説明

補強部材、ピラー及び自動車車体

【課題】側面衝突事故の際におけるBピラーの倒れ込みを、簡便な構造により抑制して、自動車車体の安全性をさらに高める。
【解決手段】少なくとも、自動車車体40を構成するBピラー42a、42bの内部であってこのBピラー42a、42bの長手方向の全域に配置され、長手方向に単一の部材により構成され、三次元に屈曲する形状を有するとともに、引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部を備える自動車車体40の補強部材41a、41bである。側面衝突事故の際におけるBピラー42a、42bの倒れ込みを効果的に抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強部材、ピラー及び自動車車体に関し、詳しくは、側面衝突事故の際にピラーやルーフレールサイドが変形して、キャビン側に侵入するように変位すること(本明細書ではこのような変位を「倒れ込み」という)を簡便な構造により抑制することができ、これにより、自動車車体の安全性をさらに高めることができる補強部材、ピラー及び自動車車体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年生産される自動車の殆どは、軽量化及び生産性の観点から、フレームとボディーとを一体構造としたモノコックボディー(ユニット・コンストラクションボディー)により構成される。モノコックボディーは、モノコックボディーにおける下面、つまり床部分であってボディー構造上の基礎となる最重要部分であるアンダーボディー(プラットフォームともいう。)に、サイドシル、Aピラー、Bピラー、ルーフレールサイドさらにはCピラー等により構成される左右一対のボディーサイドを組み合わせて一体化したボディーシェル全体により荷重を支えるものであり、衝突事故の際においても、ボディーシェルの各部が縮んだり崩れたりする際にボディーシェルの全体で衝撃荷重を支えることにより衝撃エネルギーを吸収する。
【0003】
このように、ボディーサイドは、アンダーボディーとともに、自動車車体の曲げ剛性や捩じり剛性等に大きく影響するのみならず、側面衝突事故の際にはキャビンの損傷をできるだけ抑制して搭乗者の安全性を高める機能を担う。例えば、側面衝突事故の際には、一般的に、衝撃荷重はBピラーに負荷され、次に、Bピラーを支持するサイドシル及びルーフレールサイドに伝播されるので、側面衝突により、Bピラーのキャビン側への倒れ込みが発生する。この倒れ込みの程度によって、変形したBピラーやルーフレールサイドに搭乗者の身体、とりわけ頭部が衝突すると重大な事故につながる可能性がある。このように、全面衝突事故に比べて側面衝突事故は、自動車の造形上の理由により乗員保護のための充分な空間を確保することが困難であるので、このボディーサイドの衝突特性を改善することは極めて重要である。
【0004】
特許文献1には、自動車車体のルーフレールサイド〜Bピラー〜サイドシル間にかけて、それぞれの内部に、ハイドロフォーム加工により一体に成形した閉断面構造のレインフォースを配置することによって、補強部品の部品点数の増加を抑制して軽量化を図りながら、車体の強度を確実に高める発明が開示されている。
【特許文献1】特開2000−219153
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1により開示された発明によれば、確かに、ボディーサイドの強度を高めることは可能になる。しかし、近年の衝突安全性の向上に対するニーズのさらなる高まりを勘案すると、この発明によって充分なレベルの車体の強度を得られるとはいい難く、よりいっそうの改善が必要である。
【0006】
本発明は、従来の技術が有するこのような課題に鑑みてなされたものであり、側面衝突事故の際におけるBピラー等のピラーの倒れ込みを、簡便な構造により抑制することができ、これにより、自動車車体の安全性をさらに高めることができる自動車車体の補強部材と、この補強部材を備える自動車車体とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、
(ア)特定の構造を有する曲げ加工装置を用いれば、例えば1100MPa以上、望ましくは1500MPa以上という高強度の高周波焼入れ部を有するとともに軸方向の全域で一体に構成される長尺の筒体を本体とする補強部材を、工業的規模で現に量産できるようになること。
(イ)この曲げ加工装置を用いれば、この補強部材に、軸方向へ向けた高周波焼入れ部を設けることが可能になること、さらには
(ウ)このようにして得られる補強部材は、軽量、高強度、部品点数低減、及び製造コスト低減を図りながら、側面衝突事故の際にピラーの倒れ込みを簡便な構造により抑制することができ、自動車車体の安全性をさらに高めることができること
を知見して、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、自動車車体を構成するBピラーの内部であってこのBピラーの長手方向の望ましくは全域に配置され、望ましくは長手方向に単一の部材により構成され、三次元に屈曲する形状を有するとともに、引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部を備えることを特徴とする自動車車体の補強部材である。
【0009】
この本発明に係る自動車車体の補強部材は、さらに、(i)ピラーの上端部でこのピラーに接合されるルーフレールサイドを貫通してルーフパネルの内面に沿って車体幅方向へ延びて配置されること、及び/又は(ii)ピラーの下端部でこのピラーに接合されるサイドシルを貫通してフロアパネルの内面に沿って車体幅方向へ延びて配置されることが、望ましい。
【0010】
また、本発明は、自動車車体を構成する一方のサイドシルとの接合部である一方のピラーの下端部から、一方のルーフレールサイドとの接合部であるこのピラーの上端部を経て、ルーフパネルの内面に沿って車体幅方向へ向かい、他方のルーフレールサイドとの接合部である他方のピラーの上端部を経て他方のサイドシルとの接合部であるこのピラーの下端部までに相当する範囲に、少なくとも一方のピラー及び他方のピラーの内部を貫通して、配置され、望ましくは長手方向に単一の部材により構成され、三次元に屈曲する形状を有するとともに、少なくとも一方のピラー及び他方のピラーに相当する部分に引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部を備えることを特徴とする自動車車体の補強部材である。
【0011】
また、本発明は、自動車車体を構成する一方のルーフレールサイドとの接合部である一方のピラーの上端部から、一方のサイドシルとの接合部であるこのピラーの下端部を経て、フロアパネルの内面に沿って車体幅方向へ向かい、他方のサイドシルとの接合部である他方のピラーの下端部を経て他方のルーフレールサイドとの接合部であるこのピラーの上端部までに相当する範囲に、少なくとも一方のピラー及び他方のピラーの内部を貫通して、配置され、望ましくは長手方向に単一の部材により構成され、三次元に屈曲する形状を有するとともに、少なくとも一方のピラー及び他方のピラーに相当する部分に引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部を備えることを特徴とする自動車車体の補強部材である。
【0012】
また、本発明は、自動車車体を構成する一方のルーフレールサイドとの接合部である一方のピラーの上端部から、一方のサイドシルとの接合部であるこのピラーの下端部を経て、フロアパネルの内面に沿って車体幅方向へ向かい、他方のサイドシルとの接合部である他方のピラーの下端部、及び他方のルーフレールサイドとの接合部であるこのピラーの上端部を経てルーフパネルの内面に沿って車体幅方向へ向かい、一方のピラーの上端部までに相当する範囲から、一方のピラーと一方のサイドシルとの接合部、又は他方のBピラーと他方のサイドシルとの接合部を含むとともに軸方向の長さが車体幅の0.1倍以上0.6倍以下の範囲を除いた範囲に、少なくとも一方のピラー及び他方のピラーの内部を貫通して、配置され、望ましくは長手方向に単一の部材により構成され、三次元に屈曲する形状を有するとともに、少なくとも一方のピラー及び他方のピラーに相当する部分に引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部を備えることを特徴とする自動車車体の補強部材である。
【0013】
また、本発明は、自動車車体を構成する一方のルーフレールサイドとの接合部である一方のピラーの上端部から、一方のサイドシルとの接合部であるこのピラーの下端部を経て、フロアパネルの内面に沿って車体幅方向へ向かい、他方のサイドシルとの接合部である他方のピラーの下端部、及び他方のルーフレールサイドとの接合部であるこのピラーの上端部を経てルーフパネルの内面に沿って車体幅方向へ向かい、一方のピラーの上端部までに相当する範囲から、一方のピラーと一方のルーフレールサイドとの接合部、又は他方のピラーと他方のルーフレールサイドとの接合部を含むとともに軸方向の長さが車体幅の0.1倍以上0.6倍以下の範囲を除いた範囲に、少なくとも一方のピラー及び他方のピラーの内部を貫通して、配置され、望ましくは長手方向に単一の部材により構成され、三次元に屈曲する形状を有するとともに、少なくとも一方のピラー及び他方のピラーに相当する部分に引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部を備えることを特徴とする自動車車体の補強部材である。
【0014】
また、本発明は、自動車車体を構成する一方のルーフレールサイドとの接合部である一方のピラーの上端部から、一方のサイドシルとの接合部であるこのピラーの下端部を経て、フロアパネルの内面に沿って車体幅方向へ向かい、他方のサイドシルとの接合部である他方のピラーの下端部、及び他方のルーフレールサイドとの接合部であるこのピラーの上端部を経てルーフパネルの内面に沿って車体幅方向へ向かい、一方のピラーの上端部までに相当する範囲から、一方のピラー又は他方のピラーにおける、自動車車体のウエストラインの高さに相当する部分を含むとともに軸方向の長さが車体幅の0.1倍以上0.6倍以下の範囲を除いた範囲に、少なくとも一方のピラー及び他方のピラーの内部を貫通して、配置され、望ましくは長手方向に単一の部材により構成され、三次元に屈曲する形状を有するとともに、引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部を備えることを特徴とする自動車車体の補強部材である。
【0015】
また、本発明は、自動車車体を構成する一方のルーフレールサイドとの接合部である一方のピラーの上端部から、一方のサイドシルとの接合部であるこのピラーの下端部を経て、フロアパネルの内面に沿って車体幅方向へ向かい、他方のサイドシルとの接合部である他方のピラーの下端部、及び他方のルーフレールサイドとの接合部であるこのピラーの上端部を経てルーフパネルの内面に沿って車体幅方向へ向かい、一方のピラーの上端部までに相当する範囲から、フロアパネルに形成されるトンネル部を構成する一方の縦面を含むとともに軸方向の長さが車体幅の0.1倍以上0.6倍以下の範囲を除いた範囲に、少なくとも一方のピラー及び他方のピラーの内部を貫通して配置され、望ましくは長手方向に単一の部材により構成され、三次元に屈曲する形状を有するとともに、少なくとも一方のピラー及び他方のピラーに相当する部分に引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部を備えることを特徴とする自動車車体の補強部材である。
【0016】
これらの本発明に係る自動車車体の補強部材では、一方のピラーの上端部からルーフパネルの内面に沿って他方のピラーの上端部までに相当する部分の一部又は全部、及び/又は、一方のピラーの下端部からフロアパネルの内面に沿って他方のピラーの下端部までに相当する部分の一部又は全部が、高周波焼入れが行われない引張強度が600MPa未満の非熱処理部であって、かつ潰し加工を行われた潰し部であることが、室内空間の占有量を低減するために望ましい。
【0017】
これらの本発明に係る自動車車体の補強部材では、少なくとも、ピラーの下端部から上方へ向けて150mmの位置に相当する位置から、自動車車体のウエストラインの高さに相当する位置までは、引張強度が600MPa以上1100MPa以下の熱処理部、又は、高周波焼入れが行われない引張強度が600MPa未満の非熱処理部であることが望ましい。これにより、衝突時の補強部材の変形モードを、特に搭乗者の頭部高さ付近の車体幅方向への変位量が小さくなるように、制御することができ、衝突時の安全性をさらに高めることができる。
【0018】
これらの本発明に係る自動車車体の補強部材は、外部へ向けたフランジを有さない閉断面を有する中空体からなることが望ましい。これにより、補強部材の軽量化及び小型化を促進することができる。なお、本発明に係る自動車車体の補強部材は、閉断面を有するものであればよく、特定の断面には限定されない。例えば、円形や多角形等の横断面を有する筒体や、テーパー管等を用いることができる。
【0019】
これらの本発明に係る自動車車体の補強部材は、鋼製であるとともに、高周波焼入れ部が、マルテンサイト単相組織、又はマルテンサイト及びフェライトの2相組織からなること、さらには、熱処理部が、フェライト及びパーライトの2相組織からなることが、例示される。
【0020】
さらに、これらの自動車車体の補強部材は、合金化溶融亜鉛めっき被膜等の亜鉛系めっき被膜を備える鋼材を母材として製造されることが望ましい。これにより、本発明に係る自動車車体の補強部材は、要求される耐食性を確保することができる。
【0021】
また、本発明は、これらの本発明に係る補強部材を備えることを特徴とするピラーである。
さらに、本発明は、これらの本発明に係る補強部材を備えることを特徴とする自動車車体である。
【0022】
本発明における「ピラー」は、特に、Bピラー又はセンターピラーを含むが、これらに限定されるものではなく、側面衝突事故の際に発生する倒れ込みにより搭乗者に障害を与える可能性があるピラーであれば、同様に適用される。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る補強部材、ピラー及び自動車車体によれば、側面衝突事故の際におけるピラーの倒れ込みを、重量の増加をできるだけ防ぎながら、簡便な構造により抑制することができ、これにより、自動車車体の安全性をさらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[実施の形態1]
以下、本発明に係る自動車車体の補強部材を実施するための最良の形態を、その製造方法及び製造装置、ならびにその製造設備列とともに、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
はじめに、本実施の形態の(I)全体構成及び支持手段、(II)加工部の構成及び加熱、冷却装置、(III)可動ローラダイス、(IV)予熱手段とその作用、(V)出側サポートガイド、(VI)関節型ロボットの構成配置、並びに(VII)曲げ加工設備列を、添付図面を参照しながら以下に順次説明する。
(I)全体構成及び支持手段
図1は、本実施の形態に係る、曲げ加工を実施するための曲げ加工製品である補強部材の製造装置0の全体構成を簡略化して示す説明図である。
【0026】
本実施の形態の曲げ加工は、支持手段2、2によりその軸方向へ移動自在に支持された被加工材である金属材1を、上流側から逐次又は連続的に送り出し装置3により押し出しながら、支持手段2、2の下流側で曲げ加工を行う曲げ加工により、行われる。
【0027】
図1に示す金属材1は、横断面が丸形の鋼管である。しかし、本発明は鋼管に限定されるものではなく、各種の横断面を有する長尺の被加工材であれば、同様に適用できる。金属材1は、図1に示す鋼管以外に、矩形、台形又は複雑な横断面を有する閉断面部材、例えばチャンネルのようなロールフォーミング等により製造される開断面部材、例えばチャンネルのような押し出し加工により製造される異形断面部材、さらには、軸方向に断面が変化するテーパ管にも適用可能である。
【0028】
図2は、本実施の形態において金属材1として適用可能な被加工材1−1〜1−3の横断面を示す説明図であり、図2(a)はロールフォーミング等により製造される開断面を有するチャンネル1−1を示し、図2(b)は押し出し加工により製造される異形断面を有するチャンネル1−2、1−3を示す。本実施の形態の製造装置0では、適用される金属材1の横断面に応じて、後述する可動ローラダイス4や支持手段2における金属材1との接触部の形状を適宜設定すればよい。
【0029】
図1に示す製造装置0は、2組の支持手段2、2と、送り出し装置3と、可動ローラダイス4と、高周波加熱コイル5と、水冷装置6と、出側サポートガイド30とを備える。
2組の支持手段2、2は、金属材1をその軸方向へ移動自在に所定の位置で支持するため、金属材1の移動方向に離間して配置される。送り出し装置3は、2組の支持手段2、2の上流側に配置されて、金属材1を断続的又は連続的に送り移動させる。可動ローダイス4は、2組の支持手段2、2の下流側に配置されて、金属材1をその軸方向へ移動自在に支持するとともにその設置位置が三次元で変更自在である。高周波加熱コイル5は、可動ローラダイス4の入側であって金属材1の外周に配置され、金属材1の長手方向の一部を部分的に急速に加熱する。水冷装置6は、高周波加熱コイル5により部分的に急速に加熱されるとともに可動ローラダイス4の三次元の移動により曲げモーメントが付与される金属材1の被加熱部を急冷するための冷却手段である。さらに、出側サポートガイド30は、可動ローラダイス4の出側に配置されて、可動ローラダイス4を抜けた部分の金属材1を支持することによって、曲げ加工の後における金属材1の成形誤差を抑制する。
【0030】
図1に示す本実施の形態では、金属管1として横断面が丸形の鋼管を用いるので、支持手段2としてそれぞれの回転軸が平行になるように互いに離間して対向配置される孔型ロール対を用いるが、支持手段2は孔型ロール対に限定されるものではなく、金属材1の横断面に応じた適当な支持部材を用いればよい。また、孔型ロール対により支持手段2を構成する場合であっても、支持手段2は、図1に示す2組の支持ロール対2、2により構成されることには限定されず、1組又は3組以上の支持ロール対2により構成されてもよい。
【0031】
図3は、本実施の形態における支持手段2として用いることができる支持ガイドの構成の一例を示す説明図であり、図3(a)は支持ガイド2と支持ガイド2を駆動する回転機構9との配置を示す断面図であり、図3(b)は支持ガイド2の外観を示す斜視図である。
【0032】
この例は、金属材1が、横断面が四角形の四角管である場合であり、支持ガイド2は四角管1を回転可能に保持する。支持ガイド2は、高周波加熱コイル5に近接して設置されることから加熱防止のために、非磁性材により構成されるとともに、図3(b)に示すように2又は3以上の構成部材に分割されて構成され、分割された箇所にはテフロン(登録商標)等の絶縁物(図示しない)を装着することが望ましい。
【0033】
支持ガイド2に直結して、駆動用モータ10及び回転ギア10aから構成される回転機構9が設けられ、これにより、後述するように、支持ガイド2は送り出し装置3の回転に同調して金属材1の軸周りに回転することができる。これにより、高精度の捩じり変形を金属材1に与えることができる。
【0034】
なお、製造装置0は、金属材1の支持手段2として図1に示す支持ロール、又は図3に示す支持ガイドのいずれをも用いることができるが、以降では、金属材1として図1に示す鋼管を用いるとともに支持ロール2を用いた場合を主に説明する。本発明は、金属材1が丸管である場合に限定されるものではなく、その他の閉断面部材、開断面部材、異形断面部材、又は支持ロールに替えて支持ガイドを採用する場合にも適用可能である。
(II)加工部の構成、加熱装置及び冷却装置
図4は、本実施の形態の製造装置0の主要部を示す説明図である。
【0035】
同図に示すように、金属材1を保持する2組の支持ロール対2、2と、その下流側には可動ローラダイス4とが配置される。可動ローラダイス4の入側には、一体化された高周波加熱コイル5及び冷却装置6が配置される。さらに、2組の支持ロール対2、2の間には予熱装置5aが設けられ、さらに、可動ローラダイス4の入側の直近部には潤滑剤の供給装置8が配置される。
【0036】
図4において、2組の支持ロール対2、2を通過した金属材1を可動ローラダイス4によりその長手方向に移動自在に支持し、この可動ローラダイス4の位置、さらには必要に応じて移動速度を、二次元又は三次元で制御しながら、金属材1の外周に配置された高周波加熱コイル5を用いて金属材1を部分的に、塑性変形可能であって焼入れ可能な温度に急速に加熱することにより、金属材1を所望の形状に曲げ加工するとともに、冷却装置6を用いて曲げ加工された金属材1の部分を急冷する。
【0037】
曲げ加工の際には、2組の支持ロール対2、2を通過した金属材1が高周波加熱コイル5により、塑性変形が可能な温度域であってかつ焼入れが可能な温度域に急速に加熱されることにより、可動ローラダイス4による金属材1の曲げ加工部の降伏点が低下して変形抵抗が低下するので、金属材1を容易に所望の形状に曲げ加工することができる。
【0038】
さらに、可動ローラダイス4は、孔型ロール対2、2により金属材1を軸方向へ移動自在に支持することから、可動ローラダイス4の表面に発生する焼付疵を抑制できる。しかも、可動ローラダイス4へ潤滑剤を供給するので、金属材1の加熱部に発生するスケールが可動ローラダイス4の内部へ巻き込まれた場合にも、可動ローラダイス4の表面への潤滑作用により、焼付疵の発生を低減できる。
【0039】
また、この製造装置0では、可動ローラダイス4へ冷却流体を供給することもできるので、可動ローラダイス4が冷却流体により冷却される。これにより、可動ローラダイス4の強度の低下、可動ローラダイス4の熱膨張による加工精度の低下、さらに可動ローラダイス4の表面の焼付疵の発生を、いずれも防止できる。
【0040】
図5は、本実施の形態における加熱装置5及び冷却装置6の構成例を模式的に示す説明図である。
加熱装置5は、加熱部を形成すべき金属材1の外周に環状に配置される高周波加熱コイル5により構成され、金属材1を部分的に塑性変形が可能となるとともに焼入れが可能な温度域に、例えば300℃/sec程度の昇温速度で急速に加熱する。次いで、可動ローラダイス4が三次元で移動することにより、加熱装置5による金属材1の加熱部であって塑性変形が可能な温度域に加熱された部分に、曲げモーメントを付与する。引き続いて、冷却装置6から冷却媒体を金属材1の加熱部に噴射することにより、金属材1を焼入れる。これにより、金属材1は、例えば950℃程度に2秒間以下程度保持された後に、550℃/sec程度の冷却速度で急速に冷却される。
【0041】
上述したように、高周波加熱される前の金属材1は、2組の支持ロール対2、2によって支持される。本実施の形態は、加熱装置5及び冷却装置6を一体に構成した場合であるが、別々に構成するようにしてもよい。
【0042】
このようにして、金属材1をAC3変態点以上で、かつ組織が粗粒化しない温度まで加熱することができ、さらに局部的な加熱部に可動ローラダイス4を用いて塑性変形を生じさせ、その直後に冷却媒体を噴射することにより100℃/sec以上の冷却速度による焼入れを行うことができる。
【0043】
したがって、曲げ加工が施された金属材1は、優れた形状凍結性及び安定した品質が確保される。例えば、低強度の金属材1を出発材料として曲げ加工を行った場合であっても、軸方向へ均一に焼入れることによって強度を上昇し、引張強さが900MPa以上、さらには1300MPa級以上に相当する曲げ加工製品を製造することができる。
【0044】
金属材1が厚肉であるために100℃/sec以上の冷却速度を確保することが困難になる場合には、金属材1が丸管、矩形管さらには台形管等の中空の閉断面部材(金属管)である場合には、閉断面部材の内部にマンドレルバーを挿入することにより、所望の冷却速度を確保することができる。
【0045】
図6は、厚肉かつ中空の閉断面部材の金属材1の冷却速度を確保するために、金属材1の内部にマンドレルバー6aを装入する状況を示す説明図である。
金属材1が厚肉かつ中空の閉断面部材である場合には、金属材1の内部に冷却手段としてマンドレルバー6aを装入し、金属材1の外周に配置した冷却手段6と同調して、冷却媒体を供給することにより、金属材1の全体において所望の冷却速度を確保する。この場合、金属材1の内部は流体又はミストで冷却すればよく、マンドレルバー6aを非磁性体又は耐火物により構成することが望ましい。
【0046】
本実施の形態の製造装置0では、供給される冷却水によって加工装置の摺動部が濡れると、冷却水に防錆剤が含有されない場合には錆が発生するおそれがあるので、冷却手段6から供給される冷却媒体として、水を主成分として防錆剤を含有させたものを用いることが望ましい。
【0047】
さらに、冷却手段6から供給される冷却媒体として、水を主成分として、例えば有機高分子剤を配合した焼入れ剤を含有させることが望ましい。配合する焼入れ剤の濃度を調整することによって、冷却速度を調整することができるので、安定した焼入れ性能を確保できる。
(III)可動ローラダイス4の構成
図7は、本実施の形態の製造装置0における可動ローラダイス4の上下方向及び左右方向へのシフト機構、並びに金属管の周方向への回転機構を示す説明図である。
【0048】
図7に示す可動ローラダイス4は、図1に示す可動ローラダイス4とは異なり、被加工材である金属材(丸管)1をその軸方向に移動自在に支持する4つのロールを備えるものである。上下方向へのシフト機構は駆動モータ8により構成され、左右方向へのシフト機構は駆動モータ9により構成される。また、周方向への回転機構は駆動モータ10により構成される。
【0049】
図7には、可動ローラダイス4を上下方向及び左右方向に傾斜させるチルト機構の構成を示していないが、このチルト機構は、特定の機構である必要はなく、慣用される機構を用いればよい。
【0050】
図8は、可動ローラダイス4の前後方向への移動機構の説明図である。図8に示すように、曲げ加工に必要な曲げモーメントMは、アーム長さ(金属材1の加工長さ)をLとすると、下記(A)式により求められる。
【0051】
M=P×L=P×Rsinθ ・・・・・・・・(A)
したがって、アーム長さLが大きくなるほど、ピンチロール(可動ローラダイス)4に作用する力Pは小さくなる。すなわち、曲げ半径が小径から大径までの加工範囲を対象にすると、可動ローラダイス4を前後方向へ移動させない場合には、曲げ半径が小さい金属材1の加工における加工力Pが設備の能力を超えることがある。このため、曲げ半径が小径の金属材1の加工に合わせてアーム長さLを大きく設定すると、曲げ半径が大径の金属材の加工に際し、可動ローラダイス4のシフト機構及びチルト機構を構成するためには大きなストロークが必要となり、加工装置が大型化する。
【0052】
一方、製造装置0の停止精度や許容誤差を考慮すると、アーム長さLを少なくした場合には加工精度が悪化する。このため、金属材1の曲げ半径に応じて、可動ロールダイス4を前後方向へ移動自在に配置することにより、最適なアーム長さLを、金属材1の曲げ半径に関わらず得られるので、加工可能範囲を拡大できる。しかも、この場合に加工装置を大型化させることなく、充分に加工精度を確保することができる。
【0053】
同様に、本実施の形態の製造装置0では、高周波加熱装置及び冷却装置についてもそれぞれ単独又は共通して前後方向への移動機構を設ける。これにより、可動ローラダイス4との同調性を確保できるとともに、曲げ加工開始時の金属材1の先端を加熱することができるようになるとともに、金属材1の取り付けや取り外し時の作業性及び操作性をいずれも向上することもできる。
【0054】
図9は、本実施の形態の製造装置0の可動ローラダイス4を構成する各種のロールを示す説明図であり、図9(a)は金属材1が丸管などの閉断面部材である場合を示し、図9(b)は金属材1が矩形管等の閉断面部材、又はチャンネル等の開断面部材である場合を示し、図9(c)は金属材1が矩形管等の閉断面部材、又はチャンネル等の異形断面部材である場合を示す。
【0055】
可動ローラダイス4のロール型式は、金属材1の断面に応じて適宜定めればよく、図9(a)〜図9(c)に示す2ロール又は4ロールで構成する場合には限定されず、3ロール以上で構成してもよい。
【0056】
通常、曲げ加工を行う金属材1の断面が、丸形、矩形、台形又は複雑な形状を有するロールフォーミング等による閉断面、開断面、又は押し出し加工による異形断面であって、実質的に矩形である場合には、図9(c)に示すように、可動ローラダイス4を4ロールで構成することが望ましい。
【0057】
本実施の形態の製造装置0では、金属材1にねじり変形を付加することができるようにするために、図7に示すように、可動ローラダイス4に金属材1の周方向への回転機構を設けることが望ましい。同時に、図1では示していないが、送り出し装置3にも、金属材1を把持して金属材1の周方向へ回転可能なチャック機構を設けることが望ましい。
【0058】
製造装置0により金属材1にねじり変形を与える際には、可動ローラダイス4の回転機構を用いて金属材1の先端部をねじり変形する方式と、送り出し装置3の回転機構を用いて金属材1の後端部をねじり変形する方式とを用いることができる。通常、送り出し装置3の回転機構を用いる方式ではコンパクトな装置構成になるのに対し、可動ローラダイス4の回転機構を用いる方式では、図7に示すように、装置の構成が大規模になるおそれがある。
【0059】
また、製造装置0では、さらに支持手段2(支持ローラ、または支持ガイド)に金属材1の周方向への回転機構を設けることにより、送り出し装置3の回転に同調して金属材1をその軸周りの周方向へ回転させることができる。この場合にも、可動ローラダイス4の回転機構を用いて金属材1の先端部をねじり変形する方式か、送り出し装置3の回転機構を用いて金属材1の後端部をねじり変形する方式のいずれかを採用すれば、支持手段2の同調により高精度のねじり変形を金属材1に与えることができる。
【0060】
製造装置0では、可動ローラダイス4を構成するロール対それぞれに、駆動回転機構を設けることにより、送り出し装置3の送り量に応じて駆動モータ等によってこのロール対それぞれに駆動回転を与えることができる。曲げ加工部分に作用する圧縮応力を緩和させるとともに、送り出し装置3の送り量に応じて、これと同調するように可動ローラダイス4のロールの回転速度を制御すれば、金属材1の曲げ加工部に引張応力を与えることができ、曲げ加工を行うことができる範囲が拡大するので、製品の加工精度を向上することができる。
(IV)予熱手段とその作用
本実施の形態の製造装置0では、加熱装置5の上流側に設けられた予熱装置5aをも用いて金属材1を加熱することにより、金属材1の二段加熱、又はそれ以上の複数段加熱、または金属材1の横断面の各部位において加熱温度を異ならせる不均一加熱を行うことができる。
【0061】
予熱手段5aを複数段加熱として用いる場合には、金属材1の加熱負荷を分散することができ、曲げ加工の能率を向上することもできる。
図10は、予熱装置5aをも用いて金属材1を不均一加熱する場合を示す説明図である。
【0062】
図10に示すように、予熱装置として予熱用高周波加熱コイル5aを金属材1の不均一加熱として用いる場合には、可動ローラダイス4による金属材1の曲げ方向に基づいて、金属材1の中心と予熱用高周波加熱コイル5aの中心とをずらして配置し、金属材1のA側を予熱用高周波加熱コイル5aに接近するように位置させる。これにより、曲げ加工の内面側に相当するB側の外面温度よりも、曲げ加工の外面側に相当するA側の外面温度を高くするようにすることができるので、曲げ加工の内面側に発生するシワと、曲げ加工の外面側に発生する割れとを、いずれも有効に防止することができる。
【0063】
製造装置0では、可動ローラダイス4へ潤滑剤を供給する。これにより、金属材1の加熱部に発生するスケールを可動ローラダイス4が巻き込んだ場合でも、供給された潤滑剤が奏する潤滑作用により、表面も焼付きの発生を低減することができる。
【0064】
同様に、製造装置0では、可動ローラダイス4へ冷却流体を供給する。可動ローラダイス4の内部であって金属材1を保持する部位の近傍に冷却配管を設けて、可動ローラダイス4へ冷却流体を供給することにより、可動ローラダイス4が冷却流体により冷却されることから、可動ローラダイス4の強度の低下、可動ローラダイス4の熱膨張による加工精度の低下、さらに可動ローラダイス4の表面の焼付の発生を防止できる。
(V)出側サポートガイド
図11は、出側サポートガイド30の一例30Aを示す説明図である。出側サポートガイド30は、可動ローラダイス4を通過した金属材1を支持することにより曲げ加工された金属材1の変形を抑制する。
【0065】
図11に示す出側サポートガイド30Aは、図1に示す横断面が円形の金属材1ではなく、横断面が矩形の金属材1に曲げ加工を行う場合を示しており、可動ローラダイス4が、左右方向に対をなす支持ロール対4a、4a及び上下方向に対をなす支持ロール対4b、4bの合計4つのロールからなる可動ローラダイス4である場合を示す。また、金属材1の曲げ加工部は左右面内のみで形状が変化する2次元曲げ形状の場合である。
【0066】
可動ローラダイス4は、曲げ加工時には、金属材1の先端を、支持ロール対4b、4bにより上下方向へ、かつ支持ロール対4a、4aにより左右方向へそれぞれ位置決めしながら、所定の空間位置への移動、すなわち左右方向の移動(以降「左右シフト」という)と、平面内の回転(以降「左右チルト」という)とを行う。なお、金属材1が2次元の曲げ形状のみを有する場合には左右シフトのみ行うようにすればよい。
【0067】
図11に示すように、この可動ローラダイス4の出側には、出側サポートガイド30Aである出側サポートガイドが設置される。出側サポートガイド30Aは、可動ローラダイス4のハウジング(図示しない)、又はこのハウジングから縁切りされた他の部材に設置すればよい。
【0068】
この出側サポートガイド30Aは、可動ローラダイス4の出側において曲げ加工された金属材1の下面を支持することにより、金属材1の曲げ加工を行われた部分に自重をはじめとして作用する上下方向のモーメントにより生じる変形誤差を抑制する。このため、出側サポートガイド30Aを設けることにより、製造される曲げ加工製品の形状を、高精度で安定して所定の形状に維持することができる。
【0069】
図12は、本実施の形態に係る出側サポートガイド30の別の一例30Bを示す説明図である。
本例も、横断面が矩形の金属材1に曲げ加工を行う場合であり、図示しない可動ローラダイスは図4に示す可動ローラダイス4と同様の4ロール型である。また、金属材1の曲げ形状は、左右面内のみで曲げ変形する2次元曲げ形状である。
【0070】
本例は、図11に示す例と同様に、可動ローラダイス4の出側に出側サポートガイド30Bが設置されるが、さらに、出側サポートガイド30Bの上面に設けられた溝に、左右方向へ金属材1をガイドするロール111及び112が円周状に移動自在に設置される。また、ロール111及び112は、加工時における金属材1の移動に応じた移動、すなわち左右シフトや左右チルトを行う。これらの動きは、図示しない制御手段に接続され、送り出し装置3や可動ローラダイス4と同期する。
【0071】
図12に示す出側サポートガイド30Bでは、左右チルトは所定半径の動きであるが、2次元曲げ形状では左右シフトのみで構成してもよい。さらに、ロール111及び112の一方に、油圧シリンダー等の圧力負荷手段を設置してもよい。
【0072】
出側サポートガイド30Bは、可動ローラダイス4のハウジング、あるいはこのハウジングとは縁切りされた他の部材に設置すればよい。なお、可動ローラダイス4をハウジングに固定すれば、左右シフトや左右チルトの可動範囲が小さくなるため、設備的には有利である。いずれにせよ、出側サポートガイド30Bにより可動ローラダイス4の出側で曲げ加工中の金属材1の下面及び左右面をガイドし、加工部への自重や、加熱や冷却の不均一に起因した熱変形の不均一による上下方向や左右方向への付加的なモーメントが作用しても、金属材1における変形誤差を抑制でき、ばらつきなく所定の目標の形状を有する曲げ加工製品を製造することができる。
【0073】
図13は、本実施の形態に係る出側サポートガイド30Cの別の一例を示す説明図である。
本例は、そのほとんどが図12に示す例と同じであるが、図12に示す構成に加えて、金属材1の上下方向をガイドするロール113が追加されている。
【0074】
ロール113には、エアーシリンダーや油圧シリンダー等の圧力負荷手段(図示しない)を設置し、金属材1に圧力を負荷するようにしてもよい。可動ローラダイス4の出側で曲げ加工中の金属材1の上下面及び左右面をガイドし、金属材1の加工部への自重や、加熱や冷却の不均一に起因した熱変形の不均一による上下方向及び左右方向への二次的なモーメントが作用しても、金属材1の付加的な変形を防止することができ、ばらつきなく所定の目標形状を有する曲げ加工製品を製造することができる。
【0075】
図14は、本実施の形態に係る出側サポートガイド30の別の一例を示す説明図である。
本実施例でも、図1と同様に横断面が矩形の金属材1に曲げ加工を行う場合であり、可動ローラダイス4は4ロール型である。また、曲げ加工製品は完全な3次元曲げ形状を有する。
【0076】
可動ローラダイス4は、曲げ加工中には金属材1の先端を上下方向及び左右方向へ位置決めしながら所定の空間位置の移動、すなわち左右シフト及び左右チルトと、垂直方向の移動(以降「上下シフト」という)と、平面内の回転(以降「上下チルト」という)とを行う。
【0077】
本実施例では可動ローラダイス4の出側にロール状のアクティブガイド30Dが設置される。アクティブガイド30Dは、曲げ加工中の金属材1の移動に応じた移動、すなわち上下シフトや左右チルトを行うことにより、金属材1の下面に追従し、この下面を常にガイドする。左右チルトは必ずしも必要ではない。これらの動きは図示しない制御手段に接続され、送り出し装置3や可動ローラダイス4と同期する。
【0078】
可動ローラダイス4の出側で曲げ加工中の金属材1の下面がアクティブガイド30Dにより支持されるので、加工部への自重や、加熱や冷却の不均一に起因した熱変形の不均一による上下方向への二次的なモーメントが作用しても、金属材1における変形誤差を抑制でき、ばらつきなく所定の目標形状を有する曲げ加工製品を製造することができる。
【0079】
図15は、本実施の形態に係る出側サポートガイド30の別の一例を示す説明図である。
本実施例は、殆ど図7の構成と同様であるが、さらに金属材1の上下方向をガイドするロール30Eが追加されている。
【0080】
ロール30Eの代わりに、エアーシリンダーや油圧シリンダー等の圧力負荷手段を設置してもよい。ロール30Eにより可動ローラダイス4の出側で曲げ加工中の金属材1の上下面をガイドすることにより、加工部への自重や、加熱や冷却の不均一に起因した熱変形の不均一による上下方向への二次的なモーメントが作用しても、金属材1の変形誤差を抑制でき、ばらつきなく所定の目標形状を有する曲げ加工製品を製造することができる。
【0081】
図16は、本実施の形態に係る出側サポートガイド30の別の一例を示す説明図である。
本実施例も、図11と同様に横断面が矩形である金属材1に曲げ加工を行う場合であり、可動ローラダイス4は4ロール型である。また、金属材1に完全な3次元曲げ形状を与える。可動ローラダイス4は、曲げ加工中には金属材1の先端を上下方向及び左右方向に位置決めしながら所定の移動、すなわち左右シフト及び左右チルトと、上下シフトと、チルトとを行う。
【0082】
本例は、これまでの実施例と同様に、可動ローラダイス4の出側に、左右方向及び上下方向に金属材1をガイドする4ロール111〜114を有する出側サポートガイド30Fが設置されている。また、出側サポートガイド30Fは、曲げ加工中の金属材1の移動に応じた移動、すなわち左右シフトや左右チルトを行う。これらの動きは、図示しない制御手段に接続され、送り出し装置3や可動ローラダイス4と同期する。
【0083】
さらに、ロール111及び112の一方に、例えば油圧シリンダー等の圧力負荷手段を設置してもよい。可動ローラダイス4の出側で曲げ加工中の金属材1の下面及び左右面を位置決めするので、加工部への自重や、加熱や冷却の不均一に起因した熱変形の不均一による上下方向及び左右方向への二次的なモーメントが作用しても、金属材1の付加的な変形を防止でき、ばらつきなく所定の目標形状を有する曲げ加工製品を得ることができる。
【0084】
図17は、本実施の形態に係る出側サポートガイド30の別の一例を示す説明図である。
本例は、殆ど図16の構成と同様であるが、図16の構成に加えて、出側サポートガイド30Gにねじり機構が追加される。
【0085】
これらの動きは図示しない制御手段に接続され、捻じり方向にも移動自在に配置された送り出し装置3や可動ローラダイス4と同期する。
可動ローラダイス4の出側で曲げ加工中の金属材1の上下面及び左右面をガイドし、加工部への自重や、加熱や冷却の不均一に起因した熱変形の不均一による上下方向及び左右方向、さらにはねじれ方向への二次的なモーメントが作用しても、金属材1の変形誤差を抑制でき、ばらつきなく所定の目標形状を有する曲げ加工製品を得ることができる。
【0086】
また、図示しないが、本実施の形態の出側サポートガイド30の別の一例として、汎用の多軸ロボットに出側サポートガイド30をなすガイド部材を保持させ、このガイド部材を、所定の空間で移動自在に配置するようにしてもよい。
【0087】
図11〜17を参照しながら説明したように、3次元的な高精度の位置決め機構は複雑なものになることがあるが、汎用の多軸ロボットを用いることにより比較的単純な構成で、ガイド部材を、所定の空間で移動自在に設置することができる。曲げ加工製品の要求精度、重量さらには形状により具体的な装置の剛性等を考慮しながら、汎用の多軸ロボットを用いるか否かを決定すればよい。
【0088】
図18は、本実施の形態に係る出側サポートガイド30の別の一例を示す説明図である。
本例は、図1と同様に断面が矩形の金属材1に曲げ加工を行う場合であり、可動ローラダイス4は4ロール型である。また、曲げ加工製品の形状は完全な3次元曲げ形状である。可動ローラダイス4は、曲げ加工中には金属材1の先端を上下方向及び左右方向へ位置決めしながら、左右シフト及び左右チルトと、上下シフトと、上下チルトとを行う。
【0089】
本例はこれまでの例とは異なり、金属材1の先端を、多軸ロボット31に保持される出側サポートガイド30Hにより完全に掴ませ、金属材1の送りとともに、多軸ロボット31も移動しながら3次元位置を完全に同期させる。曲げ加工中の金属材1の移動に応じて、空間位置の移動、すなわち左右シフトや左右チルトやねじれを行う。これらの動きは、図示しない制御手段に接続され、送り出し装置3や可動ローラダイス4と同期する。
【0090】
可動ローラダイス4の出側の金属材1の先端を出側サポートガイド30Hにより保持するので、加工部への自重や、加熱や冷却の不均一に起因した熱変形の不均一による上下方向及び左右方向への二次的なモーメントが作用しても、金属材1の変形誤差を抑制でき、ばらつきなく所定の目標形状を有する曲げ加工製品を得ることができる。
(VI)関節型ロボット
図19は、本実施の形態の製造装置0で用いることができる関節型ロボット11の構成を示す説明図である。
【0091】
図19に示すように、曲げ加工装置の下流側に、可動ローラダイス4を保持するための関節型ロボット11を配置する。
この関節型ロボット11は、作業面に固定された固定面12と、主軸となる3本のアーム13、14、15と、各アーム13、14、15を接続するとともに、軸の廻りで回動可能な手首軸となる3個の関節16、17、18とを有する。関節型ロボット11の先端のアーム15には可動ローラダイス4が取り付けられる。
【0092】
図20は、本実施の形態の製造装置0に用いられる関節型ロボットの他の構成例を示す説明図である。
図19に示す製造装置0では、可動ローラダイス4を保持する関節型ロボット11だけを配置するが、図20に示すように、これとともに、加熱装置5及び冷却装置6を保持するもう一基の関節型ロボット11を併設する。これらの関節型ロボット11、11を設けることにより、さらに曲げ加工の効率化を図ることができる。
【0093】
この製造装置0は、軸廻りに回動可能な関節を3個有する関節型ロボット11を少なくとも1つ以上配置することにより、金属材1の曲げ加工に際し、可動ローラダイス4でのシフト機構、チルト機構及び移動機構が行う屈伸、旋回、並進等の動作、すなわち、合計6種類のマニピュレータが行う動作を、制御信号に基づく一連の動作とすることができる。これにより、曲げ加工の効率化とともに加工装置の小型化を図ることができる。
(VII)曲げ加工設備列
上述したように、本実施の形態の製造装置0により加工される被加工材としては、丸形等の形状を有する閉断面部材や開断面部材がある。従来から丸管の閉断面部材として電縫鋼管が用いられ、同時に開断面部材としてロールフォーミングされた鋼材が多用される。
【0094】
図21は、被加工材の一例である電縫鋼管の製造装置11の全体を模式的に示す説明図である。
電縫鋼管の製造装置19は、帯状鋼板20から鋼管を製造するための装置であって、同図に示すように、帯状の鋼板ロールから帯状鋼板20を連続的に繰り出すアンコイラー21と、繰り出された帯状鋼板20を所定の断面の管に成形する複数のロール成形機を備える成形手段22と、管状に成形されて相互に突き合わされた帯状鋼板の両側縁を溶接して管を連続的に形成する溶接機を備える溶接手段23と、溶接ビード切削装置及びポストアニーラー装置、さらに連続する管を所要のサイズにする後処理手段24と、この所要サイズにされた管を所要長さに切断する走行切断機を備える切断手段25とを、上流から下流へ向けてこの順に備える。
【0095】
図22は、被加工材の製造に用いられるロールフォーミング装置26の全体を模式的に示す説明図である。
同図に示すように、ロールフォーミング装置26は、帯状鋼板20を所定の形状に成形するための装置であって、金属素材としての帯状鋼板20が巻回され、この帯状鋼板20を繰り出すアンコイラー21と、このアンコイラー21によって繰り出された帯状鋼板20を所定の形状に成形するロール成形機を備える成形手段27と、このロール成形機によって所定の形状に成形された帯状鋼板20を所定の長さに連続的に切断する走行切断機を備える切断手段28とを備える。
【0096】
図21に示す電縫鋼管の製造装置19や、図22に示すロールフォーミング装置26によって製造された被加工材は、加工用の金属材1として上述した本実施の形態の曲げ加工装置0に供給される。製造装置19、ロールフォーミング装置26と曲げ加工装置0とが離れて配置されていると、製造装置19、ロールフォーミング装置26及び曲げ加工装置0それぞれの生産タクトの相違を吸収するために被加工材を一時的にストックしておく場所を確保する必要が生じたり、さらには、製造装置19、ロールフォーミング装置26と曲げ加工装置0との間で被加工材を搬送するためのクレーンやトラック等の補助搬送手段を設ける必要を生じる。
【0097】
そこで、本実施の形態では、本実施の形態の製造装置0を、製造装置19又はロールフォーミング装置26の出側に連続して配置することにより、被加工材である金属材1の供給から曲げ加工製品である補強部材の製造に至るまでの全体の設備列をコンパクトに配置し、かつその操業条件を適正に設定することによって、本発明に係る補強部材を、高い寸法精度で効率的かつ安価に製造することができる。
【0098】
このようにして、本実施の形態によれば、多岐にわたる曲げ形状が要求され、金属材1の曲げ方向が3次元的に異なる曲げ加工によって本発明に係る高強度の補強部材を製造する場合であっても、金属材1を均一に冷却できることから、高強度であっても形状凍結性がよく、かつ均一な硬度分布を有する本発明に係る補強部材を、効率的かつ安価に製造することができる。
【0099】
しかも、可動ローラダイス4は、軸方向へ移動自在に金属材1を支持することができるので、可動ローラダイス4の表面に発生する焼付疵を抑制でき、曲げ加工精度を確保することができるとともに、作業能率に優れた曲げ加工を行うことができる。これにより、例えば、さらに、本発明に係る補強部材といった自動車部品を製造するための高度な曲げ加工技術として、広く適用可能である。
【0100】
図23(a)はAC3点以上に加熱した後に急冷する通常の焼入れ条件を示すグラフであり、図23(b)はAC3点以上に加熱した後に図23(a)に示す冷却速度よりも低い冷却速度で冷却する条件を示すグラフであり、図23(c)はAC1点以下に加熱した後に急冷する条件を示すグラフであり、図23(d)はAC1点以上AC3点以下の温度域に加熱した後に急冷する条件を示すグラフであり、さらに図23(e)はAC1点以上AC3点以下の温度域に加熱した後に図23(d)に示す冷却速度よりも低い冷却速度で冷却する条件を示すグラフである。
【0101】
本発明に係る補強部材を製造する際に行う熱処理は、上述した製造装置0における高周波加熱コイル5及び水冷装置6の作動を適宜制御することによって、図23(a)に示す通常の焼入れを行うとともに、図23(b)〜図23(e)に示す条件で、行われる。
【0102】
例えば、図23(a)に示すように部分的に通常の焼入れを行って所望の超高強度(例えばマルテンサイト100%の組織、1500〜1650MPa、55k鋼では1300MPa、45k鋼では1200MPa)を得るとともに、金属材1に対して部分的に高周波加熱コイル5の作動を停止することによりこの部分に対しては熱処理を行わないようにすることによって、素管の強度のまま(例えばフェライトとパーライトの二相組織,焼入れ鋼では500〜600MPa、55k鋼では550MPa、45k鋼では450MPa)とすることができる。
【0103】
また、図23(b)に示すように通常焼き入れと同等の加熱を行うとともに、冷却速度を低くすることにより、上述した超高強度よりも強度が若干低下した高強度(例えばマルテンサイトと微量のフェライトの2相組織,焼入れ鋼では1400〜1500MPa、55k鋼では700〜900MPa、45k鋼では600〜800MPa)とすることができる。具体的には、水冷装置6の水冷ジャケットの孔を、例えば電磁弁により全部あるいは部分的に閉鎖することにより水冷しない部分を設けることが例示される。この際の冷却速度は、周囲の温度により変化するため、製造条件により事前に実験を行うことにより水冷の方法を決定すればよい。
【0104】
また、図23(c)に示すように、AC1点以下に加熱した後に通常焼き入れの冷却速度と同じ冷却速度で冷却することにより、母材の強度よりも若干高い所望の強度(例えばフェライトとパーライトの2相組織、焼入れ鋼では500〜600+αMPa、55k鋼では550+αMPa、45k鋼では450+αMPa)とすることができる。素管の造管歪が大きい場合には、素管よりも強度が低下する場合もあるが、一般的にはセメンタイトが溶け込み、若干強度が上昇する。上述したようにオンーオフ制御を行う場合における高周波加熱コイル5の制御の応答性を勘案すると、この手段によれば加熱電源の出力の変化が少なくて済むため、温度変化のレスポンスが早く、強度変化の移行部が小さくなるため実際的には有効な方法である。
【0105】
また、図23(d)に示すように、AC1点以上AC3点以下に加熱した後に通常焼き入れの冷却速度と同じ冷却速度で冷却することにより、通常の焼き入れによる超高強度と素管の強度との中間の強度(焼入れ鋼では600〜1400MPa、55k鋼では550〜1300MPa、45k鋼では450〜1200MPa)を得ることができる。この場合、フェライトとマルテンサイトの2相組織となるため、一般的には、やや不安定で制御し難いが、製品の形状、寸法、用途等により所定の強度を得ることができる。
【0106】
さらに、図23(e)に示すように、AC1点以下に加熱した後に通常焼き入れの冷却速度よりも遅い緩冷却することにより、通常の焼き入れによる超高強度と素管の強度との中間の強度(焼入れ鋼では600〜1400−αMPa、55k鋼では550〜1300−αMPa、45k鋼では450〜1200−αMPa)を得ることができる。この場合、図23(d)に示す場合よりもやや強度が低下するが、制御はやや安定する。
【0107】
例えば、肉厚1.6mmの焼入れ鋼(C:0.20%、Si:0.22%、Mn:1.32%、P:0.016%、S:0.002%、Cr:0.20%、Ti:0.020%、B:0.0013%、残部Fe及び不純物、AC3=825℃、AC1=720℃)を素材とする、縦50mmかつ横50mmの正方形の横断面の鋼管を、送り速度が20mm/secの場合、素管強度は502MPa、図23(a)に示す条件(加熱温度910℃)の熱処理部は1612MPa、図23(b)に示す条件(加熱温度910℃)の熱処理部は1452MPa、図23(c)に示す条件(加熱温度650℃)の熱処理部は510MPa、図23(d)に示す条件(加熱温度770℃)の熱処理部は752MPa、図23(e)に示す条件(加熱温度770℃)の熱処理部は623MPaの強度をそれぞれ有する。
【0108】
一方、肉厚1.6mmの55k鋼(C:0.14%、Si:0.03%、Mn:1.30%、P:0.018%、S:0.002%、残部Fe及び不純物、AC3=850℃、AC1=720℃)を素材とする、縦50mmかつ横50mmの正方形の横断面の鋼管を、送り速度が20mm/secの場合、素管強度は554MPa、図23(a)に示す条件(加熱温度950℃)の熱処理部は1303MPa、図23(b)に示す条件(加熱温度950℃)の熱処理部は823MPa、図23(c)に示す条件(加熱温度650℃)の熱処理部は561MPa、図23(d)に示す条件(加熱温度800℃)の熱処理部は748MPa、図23(e)に示す条件(加熱温度800℃)の熱処理部は658MPaの強度をそれぞれ有する。
【0109】
さらに、例えば、肉厚1.6mmの45k鋼(C:0.11%、Si:0.01%、Mn:1.00%、P:0.021%、S:0.004%、残部Fe及び不純物、AC3=870℃、AC1=720℃)を素材とする、縦50mmかつ横50mmの正方形の横断面の鋼管を、送り速度が20mm/secの場合、素管強度は445MPa、図23(a)に示す条件(加熱温度980℃)の熱処理部は1208MPa、図23(b)に示す条件(加熱温度980℃)の熱処理部は737MPa、図23(c)に示す条件(加熱温度650℃)の熱処理部は451MPa、図23(d)に示す条件(加熱温度800℃)の熱処理部は629MPa、図23(e)に示す条件(加熱温度800℃)の熱処理部は612MPaの強度をそれぞれ有する。
【0110】
次に、以上説明した曲げ加工方法により製造される、本発明に係る補強部材を説明する。以降の説明では、本発明における「ピラー」がBピラーである場合を例にとる。
図24(a)は、本実施の形態の補強部材41a、41bを組み込まれる自動車車体40を示す説明図であり、図24(b)は、補強部材41aを、自動車車体40のBピラー42aに組み込んだ状態を、一部を省略するとともに透視した状態で示す斜視図であり、さらに、図24(c)は、図24(a)におけるA断面図である。
【0111】
本実施の形態の自動車車体40の補強部材41a、41bは、図24(a)〜図24(c)に示すように、自動車車体40を構成する、閉じた横断面を有するBピラー42a、42bの内部に例えば溶接等の適宜手段によって固定されて、このBピラー42a、42bの長手方向の全域にわたって配置される。
【0112】
本実施の形態の補強部材41a、41bは、要求される強度を確保しながら重量の増加をできるだけ抑制するために、普通鋼からなる30mm×20mmの角管を素材として曲げ加工法により製造されるものとしたが、本発明の補強部材41a、41bはこれに限定されるものではなく、例えば、円形や多角形等の横断面を有する筒体やテーパー管等といった、外部へ向けたフランジを有さない閉断面構造を有する中空体からなるものであれば、用いることができる。これにより、補強部材41a、41bの軽量化及び小型化を図ることができる。
【0113】
補強部材41a、41bは、合金化溶融亜鉛めっき皮膜等の亜鉛系めっき被膜を備える鋼管を素材として用い、曲げ加工法により製造されるものである。曲げ加工における加熱処理後の外面に、付着量が20g/m以上80g/m以下であり、Fe濃度が15質量%以上35質量%以下であり、η相が存在し、さらに、中心線平均粗さRaが1.5μm以下である皮膜が残存する。この皮膜は、自動車車体の電着塗装工程の前処理として行われる脱脂処理工程での脱脂処理性が優れることから、その後に行われる化成処理性及び電着塗装性が良好である。これにより、本実施の形態の補強部材41a、41bは、自動車車体の補強部材として要求される耐食性を有する。
【0114】
補強部材41a、41bは、図1〜23を参照しながら上述した曲げ加工法により製造されるので、長手方向に単一の部材により構成され、三次元に屈曲する形状を有しており、補強する対象であるBピラー42a、42bに沿ってその内部に収容可能な三次元形状を有する。
【0115】
また、補強部材41a、41bにおける、三次元に屈曲する屈曲部の曲率半径は、図1〜23を参照しながら上述した曲げ加工法により製造されるので、一定にすること(例えば円弧形状)もできるし、あるいは一定でないようにすること、すなわち長手方向の部位により曲率半径が変化する形状とすることもできる。特にBピラー等の自動車車体の構成部材では、三次元に屈曲する屈曲部の曲率半径が、長手方向の部位により変化する形状であることが多いが、本実施の形態の補強部材41a、41bにおける、三次元に屈曲する屈曲部の曲率半径も、長手方向の部位により変化する形状である。
【0116】
補強部材41a、41bは、図24(c)における領域R1の部分に、マルテンサイト単相組織、又はマルテンサイト及びフェライトの2相組織からなる引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部が形成される。このため、補強部材41a、41bは、全体として充分なレベルの強度を有する。
【0117】
さらに、補強部材41a、41bは、一方のBピラー42a及び他方のBピラー42bそれぞれの、少なくとも、下端部から上方へ向けて150mmの高さの位置から、自動車車体のウエストラインの高さに相当する高さの位置(図24(c)における領域R2の上端部)までに、フェライト及びパーライトの2相組織からなる引張強度が600MPa以上1100MPa以下の熱処理部が形成される。図示例では、領域R2の全ての部分に引張強度が600MPa以上1100MPa以下の熱処理部が形成されている。
【0118】
なお、本実施の形態とは異なり、この引張強度が600MPa以上1100MPa以下の熱処理部を、高周波焼入れが行われない引張強度が600MPa未満の非熱処理部としてもよい。また、補強部材41a、41bの他部材との溶接性を確保したり、あるいは穴抜き等の加工性を確保するために、これらの箇所に相当する領域R1に部分の一部を、例えば曲げ加工における高周波焼入れの際にコイル電流の通電をオフしたり、あるいはこれらの箇所に事前に絶縁体を取り付けること等の適宜手段により、高周波焼入れが行われない未焼入部としてもよい。
【0119】
本実施の形態では、このように、補強部材41a、41bの長手方向に引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部及び引張強度が600MPa以上1100MPa以下の熱処理部を設けることによって、側面衝突の際の補強部材41a、41bの変形モードを、特に搭乗者の頭部高さ付近の車体幅方向への変位量が小さくなるように制御すること、すなわち搭乗者の頭部高さ付近のBピラー42a、42bの倒れ込みの量を抑制することができる。この理由を説明する。
【0120】
本発明者等は、自動車同士の側面衝突を模擬したシミュレーションを、FEM解析により行い、本実施の形態の補強部材41a、41bの効果を確認した。
図25は、この解析条件を示す説明図である。この解析では、図25に示す各部寸法l=250mm、l=250mm、l=60mm、l=440mmを有するとともに幅方向寸法が1500mmである、実際の衝突試験で用いられるアルミハニカムを模した衝突体43を、同図に示す高さh=300mmで、(a)本実施の形態の補強部材41aを内蔵されたBピラー42a(発明例2)、(b)本実施の形態の補強部材41aの全長にわたって高周波焼入れされた補強部材を内蔵されたBピラー(発明例1)、及び(c)本実施の形態の補強部材42aを内蔵しない従来のBピラー(比較例)に衝突させ、衝突後25msec経過時点における各Bピラーの車体幅方向への変形状況を解析した。
【0121】
この解析に用いた補強部材42aは、30mm×20mm、肉厚1.2mm、強度590MPa相当の角管を素材とし、曲げ加工により、高周波焼入れ部強度1500MPaとしたものである。また、この解析に用いた3種のBピラーは、いずれも、アウターパネルの板厚0.7mm、強度590MPa相当、インナーパネルの板厚1.33mm、強度440MPa相当であり、フランジ部を除く下端部幅200mm、フランジを除く上端部幅49mmである。このBピラーは、全長4350mm、全高1400mm、車体幅1710mmの4ドアーセダンに用いられるものである。
【0122】
解析結果を図26にグラフで示す。図26には、変形前の補強部材42aの形状をあわせて示す。このグラフは、比較例の車体幅方向への変形量に対する変形量の比率を、Bピラーの高さ方向の全域について示すものである。
【0123】
図26にグラフで示すように、発明例1、2は、いずれも比較例と較べて、側面衝突の際におけるBピラーの倒れ込み量を、特に搭乗者の頭部付近に相当する、車高方向800〜1200mm付近において1〜7%程度抑制できることがわかる。このため、発明例1、2のBピラーは、車高方向800〜1200mm付近における倒れ込み量を抑制できた分に応じて、このBピラー42aの側に着座する搭乗者が側面衝突における二次衝突により頭部に受ける危険性を、低減できることがわかる。
【0124】
さらに、発明例1と発明例2とを比較することにより、発明例2は、Bピラー42aの全長にわたって引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部を形成するのではなく下部に引張強度が600MPa以上1100MPa以下の熱処理部を形成することにより、発明例1よりもさらに、車高方向800〜1200mm付近における倒れ込み量を抑制できることがわかる。
【0125】
以上説明したように、補強部材41a、41bによれば、搭乗者の特に頭部付近におけるBピラーの倒れ込み量を小さくすることができ、側面衝突における二次衝突に対する安全性を高めることができる。また、発明例1のように、引張強度が600MPa以上1100MPa以下の熱処理部または高周波焼入れが行われない引張強度が600MPa未満の非熱処理部があることによって当該部の変形量が促進されるため、1500MPa級の高強度部の変形が抑制され、その結果、高強度部が破断によって抗力が急激に低下し、車内への倒れ込み量が急激に増加する可能性を低減することができる。
【0126】
また、補強部材41a、41bは、複雑な三次元形状を有するものの一体に構成されているので、部品点数の増加を抑制することもできる。さらに、補強部材41a、41bは、その全部又は一部に引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部を有するので全体としても充分な強度を有する。したがって、補強部材41a、41bの横断面積を小さく設定しても必要な強度を確保できるので、その分だけ、その分だけ補強部材41a、41bの小型化及び軽量化を図ることもできる。
【0127】
このようにして、本実施の形態の補強部材41a、41bを自動車車体40を構成するセンタピラー42a、42bの内部に配置することにより、側面衝突事故の際におけるBピラー42a、42bの倒れ込みを、簡便な構造により抑制することができ、これにより、自動車車体40の安全性をさらに高めることができる。
[実施の形態2]
次に、実施の形態2を説明する。なお、以降の各実施の形態の説明では、上述した実施の形態1と相違する部分を説明し、共通する部分に関する重複する説明は、適宜省略する。
【0128】
図27〜図29は、いずれも、図24(a)に示す自動車車体40に、本実施の形態の補強部材41a−1〜41a−3、41b−1〜41b−3を組み込んだ際の、図24(a)におけるA断面図である。
【0129】
図27に示す補強部材41a−1、41b−1が、実施の形態1の補強部材41a、41bと相違するのは、実施の形態1の補強部材41a、41bの配置範囲に加えて、さらに、Bピラー42a、42bの上端部でこのBピラー42a、42bに接合されるルーフレールサイド44a、44bを貫通してルーフパネル45の内面に沿って車体幅方向の内側へ延びて配置される点である。
【0130】
図28に示す補強部材41a−2、41b−2が、実施の形態1の補強部材41a、41bと相違するのは、実施の形態1の補強部材41a、41bの配置範囲に加えて、さらに、Bピラー42a、42bの下端部でこのBピラー42a、42bに接合されるサイドシル46a、46bを貫通してフロアパネル47の内面に沿って車体幅方向の内側へ延びて配置される点である。
【0131】
さらに、図29に示す補強部材41a−3、41b−3が、実施の形態1の補強部材41a、41bと相違するのは、実施の形態1の補強部材41a、41bの配置範囲に加えて、さらに、Bピラー42a、42bの上端部でこのBピラー42a、42bに接合されるルーフレールサイド44a、44bを貫通してルーフパネル45の内面に沿って車体幅方向の内側へ延びて配置されるとともに、Bピラー42a、42bの下端部でこのBピラー42a、42bに接合されるサイドシル46a、46bを貫通してフロアパネル47の内面に沿って車体幅方向の内側へ延びて配置される点である。
【0132】
これらの補強部材41a−1〜41a−3、41b−1〜41b−3によれば、自動車車体40の横断面におけるコーナー部に位置するルーフレールサイド44a、44bや、サイドシル46a、46bを、実施の形態1よりもさらに補強することが可能になるので、側面衝突事故の際におけるBピラーの倒れ込みを、簡便な構造により抑制することができ、これにより、自動車車体40の安全性をさらに高めることができる。
【0133】
これらの補強部材41a−1〜41a−3、41b−1〜41b−3についても、自動車同士の側面衝突を模擬したシミュレーションを、有限要素法を用いた数値解析により行ったので、補強部材41a−1、41b−1を例にとって説明する。
【0134】
図30は、このシミュレーションに用いた4種のBピラーを示す説明図であり、図30(a)は発明例1、2及び比較例1のBピラー42aの形状を示し、図30(d)は比較例2のBピラー42aの形状を示す。
【0135】
図30(a)に示す発明例1、2及び比較例1のBピラー42aは、その内部に、図27に示す補強部材41a−1と同様に、Bピラー42aの上端部でこのBピラー42aに接合されるルーフレールサイド44aを貫通してルーフパネル45の内面に沿って車体幅方向の内側へ420mm延びる補強部材41a−1を設けられている。そして、発明例1の補強部材41a−1は、図42(c)に示すように、領域R1が引張強度1100MPa超の高周波焼入れ部であるとともに領域R2が引張強度590MPaの熱処理部であり、発明例2の補強部材41a−1は、さらに領域R2も引張強度1100MPa超の高周波焼入れ部であり、さらに、比較例1の補強部材41a−1はその全長にわたって高周波焼入れを行わないものである。
【0136】
一方、図30(b)に示す比較例2のBピラー42aは、その内部に補強部材41a−1を配置しないものである。
図31は、このシミュレーションにおける衝突の状況を示す説明図であり、図31(a)は衝突の直前における状況を示し、図31(b)は衝突後25msec経過時の状況を示す。
【0137】
この解析では、図31(c)に示す各部寸法l=250mm、l=250mm、l=60mm、l=440mmを有するとともに幅方向寸法が1500mmである、実際の衝突試験で用いられるアルミハニカムを模した衝突体48を、図31(a)及び図31(b)に示すように、その下面が地上面から300mmの高さとなるように台車49の前部に固定し、衝突時速度50km/hで、上述した発明例1、2及び比較例1、2の各Bピラー42aに衝突させ、衝突後25msec経過時点におけるBピラー42aの車体幅方向の内側への変位量を求めることによって、このBピラー42aの倒れ込み量を求めた。
【0138】
この解析に用いた補強部材42aは、30mm×20mm、肉厚1.2mm、強度590MPa相当の角管を素材とし、曲げ加工により、高周波焼入れ部強度1500MPa、熱処理部は素材の強度590MPaとしたものである。また、この解析に用いたBピラー41aは、いずれも、アウターパネルの板厚0.70mm、強度590MPa相当、インナーパネルの板厚1.33mm、強度440MPa相当であり、フランジ部を除く下端部幅200mm、フランジを除く上端部幅49mmである。このBピラーは、全長4350mm、全高1400mm、車体幅1710mmの小型4ドアーセダンに用いられるものである。
【0139】
解析結果を、図32にグラフで示す。図32(a)は、衝突開始後25msec経過時点におけるBピラー42aの車高方向高さ(mm)と横方向(車幅方向)の座標(mm)との関係を示すグラフであり、図32(b)は、比較例2の車体幅方向への変形量に対する発明例1、2及び比較例1の変形量の比率を、Bピラーの高さ方向の全域について示すグラフである。
【0140】
図32(a)及び図32(b)にグラフで示すように、発明例1、2は、本発明に係る補強部材41aをBピラー42aの内部に配置するので、Bピラー42aの倒れ込み量を、比較例1、2よりも抑制でき、その分だけ、このBピラー42aの側に着座する搭乗者の二次衝突に対する安全性を向上することができる。
【0141】
特に、発明例1と発明例2とを比較することにより、発明例1は、補強部材41aの下部に引張強度600MPa以上1100MPa以下の熱処理部を設けてあるので、高さ方向の全域においてBピラー42aの倒れ込み量を抑制できることがわかる。
【0142】
このように、発明例1、2によれば、補強部材41が高周波焼入れ部を有することと相まって、Bピラー42a、42bの倒れ込み量を小さくすることができ、側面衝突における二次衝突に対する安全性をさらに高めることができる。
[実施の形態3]
次に、上述した実施の形態1、2の補強部材よりも自動車車体における設置範囲を拡大した各種の補強部材を、以下に順次説明する。
【0143】
図33は、図24(a)に示す自動車車体40に、本実施の形態の補強部材41a−4を組み込んだ際の、図24(a)におけるA断面図である。
この補強部材41a−4は、自動車車体40を構成する一方のサイドシル46aとの接合部である一方のBピラー42aの下端部から、一方のルーフレールサイド44aとの接合部であるこのBピラー42aの上端部を経て、ルーフパネル45の内面に沿って車体幅方向へ向かい、他方のルーフレールサイド44bとの接合部である他方のBピラー42bの上端部を経て他方のサイドシル46bとの接合部であるこのBピラー42bの下端部までに相当する範囲に配置される。
【0144】
この補強部材41a−4は、一方のBピラー42a及び他方のBピラー42bの内部を貫通して、配置される。そして、補強部材41a−4は、長手方向に単一の部材により構成され、三次元に屈曲するとともに、実施の形態1、2と同様に一方のBピラー42a及び他方のBピラー42bに相当する部分に引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部を備える。
【0145】
この補強部材41a−4は、上述した補強部材41aと同様の効果を奏するとともに、上述した左右の補強部材41a、41bを一体化しているので、側面衝突におけるBピラー42a、42bの倒れ込みをさらに抑制することができる。
【0146】
図34、35は、いずれも、図24(a)に示す自動車車体40に、図33に示す補強部材41a−4を改良した補強部材41a−5、41a−6を組み込んだ際の、図24(a)におけるA断面図である。
【0147】
図34に示す補強部材41a−5が、図33に示す補強部材41a−4と相違するのは、一方のBピラー42aの上端部からルーフパネル45の内面に沿って他方のBピラー42bの上端部までに相当する部分の一部が、高周波焼入れが行われない引張強度が600MPa未満の非熱処理部であって、かつ断面を扁平化する加工を行われた扁平加工部である点である。
【0148】
曲げ加工を行う際に、図34において斜線で示す部分に対して高周波焼入れを行わず、引張強度が600MPa未満の非熱処理部とする。これにより、この部分の加工性が良好に維持されるので、曲げ加工を終了した後にこの部分を扁平化する加工を行うことにより、この部分の断面を、図34におけるC−C’断面で示す一般形状とは異ならせて、図34におけるD−D’断面で示す扁平形状とする。
【0149】
これにより、補強部材41a−5が室内を通過する部分の範囲を低減できるので、補強部材41a−5の室内空間の占有量を低減することができる。
一方、図35に示す補強部材41a−6が、図33に示す補強部材41a−4と相違するのは、一方のBピラー42aの上端部からルーフパネル45の内面に沿って他方のBピラー42bの上端部までに相当する部分の全部が、高周波焼入れが行われない引張強度が600MPa未満の非熱処理部であって、かつ断面を扁平化する加工を行われた扁平加工部である点である。
【0150】
曲げ加工を行う際に、図35において斜線で示す部分に対して高周波焼入れを行わず、引張強度が600MPa未満の非熱処理部とする。これにより、この部分の加工性が良好に維持されるので、曲げ加工を終了した後にこの部分を扁平化する加工を行うことによって、この部分の断面を、図34におけるC−C’断面で示す一般形状とは異ならせて、図34におけるD−D’断面で示す扁平形状とするとともに、この扁平化加工によって図35に示す形状に曲げ加工する。
【0151】
これにより、補強部材41a−6が室内を通過する部分の範囲を低減できるので、補強部材41a−6の室内空間の占有量を低減することができる。
[実施の形態4]
図36は、図24(a)に示す自動車車体40に、本実施の形態の補強部材41a−7を組み込んだ際の、図24(a)におけるA断面図である。
【0152】
この補強部材41a−7は、自動車車体を構成する一方のルーフレールサイド44aとの接合部である一方のBピラー42aの上端部から、一方のサイドシル46aとの接合部であるこのBピラー42aの下端部を経て、フロアパネル47の内面に沿って車体幅方向へ向かい、他方のサイドシル46bとの接合部である他方のBピラー42bの下端部を経て他方のルーフレールサイド44bとの接合部であるこのBピラー42bの上端部までに相当する範囲に配置される。
【0153】
この補強部材41a−7は、一方のBピラー42a及び他方のBピラー42bの内部を貫通して、配置される。そして、補強部材41a−7は、長手方向に単一の部材により構成され、三次元に屈曲するとともに、実施の形態1、2と同様に一方のBピラー42a及び他方のBピラー42bに相当する部分に引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部を備える。
【0154】
この補強部材41a−7は、上述した補強部材41aと同様の効果を奏するとともに、上述した左右の補強部材41a、41bを一体化しているので、側面衝突におけるBピラー42a、42bの倒れ込みをさらに抑制することができる。
【0155】
図37、38は、いずれも、図24(a)に示す自動車車体40に、図36に示す補強部材41a−7を改良した補強部材41a−8、41a−9を組み込んだ際の、図24(a)におけるA断面図である。
【0156】
図37に示す補強部材41a−8が、図36に示す補強部材41a−7と相違するのは、一方のBピラー42aの下端部からフロアパネル47の内面に沿って他方のBピラー42bの下端部までに相当する部分の一部が、高周波焼入れが行われない引張強度が600MPa未満の非熱処理部であって、かつ断面を扁平化する潰し加工を行われた潰し部である点である。
【0157】
曲げ加工を行う際に、図37において斜線で示す部分に対して高周波焼入れを行わず、引張強度が600MPa未満の非熱処理部とする。これにより、この部分の加工性が良好に維持されるので、曲げ加工を終了した後にこの部分を扁平化する潰し加工を行うことにより、この部分の断面を、図34におけるC−C’断面で示す一般形状とは異ならせて、図34におけるD−D’断面で示す潰し部とする。
【0158】
これにより、補強部材41a−8が室内を通過する部分の範囲を低減できるので、補強部材41a−8の室内空間の占有量を低減することができる。
一方、図38に示す補強部材41a−9が、図36に示す補強部材41a−7と相違するのは、一方のBピラー42aの下端部からフロアパネル47の内面に沿って他方のBピラー42bの下端部までに相当する部分の全部が、高周波焼入れが行われない引張強度が600MPa未満の非熱処理部であって、かつ断面を扁平化する潰し加工を行われた潰し部である点である。
【0159】
曲げ加工を行う際に、図38において斜線で示す部分に対して高周波焼入れを行わず、引張強度が600MPa未満の非熱処理部とする。これにより、この部分の加工性が良好に維持されるので、曲げ加工を終了した後にこの部分を扁平化する潰し加工を行うことによって、この部分の断面を、図34におけるC−C’断面で示す一般形状とは異ならせて、図34におけるD−D’断面で示す扁平形状とするとともに、この扁平化加工によって図38に示す形状に曲げ加工する。
【0160】
これにより、補強部材41a−9が室内を通過する部分の範囲を低減できるので、補強部材41a−9の室内空間の占有量を低減することができる。
[実施の形態5]
本実施の形態の補強部材41a−10〜41a−15は、いずれも、自動車車体40の横断面において、この自動車車体を略一周する範囲に配置されるものである。しかし、補強部材41a−10〜41a−15は、上述した曲げ加工法により製造されるので、一周連続した形状に曲げ加工することは不可能であり、補強部材41a−10〜41a−15の先端部と後端部とが、少なくとも図1における支持手段2、2と可動ローラダイス4との間の距離だけ離れている必要がある。また、加工装置との干渉により、この先端部の延長線と、後端部の延長線とが同一直線上に存在しないことも必要である。
【0161】
このため、上述した曲げ加工法により製造可能な補強部材41a−10〜41a−15の例を以下に順次説明する。
図39(a)は、図24(a)に示す自動車車体40に、本実施の形態の補強部材41a−10を組み込んだ際の、図24(a)におけるA断面図である。また、図39(b)は、この補強部材41a−10を抽出して模式的に示す説明図である。
【0162】
この補強部材41a−10は、自動車車体を構成する一方のルーフレールサイド44aとの接合部である一方のBピラー42aの上端部から、一方のサイドシル46aとの接合部であるこのBピラー42aの下端部を経て、フロアパネル47の内面に沿って車体幅方向へ向かい、他方のサイドシル46bとの接合部である他方のBピラー42bの下端部、及び他方のルーフレールサイド44bとの接合部であるこのBピラー42bの上端部を経てルーフパネル45の内面に沿って車体幅方向へ向かい、一方のBピラー42aの上端部までに相当する範囲(以下、単に「全周」という)から、フロアパネル47に形成されるトンネル部47aを構成する一方の縦面47bを含むとともに軸方向の長さが車体幅の0.1倍以上0.6倍以下の範囲(図39(b)において破線で示す範囲)を除いた範囲に、少なくとも一方のBピラー及び他方のBピラーの内部を貫通して配置され、長手方向に単一の部材により構成され、三次元に屈曲するとともに、引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部を備えるものである。
【0163】
図39(c)は、本実施の形態の他の補強部材41a−11を抽出して模式的に示す説明図である。
この補強部材41a−11は、全周から、他方のBピラー42bと他方のサイドシル46bとの接合部を含むとともに軸方向の長さが車体幅の0.1倍以上0.6倍以下の範囲(図39(c)において破線で示す範囲)を除いた範囲に、少なくとも一方のBピラー42a及び他方のBピラー42bの内部を貫通して、配置され、長手方向に単一の部材により構成され、三次元に屈曲するとともに、引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部を備えるものである。
【0164】
図39(d)は、本実施の形態の他の補強部材41a−12を抽出して模式的に示す説明図である。
この補強部材41a−12は、全周から、他方のBピラー42bと他方のルーフレールサイド44bとの接合部を含むとともに軸方向の長さが車体幅の0.1倍以上0.6倍以下の範囲(図39(d)において破線で示す範囲)を除いた範囲に、少なくとも一方のBピラー42a及び他方のBピラー42bの内部を貫通して、配置され、長手方向に単一の部材により構成され、三次元に屈曲するとともに、引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部を備えるものである。
【0165】
図39(e)は、本実施の形態の他の補強部材41a−13を抽出して模式的に示す説明図である。
この補強部材41a−13は、全周から、他方のBピラー42bにおける、自動車車体のウエストラインの高さに相当する部分を含むとともに軸方向の長さが車体幅の0.1倍以上0.6倍以下の範囲(図39(e)において破線で示す範囲)を除いた範囲に、少なくとも一方のBピラー42a及び他方のBピラー42bの内部を貫通して、配置され、長手方向に単一の部材により構成され三次元に屈曲するとともに、引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部を備えるものである。
【0166】
これらの本実施の形態の補強部材41a−10〜41a−13によれば、実施の形態1と同様にBピラーの倒れ込みを抑制することができるとともに、その程度を向上することができる。
【0167】
なお、実施の形態3、4において示したように、本実施の形態の補強部材41a−10〜41a−13においても、部分的に扁平化加工を行うことにより補強部材41a−10〜41a−13の室内空間の占有量を低減するようにしてもよいことは、いうまでもない。
【0168】
このように、本発明に係る自動車車体の補強部材は、自動車車体の全周のうち少なくとも一方のBピラー及び他方のBピラーの内部を貫通して、配置されるものであって、長手方向に単一の部材により構成され三次元に屈曲するとともに、少なくとも一方のBピラー及び他方のBピラーに相当する部分に引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部と、必要に応じて、引張強度が600MPa以上1100MPa以下の熱処理部、又は、高周波焼入れが行われない引張強度が600MPa未満の非熱処理部とを備えることによって、側面衝突におけるBピラーの倒れ込みを抑制し、これにより、搭乗者の二次衝突の危険性を低減するものである。この観点から、熱処理部や非熱処理部を設ける範囲には様々な態様が考えられるが、それは自動車車体に対して要求する特性に応じて適宜決定すればよく、そのような態様も本発明の範囲に包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】実施の形態に係る、曲げ加工を実施するための曲げ加工製品の製造装置の全体構成を簡略化して示す説明図である。
【図2】実施の形態において金属材として適用可能な被加工材の横断面を示す説明図であり、図2(a)はロールフォーミング等により製造される開断面を有するチャンネルを示し、図2(b)は押し出し加工により製造される異形断面を有するチャンネルを示す。
【図3】実施の形態における支持手段として用いることができる支持ガイドの構成の一例を示す説明図であり、図3(a)は支持ガイドと支持ガイドを駆動する回転機構との配置を示す断面図であり、図3(b)は支持ガイドの外観を示す斜視図である。
【図4】実施の形態の製造装置の加工部の構成を示す説明図である。
【図5】実施の形態の製造装置における加熱装置及び冷却装置の構成例を模式的に示す説明図である。
【図6】厚肉材の冷却速度を確保するために中空の閉断面部材の内面にマンドレルを装入した状況を示す説明図である。
【図7】実施の形態の製造装置の可動ローラダイスの上下方向及び左右方向へのシフト機構、並びに周方向への回転機構を示す説明図である。
【図8】実施の形態の製造装置の可動ローラダイスの前後方向への移動機構の説明図である。
【図9】実施の形態の製造装置の可動ローラダイスを構成するロールを示す図であり、図9(a)は金属材が中空の閉断面部材である場合を示し、図9(b)は金属材が矩形管等の閉断面部材、又はチャンネル等の開断面部材である場合を示し、図9(c)は金属材が矩形管等の閉断面部材、又はチャンネル等の異形断面部材である場合を示す。
【図10】予熱装置を金属材の不均一加熱として用いる場合の作用を説明する図である。
【図11】出側サポートガイドの一例を示す説明図である。
【図12】出側サポートガイドの別の一例を示す説明図である。
【図13】出側サポートガイドの別の一例を示す説明図である。
【図14】出側サポートガイドの別の一例を示す説明図である。
【図15】出側サポートガイドの別の一例を示す説明図である。
【図16】出側サポートガイドの別の一例を示す説明図である。
【図17】出側サポートガイドの別の一例を示す説明図である。
【図18】出側サポートガイドの別の一例を示す説明図である。
【図19】実施の形態の製造装置で用いることができる関節型ロボットの構成を示す説明図である。
【図20】実施の形態の製造装置で用いられる関節型ロボットの他の構成例を示す説明図である。
【図21】被加工材の一例である電縫鋼管の製造工程の全体を示す説明図である。
【図22】被加工材の製造に用いられるロールフォーミング工程の全体構成を示す図である。
【図23】図23(a)はAC3点以上に加熱した後に急冷する通常の焼入れ条件を示すグラフであり、図23(b)はAC3点以上に加熱した後に図23(a)に示す冷却速度よりも低い冷却速度で冷却する条件を示すグラフであり、図23(c)はAC1点以下に加熱した後に急冷する条件を示すグラフであり、図23(d)はAC1点以上AC3点以下の温度域に加熱した後に急冷する条件を示すグラフであり、さらに図23(e)はAC1点以上AC3点以下の温度域に加熱した後に図23(d)に示す冷却速度よりも低い冷却速度で冷却する条件を示すグラフである。
【図24】図24(a)は、本実施の形態の補強部材を組み込まれる自動車車体を示す説明図であり、図24(b)は、この補強部材を、自動車車体のBピラーに組み込んだ状態を、一部を省略するとともに透視した状態で示す斜視図であり、さらに、図24(c)は、図24(a)におけるA断面図である。
【図25】解析条件を示す説明図である。
【図26】解析結果を示すグラフである。
【図27】図24(a)に示す自動車車体に、実施の形態の補強部材を組み込んだ際の、図24(a)におけるA断面図である。
【図28】図24(a)に示す自動車車体に、実施の形態の補強部材を組み込んだ際の、図24(a)におけるA断面図である。
【図29】図24(a)に示す自動車車体に、実施の形態の補強部材を組み込んだ際の、図24(a)におけるA断面図である。
【図30】シミュレーションに用いた4種のBピラーを示す説明図であり、図30(a)は発明例1、2及び比較例1のBピラーの形状を示し、図30(d)は比較例2のBピラーの形状を示す。
【図31】シミュレーションにおける衝突の状況を示す説明図であり、図31(a)は衝突の直前における状況を示し、図31(b)は衝突後25msec経過時の状況を示す。
【図32】図32(a)及び図32(b)は、解析結果を示すグラフである。
【図33】図24(a)に示す自動車車体に、本実施の形態の補強部材を組み込んだ際の、図24(a)におけるA断面図である。
【図34】図24(a)に示す自動車車体に、図33に示す補強部材を改良した補強部材を組み込んだ際の、図24(a)におけるA断面図である。
【図35】図24(a)に示す自動車車体に、図33に示す補強部材を改良した補強部材を組み込んだ際の、図24(a)におけるA断面図である。
【図36】図24(a)に示す自動車車体に、本実施の形態の補強部材を組み込んだ際の、図24(a)におけるA断面図である。
【図37】図24(a)に示す自動車車体に、図36に示す補強部材を改良した補強部材を組み込んだ際の、図24(a)におけるA断面図である。
【図38】図24(a)に示す自動車車体に、図36に示す補強部材を改良した補強部材を組み込んだ際の、図24(a)におけるA断面図である。
【図39】図39(a)は、図24(a)に示す自動車車体に、実施の形態の補強部材を組み込んだ際の、図24(a)におけるA断面図であり、図39(b)は、この補強部材を抽出して模式的に示す説明図であり、図39(c)は、実施の形態の他の補強部材を抽出して模式的に示す説明図であり、図39(d)は、実施の形態の他の補強部材を抽出して模式的に示す説明図であり、図39(e)は、実施の形態の他の補強部材を抽出して模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0170】
1 金属材
2 支持手段
3 送り出し装置
4 可動ローラダイス、ピンチロール
5 加熱手段、加熱装置、高周波加熱コイル
5a 予熱手段、予熱装置、予熱用高周波加熱コイル
6 冷却手段、冷却装置
6a マンドレル
7 チャック機構
8、9、10 駆動モータ
10a 駆動ギア
11 関節型ロボット
12 固定面
13、14、15 アーム
16、17、18 関節
19 電縫鋼管製造ライン
20 帯状鋼板
21 アンコイラー
22、27 成形手段
23 溶接手段
24 後処理手段
25、28 切断手段
26 ロールフォーミングライン
30 出側サポートガイド
40 自動車車体
41a、41b,41a−1〜41a−15、41b−1〜41b−15 補強部材
42a、42b Bピラー
43 衝突体
44a、44b ルーフレールサイド
45 ルーフパネル
46a、46b サイドシル
47 フロアパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車車体を構成するピラーの内部で該ピラーの長手方向に配置され、三次元に屈曲する形状を有するとともに、引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部を備えることを特徴とする自動車車体の補強部材。
【請求項2】
さらに、前記ピラーの上端部で該ピラーに接合されるルーフレールサイドを貫通してルーフパネルの内面に沿って車体幅方向へ延びて配置される請求項1に記載された自動車車体の補強部材。
【請求項3】
さらに、前記ピラーの下端部で該ピラーに接合されるサイドシルを貫通してフロアパネルの内面に沿って車体幅方向へ延びて配置される請求項1又は請求項2に記載された自動車車体の補強部材。
【請求項4】
自動車車体を構成する一方のサイドシルとの接合部である一方のピラーの下端部から、一方のルーフレールサイドとの接合部である該ピラーの上端部を経て、ルーフパネルの内面に沿って車体幅方向へ向かい、他方のルーフレールサイドとの接合部である他方のピラーの上端部を経て他方のサイドシルとの接合部である該ピラーの下端部までに相当する範囲に、少なくとも前記一方のピラー及び前記他方のピラーの内部を貫通して、配置され、三次元に屈曲する形状を有するとともに、少なくとも前記一方のピラー及び前記他方のピラーに相当する部分に引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部を備えることを特徴とする自動車車体の補強部材。
【請求項5】
自動車車体を構成する一方のルーフレールサイドとの接合部である一方のピラーの上端部から、一方のサイドシルとの接合部である該ピラーの下端部を経て、フロアパネルの内面に沿って車体幅方向へ向かい、他方のサイドシルとの接合部である他方のピラーの下端部を経て他方のルーフレールサイドとの接合部である該ピラーの上端部までに相当する範囲に、少なくとも前記一方のピラー及び前記他方のピラーの内部を貫通して、配置され、三次元に屈曲する形状を有するとともに、少なくとも前記一方のピラー及び前記他方のピラーに相当する部分に引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部を備えることを特徴とする自動車車体の補強部材。
【請求項6】
自動車車体を構成する一方のルーフレールサイドとの接合部である一方のピラーの上端部から、一方のサイドシルとの接合部である該ピラーの下端部を経て、フロアパネルの内面に沿って車体幅方向へ向かい、他方のサイドシルとの接合部である他方のピラーの下端部、及び他方のルーフレールサイドとの接合部である該ピラーの上端部を経てルーフパネルの内面に沿って車体幅方向へ向かい、前記一方のピラーの上端部までに相当する範囲から、前記一方のピラーと前記一方のサイドシルとの接合部、又は前記他方のピラーと前記他方のサイドシルとの接合部を含むとともに軸方向の長さが車体幅の0.1倍以上0.6倍以下の範囲を除いた範囲に、少なくとも前記一方のピラー及び前記他方のピラーの内部を貫通して、配置され、三次元に屈曲する形状を有するとともに、少なくとも前記一方のピラー及び前記他方のピラーに相当する部分に引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部を備えることを特徴とする自動車車体の補強部材。
【請求項7】
自動車車体を構成する一方のルーフレールサイドとの接合部である一方のピラーの上端部から、一方のサイドシルとの接合部である該ピラーの下端部を経て、フロアパネルの内面に沿って車体幅方向へ向かい、他方のサイドシルとの接合部である他方のピラーの下端部、及び他方のルーフレールサイドとの接合部である該ピラーの上端部を経てルーフパネルの内面に沿って車体幅方向へ向かい、前記一方のピラーの上端部までに相当する範囲から、前記一方のピラーと前記一方のルーフレールサイドとの接合部、又は前記他方のピラーと前記他方のルーフレールサイドとの接合部を含むとともに軸方向の長さが車体幅の0.1倍以上0.6倍以下の範囲を除いた範囲に、少なくとも前記一方のピラー及び前記他方のピラーの内部を貫通して、配置され、三次元に屈曲する形状を有するとともに、少なくとも前記一方のピラー及び前記他方のピラーに相当する部分に引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部を備えることを特徴とする自動車車体の補強部材。
【請求項8】
自動車車体を構成する一方のルーフレールサイドとの接合部である一方のピラーの上端部から、一方のサイドシルとの接合部である該ピラーの下端部を経て、フロアパネルの内面に沿って車体幅方向へ向かい、他方のサイドシルとの接合部である他方のピラーの下端部、及び他方のルーフレールサイドとの接合部である該ピラーの上端部を経てルーフパネルの内面に沿って車体幅方向へ向かい、前記一方のピラーの上端部までに相当する範囲から、前記一方のピラー又は前記他方のピラーにおける、自動車車体のウエストラインの高さに相当する部分を含むとともに軸方向の長さが車体幅の0.1倍以上0.6倍以下の範囲を除いた範囲に、少なくとも前記一方のピラー及び前記他方のピラーの内部を貫通して、配置され、三次元に屈曲する形状を有するとともに、少なくとも前記一方のピラー及び前記他方のピラーに相当する部分に引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部を備えることを特徴とする自動車車体の補強部材。
【請求項9】
自動車車体を構成する一方のルーフレールサイドとの接合部である一方のピラーの上端部から、一方のサイドシルとの接合部である該ピラーの下端部を経て、フロアパネルの内面に沿って車体幅方向へ向かい、他方のサイドシルとの接合部である他方のピラーの下端部、及び他方のルーフレールサイドとの接合部である該ピラーの上端部を経てルーフパネルの内面に沿って車体幅方向へ向かい、前記一方のピラーの上端部までに相当する範囲から、前記フロアパネルに形成されるトンネル部を構成する一方の縦面を含むとともに軸方向の長さが車体幅の0.1倍以上0.6倍以下の範囲を除いた範囲に、少なくとも前記一方のピラー及び前記他方のピラーの内部を貫通して配置され、三次元に屈曲する形状を有するとともに、少なくとも前記一方のピラー及び前記他方のピラーに相当する部分に引張強度が1100MPa超の高周波焼入れ部を備えることを特徴とする自動車車体の補強部材。
【請求項10】
前記一方のピラーの上端部から前記ルーフパネルの内面に沿って前記他方のピラーの上端部までに相当する部分の一部又は全部は、高周波焼入れが行われない引張強度が600MPa未満の非熱処理部であって、かつ潰し加工を行われた潰し部であることを特徴とする請求項4、請求項6から請求項9までのいずれか1項に記載された自動車車体の補強部材。
【請求項11】
前記一方のピラーの下端部から前記フロアパネルの内面に沿って前記他方のピラーの下端部までに相当する部分の一部又は全部は、高周波焼入れが行われない引張強度が600MPa未満の非熱処理部であって、かつ潰し加工を行われた潰し部であることを特徴とする請求項5から請求項10までのいずれか1項に記載された自動車車体の補強部材。
【請求項12】
少なくとも、前記ピラーの下端部から上方へ向けて150mmの位置に相当する位置から、自動車車体のウエストラインの高さに相当する位置までは、引張強度が600MPa以上1100MPa以下の熱処理部、又は、高周波焼入れが行われない引張強度が600MPa未満の非熱処理部である請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載された自動車車体の補強部材。
【請求項13】
外部へ向けたフランジを有さない閉断面構造を有する中空体からなる請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載された自動車車体の補強部材。
【請求項14】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された補強部材を備えることを特徴とするピラー。
【請求項15】
請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載された補強部材を備えることを特徴とする自動車車体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公開番号】特開2009−286334(P2009−286334A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142912(P2008−142912)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】