液体を通って光ビームを通過させることができる。
【0022】
測定装置は、平面偏光された光ビームを供給するように構成されることが有利である。それによって、その測定装置は、前記偏光された光ビームが液体を通過したときに前記偏光された光ビームの偏光面が回転された角度を示すエンティティを測定する測定手段により構成されることができる。それによって、測定手段は光強度検出器を備えることができる。偏光された光ビームが液体中で回転された角度を測定することにより、その液体中の光学的に活性の物質の濃度の尺度が得られる。
【0023】
本発明はまた、上記の実施形態のいずれか1つによる装置と液体を含む容器とを備えているシステムに関し、その容器はその容器中の液体が装置に供給されるように装置に接続されており、前記測定装置は容器からの液体中の前記物質の濃度を測定するように構成されている。したがって、このようなシステムにより、容器からの液体中の物質の正しい濃度が装置に供給されているか否かを測定して判断することができる。
【0024】
容器は少なくとも2つの室を備えた種類のものであることが好ましく、これらの室の内容物は、その液体が容器を出る前に混合される。その容器はフレキシブルな液体バッグであることができ、その中の測定される前記物質の濃度は少なくとも100g/lである。上述したように、液体が装置に供給される前に、このような容器中の異なった室の内容物が正しく混合されたか否かを測定して判断することが可能であることが重要である。これは、本発明による装置またはシステムにより効率的かつ正確で廉価なやり方で行われることができる。
【0025】
本発明はまた、液体が血液透析、血液透析濾過、血液濾過または腹膜透析用の装置に供給され、および、またはこの装置を通って供給されるように構成されている透析液および、または輸液中の光学的に活性の物質の濃度の測定方法に関する。この方法は、偏光された光ビームを供給し、偏光された光ビームを前記液体を通って透過させ、液体中の前記物質の濃度の指示が得られるように液体中の前記物質がこの液体を通過された偏光された光ビームに与える影響を検出するステップを含んでいる。このような方法により、装置およびシステムに関連して上記に説明したことに対応した利点が得られる。
【0026】
物質は、グルコースのような糖であることが好ましい。液体は前記装置中で別の物質と混合され、および、または希釈される濃縮物であることができる。その液体は、2以上の室を有することのできる容器、たとえば、フレキシブルな液体バッグから前記装置に供給されることが好ましく、これらの室の内容物はその液体が容器を出る前に混合される。
【0027】
この方法を行うさらに好ましいやり方は、添付された特許請求の範囲および以下の説明に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は、本発明による装置を概略的に示している。この装置は、透析液に対する第1の液体流回路10と、血液に対する第2の液体流回路12とを備えている。この実施形態による装置はまた、輸液用の導管14を備えている。ドリップ室16は、第2の液体流回路12の一部として構成されている。導管14はこのドリップ室16にも導かれている。接続部18および20は患者に接続される。透析装置または血液濾過器21は、第1の液体流回路10と第2の液体流回路12とに接続されている。この透析装置または血液濾過器21は半透膜22を備えている。腹膜透析用の装置は、この場合は患者の腹膜が透析装置の膜として機能するために、当然ながら、透析装置21を備えていないことに言及しなければならない。
【0029】
弁23と24の間には、バイパス導管25が配置されている。したがって、これらの弁23および24は、透析液が透析装置21の代りにバイパス導管25を通過するように構成されることができる。
【0030】
示されている実施形態においては、装置は入口26、28、30および32を備えている。入口の数は、もちろん、装置によって異なっていてよい。入口26は、純水のための入口である。入口28、30および32は、水と共に透析液を形成する異なった濃縮物のための入口を構成している。透析液の正しい組成は準備装置34中において準備される。その透析物用の出口は、符号36で示されている。符号38は、装置の動作を制御するプロセッサ装置またはコンピュータを示している。
【0031】
透析装置は当業者によく知られているため、ここでこのような装置の詳細の全てを示す必要はない。また、このような装置の機能を詳細に説明する必要もない。当然ながら、装置はポンプ、流量計のようなさらに多くの部品を有している。
【0032】
これまで説明した装置は、当業者に知られている通常の構成を有している。
【0033】
透析液に必要とされる異なった濃縮物は、異なった容器から装置に供給されてもよい。たとえば、少なくともいくつかの濃縮物を、2以上の室を有する液体バッグの形態の容器から装置に供給できることが知られている。図1は、入口32に接続されたこのような液体バッグ39を概略的に示している。液体バッグ39は通常入口32より高くなるように吊り下げられ、管40を介して入口32に接続されている。示されている例においては、液体バッグ39は2つの室42および44を備えている。1つの室、たとえば、室42はグルコース溶液を含んでいることができる。バッグ39の内容物が入口32に供給される前に、2つの室42および44の内容物は互いに混合される。これは、2つの室42、44の間の密閉部46中の接続部を開くことによって行われる。密閉部46は、実際には、濃縮物が入口32に供給される前に2つの室42、44の内容物が混合されるように破壊されることが重要である。何故ならば、これがそうでない場合、正しい濃度の濃縮物が入口32に供給されなくなるからである。室42中のグルコースの濃度は、たとえば、570g/lであることができる。2つの室42および44の内容物が混合されたとき、入口32に供給されるその濃縮液中のグルコースの濃度は、たとえば、400g/lでなければならない。
【0034】
正しい濃度のグルコースが実際に装置に供給されたことを測定するために、本発明による装置は測定装置48を備えている。この場合、測定装置48は入口32に配置される。この測定装置48を本発明の装置の他の部分に配置することは本発明の技術的範囲内であることを認識すべきである。たとえば、測定装置48または付加的な測定装置は、第1の液体流回路10または管14中に位置されることができる。しかしながら、少なくとも2つの理由のために、測定装置48を入口32に配置することが都合がよい。第1に、入口32におけるグルコースの濃度は、装置の他の部分における濃度よりはるかに高い。したがって、測定装置48は、それが入口32に位置されたときにはそれ程敏感でなくてもよい。それ故、測定装置48は、非常に簡単で廉価に設計されることができる。第2に、間違った濃度のグルコースが測定装置48により検出された場合に、液体バッグ39からの濃縮液の供給を早い段階で止めることができるので、測定装置48を入口32に位置することが有効である。
【0035】
以下、図2を参照して測定装置48をさらに詳細に説明する。測定装置48は、光学的に活性の物質を測定するように構成されている。この例によると、光学的に活性の物質はグルコースである。測定装置48は、液体中の物質がその液体を透過された偏光された光ビームに与える影響を測定することにより光学的に活性の物質、すなわち、この場合にはグルコースの濃度を測定するように構成されている。
【0036】
ここでは、光学活性の理論および偏光された光ビームによる測定方法の詳細な説明は行われない。それは、この理論が当業者に知られており、Hecht氏およびZajec氏による文献(Optics,Addison-Wesley Publishing Comp.1974)のようなさまざまな教科書に記載されているからである。とくに、この文献(Optics)の255乃至260頁を参照されたい。基本的に、当該液体を偏光された光ビームを透過させることにより測定を行うことができる。それによって、光ビームがその液体を通過したときに偏光面が回転される。偏光面が回転される角度は、液体中の光学的に活性の物質の濃度と、光ビームが液体を通過した距離とに依存する。回転の角度が測定され、また、液体を通る距離が知られている場合、液体中の光学的に活性の物質の濃度が計算されることができる。
【0037】
図2は、本発明による装置の一部を形成している測定装置48の1実施形態を概略的に示している。この測定装置48はサンプルセル50を含んでいる。測定される液体は、このサンプルセル50中に含まれている。サンプルセル50は、測定される全ての液体がサンプルセル50を通過するように位置されることができる。サンプルセル50への入口51は、容器39からの管40(図1に示されている)に接続されることができる。液体は出口32を通ってサンプルセル50を出る。したがって、この出口32は図1に示されている準備装置34への入口であることができる。したがって測定装置48は、この実施形態によると、液体バッグ39からの液体が透析溶液中に含まれることとなる任意の他の物質と混合される前にグルコースの濃度が測定されるように装置中に配置されている。サンプルセル50は、第1の透明なウインドウ54および第2の透明なウインドウ56を有している。したがって、サンプルセル50は、光ビームがこのサンプルセル50を通過し、それによってこのサンプルセル50中に位置された液体を通過することができるように設計されている。第1および第2のウインドウ54および56は、これらのウインドウ54および56が測定結果に影響することを避けるために内部複屈折を生じない材料から形成されていることが好ましい。
【0038】
測定装置はまた、サンプルセル50を通過される光ビームを生成する光源58を備えている。この光源58は、好ましくは単色またはほぼ単色でなければならない。廉価な発光ダイオード(LED)が光源58として使用されることができる。光源58は、十分にコリメートされた光ビームを生成しなければならない。必要ならば、コリメート用レンズ60が光源58からのビーム路に位置されてもよい。光ビームはビームスプリッタ62を通過し、このビームスプリッタ62により光ビームはそのごく一部だけが反射され、大部分が透過されることが好ましい。ビームスプリッタ62を通過したビームはまた、平面偏光された光ビームを生成する第1の偏光器61を通過する。ビームスプリッタ62は、必ずしも光源58と偏光器61との間に位置される必要がないことに言及しなければならない。ビームスプリッタ62はまた、偏光器61とサンプルセル50との間に位置されることもできる。図2において、光ビームはこの図の平面において偏光されていることが矢印で示されている。この平面偏光された光ビームがサンプルセル50を通過したとき、第1のウインドウ54と第2のウインドウ56との間の距離に応じて、およびサンプルセル50中の光学的に活性の物質の濃度に応じて、偏光平面が回転される。
【0039】
光ビームは、サンプルセル50を通過した後、第2の偏光器63を通過する。この第2の偏光器63は、たとえば、その第2の偏光器63の偏光方向が第1の偏光器の偏光方向に対して垂直になるように構成されることができる。図2においては、これは偏光器63の隣のシンボルで示されている。別の可能な実施形態によると、第2の偏光器63(または第2の偏光器63および光検出器64)は、光軸を中心として回転可能であるように構成されることができる。この場合、偏光された光ビームが液体を通過したときにそのビームの偏光平面が回転した角度は、最大(または、その代りに、最小)の光強度が光検出器64によって検出されるまで第2の偏光器63を回転させることによって測定されることができる。それ故、偏光器63の回転角度は、偏光平面が回転された角度を示す。
【0040】
第2の偏光器63を通過したビームは、第1の光検出器64に入射する。したがって、この光検出器64は、入射した光の強度を測定する。サンプルセル50中に光学的に活性の物質が存在しない場合、光ビームの偏光平面は、サンプルセル50を通過したときに変化しない。第2の偏光器63が図2に示されているように構成されている場合、光検出器64は最小の光強度を検出する。他方において、偏光平面がサンプルセル50を通過しているとき90°回転されるサンプルセル50中の濃度の光学的に活性の物質が存在する場合、光検出器64は最大の光強度を検出する。サンプルセル50中の光学的に活性の物質の濃度が偏光平面を0°乃至90°の範囲内で回転させるようなものであるとき、光検出器64は、偏光平面の回転角度に依存した光強度を検出する。光検出器64において検出された光強度はsin2θに比例し、ここでθは偏光平面の回転の角度である。このようにして、第1の光検出器64で光強度を検出することにより、サンプルセル50中の液体中の光学的に活性の物質の濃度の指示が得られる。サンプルセル50の長さ、すなわち、第1のウインドウ54と第2のウインドウ56との間の距離は、測定装置48により公称的に測定された濃度に対して偏光平面の適切な回転が得られるように選択されなければならない。測定されるグルコースの濃度が100g/lより上であり、好ましくは300g/lより上であるとき、この応用に適切なサンプルセル50の長さは5mm乃至60mmであり、好ましくは10mm乃至40mmである。
【0041】
示されている実施形態においては、測定装置48はまた、ビームスプリッタ62により反射されたビームを検出する第2の光検出器66を備えている。この第2の光検出器66は、光源からの光強度の変化を検出するために使用される。それによって、第1の光検出器64により検出された測定はこのような変化に対して補償されることができる。第1および第2の光検出器はプロセッサ装置、たとえば、図1に関連して説明されたプロセッサ装置38に接続されていることが好ましい。液体中の光学的に活性の物質の濃度は、液体がサンプルセル50を通って流れている最中に連続的に測定されることができる。しかしながら、この濃度は断続的に、およびサンプルセル50を通る流れが存在しないときにも測定されることができる。
【0042】
第1および第2の光検出器64および66はプロセッサ装置38に接続されているため、このプロセッサ装置38は、物質の測定された濃度が予め定められた要求を満たさない場合に警告信号を発生するように構成されることができる。この警告信号は、たとえば、透析液がバイパス導管25を通過するように弁23および24を設定することにより、たとえば、透析プロセスを停止させることができる。装置を操作している人に対してその液体中の濃度が正しくないことを警告するために、音響または光信号のような信号が生成されることもできる。
【0043】
図3には、測定装置48の別の実施形態が概略的に示されている。図2と同じ参照符号が対応した構成要素に対して使用されている。この実施形態によると、サンプルセル50の前にビームスプリッタ62は存在しない。図2中の第2の偏光器63は偏光ビームスプリッタ68によって置換されている。この偏光ビームスプリッタ68は、この図の平面において偏光された光がビームスプリッタ68を通って伝送され、一方その平面に対して垂直な偏光された光がビームスプリッタ68によって第2の光検出器66に反射されるように設計されることができる。したがって、光検出器64と光検出器66とにより検出された光強度の比は、偏光平面の回転に依存しており、それによってサンプルセル50中の光学的に活性の物質の濃度に依存している。図3の実施形態には、光検出器64と光検出器66とにより検出された光強度の比が解析されるため、光源58から放射された光の強度の変化が検出に影響を与えないという利点がある。さらに、サンプルセル50の中の液体の不透明度は、測定の結果に影響を与えない。図2および図3は、測定装置48の2つの可能な実施形態を概略的に示していることに注意すべきである。これらの実施形態に対する変更または別の実施形態は、本発明の技術的範囲を逸脱することなく当業者に明らかである。
【0044】
本発明によるシステムは、たとえば、液体バッグ39の形態の容器等の、解析される液体を含む容器39と共に上述された装置を備えている。したがって、図1はまた本発明によるシステムの1実施形態を示している。上述したように、液体バッグ39は、複数の室42、44を備えていてもよい。液体バッグ39から装置に供給されたグルコースのような物質の濃度は少なくとも100g/lであることが好ましく、少なくとも300g/lであることがさらに好ましい。本発明に含まれる測定装置48は、それが簡単で廉価な方法で構成可能であるため、このような比較的高い濃度を測定するのにとくに有用である。
【0045】
図4は、血液透析、血液透析濾過、血液濾過または腹膜透析用の装置中におよび、またはこの装置を通って液体が供給されるように構成されている透析および、または輸液中の光学的に活性の物質の濃度の測定を行う本発明による方法のフローチャートを概略的に示している。この方法をどのようにして行うかを示すこの例によると、この方法は以下のステップを含んでいる。
【0046】
容器39が設けられる。この容器39は少なくとも2つの室42、44を備えたフレキシブルな液体バッグ39である。2つの室42、44の内容物は、その液体が容器39を出る前に混合される。測定が行われた位置における液体中の物質の濃度は、少なくとも100g/lである。液体は容器39から装置に供給される。液体は、好ましくは装置への入口32において少なくとも部分的に透明な導管50を通過する。平面偏光された光ビームが生成される。この平面偏光された光ビームは液体を透過される。偏光された光ビームが液体を通過したときにそのビームの偏光の平面が回転された角度を示すエンティティが測定される。したがって物質の濃度の指示が得られる。
【0047】
本発明は示されている実施形態に制限されず、添付された特許請求の範囲の技術的範囲内で変更され、修正されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明による透析装置およびシステムの概略図。
【図2】本発明による装置およびシステムにおいて使用されることのできる測定装置の概略図。
【図3】測定装置の別の実施形態の概略図。
【図4】本発明による方法の1実施形態の概略的なフローチャート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析液および、または輸液が流れるように意図された少なくとも1つの導管(10,14)と、前記液体中の少なくとも1つの物質を測定するための測定装置(48)とを備えている血液透析、血液透析濾過、血液濾過または腹膜透析用の装置において、
測定される前記物質は光学的に活性の物質であり、測定装置(48)は、液体中の前記物質が前記液体を透過された偏光された光ビームに与える影響を測定することにより前記液体中の前記物質の濃度を測定するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
異なった物質に対する複数の入口(26,28,30,32)を備えており、前記装置は、前記入口を介して導入された異なった物質が前記装置中で互いに混合されるように構成されており、測定装置(48)は、前記液体が装置中で前記入口(26,28,30,32)を通って導入されたその他全ての物質と混合されることによりその最終的な形態で得られる前に、前記液体中の前記物質の濃度が測定されるように前記装置に、またはその中に位置されている請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記複数の入口(26,28,30,32)は、測定される液体が装置中に導入される第1の入口(32)を備えており、測定装置(48)は、前記第1の入口(32)を通って導入された前記液体が前記複数の入口の他のもの(26,28,30)を通って導入されたその他の物質と装置中で混合される前に、前記液体中の前記物質の濃度が測定されるように前記装置に、またはその中に位置されている請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記測定装置は、100g/lより上である前記物質の濃度を測定するように設計されている請求項1乃至3のいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記測定装置は、前記液体中の糖の濃度を測定するように設計されている請求項1乃至4のいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記糖はグルコースである請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記液体中の前記物質の測定された濃度が予め定められた要求を満たさない場合に警告信号を発生するように構成された手段(38)を備えている請求項1乃至6のいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記装置中に、または前記装置への1つの入口(32)に少なくとも1つの部分的に透明な導管(50)を備えており、測定される液体はこの導管(50)を通過し、前記測定装置(48)は、少なくとも部分的に透明な導管(50)において測定される液体を通過される偏光された光ビームを生成するように位置されて構成されている請求項1乃至7のいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記測定装置(48)は、平面偏光された光ビームを供給するように構成されている請求項1乃至8のいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
前記測定装置(48)は、前記偏光された光ビームが液体を通過したときに前記偏光された光ビームの偏光平面が回転された角度を示すエンティティを測定する測定手段(38,64,66)により構成されている請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記測定手段(38,64,66)は光強度検出器である請求項10記載の装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項記載の装置および液体を含む容器(39)を備えており、前記容器(39)は、この容器(39)中の液体が装置に供給されるように装置に接続されており、前記測定装置(48)は、容器(39)からの液体中の前記物質の濃度を測定するように構成されているシステム。
【請求項13】
容器(39)は少なくとも2つの室(42,44)を備えており、これらの室(42,44)の内容物は、その液体が容器(39)を出る前に混合される請求項12記載のシステム。
【請求項14】
前記容器(39)はフレキシブルな液体バッグである請求項12または13記載のシステム。
【請求項15】
前記容器(39)中の前記物質の濃度は少なくとも100g/lである請求項12乃至14のいずれか1項記載のシステム。
【請求項16】
液体が血液透析、血液透析濾過、血液濾過または腹膜透析用の装置に供給され、および、またはこの装置を通って供給されるように構成されている透析液および、または輸液中の光学的に活性の物質の濃度の測定方法において、
偏光された光ビームを供給し、
偏光された光ビームを前記液体を通って透過させ、
液体中の前記物質の濃度の表示が得られるように液体中の前記物質がこの液体を通過された偏光された光ビームに与える影響を検出するステップを含んでいる方法。
【請求項17】
前記物質は糖である請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記糖はグルコースである請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記液体は、前記装置において別の物質と混合され、および、または希釈される濃縮液であり、別の物質と混合され、および、または希釈された液体が前記装置においてその最終的な形態で得られる前に、前記液体において測定が行われる請求項16乃至18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記液体は、前記容器(39)から前記装置に供給される請求項16乃至19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
容器(39)は少なくとも2つの室(42,44)を備えており、これらの室(42,44)の内容物は、その液体が容器(39)を出る前に混合される請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記容器(39)はフレキシブルな液体バッグである請求項20または21記載の方法。
【請求項23】
測定が行われる位置における前記液体中の前記物質の濃度は、少なくとも100g/lである請求項16乃至22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記液体中の前記物質の測定された濃度が予め定められた要求を満たさない場合には警告信号を発生する手段(38)が設けられている請求項16乃至23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記液体は、前記装置中における、または前記装置への1つの入口(32)における少なくとも部分的に透明な導管(50)を通って供給され、前記測定は、少なくとも部分的に透明な導管(50)において前記偏光された光ビームにより前記液体を通過させることにより行われる請求項16乃至24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記偏光された光ビームは平面偏光された光ビームである請求項16乃至25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
液体中の前記物質が偏光された光ビームに与える影響の検出は、前記偏光された光ビームが液体を通過したときに前記偏光された光ビームの偏光平面が回転された角度を示すエンティティを測定することにより行われる請求項26記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−505680(P2007−505680A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526852(P2006−526852)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001313
【国際公開番号】WO2005/028001
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(501473877)ガンブロ・ルンディア・エービー (49)
【氏名又は名称原語表記】GAMBRO LUNDIA AB
【Fターム(参考)】