説明

製造装置

【課題】 本発明は、EL材料の利用効率を高め、且つ、EL層成膜の均一性やスループ
ットの優れた成膜装置の一つである蒸着装置及び蒸着方法を提供するものである。
【解決手段】
本発明は、蒸着室内において、蒸着材料が封入された容器を複数個設置した細長い矩形形
状の蒸着源ホルダ17に設け、基板13に対してあるピッチで移動しながら蒸着を行うこ
とを特徴とする。また、基板の一辺に対して矩形形状の蒸着ホルダの長手方向を斜めにし
たまま移動させてもよい。また、TFT作製時におけるレーザー光の走査方向に対して、
蒸着時における蒸着ホルダの移動方向を異ならせることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸着により成膜可能な材料(以下、蒸着材料という)の成膜に用いられる成膜
装置を備えた製造装置および該製造装置を用いた有機化合物を含む層を発光層とする発光
装置、およびその作製方法に関する。特に、基板に対向して設けられた複数の蒸着源から
蒸着材料を蒸発させて成膜を行う膜の作製方法(蒸着方法)、及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自発光型の発光素子としてEL素子を有した発光装置の研究が活発化している。
この発光装置は有機ELディスプレイ、又は有機発光ダイオードとも呼ばれている。これ
らの発光装置は、動画表示に適した速い応答速度、低電圧、低消費電力駆動などの特徴を
有しているため、新世代の携帯電話や携帯情報端末(PDA)をはじめ、次世代ディスプ
レイとして大きく注目されている。
【0003】
有機化合物を含む層を発光層とするEL素子は、有機化合物を含む層(以下、EL層と
記す)が陽極と、陰極との間に挟まれた構造を有し、陽極と陰極とに電場を加えることに
より、EL層からルミネッセンス(Electro Luminescence)が発光する。またEL素子か
らの発光は、一重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(蛍光)と三重項励起状態から
基底状態に戻る際の発光(リン光)とがある。
【0004】
上記のEL層は「正孔輸送層/発光層/電子輸送層」に代表される積層構造を有してい
る。また、EL層を形成するEL材料は低分子系(モノマー系)材料と高分子系(ポリマ
ー系)材料に大別され、低分子系材料は、蒸着装置を用いて成膜される。
【0005】
従来の蒸着装置は基板ホルダに基板を設置し、EL材料、つまり蒸着材料を封入したル
ツボと、昇華するEL材料の上昇を防止するシャッターと、ルツボ内のEL材料を加熱す
るヒータとを有している。そして、ヒータにより加熱されたEL材料が昇華し、回転する
基板に成膜される。このとき、均一に成膜を行うために、基板とルツボとの間の距離は1
m以上離す必要がある。
【0006】
従来の蒸着装置や蒸着方法では、蒸着によりEL層を形成する場合、昇華したEL材料
の殆どが蒸着装置の成膜室内の内壁、シャッターまたは防着シールド(蒸着材料が成膜室
の内壁に付着することを防ぐための保護板)に付着してしまった。そのため、EL層の成
膜時において、高価なEL材料の利用効率が約1%以下と極めて低く、発光装置の製造コ
ストは非常に高価なものとなっていた。
【0007】
また従来の蒸着装置は、均一な膜を得るため、基板と蒸着源との間隔を1m以上離す必
要があった。そのため、蒸着装置自体が大型化し、蒸着装置の各成膜室の排気に要する時
間も長時間となるため成膜速度が遅くなり、スループットが低下しまった。また、大面積
基板になると、基板の中央部と周縁部とで膜厚が不均一になりやすい問題が生じる。さら
に、蒸着装置は基板を回転させる構造であるため、大面積基板を目的とする蒸着装置には
限界があった。
【0008】
これらの点から本出願人は、蒸着装置(特許文献1、特許文献2)を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−247959号公報
【特許文献2】特開2002−60926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、EL材料の利用効率を高めることによって製造コストを削減し、且つ、EL
層成膜の均一性やスループットの優れた製造装置の一つである蒸着装置及び蒸着方法を提
供するものである。また本発明の蒸着装置及び蒸着方法により作製される発光装置および
その作製方法を提供するものである。
【0011】
また本発明は、例えば、基板サイズが、320mm×400mm、370mm×470
mm、550mm×650mm、600mm×720mm、680mm×880mm、1
000mm×1200mm、1100mm×1250mm、1150mm×1300mm
のような大面積基板に対して、効率よくEL材料を蒸着する製造装置を提供するものであ
る。また、本発明は、大面積基板に対しても基板全面において均一な膜厚が得られる蒸着
装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、基板と蒸着源とが相対的に移動することを特徴とす
る蒸着装置を提供するものである。すなわち本発明は、蒸着室内において、蒸着材料が封
入された容器を設置した蒸着源ホルダが、基板に対してあるピッチで移動することを特徴
とする。本明細書では、移動する蒸着ホルダを備えた蒸着装置を有する製造装置をムービ
ングセルクラスタ方式と呼ぶ。
【0013】
本発明において、一つの蒸着ホルダの上面形状は矩形形状であり、その長手方向にルツ
ボを4個以上、好ましくは6個や8個、並べて設置可能とする。なお、矩形形状とは長細
い長方形、細長い楕円形もしくは線状を含む。蒸着ホルダの長手方向の長さは、用いる基
板サイズに合わせて適宜、300mm〜1300mmの範囲で設計し、等間隔でルツボを
配置すればよい。なお、蒸着ホルダの長手方向の長さが基板の一辺よりも短い場合は、数
回の走査を繰り返して成膜すればよい。また、同じ経路で蒸着ホルダを繰り返し移動させ
ることにより同一の薄膜を数回積層しても構わない。
【0014】
また、互いの蒸着中心をクロスさせた4個以上の容器を設置し、同時に加熱して複数の
方向から蒸着材料をぶつけあうことで微粒子化させてもよい。この場合、クロスする箇所
は、マスク(および基板)と容器との間の空間に位置する。
【0015】
また、蒸着源ホルダに備えられる有機化合物は必ずしも一つまたは一種である必要はな
く、複数であってもよい。
【0016】
また、蒸着源ホルダに発光性の有機化合物として備えられている一種類の材料の他に、
ドーパントとなりうる別の有機化合物(ドーパント材料)を一緒に備えておいても良い。
蒸着させる有機化合物層として、ホスト材料と、ホスト材料よりも励起エネルギーが低い
発光材料(ドーパント材料)とで構成し、ドーパントの励起エネルギーが、正孔輸送性領
域の励起エネルギーおよび電子輸送層の励起エネルギーよりも低くなるように設計するこ
とが好ましい。このことにより、ドーパントの分子励起子の拡散を防ぎ、効果的にドーパ
ントを発光させることができる。また、ドーパントがキャリアトラップ型の材料であれば
、キャリアの再結合効率も高めることができる。また、三重項励起エネルギーを発光に変
換できる材料をドーパントとして混合領域に添加した場合も本発明に含めることとする。
【0017】
また、異なる材料を複数のルツボに分けて充填し、同時に蒸着を行うことによって、積
層構造を有するEL層において各膜との界面に蒸着材料が混合された領域(混合領域)を
形成することができる。また、混合領域の形成においては、混合領域に濃度勾配をもたせ
てもよい。
【0018】
さらに、一つの蒸着源ホルダに備えられる有機化合物の種類を複数とする場合、互いの
有機化合物が混ざりあうように蒸発する方向を被蒸着物の位置で交差するように斜めにす
ることが望ましい。傾き調節ネジで容器(ルツボ)を傾けることによって蒸着方向を適宜
設定すればよい。
【0019】
また、蒸着源ホルダは、水平を保ったまま、成膜室内をX方向またはY方向に移動可能
な機構(代表的には2軸ステージ)が設けられている。ここでは蒸着源ホルダを二次元平
面で蒸着源ホルダをX方向またはY方向に移動させる。また、蒸着源ホルダの移動ピッチ
もマスクの開口サイズに適宜、合わせればよい。また、膜厚モニタも蒸着ホルダと一体化
されて移動する。また、膜厚モニタで測定された値に従って蒸着源ホルダの移動速度も調
節することで膜厚を均一にする。なお、蒸着ホルダの長手方向と、蒸着ホルダの移動方向
は、90°を成す。
【0020】
また、本発明の蒸着装置においては、蒸着の際、基板と蒸着源ホルダとの間隔距離dを
代表的には30cm以下、好ましくは20cm以下、さらに好ましくは5cm〜15cm
に狭め、蒸着材料の利用効率及びスループットを格段に向上させている。
【0021】
また、図4(A)に示すように基板と蒸着源ホルダとの間隔距離dを代表的には30cm
以下に狭めるため、蒸着マスクも加熱される恐れがある。従って、蒸着マスクは、熱によ
って変形されにくい低熱膨張率を有する金属材料(例えば、タングステン、タンタル、ク
ロム、ニッケルもしくはモリブデンといった高融点金属もしくはこれらの元素を含む合金
、ステンレス、インコネル、ハステロイといった材料)を用いることが望ましい。例えば
、ニッケル42%、鉄58%の低熱膨張合金などが挙げられる。また、加熱される蒸着マ
スクを冷却するため、蒸着マスクに冷却媒体(冷却水、冷却ガス)を循環させる機構を備
えてもよい。本発明は、蒸着源ホルダが移動するため、その移動速度が速ければ、蒸着マ
スクはほとんど加熱されず、熱によるマスクの変形が引き起こす成膜不良なども抑えるこ
とができる。
【0022】
また、大面積基板を用い、多面取り(1枚の基板から複数のパネルを形成する)を行う
際、スクライブラインとなる部分が接するように基板を支える基板保持手段を設ける。即
ち、基板保持手段の上にマスクと基板とを載せ、基板保持手段の下方に設けられた蒸着源
ホルダから蒸着材料を昇華させて基板保持手段で接していない領域、且つ、マスクに覆わ
れていない領域に蒸着を行う。こうすることによって、自重によるマスクのたわみ及び大
面積基板のたわみを1mm以下に抑えることができる。また、マスクやチャンバー内壁を
クリーニングする場合には、上記基板保持手段を導電材料で形成し、基板保持手段に接続
された高周波電源によってプラズマを発生させてマスクやチャンバー内壁に付着した蒸着
材料を除去すればよい。
【0023】
また、マスクに付着した蒸着物をクリーニングするため、図4(A)に示すようにプラ
ズマ発生手段により、成膜室内にプラズマを発生させ、マスクに付着した蒸着物を気化さ
せて成膜室外に排気することが好ましい。従って、成膜室はAr、H、F、NF3、また
はOから選ばれた一種または複数種のガスを導入するガス導入手段と、気化させた蒸着物
を排気する手段とを備えている。また、マスクに別途電極を設け、いずれか一方に高周波
電源が接続されている。以上により、マスクは導電性材料で形成されることが好ましい。
また、上記構成により、メンテナンス時に成膜室内を大気にふれることなくクリーニング
することが可能となる。また、成膜室には、マスクのみを簡便にプラズマクリーニングす
る手段と、チャンバー全体を強力にプラズマクリーニングする手段とを両方備えておくこ
とが好ましい。
【0024】
また、上記蒸着装置において、蒸着源ホルダは、図9にその一例を示すが、容器(代表
的にはルツボ)801と、容器の外側に均熱部材を介して配設されたヒータと、このヒー
タの外側に設けられた断熱層と、これらを収納した外筒(外枠802)と、外筒の外側(
または内側)に旋回された冷却パイプ(冷却水810を流す管)と、ルツボの開口部を含
む外筒の開口部を開閉する蒸着シャッターと、膜厚センサーから構成されている。また、
容器801と外枠802との間に隙間が空かないようにシリコーン樹脂803を充填して
もよい。また、容器801内部にフィルターを設けることによって、ある一定(フィルタ
ーの目)以上の大きさを有する昇華された材料は、容器内に設けられたフィルター305
を通過することができず、容器内へ戻り、再度昇華される。このようなフィルターを設け
る構成の容器により、大きさの揃った蒸着材料が蒸着するため、成膜速度の制御や、均一
な膜厚を得ることができ、均一でむらのない蒸着を行うことができる。もちろん、均一で
むらのない蒸着が可能の場合は、必ずしもフィルターを設ける必要はない。なお、容器の
形状は図9に限定されるものではない。また、容器とは、耐熱性金属(Tiなど)、BN
の焼結体、BNとAlNの複合焼結体、石英、またはグラファイトなどの材料で形成され
た、高温、高圧、減圧に耐えうるものとなっている。
【0025】
また、一つの成膜室には、複数の蒸着源ホルダを設けてもよく、本明細書で開示する発
明の構成は、
ロード室、該ロード室に連結された搬送室、及び該搬送室に連結された複数の成膜室と
、該成膜室に連結された設置室を有する製造装置であって、
前記複数の成膜室は、前記成膜室内を真空にする第1の真空排気処理室と連結され、マ
スクと基板の位置あわせを行うアライメント手段と、基板保持手段と、矩形である複数の
蒸着源ホルダと、前記蒸着源ホルダをそれぞれ移動させる手段と、
前記蒸着源ホルダには長手方向に配置された蒸着材料が封入された容器と、前記容器を
加熱する手段と、
前記設置室は、前記設置室内を真空にする第2の真空排気処理室と連結され、前記設置室
には容器を加熱する手段と、前記成膜室内の前記蒸着源ホルダに前記容器を搬送する手段
とを有することを特徴とする製造装置である。
【0026】
また、上記構成において、前記基板保持手段は、マスクを挟んで、端子部となる領域、
切断領域、または基板端部と重なることを特徴としている。
【0027】
また、上記構成において、前記基板保持手段と前記マスクは接着または溶着されている
ことを特徴としている。
【0028】
また、上記構成において、前記蒸着源ホルダを移動させる手段は前記蒸着源ホルダをあ
るピッチでX軸方向に移動させ、且つ、あるピッチでY軸方向に移動させる機構を有して
いることを特徴とする製造装置。
【0029】
また、上記構成において、矩形である蒸着源ホルダには等間隔で複数の容器が配置され
ていることを特徴としている。
【0030】
また、複数の容器を並べるのではなく、蒸着ホルダの矩形形状に合わせて容器自体を細
長い形状としてもよい。
【0031】
図1では1列に並べた例(1×7)を示しているが例えば、2列に複数のルツボを並べ
てもよい。なお、複数の蒸着源ホルダが移動を開始するタイミングは、前の蒸着源ホルダ
が停止した後でもよいし、停止する前であってもよい。例えば、蒸着ホルダAにホール輸
送性を有する有機材料をセットし、蒸着ホルダBに発光層となる有機材料をセットし、蒸
着ホルダCに電子輸送性を有する有機材料をセットし、蒸着ホルダDに陰極バッファとな
る材料をセットすれば、同一チャンバー内でこれらの材料層を連続的に積層することがで
き、生産性を向上することができる。また、蒸着された膜が固化する前に、次の蒸着源ホ
ルダの移動を開始する場合、積層構造を有するEL層において、各膜との界面に蒸着材料
が混合された領域(混合領域)を形成することができる。
【0032】
また、基板と蒸着源ホルダとが相対的に移動することにより、基板と蒸着源ホルダとの
距離を長く設ける必要なく装置の小型化を達成できる。また、蒸着装置が小型となるため
、昇華した蒸着材料が成膜室内の内壁、または防着シールドへ付着することが低減され、
蒸着材料を無駄なく利用することができる。さらに本発明の蒸着方法において、基板を回
転させる必要がないため、大面積基板に対応可能な蒸着装置を提供することができる。ま
た、蒸着源ホルダが基板に対してX軸方向及びY軸方向に移動することにより、蒸着膜を
均一に成膜することが可能となる。また、蒸着源ホルダが移動するため、蒸着マスクがほ
とんど加熱されず、熱によるマスクの変形が引き起こす成膜不良なども抑えることができ
る。
【0033】
また、図5に示すように、矩形の蒸着ホルダの長手方向を基板の端面(即ち、X方向ま
たはY方向)に斜めにしたまま、X方向またはY方向に移動させてもよく、他の発明の構
成は、
ロード室、該ロード室に連結された搬送室、及び該搬送室に連結された複数の成膜室と
、該成膜室に連結された設置室を有する製造装置であって、
前記複数の成膜室は、前記成膜室内を真空にする真空排気処理室と連結され、マスクと
基板の位置あわせを行うアライメント手段と、矩形である蒸着源ホルダと、前記蒸着源ホ
ルダを移動させる手段と、
前記蒸着源ホルダには長手方向に配置された蒸着材料が封入された容器と、前記容器を
加熱する手段と、を有し、
前記移動させる手段は、基板の一辺に対して長手方向を斜めにした矩形の蒸着源ホルダを
基板のX方向またはY方向に移動させることを特徴とする製造装置である。
【0034】
なお、上記構成において、蒸着ホルダの長手方向と、蒸着ホルダの移動方向は、ある角度
Z(0°<Z<90°)を成す。
【0035】
また、基板を矩形の蒸着ホルダの長手方向に対して斜めにセットし、蒸着ホルダをX方向
またはY方向に移動させてもよく、他の発明の構成は、
ロード室、該ロード室に連結された搬送室、及び該搬送室に連結された複数の成膜室と
、該成膜室に連結された設置室を有する製造装置であって、
前記複数の成膜室は、前記成膜室内を真空にする真空排気処理室と連結され、マスクと
基板の位置あわせを行うアライメント手段と、矩形である蒸着源ホルダと、前記蒸着源ホ
ルダを移動させる手段と、
前記蒸着源ホルダには長手方向に配置された蒸着材料が封入された容器と、前記容器を
加熱する手段と、を有し、
前記矩形の蒸着ホルダの移動する方向に対して基板の一辺が斜めになるよう設置させるこ
とを特徴とする製造装置である。
【0036】
上記構成の場合、基板だけでなく、マスクや基板ホルダも蒸着ホルダの長手方向に対し
て斜めに設置される。なお、蒸着ホルダの長手方向と、蒸着ホルダの移動方向は、90°
を成す。
【0037】
また、アクティブマトリクス型の発光装置を作製する工程において、TFTを作製する
際に使用するレーザー光の走査方向と、蒸着ホルダの移動方向を異ならせることが好まし
く、発光装置の作製方法に関する発明の構成は、
TFTが設けられた基板に対向して配置した蒸着源から有機化合物を含む材料を蒸着させ
て、前記基板上に設けられた第1の電極上に有機化合物を含む膜を形成し、該有機化合物
を含む膜上に第2の電極を形成する発光装置の作製方法であって、
絶縁表面を有する基板上に半導体膜を形成する工程と、
前記半導体膜にレーザー光を走査して照射する工程と、
前記半導体膜を活性層とするTFTを形成する工程と、
前記TFTに接続する第1の電極を形成する工程と、
前記レーザー光の走査方向とは異なる方向に矩形の蒸着源ホルダを移動させて前記第1
の電極上に有機化合物を含む膜を形成する工程と、
該有機化合物を含む膜上に第2の電極を形成する工程とを有することを特徴とする発光装
置の作製方法である。
【0038】
また、レーザー光の走査方向に対して垂直な方向と、蒸着ホルダの移動方向を異ならせ
ることが好ましく、他の発明の構成は、
TFTおよび第1の電極が設けられた基板に対向して配置した蒸着源から有機化合物を含
む材料を蒸着させて、前記第1の電極上に有機化合物を含む膜を形成し、該有機化合物を
含む膜上に第2の電極を形成する発光装置の作製方法であって、
絶縁表面を有する基板上に半導体膜を形成する工程と、
前記半導体膜にレーザー光を走査して照射する工程と、
前記半導体膜を活性層とするTFTを形成する工程と、
前記TFTに接続する第1の電極を形成する工程と、
前記レーザー光の走査方向に対して垂直な方向とは異なる方向に矩形の蒸着源ホルダを
移動させて前記第1の電極上に有機化合物を含む膜を形成する工程と、
該有機化合物を含む膜上に第2の電極を形成する工程とを有することを特徴とする発光装
置の作製方法である。
【0039】
また、上記構成において、前記レーザー光は、連続発振またはパルス発振のYAGレー
ザ、YVO4レーザ、YLFレーザ、YAlO3レーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、ア
レキサンドライドレーザ、Ti:サファイアレーザから選ばれた一種または複数種からの
レーザー光である。もしくは、前記レーザー光は連続発振またはパルス発振のエキシマレ
ーザ、Arレーザ、Krレーザから選ばれた一種または複数種からのレーザー光である。
【0040】
また、蒸着させるEL材料や金属材料に対して、酸素や水等の不純物が混入する恐れのあ
る主な過程を挙げた場合、蒸着前にEL材料を成膜室にセットする過程、蒸着過程などが
考えられる。
【0041】
また、通常、EL材料を保存する容器は、褐色のガラス瓶に入れられ、プラスチック製
の蓋(キャップ)で閉められている。このEL材料を保存する容器の密閉度が不十分であ
ることも考えられる。
【0042】
従来、蒸着法により成膜を行う際には、容器(ガラス瓶)に入れられた蒸発材料を所定
の量取りだし、蒸着装置内での被膜形成物に対向させた位置に設置された容器(代表的に
はルツボ、蒸着ボート)に移しかえているが、この移しかえ作業において不純物が混入す
る恐れがある。すなわち、EL素子の劣化原因の一つである酸素や水及びその他の不純物
が混入する可能性がある。
【0043】
ガラス瓶から容器に移しかえる際には、例えば、蒸着装置にグローブなどが備えられた
前処理室内で人間の手で行うことが考えられる。しかし、前処理室にグローブを備えた場
合、真空にすることができず、大気圧で作業を行うこととなり、たとえ窒素雰囲気で行う
としても前処理室内の水分や酸素を極力低減することは困難であった。ロボットを使用す
ることも考えられるが、蒸発材料は粉状であるので、移しかえするロボットを作製するこ
とは困難である。従って、下部電極上にEL層を形成する工程から上部電極形成工程まで
の工程を全自動化し、不純物混入を避けることが可能な一貫したクローズドシステムとす
ることを困難していた。
【0044】
そこで、本発明では、EL材料を保存する容器として従来の容器、代表的には褐色のガ
ラス瓶等を使用せず、蒸着装置に設置される予定の容器にEL材料や金属材料を真空封止
して直接収納し、搬送後に蒸着を行う製造システムとし、高純度な蒸着材料への不純物混
入防止を実現するものである。また、EL材料の蒸着材料を直接収納する際、得られた蒸
着材料を分けて収納するのではなく、蒸着装置に設置される予定の容器(ルツボ)内に直
接昇華精製を行ってもよい。本発明により、今後のさらなる蒸着材料の超高純度化への対
応を可能とする。また、蒸着装置に設置される予定の容器に金属材料を直接収納し、加熱
抵抗により蒸着を行ってもよい。
【0045】
搬送する容器の形態について図8(A)を用いて具体的に説明する。搬送に用いる上部
(721a)と下部(721b)に分かれる第2の容器は、第2の容器の上部に設けられ
た第1の容器を固定するための固定手段706と、固定手段に加圧するためのバネ705
と、第2の容器の下部に設けられた第2の容器を減圧保持するためガス経路となるガス導
入口708と、上部容器721aと下部容器721bとを固定するOリングと、留め具7
02と有している。この第2の容器内には、精製された蒸着材料が封入された第1の容器
701が設置されている。なお、第2の容器はステンレスを含む材料で形成され、第1の
容器701はチタンを有する材料で形成するとよい。
【0046】
材料メーカーにおいて、第1の容器701に精製した蒸着材料を封入する。そして、O
リングを介して第2の上部721aと下部721bとを合わせ、留め具702で上部容器
721aと下部容器721bとを固定し、第2の容器内に第1の容器701を密閉する。
その後、ガス導入口708を介して第2の容器内を減圧し、更に窒素雰囲気に置換し、バ
ネ705を調節して固定手段706により第1の容器701を固定する。なお、第2の容
器内に乾燥剤を設置してもよい。このように第2の容器内を真空や減圧、窒素雰囲気に保
持すると、蒸着材料へのわずかな酸素や水の付着でさえも防止することができる。
【0047】
この状態で発光装置メーカーへ搬送され、第1の容器701を蒸着室へ設置する。その
後、加熱により蒸着材料は昇華し、蒸着膜の成膜が行われる。
【0048】
また、その他の部品、例えば膜厚モニタ(水晶振動子など)、シャッターなども同様に
して大気にふれることなく搬送し、蒸着装置内に設置することが好ましい。
【0049】
上記蒸着装置に設置する容器に蒸着材料を直接収納する作業は、蒸着装置を使用する発光
装置メーカーが蒸着材料を作製、または販売している材料メーカーに依頼することが望ま
しい。発光装置メーカーと材料メーカーが連携して不純物混入の低減に努めることによっ
て、材料メーカーで得られる極めて高い純度のEL材料を維持し、そのまま純度を落とす
ことなく発光装置メーカーで蒸着を行うことができる。
【0050】
また、いくら高純度なEL材料を材料メーカーで提供されても、発光装置メーカーで従来
の移しかえの作業があるかぎり不純物混入の恐れが存在し、EL材料の純度を維持すること
ができず、純度に限界があった。
【0051】
上記課題を踏まえ、本発明では、大気にふれることなく容器内に真空封止されたルツボ
(蒸着材料が充填されている)を容器から取り出し、蒸着ホルダにルツボをセットするた
めの設置室が成膜室に連結されており、大気にふれることなく設置室から搬送ロボットで
ルツボを搬送する。設置室にも真空排気手段を設け、さらにルツボを加熱する手段も設け
ることが好ましい。
【0052】
図8(A)および図8(B)を用いて、第2の容器721a、721bに密閉されて搬
送される第1の容器701を成膜室へ設置する機構を説明する。
【0053】
図8(A)は、第1の容器が収納された第2の容器721a、721bを載せる回転台
707と、第1の容器を搬送するための搬送機構と、持ち上げ機構711とを有する設置
室705の断面が記載されている。また、設置室は成膜室と隣り合うように配置され、ガ
ス導入口を介して雰囲気を制御する手段により設置室の雰囲気を制御することが可能であ
る。なお、本発明の搬送機構は、図8(B)に記載されるように第1の容器701の上方
から、該第1の容器を挟んで(つまんで)搬送する構成に限定されるものではなく、第1
の容器の側面を挟んで搬送する構成でも構わない。
【0054】
このような設置室内に、留め具702を外した状態で第2の容器を回転設置台713上
に配置する。内部は真空状態であるので留め具702を外しても取れない。次いで、雰囲
気を制御する手段により、設置室内を減圧状態とする。設置室内の圧力と第2の容器内の
圧力とが等しくなるとき、容易に第2の容器は開封できる状態となる。そして持ち上げ機
構711により第2の容器の上部721aを取り外し、回転設置台713が回転軸712
を軸として回転することによって第2の容器の下部および第1の容器を移動させる。そし
て、第1の容器701を搬送機構により蒸着室へ搬送して第1の容器701を蒸着源ホル
ダ(図示しない)に設置する。
【0055】
その後、蒸着源ホルダに設けられた加熱手段により、蒸着材料は昇華され、成膜が開始
される。この成膜時に、蒸着源ホルダに設けられたシャッター(図示しない)が開くと、
昇華した蒸着材料は基板の方向へ飛散し、基板に蒸着され、発光層(正孔輸送層、正孔注
入層、電子輸送層、電子注入層を含む)が形成される。
【0056】
そして、蒸着が完了した後、蒸着源ホルダから第1の容器を持ち上げ、設置室に搬送し
て、回転台に設置された第2の容器の下部容器(図示しない)に載せられ、上部容器72
1aにより密閉される。このとき、第1の容器と、上部容器と、下部容器とは、搬送され
た組み合わせで密閉することが好ましい。この状態で、設置室を大気圧とし、第2の容器
を設置室から取り出し、留め具702を固定して材料メーカーへ搬送される。
【0057】
また、成膜室に連結した前処理室(設置室)にロボットを備え、蒸着源ごと成膜室から
前処理室に移動させ、前処理室で蒸着源に蒸着材料をセットしてもよい。即ち、蒸着源が
前処理室まで移動する製造装置としてもよい。こうすることによって、成膜室の洗浄度を
保ったまま、蒸着源をセットすることができる。
【0058】
また、本発明は、図10に示すように、複数の成膜室を備えたマルチチャンバー型の製造
装置において、第1の基板に蒸着する第1の成膜室と、第2の基板に蒸着する第2の成膜
室とを有し、それぞれの成膜室では複数の有機化合物層を並行(並列)して積層すること
によって基板1枚当りの処理時間を短縮してもよい。即ち、搬送室から第1の基板を第1
の成膜室に搬入した後、第1の基板上に蒸着を行っている間に、搬送室から第2の基板を
第2の成膜室に搬入して第2の基板上に蒸着を行う。
【0059】
図10においては、搬送室1004aに成膜室が6つ設けられているため、6枚の基板
をそれぞれの成膜室に搬入し、順次、並行して蒸着を行うことが可能である。また、メン
テナンスしている間でも製造ラインを一時停止することなく、他の成膜室で順次、蒸着を
行うことができる。
【0060】
また、本発明である有機化合物を含む層を形成する蒸着の手順の一例としては、まず、
設置室にルツボを真空封止している容器をセットし、設置室内を真空排気した後、容器か
らルツボを取り出す。次いで、加熱を行いルツボの温度Tまで上げておくが、真空度が蒸
着時の真空度よりも低くして設置室で蒸着が開始しないようにすることで制御する。次い
で、加熱されたルツボを設置室から蒸着室へ搬送する。蒸着室にある蒸着ホルダは予め加
熱されており、ルツボをセットし、真空度をさらに上げることで蒸着が開始される。蒸着
ホルダはX方向またはY方向に移動することができ、固定されている基板に対して均一に
成膜することができる。予め、加熱しておくことでルツボの加熱に要する時間が短縮でき
る。
【発明の効果】
【0061】
本発明により、基板を回転させる必要がないため、大面積基板に対応可能な蒸着装置を提
供することができる。また、大面積基板を用いても均一な膜厚を得ることのできる蒸着装
置を提供することができる。
【0062】
また、本発明により、基板と蒸着源ホルダとの距離を短くでき、蒸着装置の小型化を達
成することができる。そして、蒸着装置が小型となるため、昇華した蒸着材料が成膜室内
の内壁、または防着シールドへ付着することが低減され、蒸着材料を有効利用することが
できる。
【0063】
また、本発明は、蒸着処理を行う複数の成膜室が連続して配置された製造装置を提供で
きる。このように、複数の成膜室において並列処理を行うと、発光装置のスループットが
向上される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の蒸着装置の上面模式図である。(実施の形態1)
【図2】基板付近を拡大した断面模式図である。(実施の形態1)
【図3】基板保持手段の構成を示す図である。(実施の形態2)
【図4】本発明の蒸着装置の上面および断面模式図である。(実施の形態3)
【図5】蒸着ホルダの移動方向を示す図である。(実施の形態4)
【図6】蒸着マスクを示す図である。(実施の形態1)
【図7】蒸着マスクを示す図である。(実施の形態1)
【図8】搬送する容器の形態を示す図である。
【図9】蒸着源ホルダを示す図である。
【図10】製造装置を示す図である。(実施例1)
【図11】素子構造を説明する図である。(実施例2)
【図12】発光装置を示す図である。(実施例3)
【図13】発光装置を示す図である。(実施例3)
【図14】TFTと第1の電極との接続、隔壁形状を説明する図である。(実施例4)
【図15】電子機器の一例を示す図。(実施例5)
【図16】電子機器の一例を示す図。(実施例5)
【図17】モジュールを示す図である。(実施例6)
【図18】ブロック図を示す図である。(実施例6)
【図19】蒸着ホルダの移動方向を示す図である。(実施例7)
【図20】発光装置の回路図および断面を示す図である。(実施例8)
【図21】発光装置の断面を示す図である。(実施例9)
【発明を実施するための形態】
【0065】
(実施の形態1)
本発明の蒸着装置の上面模式図を図1に示す。なお、図1は蒸着途中のものを示す。
【0066】
図1において、成膜室11は、基板保持手段12とが設置された蒸着源ホルダ17と、
蒸着源ホルダを移動させる手段(図示しない)と、減圧雰囲気にする手段(真空排気手段
)とを有する。そして、成膜室11には、大型基板13と、蒸着マスク(図示しない)と
が設置される。
【0067】
また、基板保持手段12は、金属からなる蒸着マスクを重力で固定しており、マスク上
に配置される基板13も固定される。なお、基板保持手段12に真空吸着機構を設けてマ
スクを真空吸着して固定してもよい。ここでは、蒸着マスクが基板保持手段12と溶着ま
たは接着している例を示したが、蒸着マスクと基板保持手段とが固着してしまうことを防
ぐため、互いに接する箇所に絶縁物を設けたり、点接触となるように基板保持手段の形状
を適宜変更してもよい。また、ここでは、基板保持手段12で基板と蒸着マスクの両方を
載せる構成とした例を示したが、基板を保持する手段と、蒸着マスクを保持する手段とを
別々に設けてもよい。なお、基板保持手段は図示していないが、成膜室に固定されている

【0068】
また、基板保持手段12と重なる領域には蒸着を行うことができないため、基板保持手
段12は、多面取りする際に切断領域(スクライブラインとなる領域)に設けることが好
ましい。或いは、基板保持手段12は、パネル端子部となる領域と重なるように設けても
よい。図1に示すように基板保持手段12は、上方から見ると、1枚の基板13に点線で
示した4つのパネルを形成する例を示しているため、十文字としているが、形状は特に限
定されず、非対称な形状としてもよい。なお、図示していないが、基板保持手段12は成
膜室に固定されている。なお、図1では簡略化のため、マスクを図示していない。
【0069】
また、CCDカメラ(図示しない)を用いて蒸着マスクや基板のアライメントを確認すると
よい。基板と蒸着マスクにそれぞれアライメントマーカーを設けておき、位置制御を行え
ばよい。蒸着源ホルダ17には蒸着材料18が封入された容器が設置されている。この成
膜室11は、減圧雰囲気にする手段により、真空度が5×10-3Torr(0.665P
a)以下、好ましくは10-4〜10-6Paまで真空排気される。
【0070】
また蒸着の際、抵抗加熱により、蒸着材料は設置室33bで予め昇華(気化)させ、蒸
着速度が安定したら、シャッター30を開き、蒸着源ホルダ17を成膜室11内部に移動
させ、さらに基板の下方を通過させる。蒸発した蒸発材料は、上方に飛散し、蒸着マスク
に設けられた開口部を通って基板13に選択的に蒸着される。なお、マイクロコンピュー
タにより成膜速度、蒸着源ホルダの移動速度、及びシャッターの開閉を制御できるように
しておくと良い。この蒸着源ホルダの移動速度により蒸着速度を制御することが可能とな
る。また、蒸着ホルダに成膜をコントロールするためのシャッターを別途設けてもよい。
【0071】
また、図1では複数の蒸着ホルダ17が設置室33b、33cに待機できるようになっ
ており、順次移動させて、複数種類の膜を積層することができる。
【0072】
また図示しないが、蒸着ホルダに設けられた膜厚モニタ、例えば水晶振動子により蒸着
膜の膜厚を測定しながら蒸着することができる。この水晶振動子を用いて蒸着膜の膜厚を
測定する場合、水晶振動子に蒸着された膜の質量変化を、共振周波数の変化として測定す
ることができる。
【0073】
図1に示す蒸着装置においては、蒸着の際、基板13と蒸着源ホルダ17との間隔距離
dを代表的には30cm以下、好ましくは20cm以下、さらに好ましくは5cm〜15
cmに狭め、蒸着材料の利用効率及びスループットを格段に向上させている。
【0074】
また、蒸着の際、基板付近を拡大した断面模式図を図2に示す。図2では6個の容器(
ルツボ)202を備えた矩形形状の蒸着ホルダ204を示している。6個の容器202に
は適宜、膜厚モニタ201を設ける。傾き調節ネジ205は、膜厚モニタ201と同様に
適宜設けられ、ヒーター203ごと基板200に対して傾けることができる。ここでは加
熱手段としてヒーター203を用いており、抵抗加熱法で蒸着を行う。
【0075】
また、R、G、Bの発光が得られる有機化合物を含む層をそれぞれ選択的に形成してフ
ルカラーの発光素子を得る場合、3枚の蒸着マスクを用いて選択的に成膜を行う。発光効
率の異なる赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子のそれぞれの発光面積を変えた例
を図6に示す。また、発光色によって正孔輸送層または正孔注入層、電子輸送層または電
子注入層の膜厚をそれぞれ変えて適宜調節することが好ましい。ここでは、赤色発光面積
>青色発光面積>緑色発光面積とした例を示したが、特に限定されない。
【0076】
図6(A)にR用の蒸着マスク、図6(B)にB用の蒸着マスク、図6(C)にG用の蒸
着マスクを示す。
【0077】
第1成膜室でR用の蒸着マスク(図6(A))を用い、正孔輸送層または正孔注入層、
発光層(R)、電子輸送層または電子注入層を順次積層し、第2成膜室でG用の蒸着マス
ク(図6(C))を用い、正孔輸送層または正孔注入層、発光層(G)、電子輸送層また
は電子注入層を順次積層し、第3成膜室でB用の蒸着マスク(図6(B))を用い、正孔
輸送層または正孔注入層、発光層(B)、電子輸送層または電子注入層を順次積層した後
、陰極を形成すればフルカラーの発光素子を得ることができる。こうして得られた発光領
域の一部(8画素分の発光領域)を 図6(D)に示す。
【0078】
また、赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子のそれぞれの発光面積を同一とした
例を図7に示す。発光面積を同一とした場合は、それぞれのマスクにおける開口形状が同
一となり、位置アライメントが異なるだけである。従って、同一のガラスマスクを基にし
てR用の蒸着マスク、G用の蒸着マスク、B用の蒸着マスクを形成することができるため
、コスト削減することができる。特に大型基板用の蒸着マスクに関する設計コスト削減を
行うことができ、さらに図7(C)に示すように4枚のマスクをアライメント精度よく組
み合わせて1枚のマスクとすると大幅なコスト削減を行うことができる。
【0079】
図7(A)に示した蒸着マスクをR用、G用、B用に3枚用意する。ただし、それぞれ開
口部の位置のみが異なっている。これらのマスクを用い、順次積層して得られた発光領域
の一部(8画素分の発光領域)を 図7(B)に示す。
【0080】
また、基板200はCCDなどによってマスク207a、207bおよび基板保持手段
と位置あわせを行う。ここでは多面取りの例を示しており、大型基板にあわせた大型サイ
ズのマスクは高価であるため、複数の小さいマスクを精度よく一体化したマスクとしてい
る。例えば、大型基板(600cm×720cm)に4つのパネルを形成しようとする場
合には、図7(C)に示すように4枚のマスク(300cm×360cm)を一体化した
マスクを用いればよい。4枚をアライメントして互いを接着させることによってマスク設
計に要するコストを削減することができる。複数のマスクを一体化させるために基板保持
手段と溶着または接着して固定してもよい。また、スライド式のシャッター(図示しない
)を設け、蒸着を制御してもよい。例えば、蒸着ホルダが移動して基板201の下方に蒸
着ホルダがない場合には、シャッターで閉じれば蒸着をストップさせることができる。こ
のような蒸着源ホルダ204を移動機構206(代表的には2軸ステージ)により二次元
平面で成膜室内をX方向またはY方向に移動させる。また、図2では6個の容器を備えた
蒸着ホルダを例に説明したが、特に限定されず、6個以上の容器を備えた蒸着ホルダとし
てもよい。
【0081】
以上のような蒸着源ホルダが移動する機構を有する成膜室により、基板と蒸着源ホルダ
との距離を長くする必要がなく、蒸着膜を均一に成膜することが可能となる。
【0082】
よって本発明により、基板と蒸着源ホルダとの距離を短くでき、蒸着装置の小型化を達
成することができる。そして、蒸着装置が小型となるため、昇華した蒸着材料が成膜室内
の内壁、または防着シールドへ付着することが低減され、蒸着材料を有効に利用すること
ができる。さらに、本発明の蒸着方法において、基板を回転させる必要がないため、大面
積基板に対応可能な蒸着装置を提供することができる。
【0083】
また、このように基板と蒸着源ホルダとの距離を短くすることにより、蒸着膜を薄く制
御良く蒸着することができる。
【0084】
また、蒸着ホルダへのルツボのセットは、設置室33aに設けられた回転台35上に設
置されたルツボを搬送機構31で設置室33bに搬送することによって行われる。本発明
では、大気にふれることなく容器内に真空封止されたルツボ(蒸着材料が充填されている
)を容器から取り出し、蒸着ホルダにルツボをセットするための設置室が成膜室に連結さ
れており、大気にふれることなく設置室から搬送ロボットでルツボを搬送する。設置室に
も真空排気手段を設け、さらにルツボを加熱する手段も設けることが好ましい。
【0085】
図8(A)および図8(B)を用いて、第2の容器721a、721bに密閉されて搬
送される第1の容器701を成膜室へ設置する機構を説明する。
【0086】
図8(A)は、第1の容器が収納された第2の容器721a、721bを載せる回転台
707と、第1の容器を搬送するための搬送機構と、持ち上げ機構711とを有する設置
室705の断面が記載されている。また、設置室は成膜室と隣り合うように配置され、ガ
ス導入口を介して雰囲気を制御する手段により設置室の雰囲気を制御することが可能であ
る。なお、本発明の搬送機構は、図8(B)に記載されるように第1の容器701の上方
から、該第1の容器を挟んで(つまんで)搬送する構成に限定されるものではなく、第1
の容器の側面を挟んで搬送する構成でも構わない。
【0087】
このような設置室内に、留め具702を外した状態で第2の容器を回転設置台713上
に配置する。内部は真空状態であるので留め具702を外しても取れない。次いで、雰囲
気を制御する手段により、設置室内を減圧状態とする。設置室内の圧力と第2の容器内の
圧力とが等しくなるとき、容易に第2の容器は開封できる状態となる。そして持ち上げ機
構711により第2の容器の上部721aを取り外し、回転設置台713が回転軸712
を軸として回転することによって第2の容器の下部および第1の容器を移動させる。そし
て、第1の容器701を搬送機構により蒸着室へ搬送して第1の容器701を蒸着源ホル
ダ(図示しない)に設置する。
【0088】
その後、蒸着源ホルダに設けられた加熱手段により、蒸着材料は昇華され、成膜が開始
される。
【0089】
そして、蒸着が完了した後、蒸着源ホルダから第1の容器を持ち上げ、設置室に搬送し
て、回転台35に設置された第2の容器の下部容器(図示しない)に載せられ、上部容器
721aにより密閉される。このとき、第1の容器と、上部容器と、下部容器とは、搬送
された組み合わせで密閉することが好ましい。この状態で、設置室33aを大気圧とし、
第2の容器を設置室から取り出し、留め具702を固定して材料メーカーへ搬送される。
【0090】
(実施の形態2)
次に本発明の基板保持手段の構成について図3を用いて詳述する。
【0091】
図3(A1)には、基板303とマスク302が載せられた基板保持手段301の斜視
図を示しており、図3(A2)は基板保持手段301のみを示している。
【0092】
また、図3(A3)は基板303とマスク302が載せられた基板保持手段の断面図を示
しており、高さhは10mm〜50mm、幅wは1mm〜5mmの金属板(代表的にはTi)で構成す
る。
【0093】
この基板保持手段301によって、基板のたわみ、またはマスクのたわみを抑えること
ができる。
【0094】
また、基板保持手段301の形状は、図3(A1)〜(A3)に限定されるものではなく
、例えば、図3(B2)に示すような形状としてもよい。
【0095】
図3(B2)は、基板の端部を支える部分が設けられた例であり、基板保持手段305
によって基板303のたわみ、またはマスク302のたわみを抑えるものである。なお、
図3(B2)は基板保持手段305のみを示している。また、図3(B1)には、基板3
03とマスク302が載せられた基板保持手段305の斜視図を示している。
【0096】
また、上記基板保持手段形状に代えて、図3(C2)に示すような形状としてもよい。
図3(C2)は、基板の端部を支えるマスク枠306が設けられた例であり、基板保持手
段307とマスク枠306によって基板303のたわみ、またはマスク302のたわみを
抑えるものである。この場合、別々の材料で形成してもよい。また、マスク枠306には
図3(C3)に示すようにマスク302の位置を固定する窪みを設けている。なお、基板
保持手段307とマスク枠306は一体化させてもよい。
【0097】
なお、図3(C2)はマスク枠306と基板保持手段307のみを示している。また、図
3(C1)には、基板303とマスク302が載せられた基板保持手段305およびマス
ク枠306の斜視図を示している。
【0098】
また、本実施の形態は実施の形態1と自由に組み合わせることができる。
【0099】
(実施の形態3)
実施の形態1では複数の蒸着ホルダを備えた成膜室の例を示したが、ここでは、一つの
蒸着ホルダのみを備えた例を図4に示す。
【0100】
本発明の蒸着装置を図4に示す。図4(A)はY方向断面図(A−A’点線における断面)
、図4(B)は上面図である。なお、図4は蒸着途中のものを示す。
【0101】
図4(A)において、成膜室411は、基板保持手段412と、蒸着シャッター415
が設置された蒸着源ホルダ417と、蒸着源ホルダの移動機構420と、減圧雰囲気にす
る手段とを有する。また、成膜室411には、大型基板413と、蒸着マスク414とが
設置される。また、基板保持手段412は、金属からなる蒸着マスク314を重力で固定
しており、マスク上に配置される基板413も固定される。なお、基板保持手段412に
真空吸着機構を設けてマスクを真空吸着して固定してもよい。
【0102】
また、マスクに付着した蒸着物をクリーニングするため、プラズマ発生手段により、成
膜室内にプラズマを発生させ、マスクに付着した蒸着物を気化させて成膜室外に排気する
ことが好ましい。そのため、基板保持手段412に高周波電源が接続されている。以上に
より、基板保持手段412は導電性材料(Tiなど)で形成することが好ましい。また、プ
ラズマを発生させる場合、電界集中を防ぐため、メタルマスクを基板保持手段412から
電気的に浮かした状態とすることが好ましい。
【0103】
また、蒸着源ホルダ417の移動ピッチも絶縁物(土手、隔壁とも呼ばれる)410の間
隔に適宜、合わせればよい。なお、絶縁物410は第1の電極421の端部を覆うように
配置されている。
【0104】
以下に図4に示す装置を用いた蒸着の手順の一例を示す。
【0105】
まず、基板搬送シャッターを開け、通過させて大型基板413を成膜室411に搬入し
、位置アライメントを行って基板保持手段412および蒸着マスク414上に設置する。
大型基板413は予め、TFTや第1の電極421や絶縁物410が設けられており、フ
ェイスダウン方式で搬入される。なお、成膜室411は、常に減圧下、例えば真空度10
-5〜10-6Paとすることが好ましい。
【0106】
次いで、第1の容器436を内部に真空封止した第2の容器434を設置室433の扉
から導入して回転台435上に搭載する。
【0107】
次いで、真空排気手段により設置室433の内部を減圧し、第2の容器434内部の真
空度と同じまたはそれ以上にする。次いで、第2の容器434のみを持ち上げ機構432
で持ち上げることによって、第1の容器436を露呈させる。次いで、成膜室内の真空度
と設置室433の真空度を合わせ、シャッター430を開けた後、第1の容器436を搬
送機構431で搬送し、蒸着ホルダ417にセットする。なお、搬送機構431で搬送す
る前に、設置室433で予め第1の容器を加熱してもよい。必要な数の第1の容器を蒸着
ホルダ417にセットしたら、シャッター430を閉め、抵抗加熱法により蒸着を開始す
る。
【0108】
蒸着を行う際、基板全面に成膜されるように蒸着ホルダ417を移動機構420でX方
向またはY方向に移動させる。
【0109】
また、異なる材料を積層する場合には、蒸着が済んだ第1の容器を回転台に戻し、異な
る材料が封入された第1の容器を蒸着ホルダにセットし、再び移動機構420でX方向ま
たはY方向に移動させればよい。
【0110】
蒸着終了後、基板413は基板搬送シャッターを開け、通過させて搬出する。その後、
搬送機構431で第1の容器を回転台に戻す。次いで、必要があれば、蒸着マスクや基板
保持手段をクリーニングするためにAr、H、F、NF3、またはOから選ばれた一種ま
たは複数種のガスを導入し、高周波電源により蒸着マスクに電圧を印加し、プラズマを発
生させる。
【0111】
また、本実施の形態は、実施の形態1または実施の形態2と自由に組み合わせることが
できる。
【0112】
(実施の形態4)
ここでは、蒸着ホルダの長手方向の向きを基板の一辺に対して斜めにした例と、基板の
向きを蒸着ホルダの移動方向に対して斜めにした例を図5を用いて説明する。
【0113】
ルツボを複数並べた蒸着ホルダの場合、密に配置してもルツボと隣り合うルツボの間隔に
は限界がある。隣り合うルツボの間にはルツボをはめ込み固定する外枠(ヒータや冷却手
段内蔵)、シャッター、膜厚モニタなどが設けられる。蒸着速度や蒸着ホルダの移動速度
や蒸着ホルダと基板との間隔などにもよるが、蒸着ホルダの長手方向に対して垂直な方向
に移動させると、間隔が開いている箇所にはあまり成膜されず膜厚が不均一となりやすい
。蒸着ホルダの移動速度が速く、且つ、基板と蒸着源との間隔が狭い場合に顕著に現れや
すい。また、その不均一な膜厚により発光領域がムラになり、例えば縦スジまたは横スジ
となりやすい。
【0114】
そこで本発明では、図5(A)にその一例を示したように、蒸着ホルダ517の長手方
向を基板513のX方向(またはY方向)とある角度Z(0°<Z<90°)を成す方向
に向けて、蒸着ホルダをY方向に移動させて蒸着を行う。例えば、蒸着ホルダの長手方向
を基板のX方向に対してZ=45度とし、蒸着ホルダをY方向に移動させながら蒸着した
場合、ルツボと隣り合うルツボの間隔を1とすると、基板のX方向に対して1/√2の間
隔で蒸着されることになる。従って、蒸着される箇所の間隔(X方向における間隔)が狭
まり、画素領域において膜厚を均一にすることができる。ただし、この場合、蒸着される
領域の幅が狭まるため、蒸着しようとする領域に合わせて長めのサイズとし、蒸着ホルダ
の長手方向の長さ及びルツボの個数を設定すればよい。
【0115】
また、蒸着ホルダの長手方向を基板のX方向(またはY方向)と斜めにするのではなく
、図5(B)にその一例を示したように、基板523自体を斜めに設置して蒸着ホルダ5
27を経路522に沿って移動させてもよい。この場合、基板の対角線における長さより
も蒸着ホルダの長手方向の長さを長くすることで基板全面に一括で成膜することができる
。なお、蒸着ホルダの長手方向の長さが基板の一辺よりも短い場合は、数回の走査を繰り
返して成膜すればよい。また、同じ経路で蒸着ホルダを繰り返し移動させることにより同
一の薄膜を数回積層しても構わない。
【0116】
また、TFTを形成する際に線状のレーザー光(パルス発振型)を用いた場合、レーザ
ー光はX方向またはY方向に平行に走査するため、レーザー光のエネルギーがバラつくと
照射領域毎に結晶状態が異なってしまい、結果的に発光領域に縞(レーザー光の走査方向
524と垂直な方向に沿って形成される縞)が形成される恐れがある。
【0117】
例えば、非晶質構造を有するシリコン膜または結晶構造を有するシリコン膜に対して、
大気中、または酸素雰囲気中でレーザー光(XeCl:波長308nm)の照射を行い、
得られた結晶構造を有する半導体膜をTFTの活性層とする。繰り返し周波数10〜10
00Hz程度のパルスレーザー光を用い、当該レーザー光を光学系にて100〜500mJ/c
m2に集光し、90〜95%のオーバーラップ率をもって照射し、シリコン膜表面を走査さ
せればよい。
【0118】
非晶質半導体膜の結晶化に際し、大粒径に結晶を得るためには、連続発振が可能な固体レ
ーザを用い、基本波の第2高調波〜第4高調波を適用するのが好ましい。代表的には、N
d:YVO4レーザー(基本波1064nm)の第2高調波(532nm)や第3高調波(35
5nm)を適用すればよい。連続発振のレーザーを用いる場合には、出力10Wの連続発
振のYVO4レーザから射出されたレーザ光を非線形光学素子により高調波に変換する。
また、共振器の中にYVO4結晶と非線形光学素子を入れて、高調波を射出する方法もあ
る。そして、好ましくは光学系により照射面にて矩形状または楕円形状のレーザ光に成形
して、被処理体に照射する。このときのエネルギー密度は0.01〜100MW/cm2
程度(好ましくは0.1〜10MW/cm2)が必要である。そして、10〜2000c
m/s程度の速度でレーザ光に対して相対的に半導体膜を移動させて照射すればよい。
【0119】
同様に、TFTを形成する際にレーザー光(連続発振型)を用いた場合、発光領域に縞(
レーザー光の走査方向524と平行な方向に沿って形成される縞)が形成される恐れがあ
る。従って、細長い矩形形状の蒸着源ホルダの移動方向と、レーザー光の走査方向とを異
ならせ、なす角度が0°より大きく、且つ、90°未満とすることが好ましい。こうする
ことによってレーザー光による縞模様を目立たないものとすることができる。また、蒸着
ホルダに設置された容器間隔による縞や蒸着ホルダの移動速度による縞を目立たないもの
とすることができる。
【0120】
また、本実施の形態では基板を固定し、蒸着ホルダを移動した例を示したが、蒸着ホル
ダを固定し、基板を移動させる形態としてもよい。
【0121】
また、本実施の形態は、実施の形態1乃至3のいずれか一と自由に組み合わせることが
できる。
【0122】
また、上記説明では、代表的な例として陰極と陽極との間に配置する有機化合物を含む
層として、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の3層を積層する例を示したが、特に限定さ
れず、陽極上に正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層、または正孔注入層/正孔
輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層の順に積層する構造や、二層構造や単層構造で
も良い。発光層に対して蛍光性色素等をドーピングしても良い。また、発光層としては正
孔輸送性を有する発光層や電子輸送性を有する発光層などもある。また、これらの層は、
全て低分子系の材料を用いて形成しても良いし、そのうちの1層またはいくつかの層は高
分子系の材料を用いて形成しても良い。なお、本明細書において、陰極と陽極との間に設
けられる全ての層を総称して有機化合物を含む層(EL層)という。したがって、上記正
孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層は、全てEL層に含まれる。
また、有機化合物を含む層(EL層)は、シリコンなどの無機材料をも含んでいてもよい

【0123】
なお、発光素子(EL素子)は、電場を加えることで発生するルミネッセンス(Electro
Luminescence)が得られる有機化合物を含む層(以下、EL層と記す)と、陽極と、陰極
とを有する。有機化合物におけるルミネッセンスには、一重項励起状態から基底状態に戻
る際の発光(蛍光)と三重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(リン光)とがあるが
、本発明により作製される発光装置は、どちらの発光を用いた場合にも適用可能である。
【0124】
また、本発明の発光装置において、画面表示の駆動方法は特に限定されず、例えば、点順
次駆動方法や線順次駆動方法や面順次駆動方法などを用いればよい。代表的には、線順次
駆動方法とし、時分割階調駆動方法や面積階調駆動方法を適宜用いればよい。また、発光
装置のソース線に入力する映像信号は、アナログ信号であってもよいし、デジタル信号で
あってもよく、適宜、映像信号に合わせて駆動回路などを設計すればよい。
【0125】
また、本明細書中では、陰極、EL層及び陽極で形成される発光素子をEL素子といい
、これには、互いに直交するように設けられた2種類のストライプ状電極の間にEL層を
形成する方式(単純マトリクス方式)、又はTFTに接続されマトリクス状に配列された
画素電極と対向電極との間にEL層を形成する方式(アクティブマトリクス方式)の2種
類がある。
【0126】
また、結晶構造を有する半導体膜を活性層とするTFTに限らず、アモルファスシリコ
ンを活性層とするnチャネル型TFT、またはセミアモルファス半導体(以下SASとも
表記する)を活性層とするTFTを用いてもよい。
【0127】
なお、セミアモルファス半導体膜とは、微結晶半導体膜、マイクロクリスタル半導体膜と
も呼ばれ、非晶質と結晶構造(単結晶、多結晶を含む)の中間的な構造を有し、自由エネ
ルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有す
る結晶質な領域を含んでいる。また、セミアモルファス半導体膜は、少なくとも膜中の一
部の領域には、0.5〜20nmの結晶粒を含んでおり、ラマンスペクトルが520cm-1
よりも低波数側にシフトしている。また、セミアモルファス半導体膜は、X線回折ではS
i結晶格子に由来するとされる(111)、(220)の回折ピークが観測される。また
、セミアモルファス半導体膜は、未結合手(ダングリングボンド)の中和剤として水素ま
たはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。セミアモルファス半導
体膜の作製方法としては、珪化物気体をグロー放電分解(プラズマCVD)して形成する
。珪化物気体としては、SiH4、その他にもSi26、SiH2Cl2、SiHCl3、S
iCl4、SiF4などを用いることが可。この珪化物気体をH2、又は、H2とHe、Ar
、Kr、Neから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈しても良い。希釈率は2
〜1000倍の範囲。圧力は概略0.1Pa〜133Paの範囲、電源周波数は1MHz
〜120MHz、好ましくは13MHz〜60MHz。基板加熱温度は300℃以下でよ
く、好ましくは100〜250℃。膜中の不純物元素として、酸素、窒素、炭素などの大
気成分の不純物は1×1020cm-1以下とすることが望ましく、特に、酸素濃度は5×10
19/cm3以下、好ましくは1×1019/cm3以下とする。なお、セミアモルファス半導体膜を
活性層としたTFTの電界効果移動度μは、1〜10cm2/Vsecである。
【0128】
アモルファスシリコン膜またはセミアモルファスシリコン膜をTFTの活性層とするこ
とで、多結晶半導体膜を用いたTFTと比べてTFTの作製における工程数を削減するこ
とができ、その分、発光装置の歩留まりを高め、コストを抑えることができる。
【0129】
以上の構成でなる本発明について、以下に示す実施例でもってさらに詳細な説明を行う
こととする。
【実施例1】
【0130】
本実施例では、第1の電極から封止までの作製を全自動化したマルチチャンバー方式
の製造装置の例を図10に示す。
【0131】
図10は、ゲート100a〜100xと、搬送室102、1004a、108、114、
118と、受渡室105、107、111と、仕込室101と、第1成膜室1006Rと
、第2成膜室1006Gと、第3成膜室1006Bと、第4成膜室1006R’、第5成
膜室1006G’、 第5成膜室1006B’と、その他の成膜室109、110、11
2、113、132と、蒸着源を設置する設置室(図示しない)と、前処理室103a、
103bと、封止室116と、マスクストック室124と、封止基板ストック室130と
、カセット室120a、120bと、トレイ装着ステージ121と、取出室119と、を
有するマルチチャンバーの製造装置である。なお、搬送室1004aには基板104cを
搬送するための搬送機構104bが設けており、他の搬送室も同様にそれぞれ搬送機構が
設けてある。
【0132】
以下、予め陽極(第1の電極)と、該陽極の端部を覆う絶縁物(隔壁)とが設けられた
基板を図10に示す製造装置に搬入し、発光装置を作製する手順を示す。なお、アクティ
ブマトリクス型の発光装置を作製する場合、予め基板上には、陽極に接続している薄膜ト
ランジスタ(電流制御用TFT)およびその他の薄膜トランジスタ(スイッチング用TF
Tなど)が複数設けられ、薄膜トランジスタからなる駆動回路も設けられている。また、
単純マトリクス型の発光装置を作製する場合にも図10に示す製造装置で作製することが
可能である。
【0133】
まず、カセット室120aまたはカセット室120bに上記基板をセットする。基板が
大型基板(例えば300mm×360mm)である場合はカセット室120bにセットし、通常基
板(例えば、127mm×127mm)である場合には、カセット室120aにセットした後、
トレイ装着ステージ121に搬送し、トレイ(例えば300mm×360mm)に複数の基板をセ
ットする。
【0134】
カセット室にセットした基板(陽極と、該陽極の端部を覆う絶縁物とが設けられた基板
)は搬送室118に搬送する。
【0135】
また、カセット室にセットする前には、点欠陥を低減するために第1の電極(陽極)の
表面に対して界面活性剤(弱アルカリ性)を含ませた多孔質なスポンジ(代表的にはPV
A(ポリビニルアルコール)製、ナイロン製など)で洗浄して表面のゴミを除去すること
が好ましい。洗浄機構として、基板の面に平行な軸線まわりに回動して基板の面に接触す
るロールブラシ(PVA製)を有する洗浄装置を用いてもよいし、基板の面に垂直な軸線
まわりに回動しつつ基板の面に接触するディスクブラシ(PVA製)を有する洗浄装置を
用いてもよい。また、有機化合物を含む膜を形成する前に、上記基板に含まれる水分やそ
の他のガスを除去するために、脱気のためのアニールを真空中で行うことが好ましく、搬
送室118に連結されたベーク室123に搬送し、そこでアニールを行えばよい。
【0136】
次いで、基板搬送機構が設けられた搬送室118から仕込室101に搬送する。本実施例
の製造装置では、仕込室101には、基板反転機構が備わっており、基板を適宜反転させ
ることができる。仕込室101は、真空排気処理室と連結されており、真空排気した後、
不活性ガスを導入して大気圧にしておくことが好ましい。
【0137】
次いで仕込室101に連結された搬送室102に搬送する。搬送室102内には極力水
分や酸素が存在しないよう、予め、真空排気して真空を維持しておくことが好ましい。
【0138】
また、上記の真空排気処理室としては、磁気浮上型のターボ分子ポンプ、クライオポン
プ、またはドライポンプが備えられている。これにより仕込室と連結された搬送室の到達
真空度を10-5〜10-6Paにすることが可能であり、さらにポンプ側および排気系から
の不純物の逆拡散を制御することができる。装置内部に不純物が導入されるのを防ぐため
、導入するガスとしては、窒素や希ガス等の不活性ガスを用いる。装置内部に導入される
これらのガスは、装置内に導入される前にガス精製機により高純度化されたものを用いる
。従って、ガスが高純度化された後に蒸着装置に導入されるようにガス精製機を備えてお
く必要がある。これにより、ガス中に含まれる酸素や水、その他の不純物を予め除去する
ことができるため、装置内部にこれらの不純物が導入されるのを防ぐことができる。
【0139】
また、不用な箇所に形成された有機化合物を含む膜を除去したい場合には、前処理室10
3aに搬送し、有機化合物膜の積層を選択的に除去すればよい。前処理室103aはプラ
ズマ発生手段を有しており、Ar、H、F、およびOから選ばれた一種または複数種のガ
スを励起してプラズマを発生させることによって、ドライエッチングを行う。また、陽極
表面処理として紫外線照射が行えるように前処理室103aにUV照射機構を備えてもよ
い。
【0140】
また、シュリンクをなくすためには、有機化合物を含む膜の蒸着直前に真空加熱を行う
ことが好ましく、前処理室103bに搬送し、上記基板に含まれる水分やその他のガスを
徹底的に除去するために、脱気のためのアニールを真空(5×10-3Torr(0.66
5Pa)以下、好ましくは10-4〜10-6Pa)で行う。前処理室103bでは平板ヒー
タ(代表的にはシースヒータ)を用いて、複数の基板を均一に加熱する。特に、層間絶縁
膜や隔壁の材料として有機樹脂膜を用いた場合、有機樹脂材料によっては水分を吸着しや
すく、さらに脱ガスが発生する恐れがあるため、有機化合物を含む層を形成する前に10
0℃〜250℃、好ましくは150℃〜200℃、例えば30分以上の加熱を行った後、
30分の自然冷却を行って吸着水分を除去する真空加熱を行うことは有効である。
【0141】
次いで、上記真空加熱を行った後、搬送室102から受渡室105に基板を搬送し、さ
らに、大気にふれさせることなく、受渡室105から搬送室1004aに基板を搬送する

【0142】
その後、搬送室1004aに連結された成膜室1006R、1006G、1006Bへ
基板を適宜、搬送して、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、または電子注入
層となる低分子からなる有機化合物層を適宜形成する。
【0143】
また、成膜室112ではインクジェット法やスピンコート法などで高分子材料からなる
正孔注入層を形成してもよい。また、基板を縦置きとして真空中でインクジェット法によ
り成膜してもよい。第1の電極(陽極)上に、正孔注入層(陽極バッファー層)として作
用するポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)水溶液(PEDO
T/PSS)、ポリアニリン/ショウノウスルホン酸水溶液(PANI/CSA)、PTPD
ES、Et−PTPDEK、またはPPBAなどを全面に塗布、焼成してもよい。焼成す
る際にはベーク室123で行うことが好ましい。スピンコートなどを用いた塗布法で高分
子材料からなる正孔注入層を形成した場合、平坦性が向上し、その上に成膜される膜のカ
バレッジおよび膜厚均一性を良好なものとすることができる。特に発光層の膜厚が均一と
なるため均一な発光を得ることができる。この場合、正孔注入層を塗布法で形成した後、
蒸着法による成膜直前に真空加熱(100〜200℃)を行うことが好ましい。真空加熱
する際には前処理室103bで行えばよい。例えば、第1の電極(陽極)の表面をスポン
ジで洗浄した後、カセット室に搬入し、成膜室112に搬送してスピンコート法でポリ(
エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)水溶液(PEDOT/PSS)を全
面に膜厚60nmで塗布した後、ベーク室123に搬送して80℃、10分間で仮焼成、
200℃、1時間で本焼成し、さらに前処理室103bに搬送して蒸着直前に真空加熱(
170℃、加熱30分、冷却30分)した後、成膜室1006R、1006G、1006
Bに搬送して大気に触れることなく蒸着法で発光層の形成を行えばよい。特に、ITO膜
を陽極材料として用い、表面に凹凸や微小な粒子が存在している場合、PEDOT/PSSの膜厚
を30nm以上の膜厚とすることでこれらの影響を低減することができる。
【0144】
また、PEDOT/PSSはITO膜上に塗布すると濡れ性があまりよくないため、PEDOT/PSS
溶液をスピンコート法で1回目の塗布を行った後、一旦純水で洗浄することによって濡れ
性を向上させ、再度、PEDOT/PSS溶液をスピンコート法で2回目の塗布を行い、焼成を行
って均一性良く成膜することが好ましい。なお、1回目の塗布を行った後、一旦純水で洗
浄することによって表面を改質するとともに、微小な粒子なども除去できる効果が得られ
る。
【0145】
また、スピンコート法によりPEDOT/PSSを成膜した場合、全面に成膜されるため、基板
の端面や周縁部、端子部、陰極と下部配線との接続領域などは選択的に除去することが好
ましく、前処理室103aでO2アッシングなどで除去することが好ましい。
【0146】
ここで、成膜室1006R、1006G、1006Bについて説明する。
【0147】
各成膜室1006R、1006G、1006Bには、移動可能な蒸着源ホルダが設置され
ている。この蒸着源ホルダは複数用意されており、適宜、EL材料が封入された容器(ル
ツボ)を複数備え、この状態で成膜室に設置されている。フェイスダウン方式で基板をセ
ットし、CCDなどで蒸着マスクの位置アライメントを行い、抵抗加熱法で蒸着を行うこ
とで選択的に成膜を行うことができる。なお、蒸着マスクはマスクストック室124にス
トックして、適宜、蒸着を行う際に成膜室に搬送する。また、成膜室132は有機化合物
を含む層や金属材料層を形成するための予備の蒸着室である。
【0148】
これら成膜室へEL材料の設置は、以下に示す製造システムを用いると好ましい。すな
わち、EL材料が予め材料メーカーで収納されている容器(代表的にはルツボ)を用いて
成膜を行うことが好ましい。さらに設置する際には大気に触れることなく行うことが好ま
しく、材料メーカーから搬送する際、ルツボは第2の容器に密閉した状態のまま成膜室に
導入されることが好ましい。望ましくは、各成膜室1006R、1006G、1006B
、1006R’、1006G’、1006B’に連結した真空排気手段を有する設置室(
ここでは図示しない)を真空、または不活性ガス雰囲気とし、この中で第2の容器からル
ツボを取り出して、成膜室にルツボを設置する。なお、図1、または図4に設置室の一例
が示してある。こうすることにより、ルツボおよび該ルツボに収納されたEL材料を汚染
から防ぐことができる。なお、設置室には、メタルマスクをストックしておくことも可能
である。
【0149】
成膜室1006R、1006G、1006B、1006R’、1006G’、1006
B’に設置するEL材料を適宜選択することにより、発光素子全体として、単色(具体的
には白色)、或いはフルカラー(具体的には赤色、緑色、青色)の発光を示す発光素子を
形成することができる。例えば、緑色の発光素子を形成する場合、成膜室1006Gで正
孔輸送層または正孔注入層と、発光層(G)と、電子輸送層または電子注入層とを順次積
層した後、陰極を形成すれば緑色の発光素子を得ることができる。例えば、フルカラーの
発光素子を形成する場合、成膜室1006RでR用の蒸着マスクを用い、正孔輸送層また
は正孔注入層、発光層(R)、電子輸送層または電子注入層を順次積層し、成膜室100
6GでG用の蒸着マスクを用い、正孔輸送層または正孔注入層、発光層(G)、電子輸送
層または電子注入層を順次積層し、成膜室1006BでB用の蒸着マスクを用い、正孔輸
送層または正孔注入層、発光層(B)、電子輸送層または電子注入層を順次積層した後、
陰極を形成すればフルカラーの発光素子を得ることができる。
【0150】
なお、白色の発光を示す有機化合物層は、異なる発光色を有する発光層を積層する場合
において、赤色、緑色、青色の3原色を含有する3波長タイプと、青色/黄色または青緑
色/橙色の補色の関係を用いた2波長タイプに大別される。一つの成膜室で白色発光素子
を形成することも可能である。例えば、3波長タイプを用いて白色発光素子を得る場合、
複数のルツボを搭載した蒸着源ホルダを複数備えた成膜室(図1に一例を示す)を用意し
て、第1の蒸着源ホルダには芳香族ジアミン(TPD)、第2の蒸着源ホルダにはp−E
tTAZ、第3の蒸着源ホルダにはAlq3、第4の蒸着源ホルダにはAlq3に赤色発光
色素であるNileRedを添加したEL材料、第5の蒸着源ホルダにはAlq3が封入
され、この状態で各成膜室に設置する。そして、第1から第5の蒸着源ホルダが順に移動
を開始し、基板に対して蒸着を行い、積層する。具体的には、加熱により第1の蒸着源ホ
ルダからTPDが昇華され、基板全面に蒸着される。その後、第2の蒸着源ホルダからp
―EtTAZが昇華され、第3の蒸着源ホルダからAlq3が昇華され、第4の蒸着源ホ
ルダからAlq3:NileRedが昇華され、第5の蒸着源ホルダからAlq3が昇華さ
れ、基板全面に蒸着される。この後、陰極を形成すれば白色発光素子を得ることができる

【0151】
上記工程によって適宜、有機化合物を含む層を積層した後、搬送室1004aから受渡
室107に基板を搬送し、さらに、大気にふれさせることなく、受渡室107から搬送室
108に基板を搬送する。
【0152】
次いで、搬送室108内に設置されている搬送機構により、基板を成膜室110に搬送
し、陰極を形成する。この陰極は、抵抗加熱を用いた蒸着法により形成される金属膜(M
gAg、MgIn、CaF2、LiF、CaNなどの合金、または周期表の1族もしくは
2族に属する元素とアルミニウムとを共蒸着法により形成した膜、またはこれらの積層膜
)である。また、スパッタ法を用いて陰極を形成してもよい。
【0153】
また、上面出射型の発光装置を作製する場合には、陰極は透明または半透明であること
が好ましく、上記金属膜の薄膜(1nm〜10nm)、或いは上記金属膜の薄膜(1nm
〜10nm)と透明導電膜との積層を陰極とすることが好ましい。この場合、スパッタ法
を用いて成膜室109で透明導電膜(ITO(酸化インジウム酸化スズ合金)、酸化イン
ジウム酸化亜鉛合金(In23―ZnO)、酸化亜鉛(ZnO)等)からなる膜を形成す
ればよい。
【0154】
以上の工程で積層構造の発光素子が形成される。
【0155】
また、搬送室108に連結した成膜室113に搬送して窒化珪素膜、または窒化酸化珪素
膜からなる保護膜を形成して封止してもよい。成膜室113内には、珪素からなるターゲ
ット、または酸化珪素からなるターゲット、または窒化珪素からなるターゲットが備えら
れている。例えば、珪素からなるターゲットを用い、成膜室雰囲気を窒素雰囲気または窒
素とアルゴンを含む雰囲気とすることによって陰極上に窒化珪素膜を形成することができ
る。また、炭素を主成分とする薄膜(DLC膜、CN膜、アモルファスカーボン膜)を保
護膜として形成してもよく、別途、CVD法を用いた成膜室を設けてもよい。ダイヤモン
ドライクカーボン膜(DLC膜とも呼ばれる)は、プラズマCVD法(代表的には、RF
プラズマCVD法、マイクロ波CVD法、電子サイクロトロン共鳴(ECR)CVD法、
熱フィラメントCVD法など)、燃焼炎法、スパッタ法、イオンビーム蒸着法、レーザー
蒸着法などで形成することができる。成膜に用いる反応ガスは、水素ガスと、炭化水素系
のガス(例えばCH4、C22、C66など)とを用い、グロー放電によりイオン化し、
負の自己バイアスがかかったカソードにイオンを加速衝突させて成膜する。また、CN膜
は反応ガスとしてC24ガスとN2ガスとを用いて形成すればよい。なお、DLC膜やC
N膜は、可視光に対して透明もしくは半透明な絶縁膜である。可視光に対して透明とは可
視光の透過率が80〜100%であることを指し、可視光に対して半透明とは可視光の透
過率が50〜80%であることを指す。
【0156】
本実施例では、陰極上に第1の無機絶縁膜と、応力緩和膜と、第2の無機絶縁膜との積
層からなる保護層を形成する。例えば、陰極を形成した後、成膜室113に搬送して第1
の無機絶縁膜を形成し、成膜室132に搬送して蒸着法で吸湿性および透明性を有する応
力緩和膜(有機化合物を含む層など)を形成し、さらに再度、成膜室113に搬送して第
2の無機絶縁膜を形成すればよい。
【0157】
次いで、発光素子が形成された基板を大気に触れることなく、搬送室108から受渡室
111に搬送し、さらに受渡室111から搬送室114に搬送する。次いで、発光素子が
形成された基板を搬送室114から封止室116に搬送する。
【0158】
封止基板は、ロード室117に外部からセットし、用意される。なお、水分などの不純物
を除去するために予め真空中でアニールを行うことが好ましい。そして、封止基板に発光
素子が設けられた基板と貼り合わせるためのシール材を形成する場合には、シーリング室
でシール材を形成し、シール材を形成した封止基板を封止基板ストック室130に搬送す
る。なお、シーリング室において、封止基板に乾燥剤を設けてもよい。なお、ここでは、
封止基板にシール材を形成した例を示したが、特に限定されず、発光素子が形成された基
板にシール材を形成してもよい。
【0159】
次いで、封止室116、基板と封止基板と貼り合わせ、貼り合わせた一対の基板を封止
室116に設けられた紫外線照射機構によってUV光を照射してシール材を硬化させる。
なお、ここではシール材として紫外線硬化樹脂を用いたが、接着材であれば、特に限定さ
れない。
【0160】
次いで、貼り合わせた一対の基板を封止室116から搬送室114、そして搬送室11
4から取出室119に搬送して取り出す。
【0161】
以上のように、図10に示した製造装置を用いることで完全に発光素子を密閉空間に封
入するまで大気に曝さずに済むため、信頼性の高い発光装置を作製することが可能となる
。なお、搬送室114、118においては、真空と、大気圧での窒素雰囲気とを繰り返す
が、搬送室102、1004a、108は常時、真空度が保たれることが望ましい。
【0162】
なお、ここでは図示しないが、基板を個々の処理室に移動させる経路を制御して自動化
を実現するコントロール制御装置を設けている。
【0163】
また、図10に示す製造装置では、陽極として透明導電膜(または金属膜(TiN)が
設けられた基板を搬入し、有機化合物を含む層を形成した後、透明または半透明な陰極(
例えば、薄い金属膜(Al、Ag)と透明導電膜の積層)を形成することによって、上面
出射型(或いは両面出射)の発光素子を形成することも可能である。なお、上面出射型の
発光素子とは、陰極を透過させて有機化合物層において生じた発光を取り出す素子を指し
ている。
【0164】
また、図10に示す製造装置では、陽極として透明導電膜が設けられた基板を搬入し、
有機化合物を含む層を形成した後、金属膜(Al、Ag)からなる陰極を形成することに
よって、下面出射型の発光素子を形成することも可能である。なお、下面出射型の発光素
子とは、有機化合物層において生じた発光を透明電極である陽極からTFTの方へ取り出
し、さらに基板を通過させる素子を指している。
【0165】
また、図10に示す製造装置ではフルカラーの発光素子を平行して製造することができ
る。例えば、前処理室103で真空加熱を行った基板を搬送室102から搬送室1004
aに受渡室105を経由して搬送した後、第1の基板は、成膜室1006R、1006G
、1006Bを経由する経路で積層させ、第2の基板は成膜室1006R’、1006G
’、1006B’を経由する経路で積層させる。このように並列に複数の基板に蒸着を行
うことによってスループットを向上させることができる。以降の工程は、陰極の形成、封
止を行えば発光装置が完成する。
【0166】
また、処理基板枚数は減るものの、例えば、第4〜6の成膜室1006R’、1006
G’、1006B’をメンテナンスしている間でも製造ラインを一時停止することなく、
第1〜第3の成膜室1006R、1006G、1006Bで順次、蒸着を行うことができ
る。
【0167】
また、異なる3つの成膜室でそれぞれR、G、Bの正孔輸送層、発光層、電子輸送層と
を積層してもよい。なお、マスクアライメントがそれぞれ蒸着前に行われて所定の領域の
みに成膜される。混色を防ぐため、マスクはそれぞれ異なるマスクを用いることが好まし
く、3枚必要となる。複数の基板を処理する場合、例えば、1番目の基板を第1の成膜室
に搬入し、赤色発光の有機化合物を含む層を成膜した後、基板搬出し、次に第2の成膜室
に搬入し、緑色発光の有機化合物を含む層を成膜する間に、2番目の基板を第1の成膜室
に搬入し、赤色発光の有機化合物を含む層を成膜すればよく、最後に1番目の基板を第3
の成膜室に搬入し、青色発光の有機化合物を含む層を成膜する間に、2番目の基板を第2
の成膜室に搬入した後、3番目の基板を第1の成膜室に搬入してそれぞれ順次積層させて
ゆけばよい。
【0168】
また、同一の成膜室でそれぞれR、G、Bの正孔輸送層、発光層、電子輸送層とを積層
してもよい。同一成膜室でR、G、Bでそれぞれ正孔輸送層、発光層、電子輸送層とを連
続して積層する場合、マスクアライメント時にずらしてマスクの位置決めをすることによ
ってRGB、3種類の材料層を選択的に形成してもよい。なお、この場合、マスクは共通
であり、1枚のマスクのみを用いている。
【0169】
また、本実施例は実施の形態1乃至4のいずれか一と自由に組み合わせることができる

【実施例2】
【0170】
本実施例では、有機化合物膜中に存在するエネルギー障壁を緩和してキャリアの移動性を
高めると同時に、なおかつ積層構造の機能分離と同様に各種複数の材料の機能を有する素
子を作製する例を示す。
【0171】
積層構造におけるエネルギー障壁の緩和に関しては、キャリア注入層の挿入という技術に
顕著に見られる。つまり、エネルギー障壁の大きい積層構造の界面において、そのエネル
ギー障壁を緩和する材料を挿入することにより、エネルギー障壁を階段状に設計すること
ができる。これにより電極からのキャリア注入性を高め、確かに駆動電圧をある程度まで
は下げることができる。しかしながら問題点は、層の数を増やすことによって、有機界面
の数は逆に増加することである。このことが、単層構造の方が駆動電圧・パワー効率のト
ップデータを保持している原因であると考えられる。逆に言えば、この点を克服すること
により、積層構造のメリット(様々な材料を組み合わせることができ、複雑な分子設計が
必要ない)を活かしつつ、なおかつ単層構造の駆動電圧・パワー効率に追いつくことがで
きる。
【0172】
そこで本実施例において、発光素子の陽極と陰極の間に複数の機能領域からなる有機化合
物膜が形成される場合、従来の明確な界面が存在する積層構造ではなく、第一の機能領域
と第二の機能領域との間に、第一の機能領域を構成する材料および第二の機能領域を構成
する材料の両方からなる混合領域を有する構造を形成する。
【0173】
また、三重項励起エネルギーを発光に変換できる材料をドーパントとして混合領域に添加
した場合も含める。また、混合領域の形成においては、混合領域に濃度勾配をもたせても
よい。
【0174】
このような構造を適用することで、機能領域間に存在するエネルギー障壁は従来の構造
に比較して低減され、キャリアの注入性が向上すると考えられる。すなわち機能領域間に
おけるエネルギー障壁は、混合領域を形成することにより緩和される。したがって、駆動
電圧の低減、および輝度低下の防止が可能となる。
【0175】
以上のことから、本実施例では第一の有機化合物が機能を発現できる領域(第一の機能
領域)と、前記第一の機能領域を構成する物質とは異なる第二の有機化合物が機能を発現
できる領域(第二の機能領域)と、を少なくとも含む発光素子、及びこれを有する発光装
置の作製において、前記第一の機能領域と前記第二の機能領域との間に、前記第一の機能
領域を構成する有機化合物と前記第二の機能領域を構成する有機化合物、とからなる混合
領域を作製する。
【0176】
図1に示す成膜装置では、複数の矩形の蒸着ホルダを使用することができる。従って、
一つの成膜室において複数の機能領域を有する有機化合物膜が形成されるようになってお
り、蒸着源ホルダもそれに応じて複数設けられている。
【0177】
はじめに、第1の蒸着ホルダにより第一の有機化合物が蒸着される。なお、第一の有機
化合物は予め抵抗加熱により気化されており、蒸着時に第1シャッターが開くことにより
基板の方向へ飛散する。第1の蒸着ホルダの移動を繰り返すことにより、図11(B)に
示す第一の機能領域610を形成することができる。
【0178】
そして、第一の有機化合物を蒸着しながら、第2の蒸着ホルダを移動させて、第二の有
機化合物を蒸着する。なお、第二の有機化合物も予め抵抗加熱により気化されており、蒸
着時に第2シャッターが開くことにより基板の方向へ飛散する。ここで、第一の有機化合
物と第二の有機化合物とからなる第一の混合領域611を形成することができる。
【0179】
そして、第1の蒸着ホルダを停止し、第2の蒸着ホルダを繰り返し移動させて第二の有
機化合物を蒸着する。これにより、第二の機能領域612を形成することができる。
【0180】
なお、本実施例では、複数の蒸着ホルダを同時に移動させて蒸着することにより、混合
領域を形成する方法を示したが、第一の有機化合物を蒸着した後、その蒸着雰囲気下で第
二の有機化合物を蒸着することにより、第一の機能領域と第二の機能領域との間に混合領
域を形成することもできる。
【0181】
次に、第二の有機化合物を蒸着しながら、第3の蒸着ホルダを移動させて、第三の有機
化合物を蒸着する。なお、第三の有機化合物も予め抵抗加熱により気化されており、蒸着
時に第3シャッターが開くことにより基板の方向へ飛散する。ここで、第二の有機化合物
と第三の有機化合物とからなる第二の混合領域613を形成することができる。
【0182】
そして、第2の蒸着ホルダを停止し、第3の蒸着ホルダを繰り返し移動させて第三の有
機化合物を蒸着する。これにより、第三の機能領域614を形成することができる。
【0183】
最後に、陰極を形成することにより発光素子が完成する。
【0184】
なお、図11(A)に混合領域を設けない発光素子の例を示す。図4に示す装置を用い
て、順に蒸着を行い、第一の機能領域610、第二の機能領域612、第三の機能領域6
14を形成し、最後に、陰極を形成することにより発光素子が完成する。
【0185】
また、図11(C)に混合領域を設けない発光素子の例を示す。図4に示す装置を用い
て、順に蒸着を行い、第一の機能領域620、第二の機能領域622を形成し、最後に、
陰極を形成することにより発光素子が完成する。
【0186】
また、その他の混合領域を設ける発光素子の例としては、図11(D)に示すように、
第一の有機化合物を用いて第一の機能領域620を形成した後、第一の有機化合物と第二
の有機化合物とからなる第一の混合領域621を形成し、さらに、第二の有機化合物を用
いて第二の機能領域622を形成する。そして、第二の機能領域622を形成する途中で
、一時的に第3の蒸着ホルダを移動させて第三の有機化合物の蒸着を同時に行うことによ
り、第二の混合領域623を形成する。
【0187】
そして、第3の蒸着ホルダを停止し、再び第2の蒸着ホルダを繰り返し移動させて、再
び第二の機能領域622を形成する。そして、陰極を形成することにより発光素子が形成
される。
【0188】
同一の成膜室において複数の機能領域を有する有機化合物膜を形成することができるの
で、機能領域界面が不純物により汚染されることなく、また、機能領域界面に混合領域を
形成することができる。以上により、明瞭な積層構造を示すことなく(すなわち、明確な
有機界面がなく)、かつ、複数の機能を備えた発光素子を作製することができる。
【0189】
また、成膜前、成膜中、または成膜後に真空アニールを行うことが可能な成膜
装置を用いれば、成膜中に真空アニールを行うことによって、混合領域における分子間を
よりフィットさせることができる。したがって、さらに駆動電圧の低減、および輝度低下
の防止が可能となる。また、成膜後のアニール(脱気)によって基板上に形成した有機化
合物層中の酸素や水分などの不純物をさらに除去し、高密度、且つ、高純度な有機化合物
層を形成することができる。
【0190】
また、本実施例は実施の形態1乃至4、実施例1のいずれか一と自由に組み合わせるこ
とができる。
【実施例3】
【0191】
本実施例では、絶縁表面を有する基板上に、有機化合物層を発光層とする発光素子を備え
た発光装置(上面出射構造)を作製する例を図12に示す。
【0192】
なお、図12(A)は、発光装置を示す上面図、図12(B)は図12(A)をA−A’
で切断した断面図である。点線で示された1101はソース信号線駆動回路、1102は
画素部、1103はゲート信号線駆動回路である。また、1104は透明な封止基板、1
105は第1のシール材であり、第1のシール材1105で囲まれた内側は、透明な第2
のシール材1107で充填されている。なお、第1のシール材1105には基板間隔を保
持するためのギャップ材が含有されている。
【0193】
なお、1108はソース信号線駆動回路1101及びゲート信号線駆動回路1103に
入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブル
プリントサーキット)1109からビデオ信号やクロック信号を受け取る。なお、ここで
はFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基盤(PWB)が取り付
けられていても良い。
【0194】
次に、断面構造について図12(B)を用いて説明する。基板1110上には駆動回路
及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路としてソース信号線駆動回路110
1と画素部1102が示されている。
【0195】
なお、ソース信号線駆動回路1101はnチャネル型TFT1123とpチャネル型T
FT1124とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路を形成するT
FTは、公知のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。ま
た、本実施例では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしもそ
の必要はなく、基板上ではなく外部に形成することもできる。また、ポリシリコン膜を活
性層とするTFTの構造は特に限定されず、トップゲート型TFTであってもよいし、ボ
トムゲート型TFTであってもよい。
【0196】
また、画素部1102はスイッチング用TFT1111と、電流制御用TFT1112
とそのドレインに電気的に接続された第1の電極(陽極)1113を含む複数の画素によ
り形成される。電流制御用TFT1112としてはnチャネル型TFTであってもよいし
、pチャネル型TFTであってもよいが、陽極と接続させる場合、pチャネル型TFTと
することが好ましい。また、保持容量(図示しない)を適宜設けることが好ましい。なお
、ここでは無数に配置された画素のうち、一つの画素の断面構造のみを示し、その一つの
画素に2つのTFTを用いた例を示したが、3つ、またはそれ以上のTFTを適宜、用い
てもよい。
【0197】
ここでは第1の電極1113がTFTのドレインと直接接している構成となっているた
め、第1の電極1113の下層はシリコンからなるドレインとオーミックコンタクトのと
れる材料層とし、有機化合物を含む層と接する最上層を仕事関数の大きい材料層とするこ
とが望ましい。例えば、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜と
の3層構造とすると、配線としての抵抗も低く、且つ、良好なオーミックコンタクトがと
れ、且つ、陽極として機能させることができる。また、第1の電極1113は、窒化チタ
ン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層としてもよいし、3層以上
の積層を用いてもよい。
【0198】
また、第1の電極(陽極)1113の両端には絶縁物(バンク、隔壁、障壁、土手などと
呼ばれる)1114が形成される。絶縁物1114は有機樹脂膜もしくは珪素を含む絶縁
膜で形成すれば良い。ここでは、絶縁物1114として、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜
を用いて図12に示す形状の絶縁物を形成する。
【0199】
カバレッジを良好なものとするため、絶縁物1114の上端部または下端部に曲率を有す
る曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物1114の材料としてポジ型の感光性ア
クリルを用いた場合、絶縁物1114の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を
有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物1114として、感光性の光によっ
てエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光によってエッチャントに溶解性となる
ポジ型のいずれも使用することができる。
【0200】
また、絶縁物1114を窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜、炭素を主成分
とする薄膜、または窒化珪素膜からなる保護膜で覆ってもよい。
【0201】
また、第1の電極(陽極)1113上には、蒸着マスクを用いた蒸着法、またはインク
ジェット法によって有機化合物を含む層1115を選択的に形成する。さらに、有機化合
物を含む層1115上には第2の電極(陰極)1116が形成される。陰極としては、仕
事関数の小さい材料(Al、Ag、Li、Ca、またはこれらの合金MgAg、MgIn
、AlLi、CaF2、またはCaN)を用いればよい。ここでは、発光が透過するよう
に、第2の電極(陰極)1116として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(IT
O(酸化インジウム酸化スズ合金)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In23―ZnO)
、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いる。こうして、第1の電極(陽極)1113、
有機化合物を含む層1115、及び第2の電極(陰極)1116からなる発光素子111
8が形成される。ここでは発光素子1118は白色発光とする例であるので着色層113
1と遮光層(BM)1132からなるカラーフィルター(簡略化のため、ここではオーバ
ーコート層は図示しない)を設けている。
【0202】
また、R、G、Bの発光が得られる有機化合物を含む層をそれぞれ選択的に形成すれば
、カラーフィルターを用いなくともフルカラーの表示を得ることができる。
【0203】
また、発光素子1118を封止するために透明保護層1117を形成する。この透明保護
層1117としては実施の形態1に示した透明保護積層とする。透明保護積層は、第1の
無機絶縁膜と、応力緩和膜と、第2の無機絶縁膜との積層からなっている。第1の無機絶
縁膜および第2の無機絶縁膜としては、スパッタ法またはCVD法により得られる窒化珪
素膜、酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜(SiNO膜(組成比N>O)またはSiON膜(組
成比N<O))、炭素を主成分とする薄膜(例えばDLC膜、CN膜)を用いることがで
きる。これらの無絶縁膜は水分に対して高いブロッキング効果を有しているが、膜厚が厚
くなると膜応力が増大してピーリングや膜剥がれが生じやすい。しかし、第1の無機絶縁
膜と第2の無機絶縁膜との間に応力緩和膜を挟むことで、応力を緩和するとともに水分を
吸収することができる。また、成膜時に何らかの原因で第1の無機絶縁膜に微小な穴(ピ
ンホールなど)が形成されたとしても、応力緩和膜で埋められ、さらにその上に第2の無
機絶縁膜を設けることによって、水分や酸素に対して極めて高いブロッキング効果を有す
る。また、応力緩和膜としては、無機絶縁膜よりも応力が小さく、且つ、吸湿性を有する
材料が好ましい。加えて、透光性を有する材料であることが望ましい。また、応力緩和膜
としては、α―NPD(4,4'-ビス-[N-(ナフチル)-N-フェニル-アミノ]ビフェニル)、B
CP(バソキュプロイン)、MTDATA(4,4',4"-トリス(N-3-メチルフェニル-N-フェ
ニル-アミノ)トリフェニルアミン)、Alq3(トリス−8−キノリノラトアルミニウム
錯体)などの有機化合物を含む材料膜を用いてもよく、これらの材料膜は、吸湿性を有し
、膜厚が薄ければ、ほぼ透明である。また、MgO、SrO2、SrOは吸湿性及び透光
性を有し、蒸着法で薄膜を得ることができるため、応力緩和膜に用いることができる。本
実施例では、シリコンターゲットを用い、窒素とアルゴンを含む雰囲気で成膜した膜、即
ち、水分やアルカリ金属などの不純物に対してブロッキング効果の高い窒化珪素膜を第1
の無機絶縁膜または第2の無機絶縁膜として用い、応力緩和膜として蒸着法によりAlq
3の薄膜を用いる。また、透明保護積層に発光を通過させるため、透明保護積層のトータ
ル膜厚は、可能な限り薄くすることが好ましい。
【0204】
また、発光素子1118を封止するために不活性気体雰囲気下で第1シール材1105
、第2シール材1107により封止基板1104を貼り合わせる。なお、第1シール材1
105、第2シール材1107としてはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、第
1シール材1105、第2シール材1107はできるだけ水分や酸素を透過しない材料で
あることが望ましい。
【0205】
また、本実施例では封止基板1104を構成する材料としてガラス基板や石英基板の他
、FRP(Fiberglass-Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、マイ
ラー、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
また、第1シール材1105、第2シール材1107を用いて封止基板1104を接着し
た後、さらに側面(露呈面)を覆うように第3のシール材で封止することも可能である。
【0206】
以上のようにして発光素子を透明保護層1117、第1シール材1105、第2シール
材1107に封入することにより、発光素子を外部から完全に遮断することができ、外部
から水分や酸素といった有機化合物層の劣化を促す物質が侵入することを防ぐことができ
る。従って、信頼性の高い発光装置を得ることができる。
【0207】
また、第1の電極1113として透明導電膜を用いれば両面発光型の発光装置を作製す
ることができる。
【0208】
また、本実施例では陽極上に有機化合物を含む層を形成し、有機化合物を含む層上に透
明電極である陰極を形成するという構造(以下、上面出射構造とよぶ)とした例を示した
が、陽極上に有機化合物を含む層が形成され、有機化合物層上に陰極が形成される発光素
子を有し、有機化合物を含む層において生じた発光を透明電極である陽極からTFTの方
へ取り出す(以下、下面出射構造とよぶ)という構造としてもよい。
【0209】
ここで、下面出射構造の発光装置の一例を図13に示す。
【0210】
なお、図13(A)は、発光装置を示す上面図、図13(B)は図13(A)をA−A’
で切断した断面図である。点線で示された1201はソース信号線駆動回路、1202は
画素部、1203はゲート信号線駆動回路である。また、1204は封止基板、1205
は密閉空間の間隔を保持するためのギャップ材が含有されているシール材であり、シール
材1205で囲まれた内側は、不活性気体(代表的には窒素)で充填されている。シール
材1205で囲まれた内側の空間は乾燥剤1207によって微量な水分が除去され、十分
乾燥している。
【0211】
なお、1208はソース信号線駆動回路1201及びゲート信号線駆動回路1203に
入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブル
プリントサーキット)1209からビデオ信号やクロック信号を受け取る。
【0212】
次に、断面構造について図13(B)を用いて説明する。基板1210上には駆動回路
及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路としてソース信号線駆動回路120
1と画素部1202が示されている。なお、ソース信号線駆動回路1201はnチャネル
型TFT1223とpチャネル型TFT1224とを組み合わせたCMOS回路が形成さ
れる。
【0213】
また、画素部1202はスイッチング用TFT1211と、電流制御用TFT1212
とそのドレインに電気的に接続された透明な導電膜からなる第1の電極(陽極)1213
を含む複数の画素により形成される。
【0214】
ここでは第1の電極1213が接続電極と一部重なるように形成され、第1の電極12
13はTFTのドレイン領域と接続電極を介して電気的に接続している構成となっている
。第1の電極1213は透明性を有し、且つ、仕事関数の大きい導電膜(ITO(酸化イ
ンジウム酸化スズ合金)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In23―ZnO)、酸化亜鉛
(ZnO)等)を用いることが望ましい。
【0215】
また、第1の電極(陽極)1213の両端には絶縁物(バンク、隔壁、障壁、土手などと
呼ばれる)1214が形成される。カバレッジを良好なものとするため、絶縁物1214
の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。また、絶縁物121
4を窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜、炭素を主成分とする薄膜、または窒
化珪素膜からなる保護膜で覆ってもよい。
【0216】
また、第1の電極(陽極)1213上には、蒸着マスクを用いた蒸着法、またはインク
ジェット法によって有機化合物を含む層1215を選択的に形成する。さらに、有機化合
物を含む層1215上には第2の電極(陰極)1216が形成される。陰極としては、仕
事関数の小さい材料(Al、Ag、Li、Ca、またはこれらの合金MgAg、MgIn
、AlLi、CaF2、またはCaN)を用いればよい。こうして、第1の電極(陽極)
1213、有機化合物を含む層1215、及び第2の電極(陰極)1216からなる発光
素子1218が形成される。発光素子1218は、図13中に示した矢印方向に発光する
。ここでは発光素子1218はR、G、或いはBの単色発光が得られる発光素子の一つで
あり、R、G、Bの発光が得られる有機化合物を含む層をそれぞれ選択的に形成した3つ
の発光素子でフルカラーとする。
【0217】
また、発光素子1218を封止するために保護層1217を形成する。この保護層121
7としては実施の形態2に示した保護積層とする。保護積層は、第1の無機絶縁膜と、応
力緩和膜と、第2の無機絶縁膜との積層からなっている。
【0218】
また、発光素子1218を封止するために不活性気体雰囲気下でシール材1205によ
り封止基板1204を貼り合わせる。封止基板1204には予めサンドブラスト法などに
よって形成した凹部が形成されており、その凹部に乾燥剤1207を貼り付けている。な
お、シール材1205としてはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、シール材1
205はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。
【0219】
また、本実施例では凹部を有する封止基板1204を構成する材料として金属基板、ガ
ラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass-Reinforced Plastics)、PVF(ポリビ
ニルフロライド)、マイラー、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板
を用いることができる。また、内側に乾燥剤を貼りつけた金属缶で封止することも可能で
ある。
【0220】
また、本実施例は実施の形態1乃至4、実施例1、実施例2のいずれか一と自由に組み
合わせることができる。
【実施例4】
【0221】
本実施例では、一つの画素の断面構造、特に発光素子およびTFTの接続、画素間に配置
する隔壁の形状について説明する。
【0222】
図14(A)中、40は基板、41は隔壁(土手とも呼ばれる)、42は絶縁膜、43
は第1の電極(陽極)、44は有機化合物を含む層、45は第2の電極(陰極)46はT
FTである。
【0223】
TFT46において、46aはチャネル形成領域、46b、46cはソース領域または
ドレイン領域、46dはゲート電極、46e、46fはソース電極またはドレイン電極で
ある。ここではトップゲート型TFTを示しているが、特に限定されず、逆スタガ型TF
Tであってもよいし、順スタガ型TFTであってもよい。なお、46fは第1の電極43
と一部接して重なることによりTFT46とを接続する電極である。
【0224】
また、図14(A)とは一部異なる断面構造を図14(B)に示す。
【0225】
図14(B)においては、第1の電極と電極との重なり方が図14(A)の構造と異なっ
ており、第1の電極をパターニングした後、電極を一部重なるように形成することでTF
Tと接続させている。
【0226】
また、図14(A)とは一部異なる断面構造を図14(C)に示す。
【0227】
図14(C)においては、層間絶縁膜がさらに1層設けられており、第1の電極がコンタ
クトホールを介してTFTの電極と接続されている。
【0228】
また、隔壁41の断面形状としては、図14(D)に示すようにテーパー形状としてもよ
い。フォトリソグラフィ法を用いてレジストを露光した後、非感光性の有機樹脂や無機絶
縁膜をエッチングすることによって得られる。
【0229】
また、ポジ型の感光性有機樹脂を用いれば、図14(E)に示すような形状、上端部に
曲面を有する形状とすることができる。
【0230】
また、ネガ型の感光性樹脂を用いれば、図14(F)に示すような形状、上端部および下
端部に曲面を有する形状とすることができる。
【0231】
また、本実施例は実施の形態1乃至4、実施例1乃至3のいずれか一と自由に組み合わ
せることができる。
【実施例5】
【0232】
本発明を実施して様々なモジュール(アクティブマトリクス型ELモジュール)を完成さ
せることができる。即ち、本発明を実施することによって、それらを組み込んだ全ての電
子機器が完成される。
【0233】
その様な電子機器としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ヘッドマウントディスプ
レイ(ゴーグル型ディスプレイ)、カーナビゲーション、プロジェクタ、カーステレオ、
パーソナルコンピュータ、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話または電子書
籍等)などが挙げられる。それらの一例を図15、図16に示す。
【0234】
図15(A)はパーソナルコンピュータであり、本体2001、画像入力部2002、表
示部2003、キーボード2004等を含む。
【0235】
図15(B)はビデオカメラであり、本体2101、表示部2102、音声入力部210
3、操作スイッチ2104、バッテリー2105、受像部2106等を含む。
【0236】
図15(C)はゲーム機器であり、本体2201、操作スイッチ2204、表示部220
5等を含む。
【0237】
図15(D)はプログラムを記録した記録媒体(以下、記録媒体と呼ぶ)を用いるプレー
ヤーであり、本体2401、表示部2402、スピーカ部2403、記録媒体2404、
操作スイッチ2405等を含む。なお、このプレーヤーは記録媒体としてDVD(Dig
ital Versatile Disc)、CD等を用い、音楽鑑賞や映画鑑賞やゲー
ムやインターネットを行うことができる。
【0238】
図15(E)はデジタルカメラであり、本体2501、表示部2502、接眼部250
3、操作スイッチ2504、受像部(図示しない)等を含む。
【0239】
図16(A)は携帯電話であり、本体2901、音声出力部2902、音声入力部29
03、表示部2904、操作スイッチ2905、アンテナ2906、画像入力部(CCD
、イメージセンサ等)2907等を含む。
【0240】
図16(B)は携帯書籍(電子書籍)であり、本体3001、表示部3002、300
3、記憶媒体3004、操作スイッチ3005、アンテナ3006等を含む。
【0241】
図16(C)はディスプレイであり、本体3101、支持台3102、表示部3103
等を含む。
【0242】
ちなみに図16(C)に示すディスプレイは中小型または大型のもの、例えば5〜20
インチの画面サイズのものである。また、このようなサイズの表示部を形成するためには
、基板の一辺が1mのものを用い、多面取りを行って量産することが好ましい。
【0243】
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器の作製方法に適
用することが可能である。また、本実施例の電子機器は実施の形態1乃至4、実施例1乃
至4のどのような組み合わせからなる構成を用いても実現することができる。
【実施例6】
【0244】
実施例5において示した電子機器には、発光素子が封止された状態にあるパネルに、コン
トローラ、電源回路等を含むICが実装された状態にあるモジュールが搭載されている。
モジュールとパネルは、共に発光装置の一形態に相当する。本実施例では、モジュールの
具体的な構成について説明する。
【0245】
図17(A)に、コントローラ1801及び電源回路1802がパネル1800に実装
されたモジュールの外観図を示す。パネル1800には、発光素子が各画素に設けられた
画素部1803と、前記画素部1803が有する画素を選択する走査線駆動回路1804
と、選択された画素にビデオ信号を供給する信号線駆動回路1805とが設けられている

【0246】
またプリント基板1806にはコントローラ1801、電源回路1802が設けられて
おり、コントローラ1801または電源回路1802から出力された各種信号及び電源電
圧は、FPC1807を介してパネル1800の画素部1803、走査線駆動回路180
4、信号線駆動回路1805に供給される。
【0247】
プリント基板1806への電源電圧及び各種信号は、複数の入力端子が配置されたイン
ターフェース(I/F)部1808を介して供給される。
【0248】
なお、本実施例ではパネル1800にプリント基板1806がFPCを用いて実装され
ているが、必ずしもこの構成に限定されない。COG(Chip on Glass)方式を用い、コン
トローラ1801、電源回路1802をパネル1800に直接実装させるようにしても良
い。
【0249】
また、プリント基板1806において、引きまわしの配線間に形成される容量や配線自
体が有する抵抗等によって、電源電圧や信号にノイズがのったり、信号の立ち上がりが鈍
ったりすることがある。そこで、プリント基板1806にコンデンサ、バッファ等の各種
素子を設けて、電源電圧や信号にノイズがのったり、信号の立ち上がりが鈍ったりするの
を防ぐようにしても良い。
【0250】
図17(B)に、プリント基板1806の構成をブロック図で示す。インターフェース
1808に供給された各種信号と電源電圧は、コントローラ1801と、電源電圧180
2に供給される。
【0251】
コントローラ1801は、A/Dコンバータ1809と、位相ロックドループ(PLL:P
hase Locked Loop)1810と、制御信号生成部1811と、SRAM(Static Random
Access Memory)1812、1813とを有している。なお本実施例ではSRAMを用い
ているが、SRAMの代わりに、SDRAMや、高速でデータの書き込みや読み出しが可
能であるならばDRAM(Dynamic Random Access Memory)も用いることが可能であ
る。
【0252】
インターフェース1808を介して供給されたビデオ信号は、A/Dコンバータ180
9においてパラレル−シリアル変換され、R、G、Bの各色に対応するビデオ信号として
制御信号生成部1811に入力される。また、インターフェース1808を介して供給さ
れた各種信号をもとに、A/Dコンバータ1809においてHsync信号、Vsync
信号、クロック信号CLK、交流電圧(AC Cont)が生成され、制御信号生成部1811
に入力される
【0253】
位相ロックドループ1810では、インターフェース1808を介して供給される各種
信号の周波数と、制御信号生成部1811の動作周波数の位相とを合わせる機能を有して
いる。制御信号生成部1811の動作周波数は、インターフェース1808を介して供給
された各種信号の周波数と必ずしも同じではないが、互いに同期するように制御信号生成
部1811の動作周波数を位相ロックドループ1810において調整する。
【0254】
制御信号生成部1811に入力されたビデオ信号は、一旦SRAM1812、1813
に書き込まれ、保持される。制御信号生成部1811では、SRAM1812に保持され
ている全ビットのビデオ信号のうち、全画素に対応するビデオ信号を1ビット分づつ読み
出し、パネル1800の信号線駆動回路1805に供給する。
【0255】
また制御信号生成部1811では、各ビット毎の、発光素子が発光する期間に関する情
報を、パネル1800の走査線駆動回路1804に供給する。
【0256】
また電源回路1802は所定の電源電圧を、パネル1800の信号線駆動回路1805
、走査線駆動回路1804及び画素部1803に供給する。
【0257】
次に電源回路1802の詳しい構成について、図18を用いて説明する。本実施例の電
源回路1802は、4つのスイッチングレギュレータコントロール1860を用いたスイ
ッチングレギュレータ1854と、シリーズレギュレータ1855とからなる。
【0258】
一般的にスイッチングレギュレータは、シリーズレギュレータに比べて小型、軽量であ
り、降圧だけでなく昇圧や正負反転することも可能である。一方シリーズレギュレータは
、降圧のみに用いられるが、スイッチングレギュレータに比べて出力電圧の精度は良く、
リプルやノイズはほとんど発生しない。本実施例の電源回路1802では、両者を組み合
わせて用いる。
【0259】
図18に示すスイッチングレギュレータ1854は、スイッチングレギュレータコント
ロール(SWR)1860と、アテニュエイター(減衰器:ATT)1861と、トラン
ス(T)1862と、インダクター(L)1863と、基準電源(Vref)1864と
、発振回路(OSC)1865、ダイオード1866と、バイポーラトランジスタ186
7と、可変抵抗1868と、容量1869とを有している。
【0260】
スイッチングレギュレータ1854において外部のLiイオン電池(3.6V)等の電
圧が変換されることで、陰極に与えられる電源電圧と、スイッチングレギュレータ185
4に供給される電源電圧が生成される。
【0261】
またシリーズレギュレータ1855は、バンドギャップ回路(BG)1870と、アン
プ1871と、オペアンプ1872と、電流源1873と、可変抵抗1874と、バイポ
ーラトランジスタ1875とを有し、スイッチングレギュレータ1854において生成さ
れた電源電圧が供給されている。
【0262】
シリーズレギュレータ1855では、スイッチングレギュレータ1854において生成
された電源電圧を用い、バンドギャップ回路1870において生成された一定の電圧に基
づいて、各色の発光素子の陽極に電流を供給するための配線(電流供給線)に与える直流
の電源電圧を、生成する。
【0263】
なお電流源1873は、ビデオ信号の電流が画素に書き込まれる駆動方式の場合に用い
る。この場合、電流源1873において生成された電流は、パネル1800の信号線駆動
回路1805に供給される。なお、ビデオ信号の電圧が画素に書き込まれる駆動方式の場
合には、電流源1873は必ずしも設ける必要はない。
【0264】
なお、スイッチングレギュレータ、OSC、アンプ、オペアンプは、TFTを用いて形
成することが可能である。
【0265】
また、本実施例は実施の形態1乃至4、実施例1乃至5のいずれか一と自由に組みあわ
せることができる。
【実施例7】
【0266】
本実施例では、蒸着ホルダの長手方向の向きと移動の向きを同じにして基板の一辺に対
して垂直または平行に移動させた例を図19を用いて説明する。
【0267】
図19(A)において、1912はホルダ移動経路、1913は大型基板、1917は
蒸着ホルダを示している。蒸着ホルダの長手方向の向きと移動の向きを同じにすることで
蒸着される領域(線状)を細かく重ね、基板全体における膜厚の均一化を図っている。ま
た、図19(A)に示す蒸着方法は、全ての容器に同一材料を用意して、短時間で厚い膜
厚を得る場合に適している。
【0268】
また、偶数個のルツボを用意して、図19(B)にその一例を示すように、蒸着源ホル
ダ1917におけるそれぞれの蒸着中心がクロスするようにし、互いにぶつけ合わせるこ
とで蒸着材料の微粒子化を図ってもよい。この場合、クロスする箇所は、マスク(および
基板)と容器との間の空間に位置する。
【0269】
本実施例は実施の形態1乃至3、実施例1乃至5のいずれか一と自由に組みあわせるこ
とができる。
【実施例8】
【0270】
図20(A)に、画素の回路図の一形態を示し、図20(B)に、画素部に用いられる
TFTの断面図を示す。901は画素へのビデオ信号の入力を制御するためのスイッチン
グ用TFTに相当し、902は発光素子903への電流の供給を制御するための駆動用T
FTに相当する。具体的には、スイッチング用TFT901を介して画素に入力されたビ
デオ信号の電位に従って、駆動用TFT902のドレイン電流が制御され、該ドレイン電
流が発光素子903に供給される。なお904は、スイッチング用TFT901がオフの
ときに駆動用TFTのゲート・ソース間電圧(以下、ゲート電圧とする)を保持するため
の容量素子に相当し、必ずしも設ける必要はない。
【0271】
図20(A)において、具体的には、スイッチング用TFT901のゲート電極が走査線
Gに接続されており、ソース領域とドレイン領域の一方は信号線Sに接続され、他方は駆
動用TFT902のゲートに接続されている。また駆動用TFT902のソース領域とド
レイン領域は、一方が電源線Vに接続され、他方が発光素子903の画素電極905に接
続されている。容量素子904が有する2つの電極は、一方が駆動用TFT902のゲー
ト電極に接続され、他方が電源線Vに接続されている。
【0272】
なお図20(A)、図20(B)では、スイッチング用TFT901が、直列に接続さ
れ、なおかつゲート電極が接続された複数のTFTが、第1の半導体膜を共有しているよ
うな構成を有する、マルチゲート構造となっている。マルチゲート構造とすることで、ス
イッチング用TFT901のオフ電流を低減させることができる。具体的に図20(A)
、図20(B)ではスイッチング用TFT901が2つのTFTが直列に接続されたよう
な構成を有しているが、3つ以上のTFTが直列に接続され、なおかつゲート電極が接続
されたようなマルチゲート構造であっても良い。また、スイッチング用TFTは必ずしも
マルチゲート構造である必要はなく、ゲート電極とチャネル形成領域が単数である通常の
シングルゲート構造のTFTであっても良い。
【0273】
TFT901、902は逆スタガ型(ボトムゲート型)であり、チャネルエッチ型であ
る。TFTの活性層はアモルファス半導体、またはセミアモルファス半導体を用いる。な
お、TFTの活性層をセミアモルファス半導体とすれば、画素部だけでなく駆動回路も同
一基板上に作ることができ、p型よりもn型の方が、移動度が高いので駆動回路に適して
いるが、各TFTはn型であってもp型であってもどちらでも良い。いずれの極性のTF
Tを用いる場合でも、同一の基板上に形成するTFTを全て同じ極性にそろえておくこと
が、工程数を抑えるためにも望ましい。
【0274】
画素部の駆動用TFT902においては、基板900上に形成されたゲート電極920
と、ゲート電極920を覆っているゲート絶縁膜911と、ゲート絶縁膜911を間に挟
んでゲート電極920と重なっているセミアモルファス半導体膜で形成された第1の半導
体膜922と、を有している。さらにTFT902は、ソース領域またはドレイン領域と
して機能する一対の第2の半導体膜923と、第1の半導体膜922と第2の半導体膜9
23の間に設けられた第3の半導体膜924とを有している。
【0275】
また第2の半導体膜923は、非晶質半導体膜またはセミアモルファス半導体膜で形成
されており、該半導体膜に一導電型を付与する不純物が添加されている。そして一対の第
2の半導体膜923は、第1の半導体膜922におけるチャネル形成領域を間に挟んで、
向かい合って設けられている。
【0276】
また第3の半導体膜924は、非晶質半導体膜またはセミアモルファス半導体膜で形成
されており、第2の半導体膜923と同じ導電型を有し、なおかつ第2の半導体膜923
よりも導電性が低くなるような特性を有している。第3の半導体膜924はLDD領域と
して機能するので、ドレイン領域として機能する第2の半導体膜923の端部に集中する
電界を緩和し、ホットキャリア効果を防ぐことができる。第3の半導体膜924は必ずし
も設ける必要はないが、設けることでTFTの耐圧性を高め、信頼性を向上させることが
できる。なお、TFT902がn型である場合、第3の半導体膜924を形成する際に特
にn型を付与する不純物を添加せずとも、n型の導電型が得られる。よって、TFT90
2がn型の場合、必ずしも第3の半導体膜924にn型の不純物を添加する必要はない。
ただし、チャネルが形成される第1の半導体膜には、p型の導電性を付与する不純物を添
加し、極力I型に近づくようにその導電型を制御しておく。
【0277】
また、一対の第3の半導体膜924に接するように、配線925が形成されている。
【0278】
また、TFT901、902及び配線925を覆うように、絶縁膜からなる第1のパッ
シベーション膜940、第2のパッシベーション膜941が形成されている。TFT90
1、902を覆うパッシベーション膜は2層に限らず、単層であっても良いし、3層以上
であっても良い。例えば第1のパッシベーション膜940を窒化珪素、第2のパッシベー
ション膜941を酸化珪素で形成することができる。窒化珪素または窒化酸化珪素でパッ
シベーション膜を形成することで、TFT901、902が水分や酸素などの影響により
、劣化するのを防ぐことができる。
【0279】
そして、TFT901、902および配線925は、平坦な層間絶縁膜905で覆う。
平坦な層間絶縁膜905は、PCVD法による絶縁膜に対して平坦化処理を行った膜でも
よいし、シロキサン系ポリマーを用いた塗布法により得られるアルキル基を含むSiOx
膜を用いてもよい。
【0280】
そして、配線925に達するコンタクトホールを形成し、配線925の一方に電気的に
接続する画素電極930を形成する。
【0281】
そして、画素電極930の端部を覆う絶縁物929(バンク、隔壁、障壁、土手などと
呼ばれる)を形成する。絶縁物929としては、無機材料(酸化シリコン、窒化シリコン
、酸化窒化シリコンなど)、感光性または非感光性の有機材料(ポリイミド、アクリル、
ポリアミド、ポリイミドアミド、レジストまたはベンゾシクロブテン)、またはこれらの
積層などを用いることができるが、ここでは窒化シリコン膜で覆われた感光性の有機樹脂
を用いる。例えば、有機樹脂の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物
の上端部のみに曲率半径を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物として、
感光性の光によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光によってエッチャン
トに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。また、絶縁物929にもシロ
キサン系ポリマーを用いた塗布法により得られるアルキル基を含むSiOx膜を適用して
もよい。
【0282】
そして、画素電極930上に接するように、電界発光層931を形成する。なお、電界発
光層931は、積層構造を有しており、少なくとも1層を図1の蒸着装置で選択的に形成
する。大面積基板を用いた量産工程に適した蒸着装置(図1にその一例を示す)により蒸
着材料のロスを抑えて、発光装置全体の製造コストを削減することができる。
【0283】
そして、電界発光層931に接するように対向電極932が形成されている。なお発光素
子903は陽極と陰極とを有しているが、いずれか一方を画素電極、他方を対向電極とし
て用いる。図20(A)に示すように発光素子903と接続するTFT902をnチャネ
ル型TFTとした場合には、画素電極930を陰極とし、対向電極932を陽極とするこ
とが好ましい。
【0284】
また、画素電極930として透明導電膜を用いた場合、電界発光層931からの発光は
、基板900を通過して図中、矢印の方向に出射される。
【0285】
本実施例では、チャネル形成領域を含んでいる第3の半導体膜が、セミアモルファス半
導体で形成されているので、非晶質半導体膜を用いたTFTに比べて高い移動度のTFT
を得ることができ、よって駆動回路と画素部を同一の基板に形成することができる。
【0286】
また、最終的には発光素子903が外気にふれないように封止基板や封止缶で封止する
が、ここでは図示していない。
【0287】
本実施例は、実施の形態1または実施例5と自由に組み合わせることができる。
【実施例9】
【0288】
本実施例では、駆動用TFTをチャネルストップ型であるnチャネル型アモルファスTF
Tとした例を図21に示す。
【0289】
1001は画素へのビデオ信号の入力を制御するためのスイッチング用TFTに相当し、
1002は発光素子1003への電流の供給を制御するための駆動用TFTに相当する。
具体的には、スイッチング用TFT1001を介して画素に入力されたビデオ信号の電位
に従って、駆動用TFT1002のドレイン電流が制御され、該ドレイン電流が発光素子
1003に供給される。
【0290】
TFT1001、1002は逆スタガ型(ボトムゲート型)であり、チャネルストップ
型である。TFTの活性層はアモルファス半導体を用いる。
【0291】
画素部の駆動用TFT1002においては、基板1000上に形成されたゲート電極1
020と、ゲート電極1020を覆っているゲート絶縁膜1011と、ゲート絶縁膜10
11を間に挟んでゲート電極1020と重なっているアモルファス半導体膜で形成された
第1の半導体膜1022と、を有している。さらにTFT1002は、ソース領域または
ドレイン領域として機能する一対の第2の半導体膜1023と、第1の半導体膜1022
と第2の半導体膜1023の間に設けられた第3の半導体膜1024とを有している。ま
た、絶縁物からなるチャネルストッパー1010が第1の半導体膜1022上に形成され
ている。
【0292】
また第2の半導体膜1023は、非晶質半導体膜で形成されており、該半導体膜にn型
を付与する不純物が添加されている。そして一対の第2の半導体膜1023は、第1の半
導体膜1022におけるチャネル形成領域を間に挟んで、向かい合って設けられている。
【0293】
また第3の半導体膜1024は、非晶質半導体膜で形成されており、第2の半導体膜1
023と同じ導電型を有し、なおかつ第2の半導体膜1023よりも導電性が低くなるよ
うな特性を有している。第3の半導体膜1024はLDD領域として機能する
【0294】
また、TFT1001、1002及び配線1025を覆うように、絶縁膜からなるのパ
ッシベーション膜1040が形成されている。
【0295】
そして、TFT1001、1002および配線1025は、平坦な層間絶縁膜で覆う。
【0296】
そして、配線1025に達するコンタクトホールを形成し、配線1025の一方に電気
的に接続する画素電極1030を形成する。画素電極1030は、反射性を有する金属層
(AgまたはAl)または透明導電膜との積層とする。
【0297】
そして、画素電極1030の端部を覆う絶縁物1029(バンク、隔壁、障壁、土手な
どと呼ばれる)を形成する。
【0298】
そして、画素電極1030上に接するように、電界発光層1031を形成する。なお、電
界発光層1031は、積層構造を有しており、少なくとも1層を図1の蒸着装置で選択的
に形成する。大面積基板を用いた量産工程に適した蒸着装置(図1にその一例を示す)に
より蒸着材料のロスを抑えて、発光装置全体の製造コストを削減することができる。
【0299】
そして、電界発光層1031に接するように対向電極1032が形成されている。本実施
例ではTFT1002をnチャネル型TFTとしているので、画素電極1030を陰極と
し、対向電極1032を陽極とすることが好ましい。
【0300】
また、対向電極1032として透明導電膜を用いているため、電界発光層1031から
の発光は、図中、矢印の方向に出射される。
【0301】
また、最終的には発光素子1003が外気にふれないように封止基板や封止缶で封止す
るが、ここでは図示していない。
【0302】
なお、本実施例は、実施の形態1または実施例5と自由に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0303】
本発明は、蒸着材料が封入された容器や膜厚モニタなどを、大気に曝すことなく蒸着装置
に連結した設置室から搬送することを可能とする製造システムを提供することができる。
このような本発明により、蒸着材料の取り扱いが容易になり、蒸着材料への不純物混入を
避けることができる。このような製造システムにより、材料メーカーで封入された容器を
大気にふれることなく蒸着装置に設置できることが可能になるため、蒸着材料が酸素や水
の付着を防止でき、今後のさらなる発光素子の超高純度化への対応が可能となる。
【0304】
また、アモルファス半導体膜またはセミアモルファス半導体膜をTFTの活性層に用い
れば、大面積基板に対しても基板全面において均一な膜厚が得られ、且つ、蒸着材料のロ
スを抑えた蒸着装置を提供するとともに、発光装置の製造コストを大幅に抑えることがで
きる。
【符号の説明】
【0305】
11:成膜室
12:基板保持手段
13:大型基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロード室、該ロード室に連結された搬送室、及び該搬送室に連結された複数の成膜室と、該成膜室に連結された設置室を有する製造装置であって、
前記複数の成膜室は、前記成膜室内を真空にする第1の真空排気処理室と連結され、マスクと基板の位置あわせを行うアライメント手段と、基板保持手段と、矩形である複数の蒸着源ホルダと、前記蒸着源ホルダをそれぞれ移動させる手段と、
前記蒸着源ホルダには長手方向に配置された蒸着材料が封入された容器と、前記容器を加熱する手段と、
前記設置室は、前記設置室内を真空にする第2の真空排気処理室と連結され、前記設置室には容器を加熱する手段と、前記成膜室内の前記蒸着源ホルダに前記容器を搬送する手段とを有することを特徴とする製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−36505(P2012−36505A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214590(P2011−214590)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【分割の表示】特願2003−327392(P2003−327392)の分割
【原出願日】平成15年9月19日(2003.9.19)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】