説明

被覆物を形成するための無溶媒法

乾燥動力学の影響を実質的に有しない被覆物を有する医療デバイス、及び、そのような被覆物を形成する方法が本発明において提供される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の背景]
[発明の分野]
本発明は一般に、乾燥動力学の影響を実質的に有しない被覆物を有する医療デバイス、及びそのような被覆物を形成する方法に関連する。
【0002】
[背景の説明]
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は、心臓疾患を処置するための手技である。バルーン部を有するカテーテルアセンブリーは上腕動脈又は大腿動脈を介して患者の心臓血管系の中に経皮的に導入される。カテーテルアセンブリーは、バルーン部が閉塞病変部を横切って配置されるまで冠動脈血管系の中を進められる。病変部を横切って正しく置かれると、バルーンは、病変部の動脈硬化性プラークに対して半径方向に押しつけて、管腔壁を再構築するために、所定のサイズに膨張させる。その後、バルーンをより小さい外径に縮めて、カテーテルを患者の血管系から引き抜くことを可能にする。バルーン治療と併せて、管腔の反動を防止するために、また、管腔の壁を維持するために、また、生物学的治療を施すために、ステントを使用することができる。
【0003】
PCIの技術分野における現在の理論的枠組みは、インプラントからの生物学的応答を調節するために、ポリマーの被覆物をインプラント表面に形成することである。被覆プロセスにおいて、被覆用ポリマー及び/又は薬物を溶解するために、溶媒を一般に使用する。ポリマー被覆物における溶媒、特に、揮発性溶媒を使用すると、溶解したポリマーが表面に堆積した後に乾燥動力学が生じる。乾燥動力学は迅速に生じる。例えば、ステントをスプレー被覆すると、溶媒の50%超が数十秒からほんの数分間で蒸発する。これらの乾燥動力学は、制御することが難しく、また、プロセス結果の予測を困難にしている。結果として、同じ被覆物の再現性が困難になっている。
【0004】
本発明の実施形態は、これらの問題、並びに、当業者によって明らかである他の問題に対処する。
【0005】
[発明の概要]
医療デバイス(例えば、ステント)を被覆するための無溶媒法が本明細書中に提供される。この方法は、医療デバイスを、被覆用ポリマーのモノマーが溶媒として使用される溶媒非含有被覆配合物により被覆するステップを含む。この方法は、(1)そのような溶媒非含有被覆配合物を医療デバイスに被覆するステップ、及び(2)重合反応又は架橋反応により硬化して、ポリマー被覆物を形成するステップを含む。薬剤を医療デバイス(例えば、薬物送達ステント)に被覆する場合、薬剤はそのような溶媒非含有被覆配合物に含めることができ、及び/又は、別の層において、例えば、そのような溶媒非含有配合物が上塗りとして被覆され得るデバイスの表面における純薬物層においてデバイスに被覆することができる。いくつかの実施形態において、薬物がヒドロキシル基又はアミノ基を含む場合、そのような溶媒非含有被覆組成物を医療デバイスにおける下塗り又は上塗りを形成するために使用することができる。
【0006】
いくつかの実施形態において、本発明は、乾燥動力学の影響を実質的に有しない被覆物をその表面に有する医療デバイスを提供する。そのような被覆物は、ポリマー物質と、場合により、生物活性な薬剤とを含有し、本明細書中に記載される方法によって形成させることができる。
【0007】
生物活性な薬剤は、この技術分野で知られている任意の生物活性な薬剤であることが可能である。いくつかの例示的な生物活性な薬剤として、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ピメクロリムス、イマチニブメシラート、ミドスタウリン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン及び40−O−テトラゾール−ラパマイシン、40−epi−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン(ABT−578)、クロベタゾール、それらのプロドラッグ、それらのコドラッグ(co−drug)、並びにそれらの組合せが挙げられる。埋め込み可能なデバイスを、例えば、アテローム性動脈硬化、血栓症、再狭窄、出血、血管の解離又は穿孔、血管の動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、跛行、血管及び人工移植片についての吻合部増殖、胆管閉塞症、尿管閉塞症又は腫瘍閉塞症などの障害を処置又は予防するために患者に埋め込むことができる。
【0008】
[詳細な説明]
医療デバイス(例えば、ステント)を被覆するための無溶媒法が本明細書中に提供される。この方法は、医療デバイスを、被覆用ポリマーのモノマーが溶媒として使用される溶媒非含有被覆配合物により被覆するステップを含む。この方法は、(1)そのような溶媒非含有被覆配合物を医療デバイスに被覆するステップ、及び(2)重合反応又は架橋反応により硬化して、ポリマー被覆物を形成するステップを含む。薬剤を医療デバイス、例えば、薬物送達ステント、に被覆する場合、薬剤はそのような溶媒非含有被覆配合物に含めることができ、及び/又は、別の層において、例えば、そのような溶媒非含有配合物が上塗りとして被覆され得るデバイスの表面における純薬物層においてデバイスに被覆することができる。そのような純薬物層は、薬物/溶媒の組成物をデバイスに塗布して、ポリマーを含まない薬物層を形成することによって作製することができ、又は、薬物/溶媒/ポリマーの組成物をデバイスに塗布して、薬物を有するポリマー層を形成することによって作製することができる。デバイスの表面上の下塗り層の形成もまた、本発明の実施形態の範囲内に含まれる。例えば、薬物がヒドロキシル基又はアミノ基を含む場合、そのような溶媒非含有被覆組成物を医療デバイスにおける下塗り又は上塗りを形成するために使用することができる。
【0009】
いくつかの実施形態において、本発明は、乾燥動力学の影響を実質的に有しない被覆物をその表面に有する医療デバイスを提供する。そのような被覆物は、ポリマー物質と、場合により、生物活性な薬剤とを含有し、本明細書中に記載される方法によって形成することができる。本明細書中で使用される用語「乾燥動力学の影響」は、溶媒蒸発の複数の結果を示し、より具体的には、迅速な溶媒蒸発を示す。これらの影響には、被覆物を過冷却(sub−cooling)し、周囲の水を凝縮させること、薬物成分及びポリマー成分を非平衡様式で沈殿又は相分離させること、及び/又は、薬物のクロマトグラフィー的移動を生じさせる溶媒の迅速な拡散からの被覆物内での薬物の再分布が含まれる。
【0010】
生物活性な薬剤は、この技術分野で知られている任意の生物活性な薬剤であることが可能である。いくつかの例示的な生物活性な薬剤として、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ピメクロリムス、イマチニブメシラート、ミドスタウリン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン及び40−O−テトラゾール−ラパマイシン、40−epi−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン(ABT−578)、クロベタゾール、それらのプロドラッグ、それらのコドラッグ、並びにそれらの組合せが挙げられる。埋め込み可能なデバイスを、例えば、アテローム性動脈硬化、血栓症、再狭窄、出血、血管の解離又は穿孔、血管の動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、跛行、血管及び人工移植片についての吻合部増殖、胆管閉塞症、尿管閉塞症又は腫瘍閉塞症などの障害を処置又は予防するために患者に埋め込むことができる。
【0011】
マクロマー前駆体の架橋
いくつかの実施形態において、溶媒非含有被覆配合物はバイオゴムの液状のマクロマー前駆体を含む。1つの実施形態において、活性な作用剤を被覆配合物に懸濁することができる。その後、被覆配合物を医療デバイスに塗布し、例えば、熱及び/又は触媒作用によって硬化させることができ、これにより、活性な作用剤をその固相に包むバイオゴム被覆物を形成することができる。バイオゴムのマクロマー前駆体は、連結剤により架橋することができるマクロマーであることが可能である。いくつかの実施形態において、マクロマー前駆体は、例えば、ジオール又は水素結合剤などの連結剤により架橋することができるポリ二酸である。ポリ二酸の一例が、例えば、グリセロールなどの連結剤と共に用いられるポリ(セバシン酸−co−1,4−ブタンジオール)である。マクロマー前駆体の他の例には、ポリ(セバシン酸−co−ポリ(エチレングリコール))、ポリ(セバシン酸−co−ポリ(プロピレングリコール))、ポリ(セバシン酸−co−ポリ(テトラメチレングリコール))、ポリ(セバシン酸−co−1,6−ヘキサンジオール)、ポリ(セバシン酸−co−1,2−プロパンジオール)、ポリ(セバシン酸−co−1,3−プロパンジオール)、ポリ(アジピン酸−co−ポリ(エチレングリコール))、ポリ(アジピン酸−co−ポリ(プロピレングリコール))、ポリ(アジピン酸−co−ポリ(テトラメチレングリコール))、ポリ(アジピン酸−co−1,6−ヘキサンジオール)、ポリ(アジピン酸−co−1,4−ブタンジオール)、ポリ(アジピン酸−co−1,2−プロパンジオール)、ポリ(アジピン酸−co−1,3−プロパンジオール)、ポリ(コハク酸−co−ポリ(エチレングリコール))、ポリ(コハク酸−co−ポリ(プロピレングリコール))、ポリ(コハク酸−co−ポリ(テトラメチレングリコール))、ポリ(コハク酸−co−1,6−ヘキサンジオール)、ポリ(コハク酸−co−1,4−ブタンジオール)、ポリ(コハク酸−co−1,2−プロパンジオール)、ポリ(コハク酸−co−1,3−プロパンジオール)、ポリ(リシンジイソシアナートエチルエステル−co−ポリ(エチレングリコール))、ポリ(リシンジイソシアナートエチルエステル−co−ポリ(プロピレングリコール))、ポリ(リシンジイソシアナートエチルエステル−co−ポリ(テトラメチレングリコール))、ポリ(リシンジイソシアナートエチルエステル−co−1,6−ヘキサンジオール)、ポリ(リシンジイソシアナートエチルエステル−co−1,4−ブタンジオール)、ポリ(リシンジイソシアナートエチルエステル−co−1,2−プロパンジオール)、ポリ(リシンジイソシアナートエチルエステル−co−1,3−プロパンジオール)、ポリ(1,4−ブタンジイソシアナート−co−1,6−ヘキサンジオール)、ポリ(1,5−ペンタンジイソシアナート−co−1,6−ヘキサンジオール)、ポリ(1,6−ヘキサンジイソシアナート−co−1,6−ヘキサンジオール)、及び、ポリ(1,2,7,8−ジエポキシオクタン−co−1,4−ブタンジアミン)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、マクロマー前駆体が室温で流動可能な液体であるために、数平均分子量が約20,000ダルトン未満でなければならない。架橋剤には、ジオール、ジアミン、グリセロール、ペンタエリトリトール、トリメチロールプロパン、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、各種Jeffamine、グルコース、フルクトース、サッカライド、例えば、ジチオスレイトールなどのジチオール、並びに、2つ以上の反応基を有する他の分子、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、C〜C12の分枝状ジオール又は直鎖ジオール、C〜C12の分枝状ポリオール又は直鎖ポリオール、1,4−シクロヘキサンジオール及びシクロヘキサンジメタノールが含まれるが、これらに限定されない。マクロマー及び/又は架橋剤を選択することによって、様々な親水性/疎水性及び/又は様々な生物学的性質(例えば、非付着性)を有する被覆物を形成させることができる。
【0012】
架橋を架橋剤の性質に従って種々の条件のもとで行うことができる。一般的指針は、薬物が存在する場合、架橋化学が薬物との適合性を有し、かつ、薬物を分解しないことである。そのような架橋化学の一例が、架橋し、マイケル付加による縮合重合を受けるチオール末端マクロマーを使用することである。この架橋化学はインビボで行うことができ、細胞に対して非毒性であり得る。例えば、マクロマー前駆体を、α,β−不飽和エステル末端基を有するメタクリラートからATRP法(Coessens V.、Pintauer T.、Matyjaszewski K.、Prog.Polym.Sci.26(2001)、337〜377)によって形成することができ、そのようなマクロマー前駆体は、ジチオスレイトールの添加によってさらなる重合を受けることができる。
【0013】
いくつかの実施形態において、マクロマー前駆体はシアノアクリラートのモノマー及びポリマーであることが可能である。このようなポリマーは、デバイスにおける被覆物を形成するように、水の存在下でのアニオン架橋を受けることができる。このようなマクロマー前駆体には、2−シアノアクリル酸メチル、2−シアノアクリル酸エチル、2−シアノアクリル酸n−プロピル、2−シアノアクリル酸イソプロピル、2−シアノアクリル酸n−ブチル、2−シアノアクリル酸ペンチル、2−シアノアクリル酸ヘキシル、シアノアクリル酸ヘプチル、シアノアクリル酸オクチル、及び、これらのシアノアクリラートの液状オリゴマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0014】
いくつかの実施形態において、マクロマー前駆体はシリコーンプレポリマーであることが可能である。架橋を、触媒(例えば、白金コロイド、白金化合物、ルテニウム化合物、イリジウム化合物、ロジウム化合物、レニウム化合物及び/又はそれらの組合せ)によって触媒される付加化学反応(例えば、C=C結合へのSi−H基の付加)によって達成することができる(Lee,Chi−Long他、米国特許第4,162,243号明細書)。例えば、被覆組成物を、シリコーンと、場合により、薬物とを有するために作製することができる。白金触媒を被覆に先だって加えて、シリコーンプレポリマーの架橋を触媒して、シリコーンポリマーを形成することができ、これにより、(場合により、薬物を被覆物中に伴う)固体の被覆物を形成することができる。
【0015】
いくつかの他の実施形態において、被覆組成物は、薬物を伴って、又は、薬物を伴うことなく、ポリウレタンの溶媒非含有配合物と、架橋剤とを含むことができる。ヒドロキシル基又はアミノ基を有しない薬物がポリウレタン架橋化学との適合性を有する。2つ以上のヒドロキシル官能基、アミノ官能基及び/又はチオール官能基を有する架橋剤(又はリンカー)を使用して架橋を達成して、固体の被覆物を生成することができる。いくつかの実施形態において、被覆配合物は、薬物を伴って、又は、薬物を伴うことなく、ジオール鎖延長剤を有する脂肪族ポリウレタンを含むことができる。ポリウレタン分子間の1段階又は2段階の重合により架橋を達成して、固体の被覆物を形成することができる。いくつかの実施形態において、被覆配合物は、イソシアナート基を有するポリウレタンマクロマーと、ヒドロキシ基、アミノ基又はチオール基を有するリンカーとを含むことができる。架橋を、リンカーを介したポリウレタン分子間の1段階又は多段階の重合によって達成することができる。
【0016】
フリーラジカル硬化
いくつかの他の実施形態において、フリーラジカル化学を、モノマーを硬化させるために使用することができる。フリーラジカルを、例えば、紫外光(UV)放射線、又は、開始剤とともに加熱することによる熱開始、又はe−ビーム照射によって生じさせることができる。UV硬化プロセスのために、フリーラジカル開始剤は、この技術分野で知られているフリーラジカル開始剤であることが可能である。UVフリーラジカル開始剤の例には、ベンゾフェノン、イソプロピルチオキサノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(Nguyen KT、West JL、Biomaterials、23(2002)、4307〜4314)、2−ヒドロキシ−1−[4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン、並びに、Irgacure光開始剤及びDarocure光開始剤(これらはCiba Speciality Chemicals(Tarrytown、New York)から入手可能である)が含まれるが、これらに限定されない。熱的に活性化されるフリーラジカル開始剤には、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、アセチルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、過酢酸t−ブチル、クミルペルオキシド、t−ブチルペルオキシド及びt−ブチルヒドロペルオキシドが含まれるが、これらに限定されない(Geroge Odian、Principles of Polymerization、第2版、John Wiley&Sons、1981、New York)。種々のフリーラジカル開始剤が、被覆物に存在し得る薬物分子に対する異なるレベルの反応性を有する。例えば、ベンゾフェノンのような一部の開始剤は、アクリラートモノマーと一緒にされたとき、高濃度の攻撃的なフリーラジカルをもたらし、このフリーラジカルはエベロリムスのトリエン成分と反応することができ、その結果、この薬物を分解する。それほど攻撃的でない光開始剤、例えば、365nmの光により光分解するイソプロピルチオキサノン及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどが、不飽和な炭素−炭素結合を多くの場合には有する、フリーラジカルに対して反応性である薬物とともに使用するためにより適している。当業者は、被覆プロセスにおけるモノマーのUV硬化又は熱硬化のための適切な開始剤を容易に選択することができる。
【0017】
いくつかの実施形態において、被覆配合物は、例えば、ジオール及びジケテンアセタールなどのポリ(オルトエステル)(POE)マクロマーと、薬物とを含むことができる。別の実施形態において、被覆配合物は、例えば、メタクリラートなどの反応性が低いモノマー(例えば、メタクリル酸ブチル)と、例えば、イソプロピルチオキサノン及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどのフリーラジカル開始剤と、薬物とを含むことができる。そのような被覆配合物は、薬物送達被覆物を作製するために、UV下で容易に硬化させることができる。
【0018】
いくつかの実施形態において、被覆配合物は、薬物を混合することができ、また、被覆配合物がデバイス上で架橋される前に、薬物を医療デバイス(例えば、ステント)に被覆することができる液体である低分子量のポリ(エチレングリコール)(PEG)、例えば、数平均分子量(M)が約200ダルトン〜約300ダルトンの範囲にあるPEGを含むことができる。いくつかの実施形態において、そのようなPEGは、例えば、アクリラート又はメタクリラートなどの重合可能な官能基を、例えば、エステル連結を介して有することができる。そのようなPEGの架橋は、多官能性の作用剤(例えば、多官能性のアクリラート)を被覆配合物に加え、その後、被覆後にUV活性化することによって容易に達成することができる。そのようなPEG又は別の液状ポリマーに結合することができるいくつかの他の官能基には、例えば、メタクリラート、フマラート、シンナマート、アクロレイン及びマロナート並びにそれらの組合せなどの少なくとも1つの不飽和な炭素−炭素結合を有する基が含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
他の方法
いくつかの他の実施形態において、被覆物における乾燥動力学の影響を、マクロマーを不揮発性溶媒から被覆し、(強制的な)溶媒蒸発の前にこれらのマクロマーを架橋することによって除くことができる。このプロセスでは、薬物が不揮発性溶媒に可溶性でないならば、乾燥動力学及びプロセスが薬物分布又は薬物相をもたらさないという点で、上記で記載された溶媒非含有プロセスの効果を達成することができる。本明細書中で使用される用語「不揮発性溶媒」は、低い蒸気圧を周囲温度で有する溶媒を示す。そのような不揮発性溶媒の一例が水である。水が溶媒として使用される場合、被覆配合物は、例えば、PVP(ポリビニルピロリドン)、PEG、PVA(ポリ(ビニルアルコール)などの親水性のマクロマー、ヒアルロン酸、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)、あるいは、末端基が、例えば、開始剤とともにアクリラート及び/又はメタクリラートによって官能基化され得る他の親水性マクロマーなどを含むことができる。被覆配合物をデバイス(例えば、ステント)に被覆し、熱又はUVによって硬化させることができる。代わりとして、例えば、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチンなどの薄膜形成バイオポリマーを被覆し、その後、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、例えば、EDCなどのカルボジイミド、ビス−N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル誘導体、ビス−ビニルスルホン誘導体、ビス−N−マレイミド誘導体、ジイソシアナート、UV光、脱水熱加工(dehydrothermal processing)及びゲニピンによってデバイスの表面において架橋することができる。代わりとして、二官能性のUV感受性架橋剤を、UV反応性の官能基がマクロマーのデバイス上での架橋のために利用できるように、マクロマー又はバイオマクロマーを、そのような分子をデバイスに被覆する前に官能基化するためにコンジュゲートすることができる。例えば、UV反応性の架橋基と、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルとを含む架橋剤を、被覆前に、マクロマー表面に存在するアミン基にコンジュゲートすることができ、これにより、修飾されたマクロマーを、そのような修飾マクロマーをデバイスに被覆した後でUV放射線によって架橋することができる。同様に、エポキシド基を、マクロマー表面に存在するアミン基にコンジュゲートするために使用することができ、また、マレイミド基又はビニル−スルフィド基を、UV反応性の架橋剤をマクロマー表面に存在するチオール基にコンジュゲートするために使用することができる。
【0020】
生体適合性ポリマー及び生物有益物質
前に記載したモノマー、プレポリマー又はマクロマーに加えて、溶媒非含有被覆配合物は任意の生体適合性ポリマーを含むことができる。そのような生体適合性ポリマーは、生分解性又は非生分解性であり得るこの技術分野で知られている任意の生体適合性ポリマーであることが可能である。生分解性は、別途具体的に述べられない限り、生物吸収性又は生物侵食性を包含することが意図される。本発明に従って使用することができるポリマーの代表的な例には、ポリ(エステルアミド)、エチレンビニルアルコールコポリマー(これはEVOHの一般名又はEVALの商品名によって一般に知られている)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−L−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、ポリ(L−ラクチド−co−カプロラクトン)、ポリ(D,L−ラクチド−co−カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシバレラート)、ポリカプロラクトン、ポリ(ヒドロキシブチラート)、ポリ(ヒドロキシブチラート−co−バレラート)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカルボナート)、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、ポリシアノアクリラート、ポリ(トリメチレンカルボナート)、ポリ(イミノカルボナート)、ポリウレタン、ポリホスファゼン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイソブチレン及びエチレン−アルファオレフィンコポリマー、アクリルポリマー及びアクリルコポリマー、例えば、ポリ塩化ビニルなどのハロゲン化ビニルのポリマー及びコポリマー、例えば、ポリビニルメチルエーテルなどのポリビニルエーテル、ポリハロゲン化ビニリデン、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)などのSolef(商標)又はKynar(商標)の商品名でのフルオロポリマー又はフルオロコポリマー、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、例えば、ポリスチレンなどのポリビニル芳香族、例えば、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステル、例えば、エチレン−メタクリル酸メチルコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、イソブチレン−スチレンコポリマー、メタクリラート−スチレンコポリマー、ABS樹脂及びエチレン−酢酸ビニルコポリマーなどのビニルモノマー相互のコポリマー及びオレフィンとビニルモノマーのコポリマー、例えば、Nylon66及びポリカプロラクタムなどのポリアミド、アルキド樹脂、ポリカルボナート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリアクリルアミド(PAAm)、ポリ(グリセリルセバカート)、ポリ(プロピレンフマラート)、エポキシ樹脂、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン−トリアセタート、セルロースアセタート、セルロースブチラート、セルロースアセタートブチラート、セロファン、セルロースニトラート、セルロースプロピオナート、セルロースエーテル及びカルボキシメチルセルロースが含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
生物活性な薬剤を、被覆物に含める場合、及び/又は医療デバイスの表面又は医療デバイス上の被覆物であり得る基体に結合する場合、生体適合性ポリマーは生物活性な薬剤の制御された放出をもたらすことができる。ポリマーキャリアを使用する生物活性な薬剤の制御された放出及び送達がこの数十年間において広範囲に研究されている(例えば、Mathiowitz編、Encyclopedia of Controlled Drug Delivery、C.H.I.P.S.、1999 を参照のこと)。例えば、PLAに基づく薬物送達システムにより、多くの治療薬物の制御された放出が様々な程度の成功でもたらされている(例えば、米国特許第5,581,387号明細書(Labrie他)を参照のこと)。生物活性な薬剤の放出速度は、例えば、生物活性な薬剤の所望される放出プロフィルを提供することができる特定のタイプの生体適合性ポリマーを選択することによって制御することができる。生物活性な薬剤の放出プロフィルはさらに、生体適合性ポリマーの分子量及び/又は生物活性な薬剤に対する生体適合性ポリマーの比率によって制御することができる。生分解性ポリマーの場合、放出プロフィルはまた、生分解性ポリマーの分解速度によって制御することができる。当業者は、生物活性な薬剤の制御された放出を提供するために、生体適合性ポリマーを使用するキャリアシステムを容易に選択することができる。
【0022】
好ましい生体適合性ポリマーはポリエステルであり、例えば、ポリ(エステルアミド)、ポリ(D,L−ラクチド)(PDLL)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(グリコリド)、ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)、ポリ(3−ヒドロキシブチラート)(PHB)、ポリ(3−ヒドロキシブチラート−co−3−ヒドロキシバレラート)、ポリ((3−ヒドロキシバレラート)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノアート)、ポリ(4−ヒドロキシブチラート)、ポリ(4−ヒドロキシバレラート)、ポリ(4−ヒドロキシヘキサノアート)、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド−co−D,L−ラクチド)、ポリカプロラクトン(PCL)及びそれらの組合せのいずれかなどである。
【0023】
いくつかの実施形態において、溶媒非含有被覆配合物は生物有益物質を含むことができる。生物有益物質はポリマー物質又は非ポリマー物質であることが可能である。生物有益物質は、好ましくは、別個の層として存在するときには柔軟であり、又は、弾性性質を配合物又はコポリマーにおいてもたらし、また、生体適合性及び/又は生分解性であり、より好ましくは、非毒性、非抗原性及び非免疫原性である。生物有益物質は、非付着性、血液適合性、能動的血栓非形成性又は非炎症性であることによってデバイスの生体適合性を高める物質であり、これらはすべてが、医薬活性な薬剤の放出に依存しない。本明細書中で使用される用語の非付着性は、異物に対する身体の反応によって引き起こされるタンパク質沈着の形成を防止するか、又は、その形成を遅らせるか、又は、その形成量を低下させることとして定義され、用語「防汚性」と交換可能に使用することができる。
【0024】
代表的な生物有益物質には、ポリエーテル、例えば、ポリ(エチレングリコール)、コポリ(エーテル−エステル)(例えば、PEO/PLA)など;例えば、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)などのポリアルキレンオキシド、ポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンオキサラート、ポリホスファゼン、ホスホリルコリン、コリン、ポリ(アスピリン)、例えば、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、メタクリル酸ヒドロキシプロピル(HPMA)、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、PEGアクリラート(PEGA)、PEGメタクリラート、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)及びポリ(n−ビニルピロリドン)(PVP)などのヒドロキシルを有するモノマーのポリマー及びコポリマー、例えば、メタクリル酸(MA)、アクリル酸(AA)、アルコキシメタクリラート、アルコキシアクリラート及びメタクリル酸3−トリメチルシリルプロピル(TMSPMA)などのカルボン酸を有するモノマーを含有するポリマー、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン−co−PEG(SIS−PEG)、ポリスチレン−PEG、ポリイソブチレン−PEG、ポリカプロラクトン−PEG(PCL−PEG)、PLA−PEG、ポリ(メタクリル酸メチル)−PEG(PMMA−PEG)、ポリジメチルシロキサン−co−PEG(PDMS−PEG)、ポリ(フッ化ビニリデン)−PEG(PVDF−PEG)、PLURONIC(商標)界面活性剤(ポリプロピレンオキシド−co−ポリエチレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ヒドロキシ官能基ポリ(ビニルピロリドン)、例えば、フィブリン、フィブリノゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸のフラグメント及び誘導体、ヘパリン、ヘパリンのフラグメント及び誘導体、グリコサミノグリカン(GAG)、GAG誘導体、多糖、エラスチン、キトサン、アルギナート、シリコーンなどの生体分子、並びにそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
いくつかの実施形態において、生体適合性ポリマー又は生物有益物質は、上記物質のいずれか1つを除外することができる。
【0026】
いくつかの実施形態において、生物有益物質は、柔軟なポリ(エチレングリコールテレフタラート)/ポリ(ブチレンテレフタラート)(PEGT/PBT)セグメントを含むブロックコポリマー(PolyActive(商標))である。このようなセグメントは、生体適合性、非毒性、非抗原性及び非免疫原性である。以前の研究では、PolyActive(商標)の上塗りはステントにおける血栓症及び塞栓症の形成を低下させることが示されている。PolyActive(商標)は一般には、xPEGTyPBTzの形で表され、式中、xはPEGの分子量であり、yはPEGTの百分率であり、zはPBTの百分率である。具体的なPolyActive(商標)ポリマーは、PEGが約1%〜約95%、例えば、約10%〜約90%、約20%〜約80%、約30%〜約70%、約40%〜約60%の範囲にある様々な比率のPEGを有することができる。PolyActive(商標)を形成するためのPEGは、約300ダルトンから約100,000ダルトンに及ぶ分子量を有することができ、例えば、約300ダルトン、約500ダルトン、約1,000ダルトン、約5,000ダルトン、約10,000ダルトン、約20,000ダルトン又は約50,000ダルトンの分子量を有することができる。
【0027】
いくつかの実施形態において、生物有益物質は、PEG又はポリアルキレンオキシドなどのポリエーテルであることが可能である。
【0028】
生物活性な薬剤
生物活性な薬剤は、任意の診断剤、防止剤及び治療剤であることが可能である。そのような薬剤の例には、合成された無機化合物及び有機化合物、タンパク質及びペプチド、多糖及び他の糖、脂質、並びに、治療活性、予防活性又は診断活性を有するDNA核酸配列及びRNA核酸配列が含まれる。核酸配列には、遺伝子、相補的なDNAに結合して、転写を阻害するアンチセンス分子、及び、リボザイムが含まれる。薬物の他の例には、抗体、受容体リガンド、並びに、酵素、接着ペプチド、オリゴ糖、血液凝固因子、阻害剤又は例えば、ストレプトキナーゼ及び組織プラスミノーゲン活性化因子などの凝血塊溶解剤、免疫化のための抗原、ホルモン及び増殖因子、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド及びリボザイム及び遺伝子治療において使用されるレトロウイルスベクターなどのオリゴヌクレオチドが含まれる。そのような薬剤にはまた、平滑筋細胞の制御された増殖、及び、表現型において機能的であり(傷害を受けていない健康な脈管内膜に類似し)、かつ、形態学において正常である(傷害を受けていない健康な脈管内膜に類似する)内皮細胞による完全な内腔被覆を伴う細胞外マトリックスの制御された沈着によって特徴づけられる良性の新生内膜応答をもたらすプロヒーリング(prohealing)薬物が含まれ得る。そのような薬物はまた、抗新生物物質、細胞増殖抑制物質、抗炎症性物質、抗血小板物質、抗凝固物質、抗フィブリン物質、抗トロンビン物質、有糸分裂抑制物質、抗生物質、抗アレルギー物質及び抗酸化性物質の部類に含まれ得る。そのような抗新生物剤及び/又は有糸分裂抑制剤の例には、パクリタキセル(例えば、Bristol−Meyers Squibb Co.(Stamford、Conn.)によるTAXOL(登録商標))、ドセタキセル(例えば、Aventis S.A.(Frankfurt、ドイツ)から得られるTaxotere(登録商標))、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、ドキソルビシン塩酸塩(例えば、Pharmacia&Upjohn(Peapack、N.J.)から得られるAdriamycin(登録商標))、及び、マイトマイシン(例えば、Bristol−Meyers Squibb Co.(Stamford、Conn.)から得られるMutamycin(登録商標))が含まれる。そのような抗血小板剤、抗凝固剤、抗フィブリン剤及び抗トロンビン剤の例には、ヘパリノイド、ヒルジン、組換えヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン及びプロスタサイクリン類似体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成アンチトロンビン)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体アンタゴニスト、抗体、並びに、例えば、Angiomax a(Biogen,Inc.、Cambridge、Mass.)のようなトロンビン阻害剤が含まれる。細胞増殖抑制剤の例には、アンギオペプチン、例えば、カプトプリルのようなアンギオテンシン変換酵素阻害剤(例えば、Bristol−Meyers Squibb Co.(Stamford、Conn.)から得られるCapoten(登録商標)及びCapozide(登録商標))、シラザプリル又はリシノプリル(例えば、Merck&Co.,Inc.(Whitehouse Station、NJ)から得られるPrinivil(登録商標)及びPrinzide(登録商標))など)、アクチノマイシンD又はその誘導体及び類似体(これらはSigma−Aldrich、1001 West Saint Paul Avenue、Milwaukee、WI 53233)によって製造される:又は、Merckから入手可能なCOSMEGEN)が含まれる。アクチノマイシンDの異名には、ダクチノマイシン、アクチノマイシンIV、アクチノマイシンI、アクチノマイシンX及びアクチノマイシンCが含まれる。他の薬物には、カルシウムチャネル遮断剤(例えば、ニフェジピンなど)、コルヒチン、線維芽細胞増殖因子(FGF)アンタゴニスト、魚油(ω−3−脂肪酸)、ヒスタミンアンタゴニスト、ロバスタチン(HMG−CoAレダクターゼの阻害剤、コレステロール低下薬、Merck&Co.,Inc.、Whitehouse Station、NJ から得られる商品名Mevacor(登録商標)、モノクローナル抗体(例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体に対して特異的なモノクローナル抗体など)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断剤、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGFアンタゴニスト)、及び、一酸化窒素が含まれる。抗アレルギー剤の例には、ペルミロラストカリウムが含まれる。
【0029】
適切であり得る他の治療物質又は治療剤には、α−インターフェロン、遺伝子操作された上皮細胞、生物活性なRGD、例えば、CD34抗体、アブシキシマブ(REOPRO)、及び、始原細胞捕獲抗体などの抗体、正常及び生理学的に良性な組成物及び合成生成物による筋肉細胞の制御された増殖を促進するプロヒーリング薬物、酵素、抗ウイルス剤、抗ガン薬物、抗凝固剤、フリーラジカルスカベンジャー、ステロイド系抗炎症剤、グルココルチコイド、非ステロイド系抗炎症剤、抗生物質、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、デキサメタゾン、クロベタゾール、アスピリン、エストラジオール、タクロリムス、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾール−ラパマイシン、40−epi−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン(ABT−578)、ピメクロリムス、イマチニブメシラート、ミドスタウリン、始原細胞捕獲抗体、それらのプロドラッグ、それらのコドラッグ、並びにそれらの組合せが含まれる。前記物質は例として列挙され、限定であることが意図されない。現在利用可能である他の活性な薬剤、又は、将来開発され得る他の活性な薬剤が同等に適用可能である。
【0030】
医療デバイスの例
本明細書中で使用されるように、医療デバイスは、ヒト患者又は獣医学患者に埋め込むことができる任意の好適な医療用基体であり得る。そのような医療デバイスの例には、自己拡張型ステント、バルーン拡張型ステント、ステント−グラフト、グラフト(例えば、大動脈グラフト)、人工心臓弁、脳脊髄液シャント、ペースメーカー電極及び心臓内リード線(例えば、FINELINE及びENDOTAK、これらはGuidant Corporation、Santa Clara、CA から入手可能である)が含まれる。基礎をなす構造物は、事実上任意の設計のものであることが可能である。デバイスは金属材料又は合金から作製することができ、そのような金属材料又は合金は、例えば、コバルトクロム合金(ELGILOY)、ステンレススチール(316L)、例えば、BIODUR108などの高窒素ステンレススチール、コバルトクロム合金L605、「MP35N」、「MP20N」、ELASTINITE(Nitinol)、タンタル、ニッケル−チタン合金、白金−イリジウム合金、金、マグネシウム又はそれらの組合せなどであり、しかし、これらに限定されない。「MP35N」及び「MP20N」は、Standard Press Steel Co.、Jenkintown、PAから入手可能な、コバルト、ニッケル、クロム及びモリブデンの合金についての商品名である。「MP35N」は、35%のコバルト、35%のニッケル、20%のクロム及び10%のモリブデンからなる。「MP20N」は、50%のコバルト、20%のニッケル、20%のクロム及び10%のモリブデンからなる。生体吸収性ポリマー又は生体安定ポリマーから作製されたデバイスもまた、本発明の実施形態とともに使用することができる。例えば、デバイスは、ポリマー物質(及び/又は侵食性(erodable)金属)から作製される生体吸収性のステントであることが可能である。生体吸収性のステントは、例えば、ポリマー薄膜層を伴う薬物被覆物を含むことができ、あるいは、薬物をステントの本体に配合又は埋め込むことができる。
【0031】
使用方法
上記で記載された特徴のいずれかを有する医療デバイス(例えば、ステント)は、例として、胆管、食道、気管/気管支及び他の生物学的通路における腫瘍によって引き起こされる閉塞の処置を含めて、様々な医学的手技のために有用である。上記で記載された被覆物を有するステントは、平滑筋細胞の異常又は不適切な遊走及び増殖によって引き起こされる血管の閉塞領域、血栓症、再狭窄及び不安定プラークを処置するために特に有用である。ステントを、動脈及び静脈の両方で、様々な血管に設置することができる。部位の代表的な例には、腸骨動脈、腎動脈及び冠状動脈が含まれる。
【0032】
ステントを埋め込むために、最初に血管造影図を撮り、ステント治療のための適切な配置を決定する。典型的には、動脈又は静脈の中に挿入されたカテーテルを介して、放射線不透過性造影剤を注入しながらX線写真を撮ることによって、血管造影図を達成する。その後、ガイドワイヤを進めて、病巣部又は提案された処置部位を通過させる。ガイドワイヤに沿って、その縮んだ形態でのステントが通路内に挿入されることを可能にする送達カテーテルが通される。経皮的に、又は、手術のいずれかにより、送達カテーテルを大腿動脈、上腕動脈、大腿静脈又は上腕静脈の中に挿入し、X線透視での誘導のもとでカテーテルを操作して血管系の中を通過させることにより、適切な血管の中に進める。薬物送達被覆物を有するステント、又は、薬物送達被覆物を伴わないステントは、その後、所望される処置領域において膨張させることができる。挿入後の血管造影図もまた、適切な配置を確認するために利用することができる。
【0033】
本発明の特定の実施形態が示され、また、記載されているが、様々な変化及び改変が、本発明から逸脱することなく、そのより広い態様においてなされ得ることが、当業者には自明である。したがって、添付された特許請求の範囲は、本発明の真の精神及び範囲に含まれるすべてのそのような変化及び改変をその範囲内に包含するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療デバイス上に被覆物を形成する方法であって、
(a)溶媒非含有液体被覆配合物を提供するステップと、
(b)配合物を医療デバイスの少なくとも一部の領域に被覆して、液体被覆物の層を形成するステップと、
(c)液体被覆物の層を硬化させて、固体の被覆物を生成するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記液体被覆配合物が薬物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体被覆配合物がプレポリマー及び薬物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記液体被覆配合物がプレポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒非含有液体被覆配合物が、フリーラジカル重合可能なモノマー又はポリマーと、フリーラジカル開始剤とを含み、
前記硬化させるステップが、紫外光放射線、熱開始又はeビーム硬化によって硬化させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒非含有液体被覆配合物が、二酸のポリマー又はプレポリマーと、ヒドロキシル、アミノ基、カルボキシル、チオール、イソシアナート、イソチオシアナート、酸クロリド、エポキシド及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも2つの官能基を含む架橋剤とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒非含有液体被覆配合物が、α,β−不飽和のエステル基又はアミド基を有するモノマーから形成されるプレポリマーと、ヒドロキシル、アミノ基、チオール及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも2つの官能基を有する作用剤とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記モノマーが、メタクリラート、アクリラート又はそれらの組合せであり、
前記作用剤がジチオスレイトールである、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒非含有被覆配合物が、
ジオール、ジケテンアセタール及びそれらの組合せからなる群から選択されるポリ(オルトエステル)液状マクロマーと、
場合により、薬物と
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒非含有被覆配合物が、光開始剤と、メタクリラートモノマーと、場合により、薬物とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒非含有被覆配合物が、イソシアナート基を有するポリウレタンマクロマーと、ヒドロキシ基、アミノ基又はチオール基を有するリンカーと、場合により、薬物とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記溶媒非含有液体被覆配合物が、ヒドロキシ基、アミノ基又はチオール基を有するポリウレタンマクロマーと、ジイソシアナート基又はジイソチオシアナート基を有するリンカーと、場合により、薬物とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒非含有被覆配合物が、ジエポキシドマクロマーと、ヒドロキシ基、アミノ基又はチオール基を有するリンカーと、場合により、薬物とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記溶媒非含有被覆配合物が低分子量ポリ(エチレングリコール)(PEG)を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項15】
前記PEGが約200ダルトン〜約300ダルトンの数平均分子量を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記PEGがアクリラート官能基又はメタクリラート官能基を含み、前記溶媒非含有被覆配合物がさらに、少なくとも2つのアクリラート官能基又はメタクリラート官能基を有する架橋剤を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記溶媒非含有被覆配合物が、炭素−炭素の不飽和結合を有するUV硬化基を有するポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記UV硬化基が、アクリラート、メタクリラート、フマラート、シンナマート、アクロレイン、マロナート及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記溶媒非含有被覆配合物が、水と、2−シアノアクリル酸アルキルを含むマクロマーとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記溶媒非含有被覆配合物がシリコーンプレポリマー及び触媒を含み、触媒が、固体の被覆物を被覆後に形成することを可能にするようにシリコーンプレポリマーの重合を触媒する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記触媒が白金触媒である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
医療デバイスが薬物を含み、使用された薬物がヒドロキシル基又はアミノ基を含む場合、前記溶媒非含有被覆配合物は医療デバイスにおける下塗り又は上塗りである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記溶媒非含有被覆配合物が、脂肪族ポリウレタンと、場合により、薬物とを含み、前記ポリウレタンがジオール鎖延長剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記液体被覆配合物が、薬物を含む層の上に被覆される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
乾燥動力学の影響を実質的に有しない被覆物を形成する方法であって、
(a)少なくとも1つの官能基を有するマクロマーと、不揮発性溶媒と、薬物とを含む被覆配合物を提供するステップと、
(b)配合物を医療デバイスに被覆して、液体被覆物の層を形成するステップと、
(c)溶媒を蒸発させる前に、液体被覆物の層を硬化させるステップと、
(d)不揮発性溶媒を蒸発させて、固体の被覆物を形成するとステップと
を含み、
前記薬物は不揮発性溶媒に可溶性ではない、方法。
【請求項26】
前記不揮発性溶媒が水であり、前記マクロマーが親水性ポリマーである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記マクロマーが、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、PEG、PVA、ヒアルロン酸、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)及びそれらの組合せからなる群から選択されるポリマーである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
乾燥動力学の影響を実質的に有しない被覆物を形成する方法であって、
(a)薄膜形成バイオポリマーと、不揮発性溶媒と、場合により、薬物とを含む被覆配合物を提供するステップと、
(b)配合物を医療デバイスに被覆して、液体被覆物の層を形成するステップと、
(c)溶媒を蒸発させる前に、液体被覆物の層を硬化させるステップと、
(d)不揮発性溶媒を蒸発させて、固体の被覆物を形成するステップと
を含み、
前記薬物は不揮発性溶媒に可溶性ではない、方法。
【請求項29】
前記不揮発性溶媒が水であり、前記バイオポリマーが、ヒアルロン酸、アルブミン、ゼラチン、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、キトサン、ヘパリン及びそれらの組合せである、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記医療デバイスがステントである、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記医療デバイスがステントである、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記医療デバイスがステントである、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
基体と、基体表面の被覆物とを含む医療デバイスであって、被覆物が乾燥動力学の影響を実質的に有さず、ポリマー物質と、場合により、生物活性な薬剤とを含む医療デバイス。
【請求項34】
前記被覆物が請求項1に記載の方法によって形成される、請求項33に記載の医療デバイス。
【請求項35】
前記被覆物が請求項25に記載の方法によって形成される、請求項33に記載の医療デバイス。
【請求項36】
前記被覆物が請求項28に記載の方法によって形成される、請求項33に記載の医療デバイス。
【請求項37】
前記生物活性な薬剤が、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン及び40−O−テトラゾール−ラパマイシン、40−epi−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン(ABT−578)、クロベタゾール、ピメクロリムス、イマチニブメシラート、ミドスタウリン、それらのプロドラッグ、それらのコドラッグ、並びにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項33に記載の医療デバイス。
【請求項38】
請求項37に記載の埋め込み可能なデバイスを患者に埋め込むことを含む、患者における障害を処置、予防又は改善する方法であって、
障害が、アテローム性動脈硬化、血栓症、再狭窄、出血、血管の解離又は穿孔、血管の動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、卵円孔開存症、跛行、血管及び人工移植片についての吻合部増殖、胆管閉塞症、尿管閉塞症又は腫瘍閉塞症から選択される方法。

【公表番号】特表2009−518120(P2009−518120A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544372(P2008−544372)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/045710
【国際公開番号】WO2007/067398
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(507135788)アボット カーディオヴァスキュラー システムズ インコーポレイテッド (92)
【Fターム(参考)】