説明

複合品の製造方法と複合品成形装置

【課題】金属体の裏面に樹脂部成形、表面が加飾される複合品に適合した製造方法である。
【解決手段】第一ヒータ53を設けた進退移動可能な保持ブロック50と加飾シート送り装置70からなり、伝熱面兼キャビティ補完面52を有する保持ブロック50は第一金型10に配置されている複合品成形装置を用いる。以下の工程を行う。イ.金型を型開きし、保持ブロックを進行位置に置く。ロ.第二キャビティ構成面33に加飾シート78を位置付ける。ハ.被加飾金属体1を保持ブロックに保持する。ニ.型閉めを行うとともに、保持ブロックを後退位置に位置付け、第一キャビティ構成面13、伝熱面兼キャビティ補完面と第二キャビティ構成面33に囲まれるキャビティ7を形成する。ホ.キャビティ内に溶融樹脂を射出し、被加飾金属体の裏面に樹脂部を成形すると同時に、被加飾金属体の表面に加飾シートによる加飾を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属体の裏面に樹脂部が成形され、当該樹脂部の成形と同時に金属体の表面が加飾シートにより加飾される複合品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属成形品の表面に樹脂皮膜を形成し、熱移行性染料を転写シートから樹脂皮膜に転写する加飾コーティング物の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。当該従来の製造方法では、ロール転写機、アップダウン転写機などの転写機を用いて転写が行われている。
【0003】
しかし、上記した加飾コーティング物は金属体に加飾が行われるのみであり、他の部材や部品と組み合わせるために、加飾後の金属体に加工を行う工程がさらに必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−219679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属体に密着した樹脂部を成形して複合体とすれば、当該複合体と他の部材や部品との組み合わせが容易になり、上述した金属体への加工工程が減少する。
【0006】
金属体の裏面に樹脂部が成形され、当該樹脂部の成形と同時に金属体の表面が加飾シートにより加飾される複合品を製造するには、金属体を加熱する必要があり、また、加飾成形後に複合体を効率的に冷却する必要がある。
【0007】
このような複合品の製造を実現するために、射出成形での熱と圧力を有効に活用し転写性を向上させるために、射出までに金属体の表面温度が保持されていることが必要となる。金型温度を高温に上げておくことも考えられるが、冷却に時間がかかるため成形サイクルが大幅に長くなるという問題が発生する。
【0008】
解決しようとする問題点は、複合品の製造に適合する、加飾成形時の加熱方法を採用した複合品の製造方法と複合品成形装置の提案にある。
【0009】
本発明のその他の課題は、本発明の説明により明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に課題を解決するための手段を述べる。理解を容易にするために、本発明の実施態様に対応する符号を付けて説明するが、本発明は当該実施態様に限定されるものではない。また、符号である数字は部品などを集合的に示す場合があり、後に説明する実施例において個別の部品などを示す場合に、当該数字のあとにアルファベットの添字を付けているものがある。
【0011】
本発明の一の態様にかかる複合品の製造方法は、
被加飾金属体の表面を加飾シートにより加飾すると同時に、被加飾金属体の裏面に樹脂部を成形して複合品を製造する複合品の製造方法であって、
相互に開閉可能な第一金型(10)と第二金型(30)からなりキャビティ(7)を形成する一対の金型、第一加熱手段(53)を設けた複数の保持ブロック(50)と加飾シート送り装置(70)からなり、
第一金型表面(11)は第一キャビティ構成面(13)と第一キャビティ構成面の外周である第一分割面(12)を有し、
第一金型は第一キャビティ構成面に開口する、前記保持ブロックの数と同数のブロック挿通孔(16)を有し、
第二金型表面(31)は第二キャビティ構成面(33)と第二キャビティ構成面の外周である第二分割面(32)を有し、
第一金型と第二金型は第一分割面と第二分割面の間で開閉され、
前記保持ブロック(50)は前記ブロック挿通口に挿通して配置されていて、前記保持ブロックはその先端部分に位置する面である伝熱面兼キャビティ補完面(52)を有し、前記保持ブロックはその先端部分が第二金型表面に最接近する進行位置と、その先端部分が第二金型表面から最も離間する後退位置の間を進退移動可能である、
複合品成形装置を用いて行い、以下の工程からなる。
イ 第一金型と第二金型を型開きし、前記保持ブロックを進行位置に位置付ける工程
ロ 加飾シート送り装置を用いて、キャビティ内であって第二キャビティ構成面に対面する位置に加飾シートを位置付ける工程
ハ 被加飾金属体の裏面の一部分を前記伝熱面兼キャビティ補完面に当接することにより前記被加飾金属体を前記保持ブロックに保持して、前記被加飾金属体の裏面の残余部分を第一金型と離間状態とし、かつ、前記被加飾金属体の表面と第二金型を離間状態とする工程
ニ 第一分割面と第二分割面を当接状態とする型閉めを行うとともに、前記保持ブロックを後退位置に位置付け、第一キャビティ構成面(13)、伝熱面兼キャビティ補完面(52)と第二キャビティ構成面(33)に囲まれるキャビティ(7)を形成し、前記キャビティ内に位置する前記被加飾金属体の表面と第二キャビティ構成面を、前記加飾シートを介在して当接させる工程
ホ 前記キャビティ内に溶融状態の成形樹脂を射出し、被加飾金属体の裏面(4)に樹脂部を成形すると同時に、前記被加飾金属体の表面(3)に加飾シートによる被加飾金属体の加飾を行う工程
ヘ 第一金型と第二金型を型開きし、複合品を取り出す工程
【0012】
本発明によれば、被加飾金属体の裏面全面に薄い厚さで樹脂を成形することができる。
【0013】
本発明の好ましい実施態様にかかる複合品の製造方法は、
前記複合品成形装置が、さらに、
第二金型が本体(36)と複数のスライド部分(34)からなり、
前記スライド部分は第二金型から第一金型側に向かって立設された金属体当り部分(35)を有し、また、第二金型が有する前記第二分割面は前記スライド部分の表面であり、
第二キャビティ構成面(33)は第二キャビティ中央部(37)と金属体当り部分(35)からなり、
前記スライド部分は本体に形成された第二キャビティ中央部を取り巻いていて、第二キャビティ中央部に向かい本体表面(136)をスライド移動可能であり、
第一キャビティ構成面(13)は第一キャビティ中央部(14)と第一キャビティ中央部の外周部分である金属体端面当接面(15)からなり、
前記ブロック挿通口(16)は第一キャビティ中央部(14)に開口している、
複合品成形装置であり、
前記ハの工程は下記ハ−1の工程に置換され、前記ニの工程は下記ニ−1の工程に置換され、前記ホの工程は下記ホ−1の工程に置換されてもよい。
ハ−1 表面に凸形状であって裏面に窪みを有する凸面体である被加飾金属体の裏面の一部分を前記伝熱面兼キャビティ補完面に当接することにより前記被加飾金属体を前記保持ブロックに保持して、前記被加飾金属体裏面の残余部分を第一金型と離間状態とし、かつ、前記被加飾金属体の表面と第二金型を離間状態とする工程
ニ−1 第一分割面と第二分割面を当接状態とする型閉めを行うとともに、複数の前記スライド部分を第二キャビティ中央部に向かいスライド移動することにより、前記金属体当り部分で被加飾金属体を押し付けつつ、前記保持ブロックを後退位置に位置付け、第一キャビティ構成面、伝熱面兼キャビティ補完面と第二キャビティ構成面に囲まれるキャビティを形成し、前記キャビティ内に位置する前記被加飾金属体の表面と第二キャビティ構成面を、前記加飾シートを介在して当接させる工程
ホ−1 前記キャビティ内であって、被加飾金属体の裏面(4)、第一キャビティ中央部(14)と伝熱面兼キャビティ補完面(52)に囲まれ、被加飾金属体の端面(5)と前記金属体端面当接面(15)で封止される樹脂空間(106)に、溶融状態の成形樹脂を射出し、被加飾金属体の裏面に樹脂部を成形すると同時に、前記被加飾金属体の表面に加飾シートによる被加飾金属体の加飾を行う工程。
【0014】
本好ましい実施態様にかかる複合品の製造方法は、凸面体である被加飾金属体を用いる複合品の製造方法である。本好ましい実施態様にあっては、その他の構成とともに、第二金型は複数のスライド部分を有し、これらスライド部分がスライド移動して被加飾金属体が所定の位置に位置付けられる。そして、被加飾金属体が所定の位置に位置付けられるので、裏面立ち上がり部分(裏側面部分)に成形される樹脂部の厚さが、より一層所望通りとなり、複合品製造にあたり、樹脂部の厚さ再現性により一層優れることになる。
【0015】
上記特徴と共に第一金型の金属体端面当接面と被加飾金属体の端面が接触して樹脂空間が封止されるので、樹脂部は被加飾金属体の裏面にのみ形成され、表面に回り込むことはない。このため、複合品の表面は加飾された金属面のみとなり、美観にすぐれた複合品が製造される。
【0016】
本発明の他の好ましい実施態様にかかる複合品の製造方法は、
前記複合品製造装置が、さらに、
予熱治具(61)を備え、前記予熱治具は被加飾金属体を把持する把持具(64)と第二加熱手段(63)を具備していて、前記予熱治具は、第一金型と第二金型の間である受渡し位置と、第一金型と第二金型の間から離隔した退避位置の間を受渡し−退避移動可能である、
複合品成形装置を用いて行い、
前記イの工程の前に下記トとチの工程を行うものであってもよい。
ト 前記退避位置に予熱治具を配置し、前記予熱治具に前記被加飾金属体を把持し、第二過熱手段により前記被加飾金属体を加熱する工程
チ 前記被加飾金属体を把持しつつ前記予熱治具を前記受渡し位置に位置付け、前記被加飾金属体を前記予熱治具から前記保持ブロックに受渡しする工程
【0017】
本好ましい実施態様にかかる複合品の製造方法は、その他の特徴とともに、金型以外の装置である予熱治具を用いて被加飾金属体の加熱を行う工程を含んでいる。このため、より一層、昇温時間の短縮や加熱効率の増大などの効果がある。
【0018】
本発明の他の態様にかかる複合品成形装置は、
被加飾金属体の表面を加飾シートにより加飾すると同時に、被加飾金属体の裏面に樹脂部を成形して複合品を製造する複合品成形装置において、
相互に開閉可能な第一金型(10)と第二金型(30)からなりキャビティ(7)を形成する一対の金型、第一加熱手段(53)を設けた複数の保持ブロック(50)と加飾シート送り装置(70)からなり、
第一金型表面は第一キャビティ構成面(13)と第一キャビティ構成面の外周である第一分割面(12)を有し、
第一金型は第一キャビティ構成面に開口する、前記保持ブロックの数と同数のブロック挿通孔(16)を有し、
第二金型表面は第二キャビティ構成面(33)と第二キャビティ構成面の外周である第二分割面(32)を有し、
第一金型と第二金型は第一分割面と第二分割面の間で開閉され、
前記加飾シート送り装置は加飾シート(78)をキャビティ内であって第二キャビティ構成面に対面する位置に位置付け、
前記保持ブロックは前記ブロック挿通口に挿通して配置されていて、前記保持ブロックはその先端部分が第二金型表面に最接近する進行位置と、その先端部分が第二金型表面から最も離間する後退位置の間を進退移動可能であり、
前記保持ブロックを進行位置に位置付けて、被加飾金属体の裏面の一部分に前記伝熱面兼キャビティ補完面を当接することにより前記保持ブロックに被加飾金属体を保持し、前記保持状態で、前記被加飾金属体裏面の残余部分は第一金型表面と離間状態に保たれ、
第一分割面と第二分割面を当接状態とする型閉めを行い、前記保持ブロックを後退位置に位置付けると、第一キャビティ構成面(13)、伝熱面兼キャビティ補完面(52)と第二キャビティ構成面(33)に囲まれるキャビティ(7)が形成され、前記キャビティ内に被加飾金属体と前記加飾シートが位置付けられ、前記被加飾金属体と第二キャビティ構成面が前記加飾シートを介在して当接する状態となることを特徴とする。
【0019】
本発明の好ましい実施態様にかかる複合品成形装置は、
第二金型(30)は、本体(36)と複数のスライド部分(34)からなり、
前記スライド部分は第二金型から第一金型側に向かって立設された金属体当り部分(35)を有し、また、第二金型が有する前記第二分割面は前記スライド部分の表面であり、
第二キャビティ構成面(33)は第二キャビティ中央部(37)と金属体当り部分(35)からなり、
前記スライド部分は本体に形成された第二キャビティ中央部を取り巻いていて、第二キャビティ中央部に向かい本体表面をスライド移動可能であり、
第一キャビティ構成面(13)は第一キャビティ中央部(14)と第一キャビティ中央部の外周部分である金属体端面当接面(15)からなり、
前記ブロック挿通口は第一キャビティ中央部(14)に開口していて、
表面に凸形状であって裏面に窪みを有する凸面体である被加飾金属体をキャビティ内に位置付けて、第一分割面と第二分割面を当接状態とする型閉めを行ったときに、
複数の前記スライド部分を第二キャビティ中央部に向かいスライド移動することにより、複数の前記スライド部分における前記金属体当り部分が被加飾金属体表面と接触する状態に被加飾金属体が移動するとともに、
前記保持ブロックを後退位置に位置付けることにより、前記金属体端面当接面(15)と被加飾金属体の端面(5)が接触するものであってもよい。
【0020】
本好ましい実施態様にかかる複合品成形装置は、特定の凸面体である被加飾金属体を用いる複合品の成形に好ましく使用される。スライド部分が移動することにより、金属体当り部分が被加飾金属体の側面を押して、被加飾金属体を所定位置に押し付ける。被加飾金属体の剛性を利用した位置決め機構を採用するものである。加えて、型閉じ動作により、被加飾金属体を表面から裏面に押し付けることにより、樹脂空間を封止するなどの特徴を有する。
【0021】
本発明の他の好ましい実施態様にかかる複合品成形装置は、
さらに、予熱治具(61)を備え、前記予熱治具は被加飾金属体を把持する把持具(64)と第二加熱手段(63)を具備していて、前記予熱治具は、第一金型と第二金型の間である受渡し位置と、第一金型と第二金型の間から離隔した退避位置の間を受渡し−退避移動可能であり、
前記被加飾金属体を把持し前記予熱治具を金型間に位置付け、前記被加飾金属体を前記予熱治具から前記保持ブロックに受渡しすることを特徴とするものであってもよい。
【0022】
本好ましい実施態様にかかる複合品成形装置は、その他の特徴とともに、金型以外の装置である予熱治具を含んでいる。このため、より一層、被加飾金属体の昇温時間の短縮や加熱効率の増大などが図られる。
【0023】
以上説明した本発明、本発明の好ましい実施態様、これらに含まれる構成要素は可能な限り組み合わせて実施することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかる複合品の製造方法は、その他の特徴とともに、被加飾金属体を保持ブロックに保持して、被加飾金属体の裏面の一部分を伝熱面兼キャビティ補完面に当接するとともに、被加飾金属体の残余部分を金型と離間状態とする工程を含んでいるので、金型に比較して、熱容量が小さい保持ブロックと被加飾金属体のみを効率的に加熱することができる利点がある。同じ理由から、製造した複合品の冷却も容易となる。
【0025】
本発明にかかる複合品成形装置は、その他の特徴とともに、被加飾金属体を加熱、保持する保持ブロックを有し、進行位置に位置付けて被加飾金属体を保持すると被加飾金属体の裏面の一部分に伝熱面兼キャビティ補完面が当接し、被加飾金属体裏面の残余部分は第一金型表面と離間状態となる特徴を含んでいて、金型に比較して、熱容量が小さい保持ブロックと被加飾金属体のみを効率的に加熱することができる利点がある。同じ理由から、製造した複合品の冷却も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は複合品成形装置(1)が型開き状態にあり、被加飾金属体が一対の金型間の受渡し位置に位置付けられる状態を示した断面説明図である。
【図2】図2は複合品成形装置(1)が型開き状態にあり、被加飾金属体が保持ブロックに保持された状態を示した断面説明図である。
【図3】図3は複合品成形装置(1)における一対の金型が型閉じ動作途上にある状態を示した断面説明図である。図3では加飾シート(78)と加飾シート送り装置(70)の図示を省略している。
【図4】図4は複合品成形装置(1)が型閉じ状態にあり、キャビティが形成された状態を示した断面説明図である。
【図5】図5は複合品成形装置(1)が型開き状態にあり、複合品の取出し状態を示した断面説明図である。
【図6】図6は第二金型を示す図であり、第一金型表面側から第二金型を視認した説明図である。
【図7】図7は第一金型を示す図であり、第二金型表面側から第一金型を視認した説明図である。
【図8】図8は予熱治具と取出し治具の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施例にかかる複合品成形装置と複合品の製造方法をさらに説明する。本発明の実施例に記載した部材や部分の寸法、材質、形状、その相対位置などは、とくに特定的な記載のない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例にすぎない。
【0028】
複合品成形装置1は、相互に開閉可能な一対の金型である第一金型10及び第二金型30並びに保持ブロック50、加飾シート送り装置70を含んでいる。第一金型10と第二金型30は第一金型表面11と第二金型表面31が相互に対面している。
【0029】
第一金型10はその表面である第一金型表面11に第一キャビティ構成面13と第一分割面12を有している。第一分割面12は第一キャビティ構成面13を取り囲んでいる。また、第一金型10は第一キャビティ構成面13に開口するブロック挿通孔16を有している。
【0030】
第二金型30はその表面である第二金型表面31に第二キャビティ構成面33と第二分割面32を有している。第二分割面32は第二キャビティ構成面33を取り囲んでいる。
【0031】
第二金型30は本体36と4つのスライド部分34を含む。本発明において、第二金型の部分や部品は、第二金型本体36の部分や部品及び/またはスライド部分34の部分や部品を含む場合がある。
【0032】
スライド部分34にあって、第一金型表面11と向き合う面は第二分割面32である。スライド部分34は金属体当り部分35を有する。金属体当り部分35は第二金型から第一金型側に立設されている。
【0033】
第二キャビティ構成面33は第二キャビティ中央部37と金属体当り部分35からなる。スライド部分34の側面である金属体当り部分35は、第二キャビティ中央部37と一緒になって、キャビティ7を構成する。
【0034】
スライド部分34は本体表面136をスライド移動する。
【0035】
図6を参照して、スライド部分は34a、34b、34cと34dの4つである。図6中に被加飾金属体2を図示している。スライド部分は図6に記入した矢印の方向に移動する。すなわち、スライド部分34aは紙面左右方向に移動する。スライド部分34bは紙面上下方向に移動する。スライド部分は一対の金型の型閉じ、型開き動作に同期して移動する。4つのスライド部分34a、34b、34cと34dは、金型の型閉じ動作に同期して第二キャビティ構成面の中央方向に移動する。当該4のスライド部分の連携動作により、被加飾金属体2はキャビティ内の意図する位置にガイドされる。
【0036】
図6に図示した状態は、4つのスライド部分34a、34b、34cと34dが、全て第二キャビティ構成面の中央方向に向かう方向である終端位置まで移動した状態(スライド閉状態)である。スライド閉状態では、4箇所の金属体当り部分35a、35b、35cと35dが被加飾金属体2と接触している。
【0037】
4個のスライド部分は、全てが同期して閉状態へスライド移動してもよく、順次閉状態へスライド移動してもよい。被加飾金属体は金属に由来する剛性があり、スライド部分に押されて、キャビティ内の所望の平面位置に位置付けられる。ここで平面とは第一分割面に平行な面を意味している。
【0038】
金属体当り部分35の形状は被加飾金属体の表面に接触して、スライド部分の移動に起因して被加飾金属体を移動させることが可能な形状であればよい。このため、第二金型から第一金型側に立設されていればよい。例えば、本実施例のごとく、垂直壁と傾斜壁の組み合わせであってもよい。好ましくは、被加飾金属体の表面形状と隙間なく接触する形状である。
【0039】
第一金型10と第二金型30は第一分割面12と第二分割面32の間で開閉される。
【0040】
第一金型10に4個の保持ブロック50が設置されている。保持ブロック50の先端部分は伝熱面兼キャビティ補完面52である。ここで、先端部分とは長手形状の保持ブロックにあって、両端部分の中で、第二金型表面側にある先端部分を意味する

【0041】
第一金型にブロック挿通口16が穿たれている。ブロック挿通口16は第一キャビティ構成面13に開口して、開口部17を形成する。保持ブロック50はブロック挿通口16の中に挿通されている。
【0042】
図7を参照して、第一キャビティ構成面13は第一キャビティ中央部14と金属体端面当接面15からなる。第一キャビティ中央部14は第一キャビティ構成面13の中央部分である。金属体端面当接面15は第一キャビティ中央部14の外周部分である。金属体端面当接面15は、被加飾金属体2の端面5が当接することにより、被加飾金属体の裏面空間である樹脂空間106が封止される作用を担う。金属体端面当接面15の形状は被加飾金属体の端面を第一金型表面に投影した形状と等しい。
【0043】
被加飾金属体2は金属に由来する剛性があり、型閉時に第二金型に押されて、被加飾金属体端面5が金属体端面当接面に当接する。保持ブロック50a、50b、50cと50dを第一金型表面11に投影した形状は、すなわち、開口部の形状である。
【0044】
4箇所の開口部は第一キャビティ中央部14に開口している。開口部の外縁は金属体端面当接面と離隔していてもよく、接触していてもよい。
【0045】
開口部(もしくは保持ブロック)と金属体端面当接面との配置関係を他の表現で説明する。
【0046】
被加飾金属体2をキャビティ内に位置付けた場合に、向かい合う2つの保持ブロック50aと50cにおける外向壁面54aと54cを一の仮想的な直線で結び前記直線を延長して仮想延長直線56を想定する。図7中に仮想延長直線56を破線で記入している。
【0047】
仮想延長直線56における2つの外向壁面54aと54cの距離(線分55の長さ)が、仮想延長直線56における被加飾金属体の内面と交わる2点間の距離である被加飾金属体内面間距離(線分9の長さ)と同等かそれ未満である。図示の容易化などの理由から、線分55は仮想延長直線と離隔し、かつ、一点鎖線で示している。同様に、線分9は仮想延長直線と離隔し、かつ、二点鎖線で示している。外向壁面54aと54cの距離(線分55の長さ)と被加飾金属体内面間距離(線分9の長さ)の相違は、被加飾金属体の裏面立ち上がり部分に成形を所望する樹脂の厚さにより、定める。
【0048】
4の伝熱面兼キャビティ補完面が被加飾金属体2の4箇所を保持する。輪郭線の全周囲を保持するのではなく、4部分のみを保持する保持ブロックとしたので、保持ブロックの熱容量は小さくなり、保持ブロックの素早い温度上昇、下降が実現する。そして、部分的な保持を選択したことによって懸念される位置決めの精度不安は、スライド部分に位置決めを担当させることにより、精度不安の懸念を払拭している。
【0049】
保持ブロック50はブロック挿通口内を移動して進行位置と後退位置間を進退移動する。進行位置に位置付けられているとき、先端部分は最も第二金型表面31に接近した位置にある。進行位置にあって、伝熱面兼キャビティ補完面52に被加飾金属体2を保持すれば、被加飾金属体2は第一金型10から浮いた状態となる。このとき、被加飾金属体2は周囲を空気に取り囲まれている。空気は熱伝導率の小さい物質であるから被加飾金属体2の放熱が抑制される。
【0050】
保持ブロック50は第一ヒータ53を具備する。第一ヒータ53は第一加熱手段である。第一ヒータ53は保持ブロック50を加熱し、当該熱は伝熱面兼キャビティ補完面52に保持された被加飾金属体2に伝導する。すなわち、被加飾金属体が加熱される。または放熱が抑制される。
【0051】
保持ブロック50は第一金型10に比較して体積が小さいから熱容量も小さく、第一ヒータ53による加熱の影響が保持ブロック50全体、特に伝熱面兼キャビティ補完面52に短時間で行き渡る。
【0052】
後退位置に位置付けられているとき、先端部分52は最も第二金型表面31から遠ざかった位置にある。後退位置に至ると、それまで伝熱面兼キャビティ補完面52に保持されていた被加飾金属体2は第一金型10に当接する状態となる。すなわち、被加飾金属体2は第一金型10と熱的に接触する。具体的には、被加飾金属体の端面5と金属体端面当接面15が接触することにより、被加飾金属体2と第一金型10が熱的に接触する。
【0053】
加飾シート送り装置70は加飾シート78を第一金型10と第二金型30の間に送り込む。加飾シート78は第二キャビティ構成面33に近接した位置に位置付けられる。加飾シート78は帯状であり、加飾単位が長手方向に連続して形成されている。加飾シート78はシートロール71から巻き出され、前ガイドロール72にガイドされる。また、後ロール73にガイドされ巻取りロール74に巻き取られる。もっとも、枚葉の加飾シートを、一枚毎に送り込んでもよい。
【0054】
第一金型表面11と第二金型表面31の間に、ロボットアーム60が進退する。ロボットアーム60は、第一金型10と第二金型30が型開き状態にあって、かつ、必要な場合に、第一金型表面11と第二金型表面31の間に位置付けられる。これにより、予熱治具61が受渡し位置に位置付けられる。また、同様に、取出し治具が位置付けられる。第一金型10と第二金型30が型閉じ状態に向かうとき、ロボットアーム60は金型の間の位置から退避する。
【0055】
図8を参照して、ロボットアーム60に取付けられたハンドは予熱治具61と吸引治具67である。予熱治具61と吸引治具67は、回転軸65を中心として180度回転し、どちらか一方が、金型の間特にキャビティ部分に位置付けられる。予熱治具61と吸引治具67はスライド移動するものであってもよい。
【0056】
予熱治具61は、枠体62の中に第二ヒータ63が取付けてある。第二ヒータ63は第二加熱手段である。枠体62に複数の把持具64が設置され、被加飾金属体2を把持する。把持された被加飾金属体は必要最小限の点で枠体62に把持され、周囲を空気に取り囲まれている。このため、断熱状態で把持され、第二ヒータ63から発せられ、被加飾金属体2に輻射された熱は逃げず、加熱に使われる。第二ヒータ63はいかなるヒータでもよいが、面状に発熱するヒータを使用することが好ましい。面状発熱体からなる第二ヒータ63と被加飾金属体2は面で向き合う。このため、被加飾金属体2の加熱位置を細かく制御できる特徴がある。特に、金型を加熱する方式と比較すれば、加熱位置の細かい制御は大きな利点となる。
【0057】
取出し治具66は吸引盤67を有する。吸引盤67を複合品に位置付け、吸引盤67を減圧すれば、複合品が固定され、ロボットアームを移動させて、適宜の位置で、減圧を解除して、複合品を脱着する。
【0058】
第一金型10と第二金型30が型閉じ状態になると、キャビティ7が形成される。キャビティ7は第一キャビティ構成面13、伝熱面兼キャビティ補完面52、第二キャビティ構成面33からなる。本実施例にあっては、第一キャビティ構成面13は第一キャビティ中央部14であり、第二キャビティ構成面33は第二キャビティ中央部37と金属体当り部分35である。
【0059】
キャビティ7内に、被加飾金属体2が配置される。被加飾金属体の表面3は加飾シート78を間に挟んで、第二キャビティ構成面33と当接する。
【0060】
被加飾金属体の裏面4は、樹脂空間106を間に挟んで、第一キャビティ構成面13と対面する。型閉じ状態で、被加飾金属体2と保持ブロック50間に接触は無い。
【0061】
樹脂空間106に、第一金型10側からホットランナ18が開口している。
【0062】
ホットランナ18から溶融樹脂が樹脂空間に射出される。そして、被加飾金属体の裏面に樹脂部が成形される。ランナはコールドランナであってもよい。
【0063】
例えば第一キャビティ中央部に形状を付与しておいて、この形状を樹脂部に写しとることができる。形状の一例は、複合品と他の部品と組み合わせるための、ボス、リブ、突起、ボス穴、窪み、ネジ穴、その他の凸部、その他の凹部である。また、形状は複合品補強のためのリブなどの部材などであってもよい。
【0064】
樹脂部が成形された複合品は、第一金型表面と接触状態にあり、同時に第二金型表面と接触状態にある。第一金型と第二金型は冷却液の通路である冷却管を有し、射出後に冷却され、複合品も冷却される。冷却管は図示していない。
【0065】
加飾シート78は、従来の成形同時転写樹脂成形品の製造に使用されている転写シートやインサートシートを使用すればよい。また、例えば特開2001−219697号に記載されている基体シート上に少なくとも熱移行性染料層が形成された転写シートであってもよい。
【0066】
被加飾金属体2の材質としては、アルミニウム、ステンレス、鉄、銅、金、クロム、マグネシウム、マンガン、ニッケル、鉛、白金、スズ、チタン、タングステン、亜鉛、ジルコニウム、モリブデンおよびこれらの合金などを用いることができる。被加飾金属体2の形状としては、特に限定されないが、板状、凸面体などが好適に用いられる。
【0067】
表面に凸形状であって裏面に窪みを有する凸面体が特に好ましい。表面に凸形状であって裏面に窪みを有する凸面体として、底面を取り除いた直方体、底面を取り除いた立方体、平行な2つの平面で切断して天板を補った円錐や角錐、これらの辺と含む辺近辺を円筒の一部に置き換えた形状、これらの頂点を含む頂点近辺を球の一部に置き換えた形状などを挙げることができる。また、平面で切断した球体、平面で切断した楕円球体、平行な2つの平面で切断して天板を補った楕円球体、平行な2つの平面で切断して天板を補った楕球体などであってもよい。
【0068】
被加飾金属体2は、表面に樹脂皮膜を持つものであってもよい。樹脂皮膜は、コーティングにより形成してもよく、フィルムを貼り付けして形成してもよい。
【0069】
また、アルミニウムやアルミニウム合金を材料とする被加飾金属体の場合には、アルマイト処理をしてもよい。アルマイト処理をすれば、表面に樹脂皮膜がなくても、従来の転写シートを用いて表面を加飾することができる。
【0070】
続いて、複合品成形装置1を用いた複合品の製造方法を説明する。
【0071】
まず、ロボットアーム60を金型の間から退避した位置に置き、ハンドの予熱治具61に被加飾金属体2を把持する。第二ヒータ63を動作させて第二ヒータ63の輻射熱で被加飾金属体2を予熱する。把持の前に第二ヒータを作動しておいてもよい。予熱治具61への被加飾金属体2の保持を維持しつつ、ロボットアーム60を操作して予熱治具61を第一分割面と第二分割面間に位置付ける。
【0072】
図1を参照して、被加飾金属体2を予熱治具61から保持ブロック50に受け渡す。受渡し時点で、第一ヒータを作動させる。もっとも、第一ヒータを予め作動させておいて、加熱された状態の保持ブロックに被加飾金属体2を受け取ってもよい。
【0073】
ロボットアーム60を第一金型10と第二金型30の間から退避させる。図2に示した状態になる。すなわち、被加飾金属体2は保持ブロック50に保持される。この状態で、被加飾金属体の裏面4の一部分は、保持ブロックの先端部分52である伝熱面兼キャビティ補完面に当接している。被加飾金属体裏面4の残余部分は第一金型表面11と離間状態にある。なぜなら、4個の保持ブロック50は、被加飾金属体裏面4の一部分を保持するのみだからである。同時に、被加飾金属体の表面3と第二金型30は離間状態にある。
【0074】
複合品成形装置1の金型はいわゆる縦型に配置されていて、被加飾金属体2は紙面下方に重力が働いている。そして、ブロック挿通口は第一キャビティ中央部に開口しているので、保持ブロック50aは被加飾金属体2の側面に接触しているが、保持ブロック50cは被加飾金属体2の側面から離間していて、矢印57で示す間隙がある。
【0075】
被加飾金属体の受渡し先立ち、または、受渡し後、あるいはこれらと同時に、加飾シート78の加飾単位を第二キャビティ構成面に対面する位置に配置する。
【0076】
次に、第一金型10と第二金型30を型閉めする。型閉め動作中の複合品成形装置の断面図を図3に示している。図3では加飾シート78と加飾シート送り装置70の図示を省略している。型閉め動作と連動して4個のスライド部分34が互いに接近する方向にスライドする。スライド部分34cは紙面上方向に移動する。スライド部分34cの金属体当り部分35cが被加飾金属体2の側面に当り、さらにスライド部分34cが移動を続けるので、被加飾金属体2は紙面上側に移動する。この結果、保持ブロック50aの側面と被加飾金属体2の裏側面とは離間し、矢印58で示す間隙が生じる。
【0077】
スライド部分のスライド移動と同時に保持ブロックが後退位置に移動する。型閉め動作中にあっても、被加飾金属体2はその裏面4の一部分が保持ブロック先端部分と当接しているのみであり、裏面4の残余部分や表面3は金型やその他の部分と当接せず、遊離状態にある。
【0078】
図4は金型が型閉じ状態にあり、キャビティが形成された状態を図示している。第一分割面12と第二分割面32が接触している。キャビティ7は、第一キャビティ中央部14、伝熱面兼キャビティ補完面52と第二キャビティ構成面33(金属体当り部分35が含まれる)に囲まれて形成される。
【0079】
キャビティ7内に被加飾金属体2と加飾シート78が配置されている。金属体当り部分35に押されて、被加飾金属体2の水平位置が決定される。
【0080】
被加飾金属体の裏面4、第一キャビティ中央部14と伝熱面兼キャビティ補完面52に囲まれて樹脂空間106が形成される。樹脂空間106は被加飾金属体の端面5と金属体端面当接面15の接触によって封止される。
【0081】
樹脂空間106内にホットランナ18から溶融樹脂を射出する。溶融樹脂は被加飾金属体2の裏面と一体化する。
【0082】
また、被加飾金属体2は加熱状態にあり、溶融樹脂から伝わる熱と樹脂射出の圧力があいまって、加飾シート78から絵柄などが被加飾金属体2の表面3に転写などされる。
【0083】
射出成形後、金型の冷却または放冷が行われる。金型の冷却は、金型内に配置された冷却管に冷却液体を流すことにより行われる。従来の射出成形金型の冷却方法をそのまま利用することができる。また、通常は、金型の冷却と同時に、第一ヒータ53の作動が停止される。
【0084】
図5を参照して、引き続く、複合品の取り出し工程を説明する。製造された複合品8の樹脂部6を斜線で示している。第一金型10と第二金型30を型開きする。型開き動作と連動して4個のスライド部分34が互いに離間する方向にスライドする。同時に保持ブロックが進行位置に移動する。型開き後、ロボットアーム60が、金型間に進行し、取出し治具66を複合品8に位置付ける。吸引盤67を減圧し、複合品8を取出し治具66に付着する。ロボットアームを移動して、吸引盤67を大気圧に戻し、複合品8を脱着する。
【0085】
取出し治具66による複合品8の取出し時に、予熱治具61にすでに被加飾金属体2を把持し、予熱を開始していることが好ましい。
【0086】
続いて、次の複合品の製造を行う。
【産業上の利用可能性】
【0087】
製造された複合品は、たとえば、携帯電話用筐体、パソコン用筐体、オーディオ用筐体、ビデオカメラ用筐体、化粧品容器、食器、家電製品用部品、事務機器用部品、自動車部品、医療機器などに使用される。
【符号の説明】
【0088】
1 複合品成形装置
2 被加飾金属体
6 樹脂部
7 キャビティ
8 複合品
10 第一金型
11 第一金型表面
12 第一分割面
13 第一キャビティ構成面
14 第一キャビティ中央部
15 金属体端面当接面
16 ブロック挿通口
17 挿通口開口部
18 ホットランナ
30 第二金型
31 第二金型表面
32 第二分割面
33 第二キャビティ構成面
34 スライド部分
35 金属体当り部分
36 本体
37 第二キャビティ中央部
50 保持ブロック
52 先端部分である伝熱面兼キャビティ補完面
53 第一加熱手段である第一ヒータ
57 間隙
58 間隙
60 ロボットアーム
61 予熱治具
62 枠体
63 第二加熱手段である第二ヒータ
64 把持具
65 回転軸
66 取出し治具
67 吸引盤
70 加飾シート送り装置
78 加飾シート
106 樹脂空間
136 本体表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加飾金属体の表面を加飾シートにより加飾すると同時に、被加飾金属体の裏面に樹脂部を成形して複合品を製造する複合品の製造方法であって、
相互に開閉可能な第一金型と第二金型からなりキャビティを形成する一対の金型、第一加熱手段を設けた複数の保持ブロックと加飾シート送り装置からなり、
第一金型表面は第一キャビティ構成面と第一キャビティ構成面の外周である第一分割面を有し、
第一金型は第一キャビティ構成面に開口する、前記保持ブロックの数と同数のブロック挿通孔を有し、
第二金型表面は第二キャビティ構成面と第二キャビティ構成面の外周である第二分割面を有し、
第一金型と第二金型は第一分割面と第二分割面の間で開閉され、
前記保持ブロックは前記ブロック挿通口に挿通して配置されていて、前記保持ブロックはその先端部分に位置する面である伝熱面兼キャビティ補完面を有し、前記保持ブロックはその先端部分が第二金型表面に最接近する進行位置と、その先端部分が第二金型表面から最も離間する後退位置の間を進退移動可能である、
複合品成形装置を用いて行い、以下の工程からなる複合品の製造方法。
イ 第一金型と第二金型を型開きし、前記保持ブロックを進行位置に位置付ける工程
ロ 加飾シート送り装置を用いて、キャビティ内であって第二キャビティ構成面に対面する位置に加飾シートを位置付ける工程
ハ 被加飾金属体の裏面の一部分を前記伝熱面兼キャビティ補完面に当接することにより前記被加飾金属体を前記保持ブロックに保持して、前記被加飾金属体の裏面の残余部分を第一金型と離間状態とし、かつ、前記被加飾金属体の表面と第二金型を離間状態とする工程
ニ 第一分割面と第二分割面を当接状態とする型閉めを行うとともに、前記保持ブロックを後退位置に位置付け、第一キャビティ構成面、伝熱面兼キャビティ補完面と第二キャビティ構成面に囲まれるキャビティを形成し、前記キャビティ内に位置する前記被加飾金属体の表面と第二キャビティ構成面を、前記加飾シートを介在して当接させる工程
ホ 前記キャビティ内に溶融状態の成形樹脂を射出し、被加飾金属体の裏面に樹脂部を成形すると同時に、前記被加飾金属体の表面に加飾シートによる被加飾金属体の加飾を行う工程
ヘ 第一金型と第二金型を型開きし、複合品を取り出す工程
【請求項2】
請求項1に記載した複合品の製造方法であって、
前記複合品成形装置は、さらに、
第二金型が本体と複数のスライド部分からなり、
前記スライド部分は第二金型から第一金型側に向かって立設された金属体当り部分を有し、また、第二金型が有する前記第二分割面は前記スライド部分の表面であり、
第二キャビティ構成面は第二キャビティ中央部と金属体当り部分からなり、
前記スライド部分は本体に形成された第二キャビティ中央部を取り巻いていて、第二キャビティ中央部に向かい本体表面をスライド移動可能であり、
第一キャビティ構成面は第一キャビティ中央部と第一キャビティ中央部の外周部分である金属体端面当接面からなり、
前記ブロック挿通口は第一キャビティ中央部に開口している、
複合品成形装置であり、
前記ハの工程は下記ハ−1の工程に置換され、前記ニの工程は下記ニ−1の工程に置換され、前記ホの工程は下記ホ−1の工程に置換された複合品の製造方法。
ハ−1 表面に凸形状であって裏面に窪みを有する凸面体である被加飾金属体の裏面の一部分を前記伝熱面兼キャビティ補完面に当接することにより前記被加飾金属体を前記保持ブロックに保持して、前記被加飾金属体の裏面の残余部分を第一金型と離間状態とし、かつ、前記被加飾金属体の表面と第二金型を離間状態とする工程
ニ−1 第一分割面と第二分割面を当接状態とする型閉めを行うとともに、複数の前記スライド部分を第二キャビティ中央部に向かいスライド移動することにより、前記金属体当り部分で被加飾金属体を押し付けつつ、前記保持ブロックを後退位置に位置付け、第一キャビティ構成面、伝熱面兼キャビティ補完面と第二キャビティ構成面に囲まれるキャビティを形成し、前記キャビティ内に位置する前記被加飾金属体の表面と第二キャビティ構成面を、前記加飾シートを介在して当接させる工程
ホ−1 前記キャビティ内であって、被加飾金属体の裏面、第一キャビティ中央部と伝熱面兼キャビティ補完面に囲まれ、被加飾金属体の端面と前記金属体端面当接面で封止される樹脂空間に、溶融状態の成形樹脂を射出し、被加飾金属体の裏面に樹脂部を成形すると同時に、前記被加飾金属体の表面に加飾シートによる被加飾金属体の加飾を行う工程
【請求項3】
請求項1乃至2いずれかに記載した複合品の製造方法であって、
前記複合品製造装置は、さらに、
予熱治具を備え、前記予熱治具は被加飾金属体を把持する把持具と第二加熱手段を具備していて、前記予熱治具は、第一金型と第二金型の間である受渡し位置と、第一金型と第二金型の間から離隔した退避位置の間を受渡し−退避移動可能である、
複合品成形装置を用いて行い、
前記イの工程の前に下記トとチの工程を行う複合品の製造方法。
ト 前記退避位置に予熱治具を配置し、前記予熱治具に前記被加飾金属体を把持し、第二過熱手段により前記被加飾金属体を加熱する工程
チ 前記被加飾金属体を把持しつつ前記予熱治具を前記受渡し位置に位置付け、前記被加飾金属体を前記予熱治具から前記保持ブロックに受渡しする工程
【請求項4】
被加飾金属体の表面を加飾シートにより加飾すると同時に、被加飾金属体の裏面に樹脂部を成形して複合品を製造する複合品成形装置において、
相互に開閉可能な第一金型と第二金型からなりキャビティを形成する一対の金型、第一加熱手段を設けた複数の保持ブロックと加飾シート送り装置からなり、
第一金型表面は第一キャビティ構成面と第一キャビティ構成面の外周である第一分割面を有し、
第一金型は第一キャビティ構成面に開口する、前記保持ブロックの数と同数のブロック挿通孔を有し、
第二金型表面は第二キャビティ構成面と第二キャビティ構成面の外周である第二分割面を有し、
第一金型と第二金型は第一分割面と第二分割面の間で開閉され、
前記加飾シート送り装置は加飾シートをキャビティ内であって第二キャビティ構成面に対面する位置に位置付け、
前記保持ブロックは前記ブロック挿通口に挿通して配置されていて、前記保持ブロックはその先端部分が第二金型表面に最接近する進行位置と、その先端部分が第二金型表面から最も離間する後退位置の間を進退移動可能であり、
前記保持ブロックを進行位置に位置付けて、被加飾金属体の裏面の一部分に前記伝熱面兼キャビティ補完面を当接することにより前記保持ブロックに被加飾金属体を保持し、前記保持状態で、前記被加飾金属体裏面の残余部分は第一金型表面と離間状態に保たれ、
第一分割面と第二分割面を当接状態とする型閉めを行い、前記保持ブロックを後退位置に位置付けると、第一キャビティ構成面、伝熱面兼キャビティ補完面と第二キャビティ構成面に囲まれるキャビティが形成され、前記キャビティ内に被加飾金属体と前記加飾シートが位置付けられ、前記被加飾金属体と第二キャビティ構成面が前記加飾シートを介在して当接する状態となる複合品成形装置。
【請求項5】
第二金型は、本体と複数のスライド部分からなり、
前記スライド部分は第二金型から第一金型側に向かって立設された金属体当り部分を有し、また、第二金型が有する前記第二分割面は前記スライド部分の表面であり、
第二キャビティ構成面は第二キャビティ中央部と金属体当り部分からなり、
前記スライド部分は本体に形成された第二キャビティ中央部を取り巻いていて、第二キャビティ中央部に向かい本体表面をスライド移動可能であり、
第一キャビティ構成面は第一キャビティ中央部と第一キャビティ中央部の外周部分である金属体端面当接面からなり、
前記ブロック挿通口は第一キャビティ中央部に開口していて、
表面に凸形状であって裏面に窪みを有する凸面体である被加飾金属体をキャビティ内に位置付けて、第一分割面と第二分割面を当接状態とする型閉めを行ったときに、
複数の前記スライド部分を第二キャビティ中央部に向かいスライド移動することにより、複数の前記スライド部分における前記金属体当り部分が被加飾金属体表面と接触する状態に被加飾金属体が移動するとともに、
前記保持ブロックを後退位置に位置付けることにより、前記金属体端面当接面と被加飾金属体の端面が接触することを特徴とする、請求項4に記載した複合品成形装置。
【請求項6】
請求項4乃至5いずれかに記載した複合品製造装置であって、
予熱治具を備え、前記予熱治具は被加飾金属体を把持する把持具と第二加熱手段を具備していて、前記予熱治具は、第一金型と第二金型の間である受渡し位置と、第一金型と第二金型の間から離隔した退避位置の間を受渡し−退避移動可能であり、
前記被加飾金属体を把持し前記予熱治具を金型間に位置付け、前記被加飾金属体を前記予熱治具から前記保持ブロックに受渡しすることを特徴とする複合品成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−110893(P2011−110893A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271402(P2009−271402)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】