説明

複合光学フィルムを形成する方法

複合光学フィルム(100)を形成する方法を開示する。本方法は、複合フィルムを第1エネルギー源(340)に曝して複合フィルム(321)を第1硬化状態まで硬化させる工程を含む。複合フィルムは、硬化性樹脂(104)内に分散された補強繊維(102)を含む。次に、本方法は、第1エネルギー源を第1硬化状態の複合フィルムから取り外す工程と、続いて第1硬化状態の複合フィルムを第2エネルギー源(341)に曝して複合フィルムを第2硬化状態まで更に硬化させる工程とを含む。本方法は、複合フィルムを光学素子と組み合わせて複合光学フィルムを形成する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合光学フィルム素子を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学フィルムは、その光学的性質がそれらの機能にとって重要である薄いポリマーフィルムであり、ディスプレイによく使用され、例えば光源からディスプレイパネルへの光の伝搬を管理するためによく使用される。光管理機能には、画像の明るさを増加すること、及び画像全体の照度の均一性を増加することが挙げられる。
【0003】
こうしたフィルムは薄く、そのために概して構造的一体性をほとんど持たない。ディスプレイシステムのサイズが大きくなるにつれて、フィルムの面積もまたより大きくなる。それらがより厚く製造されるのでなければ、フィルムは、それらの形状を十分に維持するほど堅くないサイズにまで達する場合がある。こうした状況は、ディスプレイ組み立て時の製造プロセス、並びにディスプレイの適用におけるフィルムの使用に関して、問題を生じさせる。しかしながら、フィルムをより厚くすることは、ディスプレイ装置の厚さを増加し、並びにまた重量及び光学吸収の増加をもたらす。より厚いフィルムはまた断熱性を増加し、熱をディスプレイから移動する能力を低減する。更に、輝度が増したディスプレイに対する継続的な要求があり、それはディスプレイシステムによって熱がより生成されることを意味する。これは、より高い加熱に付随する変形効果、例えばフィルムの反りの増加をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、より大きいディスプレイのサイズに適応するための解決策は、光学フィルムをもっとより厚い基材にラミネートすることである。この解決策は、装置に費用を追加し、並びに装置をより厚く及びより重くする。しかしながら、追加費用は、ディスプレイの光学機能の著しい改善はもたらさない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、複合光学フィルム素子を形成する方法に関する。
【0006】
第1の実施形態では、複合光学フィルムを形成する方法を開示する。本方法は、複合フィルムを第1エネルギー源に曝して複合フィルムを第1硬化状態まで硬化させる工程を含む、複合フィルムの製造を含み、複合フィルムは、硬化性樹脂内に配置された補強繊維を含む。本方法は、更に、第1エネルギー源を第1硬化状態の複合フィルムから取り外す工程と、第1硬化状態の複合フィルムを第2エネルギー源に曝して複合フィルムを第2硬化状態まで更に硬化させる工程と、続いて複合フィルムと光学素子とを組み合わせて複合光学フィルムを形成する工程と、を含む。
【0007】
別の実施形態では、本方法は、複合フィルムを第1エネルギー源に曝して複合フィルムを第1硬化状態まで硬化させる工程を含む。複合フィルムは、硬化性樹脂内に分散された補強繊維を含む。補強繊維は第1の屈折率を有し、樹脂は第1硬化状態の屈折率を有し、第1硬化状態の屈折率は、第1の屈折率と少なくとも0.004の値だけ異なっている。本方法は、更に、第1エネルギー源を第1硬化状態の複合フィルムから取り外す工程と、第1硬化状態の複合フィルムを第2エネルギー源に曝して、複合フィルムを第2硬化状態まで更に硬化させる工程とを含み、この場合、樹脂は、第1の屈折率値と0.004未満だけ異なる第2硬化状態の屈折率値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
添付の図面と共に以下の本発明の様々な実施形態の詳細な説明を検討することで、本発明はより完全に理解され得る。
【図1】例示的な複合フィルム素子の概略的透視側面図。
【図2】例示的な繊維ウェブの概略的平面図。
【図3】第1硬化状態の複合フィルムを形成するための、例示的な装置の概略的側面図。
【図4】第2硬化状態の複合フィルムを製造するための、第1硬化状態の複合フィルムの更なる処理装置。
【図5】第2硬化状態の複合フィルムを製造するための、第1硬化状態の複合フィルムの更なる処理装置。
【0009】
図は正確な縮尺である必要はない。図で用いられる同様の番号は同様の構成部品を指す。しかしながら、所定の図中の構成要素を指す数字の使用は、同じ数字を付けられた別の図中の構成要素を限定することを意図するものではないことが理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、その一部を形成する添付図面を参照し、そこでは実例としていくつかの具体的な実施形態が示される。本発明の範囲又は趣旨を逸脱せずに、その他の実施形態が考えられ、実施され得ることを理解すべきである。したがって、以下の「発明を実施するための形態」は、限定する意味で理解すべきではない。
【0011】
本発明で使用する全ての科学用語及び専門用語は、特に指示がない限り、当該技術分野において一般的に使用される意味を有する。本明細書にて提供される定義は、本明細書でしばしば使用されるある種の用語の理解を促進しようとするものであり、本開示の範囲を限定するものではない。
【0012】
他に指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される特徴サイズ、量、物理特性を表わす数字は全て、どの場合においても用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。それ故に、そうでないことが示されない限り、前述の明細書及び添付の特許請求の範囲で示される数値パラメータは、当業者が本明細書で開示される教示内容を用いて、目標対象とする所望の特性に応じて、変化し得る近似値である。
【0013】
端点による数値範囲の詳述には、その範囲内に組み入れられる全ての数が包含され(例えば1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5が包含される)並びにその範囲内のあらゆる範囲が包含される。
【0014】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「ある(a及びan)」及び「その(the)」は、その内容が特に明確に指示しない限り、複数の指示対象を有する実施形態を包含する。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、用語「又は」は、その内容が特に明確に指示しない限り、一般的に「及び/又は」を包含する意味で用いられる。
【0015】
本開示は、複合光学フィルムのロールツーロール製造に関する。複合光学フィルムの硬化性樹脂部分は、部分的に硬化されて、例えば、調光光学フィルムなどの光学素子と、所望により、かつ任意に組み合わされるように、後の処理で巻き上げ可能な、又はより完全に硬化可能な、本質的に非粘着性のフィルムをもたらす。多くの実施形態では、これらの複合光学フィルムは、可視光波長の少なくとも1つの偏光に対して透明である。本発明を限定するものではないが、本発明の種々の態様は以下に提供する実施例の考察を通して正しく認識されるだろう。
【0016】
図1は、任意に割り当てられた座標系に対する複合フィルム100を示す例示的な複合フィルム100の概略的透視側面図である。複合フィルム100は、z方向に厚さを有する。複合フィルム100は、ポリマー又は硬化性樹脂104内に分散された補強繊維102を含む。複合フィルム100は、バルク素子として形成され、例えば、シート又はフィルム、円筒、管などの形態であってもよい。複合フィルム100は、複合フィルム100が少なくとも1つの方向において実質的に自立するために十分な断面寸法を有してもよい。
【0017】
高分子材料の有機繊維、又はガラス、ガラスセラミック、若しくはセラミックの無機繊維などの補強繊維102が、硬化性樹脂104内に配置される。個々の補強繊維102は、複合フィルム100の全長にわたって延びていてもよいが、これは必要条件ではない。図示された実施形態では、繊維102は、x方向に平行に縦に配向されているが、これは必要なわけではない。繊維102は、後述するように、補強繊維のウェブとしてマトリックス104内に組織化されてもよい。
【0018】
硬化性樹脂マトリックス104を形成する物質のx方向、y方向、及びz方向の屈折率を、本明細書では、n1x、n1y、及びn1zと称する。樹脂物質が等方性である場合、x、y、及びzの屈折率は、すべて実質的に整合する。マトリックス材料が複屈折性である場合、x、y、及びzの屈折率の少なくとも1つは、他のものと異なる。ある場合には、ただ1つの屈折率が他のものから異なり、この場合、その物質は1軸であると呼ばれ、またある場合には、すべての3つの屈折率が異なり、この場合、その物質は2軸であると呼ばれる。多くの実施形態では、繊維102の物質は等方性である。それ故に、繊維を形成する物質の屈折率は、nとして与えられる。幾つかの実施形態では、補強繊維102は複屈折性である。
【0019】
幾つかの実施形態では、樹脂マトリックス104が等方性であることが望ましい場合もあり、即ち、n1x≒n1y≒n1zである。等方性とみなされるには、屈折率間の差が0.05未満、又は0.02未満、又は0.01未満である必要がある。更に、幾つかの実施形態では、マトリックス104及び繊維102の屈折率が実質的に整合することが望ましい。このように、マトリックス104と繊維102との屈折率の差は、少なくとも0.02未満、又は0.005未満、又は0.002未満と小さい必要がある。別の実施形態では、樹脂マトリックス104は複屈折性であることが望ましい場合もあり、この場合、マトリックスの屈折率の少なくとも1つは繊維102の屈折率と異なる。
【0020】
硬化性樹脂マトリックスに使用するのに好適な物質には、光波長の所望の範囲にわたって透明である熱硬化性ポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリマーが水に不溶性であることは特に有用である場合があり、ポリマーは疎水性であってもよく、若しくは吸水率が低い傾向を有してもよい。更に、好適なポリマー物質は、非晶質又は部分的結晶性であってもよく、及びホモポリマー、コポリマー、又はこれらのブレンドを包含してもよい。ポリマー物質の例には、アルキル、芳香族、脂肪族、及び環含有(メタ)アクリレート、エトキシル化及びプロポキシル化(メタ)アクリレート、多官能性(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アクリレート化エポキシ、エポキシ、ノルボルネン、ビニルエーテル及び他のエチレン性不飽和物質、チオール−エン系、ハイブリッドラジカル及びカチオン性重合可能系、例えば、エポキシ及び(メタ)アクリレート、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。(メタ)アクリレートという用語は、対応するメタクリレート又はアクリレート化合物のいずれかとして定義される。
【0021】
幾つかの実施形態では、補強繊維としてポリマー材料を使用することが有利である。ポリマー材料の例としては、ポリ(カーボネート)(PC)、シンジオタクチック及びアイソタクチックポリ(スチレン)(PS)、(C〜C)アルキルスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)及びPMMAコポリマーを包含する、アルキル、芳香族、脂肪族、及び環含有(メタ)アクリレート、エトキシル化及びプロポキシル化(メタ)アクリレート、多官能性(メタ)アクリレート、アクリレート化エポキシ、エポキシ、並びに他のエチレン性不飽和物質、環状オレフィン及び環状オレフィン性コポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、スチレンアクリロニトリルコポリマー(SAN)、エポキシ、ポリ(ビニルシクロヘキサン)、PMMA/ポリ(ビニルフロライド)ブレンド、ポリ(フェニレンオキシド)合金、スチレン系ブロックコポリマー、ポリイミド、ポリサルフォン、ポリ(ビニルクロライド)、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリウレタン、飽和ポリエステル、低複屈折性ポリエチレンを包含するポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)(PP)、ポリ(アルカンテレフタレート)、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(アルカンナフタレート(alkane napthalates))、例えば、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、ポリアミド、アイオノマー、ビニルアセテート/ポリエチレンコポリマー、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、フルオロポリマー、ポリ(スチレン)−ポリ(エチレン)コポリマー、ポリオレフィン性PET及びPENを含むPET及びPENコポリマー、並びにポリ(カーボネート)/脂肪族PETブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
幾つかの製品用途において、得られた製品及び構成成分は、低濃度の逃亡種(fugitive species)(低分子量、未反応、若しくは未変換の分子、溶解水分子(dissolved water molecules)、又は反応副生成物)を示す。逃亡種は、製品の最終使用環境から吸収され得るか(例えば、水分子)、製品中に初期製品製造から存在し得るか(例えば水)、又は化学反応(例えば、縮合重合反応)の結果として生成され得る。縮合重合反応からの小さい分子の発生の例は、ジアミン及び二塩基酸の反応からのポリアミドの形成中の水の分離である。逃亡種は、モノマー、可塑剤などの低分子量の有機物質を含むこともできる。逃亡種は一般に、機能的製品の残りを形成する物質の大部分より低い分子量である。製品の使用条件は、例えば、製品又はフィルムの一面に、差別的により大きい熱応力を結果としてもたらす場合がある。これらの場合には、逃亡種は製品を介して移動する可能性があるか、又はフィルム若しくは製品の1つの表面から揮発して濃度勾配、全体の機械的変形、表面の変化、及びときには、望ましくないガス抜けを生じる可能性がある。ガス抜けは、製品、フィルム、又はマトリックス中に空隙若しくは泡をもたらすか、又は他のフィルムへの接着に関しての問題をもたらす可能性がある。逃亡種(fugitive species)は、潜在的に、溶媒和する、食刻する、又は製品用途における他の構成成分に望ましくない影響を及ぼす可能性もまたある。
【0023】
上記のポリマー又は樹脂のいくつかは、配向されたときに複屈折性になることがある。特に、PET、PEN、及びこれらのコポリマー、並びに液晶ポリマーは、配向されたときに比較的大きな値の複屈折性を表す。樹脂は、押出成形及び延伸を包含する異なる方法を使用して配向されてもよい。延伸は、それが高度な配向を可能にし、温度及び延伸比のような多くの容易に制御可能な外部パラメータにより制御され得るため、ポリマーを配向するのに特に有用な方法である。
【0024】
好適な硬化性樹脂又はポリマーには、エチレン性不飽和樹脂、並びに光開始剤及び/又は熱反応開始剤及び/又はカチオン性反応開始剤が挙げられる。硬化が電子ビーム又はチオール−エン型反応系を用いて行われる場合、別個の反応開始剤を必要としない。
【0025】
マトリックス104には種々の添加剤が設けられて、複合フィルム100に所望の特性をもたらしてもよい。例えば、添加剤は、耐候剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、酸化防止剤、分散剤、潤滑剤、静電気防止剤、顔料又は染料、成核剤、難燃剤、及び発泡剤のうちの1つ以上を包含してもよい。
【0026】
いくつかの例示的実施形態は、経時的な黄ばみ及び曇りに耐性があるポリマーマトリックス物質を使用する場合がある。例えば、芳香族ウレタンのようないくつかの物質は、長期間紫外線に曝されるとき、不安定になり、及び時間と共に変色する。長期間同じ色を維持することが重要であるときには、こうした物質を避けることが望ましい場合もある。その他の添加剤がマトリックス104に、ポリマーの屈折率を変えるために、又は物質の強度を増加するために提供されてもよい。このような添加剤には、例えば、ポリマーのビーズ又は粒子、及びポリマーのナノ粒子のような有機添加剤を挙げてもよい。
【0027】
他の実施形態では、無機添加剤が、マトリックス104の屈折率を調整するために、又は物質の強度及び/若しくは堅さを増加するために、マトリックスに加えられてもよい。例えば、無機物質は、ガラス、セラミック、ガラスセラミック、又は金属酸化物であってもよい。無機繊維に関して以下に論じられるガラス、セラミック、又はガラスセラミックのいずれかの好適な種類を使用しても良い。金属酸化物の好適な種類には、例えばチタニア、アルミナ、酸化スズ、酸化アンチモン、ジルコニア、シリカ、これらの混合物又はこれらの混合酸化物が挙げられる。これらの無機物質は、例えば粉砕、粉末化した、ビード、フレーク、又は微粒子の形態のナノ粒子として提供され、マトリックス104内に分散されることができる。粒子の大きさは、最終フィルム製品を通過する光の散乱を低減するよう、200nm未満、又は100nm未満、又は50nm未満であってもよい。
【0028】
これらの無機添加剤の表面は、繊維をポリマーに結合するために、カップリング剤を提供してもよい。例えば、シランカップリング剤が無機添加剤と共に、無機添加剤をポリマーに結合するために使用され得る。重合可能な表面改質をしていない無機ナノ粒子を採用することもできるが、無機ナノ粒子は、ナノ粒子がマトリックスの有機構成成分と重合可能であるように表面改質されていてもよい。例えば、反応基が、カップリング剤のもう一方の末端部に結合されてもよい。例えば、反応するポリマーマトリックスとの二重結合を介する化学重合を通じて、その基は化学的に反応することができる。
【0029】
図2は、繊維ウェブ200を形成する例示的な補強繊維の概略的平面図である。繊維ウェブ200を形成する補強繊維102には、いずれかの好適な種類の有機又は無機材料を使用してもよい。材料を形成する例示的な繊維には、ガラス繊維、炭素及び/又はグラファイト繊維、ポリマー繊維、ホウ素繊維、セラミック繊維、ガラスセラミック繊維、及びシリカ繊維が挙げられる。多くの実施形態では、繊維は、図2に示されるように繊維ウェブ200に形成される。
【0030】
繊維102は、フィルムを通過する光に対して実質的に透明なガラスなどの無機材料から形成されてもよい。好適なガラスの例には、ファイバーガラス複合物、例えばE、C、A、S、R、及びDガラスによく使用されるガラスが挙げられる。例えば、溶融シリカ及びBK7ガラスの繊維を含む、より高品質のガラス繊維も使用しても良い。好適なより高品質のガラスは、ニューヨーク州エルムスフォード(Elmsford)のショット・ノース・アメリカ社(Schott North America Inc.)のようないくつかの供給元から入手可能である。これらのより高品質のガラスから製造された繊維を使用することは、それらがより純粋で、そのためより均一な屈折率を有し、及びより少ない含有物を有し、より少ない散乱及び増加された透過をもたらすために、望ましい場合がある。また、繊維の機械的性質が均一になる可能性がより高い。より高品質のガラス繊維は、水分を吸収する可能性がより低く、ひいては得られたフィルムは、長期間の使用において、より安定する。更に、ガラス中のアルカリ内容物は、水の吸収を増やすため、低アルカリガラスを使用することは望ましい場合がある。これらの無機繊維の表面には、繊維をポリマーに結合するために、カップリング剤が提供されてもよい。例えば、シランカップリング剤が無機繊維と共に、無機繊維をポリマーに結合するために使用されてもよい。
【0031】
繊維102に使用されてもよい無機物質の別の種類は、ガラスセラミック物質である。ガラスセラミック材料は一般に、95体積%〜98体積%の、1マイクロメートルより小さいサイズを有する非常に小さい結晶を含む。いくつかのガラスセラミック材料は、50nmほどの小さい結晶サイズを有し、結晶サイズが、実質上散乱が起こらないほど可視光線の波長よりずっと小さいために、それらを可視波長において有効に透明にする。これらのガラスセラミックはまた、ガラス領域の屈折率と結晶領域の屈折率との間に事実上の差がほとんどないか又は全くないようにして、それらを視覚的に透明にすることができる。透明性に加えて、ガラスセラミック物質は、ガラスの破裂強度を超える破裂強度を有することができ、及びゼロ又は負の値でさえある熱膨張係数を有することが既知である。目的とするガラスセラミックは、LiO−−Al−−SiO、CaO−−Al−−SiO、LiO−−MgO−−ZnO−−Al−−SiO、Al−−SiO、及びZnO−Al−−ZnO−−SiO、LiO−−Al−−SiO、及びMgO−−Al−−SiOを含む組成を有するが、これらに限定されない。
【0032】
一部のセラミックはまた、適切に整合する屈折率を有するマトリックス樹脂中にそれらが埋め込まれた場合に透明に見えるように、十分に小さい結晶寸法をも有する。ミネソタ州セントポールの3M社(3M Company)からネクステル(NEXTEL)の商標表記で市販されているセラミック繊維は、この種の材料の例であり、糸、ヤーン、及び織布マットとして入手可能である。
【0033】
マトリックス内の繊維の幾つかの代表的な配置には、ヤーン、繊維のトウ、又はポリマーマトリックス内の1つの方向に配置されたヤーン、繊維ウィーブ、不織布、チョップトファイバー、チョップトファイバーマット(無作為の若しくは規則的な形式による)、又はこれらの形式の組み合わせが挙げられる。チョップト繊維マット又は不織布は、繊維の不規則的な配列を有するのではなく、不織布又はチョップト繊維マット内に繊維の何らかの配列を提供するように、延伸されるか、圧力をかけられるか、又は配向されてよい。更に、マトリックスは繊維の多層を含有してもよく、例えば、マトリックスは、異なるトウ、ウィーブ、又は同様なものの中に繊維のより多くの層を包含してもよい。
【0034】
有機繊維はまた、単独で、又は無機繊維と共に、マトリックス104内に組み込まれてもよい。マトリックスの中に包含されてもよい幾つかの好適な有機繊維には、ポリマー繊維、例えば以上に記載されたポリマー物質の1つ以上から形成された繊維が挙げられる。ポリマー繊維は、マトリックス104と同じ物質から形成されてもよいし、又は異なるポリマー物質から形成されてもよい。その他の好適な有機繊維は、天然物質、例えば綿、絹、又は麻から形成されてもよい。幾つかの有機物質、例えばポリマーは、光学的に等方性であってもよいし、又は光学的に複屈折性であってもよい。
【0035】
幾つかの実施形態では、有機繊維は、ポリマー繊維のみを含有するヤーン、トウ、ウィーブ、及び同様なもの、例えば、ポリマー繊維ウィーブの一部を形成してもよい。他の実施形態では、有機繊維は、有機及び無機繊維の両方を含むヤーン、トウ、ウィーブ、及び同様なものの一部を形成してもよい。例えば、ヤーン又はウィーブは、無機及びポリマー繊維の両方を包含してもよい。繊維ウィーブ200の実施形態は、図2に概略的に示されている。ウィーブは、縦糸繊維202及び横糸繊維204によって形成される。縦糸繊維202は無機又は有機繊維であってもよく、横糸繊維204も有機又は無機繊維であってもよい。更に、縦糸繊維202及び横糸繊維204は、各々が有機及び無機繊維の両方を包含してもよい。ウィーブ200は個々の繊維、トウのウィーブであってもよいし、若しくはヤーンのウィーブであってもよいし、又はこれらのいずれかの組み合わせであってもよい。
【0036】
多くの実施形態では、織布繊維ウェブ200は、ガラス繊維から形成される。多くの実施形態では、このガラス繊維布地200は、x軸及びy軸の両方に沿って2.5cm(1インチ)当たり25〜100ヤーンの範囲のヤーン数と、10〜100g/mの範囲の目付と、15〜100マイクロメートルの範囲の布地厚(z軸)とを有する。多くの実施形態では、ガラス繊維布地200の各ヤーンを形成するガラス繊維は、5〜20マイクロメートルの範囲の直径を有する。
【0037】
ヤーンは、並列に張り渡されるか、共に撚り合わされた、幾つかの繊維を包含する。繊維はヤーンの全体の長さに及んでもよいし、又はヤーンは短繊維を包含してもよく、その場合、個々の繊維の長さはヤーンの全体の長さより短い。いずれかの好適な種類のヤーンを使用してもよく、これには互いの周囲に撚り合わされた繊維から形成された従来の撚糸が挙げられる。ヤーンの別の実施形態は、中心の繊維を包み込む幾つかの繊維を特徴とする。中央繊維は、無機繊維であってもよいし、又は有機繊維であってもよい。
【0038】
多くの実施形態では、繊維ウェブ200の形成に使用される繊維は、直径が約250マイクロメートル未満であり、約5マイクロメートルまで又はそれより小さい直径を有していてもよい。小さいポリマー繊維を個々に取り扱うことは困難である場合がある。しかしながら、ポリマー及び無機繊維の両方を含有する混合したヤーン中にポリマー繊維を使用することは、取り扱いによる損傷を受ける傾向がより少ないため、ポリマー繊維のより容易な取り扱いを提供する。
【0039】
図3は、複合フィルム322を形成するための、例示的な装置300の概略的側面図である。装置300は、前述の大量の液体硬化性樹脂310と、前述の繊維ウェブのロール320とを含み、繊維ウェブの層を大量の樹脂310に供給して、樹脂が浸透した繊維ウェブ又は複合フィルム321を形成する。樹脂が浸透した繊維ウェブ又は複合フィルム321は、ニップローラー303を通過して進み、次に第1エネルギー源又は硬化ステーション340に曝されて、複合フィルムが第1硬化状態322まで硬化される。複合フィルムが第1硬化状態に達すると、第1エネルギー源は部分的に硬化した複合フィルムから取り外される。
【0040】
多くの実施形態では、複合フィルム322がニップローラーを通って進む際に、1つ以上のフィルム331、333が複合フィルム322の主表面の一方又は両方に積層され、続いて第1エネルギー源又は硬化ステーション340に曝されて、複合フィルムが第1硬化状態322まで硬化される。複合フィルムが第1硬化状態に達すると、第1エネルギー源は部分的に硬化した複合フィルムから取り外される。フィルム331、333は、ポリマー支持フィルム又は光学フィルム(すなわち、光学素子)などのいずれの有用なフィルムであってもよい。フィルム331、333は、フィルムローラー330、332によって供給され得る。幾つかの実施形態では、フィルム331、333は、後述するように、グレア及び反射の調整のための調光フィルムである。
【0041】
補強繊維は第1の屈折率を有し、樹脂は第1硬化状態の屈折率を有し、第1硬化状態の屈折率は、第1の屈折率と少なくとも0.004の値だけ異なっているか、第1の屈折率と少なくとも0.01の値だけ異なっている。多くの実施形態では、第1硬化状態の複合フィルムを介して実質的に垂直に伝搬する光は、5%以上、又は10%以上のバルクヘイズの影響を受ける。第1硬化状態の複合フィルム322は、完全に硬化されていないが、多くの実施形態では、第1硬化状態の複合フィルム322は粘着性がなく、後の処理でロールに巻き上げられたり、次の第2放射線源への露出でより完全に硬化され得る(図4及び図5を参照)。第2硬化状態(後述)まで更に硬化した場合、第2硬化状態の複合フィルム345の第2硬化状態の屈折率は、第1の屈折率と0.004未満、又は更には0.002未満の値だけ異なる。多くの実施形態では、第2硬化状態の複合フィルムを介して実質的に垂直に伝搬する光は、4%未満、又は更には2%未満のバルクヘイズの影響を受ける(選択した繊維ウェブによってある程度異なる)。第2エネルギー源又は硬化ステーション341は、例えば、紫外線(UV)、可視光線、赤外線(IR)、電子ビーム、又は熱などのいずれかの有用な硬化エネルギー源であってもよい。多くの実施形態では、第2エネルギー源又は硬化ステーション341は、非単色UV源などの放射線源である。
【0042】
特定の面構造化フィルム、とりわけ輝度向上フィルムについては、フィルム内で起こるバルク拡散(バルクヘイズとも呼ばれることもある)を制限することが、しばしば望ましいとされる。バルク拡散性は、光学体の内部の中で起こる光散乱(光学体の表面において起こる光散乱に対向する)として定義される。構造化された表面物質のバルク拡散は、(フィルムが構造化された表面を有する場合)構造化された表面を屈折率整合オイルを使用して湿潤させて、標準的なヘイズメーターを使用してヘイズを測定することにより、測定できる。ヘイズは、多くの市販のヘイズメーターによって測定されることができ、ASTM D1003に従って定義されることができる。バルクヘイズを制限すると、典型的には、光の転向や輝度向上などに関して構造化表面を最も効率的に作用させることができる。本発明の幾つかの実施形態では、バルクヘイズは低いことが望ましい。特に、一部の実施形態では、バルク拡散に起因するバルクヘイズ(バルクヘイズ)は5%未満であってもよく、他の実施形態では3%未満であってもよく、及び他の実施形態では2%未満であってもよい。
【0043】
実施例のバルクヘイズは、(非表面構造化フィルムの)サンプルをBYKガードナー・ヘイズガード・プラス(BYK Gardner Haze-Gard Plus)(カタログ番号4725)の光路に置くことにより測定され、そしてヘイズ値が記録された。この場合、バルクヘイズは、8°円錐の外側に散乱される透過光を透過光の全量で除した割合として定義される。光はフィルムに垂直に入射する。本明細書に含まれる代表的な実施例は、表面構造を有していなかったため、サンプルをヘイズガード・プラス(Haze-Gard Plus)に置く前に屈折率整合オイルを塗布する必要がなかった。
【0044】
バルクヘイズ量の測定された値、すなわち、フィルムの面において起こるいかなる拡散からよりもむしろ、ポリマーマトリックスのバルク内の伝搬から生じるヘイズは、表4に示される。
【0045】
単色UV源には、例えば、発光スペクトルが主に365〜410nmであるニチア(Nichia)UVLEDが挙げられることが理解されよう。これらのシステムにおける光の強度のスペクトル分布は、マイクロ波駆動型水銀系ランプ(例えば、メリーランド州ゲイサーズバーグ(Gaithersburg)のフュージョンUVシステムズ社(Fusion UV Systems Inc.)のフュージョン(Fusion)H及びDランプ)及び水銀アークランプシステム(例えば、イリノイ州ロメオビル(Romeoville)のフュージョン・エテック(Fusion Aetek)から市販されているもの)が生成するスペクトル分布に比べ、非常に狭い波長域で生じる。
【0046】
前述の樹脂は、前述したように第1硬化状態まで部分的に硬化されることができ、より完全に硬化した状態又は第2硬化状態のガラス転移温度より低い第1硬化状態のガラス転移温度を有する。多くの実施形態では、第1硬化状態のガラス転移温度は、最終硬化状態又は第2硬化状態のガラス転移温度の15%〜75%の範囲である。幾つかの実施形態では、第1硬化状態のガラス転移温度は、最終硬化状態又は第2硬化状態のガラス転移温度の15%〜50%の範囲である。幾つかの実施形態では、第1硬化状態のガラス転移温度は、最終硬化状態又は第2硬化状態のガラス転移温度の25%〜70%の範囲である。幾つかの実施形態では、第1硬化状態のガラス転移温度は、最終硬化状態又は第2硬化状態のガラス転移温度の30%〜65%の範囲である。これらのガラス転移温度の範囲(及びパーセンテージ)は、例えば、(温度等に制限されずに)最も完全な起こり得る反応の範囲まで重合可能な場合に重合系で達成できる最終のガラス転移温度によって異なる。これらの範囲は例証の目的であって、制限する意図はないと理解されるべきである。
【0047】
図4及び図5は、第2硬化状態の複合フィルム345を形成するための、第1硬化状態の複合フィルム322の更なる処理を示す。図4は、第1硬化状態の複合フィルム322の主表面の一方又は両方に1つ以上のフィルム337、339を配置又は積層し、次に複合フィルム335を硬化して第2硬化状態の複合フィルム345を製造することによる、複合フィルム335を形成することを示す。第1硬化状態の複合フィルム322は、ニップローラー304を通過して進み、主表面の一方又は両方に1つ以上のフィルム337、339が付加され、次に第2エネルギー源又は硬化ステーション341に曝されて、複合フィルム335を第2硬化状態345まで硬化する。
【0048】
図5は、第1硬化状態の複合フィルム322の主表面の一方又は両方に1つ以上のフィルム337を配置又は積層し、複合フィルム335に構造化表面を形成し、次に複合フィルム335を硬化して第2硬化状態の複合フィルム345を製造することによる、複合フィルム335を形成することを示す。
【0049】
幾つかの実施形態では、コーティングディスペンサー360により、第1硬化状態の複合フィルム322に液体コーティング361が供給される。この液体コーティング361は、例えば、本明細書に記載の接着剤又は樹脂材料などの、いずれかの有用な材料から形成されてもよい。樹脂材料は、複合フィルム321を形成する樹脂材料と同じであっても異なっていてもよい。
【0050】
図5の幾つかの実施形態では、繊維ウェブのロール320は、322の代わりに挿入されることができ、液体コーティング361は、液体コーティング源360から適用されることができる。この場合、硬化ステーション341は、樹脂を第1硬化状態まで硬化し、同時に複合フィルムに表面構造を形成するために使用される、第1エネルギー源になり得る。液体コーティング361は、図3の310と同じ(又は異なる)液体硬化性樹脂であってもよい。
【0051】
フィルム331、333、337、339は、ポリマー支持フィルム又は光学フィルム(すなわち、光学素子)などの、いずれかの有用なフィルムであってもよい。フィルム331、333、337、339は、フィルムロール330、332、336、338によって供給され得る。幾つかの実施形態では、フィルム331、333、337、339は、グレア及び反射の調整のための調光フィルムである。これらのフィルム331、333、337、339には、偏光フィルム、光方向転換フィルム、多層反射偏光フィルム、吸収偏光子フィルム、プリズム状の輝度向上フィルム、光拡散フィルム、光反射フィルム、反射偏光輝度向上フィルム、及び転向フィルムが挙げられる。これらのフィルム331、333、337、339は、輝度向上をもたらすように輝度向上フィルム(BEF)などの構造化表面フィルムであってもよく、又は干渉型を含む反射偏光子、ブレンド偏光子、ワイヤグリッド偏光子、コレステリック液晶偏光子を含む他のフィルム、転向フィルム、逆反射立方体角フィルムなどのその他の構造化表面、表面拡散体、ゲイン拡散構造化表面、又は構造化バルク拡散体などの拡散体、反射防止層、ハードコート層、ステイン耐性ハードコート層、ルーバー付きフィルム、吸収偏光子、部分反射体、半透過フィルム、非対称反射体又は偏光子、波長選択フィルタ、穿孔鏡などの局部的に視覚的又は物理的光透過領域を有するフィルム、補償フィルム、複屈折性又は等方性の単層又はブレンド、並びにビードコーティングであってもよい。例えば、更なるコーティング又は層の一覧は、米国特許第6,459,514号及び同第6,827,886号に更に詳細に記載されており、その内容は共に参照によって全体として本明細書に組み込まれる。
【0052】
複合フィルム335は、その後、第1硬化状態の複合フィルム322又は335を第2エネルギー源341に曝すことで更に硬化される。図5に示されるように、複合フィルム322若しくは335及び/又は任意の液体コーティング層361は、更なる硬化の前又は硬化中に成形又は形成されてもよい。例えば、フィルム322若しくは335及び/又は任意の液体コーティング層361は、構造化表面又は光方向転換表面を提供するように成形されてもよい。フィルム322は、前述の支持層又は光学フィルム素子337と組み合わされて複合フィルム335を形成し、次に誘導ロール352によって成形ロール350に誘導されることができ、任意の加圧ロール354によって成形ロール350に対してプレス成形されてもよい。成形ロール350は、複合フィルム322若しくは335及び/又は任意の液体コーティング層361に押し付けられる形状付き表面356を有する。成形ロール350と加圧ロール354との間隔は、成形表面356が複合フィルム322若しくは335及び/又は任意の液体コーティング層361に貫入する深さを制御する設定距離に調節され得る。幾つかの実施形態では、複合フィルム322若しくは335及び/又は任意の液体コーティング層361は、成形ロール350とまだ接触している間にエネルギー源341からの紫外線又は熱放射により硬化され、第2硬化状態の複合フィルム345を形成する。
【0053】
第2硬化状態の複合フィルム345は、別のロールに保存されても、保存用にシートに切断されてもよい。所望により、第2硬化状態の複合フィルム345は、例えば、1つ以上の層を追加するなど、更に処理されてもよい。
【実施例】
【0054】
重合可能又は硬化性樹脂の調製
重合可能な樹脂の混合物を、74.81重量%のサートマー社(Sartomer Company)(ペンシルバニア州エクストン(Exton))のSR601、0.25重量%のBASF社(BASF Corporation)(ノースカロライナ州シャーロット(Charlotte))のTPO、12.47重量%のサートマー社のSR247、及び12.47重量%のトウアゴウセイ・アメリカ(Toagosei America)(オハイオ州ウエストジェファーソン(West Jefferson))のTO−1463から作製した。樹脂を開放トレーに置き、約41℃まで加熱した。樹脂のトレーを水浴熱交換器で加熱し、トレー内の重合可能な樹脂を41℃に維持した。実施例1〜8について同じ樹脂を使用した。
【0055】
飽和ガラス繊維の調製
約69メートル(75ヤード)(直線距離)(lineal yards)のガラス繊維布地(サウスカロライナ州アンダーソン(Anderson)のヘクセル・リインフォースメンツ社(Hexcel Reinforcements Corporation)のCS−767表面仕上げを有するスタイル(Style)1080)を板紙芯に巻き付けた。ガラス繊維布地を巻き付けた芯を連続回転させ、ロール直径の約1/6を重合可能な樹脂の槽に浸漬し、約60分間回転させた。この間に、布地は加温された重合可能な樹脂と飽和状態になり、ガラス繊維布地内の気泡のほとんどが、加温された重合可能な樹脂で置換され、及び/又は加温された重合可能な樹脂中に溶解された。同じ飽和ガラス繊維のロールを使用して、実施例1〜8を生成した。
【0056】
重合可能な樹脂の調量
重合可能な樹脂で飽和されたガラス繊維を巻き付けたロールを、コーティングマシンの巻き戻しスピンドルに配置した。ガラスが巻き戻され、別の重合可能な樹脂のタンクに(周囲温度及び圧力で)通された。飽和ガラス繊維は、タンクから垂直に出て、ゴムロール(85ジュロ硬度ゴム)と平滑スチールロールで構成されるニップを通過した。ニップにおいて、厚さが0.13mm(0.005インチ)のPETの2つの層が付加された(デュポン・メリネックス(Dupont Melinex)(登録商標)618 PETフィルム、バージニア州ホープウェル(Hopewell)のデュポン・テイジン・フィルムズ・US・リミテッド・パートナーシップ(Dupont Teijin Films US Limited Partnership))。メリネックス(登録商標)618は、片面が接着を促進するよう処理されているため、未処理の面が飽和ガラス繊維と接触するように配置された。したがって、フィルムがニップを通過するときには、ゴムロール、PET、飽和ガラス繊維、PET、及び最後にスチールロールの配列であった。約1kg/cmの力をニップに加えて、重合可能な樹脂を所望の厚さに調量した。余分な樹脂はニップから下に排出され、追加の重合可能な樹脂を含むタンクに戻された。ニップから垂直に出るフィルム構成体は、PET、飽和ガラス繊維、及びPETの順番でこれらの層を含んだ。飽和ガラス繊維がコーティングマシンを通って進む速度は、2メートル/分であった。
【0057】
重合可能な樹脂の第1硬化状態及び第2硬化状態への重合
飽和ガラス繊維を含むフィルム構成体を、紫外線を放射するLEDのアレイに曝した。UVLEDは、ニチア(Nichia)(日本、東京)から購入したものであり、LEDが4段×40列のアレイに実装されていた。これらのLEDのスペクトル出力は、約365nm〜410nmの狭いスペクトル分布で、385nm付近にピークを有した。LEDアレイは、34.6〜39ボルトの電力が供給され、LEDに2.5〜7.34アンペアの電流が供給された。電流の違いにより、表1に示される様々なUV線量の測定値が得られた。紫外線は、PETフィルムを透過し、ガラス繊維布地内の重合可能な樹脂を硬化させた。重合可能な樹脂の硬化後、サンプルをUVLEDへの曝露から取り出すか、又はフュージョン・エテック(Fusion Aetek)(部品番号19031D、イリノイ州ロメオビル(Romeoville))から購入したUVアークランプシステムの下を通過させた。樹脂の重合を誘発するために、UVLEDのみを使用するか、又はUVLEDとフュージョン・エテック(Fusion Aetek)アークランプとを使用するかにかかわらず、フィルムがUV源を通過する速度は2メートル/分であった。フュージョン・エテック(Fusion Aetek)アークランプを使用する場合、単一のアークランプを低出力で使用してサンプルを硬化した。UVLED及びフュージョン・エテック(Fusion Aetek)アークランプの両方の放射測定値は、表1及び2に示される。放射測定は、近時に較正したパワー・パック(Power Puck)(バージニア州スターリング(Sterling)のEIT社(EIT Inc.))を備えたアークランプで、6.096メートル/分のライン速度で実施され、線量は、2メートル/分の処理速度で引き続き計算された(表2に報告される)。UVLEDの放射測定は、SED005検出器及び「W」ディフューザーを備えたIL 1700リサーチ・ラジオメーター(Research Radiometer)(マサチューセッツ州ピーボディー(Peabody)のインターナショナル・ライト(International Light))を使用し、380nmの較正係数で実施された。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
サンプルの重合後、PETライナーを取り外し、サンプルの特性を測定した。
【0061】
サンプルの特性:
硬化サンプルの屈折率は、メトリコン(Metricon)で測定された(ニュージャージー州ペニントンのメトリコン社(Metricon Corporation)、モデル番号2010、633nmで測定)。サンプル毎に3つの測定値を取得し、平均値を報告した。
【0062】
サンプルの厚さは、ミツトヨ(Mitutoyo)キャリパーゲージを使用して測定された(日本のミツトヨ社(Mitutoyo Corp.)、モデル番号ID−C112EB、コード番号543−252B)。サンプルに対して3つの厚さの測定値を取得し、平均値を報告した。
【0063】
ガラス繊維布地の第1の屈折率は、以下の手順により推測された。
【0064】
個々の硬化屈折率値が1.546〜1.559である17の別個の重合可能な樹脂を調製し、ヘクセル(Hexcel)1080ガラス繊維布地に飽和させて、硬化した。得られた複合フィルムのヘイズ値は、BYKガードナー・ヘイズガード・プラス(BYK Gardner Haze-Gard Plus)(メリーランド州コロンビア(Columbia))を使用して測定された。ヘイズ対湾硬化屈折率のグラフの最小点を、ガラス繊維布地の第1の屈折率として選択した。この方法により、ヘクセル(Hexcel)1080ガラス布地の第1の屈折率は1.5575に決定された。
【0065】
サンプルのバルクヘイズ及び透過率は、BYKガードナー・ヘイズガード・プラス(BYK Gardner Haze-Gard Plus)(カタログ番号4725)を使用して測定された。サンプル毎に3つの個別の測定値を取得し、平均値を報告した。
【0066】
フィルムサンプルの貯蔵弾性率及びガラス転移温度は、TA機器Q800シリーズのダイナミック・メカニカル・アナライザー(TA Instruments Q800 series Dynamic Mechanical Analyzer)(DMA)(デラウェア州ニューカッスル(New Castle))を使用し、フィルム伸張形状により測定された。温度掃引実験を、動ひずみモードにおいて、−40℃から100℃までの範囲にわたって2℃/分で実行した。貯蔵弾性率及びタンデルタ(損失係数)は、温度の関数として報告された。タンデルタ対温度曲線のピークを使用して、フィルムに対するガラス転移温度(Tg)を同定した。測定は、複合サンプルの機械方向(縦糸繊維方向)で実施された。各サンプルについて2回の測定を実施し、平均値を報告した。
【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
図4のデータは、光線量の増加に伴ってUVLED硬化サンプル(実施例1〜4)でガラス転移温度が上昇する傾向を示す。アークランプからの光線量(及び熱)がこれらのサンプルに追加されると(実施例5〜8)、重合サンプルのガラス転移温度が約50℃まで上昇した。(UVLEDで形成された)第1硬化状態で達成された最大ガラス転移温度は、選択した樹脂によって異なり、その温度は重合時に樹脂により達成された。実施例1〜4において、第1硬化状態で到達されたガラス転移温度は、第2硬化状態で到達された最終ガラス転移温度の29〜64%であった。本明細書に特に示されていない別の例示的な実施例では、最終ガラス転移温度の15%という低いガラス転移温度が到達された。
【0070】
UVLEDから同じ光線量で照射されたサンプルは、更にアークランプの光に曝されると、1500〜5250MPaの範囲の弾性率の増加を示す。
【0071】
また、表4のデータから分かるように、サンプルがUVLEDから受けた光線量が増加するにつれて、硬化屈折率が上昇した。UVLEDに続いてアークランプで照射されたサンプルは、硬化プロセスのUVLED部分で最初に受けた光量にかかわらず、硬化屈折率で安定水準(約1.5560において)に達したことを示す。UVLEDでの硬化中に屈折性が増すにつれて、樹脂の屈折率は、ガラス繊維布地の第1の屈折率値により近くなる(ガラス繊維のRIと硬化樹脂のRIとの差は小さくなる)。UVLED硬化サンプル(実施例1〜4)は、部分重合樹脂の屈折率とガラス繊維布地の屈折率との差がすべての例で0.004より大きいことを示す。UVLEDに続いてアークランプで共に硬化されたサンプル(実施例5〜8)では、ガラス繊維の屈折率と完全重合樹脂の屈折率との最大差は、すべての例で0.002より小さい。
【0072】
部分重合サンプルの平均ヘイズ値は、ガラス繊維の屈折率と部分重合樹脂の屈折率との差が0.007を超える場合に(実施例1)、ヘイズの著しい増加を示す。この場合、サンプルのバルクヘイズ値は5%を超えていた。この観測結果は、本明細書に特に示されていない別の例示的な実施例と一致し、その実施例では、部分重合サンプルで14%のヘイズ値が報告され、ガラス繊維の屈折率と部分重合樹脂の屈折率との差は0.007を超えていた。部分重合樹脂の屈折率がガラス繊維の屈折率により整合するようになるにつれて、バルクヘイズは減少する。UVLEDに続いてアークランプで曝露されて完全に重合したすべてのサンプル(実施例5〜8)では、バルクヘイズ値は4%未満であった。複合フィルムで達成された最小のバルクヘイズ値は、選択される補強繊維ウェブ(及びその繊維ウェブに適用した任意のコーティング/仕上げ剤/結合剤)の関数である。本明細書に示されていない別の例示的な実施例では、完全に硬化した複合物品で2%未満のバルクヘイズ値が達成された。
【0073】
上述したように、複合光学フィルムを形成する方法の実施形態が開示される。本発明は、開示されたもの以外の実施形態でも実施可能であることを当業者は理解するであろう。開示された実施形態は、例証の目的で提示されているのであって、制限するものではなく、本発明は、次に続く請求項によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合光学フィルムを形成する方法であって、
硬化性樹脂内に分散された補強繊維を含む複合フィルムを第1エネルギー源に曝し、前記複合フィルムを第1硬化状態まで硬化させる工程と、
前記第1エネルギー源を前記第1硬化状態の複合フィルムから取り外す工程と、
前記第1硬化状態の複合フィルムを第2エネルギー源に曝し、前記複合フィルムを第2硬化状態まで更に硬化させる工程と、
前記複合フィルムを光学素子と組み合わせて複合光学フィルムを形成する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記組み合わせ工程が、複合フィルムを第1エネルギー源に曝す工程の前に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組み合わせ工程が、前記第1硬化状態の複合フィルムを第2エネルギー源に曝す工程の前であり、かつ複合フィルムを第1エネルギー源に曝す工程の後で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組み合わせ工程が、前記第1硬化状態の複合フィルムを第2エネルギー源に曝す工程の後で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記光学素子が光偏光フィルムである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記光学素子が光方向転換フィルムである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記光学素子が多層反射偏光フィルムである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記光学素子が吸収偏光フィルムである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記複合フィルムの表面を三次元構造体形成ツールに接触させることにより、前記複合フィルムの表面上に三次元構造体を形成する工程を更に含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記複合フィルムの表面上の構造体が、複数個の光方向転換構造体を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記補強繊維が繊維の織布層を形成する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1硬化状態の複合フィルムを介して実質的に垂直に伝搬する光が、5%以上のバルクヘイズ値の影響を受け、前記第2硬化状態の複合フィルムを介して実質的に垂直に伝搬する光が、5%未満のバルクヘイズの影響を受ける、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記硬化性樹脂が、第1硬化状態のガラス転移温度及び第2硬化状態のガラス転移温度を有し、前記第1硬化状態のガラス転移温度が、前記第2硬化状態のガラス転移温度の15%〜75%の範囲である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記補強繊維が第1の屈折率を有し、前記第1硬化状態の屈折率が、前記第1の屈折率と少なくとも0.004の値だけ異なっており、前記第2硬化状態の屈折率が、前記第1の屈折率値と0.004未満だけ異なっている、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1エネルギー源が単色エネルギー源である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2エネルギー源が紫外線エネルギー源である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1エネルギー源が第1の光スペクトルを放出し、前記第2エネルギーが第2の光スペクトルを放出し、前記第1の光スペクトルが前記第2の光スペクトルとは異なる、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1硬化状態の複合フィルムをロールに巻き取る工程と、その後、前記第1硬化状態の複合フィルムを第2エネルギー源に曝して前記複合フィルムを第2硬化状態まで更に硬化する工程の前に、前記第1硬化状態の複合フィルムをロールから巻き戻す工程と、を更に含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−533077(P2010−533077A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515161(P2010−515161)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/068476
【国際公開番号】WO2009/006252
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】