説明

表面コーティングシステムおよび方法

本発明は、表面コーティングシステムおよび表面をコーティングし補修するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連技術の相互参照)
本出願は、2007年5月17日に出願された米国特許出願第60,938,611号、2007年8月24日に出願された米国特許出願第60/957,982号、2008年1月23日に出願された米国特許出願第61/011,957号、および2008年1月24日に出願された米国特許出願第61/023,351号の利益を主張し、これらの全ては参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
床のケアプログラムは、今日、床基板(substrate)(例えば、ビニル、リノリウム、木材、コンクリート、大理石、テラゾ、セラミックなど)の外観の保護および向上の両方のために主に用いられる。これらの床張り材は、往来、例えば、歩行者または乗物の往来で摩耗および劣化する傾向がある。しばしば、犠牲コーティングが、床張り材を物理的摩耗、引っ掻き、汚れ、および化学的損傷から保護するために用いられる。これらのコーティングは、多くの異なるタイプの製品を含み得るが、通常、床基板の表面に付与される基材(base)および/または仕上げの使用を含み得る、床のケアプログラムの一部である。この場合、この仕上げは、掃除機および用具類(これらには、様々な磨きまたはつや出し機械が含まれ得る)の使用により維持される。これらのプログラムは非常に効果的であるが、それらは、顧客にとって大きな出費と見なされる。さらに、時間が経って表面が摩耗し満足いかなくなった場合、床の仕上げまたはシーラー(sealer)を、様々な化学的組成物(一般に、剥離剤(stripper)として知られている)を用いて完全に取り除くことが必要である。このような化学的剥離は時間を必要とし、労働集約的である。
【0003】
多くの床張り基板を、耐久性の半永久的コーティング(例えば、ウレタン、エポキシ、またはシランの技術を用いるもの)により処理することも一般的である。これらのコーティングシステムは、それらが化学的に除去できないことおよび補修できないことが問題であり、除去は、しばしば、研磨(sanding)、機械的擦り取り、または化学的剥離からなる。これらは、かなりの制約であり、しばしば、不満足な結果を生む。
【0004】
ポリマー系の床コーティング剤は、乾燥して硬い保護フィルムとなる水性エマルジョンまたは溶媒溶液として、モップまたは他のアプリケータにより通常付与される、仕上げまたはコーティングの例である。床表面からのこれらのコーティングの除去は、従来、腐食性化学溶液(通常は、アルカリおよび揮発性溶媒の混合物)を必要としている。それゆえに、床の保護コーティングにおける最近の傾向は、これらの旧来の仕上げから離れ、より耐久性のある高架橋コーティング、例えば、UV硬化ウレタン、ポリウレタン分散体、およびエポキシに向かっている。これらのコーティングは、より伝統的な床仕上げを凌ぐ向上した耐久性を有するが、それらもまた、結局、引っ掻き、すり減り(scuff)などのせいで、床から取り除かれなければならないという問題を抱える。しかし、より伝統的な床仕上げは、化学的に除去できるが、これらのより耐久性のあるフィルムの高架橋であるという特質は、物理的な擦り取り以外の何らかの手段によってそれらを除去することを、不可能でないとしても、難しくする。
【0005】
さらに、化学的または機械的擦り取りのいずれかによる剥離に関しては、しばしば、下にある床張り基板または表面が、例えば木材床張り(この場合、化学品および/または水の利用が木材表面を損なう)の場合に損傷を受ける。
【0006】
かなりの困難および欠陥が、犠牲または耐久性の半永久的コーティングまたは仕上げの補修、改修または除去に存在する。このため、素早く容易に付与され、その上、損傷または摩耗の後には、容易に除去できる、および/または補修できる仕上げにより表面がコーティングされることを可能にすると思われる表面コーティングシステムについて研究が進展している。
【0007】
要約すると、かなりの数の欠陥が、表面(例えば、床の表面など)のコーティングシステムまたは仕上げに関連する技術分野において存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、可剥層フィルム形成材を含む可剥層用組成物(ここで、可剥層は接着強度より大きい引張強度を有する);および、メンテナンス層フィルム形成材を含むメンテナンス層用組成物を含むコーティングシステムを提供する。別の実施形態において、本発明は、可剥層フィルム形成材を含む可剥層用組成物(ここで、可剥層は少なくとも約50%の伸びを有する);および、メンテナンス層フィルム形成材を含むメンテナンス層用組成物を含むコーティングシステムを提供する。
【0009】
さらに、本発明は、約−10から約50℃のTを有する可剥層フィルム形成材を含む可剥層用組成物;および、約20から約100℃のTを有するメンテナンス層フィルム形成材を含むメンテナンス層用組成物を含むコーティングシステムを提供する。本発明はまた、可剥層フィルム形成材とつや消し光学組成物とを含む可剥層用組成物;および、メンテナンス層フィルム形成材を含むメンテナンス層用組成物を含むコーティングシステムを提供する。
【0010】
本発明のコーティングシステムは、基材層フィルム形成材を含む基材層用組成物、および/または、遷移層フィルム形成材を含む遷移層用組成物をさらに含み得る。
【0011】
本発明はまた、表面への接着強度より大きい引張強度を有する可剥層を形成するように、可剥層フィルム形成材を含む可剥層用組成物を付与すること;および、メンテナンス層を形成するように、メンテナンス層フィルム形成材を含むメンテナンス層用組成物を付与することを含む、表面のコーティング方法にも関する。
【0012】
さらに、本発明は、少なくとも約50%の伸びを有する可剥層を形成するように、可剥層フィルム形成材を含む可剥層用組成物を表面に付与すること;および、メンテナンス層を形成するように、メンテナンス層フィルム形成材を含むメンテナンス層用組成物を付与することを含む、表面のコーティング方法を提供する。
【0013】
本発明はまた、可剥層を形成するために、約−10℃から約50℃のTを有する可剥層フィルム形成材を含む可剥層用組成物を表面に付与すること;および、メンテナンス層を形成するために、約20℃から約100℃のTを有するメンテナンス層フィルム形成材を含むメンテナンス層用組成物を付与することを含む、表面のコーティング方法も提供する。
【0014】
表面の1つのコーティング方法は、つや消し可剥層を形成するために、可剥層フィルム形成材とつや消し光学組成物を含む可剥層用組成物を表面に付与すること;および、光沢のあるメンテナンス層を形成するために、メンテナンス層フィルム形成材を含むメンテナンス層を付与することを含む。
【0015】
さらに、本発明は、露出した表面を得るために、表面コーティングの損傷を受けた部分を除去すること;露出した表面に、補修された可剥層を形成するために、可剥層用組成物を付与すること;および、補修されたコーティングを得るために、補修された可剥層にメンテナンス層用組成物を付与することを含む、損傷を受けた表面の補修方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】床表面に付与された表面コーティングシステムの横断面を示す図である。
【図1B】床表面に付与された多層表面コーティングシステムの横断面を示す図である。
【図2】メンテナンス層が基材層から剥離されている、図1Aの表面コーティングシステムの横断面を示す図である。
【図3A】可剥層およびメンテナンス層を基材層から剥離する助けとなるように、可剥層の下にスターターメカニズムが置かれている、表面コーティングシステムの横断面を示す図である。
【図3B】スターターメカニズムが壁に隣接して置かれており、スターターメカニズムが可剥およびメンテナンス層によって部分的にのみ覆われている、表面コーティングシステムの横断面を示す図である。
【図4】複数のスターターメカニズムが、可剥層と基材層との間に配置された、表面コーティングシステムの横断面を示す図である。
【図5】表面コーティングシステム(一連のスターターメカニズムを含む)が付与された、部屋の斜視図である(差し込み図は、円によって示される位置での床張りシステムの横断面を示す)。
【図6】基材層が床張り基板の接合部分にのみ付与された、表面コーティングシステムの横断面を示す図である。
【図7】各層における一連のスターターメカニズム(スターターメカニズムは層の間で互い違いに配置されている)を含む、床表面に付与された多層表面コーティングシステムの横断面を示す図である。
【図8】スターターメカニズムが床張り基板の接合部分に付与された、表面コーティングシステムの横断面を示す図である。
【図9】設置可能な床張り材の端部でそれぞれの可剥層コーティングに付与されたスターターメカニズムを含む、設置可能な床張り材の区画片に付与された、多層表面コーティングシステムの横断面を示す図である。
【図10】1つのスターターメカニズムが層の最上層の表面の上に露出している、表面コーティングシステムの横断面を示す図である。
【図11】表面コーティングシステムのインストロン分析の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のいずれかの実施形態が詳細に説明される前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載される、または以下の図に例示される、要素の構成および配置の詳細に限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な仕方で実施される、または実行されることが可能である。また、本明細書において用いられる言い回しおよび述語は、説明のためであって、限定と見なされるべきではないことも理解されるべきである。「含む」、「備える」、または「有する」およびこれらの様々な変形形態の本明細書における使用は、その前に列挙された事項およびそれらの等価物と同様にさらなる事項も包含することを意図するものとする。
【0018】
本明細書において挙げられているどのような数値範囲も、下限値から上限値のまでの全ての値を含むことも理解されるべきである。例えば、濃度範囲が、1%から50%と述べられている場合、2%から40%、10%から30%、または1%から3%などのような値が、本明細書において、明白に列挙されているものとする。これらは、具体的に意図されているものの単なる例であり、列挙されている下限値と上限値の間およびそれらを含む数値の可能な全ての組合せが、本明細書において、明白に述べられていると見なされるべきである。
【0019】
本発明は、保護、耐擦り減り性、または耐スリップ性が望まれるどのような表面にも適用可能である。このような表面には、床、食品調理表面、壁などが含まれる。仕上げられる表面は、これらに限らないが、エンジニアードストーン(engineered stone)、エンジニアードウッド、ビニル、大理石、テラゾ、セラミック、リノリウム、木材、金属、プラスチック、ゴム、コンクリート、石、ビニル組成物タイル(VCT)およびガラスを含めて、多様な材料からなり得る。
【0020】
本発明は、可剥層用組成物およびメンテナンス層用組成物を含むコーティングシステムに関する。このコーティングシステムは、基材層用組成物および/または遷移層用組成物を任意選択で含む。さらに、コーティングシステムは、除去用具およびまたは使用説明書を任意選択で含む。可剥層は、表面に対する、または、存在する場合、任意選択の基材層に対するその接着強度より大きい引張強度を有する。このことにより、表面への損傷は最低限乃至無しで、可剥層は表面から非化学的に除去される。
【0021】
任意選択の除去用具は、剃刀の刃またはその類似物であり得る、あるいは、それは、2008年1月24日に出願された米国特許出願第61/023,351号(これは、参照によって本明細書に組み込まれる)に記載のもののような用具であってもよい。当業者は、本発明において使用される適切な除去用具を決定できるであろう。
【0022】
図1Aは、例えば床の様な表面4に付与された、表面コーティングシステム2の例示的実施形態を示す。表面コーティングシステム2は、基材層6の上に配置された可剥層8を含む。コーティングシステム2は、可剥層8の上に配置されたメンテナンス層10をさらに含む。表面コーティングシステムによってコーティングされる材料のタイプに少なくとも一部は依存して、表面コーティングシステム2は基材層6を必ずしも含む必要はない。用いられる場合、基材層6は、仕上げられる表面4に接着したままであるように設計される。可剥層8、任意選択の遷移層20、およびメンテナンス層10は、互いに接着したままであるように設計されるが、さらに、面への損傷は最低限乃至無しで、剥離および表面4の再仕上げを可能にするように、基材層6または表面4から剥がされる。
【0023】
可剥層8は、少なくとも1種の可剥層フィルム形成材を含む。適切な可剥層フィルム形成材には、これらに限らないが、ポリアクリラートポリマー、ポリアクリリックポリマー、エポキシポリマー、ポリスチレンポリマー、ポリアクリラート−スチレンコポリマー、ポリエステル、フルオロポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニルco−酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、酢酸ビニルポリマー、酢酸ビニルエチレンコポリマー、酢酸ビニルアクリラートコポリマー、ポリビニルブチラール、スチレン−ブタジエンコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエンコポリマーなどが含まれる。他の適切なフィルム形成材は、当業者に知られている。いくつかの実施形態において、2種以上のフィルム形成材のブレンドが使用される。
【0024】
適切なフィルム形成材は、柔軟性、引張強度、および接着のバランスをもたらすことが見出されており、これらには、酢酸ビニルアクリラートコポリマーおよび酢酸ビニルエチレンコポリマーのものが含まれる。適切な酢酸ビニルアクリラートコポリマーには、酢酸ビニル−ブチルアクリラート−メチルメタクリラートコポリマーが含まれる。いくつかの実施形態において、フィルム形成材は少なくとも約10wt%、または少なくとも25wt%、または少なくとも約50wt%、または少なくとも約75wt%で存在し得る。別の実施形態において、フィルム形成材は、約85wt%以下、または約75wt%以下、または約50wt%以下で存在する。
【0025】
いくつかの実施形態において、適切な可剥層フィルム形成材には、約−10℃から約50℃のガラス転移値(T)を有するものが含まれる。別の実施形態では、Tは、約0℃から約50℃、または10℃から約30℃である。可剥層フィルム形成材のブレンドが用いられる実施形態では、各フィルム形成材は異なるTを有し得る。通常、より高いガラス転移値を有する組成物は、より大きな造膜剤(coalescent)/可塑剤の要求量のせいで、より長い乾燥時間を必要とする。いくつかの実施形態では、Tは約15℃から約25℃、または約20℃である。フィルム形成材は、滑らかなコーティングが表面4に付与され得るような、レオロジー特性を有するコーティング剤を与えるように、配合され得る。いくつかの実施形態において、可剥層は、少なくとも約100ポンド/平方インチ(psi)の破断時引張強度を有する。いくつかの実施形態において、可剥層8の引張強度は約100と約3,000psiの間である。いくつかの実施形態において、可剥層単独の破断時伸びは少なくとも約50%であり、別の実施形態では、可剥層の破断時伸びは少なくとも約100%、または少なくとも約150%、または少なくとも約200%、または少なくとも約250%である。伸びは、一旦、可剥層がトップコーティングされると、低下し得る。
【0026】
可剥層用組成物の適切な配合は、約10から約100wt%の固形分レベルを有し得る(固形分は、上に列挙されたもののような1種または複数のフィルム形成材を主として含む)。いくつかの実施形態において、固形分は、約40から約100wt%の量で存在するが、別の実施形態では、約40から約99wt%の固形分、または約40から約80wt%の固形分もまた用いられ得る。
【0027】
さらに、可剥層用組成物はまた、性能を向上させるために、添加剤も含み得る。例えば、可剥層用組成物は、水性コーティング配合の当業者によく知られた可塑剤を含み得る。適切な可塑剤には、これらに限らないが、ジブチルフタラート、ブチルベンジルフタラート、ジイソオクチルフタラート、ジエチレングリコールジベンゾアート、トリエチレングリコールジベンゾアート、ジプロピレングリコールジベンゾアート、トリブトキシエチルホスファート、および当業者に知られている他の多くの可塑剤が含まれる。いくつかの実施形態において、可塑剤は、約5wt%まで、または約3wt%まで、または約1wt%までの範囲で存在する。別の実施形態では、可塑剤は、少なくとも約0.1wt%、または少なくとも約0.5wt%で存在する。いくつかの実施形態は、約0.5wt%の量の可塑剤を含む。
【0028】
可剥層用組成物は、コーティング配合物のpHを調節するために、中和剤を含み得る。例えば、アンモニア、水酸化アンモニウム、アミン、水酸化物、シリカート、ホスファートおよび当業者に知られている他の添加剤が、必要であると思われた場合に、システムのpHを調節するために、約2wt%まで、または約1wt%まで、または約0.5wt%までの範囲で使用され得る。別の実施形態では、中和剤は、少なくとも約0.05wt%、または少なくとも約0.1wt%の量で存在し得る。別の実施形態は、約0.1wt%の中和剤を含み得る。適切には、pHは約7と約10の間である。
【0029】
可剥層用組成物のいくつかの実施形態は、また、エトキシ化された非イオン性含フッ素化学品、他の含フッ素化学品、アルコールエトキシラート、オルガノ−シリコーン、または当業者に知られている他のもののような、湿潤剤も含み得る。これらの物質は、約10wt%から、または約5wt%まで、または約3wt%まで使用され得る。別の実施形態では、湿潤剤は、少なくとも約0.01wt%、または少なくとも0.03wt%、または少なくとも0.05wt%、または少なくとも1wt%の量で存在し得る。いくつかの実施形態は、約1wt%の湿潤剤を用いる。さらに別の実施形態は、約0.03wt%の湿潤剤を含む。
【0030】
コーティング組成物はまた、消泡剤、例えば、ポリシロキサン、シリコーンまたはアセチレン系消泡剤も含み得る。さらに、グリコールエーテル(ジエチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール2−エチルヘキシルエーテル、およびジプロピレングリコールn−ブチルエーテルが含まれるが、これらに限らない)のような造膜助剤、または他の適切な溶媒が使用され得る。造膜助剤は、湿潤剤に関して上に記載された量で存在し得る。様々な保存剤、染料、顔料、芳香剤(例えば、Robertet 98Mを含めて、Robertetの芳香剤)、ナノ粒子、および他の添加剤も、いくつかの実施形態において含まれ得る。適切な保存剤には、PROXEL GXL(1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのNa塩(20%))が含まれる。
【0031】
さらに、可剥層用組成物に、離型助剤(release aid)が添加され得る。適切な離型助剤には、シリコーン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フィッシャー−トロプシュ生成物、パラフィンワックス、レシチン、グルセリン、グリセロールモノステアラート、および当業者に知られている他の適切な離型助剤が含まれる。
【0032】
いくつかの実施形態において、可剥層の光学的性質に影響を与えるさらなる成分(「光学組成物」)が、可剥層8の光沢を抑えるために、またつや消し仕上げを生じる(「つや消し光学組成物」)ように、可剥層用組成物に添加される。つや消し仕上げは、欠点を目立たなくすることによって床の外観を向上させることができ、また、より均一な外観を床に与えることができる。また、可剥層8がつや消し仕上げを有する場合、メンテナンス層10に取り違えられることがより起こりにくくなる。このことは、施工の間に床全体が可剥層によって覆われることを保証するのに役立ち得る。適切なつや消し光学組成物には、、ヒュームドシリカ、シリカゲル、ポリエチレンまたはフィッシャー−トロプシュワックス、ゲルとワックスの組合せ、および中空ガラスマイクロスフィアが含まれるが、これらに限らない。これらは通常、可剥層用組成物の0.5から10wt%の範囲で使用される。光沢を抑え、つや消し仕上げを生じるために添加される成分は、基材層6または表面とは異なる屈折率を有し得る。他の適切な光学組成物は当業者に知られている。
【0033】
いくつかの実施形態において、可剥層用組成物は、約0から約60wt%の水、少なくとも約10から約85wt%の可剥層フィルム形成材、約0から約5wt%の可塑剤、約0から約2wt%の中和剤、約0から約2wt%の消泡剤、約0から約5wt%の造膜助剤、約0から約5wt%の湿潤剤、ならびに、芳香剤、保存剤、離脱剤などを含めてのその他の任意選択の添加剤を含み得る。いくつかの実施形態において、可剥層用組成物の粘度は、約0センチポイズ(cP)と約10,000cP、約0cPと約1,000cP、約0cPと約100cP、約0cPと約50cP、約26cPと約32cPの間に、またいくつかの実施形態では、約26cPと約29cPの間にある。
【0034】
適切には、可剥層8は、そのシートまたはフラグメントとして剥離することによって、それが、任意選択の基材層6、または下にある表面4から取り除かれ得るように、乾燥した時には十分な引張強度を有する。必要とはされないが、可剥層8は、足または軽い備品の往来によるような通常の使用の結果として、基材層6または表面4から容易に剥離しないような接着プロフィールを有することが望ましい。別の言い方をすると、いくつかの実施形態において、可剥層8は、約100psiの接着強度、約400から約1200psiの引張強度、および約200から約350%の伸びを有する。一旦、トップコーティングされると、引張強度は、約300から約900psiまで低下し得るし、伸びは約50から約200%に低下し得る。
【0035】
可剥層8は、表面4または基材層6が可剥層8によって完全に覆われるように表面4または基材層6に付与される。いくつかの実施形態において、可剥層用組成物は、従来のモップとバケツによる塗布方法または他の適切なアプリケータを用いて、約300から約600sq.ft/galの割合で付与され、結果的に、約50wt%の固形分含量で、乾燥後の層として約1mil(0.001インチ)から約5milの厚さが得られる。可剥層8の厚さは、その引張強度のような要素と相俟って、表面4または基材層6から可剥層8を剥離するのに十分でなければならない。いくつかの実施形態において、可剥層の厚さは、少なくとも約1mil、または少なくとも約2milである。しかし、いくつかの実施形態は、用いられる可剥層8および/またはメンテナンス層10のタイプに少なくとも一部は依存して、1mil未満の可剥層8を含み得る。いくつかの実施形態において、可剥層の厚さは約0.5mil以下である。別の実施形態において、可剥層の厚さは約3mil未満または約2mil未満である。通常、可剥層8の厚さがより均一になるほど、表面4または基材層6から可剥層8を剥離することが、より容易である。代わりに、可剥層用組成物のいくつかのより薄い層が、適切な厚さの可剥層を作り出すように、付与されてもよい。
【0036】
可剥層8は、表面4、または基材層6(用いられる場合)に付与された時点でin situに形成されるフィルムを有する。適切には、付与される前に、可剥層8には如何なる構造も付与されない。
【0037】
例示的な可剥層用組成物は以下を含む。
【表1】


【表2】


【表3】


【表4】


【表5】


【表6】

【0038】
本発明の表面コーティングシステム2は、少なくとも1種のメンテナンス層フィルム形成材を含むメンテナンス層10をさらに含む。いくつかの実施形態において、メンテナンス層用組成物は水性組成物である。メンテナンス層10は、全システム2の耐久性を向上させるために、可剥層8に付与され得る。これらの性質には、物理的摩耗、引っ掻き、汚れ、および化学的損傷に対する耐性が含まれ得る。メンテナンス層10は、欠点のないコーティングシステムが得られるように、可剥層8または任意選択の遷移層20に適合していなければならない。適切なメンテナンス層フィルム形成材には、限定はされないが、UV硬化ポリマー、ポリスチレンアクリラート、ポリアクリラート、ポリウレタン、エポキシ、およびポリウレアのようなフィルム形成材が含まれる。他の適切なフィルム形成材は当業者に知られている。いくつかの実施形態において、フィルム形成材のブレンドが使用され得る。
【0039】
メンテナンス層用組成物には、他の添加剤、例えば、可塑剤、中和剤、湿潤剤、消泡剤、造膜助剤、保存剤、染料、顔料、芳香剤、ナノ粒子、架橋剤(例えば、炭酸亜鉛アンモニア)、および当業者に知られている他のものが添加され得る。さらに、メンテナンス層の光学的性質に影響を及ぼす添加剤が添加され得る(「光学組成物」)。これらの成分は、可剥層用組成物に関して上でより詳細に全て説明されており、そこに記載されたパーセンテージで存在し得る。
【0040】
可剥層8に、特定の湿潤剤、可塑剤、および/または造膜助剤(上で検討された)を組み入れることによって、スチレン−アクリル系メンテナンス層10は、美的に不愉快なフィルムの欠点(例えば、「濁り(hazing)」、「割れ」、「曇り(blooming)」、「細かいひび」、および当業者に一般的に知られている他の多くのタイプのフィルムの欠点)を招く可能性を減らして、または無くして、用いられ得る。理論によって制約されようとは思わないが、界面活性剤、可塑剤、および/または造膜助剤を添加することによって、より良好なコーティング間接着およびフィルム形成が可能になり、このことが、その特質からして、このような欠点の可能性を低下させると考えられる。
【0041】
水性ポリアクリラート系組成物である、いくつかの床仕上げ組成物は、メンテナンス層10に求められる、必要な適合性および耐久性を示す。通常、水性ポリアクリラート系組成物は、ポリアクリラートまたはポリアクリラート生成成分(スチレンおよびメチルアクリラート由来のモノマー単位が含まれるが、これらに限らない)を含む。適切なメンテナンス層用組成物には、市販の床仕上げ材料、例えば、GEMSTAR LASERおよびGEMSTAR POLARISおよびTAJ MAHALおよびFIRST BASE(Ecolab,Inc.(St.Paul、ミネソタ州)から入手可能)、BETCO BESTおよびBETCO EXPRESSおよびBETCO FLOOR SEALER床仕上げ(Betco Corp.(Toledo、オハイオ州)による)、CITATIONおよびCASTLEGUARD床仕上げ(Buckeye International(Maryland Heights、ミズーリ州)から入手可能)、ならびに、IRONSTONEおよびPLAZA PLUSおよびPREMIAおよびHIGH NOONおよびFRESCOMAXおよびOVER & UNDER(JohnsonDiversey,Inc.(Sturtevant、ウィスコンシン州)による)が含まれる。これらは、任意選択の基材層6、および/または任意選択の遷移層20の組成物に似ている、または同じであり得るが、このことは求められていない、または必要ではない。いくつかの実施形態において、メンテナンス層フィルム形成材のTは、約20℃から約100℃である。別の実施形態では、メンテナンス層フィルム形成材のTは、約50℃から約75℃、または約60℃から約80℃である。メンテナンス層フィルム形成材のブレンドが用いられる実施形態において、各フィルム形成材は異なるTを有し得る。
【0042】
メンテナンス層用組成物は、約15から約50wt%の固形分の固形分含量を有し得る。これには、約15から約25wt%の固形分含量を有する実施形態が含まれ、これは、いくつかの用途において適切である。メンテナンス層用組成物は、ウエットコーティング厚さを約1milにするように付与され得る。いくつかの例示的実施形態において、メンテナンス層用組成物は、約20wt%の固形分含量を有し、約0.2milの厚さを有する堅くなった乾燥後メンテナンス層を生成する。
【0043】
メンテナンス層用組成物の複数の層が、可剥層8を完全に覆うように付与されてもよく、その結果、いくつかの実施形態では、約0.6milから約4milの全厚を有するメンテナンス層を生じる。いくつかの実施形態では、メンテナンス層用組成物10の、3から10またはそれを超えるコーティングが付与され得る。表面コーティングシステム2のいくつかの実施形態は、4から6層のメンテナンス層10を含み得る。(1つまたは複数の)メンテナンス層は、時間の経つ間に、必要な場合、ごしごし擦って洗われ、再コーティングされ得るので、それらの厚さをさらに増す。2種以上の異なるメンテナンス層10が用いられ得る。
【0044】
可剥層8または任意選択の遷移層20へのメンテナンス層10の接着性は、これらの層が基材層6から物理的に剥離される時に、互いに接着したままであるようなものである。実際には、基材層6は、メンテナンス層10、任意選択の遷移層20、および可剥層8が除去された後、基板の上表面4に残る。
【0045】
任意選択の遷移層は、可剥層の低いTを有するフィルム形成材と、メンテナンス層の高いTを有するフィルム形成材との間の遷移をもたらす。様々な層におけるフィルム形成材の間のTの違いが大きすぎる場合、これらの層はコーティング表面に美的に感じのよい外観をもたらさないであろう。任意選択の遷移層20は、少なくとも1種の遷移層フィルム形成材を含む。適切な遷移層フィルム形成材には、限定はされないが、ポリアクリラート、スチレン−アクリルポリマー、ポリウレタン、エポキシ、およびポリウレアが含まれる。いくつかの実施形態において、フィルム形成材のブレンドが使用され得る。他の適切なフィルム形成材は当業者に知られている。さらなる成分、例えば、可塑剤、中和剤、湿潤剤、消泡剤、造膜助剤、保存剤、染料、顔料、芳香剤、ナノ粒子および光学組成物もまた遷移層用組成物に添加されてもよい。これらの成分は全て可剥層用組成物に関連して上でより詳細に検討されており、そこに記載されたパーセンテージで存在し得る。適切な遷移層用組成物には、市販の床仕上げ材料、例えば、GEMSTAR LASER およびGEMSTAR POLARISおよびTAJ MAHALおよびFIRST BASE(Ecolab,Inc.(St.Paul、ミネソタ州)から入手可)、BETCO BESTおよびBETCO EXPRESSおよびBETCO FLOOR SEALER床仕上げ(Betco Corp.(Toledo、オハイオ州)による)、CITATIONおよびCASTLEGUARD床仕上げ(Buckeye International(Maryland Heights、ミズーリ州)から入手可能)、ならびに、IRONSTONEおよびPLAZA PLUSおよびPREMIAおよびHIGH NOONおよびFRESCOMAXおよびOVER & UNDER(JohnsonDiversey,Inc.(Sturtevant、ウィスコンシン州)による)が含まれる。
【0046】
いくつかの実施形態において、遷移層用組成物は、基材層用組成物またはメンテナンス層用組成物と同じであり得る。いくつかの実施形態において、遷移層フィルム形成材のTは、約20℃から約100℃である。別の実施形態では、Tは約50℃から約60℃である。遷移層フィルム形成材のブレンドが用いられる実施形態において、各フィルム形成材は異なるTを有し得る。
【0047】
遷移層用組成物は、約0.5から約4milのウエット厚さを有するように付与され得る。例えば、いくつか実施形態において、ウェット厚さは、約1.0milである。適切には、乾燥後の仕上げは約0.2milである。望まれる場合、遷移層20の複数のコーティングが付与されてもよく、結果的に、遷移層20はより厚くなる。
【0048】
任意選択の基材層6は、少なくとも1種の基材層フィルム形成材を含む。適切な基材層フィルム形成材には、限定されないが、UV硬化ポリマー、ポリアクリラート、ポリスチレン−アクリラート、ポリウレタン、エポキシ、およびポリウレアが含まれる。他の適切なフィルム形成材は当業者に知られている。基材層用組成物は、メンテナンス層用組成物または遷移層用組成物と同じであり得るが、これは求められていない、または必要ではない。水性ポリアクリラートまたはポリスチレン−アクリラート系組成物は、限定はされないが、スチレン、メタクリル酸、ブチルアクリラート、およびメチルアクリラート由来モノマー単位を含む、ポリアクリラートまたはポリスチレン成分を含む。別の実施形態において、基材層6はまた、ビニル−アクリルコンパウンドを含み得るが、可剥層8もまた、ビニル−アクリルコンパウンドを含む場合には、2つの層6、8は、層6、8が後でより容易に分離できるように、異なるタイプのビニル−アクリルコンパウンドを含み得る。いくつかの実施形態において、フィルム形成材のブレンドが使用され得る。
【0049】
さらなる成分、例えば、可塑剤、中和剤、湿潤剤、消泡剤、造膜助剤、保存剤、染料、顔料、芳香剤、ナノ粒子および光学組成物もまた、基材層用組成物に添加され得る。これらの成分は全て上でより詳細に検討されており、そこに記載されたパーセンテージで存在し得る。いくつかの実施形態において、基材層用組成物は、遷移層用組成物および/またはメンテナンス層用組成物と同じである。
【0050】
いくつかの実施形態において、基材層フィルム形成材は、可剥層フィルム形成材より高いガラス転移(T)温度を有する。適切には、基材層フィルム形成材のTは、約−10℃から約100℃である。別の実施形態では、Tは約50℃から約60℃である。基材層フィルム形成材のブレンドが使用される実施形態において、各フィルム形成材は異なるTを有し得る。
【0051】
様々な実施形態において、基材層6は、亜鉛および亜鉛含有化合物を含む。適切には、基材層用組成物は、約0から約5wt%の15%炭酸亜鉛アンモニア溶液または約0から約2wt%のZnOを含む。基材層6は、基板の上側表面4に、基材層6が基板から物理的に剥離され得ないように接着される。市場で一般に入手可能ないくつかの床仕上げ用組成物が、基材層用組成物として使用され得る。基材層6として使用され得る適切な市販の床仕上げ材料の例には、GEMSTAR LASERおよびGEMSTAR POLARISおよびTAJ MAHALおよびFIRST BASE(Ecolab,Inc.(St.Paul、ミネソタ州)から入手可能)、BETCO BESTおよびBETCO EXPRESSおよびBETCO FLOOR SEALER床仕上げ(Betco Corp.(Toledo、オハイオ州)による)、CITATIONおよびCASTLEGUARD床仕上げ(Buckeye International(Maryland Heights、ミズーリ州)から入手可能)、ならびに、IRONSTONEおよびPLAZA PLUSおよびPREMIAおよびHIGH NOONおよびOVER & UNDERおよびFRESCOMAX(JohnsonDiversey,Inc.(Sturtevant、ウィスコンシン州)による)が含まれる。
【0052】
適切な基材層用組成物は、約15から約50wt%の固形分含量を有し得る。いくつかの実施形態は、約15から約25wt%の固形分含量を有する。基材層用組成物は、約0.5milから約4milのウエットコーティング厚さを有するように付与され得る。例えば、本発明のいくつかの実施形態において、乾燥前コーティング厚さは約1milである。約1milの乾燥前コーティング厚さおよび約20wt%の固形分含量を用いる実施形態では、約0.2milの厚さの堅い乾燥後仕上げ基材層が得られると推定される。
【0053】
いくつかの実施形態において、基材層用組成物の複数のコーティングが、約0.6milから約4milの厚さの乾燥後仕上げ基材層により、基板の上側表面4を完全に覆うように付与され得る。この厚さは、基板の上側表面4の粗さ、多孔度および/または表面モルフォロジーに少なくとも一部は依存して、1回付与すること、または複数回付与することによって達成され得る。
【0054】
基材層6は物理的および化学的に標準化された表面を提供することが理論上想定されており、このことは基材層6としてのその性能にとって重要であると考えられる。「物理的に標準化された」は、機械的および/または化学的方法によって達せられた表面として、ほとんど等しい粗さ、多孔度、および/または表面モルフォロジーを有する表面を意味する。「化学的に標準化された」は、機械的および/または化学的方法によって達せられた表面として、ほとんど等しい化学的部分(例えば、ヒドロキシル基、エステル基、炭化水素基、フルオロケミカル基、ホスファート基、オルガノ−ホスファート基、金属および金属酸化物など)の分布を有する表面を意味する。適切には、表面は、接着性を劇的に増大させる(大きすぎる接着性)または低下させる(小さすぎる接着性)のいずれの化学的部分も実質的に有さない。
【0055】
いくつかの実施形態において、表面4は、可剥層8が基材層6のない状態で表面4に直接付与され、それでもなお本明細書において記載された可剥性を有し得るような、適切な物理的および/または化学的性質を有し得る。いくつかの実施形態において、可剥層8は、磨かれたコンクリートの床に付与され、さらなる実施形態において、コンクリートの床はその上に、滑らかに磨かれたエポキシのコーティングを有し、それに付与された可剥層8を有する。可剥層がその上に付与される表面(例えば、基材層6または基板の上側表面4)の性質には、可剥層8が通常の使用の間に分離することを防ぐのに十分なだけ大きいが、可剥層8の除去が望まれる時には、基材層6(または表面4)からの可剥層8の剥離を許すのに十分なだけ小さい、接着強度が含まれる。適切には、接着強度は、約50と約300psiの間、または約100と約200psiの間であり、より適切には、約180psiである。
【0056】
特定の実施形態、例えば、可剥層8が基板の上側表面4に直接付与されるもの、および、基材層6が設置可能な床張り基板に工場で付与された実施形態において、基板の区画片(section)の間の接合部、または基板4の欠点を覆うように、基材層6を限られた部分に付与することが望ましいことであり得る。例えば、可剥層が磨かれたテラゾの床に付与される場合、基材層6は、可剥層8がその上に付与され得る連続的で滑らかな表面を提供するために、接合部(これは、テラゾの床の区画片の間の金属仕切り(divider)16を含み得る)に付与され得る(図6参照)。同様に、タイルまたは床張り材の上側表面4が、可剥層8を直接付与することを助ける、必要な化学的および/または物理的性質を有するとしても、タイルの区画片の間または床張り材片の間の接合部または継ぎ目を、基材層6により覆うことは望ましいことであり得る。
【0057】
本明細書において記載および/または例示された組成物のいずれかに添加され得るさらなる成分には、トラクションを増し、滑ることを防ぐために、埋め込まれる粒子、例えば研磨剤(abrasive)が含まれる。適切には、粒子は、約51から500ミクロンのサイズを有する。埋め込まれる粒子はまた、耐スリップ性の表面を得るために、基材層用組成物にも添加され得る。適切には、基材層6に埋め込まれる粒子は、基材層6の上に付与される可剥層8およびどのメンテナンス層10も連続性を有し、使用中にすり減らされないように、比較的滑らかである。
【0058】
本明細書において記載および/または例示された組成物のいずれかに添加され得る別の成分は、床の外観を向上させ、また表面コーティングシステム2が設置されるスペースの照明効果を向上させることができる、反射性粒子材料のような光学組成物である。適切には、これらには、サイズが約1から約100マイクロメートルの範囲の、ガラスマイクロスフィアまたは金属被覆ガラスマイクロスフィアが含まれる。利点の中でも特に、上で列挙されたもののような、層の光学的性質を変える成分の1種または複数の添加は、コーティングがすでに付与された場所、およびまだ付与されていない場所を、添加された成分が、目に見えるようにする助けになる限りにおいて、コーティングを正しく付与することを助けることができる。このことは、互いの違いを識別することが困難であり得る薄く透明な複数の層を複数のコーティングが形成し、そのため、新しいコーティングがどこに付与されたかを特定するために、仕上げにおける違い(例えば、つや消し仕上げの可剥層8が光沢のある基材層6の上に付与される)でさえ、コーティングを付与することを助けることができる場合に、特に重要である。
【0059】
基材層6は、可剥層8に対してよりも、基板の上側表面4に対して、より大きな接着力を有する。いくつかの実施形態において、可剥層8または任意選択の遷移層20に付与されたメンテナンス層10の接着力は、基材層6に対する可剥層8の接着力より大きい。また、いくつかの実施形態において、可剥層8または任意選択の遷移層20に付与されたメンテナンス層10の接着力は、十分に大きいので、メンテナンス層10および可剥層8または任意選択の遷移層20は、これらの層の物理的除去の間、互いに接着している。メンテナンス層10は、表面コーティングシステム2に、耐水性、耐引っ掻き性、耐久性、付加的な光沢、および耐汚染性のような耐久性を与えることができる。
【0060】
理論に拘束されようとは思わないが、いくつかの実施形態のメンテナンス層10、可剥層8および任意選択の遷移層20は、層がフィルムを形成し、界面の応力または張力のせいで層間剥離しないようにする、類似の特性を有すると考えられる。このような実施形態において、界面部分、さらにはフィルム本体もそれぞれ、フィルムの割れまたは層間剥離を生じ得る、係数の食い違いに起因する応力集中を最低限にするように、類似の弾性係数を有するべきである。この係数は、フィルム形成過程および表面コーティングシステムの寿命の全体を通して、類似していなければならない。いくつかの実施形態におけるメンテナンス層10、任意選択の遷移層20および可剥層8は、メンテナンス層10のフィルム形成の間、およびフィルムの寿命全体を通して、類似の収縮(仕上げ後の表面の水平面の崩壊として定義される)を有することもまた理論上想定されている。このような実施形態における収縮は、可剥層8、任意選択の遷移層20およびメンテナンス層10の光沢の低下、皺、割れおよび/またはひび割れ(checking)を最低限にするように、類似していなければならない。
【0061】
図1Aに示されるように、望まれる場合、1つまたは複数の通常の床仕上げ14が、メンテナンス層10に付与され得る。通常の床仕上げには、JohnsonDiversey Inc.(Sturtevant、ウィスコンシン州)によるFRESCOMAX床仕上げ剤が含まれ得る。
【0062】
いくつかの実施形態において、古くなったトップ層が後に剥離されて新たな既存の表面が現れ得るように、表面コーティングシステム2の複数の層が、互いの上に付与され得る。表面コーティングシステム2の複数の層の各々は、少なくとも、可剥層8およびメンテナンス層10を含み、基材層6および遷移層20を任意選択で含み得る。しかし、可剥層8の露出した上表面が、十分に滑らかで均一であれば、さらなる可剥層8を付与する前に、その上に基材層6を付与することは必要ではないこともあり得るが、隣接する可剥層8は、それらが互いに融合しての1つの層にならないように配合され得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、可剥層8と、任意選択の遷移層20およびメンテナンス層10との交互の次々のコーティングによって、1つの層がある時点で除去され得る、多層可剥表面が製造され得る(図1B)。
【0064】
実際には、本明細書に記載の実施形態のいずれかによる表面コーティングシステム2により表面4を仕上げる、またはコーティングする前に、最初に、表面4から、何らかの別の仕上げまたは汚れが掃除され、取り去さられ得る。当業者は、この仕事を実施する仕方を容易に理解するであろう。取り去ることは、通常の剥離剤、例えば、PROSTRIPまたはFREEDOM(JohnsonDiversey,Inc.(Sturtevant、ウィスコンシン州)による)、AX−ITまたはEXTREME(Betco Corp.(Toledo、オハイオ州)による)、あるいは、DA−70またはSQUARE ONE(Spartan Chemical Company(Maumee、オハイオ州)による)を用いて実施され得る。
【0065】
取り去ることに続いて、床表面4が乾いた後、望まれる場合、基材層用組成物の少なくとも1つの層が表面4に付与され得る。基材層用組成物は、モップとバケツ、T−バー(bar)、ローラーアプリケータ、または当業者に知られている他の塗布道具および技術を用いて塗布され得る。いくつかの実施形態において、このような仕上げは、約500から3,000平方フィート/ガロンのコーティングの割合で塗布される。さらに別の実施形態は、このような仕上げ組成物を、約1,800から2,200平方フィート/ガロンのコーティングの割合で塗布する。いくつかの実施形態において、この基材層用組成物層は、約30〜45分間、乾かされる。必要であれば、物理的に均一な表面を作り出すために、さらなる基材層が、前記のステップを繰り返すことによって塗布され得る。代わりに、既存の床を磨くことによるか、または要求される性質を有する床張り材を設置することによるかのいずれかで、物理的に滑らかな表面、および適切な表面エネルギーレベルを有する床張り材がもたらされ得る。こうして、いくつかの実施形態では、可剥層8は、基材層6の前もっての塗布なしに、表面4に直接付与することができる。
【0066】
基材層用組成物の最後のコーティングが塗布され、乾かされた後(例えば、約30〜45分間)、可剥層用組成物が、可剥層用組成物の粘度に少なくとも一部は依存して、T−バー、モップとバケツ、ローラー、または他のアプリケータを用いて、例えば、約300から約600平方フィート/ガロンの割合で、塗布され得る。比較的高粘度の組成物では、T−バー、パッド、またはローラーのような、組成物を、転がりながら塗るまたは塗り広げるアプリケータを用いることが望ましいことであろう。別の実施形態において、組成物は、例えば、コンプレッサー駆動動力噴霧機を用いることによって、表面に噴霧され得る。次いで、可剥層8は、仕上げられる表面にin situに、硬化または乾燥されて形成され、結果的に、少なくとも約100psiの破断時引張強度を有するフィルムを生じ得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、遷移層20が、可剥層8の上に付与される。遷移層用組成物は、モップとバケツ、ローラー、または他の適切な塗布道具および技術を用いて塗布され得る。遷移層20は、硬化および乾燥され得る(例えば、いくつかの実施形態において、30から45分間)。望まれる場合、遷移層20のさらなるコーティングが付与され得る。いくつかの実施形態において、遷移層20の1から3回塗りのコーティングが付与される。
【0068】
可剥層8が硬化され乾燥された後(例えば、いくつかの実施形態において、約45〜120分間)、メンテナンス層用組成物がその上に付与され得る。このメンテナンス層用組成物は、モップとバケツ、ローラー、または他の適切な塗布道具または技術を用いて塗布され得る。いくつかの実施形態において、メンテナンス層用組成物10は、約500から約3,000sq.ft/galの割合で塗布され得る。これには、コーティングの割合が約1,800から約2,200sq.ft/galである場合の実施形態が含まれる。メンテナンス層10は、硬化または乾燥され得る(例えば、いくつかの実施形態において、少なくとも30〜45分間)。メンテナンス層用組成物のさらなるコーティングが、先のメンテナンス層10の上に付与され得る。いくつかの実施形態において、メンテナンス層10の1から10回塗りのコーティングが可剥層8の上に付与される。いくつかの実施形態において、メンテナンス層10の4から6回塗りのコーティングが付与され得る。いくつかの実施形態は、1つの基材層6、1つの可剥層8、および4つの可剥層10からなる。また、いくつかの実施形態では、全ての可剥層8の全厚は、単一の基材層6またはメンテナンス層10の厚さの3から10倍である。
【0069】
メンテナンス層10が損傷を受け、すり減り、汚された等の後で、次にメンテナンス層10の除去に取り組む時、通常の剥離剤の必要はなくなる。実際には、時間が経って損傷を受け、摩耗し、汚くなっていることがあり得る、メンテナンス層10を除去するために、仕上げの表面に小さく目立たない切れ目を入れ、手または道具によって、可剥層8の隅または端部を、その上に配置されたメンテナンス層10と共に掴み、そして、可剥層8、任意選択の遷移層20、およびメンテナンス層10を、シート状に、表面4から剥離し始める。「シート」という用語は、何らかの特定のサイズまたは寸法を意味しようとするものでは決してない。しかし、実際には、より大きく「シート」が除去されるほど、全体の除去がより速く完了する。基材層6(用いられる場合)は、図2に示されるように、このような除去過程の間、表面4に張り付いた、または接着したままである。通常の剥離剤が除去過程から省かれるので、除去過程は、より費用が掛からず、より少ないエネルギーを消費し、より時間が掛からないものであり得るし、また剥離用化学品の必要性を無くする。
【0070】
可剥層8、任意選択の遷移層20、およびメンテナンス層10の除去を達成するために、ユーザーは、可剥層8およびメンテナンス層10の区画片またはシートを一緒に、手で、複数回の繰返しステップで剥離することができる、または、それを1つの大きなシートとして達成できる。代わりに、例として、一様なシートとして層を、よりきちんと効率的に除去するように、層に切り目を入れるローラーを含む道具が使用され、床の上を動かされてもよい。層の除去の後、新たな可剥層8が、表面4の上に残っている基材層6の上に(または、前記のように適切にな付与で、表面の上に直接)付与され得る。用いられる場合、遷移層20がその上に付与される。次いで、メンテナンス層10が、可剥層8、または遷移層20の上に、それが硬化または乾燥された後で付与され得る。これは、表面コーティングシステム2を最初に付与することに関してすでに記載されたようにして達成できる。
【0071】
いくつかの場合において、損傷を受けたメンテナンス層10または表面コーティングシステム2の一部だけを補修することが望ましいかもしれない。これを達成するために、損傷を受けた部分が、何らかの適切な技法(例えば、剃刀の刃または層を切るのに適した他の道具を用いて切り込みを入れること、および、切り込みを入れた区画片だけを剥がして除き、露出した表面を生み出すこと)を用いて除去され得る。除去の後、可剥層8が、露出した表面(すなわち、区画片が除去された部分)に再び付与されて、補修された可剥層が形成され得る。可剥層8が乾燥した後、用いられる場合、遷移層が付与され、次いで、メンテナンス層10が付与されて、補修されたコーティングを得ることができる。可剥層8のポリマーの特質のせいで、それは、その周りの元からある可剥層8と1つの完全なフィルムを再形成でき、その結果、いくつかの実施形態において、それは、後の除去の間、既存の層のより大きな一片の一部として剥離され得る。
【0072】
図3A、3B、4、5、7、および8は、本発明による表面コーティングシステム200の別の実施形態を例示する。表面コーティングシステム200は、上で説明された図1A、1B、2、および6の例示された実施形態に、多くの点で似ている。したがって、図3A、3B、4、5、7および8の実施形態と、図1A、1B、および2の実施形態との間の相互に一致しない特徴および要素を除いて、図3A、3B、4、5、7および8の実施形態の特徴および要素(ならびに、これらの特徴および要素の代わりとなるもの)のより完全な説明のために、図1A、1B、および2の実施形態を伴う上の説明が、ここでは参照される。
【0073】
図3Aでは、スターターメカニズム212が、それらが横断面に現れるように概略的に示されており、可剥層208、さらには全ての層210、およびその上に付与された通常の床コーティング214の除去を容易にするように、基材層206の上で可剥層208の下またはその中に位置している。スターターメカニズム212は、様々な厚さを有し得るが、いくつかの実施形態において、表面コーティングシステム200の何らかの隆起または突起を最低限にするのに十分なだけ薄い。適切には、スターターメカニズム212は、トップ層(すなわち、可剥層208、メンテナンス層210、および任意選択で、可剥層208およびメンテナンス層210の上に付与される通常の床コーティング214)を通じて引っ張られた時に破断に抗するように、十分に強い。
【0074】
スターターメカニズム212は、可剥層208、および、存在する場合、その上に付与されたメンテナンス層210の除去を容易にするように、戦略的に表面に置かれ得る。いくつかの実施形態において、スターターメカニズム212は、可剥層218がそこから除去されることになっている、表面の対向する両端に置かれる。例えば、図3Aに示される図が通路の横断面を表す場合、スターターメカニズム212は、隣接する壁の端に向かって、通路の対向する両側に置かれ得る。こうして、スターターメカニズム212を引き上げると、壁側から層が引き離されて、壁側から層210を完全に除去することが容易になる。この実施形態のいくつかの変形形態において、可剥層208およびメンテナンス層210は、スターターメカニズム212を完全には覆っていないで、壁から離れた所に面をなすスターターメカニズム212の端部に沿ってのみ付与される。こうして、スターターメカニズム212および層208、210が引き上げられる時、隣接する壁に残される残留する層は存在しない。このような場合には、隣接する壁の下端に沿ってスターターメカニズム212の一部が付与されるように、より幅広いスターターメカニズム212が使用され得る(図3B)。スターターメカニズム212はまた、完全に水平に付与することもでき、その結果、その端部が壁に隣接する。
【0075】
特定の実施形態において、スターターメカニズム212は、格子模様に付与され、一方、別の実施形態では、スターターメカニズム212は、平行に並んで付与されるだけである。さらに別の実施形態において、スターターメカニズム212は、知られているまたは予想される往来の多い床の部分における(例えば、通路の中央における、または出入り口の近くにおける)層の除去または取り替えを容易にするパターンで付与される(図4および5参照)。
【0076】
いくつかの実施形態において、スターターメカニズム212は、比較的目に留まりにくい。例えば、スターターメカニズム212は、透明で無色であり得る、または、スターターメカニズム212は、表面コーティングシステム200がそれに付与される表面204と同じテクスチャおよび/または色を有し得る。別の実施形態において、スターターメカニズム212は、素早い識別のために、複数の層、および任意選択で通常の床仕上げコーティング214を通して容易に目に見えるように選択されてもよい。スターターメカニズム212の例には、テープ(例えば、ポリエステル系テープ)、紐、およびプラスチックが含まれ得る。市販のスターターメカニズムには、釣り糸、デンタルフロス(例えば、細いナイロンフィラメント、またはポリエチレンまたはTeflonのようなプラスチック製のリボンが含まれる)、自動車用ピンストライプテープ、およびSpecialty Tapes(Franksville、ウィスコンシン州)から入手可能なLinered Removable Acrylic Tape(#S922)が含まれ得る。例えば、いくつかの実施形態において、スターターメカニズム212は、幅が約6mmで厚さが約4.5milである、裏に接着剤の付いたテープである。
【0077】
いくつかの実施形態において、スターターメカニズム212は、液状で付与される材料である。例えば、可剥層208に使用されるものに似た組成を有する液体が、液体スターターメカニズム212として使用され得る。適切には、液体スターターメカニズム用組成物は、乾燥および/または硬化された時に、それと共に用いられる可剥層208より強い材料の層を生じる。可剥層用組成物と同様に、液体系スターターメカニズム用組成物212は、かなりの数の方法を用いて、例えば、スプレーすること、塗り付与すること、ロールを用いること、刷毛を用いること、またはモップを用いることによって塗布され得る。用いられる方法は、液体スターターメカニズム用組成物の粘度および他の性質、さらには、床張り表面、および付与されるスターターメカニズム212の所望の幅および外観のような要因に依存し得る。
【0078】
いくつかの実施形態において、スターターメカニズム212は、メンテナンス層210を付加する前に、基材層206の少なくとも一部に付与される。図3Aに示される実施形態において、スターターメカニズム212は、基材層206の対向する両端に沿って付与された2つのテープストリップを含む。しかし、スターターメカニズム212は、様々な異なる材料からなっていてもよく、様々な形状およびサイズを有することができ、基材層206の上の1つまたは複数の場所に付与することができることが理解されよう。可剥層208は、図3Aに示されるように、スターターメカニズム212および基材層206に付与され得る。任意選択で、1つまたは複数の通常の床仕上げ214が、可剥層208に付与され得る。本発明のいくつかの実施形態において、スターターメカニズム212の一片が、スターターストリップを作り出すように、表面コーティングシステム200の上に露出している(図10参照)。代わりに、スターターメカニズム212の全体は可剥層208によって覆われていてもよい。
【0079】
可剥層8が床張り基板の上側表面4に直接付与される特定の実施形態において、スターターメカニズム212は、床張り基板の上の任意の個所に付与され得る。例えば、スターターメカニズム212は、可剥層208がその上に付与され得る切れ目のない滑らかな表面を与えるように、また、可剥層208の後の除去のためのスターターメカニズム212も与えるように、床張り基板の区画片の間の接合部の上に付与されてもよい(図8)。
【0080】
いくつかの実施形態において、表面コーティングシステム200の1つまたは複数の層が、設置可能な床張り基板204’(例えば、タイルまたはシート材)に、その製造の間に付与される(図7、9)。こうして、床張り基板が設置された後、その表面は、表面コーティングシステム200の最上層を除去することによって再生できる。これは、基板に工場で付与された層の数だけ繰り返すことができる。いくつかの実施形態において、各層のスターターメカニズム212は、表面を歪め得る、層状材料のあり得る積み重なりを防ぐために、1つまたは複数のすぐ近くの層のスターターメカニズム212から、階段状にずれている、または互い違いになっている(図7)。いくつかの実施形態において、スターターメカニズム212は、製造される床張り基板の少なくとも端部には付与され得る(図9)。
【0081】
可剥層208およびその上の層を除去するために、スターターメカニズム212は、前記のように、下にある基材層206から可剥層208を剥離するために用いることができるはっきりとした端部を作り出すように、トップ層(すなわち、可剥層208、メンテナンス層210、および任意選択で、通常の任意の床仕上げ214)を通して引っ張られる。スターターメカニズム212は、様々な層の上に露出させられ得るスターターストリップを通じて、または、トップ層208、210を切り裂いて、埋め込まれたスターターストリップ212に到達することによって、利用することができる。
【0082】
別の実施形態において、表面コーティングシステム2は、床以外の表面、例えば、ほんの少数の可能な用途を挙げれば、他の実質的に水平な表面(例えば、手術台、食品調理表面、机、テーブル)、さらには、垂直な表面(例えば、壁、窓など)、さらに、平らでない表面(例えば、食品調理備品、容器、タンク、パーツなど)に付与される。
【0083】
以下の実施例は、本発明のさらなる理解を助けるために提供される。用いられる特定の材料および方法は、本発明の例示であると見なされており、特許請求の範囲を限定しようとするものではない。
【実施例1】
【0084】
インストロン試験
試験は、ASTM D 882−02版「薄いプラスチックシートの引張特性の標準試験法」を用いて行った。本発明者らのフィルムはインストロンの3345型(Instron(Norwood、マサチューセッツ州))で試験した。
【0085】
試料は、ビニル組成物タイルに、2000sq.ft/galの割合で基材層を付与することによって調製した。次いで、可剥層を、300sq.ft/galの割合で付けた。
【0086】
いくつかの場合において、さらなる3つのトップコートを、2000sq.ft/galの割合で可剥層に付けた。硬化の後、次に、フィルムを10mm×75mmの区画片に切断し、分析のためにインストロンに取り付けた。試料は、30mm/minの速度で伸ばした。次いで、インストロン内のプログラムが、試料の引張強度および伸びを自動的に計算する。結果を図11の表1に示す。
【0087】
本発明の原理が特定の実施形態に関連させて説明されたが、これらの説明は単に例としてなされ、本発明の範囲を限定しようとするものではないことが明瞭に理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可剥層フィルム形成材を含む可剥層用組成物(ここで、可剥層は接着強度より大きい引張強度を有する);および
メンテナンス層フィルム形成材を含むメンテナンス層用組成物
を含むコーティングシステム。
【請求項2】
可剥層フィルム形成材を含む可剥層用組成物(ここで、可剥層は少なくとも約50%の伸びを有する);および
メンテナンス層フィルム形成材を含むメンテナンス層用組成物
を含むコーティングシステム。
【請求項3】
約−10から約50℃のTを有する可剥層フィルム形成材を含む可剥層用組成物;および
約20から約100℃のTを有するメンテナンス層フィルム形成材を含むメンテナンス層用組成物
を含むコーティングシステム。
【請求項4】
可剥層フィルム形成材が約0℃から約50℃のTを有する、請求項3に記載のコーティングシステム。
【請求項5】
可剥層フィルム形成材が約10℃から約30℃のTを有する、請求項4に記載のコーティングシステム。
【請求項6】
メンテナンス層フィルム形成材が約60℃から約80℃のTを有する、請求項3乃至5のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項7】
可剥層フィルム形成材およびつや消し光学組成物を含む可剥層用組成物;および
メンテナンス層フィルム形成材を含むメンテナンス層用組成物
を含むコーティングシステム。
【請求項8】
可剥層フィルム形成材がエチレン酢酸ビニルコポリマーを含む、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項9】
可剥層用組成物が酢酸ビニルアクリラートコポリマーを含む、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項10】
酢酸ビニルアクリラートコポリマーが、酢酸ビニル−ブチルアクリラート−メチルメタクリラートである、請求項9に記載のコーティングシステム。
【請求項11】
メンテナンス層フィルム形成材がポリアクリラートを含む、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項12】
ポリアクリラートがポリスチレンアクリラートである、請求項11に記載のコーティングシステム。
【請求項13】
基材層フィルム形成材を含む基材層用組成物をさらに含む、請求項1乃至12のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項14】
基材フィルム形成材が約−10℃から約100℃のTを有する、請求項13に記載のコーティングシステム。
【請求項15】
基材層用組成物が、約50から約60℃のTを有する基材フィルム形成材を含む、請求項14に記載のコーティングシステム。
【請求項16】
遷移層フィルム形成材を含む遷移層用組成物をさらに含む、請求項1乃至15のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項17】
遷移フィルム形成材が、約20℃から約100℃のTを有する、請求項16に記載のコーティングシステム。
【請求項18】
遷移層用組成物が、約50℃から約60℃のTを有する遷移フィルム形成材を含む、請求項17に記載のコーティングシステム。
【請求項19】
可剥層用組成物が、可塑剤、中和剤、湿潤剤、消泡剤、造膜助剤、保存剤、染料、顔料、芳香剤、ナノ粒子、離型助剤、光学組成物および埋め込まれる粒子からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項1乃至18のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項20】
メンテナンス層用組成物が、可塑剤、中和剤、湿潤剤、消泡剤、造膜助剤、保存剤、染料、顔料、芳香剤、ナノ粒子、離型助剤、光学組成物および埋め込まれる粒子からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項1乃至19のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項21】
基材層用組成物が、可塑剤、中和剤、湿潤剤、消泡剤、造膜助剤、保存剤、染料、顔料、芳香剤、ナノ粒子、離型助剤、光学組成物および埋め込まれる粒子からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項13乃至20のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項22】
遷移層用組成物が、可塑剤、中和剤、湿潤剤、消泡剤、造膜助剤、保存剤、染料、顔料、芳香剤、ナノ粒子、離型助剤、光学組成物および埋め込まれる粒子からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項16乃至21のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項23】
除去用具をさらに含む、請求項1乃至22のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項24】
使用説明書をさらに含む、請求項1乃至23のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項25】
表面への接着強度より大きい引張強度を有する可剥層を形成するように、可剥層フィルム形成材を含む可剥層用組成物を付与すること;および
メンテナンス層を形成するように、メンテナンス層フィルム形成材を含むメンテナンス層用組成物を付与すること
を含む、表面のコーティング方法。
【請求項26】
少なくとも約50%の伸びを有する可剥層を形成するように、表面に、可剥層フィルム形成材を含む可剥層用組成物を付与すること;および
メンテナンス層を形成するように、メンテナンス層フィルム形成材を含むメンテナンス層用組成物を付与すること
を含む、表面のコーティング方法。
【請求項27】
可剥層を形成するように、表面に、約−10℃から約50℃のTを有する可剥層フィルム形成材を含む可剥層用組成物を付与すること;および
メンテナンス層を形成するように、約20℃から約100℃のTを有するメンテナンス層フィルム形成材を含むメンテナンス層用組成物を付与すること
を含む、表面のコーティング方法。
【請求項28】
可剥層フィルム形成材が、約0℃から約50℃のTを有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
可剥層フィルム形成材が約10℃から約30℃のTを有する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
メンテナンス層フィルム形成材が約60℃から約80℃のTを有する、請求項27乃至29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
つや消し可剥層を形成するように、表面に、可剥層フィルム形成材およびつや消し光学組成物を含む可剥層用組成物を付与すること;および
光沢のあるメンテナンス層を形成するように、メンテナンス層フィルム形成材を含むメンテナンス層用組成物を付与すること
を含む、表面のコーティング方法。
【請求項32】
表面が床基板である、請求項25乃至27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
床基板が、エンジニアードストーン、エンジニアードウッド、ビニル、リノリウム、木材、コンクリート、大理石、テラゾ、セラミック、金属、プラスチック、ゴム、石、ビニル組成物タイルまたはガラスである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
表面が食品調理表面である、請求項25乃至33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
可剥層フィルム形成材がエチレン酢酸ビニルコポリマーを含む、請求項25乃至34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
可剥層フィルム形成材が酢酸ビニルアクリラートコポリマーを含む、請求項25乃至34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
酢酸ビニルアクリラートコポリマーが、酢酸ビニル−ブチルアクリラート−メチルメタクリラートである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
メンテナンス層フィルム形成材がポリアクリラートを含む、請求項25乃至37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
ポリアクリラートがポリスチレン−アクリラートを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
可剥層用組成物を付与する前に、基材層を形成するために、表面に、基材層フィルム形成材を含む基材層用組成物を付与することをさらに含む、請求項25乃至39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
基材層用組成物が、約−10℃から約100℃のTを有する基材フィルム形成材を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
基材層用組成物が、約50℃から約60℃のTを有する基材フィルム形成材を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
メンテナンス層用組成物を付与する前に、遷移層を形成するために、可剥層に、遷移層フィルム形成材を含む遷移層用組成物を付与することをさらに含む、請求項25乃至42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
遷移層フィルム形成材が約20℃から約100℃のTを有する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
遷移層フィルム形成材が約50℃から約60℃のTgを有する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
可剥層を形成するために、可剥層用組成物の2つ以上のコーティングが表面に付与される、請求項25乃至45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
メンテナンス層を形成するために、メンテナンス層用組成物の2つ以上のコーティングが表面に付与される、請求項25乃至46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
基材層を形成するために、基材層用組成物の2つ以上のコーティングが表面に付与される、請求項40乃至47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
遷移層を形成するために、遷移層用組成物の2つ以上のコーティングが表面に付与される、請求項43乃至48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
スターターメカニズムが、可剥層用組成物を付与する前に、表面の上に置かれる、請求項25乃至49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
可剥層が少なくとも約0.5milの乾燥厚さを有する、請求項25乃至50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
可剥層が少なくとも約1.0milの乾燥厚さを有する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
可剥層が約3mil未満の乾燥厚さを有する、請求項25乃至50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
メンテナンス層が約0.1milから約4milの乾燥厚さを有する、請求項25乃至53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
基材層が約0.5milから約4milのウエット厚さを有する、請求項40乃至54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
基材層が約0.1milから約4milの乾燥厚さを有する、請求項40乃至55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
遷移層が約0.1milから約4milの乾燥厚さを有する、請求項43乃至56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
可剥層用組成物が、可塑剤、中和剤、湿潤剤、消泡剤、造膜助剤、保存剤、染料、顔料、芳香剤、ナノ粒子、離型助剤、光学組成物および埋め込まれる粒子からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項25乃至57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
メンテナンス層用組成物が、可塑剤、中和剤、湿潤剤、消泡剤、造膜助剤、保存剤、染料、顔料、芳香剤、ナノ粒子、離型助剤、光学組成物および埋め込まれる粒子からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項25乃至58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
基材層用組成物が、可塑剤、中和剤、湿潤剤、消泡剤、造膜助剤、保存剤、染料、顔料、芳香剤、ナノ粒子、離型助剤、光学組成物および埋め込まれる粒子からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項40乃至59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
遷移層用組成物が、可塑剤、中和剤、湿潤剤、消泡剤、造膜助剤、保存剤、染料、顔料、芳香剤、ナノ粒子、離型助剤およびつや消し光学組成物からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項43乃至60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
露出した表面を得るために、表面コーティングの損傷を受けた部分を除去すること;
補修された可剥層を形成するために、露出した表面に可剥層用組成物を付与すること;および
補修されたコーティングを得るために、補修された可剥層にメンテナンス層用組成物を付与すること
を含む、損傷を受けた表面の補修方法。
【請求項63】
メンテナンス層用組成物を付与する前に、補修された遷移層を形成するために、遷移層用組成物が、補修された可剥層に付与される、請求項62に記載の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公表番号】特表2010−530318(P2010−530318A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508609(P2010−508609)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/063932
【国際公開番号】WO2008/144535
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(398061050)ディバーシー・インコーポレーテッド (101)
【住所又は居所原語表記】8310 16th Street,Sturtevant,Wisconsin 53177−0902,United States of America
【Fターム(参考)】