説明

表示装置の製造方法および表示装置

【課題】簡素な工程により、視野角特性を向上させることができる表示装置の製造方法および表示装置を提供する。
【解決手段】第1電極13に、反射膜13Aの上に透明導電膜13Bを積層した第1領域41と、第1領域41から連続した反射膜13Aのみを有する第2領域42とを形成する。第1領域41における光学的距離L1、第2領域42における光学的距離L2、および透明導電膜13Bの光学的厚みTが、L1=Lave +ΔL、L2=Lave −ΔL、(2Lave )/λ+Φ/(2π)=m、T=2ΔLを満たすようにする。反射膜13Aの上に透明導電膜13Bを形成し、透明導電膜13Bの一部領域の厚み方向の全部を除去することにより、第2領域42を形成する。一つの素子内で透明導電膜の厚みを変更する必要をなくし、簡単な工程により光学的距離L1,L2を異ならせ、視野角特性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に複数の有機発光素子を形成する表示装置の製造方法および表示装置に係り、特に共振器構造を有する表示装置の製造方法および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイに代わる表示装置として、有機発光素子を用いた有機ELディスプレイが実用化されている。有機ELディスプレイは、自発光型であるので、液晶などに比較して視野角が広く、また、高精細度の高速ビデオ信号に対しても十分な応答性を有するものと考えられている。
【0003】
これまで、有機発光素子については、共振器構造を導入することによって、発光色の色純度を向上させたり、発光効率を高めるなど、発光層で発生する光を制御する試みが行われてきた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】国際公開第01/39554号パンフレット
【特許文献2】特開2006−32327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように有機発光素子に共振器構造を設けると、共振された光のスペクトルはピークが高く幅が狭いので、表示画面に対して正面方向の光取り出し効率が向上する一方、画面を斜めから見た場合には発光波長が大きくシフトしたり発光強度が低下するという問題があった。すなわち、従来では、画面を視る角度により輝度の差異や色ずれが生じ、視野角特性の悪化や画像品位の低下などを招いてしまうという問題があった。
【0005】
なお、特許文献2では、金属反射膜と透明導電膜との積層電極を用い、透明導電膜の厚みを変えることにより一つの素子内で光学的距離の異なる複数の共振器構造を設けることが提案されている。しかしながら、特許文献2の構造では、透明導電膜が必須となることに加えて一つの素子内で透明導電膜の厚みを変更する必要があり、そのための成膜およびパターニング工程が増加し、製造コストが上昇してしまうという問題があった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、簡素な工程により、視野角特性を向上させることができる表示装置の製造方法および表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による表示装置の製造方法は、基板に複数の有機発光素子を形成するものであって、複数の有機発光素子の各々を形成する工程は、反射膜の上に透明導電膜を積層した第1領域と、第1領域から連続した反射膜のみを有する第2領域とを含む第1電極を形成する工程と、第1電極の上に、発光層を含む複数の層よりなる有機層を形成する工程と、有機層の上に第2電極を形成すると共に、発光層で発生した光を反射膜と第2電極との間で共振させる共振器構造を形成する工程とを含み、第1電極を形成する工程は、反射膜を形成する工程と、反射膜の上に透明導電膜を形成する工程と、透明導電膜の一部領域の厚み方向の全部を除去することにより、第2領域を形成する工程とを含み、第1領域における反射膜と第2電極との間の光学的距離L1、第2領域における反射膜と第2電極との間の光学的距離L2、および透明導電膜の光学的厚みTが数1を満たすようにするものである。
(数1)
L1=Lave +ΔL
L2=Lave −ΔL
(2Lave )/λ+Φ/(2π)=m
T=2ΔL
(式中、Lave は第1領域21における光学的距離L1と第2領域22における光学的距離L2との平均光学的距離、Φは反射膜で生じる反射光の位相シフトΦ1 と第2電極で生じる反射光の位相シフトΦ2 との和(Φ=Φ1 +Φ2 )(rad)、λは第2電極の側から取り出したい光のスペクトルのピーク波長、mはLave が正となる整数をそれぞれ表す。なお、数1においてL1,L2,Lave およびλは単位が共通すればよいが、例えば(nm)を単位とする。)
【0008】
本発明による表示装置は、基板に複数の有機発光素子を備えたものであって、複数の有機発光素子の各々は、反射膜の上に透明導電膜を積層した第1領域と、第1領域から連続した反射膜のみを有する第2領域とを含む第1電極と、第1電極の上に形成され、発光層を含む複数の層よりなる有機層と、有機層の上に形成された第2電極とを備えると共に、発光層で発生した光を反射膜と第2電極との間で共振させる共振器構造を有し、第1領域における反射膜と第2電極との間の光学的距離L1、第2領域における反射膜と第2電極との間の光学的距離L2、および透明導電膜の光学的厚みTが数2を満たすものである。
(数2)
L1=Lave +ΔL
L2=Lave −ΔL
(2Lave )/λ+Φ/(2π)=m
T=2ΔL
(式中、Lave は第1領域21における光学的距離L1と第2領域22における光学的距離L2との平均光学的距離、Φは前記反射膜で生じる反射光の位相シフトΦ1 と前記第2電極で生じる反射光の位相シフトΦ2 との和(Φ=Φ1 +Φ2 )(rad)、λは前記第2電極の側から取り出したい光のスペクトルのピーク波長、mはLave が正となる整数をそれぞれ表す。なお、数2においてL1,L2,Lave およびλは単位が共通すればよいが、例えば(nm)を単位とする。)
【0009】
本発明による表示装置では、第1電極が、反射膜の上に透明導電膜を積層した第1領域と、第1領域から連続した反射膜のみを有する第2領域とを含んでおり、第1領域における反射膜と第2電極との間の光学的距離L1、第2領域における反射膜と第2電極との間の光学的距離L2、および透明導電膜の光学的厚みTが数2を満たしているので、取り出される光のスペクトルのピーク波長が光学的距離L1,L2に応じて異なっており、それらを合成したスペクトルの半値幅が広くなり、視野角特性が向上する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の表示装置の製造方法によれば、反射膜の上に透明導電膜を積層した第1領域と、この第1領域から連続した反射膜のみを有する第2領域とを含む第1電極を形成する工程において、反射膜の上に透明導電膜を形成し、この透明導電膜の一部領域の厚み方向の全部を除去することにより、第2領域を形成するようにしたので、一つの素子内で透明導電膜の厚みを変更する必要をなくすことができ、そのための成膜およびパターニング工程の増加を抑えることができる。よって、簡単な工程により第1領域および第2領域の光学的距離L1,L2を異ならせることができ、視野角特性の向上した表示装置を容易に製造することが可能となる。
【0011】
本発明の表示装置によれば、第1電極が、反射膜の上に透明導電膜を積層した第1領域と、第1領域から連続した反射膜のみを有する第2領域とを含むようにすると共に、第1領域における反射膜と第2電極との間の光学的距離L1、第2領域における反射膜と第2電極との間の光学的距離L2、および透明導電膜の光学的厚みTが数2を満たすように調整するようにしたので、取り出される光のスペクトルのピーク波長を光学的距離L1,L2に応じて異ならせ、それらを合成したスペクトルの半値幅を広くすることができ、視野角特性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係る有機発光素子を用いた表示装置の構成を表すものである。この表示装置は、極薄型の有機発光カラーディスプレイ装置などとして用いられるものであり、例えば、ガラス,シリコン(Si)ウェハあるいは樹脂などよりなる基板11の上に、後述する複数の有機発光素子10R,10G,10Bがマトリクス状に配置されてなる表示領域110が形成されると共に、この表示領域110の周辺に、映像表示用のドライバである信号線駆動回路120および走査線駆動回路130が形成されたものである。
【0014】
表示領域110内には画素駆動回路140が形成されている。図2は、画素駆動回路140の一例を表したものである。この画素駆動回路140は、後述する第1電極15の下層に形成され、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2と、その間のキャパシタ(保持容量)Csと、第1の電源ライン(Vcc)および第2の電源ライン(GND)の間において駆動トランジスタTr1に直列に接続された有機発光素子10R(または10G,10B)とを有するアクティブ型の駆動回路である。駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により構成され、その構成は例えば逆スタガー構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガー構造(トップゲート型)でもよく特に限定されない。
【0015】
画素駆動回路140において、列方向には信号線120Aが複数配置され、行方向には走査線130Aが複数配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの交差点が、有機発光素子10R,10G,10Bのいずれか一つ(サブピクセル)に対応している。各信号線120Aは、信号線駆動回路120に接続され、この信号線駆動回路120から信号線120Aを介して書き込みトランジスタTr2のソース電極に画像信号が供給されるようになっている。各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、この走査線駆動回路130から走査線130Aを介して書き込みトランジスタTr2のゲート電極に走査信号が順次供給されるようになっている。
【0016】
図3は、表示領域110の平面構成の一例を表したものである。表示領域110には、赤色の光を発生する有機発光素子10Rと、緑色の光を発生する有機発光素子10Gと、青色の光を発生する有機発光素子10Bとが、順に全体としてマトリクス状に形成されている。なお、隣り合う有機発光素子10R,10G,10Bの組み合わせが一つの画素(ピクセル)10を構成している。
【0017】
図4は図3に示した有機発光素子10R,10G,10Bの平面構成を表し、図5はそれらに共通の断面構成を表すものである。有機発光素子10R,10G,10Bは、それぞれ、基板11の側から、上述した画素駆動回路140の駆動トランジスタTr1および平坦化絶縁膜12を間にして、陽極としての第1電極13、絶縁膜14、発光層15Cを含む有機層15、および陰極としての第2電極16がこの順に積層された構成を有している。
【0018】
駆動トランジスタTr1は、平坦化絶縁膜12に設けられた接続孔12Aを介して第1電極13に電気的に接続されている。平坦化絶縁膜12は、画素駆動回路140が形成された基板11の表面を平坦化するためのものであり、微細な接続孔12Aが形成されるためパターン精度が良い材料により構成されていることが好ましい。平坦化絶縁膜12の構成材料としては、例えば、ポリイミド等の有機材料、あるいは酸化シリコン(SiO2 )などの無機材料が挙げられる。
【0019】
このような有機発光素子10R,10G,10Bは、窒化ケイ素(SiNx )などの保護膜17により被覆され、更にこの保護膜17上に、熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂などよりなる接着層30を間にして、ガラスなどよりなる封止用基板20が全面にわたって貼り合わされることにより封止されている。
【0020】
第1電極13は、各有機発光素子10R,10G,10Bごとにパターニングされていると共に、平面形状において例えば左部の第1領域41と右部の第2領域42とに分けられている。第1電極13は、第1領域41では、反射膜13Aの上に透明導電膜13Bを積層した構成を有している。一方、第2領域42では、第1電極13は、第1領域21から連続した反射膜13Aのみを有している。
【0021】
反射膜13Aは、できるだけ高い反射率を有するようにすることが発光効率を高める上で望ましい。反射膜13Aは、例えば積層方向の厚み(以下、単に厚みと言う)が100nm以上1000nm以下であり、アルミニウム(Al)あるいはアルミニウム(Al)を含む合金,銀(Ag)あるいは銀(Ag)を含む合金,またはモリブデン(Mo)により構成されている。
【0022】
特に、反射膜13Aは、アルミニウム(Al)を主成分とし、少なくとも一種のランタノイド系元素を添加した合金により構成されていることが好ましい。具体的には、アルミニウム(Al)を主成分とし、ネオジム(Nd)またはニッケル(Ni)を添加した合金が好ましい。反射膜13Aを、アルミニウム(Al)を主成分とした合金により構成した場合に、ヒロックといわれる表面の微小異物等の欠陥を抑制することができるからである。ランタノイド系元素の添加濃度は例えば0.1%〜5%の範囲が好ましい。ただし、ランタノイド系元素の含有量が多くなると高抵抗になるので、2%程度の含有量とすることが好ましい。
【0023】
透明導電膜13Bは、第1領域41のみに設けられ、反射膜13Aと共に第1電極13を構成するものである。透明導電膜13Bは、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)またはインジウムと亜鉛(Zn)と酸素とを含む化合物により構成されている。
【0024】
絶縁膜14は、第1電極13と第2電極16との絶縁性を確保するとともに第1領域41および第2領域42からなる発光領域を正確に所望の形状にするためのものであり、例えば感光性樹脂により構成されている。絶縁膜14には、発光領域に対応して開口部が設けられている。なお、有機層15および第2電極16は、第1領域41および第2領域42だけでなく絶縁膜14の上にも連続して設けられているが、発光が生じるのは絶縁膜14の開口部だけである。
【0025】
有機層15は、例えば、第1電極13の側から順に、正孔注入層15A,正孔輸送層15B,発光層15Cおよび電子輸送層15Dを積層した構成を有するが、これらのうち発光層15C以外の層は必要に応じて設ければよい。また、有機層15は、有機発光素子10R,10G,10Bの発光色によってそれぞれ構成が異なっていてもよい。正孔注入層15Aは、正孔注入効率を高めるためのものであると共に、リークを防止するためのバッファ層である。正孔輸送層15Bは、発光層15Cへの正孔輸送効率を高めるためのものである。発光層15Cは、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものである。電子輸送層15Dは、発光層15Cへの電子輸送効率を高めるためのものである。なお、電子輸送層15Dと第2電極16との間には、LiF,Li2 Oなどよりなる電子注入層(図示せず)を設けてもよい。
【0026】
有機発光素子10Rの正孔注入層15Aは、第1電極13に接して設けられており、化1に示した材料により構成されていることが好ましい。第1電極13は、第1領域41では反射膜13A上に透明導電膜13Bを有する一方、第2領域42では反射膜13Aのみを有している。このように電極構造の異なる第1領域41および第2領域42から、有機層15へ効率的に正孔を注入することができるからである。なお、有機発光素子10Rの正孔注入層15Aの厚みは、例えば5nm以上300nm以下である。
【0027】
【化1】

(化1において、R1〜R6それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、ニトリル基、シアノ基、ニトロ基、またはシリル基から選ばれる置換基であり、隣接するRm(m=1〜6)は環状構造を通じて互いに結合してもよい。また、X1〜X6はそれぞれ独立に炭素もしくは窒素原子である。)
【0028】
具体的には、有機発光素子10Rの正孔注入層15Aは、化2に示した材料により構成されていることが好ましい。反射膜13Aを、仕事関数の小さいアルミニウム(Al)またはアルミニウム(Al)を含む合金により構成し、透明導電膜13Bを、それとは異なる仕事関数を有するITOにより構成した場合にも、十分かつ安定に正孔を注入することができるからである。
【0029】
【化2】

【0030】
有機発光素子10Rの正孔輸送層15Bは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)により構成されている。有機発光素子10Rの発光層15Cは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq3 )に2,6−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)−N−フェニル]アミノスチリル]ナフタレン−1,5−ジカルボニトリル(BSN−BCN)を40体積%混合したものにより構成されている。有機発光素子10Rの電子輸送層15Dは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
【0031】
有機発光素子10Gの正孔注入層15Aは、第1電極13に接して設けられており、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、化1または化2に示した材料により構成されている。有機発光素子10Gの正孔輸送層15Bは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、α−NPDにより構成されている。有機発光素子10Gの発光層15Cは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、Alq3 にクマリン6(Coumarin6)を3体積%混合したものにより構成されている。有機発光素子10Gの電子輸送層15Dは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
【0032】
有機発光素子10Bの正孔注入層15Aは、第1電極13に接して設けられており、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、化1または化2に示した材料により構成されている。有機発光素子10Bの正孔輸送層15Bは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、α−NPDにより構成されている。有機発光素子10Bの発光層15Cは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、スピロ6Φ(spiro6Φ)により構成されている。有機発光素子10Bの電子輸送層15Dは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
【0033】
第2電極16は、例えば、厚みが5nm以上50nm以下であり、アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),ナトリウム(Na)などの金属元素の単体または合金により構成されている。中でも、マグネシウムと銀との合金(MgAg合金)、またはアルミニウム(Al)とリチウム(Li)との合金(AlLi合金)が好ましい。
【0034】
また、第2電極16は、半透過性反射層としての機能を有しており、これら第1電極13の反射膜13Aと第2電極16とにより、発光層15Cにおいて発生した光を共振させる共振器構造が構成されている。すなわち、この有機発光素子10R,10G,10Bは、第1電極13の発光層15C側の端面を第1端部P1、第2電極16の発光層15C側の端面を第2端部P2とし、透明導電膜13Bおよび有機層15を共振部として、発光層15Cで発生した光を共振させて第2端部P2の側から取り出す共振器構造を有している。このように共振器構造を有するようにすれば、発光層15Cで発生した光が多重干渉を起こし、一種の狭帯域フィルタとして作用することにより、取り出される光のスペクトルの半値幅が減少し、色純度を向上させることができる。また、封止用基板20側から入射した外光についても多重干渉により減衰させることができ、後述するカラーフィルタ22、または位相差板および偏光板(図示せず)との組合せにより有機発光素子10R,10G,10Bにおける外光の反射率を極めて小さくすることができる。
【0035】
第1領域41における共振器の第1端部P1と第2端部P2との間の光学的距離L1(以下、単に「第1領域41における光学的距離L1」という。)と、第2領域42における共振器の第1端部P1と第2端部P2との間の光学的距離L2(以下、単に「第2領域42における光学的距離L2」という。)と、透明導電膜13Bの光学的厚みTとは数3を満たしている。これにより、この有機発光素子10R,10G,10Bでは、簡素な工程により、視野角特性を向上させることができるようになっている。
【0036】
(数3)
L1=Lave +ΔL
L2=Lave −ΔL
(2Lave )/λ+Φ/(2π)=m
T=2ΔL
(式中、Lave は第1領域41における光学的距離L1と第2領域42における光学的距離L2との平均光学的距離、Φは第1端部P1で生じる反射光の位相シフトΦ1 と第2端部P2で生じる反射光の位相シフトΦ2 との和(Φ=Φ1 +Φ2 )(rad)、λは第2端部P2の側から取り出したい光のスペクトルのピーク波長、mはLave が正となる整数をそれぞれ表す。なお、数1においてL1,L2,Lave およびλは単位が共通すればよいが、例えば(nm)を単位とする。)
【0037】
数3において、平均光学的距離Lave に関する第3式は、共振器の共振波長(取り出される光のスペクトルのピーク波長)と、取り出したい光のスペクトルのピーク波長とを一致させ、光取り出し効率を最大とするためのものである。この平均光学的距離Lave は、実際には、数3の第3式のmが0または1の場合が好ましい。
【0038】
数3から分かるように、本実施の形態では、次数mを同一としても第1領域41の光学的距離L1と第2領域42の光学的距離L2とを互いに異ならせることができる。よって、例えばm=1とすれば、有機層15の厚みを厚くして非発光欠陥を低減することができ、生産性の向上と良好な視野角特性とを両立させることができる。これに対して、従来の特許文献2では、光学的距離に差を設けるために次数mを例えば0,1と異ならせるようにしていたので、m=0の領域ではm=1の領域に比べて有機層の厚みが薄くなり、非発光欠陥などが増加しやすくなってしまっていた。また、m=0とm=1との光学的距離の差(|L2−L1|)は、ITO(Indium Tin Oxide)や有機層の厚みに換算すると青色で120nm程度と大きくなるので、次数mを同一にする場合に比べて透明導電膜13Bの厚みが大きくなり、透明電極13Bの表面の平滑性が損なわれ、正孔の注入性悪化による、駆動電圧上昇やEL寿命悪化のおそれがある。更に、次数mを例えばm=0,1というように、同一画素内で異なる値にすると、有機層15はm=0として設計するので、その膜厚は薄くなり、非発光欠陥の抑制能が低くなってしまう可能性がある。
【0039】
数3の第1式および第2式におけるΔLは、平均光学的距離Lave の5%以内であることが好ましく、2%以上5%以内であればより好ましい。5%より大きいと光取り出し効率が大幅に低減するおそれがあり、2%より小さいと十分な効果が得られないからである。
【0040】
表1は、数3がm=1のときに成り立つ条件で、ΔLを変えた場合に、第1領域41および第2領域42の各々の共振器フィルタのスペクトルが合成されたときの、スペクトルの強度(EL強度)、そのスペクトルの半値幅(半値幅)、また、ΔLを変更させた合成スペクトルにおいて、斜め45°方向から観察した時に、有機膜の成膜ばらつきが最大4%発生したときの、視野角による色度ばらつき(Δu’v’)を調べた結果を表したものである。EL強度および半値幅は、ΔL/Lave =0(第1領域41における光学的距離L1と第2領域42における光学的距離L2とを等しくした場合)のスペクトルを基準にした規格値とした。
【0041】
【表1】

【0042】
表1の試算では、有機発光素子は、第1電極13上に、厚み95nmの正孔注入層、厚み95nmの正孔輸送層、緑色の光を発生する厚み30nmの発光層、厚み30nmの電子輸送層、および厚み8nmの第2電極を順に積層した構成をΔL/Lave =0で設計したものとし、第1領域41と第2領域42との面積比は1:1、取り出したい光のスペクトルのピーク波長λは530nmとした。
【0043】
表1から分かるように、平均光学的距離Lave に対してΔLが大きくなると異なる発光波長を持つスペクトルが取り出され、合成されたスペクトルを観察することができる。これら合成スペクトルを観察した結果、ΔL/Lave が±5%以内である場合には、発光強度を落とすことなく半値幅を増大させることができた。ΔL/Lave が±5%より大きくなるとEL強度が低下し、EL発光のロスが生じた。よって、光取り出しの観点からΔL/Lave を±5%以内とすることが好ましいことが分かった。一方、合成スペクトルの半値幅は、ΔL/Lave が大きくなるに従って増大する。
【0044】
また、合成されたスペクトルを斜め45°方向から、有機膜の成膜ばらつきが4%発生した時の色差を観察したところ、ΔL/Lave =±2%〜±5%の範囲で、視野角による色度ばらつきが軽減され、視野角性能の改善が可能であることが確認された。なお、有機膜のばらつきは代表的な有機EL向けの蒸着装置性能とし、色度ばらつきΔu’v’が0.020以下であれば、視野角による色度の変化は視認できない領域となる。
【0045】
なお、表1ではm=1の場合について説明したが、m=0を含むその他のm値の場合についても同様の効果が得られる。
【0046】
図5に示した封止用基板20は、有機発光素子10R,10G,10Bの第2電極19の側に位置しており、接着層30と共に有機発光素子10R,10G,10Bを封止するものであり、有機発光素子10R,10G,10Bで発生した光に対して透明なガラスなどの材料により構成されている。封止用基板20には、例えば、カラーフィルタ21が設けられており、有機発光素子10R,10G,10Bで発生した光を取り出すと共に、有機発光素子10R,10G,10B並びにその間の配線において反射された外光を吸収し、コントラストを改善するようになっている。
【0047】
カラーフィルタ21は、封止用基板20のどちら側の面に設けられてもよいが、有機発光素子10R,10G,10Bの側に設けられることが好ましい。カラーフィルタ21が表面に露出せず、接着層30により保護することができるからである。また、発光層15Cとカラーフィルタ21との間の距離が狭くなることにより、発光層15Cから出射した光が隣接する他の色のカラーフィルタ21に入射して混色を生じることを避けることができるからである。カラーフィルタ21は、赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタ(いずれも図示せず)を有しており、有機発光素子10R,10G,10Bに対応して順に配置されている。
【0048】
赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタは、それぞれ例えば矩形形状で隙間なく形成されている。これら赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタは、顔料を混入した樹脂によりそれぞれ構成されており、顔料を選択することにより、目的とする赤,緑あるいは青の波長域における光透過率が高く、他の波長域における光透過率が低くなるように調整されている。
【0049】
更に、カラーフィルタ21における透過率の高い波長範囲と、共振器構造から取り出したい光のスペクトルのピーク波長λとは一致している。これにより、封止用基板20から入射する外光のうち、取り出したい光のスペクトルのピーク波長λに等しい波長を有するもののみがカラーフィルタ21を透過し、その他の波長の外光が有機発光素子10R,10G,10Bに侵入することが防止される。
【0050】
この表示装置は、例えば次のようにして製造することができる。
【0051】
図6ないし図8は、この表示装置の製造方法を工程順に表すものである。まず、図6(A)に示したように、上述した材料よりなる基板11の上に駆動トランジスタTr1を含む画素駆動回路140を形成したのち、全面に感光性樹脂を塗布し、露光および現像することにより、平坦化絶縁膜12および接続孔12Aを形成し、焼成する。
【0052】
次いで、図6(B)に示したように、例えばスパッタ法により、上述したアルミニウム(Al)またはアルミニウム(Al)を含む合金よりなる反射膜13Aを形成する。
【0053】
続いて、図7(A)に示したように、例えばスパッタ法により、ITOよりなる透明導電膜13Bを、数3を満たす光学的厚みTで形成する。
【0054】
そののち、図7(B)に示したように、透明導電膜13Bの上にレジスト膜51を形成し、このレジスト膜51をマスクとして、例えばシュウ酸を含むエッチング液を用いたウェットエッチングにより、透明導電膜13Bの一部領域の厚み方向の全部を除去することにより、第2領域42を形成する。シュウ酸は、ITOをエッチングし、アルミニウム(Al)またはアルミニウム(Al)を含む合金をエッチングしないという選択性を有しているので、反射膜13Aに損傷を与えることなく、透明導電膜13Bの一部領域の厚み方向の全部を除去することができる。
【0055】
第2領域42を形成したのち、図8(A)に示したように、第1電極13の形成予定領域以外の反射膜13Aおよび透明導電膜13Bを、リン酸,硝酸および酢酸を含むエッチング液を用いたウェットエッチングにより、一括して除去する。これにより、第1領域41および第2領域42を有する第1電極13を形成する。
【0056】
第1電極13を形成したのち、図8(B)に示したように、基板11の全面にわたり感光性樹脂を塗布し、例えばフォトリソグラフィ法により第1領域41および第2領域42からなる発光領域に対応して開口部を設け、焼成することにより、絶縁膜14を形成する。
【0057】
第1電極13および絶縁膜14を形成したのち、有機層15を形成する直前に、窒素プラズマ処理を行うことが好ましい。第1電極13の反射膜13Aと透明導電膜13Bという異なる二つの界面からの正孔注入障壁を低減し、第1領域41の駆動電圧と第2領域42の駆動電圧を同等レベルにすることができるからである。なお、通常は、有機層15の成膜直前に真空中で酸素プラズマ処理を行う。正孔の注入障壁を低減、すなわち仕事関数等の調整を行い、駆動電圧を低減することができるからである。しかし、反射膜13Aをアルミニウム(Al)またはアルミニウム(Al)を含む合金により構成した場合には、大気中に放置されるだけで数nmから数10nm弱の自然酸化膜が形成され、従来のように酸素プラズマ処理を実施すると自然酸化膜が除去されることなく、酸素リッチ状態になり、第1領域41(反射膜13A)の駆動電圧と第2領域42(透明導電膜13B)の駆動電圧とが乖離する現象が生じるからである。
【0058】
更に、窒素プラズマ処理を行う前に、酸素プラズマ処理を行うことが好ましい。通常、酸素プラズマは仕事関数調整の目的のほかに、第1電極13の表面に微量に残存する炭素系の不純物をアッシングする目的でも行われるが、窒素プラズマ処理では、炭素系不純物のアッシングができないからである。
【0059】
そののち、例えば蒸着法により、上述した厚みおよび材料よりなる正孔注入層15A,正孔輸送層15B,発光層15C,電子輸送層15Dおよび第2電極16を順次成膜し、図5に示したような有機発光素子10R,10G,10Bを形成する。このとき、第1領域41における光学的距離L1、および第2領域42における光学的距離L2が数3を満たすようにする。続いて、有機発光素子10R,10G,10Bの上に上述した材料よりなる保護膜17を形成する。
【0060】
また、例えば、上述した材料よりなる封止用基板20の上に、赤色フィルタの材料をスピンコートなどにより塗布し、フォトリソグラフィ技術によりパターニングして焼成することにより赤色フィルタを形成する。続いて、赤色フィルタと同様にして、青色フィルタおよび緑色フィルタを順次形成する。
【0061】
そののち、保護膜17の上に、接着層30を形成し、この接着層30を間にして封止用基板20を貼り合わせる。その際、封止用基板20のカラーフィルタ21を形成した面を、有機発光素子10R,10G,10B側にして配置することが好ましい。以上により、図3に示した表示装置が完成する。
【0062】
また、この表示装置は、次のようにして製造することもできる。
【0063】
まず、図6(A)に示した工程により、上述した製造方法と同様にして、基板11の上に画素駆動回路140,平坦化絶縁膜12を形成する。
【0064】
次いで、図6(B)に示した工程により、上述した製造方法と同様にして、反射膜13Aを形成する。
【0065】
続いて、図9(A)に示したように、第1電極13の形成予定領域以外の反射膜13Aを、リン酸,硝酸および酢酸を含むエッチング液を用いたウェットエッチングにより除去する。
【0066】
そののち、図9(B)に示したように、例えばスパッタ法により、ITOよりなる透明導電膜13Bを形成する。
【0067】
そののち、図10に示したように、透明導電膜13Bの上にレジスト膜51を形成し、このレジスト膜51をマスクとして、例えばシュウ酸を含むエッチング液を用いたウェットエッチングにより、透明導電膜13Bの一部領域の厚み方向の全部を除去することにより、第2領域42を形成する。シュウ酸は、上述したように、ITOをエッチングし、アルミニウム(Al)またはアルミニウム(Al)を含む合金をエッチングしないという選択性を有しているので、反射膜13Aに損傷を与えることなく、透明導電膜13Bの一部領域の厚み方向の全部を除去することができる。これにより、第1領域41および第2領域42を有する第1電極13を形成する。
【0068】
第1電極13を形成したのち、図8(B)に示した工程により、上述した製造方法と同様にして、絶縁膜14を形成する。続いて、窒素プラズマ処理と、必要に応じて酸素プラズマ処理とを行ったのち、例えば蒸着法により、上述した厚みおよび材料よりなる正孔注入層15A,正孔輸送層15B,発光層15C,電子輸送層15Dおよび第2電極16を順次成膜し、図5に示したような有機発光素子10R,10G,10Bを形成する。続いて、有機発光素子10R,10G,10Bの上に上述した材料よりなる保護膜17を形成する。
【0069】
そののち、保護膜17の上に、接着層30を形成し、この接着層30を間にして封止用基板20を貼り合わせる。その際、封止用基板20のカラーフィルタ21を形成した面を、有機発光素子10R,10G,10B側にして配置することが好ましい。以上により、図3に示した表示装置が完成する。
【0070】
このようにして得られた表示装置では、各画素に対して走査線駆動回路130から書き込みトランジスタTr2のゲート電極を介して走査信号が供給されると共に、信号線駆動回路120から画像信号が書き込みトランジスタTr2を介して保持容量Csに保持される。すなわち、この保持容量Csに保持された信号に応じて駆動トランジスタTr1がオンオフ制御され、これにより、各有機発光素子10R,10G,10Bに駆動電流Idが注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、第1電極13の反射膜13Aと第2電極16との間で多重反射し、第2電極16,カラーフィルタ21および封止用基板20を透過して取り出される。ここでは、第1電極13が、反射膜13Aの上に透明導電膜13Bを積層した第1領域41と、第1領域41から連続した反射膜13Aのみを有する第2領域42とを含んでおり、第1領域における反射膜と第2電極との間の光学的距離L1、第2領域における反射膜と第2電極との間の光学的距離L2、および透明導電膜13Bの光学的厚みTが数3を満たしているので、取り出される光のスペクトルは第1領域41と第2領域42とではそのピーク波長が異なる。従って、各素子において取り出される光はそれらを合成したものとなり、そのスペクトルの半値幅が、従来の素子全体で光学的距離を同じとしたものに比べて広くなる、すなわち視野角特性が向上する。
【0071】
このように本実施の形態の表示装置の製造方法では、反射膜13Aの上に透明導電膜13Bを形成し、この透明導電膜13Bの一部領域の厚み方向の全部を除去することにより、第2領域42を形成するようにしたので、一つの素子内で透明導電膜の厚みを変更する必要をなくすことができ、そのための成膜およびパターニング工程の増加を抑えることができる。よって、簡単な工程により第1領域41および第2領域42の光学的距離L1,L2を異ならせることができ、視野角特性の向上した表示装置を容易に製造することが可能となる。
【0072】
本実施の形態の表示装置では、第1電極13が、反射膜13Aの上に透明導電膜13Bを積層した第1領域41と、第1領域41から連続した反射膜13Aのみを有する第2領域42とを含むようにすると共に、第1領域41における光学的距離L1、第2領域42における光学的距離L2、および透明導電膜13Bの光学的厚みTが数3を満たすようにしたので、第1領域41および第2領域42の各々から取り出される光のスペクトルのピーク波長を異ならせ、それらを合成したスペクトルの半値幅を広くすることができ、視野角特性を向上させることができる。また、従来のように透明導電膜の厚みを変えるための複雑なパターニング工程も不要であり、製造コストの点でも有利である。よって、簡素な構成および工程により高品質な有機発光素子10R,10G,10Bを備えた表示装置を実現することができる。
【0073】
(モジュールおよび適用例)
以下、上述した実施の形態で説明した表示装置の適用例について説明する。上記実施の形態の表示装置は、テレビジョン装置,デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0074】
(モジュール)
上記実施の形態の表示装置は、例えば、図11に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、基板11の一辺に、封止用基板20および接着層30から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、信号線駆動回路120および走査線駆動回路130の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0075】
(適用例1)
図12は、上記実施の形態の表示装置が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0076】
(適用例2)
図13は、上記実施の形態の表示装置が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0077】
(適用例3)
図14は、上記実施の形態の表示装置が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0078】
(適用例4)
図15は、上記実施の形態の表示装置が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0079】
(適用例5)
図16は、上記実施の形態の表示装置が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【実施例】
【0080】
更に、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0081】
(実施例1)
上記実施の形態の図6ないし図8に示した製造方法と同様にして表示装置を作製した。その際、有機層15を形成する直前に、酸素プラズマ処理を行った。
【0082】
(実施例2)
有機層15を形成する直前に、窒素プラズマ処理を行ったことを除いては、実施例1と同様にして表示装置を作製した。
【0083】
得られた実施例1,2の表示装置について、第1領域41および第2領域42のそれぞれの駆動電圧を調べた。その結果を以下に示す。
【0084】
実施例1の駆動電圧
第2領域42(ITO);4.1V(10mA/cm2
第1領域41(アルミニウム合金);4.9V(10mA/cm2
酸素プラズマ条件;O2 圧力200Pa、プラズマ処理密度0.1W/cm2 、処理時間240秒
なお、プラズマ処理密度は(RFパワー/電極面積)により求めた。
【0085】
実施例2の駆動電圧
第2領域42(ITO);4.0V(10mA/cm2
第1領域41(アルミニウム合金);4.0V(10mA/cm2
窒素プラズマ条件;N2 圧力160Pa、プラズマ処理密度0.2W/cm2 、処理時間240秒
【0086】
以上の結果から分かるように、窒素プラズマ処理を行った実施例2では、第1領域41と第2領域42との駆動電圧の差が小さくなっていた。すなわち、有機層15を形成する直前に窒素プラズマ処理を行うようにすれば、第1領域41と第2領域42とで駆動電圧を同等レベルにすることができることが分かった。
【0087】
なお、得られた実施例1,2の表示装置について、発光効率および寿命についても調べたところ、実施例1,2間で特性変動は認められなかった。
【0088】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、第1電極13が、平面形状において右側半分の第1領域41と左側半分の第2領域42とに分けられている場合について説明したが、第1電極13は、図17に示したように、中央部の第1領域41と左右部の第2領域22とに分けられていてもよいし、図18に示したように上側半分と下側半分とに分けられていてもよい。また、図19に示したように斜めの境界線で分割されていてもよく、視認上問題ない範囲で選択可能である。
【0089】
また、有機発光素子10R,10G,10Bの第1電極13は、第1領域41および第2領域42の二つに限らず、三つ以上の領域に分けられていてもよい。この場合、そのうちの少なくとも二つの領域において光学的距離が異なればよい。
【0090】
更に、例えば、上記実施の形態および実施例において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。例えば、上記実施の形態および実施例では、透明導電膜13Bを、シュウ酸を含むエッチング液を用いたウェットエッチングによりパターニングして第2領域42を形成する場合について説明したが、ドライエッチングを用いた場合も、エッチング時間のコントロール等により透明導電膜13Bのみを選択的にエッチングすることも不可能ではない。ただし、ドライエッチングで選択性を出すことは非常に困難であり、実現性および製造プロセスコストを考慮すると、ウェットエッチングによる手法が好ましい。
【0091】
加えて、例えば、上記実施の形態および実施例においては、基板11の上に、第1電極13,有機層15および第2電極16を基板11の側から順で積層し、封止用基板20の側から光を取り出すようにした場合について説明したが、積層順序を逆にして、基板11の上に、第2電極16,有機層15および第1電極13を基板11の側から順に積層し、基板11の側から光を取り出すようにすることもできる。
【0092】
更にまた、例えば、上記実施の形態および実施例では、第1電極13を陽極、第2電極16を陰極とする場合について説明したが、陽極および陰極を逆にして、第1電極13を陰極、第2電極16を陽極としてもよい。さらに、第1電極13を陰極、第2電極16を陽極とすると共に、基板11の上に、第2電極16,有機層15および第1電極13を基板11の側から順に積層し、基板11の側から光を取り出すようにすることもできる。
【0093】
加えてまた、上記実施の形態および実施例では、有機発光素子10R,10G,10Bの構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。
【0094】
更にまた、上記実施の形態および実施例では、第2電極16が半透過性反射層により構成されている場合について説明したが、第2電極16は、半透過性反射層と透明電極とが第1電極13の側から順に積層された構造としてもよい。この透明電極は、半透過性反射層の電気抵抗を下げるためのものであり、発光層で発生した光に対して十分な透光性を有する導電性材料により構成されている。透明電極を構成する材料としては、例えば、ITOまたはインジウムと亜鉛(Zn)と酸素とを含む化合物が好ましい。室温で成膜しても良好な導電性を得ることができるからである。透明電極の厚みは、例えば30nm以上1000nm以下とすることができる。また、この場合、半透過性反射層を一方の端部とし、透明電極を挟んで半透過性電極に対向する位置に他方の端部を設け、透明電極を共振部とする共振器構造を形成するようにしてもよい。さらに、そのような共振器構造を設けた上で、有機発光素子10R,10G,10Bを保護膜17で覆うようにし、この保護膜17を、透明電極を構成する材料と同程度の屈折率を有する材料により構成すれば、保護膜17を共振部の一部とすることができ、好ましい。
【0095】
加えてまた、本発明は、第2電極16を透明電極により構成すると共に、この透明電極の有機層16と反対側の端面の反射率が大きくなるように構成し、第1電極13の発光層15C側の端面を第1端部、透明電極の有機層と反対側の端面を第2端部とした共振器構造を構成した場合についても適用することができる。例えば、透明電極を大気層に接触させ、透明電極と大気層との境界面の反射率を大きくして、この境界面を第2端部としてもよい。また、接着層との境界面での反射率を大きくして、この境界面を第2端部としてもよい。さらに、有機発光素子10R,10G,10Bを保護膜17で覆い、この保護膜17との境界面での反射率を大きくして、この境界面を第2端部としてもよい。
【0096】
更にまた、上記実施の形態および実施例では、アクティブマトリクス型の表示装置の場合について説明したが、本発明はパッシブマトリクス型の表示装置への適用も可能である。加えてまた、アクティブマトリクス駆動のための画素駆動回路の構成は、上記実施の形態および実施例で説明したものに限られず、必要に応じて容量素子やトランジスタを追加してもよい。その場合、画素駆動回路の変更に応じて、上述した信号線駆動回路120や走査線駆動回路130のほかに、必要な駆動回路を追加してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施の形態に係る表示装置の構成を表す図である。
【図2】図1に示した画素駆動回路の一例を表す図である。
【図3】図1に示した表示領域の構成を表す平面図である。
【図4】図3に示した有機発光素子の構成を表す平面図である。
【図5】図3に示した有機発光素子の構成を表す断面図である。
【図6】図1に示した表示装置の製造方法を工程順に表す断面図である。
【図7】図6に続く工程を表す断面図である。
【図8】図7に続く工程を表す断面図である。
【図9】図1に示した表示装置の他の製造方法を工程順に表す断面図である。
【図10】図9に続く工程を表す断面図である。
【図11】上記実施の形態の表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図12】上記実施の形態の表示装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
【図13】(A)は適用例2の表側から見た外観を表す斜視図であり、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
【図14】適用例3の外観を表す斜視図である。
【図15】適用例4の外観を表す斜視図である。
【図16】(A)は適用例5の開いた状態の正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【図17】図4に示した有機発光素子の第1領域および第2領域の平面形状の他の例を表す平面図である。
【図18】図4に示した有機発光素子の第1領域および第2領域の平面形状の更に他の例を表す平面図である。
【図19】図4に示した有機発光素子の第1領域および第2領域の平面形状の更に他の例を表す平面図である。
【符号の説明】
【0098】
10…画素、10R,10G,10B…有機発光素子、11…基板、12…平坦化絶縁膜、13…第1電極、13A…反射膜、13B…透明導電膜、14…絶縁膜、15…有機層、15A…正孔注入層、15B…正孔輸送層、15C…発光層、15D…電子輸送層、16…第2電極、17…保護膜、20…封止用基板、21…カラーフィルタ、30…接着層、41…第1領域、42…第2領域、P1…第1端部、P2…第2端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に複数の有機発光素子を形成する表示装置の製造方法であって、
前記複数の有機発光素子の各々を形成する工程は、
反射膜の上に透明導電膜を積層した第1領域と、前記第1領域から連続した反射膜のみを有する第2領域とを含む第1電極を形成する工程と、
前記第1電極の上に、発光層を含む複数の層よりなる有機層を形成する工程と、
前記有機層の上に第2電極を形成すると共に、前記発光層で発生した光を前記反射膜と前記第2電極との間で共振させる共振器構造を形成する工程と
を含み、
前記第1電極を形成する工程は、
前記反射膜を形成する工程と、
前記反射膜の上に前記透明導電膜を形成する工程と、
前記透明導電膜の一部領域の厚み方向の全部を除去することにより、前記第2領域を形成する工程と
を含み、
前記第1領域における前記反射膜と前記第2電極との間の光学的距離L1、前記第2領域における前記反射膜と前記第2電極との間の光学的距離L2、および前記透明導電膜の光学的厚みTが数1を満たすようにする
表示装置の製造方法。
(数1)
L1=Lave +ΔL
L2=Lave −ΔL
(2Lave )/λ+Φ/(2π)=m
T=2ΔL
(式中、Lave は第1領域21における光学的距離L1と第2領域22における光学的距離L2との平均光学的距離、Φは前記反射膜で生じる反射光の位相シフトΦ1 と前記第2電極で生じる反射光の位相シフトΦ2 との和(Φ=Φ1 +Φ2 )(rad)、λは前記第2電極の側から取り出したい光のスペクトルのピーク波長、mはLave が正となる整数をそれぞれ表す。なお、数1においてL1,L2,Lave およびλは単位が共通すればよいが、例えば(nm)を単位とする。)
【請求項2】
前記反射膜を、アルミニウムを主成分とし、少なくとも一種のランタノイド系元素を添加した合金により構成する
請求項1記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記透明導電膜をITO(インジウム・スズ複合酸化物)により構成し、
前記透明導電膜の一部領域の厚み方向の全部を除去する工程を、シュウ酸を含むエッチング液を用いたウェットエッチングにより行う
請求項2記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記有機層のうち前記第1電極に接する層を、化1に示す材料により構成する
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【化1】

(化1において、R1〜R6それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、ニトリル基、シアノ基、ニトロ基、またはシリル基から選ばれる置換基であり、隣接するRm(m=1〜6)は環状構造を通じて互いに結合してもよい。また、X1〜X6はそれぞれ独立に炭素もしくは窒素原子である。)
【請求項5】
前記有機層を形成する工程の直前に、窒素プラズマ処理を行う
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1電極を形成する工程は、前記第2領域を形成する工程ののち、前記第1電極の形成予定領域以外の前記反射膜および前記透明導電膜を、リン酸,硝酸および酢酸を含むエッチング液を用いたウェットエッチングにより一括して除去する工程を含む
請求項3ないし5のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1電極を形成する工程は、前記反射膜を形成する工程ののち、前記透明導電膜を形成する工程の前に、前記第1電極の形成予定領域以外の前記反射膜を、リン酸,硝酸および酢酸を含むエッチング液を用いたウェットエッチングにより除去する工程を含む
請求項3ないし5のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
基板に複数の有機発光素子を備えた表示装置であって、
前記複数の有機発光素子の各々は、
反射膜の上に透明導電膜を積層した第1領域と、前記第1領域から連続した反射膜のみを有する第2領域とを含む第1電極と、
前記第1電極の上に形成され、発光層を含む複数の層よりなる有機層と、
前記有機層の上に形成された第2電極と
を備えると共に、前記発光層で発生した光を前記反射膜と前記第2電極との間で共振させる共振器構造を有し、
前記第1領域における前記反射膜と前記第2電極との間の光学的距離L1、前記第2領域における前記反射膜と前記第2電極との間の光学的距離L2、および前記透明導電膜の光学的厚みTが数2を満たす
表示装置。
(数2)
L1=Lave +ΔL
L2=Lave −ΔL
(2Lave )/λ+Φ/(2π)=m
T=2ΔL
(式中、Lave は第1領域21における光学的距離L1と第2領域22における光学的距離L2との平均光学的距離、Φは前記反射膜で生じる反射光の位相シフトΦ1 と前記第2電極で生じる反射光の位相シフトΦ2 との和(Φ=Φ1 +Φ2 )(rad)、λは前記第2電極の側から取り出したい光のスペクトルのピーク波長、mはLave が正となる整数をそれぞれ表す。なお、数2においてL1,L2,Lave およびλは単位が共通すればよいが、例えば(nm)を単位とする。)
【請求項9】
前記反射膜は、アルミニウムを主成分とし、少なくとも一種のランタノイド系元素を添加した合金により構成されている
請求項8記載の表示装置。
【請求項10】
前記透明導電膜はITO(インジウム・スズ複合酸化物)により構成されている
請求項9記載の表示装置。
【請求項11】
前記有機層のうち前記第1電極に接する層は、化2に示す材料により構成されている
請求項8ないし10のいずれか1項に記載の表示装置。
【化2】

(化2において、R1〜R6それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、ニトリル基、シアノ基、ニトロ基、またはシリル基から選ばれる置換基であり、隣接するRm(m=1〜6)は環状構造を通じて互いに結合してもよい。また、X1〜X6はそれぞれ独立に炭素もしくは窒素原子である。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−62067(P2010−62067A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228346(P2008−228346)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】