説明

衝撃エネルギ吸収部材及びその製造方法

【課題】筒状の本体部2を座屈変形させることなく筒軸Z方向に安定して変形させることが可能でかつ取扱い性に優れた衝撃エネルギ吸収部材1を提供する。
【解決手段】本体部2が、分割変形部3と境界部4とが一体成形されてなり、この境界部4が、本体部2径方向の外側に向かって筒軸Z方向の一方側又は他方側に傾斜する傘状をなし、筒軸Z方向に隣り合う任意の2つの境界部4が、本体部2径方向の外側に向かって互いに反対側に傾斜し、更に境界部4が、本体部2に対して筒軸Z方向に所定以上の圧縮荷重が入力されたときに、境界部4を挟む2つの分割変形部3を、筒軸Z方向への圧縮塑性変形と同時に本体部2径方向の互いに反対側へそれぞれ塑性変形させるとともに、該境界部を挟む2つの分割変形部3の境界側端部が本体部2径方向の互いに反対側へそれぞれせん断変形するのを促進するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状の本体部に対して筒軸方向に入力される圧縮荷重を吸収する、車両のクラッシュカン等に好適な衝撃エネルギ吸収部材及びその製造方法に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば車両のフロントサイドフレームの先端又はリヤサイドフレームの後端に、衝撃エネルギ吸収部材としてクラッシュカンを設けて、このクラッシュカンにより、車両の正面衝突時や後面衝突時の衝撃エネルギ(衝撃圧縮荷重)を吸収するようにすることはよく知られている。
【0003】
上記クラッシュカン等の衝撃エネルギ吸収部材においては、衝撃エネルギの吸収性能を向上させるべく種々の提案がなされている。例えば特許文献1では、衝撃エネルギ吸収部材の筒状の本体部を、少なくとも1つの短筒形状の第1部分と、この第1部分に対して同心軸状に重ねて配置された少なくとも1つの短筒形状の第2部分とで構成し、上記第1部分と第2部分との接続部分を上記同心軸に対して傾斜する部分を含む構成として、本体部に対して筒軸方向に圧縮荷重が入力されたときに、第1部分を縮径させつつ第2部分を拡径させて、第1部材を第2部材の内側中空部に押し込むようにしている。この構成により、不安定な座屈現象の発生を抑制して変形モードを安定させ、これにより衝撃エネルギの吸収性能を高めるようにしている。
【特許文献1】国際公開第2006/025559号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1のものでは、本体部に対して筒軸方向に圧縮荷重が入力されたときにおいて、第1部分と第2部分とを接続部分で分離させて第1部材を第2部材の内側中空部に押し込む際に、第1部材が第2部材の内側中空部にスムーズに押し込まれずに、第1部材又は第2部材が座屈変形する可能性があり、衝撃エネルギ吸収部材を安定して変形させることが困難になる。この座屈変形を確実に防止するためには、第1及び第2部分の長さをかなり短くしておく必要があるが、この場合、車両に生じるような圧縮荷重に対応可能にしようとすると、第1及び第2部分の数がかなり多くなる。また、第1部材を第2部材の内側中空部にスムーズに押し込むためには、第1部分と第2部分とは単に接触しているか、又は固定されていたとしても、その固定力を小さくしておく必要があるが、上記のように第1及び第2部分の数がかなり多くなると、衝撃エネルギ吸収部材の運搬時や車両等への組付け時に第1部分又は第2部分が脱落する可能性があり、取扱い性が悪いという問題がある。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、筒状の本体部を座屈変形させることなく本体部筒軸方向に安定して変形させることが可能でかつ取扱い性に優れた衝撃エネルギ吸収部材を提供しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明では、筒状の本体部を有し、該本体部に対して筒軸方向に入力される圧縮荷重を吸収する衝撃エネルギ吸収部材を対象として、上記本体部は、金属からなりかつ所定以上の上記圧縮荷重を受けて本体部筒軸方向に圧縮塑性変形するとともに本体部筒軸方向に3つ以上に分割された分割変形部と、該3つ以上の分割変形部間の複数の境界にそれぞれ設けられた複数の境界部とが一体成形されてなり、上記境界部は、本体部径方向の外側に向かって本体部筒軸方向の一方側又は他方側に傾斜する傘状をなし、上記本体部筒軸方向に隣り合う任意の2つの境界部は、本体部径方向の外側に向かって互いに反対側に傾斜し、更に上記境界部は、上記本体部に上記所定以上の圧縮荷重が入力されたときに、該境界部を挟む2つの分割変形部を、本体部筒軸方向への圧縮塑性変形と同時に本体部径方向の互いに反対側へそれぞれ塑性変形させるとともに、該境界部を挟む2つの分割変形部の境界側端部が本体部径方向の互いに反対側へそれぞれせん断変形するのを促進するものであるとする。
【0007】
上記の構成により、本体部に対して筒軸方向に所定以上の圧縮荷重が入力されたときに、分割変形部は、傘状の境界部によって、本体部筒軸方向への圧縮塑性変形と同時に本体部径方向の外側又は内側へ塑性変形し、このような分割変形部の塑性変形により圧縮荷重(衝撃エネルギ)を吸収することができる。また、境界部を挟む2つの分割変形部は、本体部筒軸方向の長さが短くなるとともに本体部径方向の互いに反対側に広がるようにそれぞれ塑性変形し、本体部径方向の外側へ塑性変形する分割変形部と、本体部径方向の内側へ塑性変形する分割変形部とが、本体部筒軸方向に交互に並ぶので、本体部全体として座屈変形が生じずに筒軸方向に安定して変形する。しかも、境界部によって、境界部を挟む2つの分割変形部の境界側端部が本体部径方向の互いに反対側へそれぞれせん断変形して、分割変形部が本体部径方向の外側又は内側へより一層塑性変形し易くなる。すなわち、本体部に所定以上の圧縮荷重が入力されたときに、境界部ないしその近傍には、該境界部の傾斜によって、分割変形部の境界側端部を境界部に対して本体部径方向の外側又は内側(境界部を挟む2つの分割変形部では互いに逆側になる)へずらすようなせん断力が作用する。そして、境界部を、該せん断力により分割変形部の境界側端部が境界部に対してせん断変形し易くなるような材料で構成しておけば、上記せん断力によって分割変形部の境界側端部が境界部に対してせん断変形して、分割変形部の、本体部径方向の外側又は内側への塑性変形が促進される。
【0008】
したがって、本体部に対して、筒軸方向の圧縮荷重と同時に、本体部を径方向に倒すような力が入力されたとしても、本体部は座屈変形し難くて筒軸方向に確実に変形し、これにより、圧縮荷重の吸収性能を高めることができる。また、分割変形部や境界部の数が多くなっても、分割変形部と境界部とを一体成形により互いに強固にかつ容易に固定することができ、衝撃エネルギ吸収部材の運搬時や車両等への組付け時における取扱い性を向上させることができる。
【0009】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記分割変形部は、アルミニウム合金鋳物からなり、上記境界部は、金属板からなるものとする。
【0010】
このことで、衝撃エネルギ吸収部材の軽量化を図ることができる。また、境界部の傘状の金属板により、境界部を挟む2つの分割変形部を本体部径方向の互いに反対側へそれぞれ塑性変形させることができるとともに、鋳物と金属板という異種のもの同士の接合では、せん断力に対する接合強度が比較的小さくなるので、境界部を挟む2つの分割変形部の境界側端部を本体部径方向の互いに反対側へそれぞれせん断変形させることが可能になる。
【0011】
請求項3の発明では、請求項1の発明において、上記分割変形部は、アルミニウム合金鋳物からなり、上記境界部は、強化繊維が含有されたアルミニウム合金鋳物からなるとする。
【0012】
このことにより、衝撃エネルギ吸収部材の軽量化を図ることができる。また、境界部に強化繊維が含有されていることで、金属板と同様に、境界部を挟む2つの分割変形部を本体部径方向の互いに反対側へそれぞれ塑性変形させることができるとともに、境界部の強化繊維体積率を適切に設定することによって、境界部を挟む2つの分割変形部の境界側端部が本体部径方向の互いに反対側へそれぞれせん断変形するのを促進することが可能になる。すなわち、境界部では強化繊維の分だけ金属(アルミニウム合金)の含有量が少なく、また、通常、強化繊維は境界部の厚み方向の端面に略沿って延びるように配設されるので、せん断力に対する分割変形部と境界部との接合強度が低くなり、この結果、境界部を挟む2つの分割変形部の境界側端部が境界部に対してそれぞれせん断変形し易くなる。よって、これら2つの分割変形部の境界側端部を本体部径方向の互いに反対側へそれぞれせん断変形させることが可能になる。
【0013】
請求項4の発明では、請求項2又は3の発明において、上記アルミニウム合金鋳物は、Al−Mn−Fe−Mg系合金鋳物であるものとする。
【0014】
すなわち、Al−Mn−Fe−Mg系合金は、各成分の含有量を適切に設定することによって、アルミニウム合金の強度を維持しつつ鋳造性及び伸びの両方を同時に向上させて、鋳造のままでも高い伸びを有する高延性のものとすることができる。よって、衝撃エネルギ吸収部材の軽量化を図りつつ、圧縮荷重の吸収性能を高めることができる。
【0015】
請求項5の発明では、請求項1〜4のいずれか1つの発明において、衝撃エネルギ吸収部材は、車両のフロントサイドフレーム又はクラッシュカンに用いられるものとする。
【0016】
このことにより、車両の正面衝突時や後面衝突時の衝撃エネルギを確実に吸収して、車両の安全性を高めることが可能になる。また、分割変形部を、例えばアルミニウム合金鋳物で構成することで、車両の軽量化を図りつつ、安全性の向上化を図ることができる。
【0017】
請求項6の発明は、筒状の本体部を有し、該本体部に対して筒軸方向に入力される圧縮荷重を吸収する衝撃エネルギ吸収部材の製造方法の発明であり、この発明では、上記本体部は、金属からなりかつ所定以上の上記圧縮荷重を受けて本体部筒軸方向に圧縮塑性変形するとともに本体部筒軸方向に3つ以上に分割された分割変形部と、該3つ以上の分割変形部間の複数の境界にそれぞれ設けられた複数の境界部とからなり、上記境界部は、本体部径方向の外側に向かって本体部筒軸方向の一方側又は他方側に傾斜する傘状をなし、上記本体部筒軸方向に隣り合う任意の2つの境界部は、本体部径方向の外側に向かって互いに反対側に傾斜し、更に上記境界部は、上記本体部に上記所定以上の圧縮荷重が入力されたときに、該境界部を挟む2つの分割変形部を、本体部筒軸方向への圧縮塑性変形と同時に本体部径方向の互いに反対側へそれぞれ塑性変形させるとともに、該境界部を挟む2つの分割変形部の境界側端部が本体部径方向の互いに反対側へそれぞれせん断変形するのを促進するものであり、上記複数の境界部をそれぞれ形成するための複数の境界部形成部材を作製する工程と、上記作製した境界部形成部材を金型のキャビティ内にセットした状態で、上記金属の溶湯を該キャビティ内に供給することで、上記分割変形部と境界部とを一体成形する工程とを含むものとする。
【0018】
この発明により、分割変形部及び境界部を容易に一体成形することができ、本体部筒軸方向に安定して変形させることが可能でかつ取扱い性に優れた衝撃エネルギ吸収部材を容易に製造することができる。
【0019】
請求項7の発明では、請求項6の発明において、上記金属は、アルミニウム合金であり、上記境界部形成部材は、金属板であるものとする。
【0020】
このことにより、請求項2の発明に係る衝撃エネルギ吸収部材を容易に製造することができる。
【0021】
請求項8の発明では、請求項6の発明において、上記金属は、アルミニウム合金であり、上記境界部形成部材は、強化繊維成形体からなるものとする。
【0022】
このことにより、請求項3の発明に係る衝撃エネルギ吸収部材を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明の衝撃エネルギ吸収部材によると、本体部が、分割変形部と境界部とが一体成形されてなり、この境界部が、本体部径方向の外側に向かって本体部筒軸方向の一方側又は他方側に傾斜する傘状をなし、本体部筒軸方向に隣り合う任意の2つの境界部が、本体部径方向の外側に向かって互いに反対側に傾斜し、更に境界部が、本体部に対して筒軸方向に所定以上の圧縮荷重が入力されたときに、該境界部を挟む2つの分割変形部を、本体部筒軸方向への圧縮塑性変形と同時に本体部径方向の互いに反対側へそれぞれ塑性変形させるとともに、該境界部を挟む2つの分割変形部の境界側端部が本体部径方向の互いに反対側へそれぞれせん断変形するのを促進するように構成したことにより、本体部が筒軸方向に安定して変形するようになり、圧縮荷重の吸収性能を高めることができるとともに、衝撃エネルギ吸収部材の運搬時や車両等への組付け時における取扱い性を向上させることができる。
【0024】
また、本発明の衝撃エネルギ吸収部材の製造方法によると、境界部を形成するための境界部形成部材を作製する工程と、該作製した境界部形成部材を金型のキャビティ内にセットした状態で、金属の溶湯を該キャビティ内に供給することで、分割変形部と境界部とを一体成形する工程とを含むようにしたことにより、本体部を座屈変形させることなく筒軸方向に安定して変形させることが可能でかつ取扱い性に優れた衝撃エネルギ吸収部材を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る衝撃エネルギ吸収部材1を示し、この衝撃エネルギ吸収部材1は、筒状(本実施形態では円筒状)の本体部2を有していて、該本体部2に対して筒軸Z方向(図1の上下方向)に入力される圧縮荷重を吸収するものである。
【0027】
上記衝撃エネルギ吸収部材1は、本実施形態では、図2に示すように、車両100の前部における車幅方向両側位置で前後方向にそれぞれ延びるように設けられる左右のフロントサイドフレーム91の前端とフロントバンパー93における車幅方向に延びるバンパーレインフォースメント93aの左右両端部との間にそれぞれ介設されるクラッシュカン92として用いられる。この場合、衝撃エネルギ吸収部材1は、筒軸Z方向が車両100の前後方向に一致するように配設されて、車両100の正面衝突時にバンパーレインフォースメント93aから入力される衝突エネルギ(衝撃圧縮荷重)を吸収する。
【0028】
尚、衝撃エネルギ吸収部材1は、上記クラッシュカン92に限らず、上記左右のフロントサイドフレーム91の一部(特に前端部分)、車両100の後部における車幅方向両側位置で前後方向にそれぞれ延びるように設けられる左右のリヤサイドフレーム(図示せず)の一部(特に後端部分)、又は、この各リヤサイドフレームの後端とリヤバンパー94のバンパーレインフォースメント(図示せず)との間に介設されるクラッシュカン(図示せず)に用いてもよい。また、衝撃エネルギ吸収部材1は、車両100において衝撃エネルギを吸収する必要がある部分に広く用いることができるとともに、車両100以外のものに用いることも可能である。
【0029】
上記本体部2における筒軸Z方向の両側端には、衝撃エネルギ吸収部材1を上記フロントサイドフレーム91の前端とバンパーレインフォースメント93aとにそれぞれ取付固定するための第1及び第2固定部7,8がそれぞれ設けられている。第1固定部7には、該第1固定部7をフロントサイドフレーム91の前端に締結固定するためのボルトが挿通される複数のボルト挿通孔7aが形成されており、第2固定部8には、該第2固定部8をバンパーレインフォースメント93aに締結固定するためのボルトが挿通される複数のボルト挿通孔8aが形成されている。これら第1及び第2固定部7,8の形状は、衝撃エネルギ吸収部材1の適用箇所によって異なる。
【0030】
本実施形態のように衝撃エネルギ吸収部材1をクラッシュカン92に用いる場合、本体部2の外径Dは40〜100mmが好ましく、肉厚tは2〜8mmが好ましく、長さLは80〜150mmが好ましい。尚、本体部の外径Dは、図1では、本体部2の筒軸Z方向全体に亘って一定に記載しているが、厳密には一定ではなくて、第2固定部8側に向かって徐々に小さくなっている。これは、衝撃エネルギ吸収部材1を後述の鋳造金型30(図7参照)で鋳造した後に該鋳造金型30からの離型を容易にするためである。
【0031】
上記本体部2は、該本体部2に対する筒軸Z方向の所定以上の圧縮荷重を受けて筒軸Z方向に圧縮塑性変形するとともに筒軸Z方向に3つ以上(本実施形態では6つ)に分割された分割変形部3と、該3つ以上の分割変形部3間の境界にそれぞれ設けられた複数(分割変形部3よりも1つ少なく、5つとなる)の境界部4とが一体成形されてなる。本体部2の第1固定部7側の端に位置する分割変形部3は、第1固定部7と一体成形されてなり、本体部2の第2固定部8側の端に位置する分割変形部3は、第2固定部8と一体成形されてなる。
【0032】
尚、分割変形部3は3つ以上あればよい(境界部4は2つ以上となる)が、分割変形部3の数は、4〜8程度の偶数であることが好ましい。このように偶数にすると、後述の如く、本体部2径方向の外側へ塑性変形する分割変形部3と本体部2径方向の内側へ塑性変形する分割変形部3との数を同じにすることができる。
【0033】
上記境界部4は、本体部2径方向の外側に向かって筒軸Z方向の一方側又は他方側に傾斜する傘状をなしている。これにより、境界部4は、本体部2に対して筒軸Z方向に所定以上の圧縮荷重が入力されたときに、該境界部4を挟む2つの分割変形部3を、筒軸Z方向への圧縮塑性変形と同時に本体部2径方向の互いに反対側へそれぞれ強制的に塑性変形させる。
【0034】
そして、筒軸Z方向に隣り合う任意の2つの境界部4は、本体部2径方向の外側に向かって互いに反対側に傾斜している。これにより、本体部2径方向の外側へ塑性変形する分割変形部3(本体部2の第2固定部8側の端から数えて奇数番目に位置する3つの分割変形部3)と、本体部2径方向の内側へ塑性変形する分割変形部3(本体部2の第2固定部8側の端から数えて偶数番目に位置する3つの分割変形部3)とが、筒軸Z方向に交互に並ぶことになる。尚、上記奇数番目に位置する分割変形部3は、その筒軸Z方向の長さが本体部2径方向の外側に向かって大きくなる形状をなし、上記偶数番目に位置する分割変形部3は、その筒軸Z方向の長さが本体部2径方向の外側に向かって小さくなる形状をなしている。
【0035】
また、上記境界部4は、本体部2に対して筒軸Z方向に所定以上の圧縮荷重が入力されたときに、該境界部4を挟む2つの分割変形部3の境界側端部が本体部2径方向の互いに反対側へそれぞれせん断変形するのを促進する役割を果たす。すなわち、本体部2に所定以上の圧縮荷重が入力されたときに、境界部4ないしその近傍には、境界部4の傾斜によって、分割変形部3の境界側端部を境界部4に対して本体部2径方向の外側又は内側(境界部4を挟む2つの分割変形部3では互いに逆側になる)へずらすようなせん断力が作用する。このせん断力によって分割変形部3の境界側端部が境界部4に対してせん断変形して、分割変形部3の、本体部径方向の外側又は内側への塑性変形が促進される。
【0036】
上記境界部4の傾斜角度θ(筒軸Z方向に対して垂直な面に対する傾斜角度)は、30°〜60°が好ましく、特に好ましいのは40°〜50°である。本体部2径方向の外側に向かって筒軸Z方向の一方側に傾斜する境界部4の傾斜角度と、他方側に傾斜する境界部4の傾斜角度とは同じであることが好ましいが、互いに異なっていてもよい。
【0037】
上記分割変形部3の形状及び大きさは全て略同じであることが好ましい。これは、圧縮加重が全ての分割変形部3に均一に作用して特定の分割変形部3に集中しないようにするためである。
【0038】
本実施形態では、上記分割変形部3はアルミニウム合金鋳物からなり、上記境界部4は、強化繊維が含有されたアルミニウム合金鋳物からなる。これら分割変形部3及び境界部4は、後述の如くアルミニウム合金の溶湯と強化繊維成形体からなる予備成形体15(図4参照)との複合化により一体成形されたものである。
【0039】
上記アルミニウム合金として好ましいのは、Al−Mn−Fe−Mg系合金である。このAl−Mn−Fe−Mg系合金は、各成分の含有量を適切に設定することによって、アルミニウム合金の強度を維持しつつ鋳造性及び伸びの両方を同時に向上させて、鋳造のままでも高い伸びを有する高延性のものとすることができる。具体的には、0.5〜2.5%のMn成分と、0.1〜1.5%のFe成分と、0.01〜1.2%のMg成分と、残部が不可避不純物を含むAl成分とからなるアルミニウム合金とする(含有量の数値は質量百分率である)。
【0040】
また、上記各成分含有量を有するAl−Mn−Fe−Mg系合金に、質量百分率で0.1〜0.2%のTi成分、質量百分率で0.01〜0.1%のB成分、及び、質量百分率で0.01〜0.2%のBe成分のうちの少なくとも1つを添加することがより好ましい。すなわち、Ti成分、B成分及びBe成分は、鋳物の結晶粒を微細化することによりその特性を向上させて鋳造割れ性を改善することができるが、含有量が多すぎると、粗大化合物が生成されて伸びが低下する。そこで、Ti成分、B成分及びBe成分の各含有量を上記範囲に設定して、伸びの低下を防ぎつつ、鋳造割れ性をさらに良好にする。
【0041】
尚、上記Al−Mn−Fe−Mg系合金に代えて、例えば、Al−Si系合金を用いてもよく(この合金の場合には、高真空ダイカスト法で鋳造する)、Mg系合金やその他の金属を用いてもよい。
【0042】
上記境界部4の強化繊維としては、アルミナ繊維、シリカ繊維、シリコンカーバイト繊維等が好ましい。アルミナ繊維及びシリカ繊維の場合には、例えば、平均繊維径3μm〜5μm、繊維長さ5mm〜10mmのものを用い、シリコンカーバイト繊維の場合には、例えば、平均繊維径10μm〜15μm、繊維長さ5mm〜10mmのものを用いればよい。
【0043】
上記境界部4の強化繊維体積率は、通常では5〜10%であるが、本実施形態では、これよりも大きくする。また、後述の製造方法から強化繊維は境界部4の厚み方向の端面に略沿って延びるように配設されており、強化繊維体積率が大きいことと相俟って、上記せん断力に対する分割変形部3と境界部4との接合強度が低くなり、この結果、境界部4を挟む2つの分割変形部3の境界側端部が境界部4に対してそれぞれせん断変形し易くなる。すなわち、これら2つの分割変形部3の境界側端部が本体部2径方向の互いに反対側へそれぞれせん断変形し易くなる。このせん断変形を促進するために境界部4の強化繊維体積率として好ましい範囲は20〜25%である。これは、20%未満では、上記せん断変形を十分に促進させることができない一方、25%を超えると、予備成形体15内の空孔が小さくなって溶湯の充填性が悪化するからである。
【0044】
図3に示すように、分割変形部3は、本体部2に対して筒軸Z方向に所定以上の圧縮荷重が入力されたときに、筒軸Z方向に圧縮塑性変形する。また、上記境界部4によって、本体部2の第2固定部8側の端から数えて奇数番目の分割変形部3は、筒軸Z方向への圧縮塑性変形と同時に本体部2径方向の外側へ塑性変形し、本体部2の第2固定部8側の端から数えて偶数番目の分割変形部3は、筒軸Z方向への圧縮塑性変形と同時に本体部2径方向の内側へ塑性変形することになる。しかも、境界部4によって、該境界部4を挟む2つの分割変形部3の境界側端部が本体部2径方向の互いに反対側へそれぞれせん断変形する。すなわち、上記奇数番目の分割変形部3の境界側端部は、境界部4に対して本体部2径方向の外側へせん断変形し、上記偶数番目の分割変形部3は、境界部4に対して本体部2径方向の内側へせん断変形する。これにより、上記奇数番目の分割変形部3は、本体部2径方向の外側へより一層塑性変形し易くなり、上記偶数番目の分割変形部3は、本体部2径方向の内側へより一層塑性変形し易くなる。この分割変形部3の塑性変形によって上記圧縮加重を吸収する。このとき、分割変形部3は、その筒軸Z方向の長さが短くなりながら本体部2径方向の外側又は内側へ広がることにより、本体部2全体として座屈変形が生じずに筒軸Z方向に安定して変形する。尚、分割変形部3は、筒軸Z方向の圧縮塑性変形に伴って、本体部2径方向において境界部4により塑性変形させられる側とは反対側へも少し塑性変形することになるが、その反対側への塑性変形量は、境界部4により強制的に変形させられる側への塑性変形量に比べてかなり小さい。
【0045】
上記分割変形部3の塑性変形が進行するに連れて、境界部4の傾斜角度θが小さくなるが、境界部4は、その傾斜角度θが0になるまでは、分割変形部3を、筒軸Z方向への圧縮塑性変形と同時に本体部2径方向の外側又は内側へ塑性変形させるとともに、分割変形部3の境界側端部を境界部4に対して本体部2径方向の外側又は内側へせん断変形させる役割を果たす。そして、傾斜角度θが0になったとしても、その時点では既に、分割変形部3の塑性変形量がかなり大きくなっており、この結果、その時点以降も圧縮荷重が作用し続けたとしても、本体部2全体として座屈変形が生じずに筒軸Z方向に変形する。
【0046】
尚、本体部2への上記所定以上の圧縮加重の入力時に、分割変形部3と境界部4との間の界面で破断(せん断破壊)する可能性はあるが、たとえ破断したとしても、分割変形部3は、境界部4によって本体部2径方向の外側又は内側へ塑性変形することに変わりはなく、寧ろ、破断により、本体部2径方向の外側又は内側へ塑性変形し易くなる。
【0047】
また、本実施形態では、境界部4は、分割変形部3の構成材料であるアルミニウム合金と強化繊維との複合化により強化されて、筒軸Z方向の圧縮荷重に対して分割変形部3よりも圧縮塑性変形し難くかつ破壊し難くなっている(つまり上記圧縮荷重に対する強度及び剛性が分割変形部3よりも高い)が、本体部2に対して筒軸Z方向に、境界部4が圧縮塑性変形するような大きさの圧縮加重が入力されたとしても、境界部4の厚みが小さいので、境界部4の圧縮塑性変形による傾斜角度θの変化は小さく、よって、境界部4としての上記役割を果たす。
【0048】
上記衝撃エネルギ吸収部材1を製造するには、先ず、図4に示すように、上記アルミニウム合金の溶湯との複合化により上記複数の境界部4をそれぞれ形成することが可能な複数の予備成形体15(複数の境界部4をそれぞれ形成するための複数の境界部形成部材に相当)を成形する。この各予備成形体15の形状は、境界部4と同じく傘状をなしている。
【0049】
各予備成形体15は、以下のようにして作製する。すなわち、最初に、不図示の容器内に、上記強化繊維と、水と、添加剤とを入れて撹拌混合してスラリー24(図5参照)を調製する。上記添加剤は、予備成形体15の強度を確保するための強化剤(例えば粒状アルミナゾル)、該強化剤の強化繊維への付着を促進させるための付着促進剤(例えば硫酸アンモン)、及び、強化繊維の分散性を向上させるための分散剤(例えばポリアミド)である。
【0050】
続いて、図5に示すように、濾過装置20により、スラリー24中の水等の液体成分を除去する。この濾過装置20は、内部に多孔性フィルタ22が配設された容器21と、この容器21の底部と接続された吸引装置(図示せず)とを備えている。この多孔性フィルタ22の中央部には、上方に突出する突部22a(フィルタとしての機能はない)が形成され、この突部22aの周囲部分(フィルタとして機能する)は、境界部4の傾斜に対応するべく水平に対して傾斜している。そして、容器21内において多孔性フィルタ22における突部22aの周囲部分の上側に上記スラリー24を投入し、その後、上記吸引装置により、多孔性フィルタ22を介して、スラリー24中の水等の液体成分を除去(吸引脱水)する。
【0051】
次いで、図6に示すように、スラリー24中の液体成分を除去することにより得られた脱液体部材25を圧縮する。すなわち、上記容器21内において多孔性フィルタ22における突部22aの周囲部分の上側に脱液体部材25を配置したまま、脱液体部材25をその上方からパンチ27により加圧して予備成形体15の形状となるように圧縮成形する。上記パンチ27の下面の中央部には、上記突部22aが嵌合する嵌合孔27aが形成され、この嵌合孔27aの周囲部分は、境界部4の傾斜に対応するべく水平に対して傾斜している。
【0052】
続いて、上記圧縮成形した脱液体部材25を乾燥させた後に焼結する。この焼結は、例えば、640〜840℃で1.5時間行う。こうして強化繊維成形体からなる予備成形体15が完成する。
【0053】
次に、図7に示すような鋳造金型30を用いて衝撃エネルギ吸収部材1を製造(鋳造)する。この鋳造金型30は、固定金型プレート31に取付固定された固定金型32と、固定金型プレート31に対して図8の左右方向に移動可能に支持された可動金型プレート33に取付固定された可動金型34とを備えている。固定金型32には、可動金型34側に開口する凹陥部32aが形成されている一方、可動金型34には、その凹陥部32a内に入り込む突出部34aが形成され、これら凹陥部32a及び突出部34a間にキャビティ35が形成される。上記突出部34aの外周面には、複数の予備成形体15をそれぞれ支持するための複数の溝(図示せず)が形成されている。また、固定金型32には、第2固定部8の複数のボルト挿通孔8aをそれぞれ形成するための複数のピン32bが設けられており、可動金型34には、第1固定部7の複数のボルト挿通孔7aをそれぞれ形成するための複数のピン34bが設けられている。
【0054】
また、上記鋳造金型30には、上記キャビティ35内にアルミニウム合金の溶湯を供給するための射出スリーブ37が設けられている。この射出スリーブ37には上記溶湯の給湯口37aが形成されている。また、射出スリーブ37内には、射出スリーブ37に対して摺動可能に嵌装された射出プランジャ38が設けられており、この射出プランジャ38を図8の左側へ移動させることで、給湯口37aから射出スリーブ37内に供給された溶湯をキャビティ35内へ射出する。
【0055】
上記鋳造金型30を用いて衝撃エネルギ吸収部材1を製造するには、先ず、型開き状態で、可動金型34の突出部34aに形成された複数の溝に、上記成形した複数の予備成形体15をそれぞれ支持させ、その後、可動金型34を固定金型32側へ移動させて型を閉じる。これにより、複数の予備成形体15が鋳造金型30のキャビティ15内にセットされた状態となる。
【0056】
続いて、射出スリーブ37内に給湯口37aからアルミニウム合金の溶湯(溶湯温度700℃程度)を供給し、この溶湯を射出プランジャ38によりキャビティ35内に射出して供給する。これにより、キャビティ35内における予備成形体15が存在しない部分では、分割変形部3並びに第1及び第2固定部7,8が一体成形されるとともに、各予備成形体15内の空孔に溶湯が充填されて予備成形体15と溶湯とが複合化され、このことで境界部4が分割変形部3と一体成形される。そして、キャビティ15内の溶湯が凝固すれば、衝撃エネルギ吸収部材1の鋳造が完了する。
【0057】
したがって、本実施形態では、衝撃エネルギ吸収部材1の本体部2が、分割変形部3と境界部4とが一体成形されてなり、この境界部4が、本体部2径方向の外側に向かって筒軸Z方向の一方側又は他方側に傾斜する傘状をなし、筒軸Z方向に隣り合う任意の2つの境界部4が、本体部2径方向の外側に向かって互いに反対側に傾斜し、更に境界部4が、本体部2に対して筒軸Z方向に所定以上の圧縮荷重が入力されたときに、境界部4を挟む2つの分割変形部3を、筒軸Z方向への圧縮塑性変形と同時に本体部2径方向の互いに反対側へそれぞれ塑性変形させるとともに、該境界部を挟む2つの分割変形部3の境界側端部が本体部2径方向の互いに反対側へそれぞれせん断変形するのを促進するように構成されているので、分割変形部3は、その筒軸Z方向の長さが短くなりながら本体部2の径方向外側又は内側へ広がるとともに、本体部2径方向の外側へ塑性変形する分割変形部3と、本体部2径方向の内側へ塑性変形する分割変形部3とが、筒軸Z方向に交互に並ぶことになり、これにより、本体部2全体として座屈変形が生じずに筒軸Z方向に安定して変形する。しかも、境界部4によるせん断変形促進機能によって、分割変形部3が本体部2径方向の外側又は内側へより一層塑性変形し易くなる。この結果、本体部2に対して、筒軸Z方向の圧縮荷重と同時に、本体部2を径方向に倒すような力が入力されたとしても、本体部2は座屈変形し難くて筒軸Z方向に確実に変形し、これにより、圧縮荷重の吸収性能を高めることができる。また、分割変形部3や境界部4の数が多くなっても、分割変形部3と境界部4とを一体成形により互いに強固にかつ容易に固定することができ、衝撃エネルギ吸収部材1の運搬時や車両への組付け時における取扱い性を向上させることができる。
【0058】
(実施形態2)
本実施形態は、境界部4の材料を上記実施形態1とは異ならせたものである。
【0059】
すなわち、本実施形態では、境界部4は、筒軸Z方向の圧縮荷重に対してアルミニウム合金鋳物よりも圧縮塑性変形し難くかつ破壊し難い金属板(本実施形態では、鋼板)からなる。
【0060】
このような鋼板からなる境界部4により、境界部4を挟む2つの分割変形部3を本体部2径方向の互いに反対側へそれぞれ塑性変形させることができる。また、アルミニウム合金鋳物と鋼板という異種のもの同士の接合では、せん断力に対する接合強度が比較的小さくなるので、境界部4を挟む2つの分割変形部3の境界側端部を本体部2径方向の互いに反対側へそれぞれせん断変形させることが可能になる。
【0061】
本実施形態の衝撃エネルギ吸収部材1を製造するには、先ず、複数の境界部4をそれぞれ形成するための複数の境界部形成部材を作製する。具体的には、鋼板を加工して境界部4の形状と同じになるように仕上げる。そして、この鋼板に対して、厚み方向に貫通する複数の貫通孔を形成する。こうして境界部形成部材が完成する。
【0062】
上記貫通孔は、キャビティ15内において上記溶湯が筒軸Z方向に流れるようにしかつ分割変形部3と境界部4とを確実に一体化するために設けるものであるが、その数が多くなりすぎると、境界部4によるせん断変形促進機能が低下するので、それらを考慮して貫通孔の数を設定する。
【0063】
尚、上記貫通孔は必ずしも形成する必要はない。貫通孔を形成しない場合には、キャビティ15内において上記溶湯が筒軸Z方向に流れるように、固定金型32に、溶湯が流れる流通溝を形成するようにすればよい。この流通溝に対応して成形された突出部は、鋳造後に除去すればよい。
【0064】
上記作製した境界部形成部材を、上記実施形態1の予備成形体15と同様に、鋳造金型30のキャビティ15内にセットした状態で、アルミニウム合金の溶湯を該キャビティ30内に供給することで、分割変形部3と境界部4(境界部形成部材)と第1及び第2固定部7,8とを一体成形する。このとき、境界部形成部材には貫通孔が形成されているので、キャビティ15内において上記溶湯は貫通孔を通して筒軸Z方向に流れるとともに、貫通孔により分割変形部3と境界部4とが確実に一体化されることになる。
【0065】
したがって、本実施形態においても、上記実施形態1と同様の作用効果が得られ、本体部2に対して筒軸Z方向に所定以上の圧縮荷重が入力されたときに、本体部2が筒軸Z方向に確実に変形して、その圧縮荷重の吸収性能を高めることができる。
【0066】
尚、上記実施形態2では、境界部4に鋼板を用いたが、その他種々の金属板を用いることができ、例えばアルミニウム板を用いることも可能である。境界部4の材料は、筒軸Z方向の圧縮荷重に対する強度及び剛性が分割変形部3よりも高いことが好ましいが、これには限られず、本体部2に対して筒軸Z方向に所定以上の圧縮荷重が入力されたときに、境界部4を挟む2つの分割変形部3を、筒軸Z方向への圧縮塑性変形と同時に本体部2径方向の互いに反対側へそれぞれ塑性変形させるとともに、該境界部を挟む2つの分割変形部3の境界側端部が本体部2径方向の互いに反対側へそれぞれせん断変形するのを促進する機能を有するものであれば、どのようなものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、筒状の本体部に対して筒軸方向に入力される圧縮荷重を吸収する衝撃エネルギ吸収部材及びその製造方法に有用であり、特に車両のクラッシュカン(車両前部に配設されるものと後部に配設されるものとを含む)、左右のフロントサイドフレーム及び左右のリヤサイドフレームに適用する場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施形態1に係る衝撃エネルギ吸収部材を示す断面図である。
【図2】衝撃エネルギ吸収部材が適用されるクラッシュカンを示す車両の前部を破断した側面図である。
【図3】衝撃エネルギ吸収部材の本体部に対して筒軸方向に所定以上の圧縮荷重が入力されたときの該本体部の変形状態を示す断面図である。
【図4】予備成形体を示す断面図である。
【図5】スラリー中の液体成分を除去している状態を示す濾過装置の容器の断面図である。
【図6】スラリー中の液体成分を除去することにより得られた脱液体部材を圧縮している状態を示す図5相当図である。
【図7】鋳造金型を示す断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 衝撃エネルギ吸収部材
2 本体部
3 分割変形部
4 境界部
15 予備成形体(境界部形成部材)
30 鋳造金型
35 キャビティ
91 フロントサイドフレーム
92 クラッシュカン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の本体部を有し、該本体部に対して筒軸方向に入力される圧縮荷重を吸収する衝撃エネルギ吸収部材であって、
上記本体部は、金属からなりかつ所定以上の上記圧縮荷重を受けて本体部筒軸方向に圧縮塑性変形するとともに本体部筒軸方向に3つ以上に分割された分割変形部と、該3つ以上の分割変形部間の複数の境界にそれぞれ設けられた複数の境界部とが一体成形されてなり、
上記境界部は、本体部径方向の外側に向かって本体部筒軸方向の一方側又は他方側に傾斜する傘状をなし、
上記本体部筒軸方向に隣り合う任意の2つの境界部は、本体部径方向の外側に向かって互いに反対側に傾斜し、
更に上記境界部は、上記本体部に上記所定以上の圧縮荷重が入力されたときに、該境界部を挟む2つの分割変形部を、本体部筒軸方向への圧縮塑性変形と同時に本体部径方向の互いに反対側へそれぞれ塑性変形させるとともに、該境界部を挟む2つの分割変形部の境界側端部が本体部径方向の互いに反対側へそれぞれせん断変形するのを促進するものであることを特徴とする衝撃エネルギ吸収部材。
【請求項2】
請求項1記載の衝撃エネルギ吸収部材において、
上記分割変形部は、アルミニウム合金鋳物からなり、
上記境界部は、金属板からなることを特徴とする衝撃エネルギ吸収部材。
【請求項3】
請求項1記載の衝撃エネルギ吸収部材において、
上記分割変形部は、アルミニウム合金鋳物からなり、
上記境界部は、強化繊維が含有されたアルミニウム合金鋳物からなることを特徴とする衝撃エネルギ吸収部材。
【請求項4】
請求項2又は3記載の衝撃エネルギ吸収部材において、
上記アルミニウム合金鋳物は、Al−Mn−Fe−Mg系合金鋳物であることを特徴とする衝撃エネルギ吸収部材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の衝撃エネルギ吸収部材において、
車両のフロントサイドフレーム又はクラッシュカンに用いられることを特徴とする衝撃エネルギ吸収部材。
【請求項6】
筒状の本体部を有し、該本体部に対して筒軸方向に入力される圧縮荷重を吸収する衝撃エネルギ吸収部材の製造方法であって、
上記本体部は、金属からなりかつ所定以上の上記圧縮荷重を受けて本体部筒軸方向に圧縮塑性変形するとともに本体部筒軸方向に3つ以上に分割された分割変形部と、該3つ以上の分割変形部間の複数の境界にそれぞれ設けられた複数の境界部とからなり、
上記境界部は、本体部径方向の外側に向かって本体部筒軸方向の一方側又は他方側に傾斜する傘状をなし、
上記本体部筒軸方向に隣り合う任意の2つの境界部は、本体部径方向の外側に向かって互いに反対側に傾斜し、
更に上記境界部は、上記本体部に上記所定以上の圧縮荷重が入力されたときに、該境界部を挟む2つの分割変形部を、本体部筒軸方向への圧縮塑性変形と同時に本体部径方向の互いに反対側へそれぞれ塑性変形させるとともに、該境界部を挟む2つの分割変形部の境界側端部が本体部径方向の互いに反対側へそれぞれせん断変形するのを促進するものであり、
上記複数の境界部をそれぞれ形成するための複数の境界部形成部材を作製する工程と、
上記作製した境界部形成部材を金型のキャビティ内にセットした状態で、上記金属の溶湯を該キャビティ内に供給することで、上記分割変形部と境界部とを一体成形する工程とを含むことを特徴とする衝撃エネルギ吸収部材の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の衝撃エネルギ吸収部材の製造方法において、
上記金属は、アルミニウム合金であり、
上記境界部形成部材は、金属板であることを特徴とする衝撃エネルギ吸収部材の製造方法。
【請求項8】
請求項6記載の衝撃エネルギ吸収部材の製造方法において、
上記金属は、アルミニウム合金であり、
上記境界部形成部材は、強化繊維成形体からなることを特徴とする衝撃エネルギ吸収部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−38341(P2010−38341A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205205(P2008−205205)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】