説明

表示装置及び表示装置の製造方法

【課題】有機EL表示装置は、凹状に加工された封止用基板と基板との空隙に封止されるよう配置される。封止用基板には凹状に加工されたガラス板を用いるが、極めて平面精度の高いガラス板に、その平坦性を乱す事無く凹状の加工を行うためには高度な加工技術が必要となる。加えて、フレーム部のみを残して凹状にガラス板を加工することで、機械的強度は低下し、容易に破損を受け、歩留まりの低下を招くという問題がある。
【解決手段】スペーサ165で保たれた基板161と封止用基板164との空隙を囲うべく、封止部166が配置される。封止部166は、例えば基板161の組成を有するガラスで構成され、レーザカット工程で発生するデブリにより製造される。そのため、基板161と同等の機密性が得られる。高い気密性を有する封止部166を用いることで、信頼性の高い有機EL表示装置160を提供することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置及び表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自発光素子である有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を画素として用いた表示装置の開発が進められている。有機EL表示装置は、上の電極間に発光層を挟持した有機EL素子を基体上に配設して構成されており、典型的には、ガラス等の透光性基板の上に、陽極と、有機機能層(正孔注入層や発光層等)と、陰極とを順次積層した構造が採られる。そして、陽極及び陰極によって有機機能層に電流を供給することにより、有機機能層の発光層を発光させるようになっている。
【0003】
有機EL表示装置は、薄型、軽量で自発光のディスプレイを提供できる点で従来のディスプレイを凌駕することが期待されている。しかしながら、ディスプレイとして使用するにはまだ解決されるべき課題も多い。例えば、有機EL素子を構成する有機機能層は、酸素や水分に極めて弱く、すぐ劣化してしまうという欠点を有している。また、有機EL素子の電極には、ITOやMgAg等が用いられるが、これらも酸素や水分により酸化される。酸化種となる酸素や水分の侵入は有機EL素子の劣化の要因となり、ダークスポット等の不良の原因となる。
【0004】
そこで、有機機能層への水分や酸素の侵入を防止するために、封止構造が施される。このような封止構造として、特許文献1に示すように、封止用基板を用いて有機機能層を封止している技術について例示する。
【0005】
図9は封止用基板1104で有機機能層1102を封止した状態での模式断面図である。封止用基板1104は、ガラス板を薄肉化することで形成されるプレート部1114と、接着剤層1124と、補強板1122と、フレーム部1116を含んでいる。そして、有機機能層1102を搭載した基板1100とフレーム部1116との間に、接着剤層1126を介して接着され、密閉封止を行っている。密閉封止された封止空間1112内には、乾燥剤1106が配置され、微小リークにより侵入する水分の捕獲を行っている。補強板1122は、プレート部1114と比べ軽い材質を用いることができ、封止用基板1104の高剛性化と軽量化が同時に実現されている。
【0006】
また、例えば液晶素子を用いた表示装置についても、その端部が高気密部材であるガラスで封止されていることが望ましく、液晶層への水分や酸素の侵入を防止することでより高い信頼性を得ることが可能となる。
【0007】
【特許文献1】特開2003−217827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この技術を用いた場合、封止を行うためには、凹状に加工されたガラス板を製造することが必要となる。極めて平面精度の高いガラス板に、その平坦性を乱す事無く凹状の加工を行うためには高度な加工技術が必要となる。加えて、フレーム部1116のみを残して凹状にガラス板を加工することで、機械的強度は低下し、ガラス板の扱いには細心の注意が必要となる上、容易に破損され得る構造物であることから、歩留まりの低下を招くという問題があった。また、製造工程中に破損した場合、高価な製造装置の稼動を停止し、現状復帰を行う必要が生じるという課題がある。また、液晶を用いる場合、その端部をガラスで覆うことは技術的に困難であるという課題がある。
【0009】
また、基板1100とフレーム部1116は接着剤層1126を介して互いに接着されているため、接着剤層1126からの封止空間1112への水分や酸素の浸入により、信頼性が低下してしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0011】
[適用例1]本適用例にかかる表示装置は、第1ガラス基板と、前記第1ガラス基板と重ねて配置される第2ガラス基板と、の間に挟まれた機能層を含む表示装置であって、前記第1ガラス基板、又は前記第2ガラス基板、又は前記第1ガラス基板と前記第2ガラス基板の混合物に対応する組成を有する封止材により前記機能層が封入されていることを特徴とする。
【0012】
これによれば、封止材として第1ガラス基板、第2ガラス基板、第1ガラス基板と前記第2ガラス基板の混合物により封入される。封止用のガラスと同じ成分を持つ封止材を用いて封止するため、外部からの水分や酸素の侵入に対して、第1ガラス基板、第2ガラス基板と同等な封止性を持つため、信頼性の高い表示装置を得ることが可能となる。
【0013】
[適用例2]本適用例にかかる表示装置の製造方法は、第1ガラス基板と、前記第1ガラス基板と重ねて配置される第2ガラス基板と、の間に挟まれた機能層を含む表示装置の製造方法であって、前記第1ガラス基板又は前記第2ガラス基板、又は前記第1ガラス基板と前記第2ガラス基板にレーザ光を照射し、発生した堆積物を封止材として、前記第1ガラス基板と前記第2ガラス基板との間を封止することを特徴とする。
【0014】
これによれば、特別な封止材を割り当てる事無く封止を行うことが可能となる。また、熱膨張係数や化学的性質がほぼ等しい材質により封止することが可能となるため、高い信頼性を有する封止材を容易な製造工程で得ることが可能となる。
【0015】
[適用例3]上記適用例にかかる表示装置の製造方法は、前記第1ガラス基板と前記第2ガラス基板とに挟まれた領域に配置された電極部を、前記レーザ光を用いて前記第2ガラス基板を除去して露出させた後、前記第2ガラス基板に前記レーザ光を照射し、発生した前記堆積物を封止材として前記機能層を封止することを特徴とする。
【0016】
上記した製造方法によれば、表示装置の外部と電気的に接続される電極部を露出させてから封止工程が行われる。そのため、表示装置の端部に加え電極部も含めて封止することが可能となり、表示装置の外周部を全て封止することを可能とする製造方法を提供することが可能となる。
【0017】
[適用例4]上記適用例にかかる表示装置の製造方法は、前記第2ガラス基板は前記電極部が露出するよう配置されてなり、前記第2ガラス基板に前記レーザ光を照射し、発生した前記堆積物を封止材として前記機能層を封止することを特徴とする。
【0018】
上記した製造方法によれば、表示装置の外部と電気的に接続される電極部を露出させる工程を省略することが可能となり、製造工程を短縮することが可能となる。また、電極部を露出させるために照射されるレーザ光により受ける電極部の損傷を回避することが可能となる。
【0019】
[適用例5]上記適用例にかかる表示装置の製造方法は、前記電極部は、前記レーザ光により生じるエネルギーによる昇温に対して固体の状態を保つ融点を有することを特徴とする。
【0020】
上記した製造方法によれば、表示装置の外部と電気的に接続される電極部を露出させる工程で受ける電極部の損傷を防止することが可能となる。
【0021】
[適用例6]上記適用例にかかる表示装置の製造方法は、前記第1ガラス基板に前記レーザ光を照射し、前記堆積物を封止材として封止する工程と、前記第1ガラス基板を切断する工程とを兼ねて行うことを特徴とする。
【0022】
上記した製造方法によれば、ガラス基板の切断工程と封止工程とを兼ねて行うことが可能となり、工程の短縮が可能となる。また、ガラス基板の切断に伴う溶融飛沫物質(所謂デブリ)は封止材として機能するため、切断工程で不可避的に発生する溶融飛沫物質の発生を抑制する必要がなくなり、容易な製造条件で加工する製造方法を提供することが可能となる。
【0023】
[適用例7]上記適用例にかかる表示装置の製造方法は、前記レーザ光は前記第1ガラス基板又は前記第2ガラス基板の少なくともいずれかに吸収される発振波長を有することを特徴とする。
【0024】
上記した製造方法によれば、ガラス基板上でレーザ光のエネルギーが熱に変わり、この熱により封止工程や切断工程を行うことができる。ここで、ガラス基板の切断に伴う溶融飛沫物質は封止材として機能するため、非線形光子吸収等の特殊な技術を用いる必要はなく、ガラス基板表面にエネルギーを供給して溶断すれば良いため、容易な製造条件で加工する製造方法を提供することが可能となる。
【0025】
[適用例8]上記適用例にかかる表示装置の製造方法は、前記レーザ光の光源は、CO2,CO,XeF,XeCl,Nd:YAG3rd,N2,KrF,KrCl,ArF,Xe2,F2,Kr2,Ar2のいずれかを用いていることを特徴とする。
【0026】
上記した製造方法によれば、ガラス基板はCO2,COは赤外域では光吸収を受ける。また、XeF,XeCl,Nd:YAG3rd,N2,KrF,KrCl,ArF,Xe2,F2,Kr2,Arでは、紫外域での光吸収を受ける。そのため、これらの光源を用いることで、ガラス基板表面を加熱させることが可能となり、溶融飛沫物質を生成することから効率的に封止工程を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、封止部を用いた構造と、その製造工程について説明する。なお、以下の各図面では、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに縮尺を適宜変更している。図1は、本実施形態を有機EL(エレクトロルミネッセンス:以下ELと示す)表示装置に適用した場合における表示装置の断面図である。
【0028】
有機EL表示装置160は、基板161と、表示部162と、封止用基板164と、スペーサ165と、基板161と同じ組成を有する封止材により構成される封止部166を有する。ここで、封止用基板164によって表示部162は封止されている。封止された空間は、窒素が充填されるか真空になっていても良い。有機EL表示装置160は、乾燥剤を内蔵していても良い。この表示装置では、表示部162で生成された光は、基板161側に射出される。即ち、基板161側に画像が表示される。
【0029】
ここで、表示部162の構成について、その一例を簡単に説明する。
図2は基板161(図1参照)上に形成された表示部162の等価回路図である。表示部162は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Tranistor、以下TFTと記す)を用いたアクティブマトリクス方式で駆動される。そして、複数の走査線101と、走査線101に対して直角に交差する方向に延びる複数の信号線102と、各信号線102に並列に延びる複数の電源線103と、からなる配線構成を有するとともに、走査線101及び信号線102の各交点付近に、画素40(R,G,B)が設けられている。
【0030】
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備える信号線駆動回路100が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路80が接続されている。
【0031】
画素40(R,G,B)の各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用のTFT122と、スイッチング用のTFT122を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量113とを含んでいる。
【0032】
そして、保持容量113によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用のTFT123と、TFT123を介して電源線103に電気的に接続したときに当該電源線103から駆動電流が与えられる画素電極23と、対向電極50との間に挟み込まれた有機EL素子17(R,G,B)とが設けられている。
【0033】
このように構成した有機EL表示装置160では、TFT122を介して信号線102から供給される画像信号が保持容量113に保持されるので、TFT122がオフになっても、TFT123のゲート電極は画像信号に相当する電位に保持される。それ故、有機EL素子17には電源線103から駆動電流が流れ続けるので、有機EL素子17は発光し続け、画像を表示することができる。
【0034】
上記した表示部162を構成する部材の中で、有機EL素子17は水分や酸素の影響に弱く、これらが存在した場合、その寿命が急激に縮まるという特性を有している。そのため、表示部162を密閉することが必要となる。
【0035】
以降、図1の説明を再度進める。基板161、封止用基板164は、酸素や水分に対して阻止性能が高いガラス(ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ケイ酸ガラス等)を用いることができる。また、封止用基板164は、カラーフィルタの機能を有していても良い。特に、封止用基板164側から光を射出させる場合には、カラーフィルタの機能を有することが好ましい。
【0036】
基板161と封止用基板164との間には、基板161と封止用基板164との間の距離を一定に保つべくスペーサ165が配置されている。そして、スペーサ165で保たれた空隙を埋めるべく、封止部166は配置されている。封止部166は、基板161の組成、封止用基板164の組成、又は基板161と封止用基板164との混合物の組成を有するガラスで構成されている。そのため、基板161や、封止用基板164と同等の機密性が得られる。高い気密性を有する封止部166を用いることで、信頼性の高い有機EL表示装置160を提供することが可能となる。
【0037】
次に、上記した有機EL表示装置160の製造方法について具体的に説明する。図3(a),(b),(c)は、有機EL表示装置160を封止する工程を示す工程断面図である。
【0038】
まず、図3(a)に示すように、基板161上に表示部162を形成する。この工程は公知である有機EL素子の製造工程を転用して形成する。そして、表示部162を囲うようにスペーサ165を形成した後、封止用基板164をスペーサ165上に配置する。
【0039】
次に、図3(b)に示すように、封止用基板164をCO2レーザ等を用いて除去し、封止部166(後述する)とすべき領域を露出させる。この場合、封止部166を露出させる工程に代えて、予め封止部166にかかる領域を避けて封止用基板164を配置しても良い。また、封止用基板164上に保護膜を形成しておき、プロセス終了後に剥がすことで不要な位置に形成される溶融飛沫物質170(後述する)の影響を緩和しても良い。
【0040】
次に、図3(c)に示すように、CO2レーザ等を用いて基板161を溶融・昇華させ、溶融飛沫物質170(所謂デブリ)を飛ばし、再付着させることで封止部166を形成する。CO2レーザを用いる場合、ガラス基板の性質にもよるが、ガラス基板上でのパワー密度として0.5MW/cm2から50MW/cm2程度のパワー密度を有するレーザ光強度を与えることが好ましい。
【0041】
また、パルス状の光を照射する場合、パルス幅がある程度大きく、一旦蒸発したガラス成分が再度付着可能な時間幅を有することが好ましい。この工程を行うことで、基板161を材料物質として封止部166が形成される。この製造方法を用いることで、特別な封止材を割り当てる事無く封止部166を得ることが可能となる。また、基板161と熱膨張係数や化学的性質が等しい物質で封止部166を構成することが可能となるため、高い信頼性を有する封止部166を容易な製造工程で得ることが可能となる。
【0042】
本実施形態では、基板161よりも封止用基板164が小さい例について説明したが、これは、基板161と封止用基板164同一の大きさを持つ基板を用いても良い。この場合には、溶融飛沫物質170は基板161と封止用基板164との隙間に入りこむように侵入し固化することで、封止部166を形成することができる。
【0043】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について図面を参照して説明する。図4(a)は、本実施形態にかかる製造方法を有機EL表示装置に適用し、基板と外部装置とを電気的に接続させるための電極部に適用した場合の平面図、(b)は、(a)のA−A’線に対応する断面図である。
【0044】
有機EL表示装置160は、基板161と、表示部162と、封止用基板164と、封止部166と、電極部168と、を有する。表示部162は封止用基板164によって封止される。封止された空間は、窒素が充填されるか真空になっていても良い。第1実施形態との相違点は、封入すべき領域に電極部168が配置されていることである。
【0045】
そのため、封止用基板164にレーザ光をあてて、封止用基板164を溶融・昇華させ、溶融飛沫物質170を飛ばし、封止部166を形成する。CO2レーザを用いる場合、ガラス基板の性質にもよるが、ガラス基板上でのパワー密度として0.5MW/cm2から50MW/cm2程度のパワー密度を有するレーザ光強度が与えられることが好ましい。
【0046】
また、封止用基板164のガラス構成材として石英(軟化点1710℃)を用いる場合には、電極部168を構成する部材としては、Mo,Crを用いることが好適である。ここで、封止用基板164に軟化点が1000℃程度以下の軟化点を有するガラスを用いる場合には、Ni,Cu,Nb,Ti,Co,Ir等の金属を用いることが可能となる。なお、これらの金属以外でも、封止用基板164の軟化点に対して溶融しない金属や半導体を用いることが可能である。また、シリコン等導電性を持つ半導体を用いても良い。また、ガラス基板上でのレーザ光強度を落として、電極部168に与える熱ストレスを低減させた状態で封止部166を形成することも好適である。
【0047】
次に、上記した有機EL表示装置160の製造方法について具体的に説明する。図5(a)から(d)は、有機EL表示装置160の電極部168を封止する工程を示す工程断面図である。
【0048】
まず、図5(a)に示すように、基板161上に表示部162と電極部168とを形成する。この工程は公知である有機EL素子の製造工程を転用して形成する。そして、図示せぬスペーサを形成した後、封止用基板164をスペーサ上に配置し、表示部162を覆う。
次に、図5(b)に示すように、封止用基板164をCO2レーザ等を用いて除去し、封止部166とすべき領域と、電極部168の一部を露出させる。この場合、封止部166とすべき領域を露出させる工程に代えて、予め封止部166にかかる領域を避けて封止用基板164を配置しても良い。
【0049】
次に、図5(c)に示すように、CO2レーザ等を用いて封止用基板164を溶融・昇華させ、溶融飛沫物質170を飛ばし、封止部166を形成する。CO2レーザを用いる場合、ガラス基板の性質にもよるが、ガラス基板上でのパワー密度として0.5MW/cm2から50MW/cm2程度のパワー密度を有するレーザ光強度が与えられることが好ましい。
【0050】
また、パルス状の光を照射する場合、パルス幅がある程度大きく、一旦蒸発したガラス成分が再度付着可能な時間幅を有することが好ましい。この場合、封止用基板164の端面に近い領域にレーザ光を照射することが好適である。溶融飛沫物質170は、封止用基板164の端面を落ちるように移動して付着し、封止部166を形成することが可能となる。
【0051】
この工程を行うことで、封止用基板164を材料物質として封止部166が形成できる。この製造方法を用いることで、特別な封止材を割り当てる事無く封止部166を得ることが可能となる。また、封止用基板164と熱膨張係数や化学的性質が等しい物質で封止部166を構成することが可能となるため、高い信頼性を有する封止部166を容易な製造工程で得ることが可能となる。
【0052】
又、この場合、図5(d)に示すように、封止用基板164に対して斜めからレーザ光を照射させることも好適である。また、封止用基板164の端面に近い領域にレーザ光を照射させることで溶融飛沫物質170は、封止用基板164の端面を落ちるように移動して付着するため、封止用基板164が厚い場合でも封止部166を形成することが可能となる。
また、本実施形態では、基板161よりも封止用基板164が小さい例について説明したが、これは、基板161と封止用基板164との端面を揃えて配置し基板を用いても良い。この場合には、溶融飛沫物質170は基板161と封止用基板164との隙間に入りこむように侵入し固化することで、封止部166を形成することができる。そして、封止部166を形成する物質の組成は、基板161と封止用基板164との混合物の組成を有することとなる。
【0053】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について図面を参照して説明する。図6は、本実施形態を、液晶表示装置に適用した場合における液晶表示装置の断面図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)中のA−A’線における断面図である。液晶表示装置200は、枠状のシール材241を介して対向して貼り合わされた、ガラス基板210、ガラス基板230を有している。
ガラス基板210、ガラス基板230、シール材241によって囲まれた空間には、液晶層240が封入されている。シール材241は、ガラス基板230の外周に沿って枠状に形成されている。ガラス基板210の、液晶層240と反対側には、偏光板251が配置されており、ガラス基板230の液晶層240とは反対側には、偏光板253が配置されている。
【0054】
ガラス基板210は、ガラス基板230より大きく、ガラス基板230に対して張り出した状態で貼り合わされている。なお、ガラス基板210の液晶層240側には、TFT素子等を含む回路素子層等が形成されていてもよく、またガラス基板230の液晶層240側には、カラーフィルタ等が形成されていても良い。ガラス基板210、ガラス基板230の間は封止部243によって封止されている。また、液晶層240を電気的に駆動するために配置された電極部268は、封止部243とガラス基板210との間に挟まれており、平面視にてガラス基板230の外側に届くよう配置されている。電極部268は、図示せぬ外部制御回路からの信号を伝達する機能を有する。即ち、液晶表示装置200の表示を制御する外部制御回路からの制御信号が液晶表示装置200の駆動系に伝達されるようになっている。
【0055】
ここで、液晶表示装置200の駆動系について、その一例を説明する。図7は液晶表示装置200の駆動系における等価回路図である。ガラス基板210(図6参照)上には、マトリクス状に形成された複数の画素260の各々に、画素電極264、及び画素電極264を制御するための画素スイッチング用のTFT262が形成されており、画素信号を供給する信号線駆動回路266からの信号電位は、信号線261を介してTFT262のソースに電気的に接続される。
【0056】
そして、信号線駆動回路266から信号線261に与えられる画素信号S1,S2、・・・Snは、この順に線順次に供給される。また、TFT262のゲートには走査線駆動回路267が走査線263を介して電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線263(a),263(b)にパルス的に走査信号G1,G2,・・・,Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。
【0057】
画素電極264は、TFT262のドレインに電気的に接続されており、TFT262を一定期間だけそのオン状態とすることにより、信号線261から供給される画素信号S1,S2,・・・,Snを各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにして画素電極264を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画素信号S1,S2・・・Snは、対向基板(図示せず)に形成された対向電極との間で一定期間保持される。ここで、保持された画素信号がリークにより変動する現象を防ぐことを目的に、画素電極264と対向電極との間に形成される液晶容量と並列に保持容量265を付加することがある。
【0058】
上記した液晶表示装置200を構成する部材の中で、画素電極264と対向電極(図示せず)に挟まれた液晶層240(図6参照)は水分や酸素の影響に弱く、これらが存在した場合、寿命が縮まるという特性を有している。そのため、液晶表示装置200を密閉することが必要となる。
【0059】
ここで図6の説明に戻る。封止部243はガラス基板210、ガラス基板230との間に配置されている。封止部243は、ガラス基板210、ガラス基板230又は、ガラス基板210とガラス基板230との混合物と対応する組成を有するガラスで構成されている。そのため、ガラス基板210、ガラス基板230と同等の機密性が得られる。高い気密性を有する封止部243を用いることで、信頼性の高い液晶表示装置200を提供することが可能となる。
【0060】
ガラス基板210、ガラス基板230の間を封止部243で覆う製造方法や、電極部268における封止部243の製造方法については、第1実施形態と、第2実施形態と同等の製造方法を用いることで対応できる。そのため、ここでは重複を避けるため省略する。
【0061】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について図面を参照して説明する。この実施形態では、図8(a)〜(d)は、本実施形態を有機EL表示装置に適用した場合の表示装置の製造工程を示す工程断面図である。以下、図8(a)〜(d)を用いて製造工程を詳細に説明する。
【0062】
まず、図8(a)に示すように、基板161上に表示部162を形成する。この工程は公知である有機EL素子の製造工程を転用して形成する。そして、図示せぬスペーサを形成した後、封止用基板164をスペーサ上に配置し、表示部162を覆う。
まず、図8(b)に示すように、封止用基板164をCO2レーザ等を用いて除去し、封止部166にかかる領域を露出させる。この場合、露出させる工程に代えて、予め封止部166にかかる領域を避けて封止用基板164を配置しても良い。
【0063】
次に、図8(c)に示すように、CO2レーザ等を用いて基板161の分断部169を溶融・昇華させ、溶融飛沫物質170を飛ばし、封止部166を形成する。CO2レーザを用いる場合、ガラス基板の性質にもよるが、ガラス基板上でのパワー密度として0.5MW/cm2から50MW/cm2程度のパワー密度を有するレーザ光強度が与えられることが好ましい。
【0064】
また、パルス状の光を照射する場合、パルス幅がある程度大きく、一旦蒸発したガラス成分が再度付着可能な時間幅を有することが好ましい。この工程を行うことで、基板161を材料物質として封止部166が形成される。この製造方法を用いることで、特別な封止材を割り当てる事無く封止部166を得ることが可能となる。また、基板161と熱膨張係数や化学的性質が等しい物質で封止部166を構成することが可能となるため、高い信頼性を有する封止部166を容易な製造工程で得ることが可能となる。
【0065】
次に、図8(d)に示すように、基板161を分断するまでレーザ光を照射し続け、基板161を分断する(所謂レーザフルカットダイシング)。この際のレーザ光の入射条件は、封止部166を形成する条件を継続する条件を用いても良く、また分断速度を上昇させる条件に切り替える等の処理を用いることができる。また、分断方法として、レーザ光で溶融分断させる方法に代えて、封止部166を形成し終えた後、基板161の分断予定線に沿ってレーザビームを局所的に照射した後、このレーザビームの照射領域を局所的に冷却して分断予定線に沿って基板を分断する方法等を用いても良い。
【0066】
ここで、窒素等の不活性ガス雰囲気中で、有機EL表示装置160を含む基板161の封止と分断とを続けて行っても良い。この場合、封止部166と基板161とに囲われた空間内部の雰囲気を不活性ガス雰囲気で封入することが可能となる。
【0067】
このように、有機EL表示装置160を含む基板161の封止と分断とを続けて行うことで、有機EL表示装置160の製造工程を短縮することができる。また、同じ装置を用いて封止と分断を行うことで、封止装置と分断装置を別途配置する場合と比べ、装置を配置するために必要なクリーンルーム内での面積(所謂フットプリント)を狭く抑えることが可能となる。
【0068】
また、本実施形態では、封止と分断とを続けて行う工程に対して、有機EL表示装置160を用いる場合について説明したが、これは液晶表示装置200(図6参照)に対しても同様の構成を用いることができる。
【0069】
また、本実施形態では、基板161よりも封止用基板164が小さい例について説明したが、これは、基板161と封止用基板164との端面を揃えて配置しても良い。この場合には、溶融飛沫物質170は基板161と封止用基板164との隙間に入りこむように侵入し固化することで、封止部166を形成することができる。
【0070】
(変形例)
上記した第1から第4実施形態では、CO2レーザを用いた場合について説明したが、これはCO2レーザ同様赤外域で発光するCOレーザや、紫外域で発光するXeF,XeCl,Nd:YAG3rd,N2,KrF,KrCl,ArF,Xe2,F2,Kr2,Ar2等のガスを用いたレーザを用いても良い。これらの光は有機EL表示装置や液晶表示装置に用いられるガラスに吸収されるため、ガラスにエネルギーを供給することができる。そのため、溶融飛沫物質の発生効率を高くすることができる。また、光源としては上記したレーザ光に限定される必要は無く、ガラスを溶融・揮発させるべくエネルギーを与え得る集束可能な光源を用いることができる。
【0071】
また、封止用基板上に保護フィルムを被せ、封止部以外の領域への溶融飛沫物質の付着を防止しても良い。また、有機EL表示装置を用いる場合には、スペーサを用いて基板と封止用基板との間に間隙を設けたが、これは樹脂封入されていても良い。同様に、液晶表示装置を用いる場合に、スペーサの外枠側が樹脂封入されていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】第1実施形態を有機EL表示装置に適用した場合における表示装置の断面図。
【図2】基板上に形成された表示部の等価回路図。
【図3】(a)から(c)は、有機EL表示装置を封止する工程を示す工程断面図。
【図4】(a)は第2実施形態にかかる、基板と外部装置とを電気的に接続させるための電極部に対応する有機EL表示装置の平面図、(b)は、(a)のA−A’線に対応する断面図。
【図5】(a)から(d)は第2実施形態にかかる、有機EL表示装置の電極部を封止する工程を示す工程断面図。
【図6】(a)は第3実施形態を液晶表示装置に適用した場合における表示装置の斜視図、(b)は、(a)のA−A’線での表示装置の断面図。
【図7】液晶表示装置の等価回路図。
【図8】(a)から(d)は、第4実施形態にかかる有機EL表示装置の製造方法を示すための工程断面図。
【図9】従来技術として封止用基板で有機機能層を封止した状態での模式断面図。
【符号の説明】
【0073】
17…有機EL素子、23…画素電極、40…画素、80…走査線駆動回路、100…信号線駆動回路、101…走査線、102…信号線、103…電源線、113…保持容量、122…TFT、123…TFT、160…有機EL表示装置、161…基板、162…表示部、164…封止用基板、165…スペーサ、166…封止部、168…電極部、169…分断部、170…溶融飛沫物質、200…液晶表示装置、206…画素電極、210…ガラス基板、230…ガラス基板、240…液晶層、241…シール材、243…封止部、251…偏光板、253…偏光板、260…画素、261…信号線、262…TFT、263…走査線、264…画素電極、265…保持容量、266…信号線駆動回路、267…走査線駆動回路、268…電極部、1100…基板、1102…有機機能層、1104…封止用基板、1106…乾燥剤、1112…封止空間、1114…プレート部、1116…フレーム部、1122…補強板、1124…接着剤層、1126…接着剤層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガラス基板と、前記第1ガラス基板と重ねて配置される第2ガラス基板と、の間に挟まれた機能層を含む表示装置であって、前記第1ガラス基板、又は前記第2ガラス基板、又は前記第1ガラス基板と前記第2ガラス基板の混合物に対応する組成を有する封止材により前記機能層が封入されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
第1ガラス基板と、前記第1ガラス基板と重ねて配置される第2ガラス基板と、の間に挟まれた機能層を含む表示装置の製造方法であって、前記第1ガラス基板又は前記第2ガラス基板、又は前記第1ガラス基板と前記第2ガラス基板にレーザ光を照射し、発生した堆積物を封止材として、前記第1ガラス基板と前記第2ガラス基板との間を封止することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の表示装置の製造方法であって、前記第1ガラス基板と前記第2ガラス基板とに挟まれた領域に配置された電極部を、前記レーザ光を用いて前記第2ガラス基板を除去して露出させた後、前記第2ガラス基板に前記レーザ光を照射し、発生した前記堆積物を封止材として前記機能層を封止することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の表示装置の製造方法であって、前記第2ガラス基板は前記電極部が露出するよう配置されてなり、前記第2ガラス基板に前記レーザ光を照射し、発生した前記堆積物を封止材として前記機能層を封止することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の表示装置の製造方法であって、前記電極部は、前記レーザ光により生じるエネルギーによる昇温に対して固体の状態を保つ融点を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項6】
請求項2に記載の表示装置の製造方法であって、前記第1ガラス基板に前記レーザ光を照射し、前記堆積物を封止材として封止する工程と、前記第1ガラス基板を切断する工程とを兼ねて行うことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか一項に記載の表示装置の製造方法であって、前記レーザ光は前記第1ガラス基板又は前記第2ガラス基板の少なくともいずれかに吸収される発振波長を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の表示装置の製造方法であって、前記レーザ光の光源は、CO2,CO,XeF,XeCl,Nd:YAG3rd,N2,KrF,KrCl,ArF,Xe2,F2,Kr2,Ar2のいずれかを用いていることを特徴とする表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−216757(P2009−216757A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57401(P2008−57401)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】