説明

製造,検査監視システム,自動分析装置、及びそのデータ処理方法

【課題】
品質管理計測システムにおいて正常或いは良品と異常品とを判別・認識し或いは項目毎の影響度を分析できる手段を提供すること。
【解決手段】
収集された多項目の計測データから、各項目間の相関を考慮した積和ベクトルを形成し、かかる積和ベクトルにおいて、その形態を表現し得る特徴量を少なくとも二つ以上算出し、それらの特徴量を新たな変数(項目又は特徴量の項目)として、それらの総合距離を新たに形成する計算手段1を具備する。更に、前記積和ベクトルの各項目毎に、基準とする空間作成時に生成される基準とする積和ベクトルとの各項目毎に、それらの大きさを比較或いは対比して、前記未知の積和ベクトルの個々の要素の形態を示す応答値を算出する計算手段2とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(1)多次元情報(計測特性)を、より総合的に識別・判断するのに広く適用されているマハラノビス距離を用いて、装置の異常の状態変化や異常診断を行っているシステムや装置に関し、特にその異常時の識別・判別力(正常値からの総合的な乖離距離)を向上させるため計算手段とその特徴量の作成機能とに関する。又、(2)識別・判別力(正常値からの乖離距離)を向上させた総合距離の計算手段を組込んだ装置やシステムに関する。例えば、種々の装置や検査装置からの情報を一括管理し、それらの情報にて製造物の品質管理を行うシステムや、血液や尿等の液体検体を分注するサンプル分注装置および、それを用いた自動分析装置に係り、特に検体を反応セルに分注してから検体の稀釈や試薬注入および撹拌などの反応過程を経て測定結果を得るまでに、複数の時刻における反応過程における測定値を計測し、保存する機能を備えた自動分析装置等である。
【背景技術】
【0002】
以下、前述の自動分析装置にて、従来の技術を説明する。
【0003】
従来の自動分析装置では、反応過程データを保存したり、画面上でプロットすることによってその異常を判別する機能をもったものがあった。しかし、反応過程データの異常を自動的に判別する機能を実現したものはなかった。このため反応過程データから反応過程の異常を調べるためには、大量のデータを保存する必要があり、また人手によって1件ずつ個々の反応過程データを調べる必要があったため、時間とコストが掛かっていた。
【0004】
更に近年では、前述の反応過程データから取り出したデータ群に基づいて、多変量の相関を考慮したマハラノビス距離にて所定の空間を形成して総合的に判断する手法が活用されている。このマハラノビス空間を活用した方法として「品質工学学会誌 第3巻 No.1:「多次元情報による総合評価とSN比」」に開示された方法がある。この方法は、医学分野の健康診断に適用され、その測度としてマハラノビス空間を用いた方法である。かかる場合の基準となるマハラノビス空間(基準空間)は健康人の集団であり、健康人のみが均一な集団を作っており、医学的に決められた計測項目でマハラノビス空間を形成している。前述のマハラノビス空間に属する人たちのマハラノビス距離の平均は1.0であり、且つ2〜4の範囲内である。そして健康かどうか不明な被験者に対するマハラノビス距離を算出した値がある閾値(例えば4)より小さければ、健康人の集団に属し、「健康」と識別し、そうでなければ「健康でない」或いは「異常」と判断する方法である。かかる方法(マハラノビス・タグチ法と呼ばれ、通常ではMT法)は、適用範囲がひろく、種々の分野で公開されている。例えば、特許文献1や、非特許文献1内に、種々の事例がある。
【0005】
【特許文献1】特許第328087号
【非特許文献1】MTシステムにおける技術開発:日本規格協会、品質工学応用講座
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の如く、かかる多種の分野における多次元のデータ群に対する統一的な総合計測指標やその処理法に関しても、発展途上にあり、実績を積み上げている段階であり共通の課題である。以下、前述の自動分析装置を例にとり、その課題を示す。
【0007】
(1)臨床自動分析検査を例に取り説明する。かかる装置を使用して行う検査において は、かかる測定結果は、最終結果のみで評価しているに過ぎないため、測定値が 設定範囲内であれば分析装置はアラームを発することはなく、異常な反応があっ ても検出は不可能であった。臨床自動分析検査では、分析装置に起因するプロゾ ーン・チェック異常,サンプリング異常,試薬分注異常,撹拌機構の異常,粘度 の高い試薬のボタ落ちや飛散,試薬の組合せの関係によるノズルの汚染や結晶析 出などにより分析検査が正常に行われない恐れがある。このため、従来の自動分 析装置では測定値が正常値(健常者)の範囲から外れた時に、再検査を行ってい た。
(2)又、この種々の検査項目の定量データにて、より総合的に「現状態は健康と比較 して正常状態と同程度の距離であるから、異常なし。」等の診断を行っている。
【0008】
本発明は、例えば、前述の反応過程における1):時系列の測定データ群、或いは、前述の品質管理システムにおける2):離散的な計測項目データ群を利用して、検査が適切に行われたか否かをより高精度に判定する計算機能、或いは総合判定指標であるマハラノビス距離の算出距離のより高感度化する機能(計算手段)を提供する。更には、1日に数千から数万テストが計測される中においても、異常反応を示す項目の見落しを防止することを目的として、1検体或いは1データに関して、逐次寄与度の高い項目を選択・抽出できる機能を提供することを目的とする。
【0009】
かかる方法として、前述の従来例の如く、時系列又は離散的な測定データから基準となるマハラノビス空間を形成し、当該データをその基準とする空間(総合計測上の0点:基準空間)に宛がい、その算出された距離にて判断を行えば良い。以下、具体的な参照例により、説明する。データ群としては、ある製品における完成品の正常(合格)で且つ均一と判断されたn=200ヶの測定データ(電圧,電流特性,寸法値)であり、その項目数はk=17である。又、前述の基準としたデータと異なり、明らかに異常と判断したデータを準備し、その数を64ヶとした。
【0010】
この時、計測の基準となるマハラノビス空間(0点)は、200ヶのデータ群から、項目間の相関を考慮した式(1)にて、算出される。その度数分布を付図1に示す。基準とする空間の平均値は1.0、マハラノビス距離(D2)の最大値は3.5である。
【0011】
【数1】

【0012】

【0013】
下表には、基準とする空間のサンプル間と、項目間との分散分析結果を示す。
【0014】

【0015】
かかる結果から、基準とする空間では、項目間,サンプル間とも結有意差が認められないため、ほほ均一な空間である事が判る。
【0016】
以下、付図2には、明らかに異常と判断した64個のデータ対して、マハラノビス距離を算出した。その結果を下図に示す。又、マハラノビス距離の算出過程時に生成される各項目の平均と標準偏差を別途計算し(かかる項目は従来、MT法で使用していないので、以後積和ベクトルとして説明していく。)、その結果をも列記した。本説明における対象サンプル64個はいずれも4.0以上であり、異常と判断できる。更に、その距離はマハラノビス距離の算出過程における各項目間の変動の平均と等しいことが判る(図中△)。
【0017】

【0018】
次に、前述の分散分析結果と同様に、かかる対象データに対して実施した。その結果を下表に示す。
【0019】

【0020】
かかる結果から、基準とする空間では、項目間,サンプル間とも有意である。しかし、項目間の分散の方が大きいことが判る。
【0021】
以上、従来のマハラノビス距離では、
(1)算出されるマハラノビス距離は、項目間の相関を考慮したk項目の積和ベクトル の平均値に等しい。又、正常データ群から得られるマハラノビス距離空間(基準 とする空間)では、前記k項目の積和ベクトルの分散,サンプル間の分散は、何 れも有意差がない(付表1)。
(2)前記積和ベクトル(項目間)の個々の分散或いは標準偏差は、サンプル間の分散 に比して、大きくなっている。
(3)マハラノビス距離が増加するに従って、前記k項目の積和ベクトルの分散,サン プル間の分散は有意となり(付表2:基準空間サンプルと異常データを含んだデ ータ群)、その内容について分析(項目の寄与度等)は可能になる。しかし、依 然として、項目間の分散が大きい(付表1,2)。又、付図2に示すように、基 準とする空間、対象としたデータ群でも、積和ベクトルの平均値(マハラノビス 距離)より大きくなっていることが明白である。
(4)前述(3)項の項目の分析では、算出されたマハラノビス距離に対して、
1)正しい真値やグレード、或いは明白にグループ化できている場合
2)真値,グレードが未知な場合では、分析の内容が異なり、それ相応の処理法が 開示済みである。以下、その内容を概略説明する。
a:2)の場合
選択した項目(前述のy(i,j)であり、積和ベクトルではない)の中に、全 く寄与度,影響度のない項目が存在すると、距離のバラツキが悪化(タグチメソッ ド法のSN比)するので、この場合は一般には2水準の直交表を適用して、項目の 有無の組み合わせで、取捨選択が可能となっている。
b:1)の場合
種々の分野の中には、真値やカテゴリー化が明確に判っている場合もある。この 場合は、前記基準空間(0点)から算出されたマハラノビス距離(D)と、真値や カテゴリー化データ(M)とを、比例式(D=βM)のSN比(タグチメソッド法 のSN比)を用いて、その精度を確認し、推定や予測を行うことが可能となってい る。
【0022】
しかし、かかるこのよう処理においても、前述の如く、従来のマハラノビス距離の算出時には、項目間の分散が大きいにも係わらず、その情報を使用しないで、各項目間の平均値からの各距離の平均値のみで扱っている。下図には前述のデータ構成を模式的に示した図である。前述のy(i,j)のkの各計測の値が、m1〜mpであり、各計測間はばね:kiiで連結されており、そのばね定数を項目間の相関係数と等価としている。従って、これらの各要素は蜜に連動して挙動する。前述の基準と空間のサンプル群は、下図において、黒く塗り潰した範囲内で、挙動するので、前述のごとく、かかる項目間の偏差Δdx(j)間、更には、そのサンプル間でも有意差がない。一方、未知の対象データの各項目がm(j)xの位置になった時、各項目は基準とする空間の各項目の中心位置から、中心間でΔdx(j)の偏差が生じる。この時のマハラノビス距離は前述の式にて算出されるので、図に示すように、基準とする空間の中心線と、平行な線の値であり、各項目に凹凸があるにも係わらず、平均的な偏差距離のみを示している。又、前述の基準とする空間では、図に示すように所定のバラツキを有しており、そのバラツキの大きさは、Δdx(j)の大きさによっても変化する。
【0023】
従って、従来のマハラノビスの距離では、各項目の平均的な乖離距離は判るが、各項目のバラツキや前記凹凸の形態を表現できないので、各項目のバラツキをも加味したより総合な評価が望ましい。
【0024】

【0025】
又、前述の分析装置の如く、逐次測定データが得られる対象サンプルへ、かかる距離による正常,異常の判定を行う場合(リアルタイム型)、対象データを入手した時点で、即判定出来れば、処理効率や後作業の低減に繋がる。従って、対象データを収集した時点で、基準とする空間からの乖離距離や、各項目の寄与度や影響度を開示することにより、その効率が向上する。
【0026】
分析装置では測定データに起因するプロゾーン・チェック異常,サンプリング異常,試薬分注異常,撹拌機構の異常,粘度の高い試薬のボタ落ちや飛散,試薬の組合せの関係によるノズルの汚染や結晶析出などがある。このため、各装置の時系列な動作に対応できる異常過程部の検出やその原因を素早く判ることは重要である。
【0027】
従来、この種の原因分析や調査は、異常データがある程度纏まった時点で、専門人手により、実施されていた。
【課題を解決するための手段】
【0028】
多次元項目の項目間の相関を考慮した計測指標であるマハラノビス距離の高精度・高信頼化を実現するために、マハラノビス距離の算出過程において計算手段1を具備させるものである。また、真値やグレードが不明な未知の対象データに対し、データ入手時にも計測項目の寄与度・影響度を認識できる計算手段2を具備させて、高効率化を実現するものである。
【0029】
前述の計算手段1,2とは、前記例示した分析装置の最終分析結果に至るまでの連続性のある時系列データや、その各分析装置から得られる項目毎の結果を収集して、より総合的なデータ群としている離散的なデータにも適用できる。
【0030】
前記計算手段1とは、収集されたデータ(項目数がk個:表(1))群に対して、各項目間の相関(下表(2))を考慮した積和ベクトル(k個:表(3))を形成する。次に、かかる積和ベクトル(1〜k個)において、その形態(パターン)を表現し得る特徴量を算出し、それらの特徴量を、新たな総合距離算出のための一つの変数(表(4)変数1)とする。例えば、1〜k個の平均値、1〜k個の勾配である。更に、前記積和ベクトル(k個)の各項目のバラツキを表現し得る特徴量を算出し、それらの特徴量を新たな総合距離算出のための一つの変数(表(4)変数2)とする。以上、新たな特徴量を少なくとも2つ準備し、新たな特徴量における総合距離(マハラノビス距離:表(6))を算出する。かかる処理は、正常品および正常状態による基準とする空間の作成時に適用(表(5))される。以上の処理過程を、以下の表Noより、説明する。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
前記、新たな1〜k個の平均値とすると、変数1は従来のマハラノビス距離と合致する。一方、変数2は、前記積和ベクトルの各構成の要素の要素間の相関を考慮した項目のバラツキを表している。つまり、新たな変数1では、項目偏差の平均的な形態(パターン)を表し、変数2では、そのバラツキを表している。よって、少なくと2つの変数にて、それらの総合距離を求めることにより、形態の偏差とそのバラツキをも考慮した総合距離とすることができる。更には、各特徴量間の新たな相関係数を求め、それらの相関係数を使用するので、形態の偏差とバラツキの関係をも抱合している。
【0034】
前記計算手段2とは、前記計算手段1にて算出された積和ベクトル群(表(3))において、前記基準とする空間の作成時に作成されたデータ群(表(7))により、各要素間の平均値と標準偏差とを求める。
【0035】
【表3】

【0036】
かかる平均値と標準偏差により、前記相関を考慮した、基準とする空間の各要素の挙動範囲或いはバラツキを考慮した各項目の許容範囲域を規定できる。
【0037】
未知のサンプルが収集された時点で、前記未知の積和ベクトル(1〜k個:表(8))も同時に算出されるので、かかるベクトル(1〜k個)値と前述の挙動範囲又は許容設定域値とを要素毎に対比或いは比較することができる。前記かかる積和ベクトルは、前述の如く、各項目間の相関を加味したベクトルであり、前記総合距離を算出している構成要因であるので、かかる距離と強い相関にある。総合距離の大小に係わらず、各構成の挙動形態は距離の形態をも反映しており、積和ベクトルの各構成要素の形態と距離とが線形関係で説明できることになる。但し、基準とする空間作成時の許容域内の項目の挙動は、説明できない。
【0038】
【表4】

【0039】

【0040】
従って、上図の参考図を例に取ると、要素:w6,w10,w13が大きく許容域から大きく離れているので、距離を大きくしている要素であり、且つ、その寄与度或いは影響度はw6≫w10>w13であることが判る。
【0041】
従来では、前述の収集データ(表(1))の項目とマハラノビス距離との関係を直に分析・調査するので、各項目間の相関が考慮されていないので、項目間の交互作用項や2次項を追加しないと良好に説明できなかった。従って、前述の交互作用項や二次項を表現するのにデータが不足し、ある程度のデータが収集されないと分析・調査等を実施出来なかった。
【0042】
以上、前述の計算手段1,2により算出されたデータは、一連の総合データ(表(9))として、開示する同時に、所定のデータベースに格納されて行く。
【0043】
【表5】

【0044】
前述の自動分析装置では、各検査の項目毎(臨床上の検査項目)に、反応過程に関するデータベースを構築するため、当該自動分析装置(検査項目)で測定したデータ群と、分析条件が異なり、結果が一定の許容範囲内の(一致している)測定結果を取得する演算部を備える。さらに、上記における異なる条件の測定においても、異なる結果が得られた測定結果を用いて、上表(9)の一連のデータとで、判定論理の最適化を行う演算処理部を備えた。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば次の効果がある。
(1)多項目の総合計測時の信頼性と異常・正常の判別力又は認識力が向上し、その確 度が向上する。(実施例1,2)
(2)多項目の総合計測時の総合的な評価指標と、前記評価指標の構成要素である各項 目とを連動させることにより、異常が生じた場合にも、基準とする正常状態から の距離の大小に係わらず、それらの要因や寄与度・影響を速やかに、分離するこ とができ、原因究明のための調査或いは分析等の後作業を低減でき、効率が向上 するとともに、省力化を達成できる。(実施例1,2)
(3)製造される製造品に対する製造条件や品質確保データの信頼性が向上する。特に 、ラインに異常が発生していても、製造物が正常値の範囲に収まる異常な製造条 件や検査結果を検知することが可能となる。
また、製造条件検査結果が正常値の範囲外であっても、収集データに異常が見 られなければ、工程毎の処理が正常に終了されたことになるため、無駄な調査や 分析が不要になる。(実施例1)
(4)製造される製造品に対する製造条件や品質確保データの異常検出やその分析に関
する信頼性が向上するため、原因や名工程再構築のための条件出し等の無駄な作
業を削減でき、製造ラインのランニング・コストを低減できる。又、検査時間を
短縮できる。(実施例1)
(5)データの検査の信頼性が向上する。特に反応過程において異常が発生していても 、測定データが正常値の範囲に収まる異常な測定結果を検知することが可能とな る。また、検査結果が正常値の範囲外であっても、反応過程データに異常が見ら れなければ正しく測定されたことになるため、無駄な再検査が不要になる。(実 施例2)
(6)反応過程データに対する検査項目に対して測定異常に関する信頼性が向上するた め、無駄な再検査を削減でき、自動分析装置の検査についてのランニング・コス ト(すなわち検査試薬や洗浄液などの消耗品)を低減できる。
また、検査時間を短縮することができる。また反応過程データの保存を測定異 常データのみにすることができるため、データ記憶に関するコストを抑制するこ とができる。(実施例2)
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明の実施例を図1により説明する。
【0047】
品質管理計測システムの構成例を図1に示す。かかるシステム例においては、製造装置1,検査装置2,検査装置3,工程管理と検査結果を収集するラインコンピュータ5から構成され、ネットワーク4とを介して、所定の工程における種々の製造条件やその検査結果が逐次、前記ラインコンピュータ5のデータベース51格納できるように構成されている。
【0048】
従来、かかるシステムにおいては、製造品の品質の維持やその製造条件等を逐次監視を行い、場合によっては、その製造条件等を前記収集された情報から分析・調査した後、製造条件等の設定の変更等を行い、或いは製造された品物が仕様範囲であるか、或いは製造の管理規定値内であるか等を常時監視して、品質の確保と維持に努めている。
【0049】
かかる前述の分析・調査には、従来一般の品質管理法である管理図やヒストグラム等が活用されている。又、データ群の分析や解析には、重回帰分析,分散分析,多変量相関図,多変量解析等の手法が活用されている。前述の管理や分析,解析には、前記データベース51内に収集されたデータを基にして実施される。
【0050】
一方、かかるシステムにおいて、前記データベース51のデータを基にして、製造条件や品物の仕様範囲,結果等を統合して、マハラノビス距離によって一元化し、正常値群(基準とする空間)との距離のみにて、より総合的に異常品,正常品或いは劣化度の進捗状況等をより総合的に判別・認識できるマハラノビス・タグチ法を適用して、製造条件や品物の品質の維持と確保とを行っているシステムもある。
【0051】
本発明における実施例でも、かかる当該システムにおいて、正常値群(基準)との異質度や隔離度を従来のマハラノビス距離による総合的な判別・認識と同様に、総合距離を用いて実施するが、最終的な判断・識別はよりその判別・認識力を向上させた総合距離にて行う。更に、対象物のデータ収集時に、計測項目の順位付けを行い、その寄与度や影響度をも評価できる処理を行い、前記総合距離との一連の総合結果情報として開示する処理を行い、省力化と効率の向上を行う。
【0052】
以下、その処理機能の概略フローを図1により説明する。
【0053】
1−1)収集されたデータ群(前記データベース51内のデータ群、或いは実験・テス トラン時のデータ群)から、正常品(制定した規格値或いは仕様以内で、検査に合 格する良品のデータ群)のデータ群を抽出収集する。「総合判定用データ収集部1 0」
1−2)「総合判定用データ収集部10」にて、項目毎の平均値,標準偏差や、項目間 の相関係数,分散行列や固有値,固有ベクトル等の基本的な統計量を算出する。「 基本統計量の算出部20」データを「データベース51」に格納する。
1−3)「総合判定用データ収集部10」と「基本統計量の算出部20」により、項目 間の相関係数を考慮した積和ベクトル(計算手段1又は処理1)を算出する。次に 、前記サンプル毎の積和ベクトルの平均値,標準偏差を算出する。更に、前記、算 出された各ベクトルの平均値と標準偏差を新たな変量として、新たな基準とする空 間(マハラノビス距離群)を作成する。この新たな総合距離を基準(総合距離の0 点)としてデータベース51に格納する。かかる計算時、前記平均値は従来のマハ ラノビス距離である。「計算手段1,2:40」
更に、前記積和ベクトルの項目毎の平均値,標準偏差を算出し、データベース5 1に格納する。「計算手段1,2:40」
1−4)前記「計算手段1」により、未知のサンプルに対して算出された基準とする空 間からの総合距離と、前記「計算手段2」により算出された基準とする空間の作成 時の積和ベクトルの各項目毎に、未知のサンプルに対して算出された対象データの 積和ベクトルの値を各項目毎に対比或いは比較し、項目毎の寄与度や影響度の大き い順に各項目を順位付けを行い、前記総合距離と一連のデータ列とする。かかる情 報にて、総合的な判断や識別を行う。「判定・評価部30」
図2,図3には、図1の概略機能の詳細なフロー(算出フロー)を示したもので、図2は総合判定時に使用する基準とする空間の作成フローであり、図3は未知の対象データが収集され時の総合距離の算出と、積和ベクトルからの項目毎の寄与度や影響度の算出するフローである。図中、図1に示す10〜40の機能該当部を点線で付記し、データベース400は、各部位毎に細分化(401,402,403)して図示した。
【0054】
以下、従来のマハラノビス距離による判断・識別法と相違する計算手段1,2について、詳細に説明する。
【0055】
図4(a),(b),(c)には、総合計測時の各項目の挙動を模式的に示した図であり、(a)図は全体な計測項目の挙動、即ち総合計測時の各項目のデータ構成(図2のX(i,j)、又は図3のXd(i,j))である。或いは、前述の積和ベクトルの構成である。
【0056】
前記データ群の1からk個の各計測の値、或いは積和ベクトルが、x1〜xkであり、各項目間のばね:riiで連結されており、そのばね定数を項目間の相関係数と等価としている。従って、これらの各要素は強固に連動して挙動する。
【0057】
基準とする正常時の空間のサンプル群は、下図において、黒く塗り潰した範囲内で、挙動するので、かかる項目間の偏差Δdx(j)間、更には、そのサンプル間でも有意差がなく、均一な空間となっている。
【0058】
一方、ある未知の対象データが収集され、前述の各項目がx(j)xの位置になったとする。この時、各項目は基準とする空間の各項目の中心位置から、中心間でΔdx(j)の偏差が生じる。同図(b)に示すように、これらの1〜k個の偏差を繋いだ曲線は、前記各項目のΔdx(j):偏差の形態(パターン)を表している。従来、かかるk個の偏差の平均的な偏差或いは位置がマハラノビス距離となっており、この平均な偏差或いは位置の大きさにより、正常品に対する(基準とする空間からの乖離距離)異質度等を判断している。
【0059】
しかし、前述の値は、同図(b)に示す如く、各項目(1〜k個)の偏差或いは位置の平均値であるから、1〜k個の基準とするデータ群の中心を結んだ軸と平行となり、各項目の変動や、項目間での影響度の相違、或いはそれらの大きさの順位は不明である。更に、前述の各項目の偏差或いは位置の平均値が変化すると、その値と連動して、各項目間の挙動も変化する。つまり、従来では各項目に凹凸の形態があるにも係わらず、その形態を平均的な偏差のみにて代用し、前記(b)と直交方向にある同図(c)に示した各項目の個々の変動(バラツキ情報)を取り上げていない。或いは無視されていた。
【0060】
このため、本発明では、多々の検討を行った結果、前記各項目の凹凸の形態変動の情報を、前記距離の算出時に、同時に取り込めることを可能とし、前記、距離と連携してより総合的な距離を求めるものである。
【0061】
図4−1(a)には、図1における正常品のデータ収集において得られたデータ群から、ランダムに64個のデータを抜き出し、サンプル間と項目間の分散分析を実施した結果である。尚、使用した項目は17項目である。一方、図4−1(b)には、図1におけるデータ収集時に、明らかに正常品以外のデータとして取り扱ったデータ群から、ランダムに60個のデータを抜き出し、サンプル間と項目間の分散分析を実施した結果である、図4−1(c)には、同図(a)にて使用したデータ群から基準となるマハラノビス空間(従来法)を作成し、同図(b)のデータ群におけるマハラノビス距離(従来法)を求め、サンプル間とマハラノビス距離との分散分析を実施した結果である。
【0062】
図4−1(a)に示すように、収集された正常品の処理前データ群では、項目間のみが有意であり、各項目が形態(パターン)が大きく寄与していることが判る。
【0063】
図4−1(b)に示すように、正常品以外の処理前データ群では、項目間は有意であるが、サンプル間では有意差なしである。一方、図4−1(c)では、サンプル間と算出されたマハラノビスの距離間では、マハラノビス距離間の方が有意であり、サンプル間では、依然として有意差なしである。従って、従来法にても、正常品以外のデータに対して、そこから算出されたマハラノビス距離は有意であり、サンプル間の相違が判る。
【0064】
これは、図4−1(a)の各項目の相関を考慮した正常品の形態群の基準に対しての偏差(距離)の平均値でも、項目間の挙動(形態)をより総合的に捉えられていることを意味している。つまり、未知の被検出体群に対して、それらのサンプル間でも有意差が出せるような、新たな形態(パターン)の指標が必要であり、これにより、サンプル間,項目間とも区別や分離或いは判別される。従って、より高精度のサンプル間の区別や分離或いは判別と、各項目間と距離の関係が明確化できる。このため、本発明では、図4(b),(c)に示すように、前述の各項目の形態(パターン)の平均な偏差情報(図4(b))に加え、新たに形態(パターン)を構成する項目の分散等(図4(c)では、各項目の分散の総分散)を指標を加え、これらの指標により、新たな総合距離を算出することとしている。
【0065】
図4−2(a),(b),(c)には、前述の図4−1(a),(b)に使用したデータを用いて、本発明の新たな評価指標を加えた場合の、サンプル間,項目間,新たな総合距離の分散分析を実施した結果を示す。
【0066】
基準とすべき空間のデータ群は図2のフローに従って処理し、各項目の相関を考慮した積和ベクトル(図2;(4))−1)を算出し、この積和ベクトル群から、平均値,平均値変動分散,項目総分散を求め、更には前記平均値と項目総分散の2変数から、その総合距離(図2;(4)−2−1)を算出した。より詳細な処理フローと新たな総合距離を求めるための変数については後述する。
【0067】
図4−2(a)は、17要素の積和ベクトル群のみの分散分析結果であり、基準とすべきデータ群では、サンプル間,項目間でも有意差がない。これは、各項目毎に、その平均値と標準偏差にてデータを基準化(図2:(2))し、等分散としているためである。又、かかる基準とするデータ群では、両者間での有意差が全くないので、より均一化した空間を作成できていることが判る。このため、その判別するための総合距離としての閾値や、各項目の許容範囲を明確にする必要がある。
【0068】
一方、対象データ群では、サンプル間,項目間とも有意差があり、好適な評価指標により、両者間の相違を、明確に区別や分離或いは判別を行うことが可能である。
【0069】
図4−3には、従来のマハラノビス・タグチ法による項目の寄与度,影響度を分析・調査した結果と、本発明の積和ベクトルによる分析・調査(計算手段2,図2の(4)−3,図3の(2)−3)との比較結果を示す。使用したデータ群は前述の正常品以外のデータ群(図4−1(b)のデータ)とした。又、従来のマハラノビス・タグチ法では、信号値がある場合(信号対マハラノビス距離との一次式による動特性下;図4−3(a)の要因効果図での、項目有り無しでのSN比による評価)も、無い場合(マハラノビス距離が、項目有り無しの組合せで、大きくなれば良いという望大特性;図4−3(b)の要因効果図でのSN比による評価)にも分析・調査が可能であるので、両者を実施した。尚、その際の信号値としては、前述のデータ群を、その異常度に対応して、2〜7等級に区分し、その等級値とした。又、項目の組合せでは、項目数が17個であるので、2水準系の直交表であるL32を使用し、その第一水準がその項目を使用場合であり、第二水準がその項目を使用しない場合とした。従って、項目の寄与度・影響が大きい項目は右下がりであり、右上がりはその逆である。
【0070】
一方、図4−3(c)には、本発明の計算手段1による前述の積和ベクトルも算出結果を示す。本発明では、前記計算手段1を連続して実行する過程で生成される積和ベクトルのみを用い、未知のサンプルの項目の寄与度・影響を逐次算出することが可能である。
【0071】
前記未知のサンプルデータの積和ベクトルの各項目の大きさは、前述の正常群のデータ群(基準とする空間の作成時)における積和ベクトル群の各要素の大きさとの対比比較値、或いは絶対値としている。かかる値から、大きい順に順位付けを行い、その順位順により、要素の寄与度・影響度を評価するものである。
【0072】
図4−3(c)の例示では、基準とする空間作成時の許容域・範囲(図中太赤)に対してwd_11,wd_13,wd_17が大きく変動しており、寄与度・影響度の高い要素(項目)であることが判る。
【0073】
上記、図4−3(a),(b),(c)の各結果を比較すると、従来のマハラノビス・タグチ法における方法では、一部合致する項目があるものの、本発明の結果とは大いに相違していることが判る。図4−3の上部には、各選択手法により選択した寄与度の高い上位二つの項目を示す(図中の数値は順位付けのための、評価数値)。
【0074】
図4−4には、前記図4−3により得られた17項目の寄与度・影響度の高い項目と判断された上位2つの項目を選択して削除し、項目数15にて未知の60個の対象データに対して、基準とした空間からの距離であるマハラノビス距離を、従来の算出法にて算出した結果である。尚、図4−4図中における“距離(初期)”は17項目を使用した場合の距離である。従って、前記図4−3(a),(b),(c)から選択された寄与度の高い項目を削除しているので、それらの距離が前記“距離(初期)”に比べて小さくなれば、寄与度・影響度の高い項目であり、高い確度で選択できていることになる。
【0075】
図示の如く、従来法に比して、本発明の方が距離の低下が著しいので、好適に選択出来ていることが判る。かかる理由として、本発明では、項目間の相関を考慮した積和ベクトルの各要素を使用しているためである。この積和ベクトルの各要素は、前述の如く(図4−2参照)サンプル間,項目間でも有意差があるためである。
【0076】
以上、本発明にて適用される計算手段1,2の内容について、詳細に説明した。従来の距離の算出法に比して、サンプル間,項目間とを明確に分離でき、且つ形態(パターン)と各項目の変動等を考慮した新たな総合指標により、サンプル間,項目間をより高確度で分離或いは判別できる。
【0077】
以下、本発明の第一実施例である図1の品質管理計測システムにおいて、図5を参照して詳細に説明する。
【0078】
図1のシステムにおいて収集されるデータ群は、工程やその製造条件が相違するので、離散的なデータ群である。前記このデータ群としては、装置1からの収集できる情報としては、例えば温度,圧力,流量,処理時間,電力等であり、検査装置では形状寸法値,厚み、或いは電流値,電圧、検査装置によって分析されて分析値や測定結果等であり、これらのデータ群はデータ収集用データベース:51(図1)に逐次、図5−(1)の書式例にて、逐次格納されて行く。又、製造ラインの連続稼動前の製造条件試行時のテストデータやライン立ち上げ時のデータ等も種々格納されている。
【0079】
本発明の処理過程を、各ステップ毎に列記して、説明する。
【0080】
〔ステップ1〕:正常品或いは良品のデータ収集
前記データ収集用データベース:51の収集されたデータ群から、正常品(良品)或いは仕様・規格以内と判断できるデータ群を抽出し、図5−(1);テーブル51に示す書式例に従って整理する。収集するサンプル数:nは、項目数:k個以上とする。ここで、かかるデータ群をX(i,j)とする。ここで、iは1〜n、jは1〜kである。
【0081】
〔ステップ2〕:収集したデータ群の基本統計量の算出
前記収集されたデータ群:X(i,j)について、項目毎の平均値,標準偏差を算出し、その値をデータベース:401に格納する。更に、前記各項目の平均値と標準偏差から前記X(i,j)のデータ群を図5−(2);テーブルに示す書式例52に示すように、基準化し、項目間の相関係数行列:R(k,k)を算出する。或いは、共分散行列:Vx(k,k)等をも算出し、データベース:401に格納する。
【0082】
〔ステップ3〕:基準とする空間(基準空間)の作成
1):前記収集されたデータ群:X(i,j)と各項目毎の平均値と標準偏差と相関係数行列R(k,k)にて、以下の計算式にて、サンプル毎の積和ベクトル:w(i,j)を算出する。この積和ベクトル群の算出例を図6(a);テーブルの書式例53に示す。
【0083】
【数2】

【0084】
この時、かかる積和ベクトルw(i,j)の項目毎の平均値:w_m(j)と標準偏差:w_s(i)とを、データベース:402に格納しておく。
【0085】
同図6(b)には、この積和ベクトルの項目毎の応答値をグラフ化した例を示し、太い赤点線は、前記図6(a)で算出した、各項目の平均値に3倍の標準偏差を付加した時の、その挙動の範囲域である。
【0086】
2)−1:積和ベクトル群w(i,j)の特徴量の抽出
前記ステップにて算出した積和ベクトル群w(i,j)(図6(a)参照)において、サンプル毎にその特徴量を抽出する。本実施例では、特徴量として、前記積和ベクトル;テーブル53の項目1〜k個までの偏差の平均的な偏差と(前述の図4(b)に相当する形態の平均的な偏差)と、前記項目1〜k個の分散(前述の図4(c)に相当)とした。かかる特徴量はサンプル毎のベクトルの平均的な形態(パターン)と、項目1〜k個の総分散の大きさを示している。かかる二つの新たな変量を算出する。算出結果の例を図7−1;テーブル54に示す。
【0087】
2)−2:積和ベクトル群からの抽出された特徴量毎の平均値,標準偏差とそれらの相 関係数の算出
前記積和ベクトルから抽出された新たな2つの特徴量から、かかる特徴量の各特徴量の平均値:wx_m(j)と標準偏差:wx_s(j)を算出し、更にはそれらの特徴量間の相関係数行列:Rx2を算出し、データベース402(テーブル55)に格納する。
【0088】
算出結果の例を図7−1;テーブル55に示す。
【0089】
かかる特徴量と相関係数行列から、それらの総合距離を以下の式にて算出し、総合距離:D0(i)とする。
【0090】
【数3】

【0091】
算出結果の例を図7−1,56テーブルに示す。
【0092】
図7−2(a)には、基準とする空間のn個(200ヶ)のデータ群に対する新たな総合距離D0(i)の分布図と度数分布を示す。尚、図中、従来法におけるn個のマハラノビス距離の計算結果も示す。
【0093】
図7−2(a)から、従来のマハラノビス距離と、本発明の積和ベクトルから求めた第一の特徴量(図7−1の54テーブルの変数1“平均値”)とは合致していることが判る。従って、従来のマハラノビス距離は、形態(パターン)の平均的な偏差のみを表現していることが判る。本発明の総合指標では、前述の如く1〜k個の項目の総分散も考慮しているので、その距離の平均値は1以下になっているが、0〜4の範囲でばらつき、従来法と同様に4以上のものはない。
【0094】
図7−2(b)には、サンプル間,項目間の分散分析結果を示す。収集された正常品のデータ間においては、そのサンプル間、積和ベクトルの要素間では一切有意差がない。このため、収集されたデータ群は均一であり、更には、かかる空間内に該当するデータは判別・認識力が無いことが明白である。一方、評価指標間においては有意差がある。従って、前記図7−2(a)の空間の分布より、判定のための閾値を決めて判定や判断している理由である。本実施例では、総合距離で0〜4を基準(正常範囲)としている。尚、図7−2(b)中において、要因Bは、前述の新たな特徴量に加え、前述の積和ベクトルから求めた平均値の変動分、項目の標準偏差または総分散とを分析項目に追加している。
【0095】
〔ステップ4〕:対象データの総合距離の算出
前述のステップ1〜3にて、基準とする空間の形成と基本的なデータ群が準備できた。
未知の対象データに対しては、かかる情報を基に、前記図3に示すフローに従って、新たな総合距離と項目の寄与度・影響度が算出される。その詳細フローを図8に示す。
【0096】
(1)対象データの総合距離の算出
1)前述の基準の空間の作成時の〔ステップ2〕と同等の書式52でデータを収集す る。データ群をXd(i,j)とする。
2)対象データ毎に、前記データベース:401を参照して、積和ベクトル:wd( i,j)を算出する。算出結果例をテーブル53に示す。
【0097】
【数4】

【0098】
3)前記算出された積和ベクトル:wd(i,j)のサンプル毎に、テーブル54に 示すように、新たな特徴量である各項目の平均値と分散とを算出する。
4)前記算出された特徴量と、前記データベース:402を参照して、テーブル56 に示すように、各サンプルに対して、総合距離:Dx(i)を算出する。
【0099】
【数5】

【0100】
(2)対象データの積和ベクトルと基準とする空間作成時の積和ベクトルとの比較
本発明では、前記算出されたテーブル53の積和ベクトル:wd(i,j)と、前述の基準の空間を作成時に作成されたデータベース:402内の積和ベクトルの平均値と標準偏差情報(図6(a),テーブル57参照)を用いて、サンプル毎の応答値を算出し、どの項目が寄与或いは影響しているのかを算出する。前記、基準の空間の作成時に得られる積和ベクトル:w(i,j)は、図7−2(b)に示すように、そのサンプル間、要素間とも有意差がない。又、図6(b)の如く、各構成要素は所定の平均値と標準偏差を有し、所定の変動範囲を有している。つまり、この変動範囲は正常品における各要素の変動範囲であるので、この変動範囲域から離脱している要素は、総合距離に対する寄与度・影響度が大きく、一方、範囲域内であれば、前記正常品における変動範囲内であるので、その寄与度・影響度は小さいものと判断できる。更に、前述の如く、図4−3(c),図4−4から、かかる判断で項目を削除した場合、総合距離が小さくなり、寄与度・影響度の大きな要素であることが判っている。
【0101】
従って、本発明では、総合距離の算出過程で生成される積和ベクトル:wd(i,j)の各構成要素の応答値(出力値)と、基準とする空間作成時の各要素の変動範囲とを、個々(1〜j項目)に対比して、各要素の寄与度・影響度を算出する。
【0102】
前記、各要素の対比値は、前記積和ベクトルwd(i,j)の値そのもの(絶対値)でも良く、或いは、wd(i,j)の値から前記w(i,j)の変動範囲を加味した値を引いた値でも良い。更に、各要素の基準とする空間作成時の各積和ベクトルの平均値:w_m(j)と標準偏差:w_s(j)にて、正規化した値:δ(j)でも良い。δ(j)の算出式を下記に示す。
【0103】
δ(j)=(wd(i,j)−w_m(j))/w_s(j)
【0104】
(3)上述の(1),(2)項の処理にて算出された“総合距離”と“各要素の寄与度・影響度の大きさの指標値”は、サンプル毎に、一連のデータとして、例えば図3のデータベース:403に、所定の書式にて格納されて行く。
【0105】
以上、前述の(1)〜(3)の処理は、未知の対象データが収集された時点で、一連の実行処理内で実施され、且つ逐次格納されて行く。このため、その結果を逐次開示できるので、リアルタイム性に優れる。
【0106】
図9−1(a),(b)には、未知の対象データ60個について、前述の(1)〜(3)の処理を実施した結果を示す。図9−1(a)には、算出された新たな総合距離を示し、同図9−1(b)には、前記積和ベクトル値そのものを示す。図9−1(a)中、総合距離に関しては、比較のために、従来の隔離距離であるマハラノビス距離を示す。更に、図9−2(c)には、対象データ60ヶのサンプル間−17項目間,サンプル間−総合距離と総合距離算出時の特徴量間(形態の平均値,平均値の変動,項目の総分散又は標準偏差,総合距離)の分散分析結果を示す。同図9−2(d)には、前記積和ベクトルの各項目の基準とする空間の作成時の応答と、対象データ群の応答値に対して、前記基準とする空間作成時の平均と標準偏差にて正規化(前述のδ(j))した場合の応答値との比較を示す。
【0107】
図9−1(a)の結果から、従来に比して、距離の感度で1.5倍、且つ標準偏差で1.5倍となり、これらの総合指標を (m:平均値/σ:標準偏差)2として評価すると、同等である。従って、より高感度で安定な評価ができている。しかし、一般的には、距離の高感度化に伴って、その標準偏差も増加してしまう。これは本実施例では、未知の60ヶのサンプル全数に対しての評価となっているためである。かかる背景から、本発明では、図9−1(b),図9−2(d)に示すような項目毎の寄与度・影響度のパターン情報を付与し、項目毎の変動パターンを明確化し(項目の寄与度・影響度を順位付け)、同様なパターン下での評価を行うこととしている。この理由として、図9−2(c)の対象サンプル全数の分散結果から、サンプル間−積和ベクトル間の要素間、およびサンプル間−総合距離、および総合距離算出時の特徴量でも有意差があり、分離可能であるためである。
【0108】
例えば、図9−1(b),図9−2(d)の応答値の形態(パターン)より、本実施例の未知サンプルでは、寄与度・影響度の高い項目数は5〜6項目であり、これらの応答値の相違で総合距離がばらついているものと、容易に推定できる。
【0109】
図10には、図9−1(b)の応答値から、比較的類似したパターンを抽出し、区分けした結果を示す。結果的に、図に示すように、6パターンに区分できた。図中、赤の点線は基準とした空間の作成時の各項目(積和ベクトルの各要素)の応答値の許容範囲を示している。区分P_1は総合距離は何れも4以下と小さく、且つその各項目も基準とした空間の作成時の各項目の応答範囲域内であり、正常品と同等と判断できる。
【0110】
一方、P_2〜P_6においては、それらの総合距離は4以上であり、総合距離が大きくなるにしたがって項目の応答パターンが相違するとともに、何れかの項目が基準とした空間の作成時の各項目の応答範囲域以上の応答値を示していることが判る。特に、P_4〜P_6では、各区分域にて類似パターンを示しているが、その区分域内での項目のばらつきが大きいことが判る。従って、全体的には、距離のばらつきが大きくなっているが、個々の区分域でみれば、寄与度・影響度の大きい項目の変動の大きさが相違しているので、その総合距離も相違している。つまり、算出された応答値と総合距離により、より総合的な判別や判断のための情報が必要であることを意味し、本発明では、これらの情報を提供できているということである。かかる理由により、従来に比して、より高確度でしかも信頼性の高い判別や識別が可能となっている。
【0111】
図11−1(a)には、前記図10のP_5区分の詳細な応答値と項目毎の応答値を示す。総合距離の値とそれらの各応答図から、P_5−gr1,P_5−gr2の如く2つに細分化でき、更に、それらの応答値の形態も異なっていることが判る。前記区分gr1では、項目11,12が寄与度が高く、前記区分gr2では、項目17と項目11の寄与度が高いことが判る。したがって、総合距離の値に伴って、その主原因も相違しているものと判断できる。
【0112】
図11−1(b)には、前記図10のP_4とP_5区分において、それらの総合距離がほぼ同程度の各項目の応答値を示した図である。図に示すように、それらの総合距離は同程度であるが、区分P_4のサンプルは、区分P_5のサンプルに比して、項目3が+方向に大きく変化し、その変化分で総合距離が大きくなっていることが判る。従って、総合距離が同程度であっても、各項目の変動の大きさやパターンが相違していることを明確に分離できるので、原因究明時の判断や識別にも大いに役立てることができる。
【0113】
更に、図11−2(c)には、前記図10のP_5区分において、総合距離と寄与度の高い項目間の関係を示した。本発明では、前述の如く、未知の対象サンプルに対して、算出された総合距離と項目間の応答値とを一連のデータ(図3参照)として、逐次、前記データベース403に格納されて行く。未知のデータが増加するに従い、各項目の応答値の形態と総合距離とが所定のばらつきの範囲内で纏まったデータ群になり、例えば、前記図10の例で示したように、6群に整理することができる。かかる場合、各群に対して、新たなデータベース(図示なし)を作成し、それらのデータベースに対する総合距離を算出して、どのデータベースに合致しているかを判断し、前記未知の対象データを区分して分類することも可能である。
【0114】
或いは、図11−2(c)では、未知の対象データを処理して行く過程で、P_5区分のように纏まったとする。この時、前記P_5区分(図10参照)では、総合距離としては最小で41.0であり最大で232.2であるが、寄与度の高い項目は11,13,17の3項目である。よって、これらの応答値の大きさの相違により、総合距離が異なっていることが判る。かかる総合距離と項目11,13,17の3項目間の関係を重回帰分析にて分析した結果が図11−2(c)である。図より、項目11,13,17の3項目と総合距離とが高精度で関連付けられていることが判る。従って、かかる重回帰式により、算出された総合距離と項目間の応答値との関係を推測したり、或いは判断・認識やデータの分析・調査等にも大いに役立てることができる。
【0115】
以上、実施例1により、本発明の計算手段1,2により算出される総合距離と項目毎の積和ベクトル群(応答値)を使用することにより、より確度が高く、且つ安定で、信頼性が高い総合評価のための総合距離指標と、前記総合距離と強固に連携している積和ベクトル群の応答値とを得ることが出来き、かかる情報により、総合計測の質を向上することができるとともに、製造品の品質の向上に寄与できる。
【0116】
前述の実施例1では、前記計算手段1において(図2では(4)−2の特徴項目、図3では、(2)−1計算手段1の説明部、図7−1と図8ではテーブル53)、収集されたデータに対して積和ベクトルを算出し、その積和ベクトルに対して、形態(パターン)の平均的な偏差と各項目の総分散或いは標準偏差とを新たな特徴量として例示し、それらの特徴量は従来の統計手法で広く使用されている方法で算出した例にて説明した。しかし、本発明では、これらの特徴量の算出法やその指標は限定されるものではない。更に、前記特徴量としては、少なくとも形態(パターン)偏差とそのばらつきとを的確に表現できる特徴量であれば良く、これらの特徴項目とその数は限定されるものではない。
【0117】
図12には、前記実施例1とは異なる算出法にて、前記形態(パターン)偏差とそのばらつきとを算出するフローを示す。基準とする空間の作成処理や未知の対象データに対する基本的な処理フローは変わらない。しかし、図12に示すように、前記形態(パターン)偏差とそのばらつきとを算出するフローのみが異なっている。本フローにおいては、基本統計量の算出時、特に(3)項目間の相関係数の算出過程において、新たに固有ベクトルとその固有値を求めて、その値をデータベース401に格納しておく。かかる情報より、同図、(4)−2示すような計算式にて、Mp:前記固有ベクトルと固有値から算出される積和ベクトルの総和の平均値,Mv:前記固有ベクトルと固有値から算出される前記Mp方向と直交方向の積和ベクトルの総和の平均値または総和の二つの変量をサンプル毎に算出する。
【0118】
前記、Mpは直交化された固有ベクトルの一つの方向の総和であり、この値は前記形態(パターン)偏差の平均的な偏差(図4(b))を表している。一方、Mvはもう一方の総和であり、Mpの直交成分つまり、ばらつきの総和(図4(c))を表している。かかる2つの変量を特徴量として、(4)−2−1に従い、総合距離を算出する。
【0119】
図13には、前記図12により算出した特徴量にて、前述の実施例1の未知の対象データに対して、その総合距離を算出した結果を示す。図より、算出時の算出法の相違による誤差は伴うが、実施例1の結果と同等であり、機能を損なっていないことが判る。尚、本フローでは前記計算手段2は変わりなく、前記データベース:403内に同様の書式にて格納され、前記総合距離と強固に連携している。
【0120】
以下、本発明の他の実施例について説明する。
【0121】
前述の実施例1では、対象とするデータ群は、各製造装置や検査装置から得られるデータ群であり、項目間には相関があるが、データ群としてはほぼ離散的な多項目のデータ群として捕らえることが出来る。
【0122】
一方、前述のデータ群の他のデータ群としては、音波や地震波形のような時系列のデータ群がある。かかるデータ群に対しても、本発明の処理や計算手段が適用できるので、以下その実施例について説明する。
【0123】
図13には、他の実施例である生化学自動分析装置の概略構成を示す。
【0124】
主な機構系としては検体ディスク200,反応ディスク100,試薬ディスク300から構成されている。検体ディスクには、分析処理を開始する前に、予め幾つかの検体が架設される。分析が開始されると検体分注機構400によって所定量の検体が吸引され、反応ディスクの所定の位置に吐出される。反応ディスク上の検体は図15に示す分析のシーケンスによって分析が行われる。
【0125】
反応ディスク100を中心とした各機構部の計測時の動作位置を図14に示す。反応ディスクの内周には検体の吸光度を測定するための光源ランプ2000が設けられており、外周には光度計ユニット700が設置されている。光源と光度計の間に反応ディスク上の反応容器1200が通過するたびに、吸光度が測定される。吸光度の測定は反応ディスクの回転が開始し、一定速度になるまで加速されてから行われる。反応ディスクは毎サイクル、一定の角度で回転と停止を繰り返しており、所定の反応時間において、何度も測定されることになる。
【0126】
これらの機構系の制御は主に制御部1100と呼ばれる計算機ユニットで実行されるが、検体情報や試薬管理情報および検査依頼受付けなどを行うための操作用計算機1500が接続されており、各々が協調して動作している。
【0127】
本実施例で用いている光度計ユニット700のより詳細な構成を図14に示す。本実施例で用いている光度計ユニット2300は後分光多波長光度計と呼ばれている。すなわち光源ランプ2000から発せられる光は検体の入った反応容器1200を透過した後に、入射スリット2100で線状光線として凹型回折格子2200に入射する。ここで多波長に分光され、12波長の光度計によって検体を透過した光の光度が測定されるのである。
【0128】
図15には、本実施例で行う検体の分析シーケン図を示す。検体としては血液(白血球など)や髄液・尿などが用いられ、予め検体ディスク200上の1つの検体容器1300に設置されている。この検体を反応ディスク100上の反応容器1200に分注して分析を行う。検体を分注する前の準備として反応ディスク上の反応容器が洗浄され(A01)、水ブランクの測定が行われる(A02)。水ブランクとは検体吸光度の0点調整を行うために水の吸光度を測定することである。すなわち、この反応容器に分注された検体の吸光度値は水ブランクの吸光度値との差によって求められる。水ブランクの測定が終了すると、反応容器内の水は吸引され、廃棄される(A03)。この反応容器に所定の検体が分注(サンプリング)される(A04)。その後、所定の時刻にR1試薬(A05),R2(A07)試薬,R3試薬(A09),R4試薬(A11)が予め決められている分量だけ反応容器に加えられ、撹拌(A06,A08,A10,A12)が行われる。ここで分析項目によってはR4,R3あるいはR2の分注が行われない検査項目もある。反応過程には3分反応,4分反応,5分反応,10分反応があり、それぞれ反応ディスクが反応時間に対応する回数だけ回転した時点での吸光度を測定値とする。通常は10分反応が行われることが多い。所定の反応時間が経過し、全測光が終了すると(A13)、反応容器は次の分析のために洗浄される(A01)。
【0129】
図16には、前述の図15に示す分析シーケンスによって得られた吸光度データの典型的な分析方法を示した。吸光度から濃度演算には、一般的には、1ポイント分析法,2ポイントレート分析法,2ポイント分析法,3ポイント2項目分析法などが用いられている。
【0130】
1ポイント分析法では試薬添加から一定時刻経過後の吸光度から検査対象成分の濃度を計算している。2ポイントレート分析法では、試薬添加から定められた2つの時刻t1およびt2(t2>t1)における吸光度の差分を(t2−t1)で割った吸光度変化の時間比率から濃度を計算している。2ポイント分析法では試薬添加から定められた2つの時刻t1およびt2(t2>t1)における吸光度を測定し、t1における吸光度から、t2における吸光度に対して定数ファクタをかけた値を差し引いたものから濃度を計算している。
【0131】
いずれの場合にしても、反応ディスク上の検体が光度計を横切るたびに吸光度が測定され、その測定値の一部分を使って演算処理によって検査対象成分の濃度を決定している。すなわち、反応過程において測定された吸光度の大部分(あるいは一部)は、従来の分析方法では、かかるデータ群は使用されていなかった。
【0132】
本発明では、反応過程での異常を検知するために、前述の実施例1と同様に、前記反応過程データ一群を計算機に取り込む。反応過程のデータ群を取り込むタイミングは、本実施例では、対象となる検査が完了していればいつでも良い。或いは、反応過程において測定された吸光度データを順次取り込み、反応過程データから反応異常を判定すれば、異常検知後の試薬の分注などを停止することができるためである。
【0133】
図17(a),(b)には、前記反応過程データ群の取得例を、1波長について、示したものである。図17(a)は、前述の反応過程が正常に終了したと判断されたデータ群であり、図17(b)は、正常終了と異常終了を含むデータ群の例である。かかるデータ群は、測光ポイントを通過するたびに検体の吸光度が計測され、計算機に逐次、蓄積されていくため、図に示すように、予め定められた34点の吸光度が取り込まれる。最初の17点はセルブランク値の吸光度(図15,A02)、すなわち吸光度のゼロ点である。セルブランク値の計測ポイント数は機構系および制御方式によって決定される。
【0134】
実際の分析では、例えば12波長などの多波長についての吸光度が計測されるため、第10の波長の吸光度データを1からk番目、第2の波長の吸光度を(k+1)番目から2k番目、以下同様にして12番目の波長の吸光度を(11k+1)番目から12k番目として、12k個の吸光度データが取得される。これらすべて、あるいは一部の波長に関する吸光度を使用することによって、より確度の高い反応過程データを取得できるが、本実施例では簡単のために、前記図17(a),(b)の1波長についてのみ記述する。また各波長についての測光ポイントについては一定間隔で計測されているが、光度計を複数設置することによって吸光度データを増加させても良く、また反応過程の異常が起こりやすい箇所では、より多くの測光ポイントにおいて吸光度データを取り込み、反対に異常がほとんど生じない箇所では吸光度データを間引いて取り込んだりすることがあっても良く、必ずしも等間隔である必要は無い。ここで、各測光ポイントにおける吸光度は、それぞれの検査項目として利用される。
【0135】
かかるデータ群において、正常終了と判断した反応過程データのみを収集することにより、評価の基準となる反応過程データ群を得ることができる。ここでいう正常な反応過程とは、当該の自動分析装置において測定結果が精度を保証する範囲内となる検体に対し、再現性のある結果が得られた時の反応過程である。例えば、プロゾーン現象や検体・試薬の分注などの異常が発生した場合には、これらは偶発的な現象によるものであるため、再現性がない。すなわち装置,時刻,試薬や検体の分注量などを変えて再度測定を行っても、同じ結果は得られないので正常な反応過程ではないので、収集してはならない。一方、例えば検体特性(測定値)のばらつきや光度計(図13,700)のばらつきのように、装置が測定精度を保証する範囲内でばらつきが存在するものであれば、積極的にばらつかせてデータを得ることが望ましい。更に、前述の反応過程でのデータ群は、その分析項目に限るものとし、各分析項目ごとに反応過程データ群を収集しなければならない。これは反応項目によって分析時間や使用する試薬の種類および量が異なり、吸光度の時間変化パターンが大きく異なるためである。
【0136】
前述の反応過程データ群の総合的な評価や判断・識別のための処理フローは、前述の実施例1と同様に、基準とする空間の作成や総合距離の算出フローは前記、図2のフローと同じである。但し、基準とする空間の作成時には、上記内容を考慮しなければならない。一方、未知の反応過程のデータ群に対する処理フローも前記、図3のフローと同じであるので、詳細な説明を省略し、以下、前述の実施例1と異なる点のみ説明する。
【0137】
〔ステップ1〕基準とする空間の作成
図17(a),(b)の反応過程のデータ群では、時系列の連続データ群であり、前半部(計測のためのブランクデータ群)はほぼ一定値を示し、後半部(検体と試薬とが反応している過程のデータ群)では、ほぼ一定の勾配であり、各測定項目間で、非常に相関が高いことが判る。
【0138】
一方、かかるデータ群は連続データなので、所定の時間の域(項目数)を決めることによって任意の数に分割(分割をn区間)でき、同データ内で区間毎に平均値と標準偏差(又は分散)の二つの指標を得ることが可能である。かかる指標を項目とすることで、データ数を削減できると共に、前述の実施例1での積和ベクトルから算出する各項目の分散情報を予め特徴量として一部織り込むことが出来ているので、より信頼の高い総合距離を算出できる。但し、かかる項目でも相関係数の高い項目は不用であり、削除しなければならない。
【0139】
かかるデータ群の特徴から、本実施例では、図17(a),(b)に示すように、反応過程の反応形態を考慮して、前半部と後半部に区分し、更に後半部を4分割し、総計5分割とし、各区間における平均値と標準偏差を新たな項目として総計10ヶの項目とした。次に、かかる10項目にて、各項目の相関係数を求め、相関係数:0.99以上の高い項目の一方を削除した。
【0140】
結果的に、図18−1(a)に示すように、前半部c1,c2の2項目となり、後半部では区分4の項目のみを残し、c3,c4とし、総計4項目とした。かかる項目で、正常終了している反応過程のデータを、テーブル51に従い、400個選択して収集した。基準とする空間の作成は、前記、図2に従い実施した。その結果を図18−1(a)に示す。
【0141】
前述の実施例1の結果(図7−2(a)参照)と比較すると、同程度の度数分布形態であり、又その平均値も同等であるので、取り扱うデータの性状の差異による問題は生じていないことが判る。
【0142】
〔ステップ2〕対象データの総合距離の算出
(1)項目数4による総合距離の算出
前述の図17(b)に示す反応過程のデータ群を別途、100ヶ収集し、その総合距離を、前記、図3のフローに従い算出した。尚、総合距離の算出のための新たな特徴量としては、前述の実施例1(図8,テーブル54参照)と同様である。
【0143】
算出した結果を図18−1(b)に示す。尚、比較のために、従来法による算出結果も列記する。結果としては、図に示すように、従来法に比して、前述の実施例1と同様に、従来に比してより高感度化と安定化とを達成できていることが判る。又、前述の実施例1の結果と比較しても同等であると判断できる。
【0144】
従って、前記積和ベクトルから求めた新たな特徴量は、本実施例の如く、時系列の連続データ群の総合距離算出時においても、その距離をより一層の安定化でき、且つ高感度化できる特徴量(項目)であることが判る。
【0145】
又、本反応過程の実施例のデータ群では、前述の実施例1のデータ比して、その全数の指標である (m:平均/s:標準偏差)2は1.2倍に増加し、より高感度で安定化方向にあることが判る。これは、前述の実施例1のデータ群と本実施例のデータ群の項目の相違によるものと推察される。つまり、本データ群では、前述の如く、各項目(項目:c1〜c4)に、データの準備段階で、形態(パターン)の偏差情報とその分散情報とが付加されているためである。前述の実施例1のデータ群では、収集されるデータ群は、本反応データ群のような連続的なデータではないので、離散的なデータ群の集合となり、前述の計算手段1を経由しないと、そのばらつき(分散)情報が得られないためである。
(2)項目数7による総合距離の算出
前述の(1)項の結果から、かかる反応データ群では、項目数4のみでも、項目の分散情報をデータ収集時にある程度織り込むことかできるので、より高感度で安定な総合距離を算出できることが証明された。一方、従来の方法或いは一般的な観点から、評価する項目数(データの特徴を十分に表現でき、寄与度の高い項目)が多ければ、より高感度で且つ安定できるのは周知である。かかる理由より、本実施例では、反応過程データの形態の特徴を加味した項目を、新たに3項目追加して、前述の(1)と同様に、その総合距離を算出した。
【0146】
図18−2(a)に、そのデータ構成を示す。前述のc1〜c4(図18−1(a)参照)に加え、書式511に示すように、cn1〜cn3の3項目を追加して総計7項目とした。前記cn1〜cn3は、前述の反応過程データ群(図17(a),(b)参照)の後半部、即ち試薬と検体とが反応して進行している反応過程のデータ群において、その形態を表現できる項目あれば良いので、この候補として、反応初期点から終端点までの平均的な勾配、又はスパン(反応終端点−反応初期点)、或いは反応初期点の吸光度データ値,反応終端点の吸光度データ値,反応中間点の吸光度データ値,前記勾配の分散、更には、非線形性,曲率等があるが、本反応データ群では項目間の相関と、直線的に変化しているデータ群であることから、最終的には3項目(スパン,反応初期点,中間点の吸光度データ値)とした。
【0147】
以上のデータを再度準備して、前記図2,図3のフローに従い、総合距離を算出した。その結果を図18−2(b)に示す。加えて、前述の(1)項の結果をも列記した。
【0148】
結果としては、図に示すように、従来法に比しては、より高感度化と安定化とを達成できている。又、前述の実施例1の結果と比較した場合、本データ群では、前述の実施例1のデータ比して、その全数の評価指標である (m:平均/s:標準偏差)2は低下したが、その平均値と標準偏差の倍率がほぼ一定となったためであり、前述の実施例1の結果と一致している(図9参照)。従って、かかる項目は総合距離算出時において、その距離をより一層の安定化する(総合評価指標の変数である形態の偏差とその分散との比率が同等になる)項目であることが判る。
(3)計算手段1の積和ベクトルの特徴量と総合距離
前述の(1),(2)項の結果から、かかる反応データ群では、項目数4或いは7項目でも、項目の分散情報をデータ収集時にある程度織り込むことかでき、更に反応過程データ群の特徴にあわせた特徴項目を追加することで、算出される総合距離は、より高感度で安定化した距離であることが証明された。本実施例では、前記(2)項の7項目のデータを使用し、更に、前記計算手段1において、生成される積和ベクトル群(図2,3のw(i,j),wd(i,j)参照)から、これらの特徴量から総合距離を算出する過程において、前記積和ベクトルの形態偏差の変数と分散の変数に加え、新たに、前記積和ベクトルの挙動をより的確に捉えることができる変数を追加した場合の総合距離の算出を行う。かかる変数としては、前述の(2)項で例示した特徴量のいずれかを組合せて使用することが可能である。本実施例では、以下に示す特徴量にて、総合距離算出した。
【0149】
以下、図19,図20を参照して、説明する。
【0150】
{s3−1:総合−1xの特徴量(図19参照)}
前記図18−2(a)にて、算出した積和ベクトル:wd(i,j)から、図19のテーブル541:wdx(j)に示すように、新たに変数3の特徴量を追加し、総数3つの特徴量とした。前記変数3の特徴量は、前記積和ベクトルwd(i,j)において、前記積和ベクトルの各項目間を連携した長さであり、これは基準とする変形状態からのある状態に変化した場合に、それに費やされるエネルギ(変形させるためのエネルギ)を代替している一つの特徴量である。
【0151】
{s3−2:総合−2xの特徴量}
前記図18−2(a)にて、算出した7個の積和ベクトル:wd(i,j)の値を、そのまま使用した。従って、特徴量数は7つである。
【0152】
{s3−3:総合−3xの特徴量}
前記図18−2(a)にて、算出した7個の積和ベクトル:wd(i,j)を、2分割(1〜4,4〜7)し、かかる各区分内での平均値と標準偏差を算出し、それらの値を特徴量とした。従って、特徴量数は4つである。
【0153】
以上、s3−1〜s3−3の特徴量とその数が相違した場合について、図19中、(4)−2−1に示した算出式にてそれぞれの総合距離を算出した。尚、各特徴量の変更に供なっても、基本的な処理フローは変わるものではなく、前記積和ベクトルからの特徴量の算出過程が、算出に当たり相違するのみである。
【0154】
前述の対象データ群100ヶ(図17(b)参照)に対して算出した新たな総合距離の算出結果を、図20に示す。又、同図には、加えて、前述の(1),(2)項の結果をも列記した。
【0155】
結果としては、図に示すように、前項(2)のs2:本願2(7項目)に比して、全数の指標である (m:平均/s:標準偏差)2は増減していることが判る。一般的には、かかる指標は大きい程良い(特徴項目数が同じ場合であるが)という観点では、前記s3−3が好適な特徴量であり、この特徴量を前記データベース:402に格納して、未知の対象データの算出時に参照される。しかし、本発明では、前述の実施例1の如く、総合距離の高感度化に伴いその標準偏差も大きくなったが、これは見かけ上の数値であり、実際には前記積和ベクトルの各要素の形態(パタ−ン)偏差とその分散の大きさと強固に関連付けられるので、それ相応の値が出ていることを説明した。更に、特徴量数の増減により各特徴量の配分比或いは重みが相違し、更に、その相関係数も変わるので、かかるs3−3が最良であるとは判断されない。
【0156】
そこで、前記算出された総合距離において、それらの距離で1以上の差があるデータ群を抽出して、サンプル間と各特徴量、総合距離間での分散分析を実施した結果を下表に示す。尚、抽出されたサンプル総数は36個であり、それらの総合距離は0〜1000の範囲である。
【0157】
【表6】

【0158】
以上、上表に示す如く、総合−2xを除いては、いずれもサンプル間,特徴量間,距離間で有意である。従って、いずれの特徴量を使用しても良く、特徴量の選択は任意であることが判る。
【0159】
一方、前記積和ベクトルの応答値そのものを特徴量とした場合、総合−2xの場合、サンプル間では有意差は無く、特徴量(項目)間又は距離間では有意となっている。これは、一つの未知の対象データ内で、前記積和ベクトルの各項目と、その距離とが強固に関係或いは対応していることを意味している。従って、かかる場合にも、前記積和ベクトルの各項目の挙動と総合距離とが連携していることが明白である。かかる各項目の寄与度や影響度の分離や順位付けは、前述の図4−2,実施例1にて説明したように、“計算手段−2”として織り込んでいる。
【0160】
前記総合−1xの特徴量(3つ)にて、総合距離を算出し、又前記計算手段−2にて算出された積和ベクトルの応答値を算出して、前記データベース403に逐次、格納されて行く。本実施例では、100ヶの未知の対象データの総合距離と積和ベクトルの各応答値とが一連のデータとして格納されている。かかるデータ群から、総合距離が同等な対象サンプルと距離が比較的小さいサンプルと抽出した例を図21に示す。図中、左側(a−1,b−1)には、本来の34点から構成される反応過程のデータ群であり、右側(a−2,b−2)には、積和ベクトルの7項目の応答値を列記して示す。
【0161】
かかる本実施例のデータ群では、前述の実施例1のデータ群に比して、前述のようにその性状(離散的,連続的)が相違する。更には、前記実施例1では、その基準とする空間は正常品或いは合格品のみであるから、正常品以上の良品は有り得ない。従って、その基準としている空間の中心位置は、未知の対象データ群の空間に対しても、空間の端部に位置するので、一方向(異常度の単調な増加)のみの距離である。これに対して、本実施例のデータ群では、前述の基準の中心位置は未知の対象データ群の空間に対しても、中心に位置するので、二方向(増加,減少)の距離を呈する。更に、本来のマハラノビス距離は2乗距離であるため正のみの距離で表現している。このため、同じ距離でも、少なくとも2つの形態(パターン)があるにも関わらず、その形態(パターン)の差異が無視されて評価されてしまう。形態(パターン)が相違すれば、その原因も相違するので、より高確度で総合評価するには、かかる情報は極めて重要である。
【0162】
以上により、本発明では、前記計算手段2の機能により、かかる情報を提供し、総合距離とかかる情報との一連のデータ群にて、より総合的な判別や認識を行っている。これは、前述の実施例1と全く同一である。
【0163】
図21(a−1,a−2)に示した4つの例示サンプル(Id=200,315,Id=89,259)では、その総合距離はほぼ等しい。しかし、同図(a−2)によれば、各項目の形態が異なっていることが明白である。Id=200の対象サンプルは、反応過程の前半部、つまりブランクデータの計測時は問題ないが、後半の反応部で大きく変化(wd_3)しており、その初期点(wd_4)が負方向に大きく変化していることが判る。このため、反応過程における初期操作が何らの原因(検体と試薬との攪拌,反応容器内への異物混入等)で相違したものと推測される。
【0164】
一方、Id=315のサンプルでは、反応過程の前半部つまりブランクデータの計測時にも変化し(wd_1)、更には、後半部でも、ブランクデータの変化により反応初期時の初期点とその終点(wd_5,wd_6)も変化している。従って、かかる異常値の要因或いは原因としては、反応容器の劣化や、反応容器内への異物の混入等が推測される。
【0165】
Id=89と259は、前記Id=200と相似のパターンを呈し、且つ両サンプル間でもほぼ同じ形態(パターン)となっている。従って、その異常値の要因或いは原因もId=200とほぼ同じであるが、その度合いが相違しているものと推定される。
【0166】
以上、図21(a−2)において、上述の各項目の形態(パターン)から推定した要因の部位に、実際の反応過程の34点のデータ群図21(a−1)を当てはめてみると、それらの形態変化が、前述の推測内容と良好に合致していることがわかる。従って、総合距離は同等であるが、その要因や原因を異にする反応データをも、高確度・高精にて分離できていることが判る。
【0167】
図21(b−1,b−2)の2つの例示サンプル(Id=242,Id=247)はその絶対的な総合距離は小さく、且つ、その差も比較的小さい。しかし、同図(b−2)にから、Id=242のサンプルでは反応過程の前半部つまりブランクデータの計測時に若干の変化(wd_1)があるが、その総合距離から判断すると(閾値=4.0)と同等であり、判断が難しい。閾値の設定値にもよるが、かかる場合は保留とし、反応容器を変更して再測定するか、或いは他の測定項目を注視して総合的に判定するのが望ましい。一方、Id=247のサンプルでは、後半の反応部で、基準とした変動形態の領域か外れていることが判る。特に、wd_6〜wd_7の項目、即ち反応過程時の終点とスパンであり、反応過程の反応勾配が基準とした応答域の範囲から外れている。従って、その異常値の要因或いは原因としては、前述のId=200と同じであるが、その度合いが小さいものと推定できる。
【0168】
以上、同図(b−2)において、上述の各項目の形態(パターン)から推定した要因の部位に、実際の反応過程データ群(b−1)を当てはめてみると、それらの形態変化が良好に合致していることがわかる。又、前述のId=242は、34点の反応データで見ても、基準とした空間の許容値域の末端にある部位もあり、そうでない部位もあり、判断が難しいことが判る。
【0169】
以上、異常が検出されたサンプルを例に取り詳細に説明したように、本発明では、総合距離の大小に係わらず、未知の個々のデータに対して、総合距離と各項目の積和ベクトルとが強固に対応或いは関連付けられているので、総合距離が同じであっても、かかる項目の影響度や寄与度とを分離できるので、判別・認識力が向上し、誤判断や誤診断の頻度が少なくなり、装置としてのランニング効率が向上する。
【0170】
図22は、以上の機能を組込み、反応過程の判別論理を組込んだシステムの機能ブロック図である。分析制御部3100は制御部(制御用計算機ユニット1100)上に実装される機能であり、その他の機能およびデータは操作用計算機1500上に実装される。
【0171】
分析要求受付部3000は、操作者が検体に対してどのような分析検査を行うかの設定を行うためのものであり、CRTなどの画面とキーボードやマウスなどの入力機器を用いて行われる。入力された情報から分析制御部3100に対して制御命令を送る。分析制御部3100では図13に示した機構を制御して分析を実行し、検体ディスク200上の検体を反応ディスク100上に分注して反応を行う。1つの検体に対して分析が終了するとその時の反応過程データ3400と分析結果データ3200がデータベースに保存される。反応過程データ3400は反応過程評価部3500において異常か否かが判定される。この時、前記データベース3300(401,402)を参照して、その総合距離や積和ベクトルが算出され、最終的に前記データベース403を参照して評価を行う。この時、前記各データベースは分析項目ごとに用意されており、反応過程評価部は分析項目に対応した当該データベースのみを参照する。
【0172】
前記反応過程評価部3500において反応過程が異常と判断された場合には、分析制御部3100に対して、同検体に対して同じ検査項目を再検査するよう指示が出される。また保存された分析結果データ3200に対して反応過程に異常があった旨の情報が付加される。又、前記反応過程評価部3500のデータベースにおいては、前記データベース403の情報が、図に示す書式例の如く纏められて一元管理され、前記データベース3200と強固に連携し、結果の情報を共有している。
【0173】
前述の如く、反応過程の異常の原因には、サンプリングや試薬分注,撹拌などの異常が生じることがある。例えばR2試薬の添加時に吐出した試薬が反応セルの側壁に付着し、反応過程の途中になって検体と混じったために結果が真値よりも高値となってしまうことがある。さらに粘度の高い試薬を使用した場合に、吐出した試薬が表面張力によって分注ノズルの先端に水滴として留まったり、試薬の組合せによってノズルを汚染したり、結晶析出などの問題が生じることになる。
【0174】
通常は1回の分析検査における測定結果(濃度値)は1つの実数だけであり、ある一定範囲の測定値が得られると自動的に再検査を実行する等の機能を分析装置に実装して、再現性を確認している。測定値に異常があった場合には、反応過程における吸光度を調べれば、異常か否かを判断できる場合もあるが、測光ポイントが50ポイントのシステム構成において12波長の反応過程データをすべて保存するには1回の測定で600個のデータを保存する必要があった。このため、反応過程に異常があっても、測定値が正常範囲となった場合には、その異常が見落される恐れがあった。反応過程データから異常が検知された反応過程では、その反応過程データを解析することによって異常原因がなんであるかを判断する情報が含まれていることが多い。したがって、反応過程データにおいて異常を検知した場合についてのみ、その反応過程データを保存しておけば、ハードディスクなどの保存用メモリ容量が小さくて済み、また一旦異常が検知されればその反応過程データから原因究明を行うことができる。反応過程データの異常原因には分析装置自体の異常の可能性も考えられるため、前記制御系の情報を収集することにより、異常現象の解析が迅速に行われるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】本発明の一実施例である品質管理計測システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の基準とする空間の総合距離の処理グローを示す図である。
【図3】本発明の対象データ群に対する総合距離の処理フローを示す図である。
【図4】総合距離の構成を説明する図である。
【図4−1】本発明での収集データ群のサンプル間,項目間の関係例を示した図である。
【図4−2】本発明での積和ベクトル群の特質1を説明する図である。
【図4−3】本発明での積和ベクトル群の特質2を説明する図である。
【図4−4】本発明での積和ベクトル群の特質3を説明する図である。
【図5】本発明の一実施例である品質管理計測システムのデータの構成例を示す図である。
【図6】本発明の一実施例である品質管理計測システムの積和ベクトル例を示す図である。
【図7−1】本発明の一実施例である品質管理計測システムの積和ベクトルの特徴量と総合距離とを示す図である。
【図7−2】本発明の一実施例である品質管理計測システムの基準とする空間の総合距離を示す図である。
【図8】本発明の一実施例である品質管理計測システムの対象データの総合距離処理フローを示す図である。
【図9−1】本発明の一実施例である品質管理計測システムの対象データの総合距離と項目間の変動を示す図である。
【図9−2】本発明の一実施例である品質管理計測システムの対象データの分散分析結果例と対比とを示す図である。
【図10】本発明の一実施例である品質管理計測システムの対象データの総合距離と項目変動から6区分に区分した例を示す図である。
【図11−1】本発明の一実施例である品質管理計測システムの対象データの総合距離と項目変動からさらに、細分化した例を示す図である。
【図11−2】本発明の一実施例である品質管理計測システムの対象データの総合距離と項目変動から区分間の相違と項目と距離との関係を示した図である。
【図12−1】本発明の一実施例である品質管理計測システムの基準とする空間作成時の他の特徴量を算出するフローを示した図である。
【図12−2】本発明の一実施例である品質管理計測システムの他の特徴量による対象データに対する総合距離を示した図である。
【図13】本発明の他の実施例である自動分析装置の概略構成を示した図である。
【図14】本発明の他の実施例である自動分析装置の後分光多波長光度計の構成を示した図である。
【図15】本発明の他の実施例である自動分析装置の分析の流れ(シーケンス)例を示した図である。
【図16】本発明の他の実施例である自動分析装置の反応のタイムコースの例を示した図である。
【図17】本発明の他の実施例である自動分析装置の反応過程のデータ(34点)例を示した図である。
【図18−1】本発明の他の実施例である自動分析装置の基準する反応過程データ構成と対象データの総合距離を示した図である。
【図18−2】本発明の他の実施例である自動分析装置の反応過程データの構成と総合距離を示す図である。
【図19】本発明の他の実施例である自動分析装置の反応過程データ構成と総合距離処理フローを示した図である。
【図20】本発明の他の実施例である自動分析装置の反応過程データ群における総合距離とそれに使用した特徴量とを示す図である。
【図21】本発明の他の実施例である自動分析装置の総合距離と各項目の関係(異常データ)を示した図である。
【図22】本発明の他の実施例である自動分析装置のシステムのデータフロー図を示した図である。
【符号の説明】
【0176】
1 製造装置
2 検査装置1
3 検査装置2
4 ネットワーク
5 工程管理データ収集PC
10 総合判定用データ収集部
20 基本統計量の算出部
30 判定・評価部
40 計算手段1,2部
51 装置稼動,測定結果データ(テーブル51)
52 基本統計量のフォーマット例
53 積和ベクトルフォーマット例
54 積和ベクトルの特徴量の項目例
55 積和ベクトル群の各特徴量の平均,標準偏差フォーマット例
56 総合距離算出時のフォーマット例
57 積和ベクトルの各項目の平均,標準偏差フォーマット例
100 反応ディスク
200 検体ディスク
300 試薬ディスク
400 サンプル分注機構
500 試薬分注機構
600a 検体分注ノズル洗浄部
600b 試薬分注ノズル洗浄部
700 光度計ユニット
1100 制御部(制御用計算機ユニット)
1200 反応容器
1300 検体容器
1400 試薬容器
1500 操作用計算機
2000 光源ランプ
2100 スリット
2200 凹面回折格子
2300 多波長光度計
3000 分析要求受付部
3100 分析制御部
3200 分析結果データ
3300 データベース(401,402,403)
3400 反応過程データ
3500 反応過程評価部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造装置,検査装置からの多項目(2〜k個)からなる種々の測定データ群を複数収集し、かかる測定データ群から、正常状態或いは通常状態と判断できる均一な測定データ群のみを収集し、かかる多項目のデー群から基準となる空間(マハラノビス空間)を作成し、未知の測定データ群を前記基準とする空間にあてがい、前記基準とする空間からの距離(マハラノビス距離)のみにて、前記未知のデータ群の状態変化の度合いや劣化度、或いは異質度を前記距離にて識別或いは判断する多次元項目の判別・認識を行っている製造,検査監視システムであって、
前記基準とする空間との距離を算出する処理において、多項目(2〜k個)のデータ群から、前記各項目の相関係数を考慮した前記多項目(2〜k個)との積和ベクトルを算出し、前記積和ベクトル(2〜k個)から、少なくとも、前記積和ベクトルの各構成要素(2〜k個)の平均的な偏差と、その分散(ばらつき)とを算出(特徴量)し、前記かかる二つの特徴量にて、前記基準とする空間作成時に生成される距離空間からの距離(マハラノビス距離)を算出する計算手段1を具備し、
更に、前記未知の対象データに対して算出する積和ベクトル(2〜k個)の各項目毎に、前記基準とする空間作成に生成される基準とする積和ベクトル(1〜k個)との各項目毎に、それらの大きさを比較或いは対比して前記未知の積和ベクトルの個々の要素の形態を示す応答値(2〜k個)を算出する計算手段2とを具備し、
前記計算手段1にて算出された距離と前記計算手段2にて算出された積和ベクトル(2〜k個)とを一連のデータ群(距離と2〜k個の応答値)として、前記距離と前記応答値から前記未知の多項目のデータの状態変化の度合いや劣化度、或いは異質度を識別或いは認識することを特徴とする製造,検査監視システム。
【請求項2】
請求項1記載の製造,検査監視システムにおいて、
前記計算手段1が、前記積和ベクトルの各構成要素(2〜k個)を、nk個に区分し、各区分内での平均値と分散を算出して、2*nk個の特徴量データとしていることを特徴とする製造,検査監視システム。
【請求項3】
請求項1記載の製造,検査監視システムにおいて、
前記計算手段1が、前記積和ベクトルの各構成要素(2〜k個)から、前記積和ベクトルの各構成要素(2〜k個)の平均的な偏差を一つの特徴量とし、前記各構成要素の分散以外の特徴量を少なくと一つ以上具備していくことを特徴とする製造,検査監視システム。
【請求項4】
請求項1記載の製造,検査監視システムにおいて、
前記計算手段1が、前記積和ベクトルの各構成要素(2〜k個)から、少なくとも、前記積和ベクトルの各構成要素(2〜k個)の平均的な偏差とその分散(ばらつき)とを特徴量し、前記二つの特徴量以外の特徴量を、少なくと一つ以上具備していくことを特徴とする製造,検査監視システム。
【請求項5】
請求項1または4記載の製造,検査監視システムにおいて、
前記計算手段1が、前記積和ベクトルの各構成要素(2〜k個)から算出される特徴量として、前記2〜k個を連続した一連のデータ列とした場合、前記データ列の平均的な勾配、或いはその勾配の分散、或いはその線長、或いは初期点値と終点値、或いは初期点値と終点値の変化値(スパン)、或いは前記各点での非線形性を表現している乖離値(非直線性)等の特徴量を、少なくと一つ以上具備していくことを特徴とする製造,検査監視システム。
【請求項6】
請求項1記載の製造,検査監視システムにおいて、
前記計算手段1が、前記積和ベクトルの各構成要素(2〜k個)から算出される特徴量として、前記2〜k個を連続した一連のデータ列とした場合、前記データ列の平均的な勾配、或いはその勾配の分散、或いはその線長、或いは初期点値と終点値、或いは初期点値と終点値の変化値(スパン)、或いは前記各点での非線形性を表現している乖離値(非直線性)等の特徴量を、少なくと二つ以上具備していくことを特徴とする製造,検査監視システム。
【請求項7】
請求項1記載の製造,検査監視システムにおいて、
前記計算手段2が、前記未知の対象データに対して算出する積和ベクトル(2〜k個)の各項目毎に、前記基準とする空間作成に生成される基準とする積和ベクトル(1〜k個)の各項目毎の平均値をm(j)とし、その標準偏差をs(j)とし、前記未知の対象データに対して算出された積和ベクトルをwd(i,j)とすると、δ(j)=(wd(i,j)−m(j))/s(j))にてその応答値を算出し、前記δ(1)〜δ(j)の応答値の大きさにて、順位付け或いは重み付けを行い、この順位或いは重みにより各要素の寄与度或いは影響度を判断・判別していることを特徴とする製造,検査監視システム。
【請求項8】
請求項1または7記載の製造,検査監視システムにおいて、
前記計算段手段1,計算手段2が、前記未知の対象データに対して算出する積和ベクトル(2〜k個)の各項目毎に、前記基準とする空間作成に生成される基準とする積和ベクトル(1〜k個)の各項目毎の平均値をm(j)とし、その標準偏差をs(j)とし、前記未知の対象データに対して算出された積和ベクトルをwd(i,j)とすると、δ(j)=(wd(i,j)−m(j))/s(j))にてその応答値を算出し、δ(1)〜δ(j)の応答値の大きさにて、順位付け或いは重み付けを行い、この順位或いは重みデータ列と、前記基準とする空間作成に生成される距離空間からの距離にて、未知の対象データを区分していることを特徴とする製造,検査監視システム。
【請求項9】
製造装置,検査装置からの多項目(2〜k個)からなる種々の測定データ群を複数収集し、かかる測定データ群から、正常状態或いは通常状態と判断できる均一な測定データ群のみを収集し、かかる多項目のデータ群から基準となる空間(マハラノビス空間)を作成し、未知の測定データ群を前記基準とする空間にあてがい、前記基準とする空間からの距離(マハラノビス距離)のみにて、前記未知のデータ群の状態変化の度合いや劣化度、或いは異質度を前記距離にて識別或いは判断する多次元項目の判別・認識を行っている製造,検査監視方法であって、
前記基準とする空間との距離を算出する処理において、多項目(2〜k個)のデータ群から、前記各項目の相関係数を考慮した前記多項目(2〜k個)との積和ベクトルを算出し、前記積和ベクトル(2〜k個)から、少なくとも、前記積和ベクトルの各構成要素(2〜k個)の平均的な偏差と、その分散(ばらつき)とを算出(特徴量)し、前記かかる二つの特徴量にて、前記基準とする空間作成時に生成される距離空間からの距離(マハラノビス距離)を算出する第1の算出ステップと、
更に、前記未知の対象データに対して算出する積和ベクトル(2〜k個)の各項目毎に、前記基準とする空間作成に生成される基準とする積和ベクトル(1〜k個)との各項目毎に、それらの大きさを比較或いは対比して前記未知の積和ベクトルの個々の要素の形態を示す応答値(2〜k個)を算出する第2の算出ステップと、
前記第1の算出ステップにて算出された距離と前記第2の算出ステップにて算出された積和ベクトル(2〜k個)とを一連のデータ群(距離と2〜k個の応答値)として、前記距離と前記応答値から前記未知の多項目のデータの状態変化の度合いや劣化度、或いは異質度を識別或いは認識することを特徴とする製造,検査監視方法。
【請求項10】
被検体と試薬とを反応させ、その反応からの値にて検査を行う自動分析装置において、
基準とする空間との距離を算出する処理において、多項目(2〜k個)のデータ群から、前記各項目の相関係数を考慮した前記多項目(2〜k個)との積和ベクトルを算出し、前記積和ベクトル(2〜k個)から、少なくとも、前記積和ベクトルの各構成要素(2〜k個)の平均的な偏差と、その分散(ばらつき)とを算出(特徴量)し、前記かかる二つの特徴量にて、前記基準とする空間作成に生成される距離空間からの距離(マハラノビス距離)を算出する計算手段1を具備し、
更に、前記未知の対象データに対して算出する積和ベクトル(2〜k個)の各項目毎に、前記基準とする空間作成に生成される基準とする積和ベクトル(1〜k個)との各項目毎に、それらの大きさを比較或いは対比して前記未知の積和ベクトルの個々の要素の形態を示す応答値(2〜k個)を算出する計算手段2とを具備し、
前記計算手段1にて算出された距離と前記計算手段2にて算出された積和ベクトル(2〜k個)とを一連のデータ群(距離と2〜k個の応答値)として、前記距離と前記応答値から前記未知の多項目のデータの状態変化の度合いや劣化度、或いは異質度を識別或いは認識することを特徴とする自動分析装置。
【請求項11】
請求項10記載の自動分析装置において、
前記計算手段1が、前記積和ベクトルの各構成要素(2〜k個)を、nk個に区分し、各区分内での平均値と分散を算出して、2*nk個の特徴量データとしていることを特徴とする自動分析装置。
【請求項12】
請求項10記載の自動分析装置において、
前記計算手段1が、前記積和ベクトルの各構成要素(2〜k個)から、前記積和ベクトルの各構成要素(2〜k個)の平均的な偏差を一つの特徴量とし、前記各構成要素の分散以外の特徴量を少なくとも一つ以上具備していくことを特徴とする自動分析装置。
【請求項13】
請求項10記載の自動分析装置において、
前記計算手段1が、前記積和ベクトルの各構成要素(2〜k個)から、少なくとも、前記積和ベクトルの各構成要素(2〜k個)の平均的な偏差とその分散(ばらつき)とを特徴量し、前記二つの特徴量以外の特徴量を、少なくとも一つ以上具備していくことを特徴とする自動分析装置。
【請求項14】
請求項10または13記載の自動分析装置において、
前記計算手段1が、前記積和ベクトルの各構成要素(2〜k個)から算出される特徴量として、前記2〜k個を連続した一連のデータ列とした場合、前記データ列の平均的な勾配、或いはその勾配の分散、或いはその線長、或いは初期点値と終点値、或いは初期点値と終点値の変化値(スパン)、或いは前記各点での非線形性を表現している乖離値(非直線性)等の特徴量を、少なくと一つ以上具備していくことを特徴とする自動分析装置。
【請求項15】
請求項10記載の自動分析装置において、
前記計算手段1が、前記積和ベクトルの各構成要素(2〜k個)から算出される特徴量として、前記2〜k個を連続した一連のデータ列とした場合、前記データ列の平均的な勾配、或いはその勾配の分散、或いはその線長、或いは初期点値と終点値、或いは初期点値と終点値の変化値(スパン)、或いは前記各点での非線形性を表現している乖離値(非直線性)等の特徴量を、少なくと二つ以上具備していくことを特徴とする自動分析装置。
【請求項16】
請求項10記載の自動分析装置において、
前記計算手段2が、前記未知の対象データに対して算出する積和ベクトル(2〜k個)の各項目毎に、前記基準とする空間作成に生成される基準とする積和ベクトル(1〜k個)の各項目毎の平均値をm(j)とし、その標準偏差をs(j)とし、前記未知の対象データに対して算出された積和ベクトルをwd(i,j)とすると、δ(j)=(wd(i,j)−m(j))/s(j))にてその応答値を算出し、前記δ(1)〜δ(j)の応答値の大きさにて、順位付け或いは重み付けを行い、この順位或いは重みにより各要素の寄与度或いは影響度を判断・判別していることを特徴とする自動分析装置。
【請求項17】
請求項10または16記載の自動分析装置において、
前記計算段手段1、計算手段2が、前記未知の対象データに対して算出する積和ベクトル(2〜k個)の各項目毎に、前記基準とする空間作成に生成される基準とする積和ベクトル(1〜k個)の各項目毎の平均値をm(j)とし、その標準偏差をs(j)とし、前記未知の対象データに対して算出された積和ベクトルをwd(i,j)とすると、δ(j)=(wd(i,j)−m(j))/s(j))にてその応答値を算出し、δ(1)〜δ(j)の応答値の大きさにて、順位付け或いは重み付けを行い、この順位或いは重みデータ列と、前記基準とする空間作成に生成される距離空間からの距離にて、未知の対象データを区分していることを特徴とする自動分析装置。
【請求項18】
被検体と試薬とを反応させ、その反応からの値にて検査を行う自動分析装置のデータ処理方法において、
基準とする空間との距離を算出する処理において、多項目(2〜k個)のデータ群から、前記各項目の相関係数を考慮した前記多項目(2〜k個)との積和ベクトルを算出し、前記積和ベクトル(2〜k個)から、少なくとも、前記積和ベクトルの各構成要素(2〜k個)の平均的な偏差と、その分散(ばらつき)とを算出(特徴量)し、前記かかる二つの特徴量にて、前記基準とする空間作成に生成される距離空間からの距離(マハラノビス距離)を算出する第1の算出ステップと、
更に、前記未知の対象データに対して算出する積和ベクトル(2〜k個)の各項目毎に、前記基準とする空間作成に生成される基準とする積和ベクトル(1〜k個)との各項目毎に、それらの大きさを比較或いは対比して前記未知の積和ベクトルの個々の要素の形態を示す応答値(2〜k個)を算出する第2の算出ステップと、
前記第1の算出ステップにて算出された距離と前記第2の算出ステップにて算出された積和ベクトル(2〜k個)とを一連のデータ群(距離と2〜k個の応答値)として、前記距離と前記応答値から前記未知の多項目のデータの状態変化の度合いや劣化度、或いは異質度を識別或いは認識することを特徴とする自動分析装置のデータ処理方法。
【請求項19】
請求項18に記載の自動分析装置のデータ処理方法において、
反応過程における異常が検知された場合は、異常が検知された測定データに識別情報を付加することを特徴とするデータ処理方法。
【請求項20】
請求項1または3記載の製造,検査監視システムにおいて、
前記計算手段1が、前記多項目(2〜k個)のデータ群から、前記各項目の相関係数を算出し、前記相関係数行列を直交分解して得られる固有ベクトルと固有値から、前記固有ベクトルと固有値から一方向の積和ベクトルを求め、前記積和ベクトルの総和の平均値を第一の変数とし、前記固有ベクトルと固有値から算出されるもう一つ(直交方向)の積和ベクトルの総和の平均値または総和を第二の変数として、前記二つの変数から総合距離を求めていることを特徴とする製造,検査監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図4−4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18−1】
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【図18−2】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−210445(P2009−210445A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54228(P2008−54228)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】