説明

複合成形品の製造方法及び製造装置

【課題】内部に空洞を有するモール本体の外面にクッション部材を射出成形して一体化したピラーモールを製造する際に、モール本体の変形や破損を防止できるようにする。
【解決手段】ガスアシスト射出成形により内部に空洞14を有するモール本体12を成形した後、第2の射出成形型32内にモール本体12を載置し、モール本体12の空洞14内に空洞充填用の液体を注入して満たした状態で密封する。この後、射出成形型32内に加熱溶融した熱可塑性ポリマー材料を射出してモール本体12の外面にクッション部材を成形する。この際、モール本体12は、空洞14内に満たされた空洞充填用の液体によって周壁(空洞14の周囲を囲む壁)が内側から補強されて、周壁の全体に亘って外圧に対する剛性が高められているため、熱可塑性ポリマー材料の射出圧力がモール本体12の周壁に作用しても、モール本体12の周壁の全体に亘って変形や破損を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に空洞を有する第1部材の外面に第2部材を射出成形して第1部材と第2部材とが一体化した複合成形品の製造方法及び製造装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
自動車のピラーに沿って装着されるピラーモールディング等のモールディングにおいては、例えば、特許文献1(特開2003−165137号公報)に記載されているように、硬質のポリマー材料のガスアシスト射出成形により内部に空洞を有する硬質の第1成形体(モール本体)を成形した後、第2成形体(クッション材)を成形するための射出成形型内に第1成形体をセットした状態で軟質のポリマー材料を射出することで軟質の第2成形体を成形すると共に第1成形体の外面に第2成形体を固着させて第1成形体と第2成形体とを一体化した複合成形品を形成するようにしたものがある。
【0003】
この特許文献1では、第2成形体を射出成形する際に射出ゲートから射出された溶融材料の射出圧力によって第1成形体の周壁(空洞の周囲を囲む壁)が変形することを防止するために、第1成形体のうちの射出ゲートに対向する部分に案内体を設けておき、射出ゲートから射出された溶融材料が案内体に沿って流動することで、第1成形体の周壁に作用する射出圧力を軽減することが提案されている。
【0004】
また、特許文献2(特開平8−252872号公報)に記載されているように、1次成形体の中空部分に液体を充填して1次成形体を凍結させた後、射出成形型内に1次成形体をセットした状態で熱可塑性樹脂を射出して1次成形体を被覆するように2次成形体を成形することで、2次成形体を射出成形する際の射出圧力によって凍結した1次成形体が変形することを防止するようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−165137号公報
【特許文献2】特開平8−252872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1の技術では、第1成形体のうちの射出ゲートに対向する部分に案内体を設けるため、第1成形体の周壁のうちの射出ゲートの近傍では変形や破損を防止できるが、射出ゲートから離れた不定位置で散発的に第1成形体の周壁が変形したり破損することがある。この現象は、第1成形体が熱可塑性ポリマー材料(例えば熱可塑性合成樹脂)で成形され、第1成形体の周壁の厚さが部分的にばらついている部分(薄くなっている部分)で発生し易い。
【0007】
また、上記特許文献2の技術では、1次成形体の中空部分に液体を充填して凍結させるため、次のような問題がある。1次成形体の中空部分に充填した液体を凍結させるために特別な冷凍設備を用意する必要があり、生産コストが高くなる。また、1次成形体や2次成形体の成形時間に比べて1次成形体を介して内部の液体を凍結させるのに長時間を要するため、生産効率が低下する。更に、2次成形体を成形する際に加熱溶融したポリマー材料が凍結した1次成形体に接触した途端に熱を奪われて固化して流動性が低下するおそれがあるため、ポリマー材料を成形キャビティ内に十分に充填するのが極めて困難になると共に、凍結して表面温度が低下した1次成形体に2次成形体を溶着させるのが極めて困難になる。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、内部に空洞を有する第1部材の外面に第2部材を射出成形して一体化した複合成形品を製造する場合に、第1部材の周壁の全体に亘って変形や破損を防止できると共に、生産コストや生産効率の悪化を招くことなく、複合成形品を容易に製造できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、周壁によって周囲を囲まれた空洞を内部に有する第1部材の少なくとも外面に第2部材を射出成形して第1部材と第2部材とが一体化した複合成形品を製造する方法であって、第1部材を準備する第1部材準備工程と、第2部材を射出成形するための射出成形型が開いているときに該射出成形型内に第1部材を載置する載置工程と、射出成形型を閉じて該射出成形型で第1部材を部分的に挟持して固定すると共に射出成形型の成形面と第1部材の外面の一部とによって第2部材成形用キャビティを形成するキャビティ形成工程と、第2部材成形用キャビティ内に加熱溶融した第2部材成形用の熱可塑性ポリマー材料を射出して充填することで第2部材を成形すると共に第1部材の少なくとも外面に第2部材を固着させて第1部材と第2部材とを一体化した複合成形品を形成する第2部材成形工程と、射出成形型を開いて複合成形品を取り出す取出工程と、第2部材成形工程の前に第1部材に空洞と外部とを連通する連通孔を形成しておき、該連通孔から第1部材の空洞内に空洞充填用の液体を注入して満たした状態で密封する液体密封工程と、第2部材成形工程の後に第1部材の空洞内の空洞充填用の液体を排出する液体排出工程とを含み、第1部材の空洞内に空洞充填用の液体を満たして密封した状態で第2部材成形工程を実行し、該第2部材成形工程において、空洞充填用の液体の温度は、第1部材の熱変形温度よりも低く且つ第1部材の第2部材成形用キャビティを形成する部分の外面温度を第2部材との溶着又は接着を阻害する温度に低下させない温度であり、射出成形型の内面は、第1部材の第2部材成形用キャビティを形成する部分以外の周壁の外面に接触して該第1部材の接触部分の周壁が外側に向けて膨張するのを阻止するようにしたものである。
【0010】
第1部材の空洞内に空洞充填用の液体を満たして密封することで、第1部材の周壁(空洞の周囲を囲む壁)を内側から補強して、第1部材の周壁の全体に亘って外圧に対する剛性を高めることができる。これにより、第2部材を射出成形する際に、加熱溶融した熱可塑性ポリマー材料の射出圧力が第1部材の周壁に作用しても、第1部材の周壁の全体に亘って変形や破損を防止できる。しかも、第1部材の空洞内の液体を凍結させる必要がないため、生産コストや生産効率の悪化を招くことなく、複合成形品を容易に製造できる。
【0011】
この場合、請求項2のように、第1部材準備工程において、第1部材を射出成形するための射出成形型内に第1部材成形用の熱可塑性ポリマー材料を射出して充填すると共に空洞形成用のガスを注入するガスアシスト射出成形を行うことで空洞を有する第1部材を成形するようにしても良い。このようにすれば、ひけの発生を防止し軽量化した第1部材を容易に成形することができる。
【0012】
また、請求項3のように、ガスアシスト射出成形により第1部材を成形する際に該第1部材にガスを注入するガス注入孔としての連通孔とガスを排出するガス排出孔としての連通孔を形成しておき、そのうちの一方の連通孔を液体密封工程において空洞充填用の液体の注入孔として利用して他方の連通孔を空洞充填用の液体の排出孔として利用するようにしても良い。このようにすれば、空洞充填用の液体の注入孔や排出孔を新たに設ける必要がない。
【0013】
更に、請求項4のように、液体密封工程において、一方の連通孔から空洞内に空洞充填用の液体を注入すると共に他方の連通孔から空洞内のガスを排出するようにしても良い。このようにすれば、第1部材の空洞内に空洞充填用の液体を効率良く注入することができる。
【0014】
また、請求項5のように、液体排出工程において、一方の連通孔から空洞内に圧縮空気を注入して他方の連通孔から空洞内の空洞充填用の液体を排出するようにしても良い。このようにすれば、第1部材の空洞内から空洞充填用の液体を効率良く排出することができる。
【0015】
また、請求項6のように、液体密封工程は、第2部材を射出成形するための射出成形型内に第1部材を載置して該射出成形型を閉じた状態で実行するようにしても良い。このようにすれば、射出成形型で第1部材を安定保持した状態で第1部材の空洞内に空洞充填用の液体を満たして密封することができる。
【0016】
或は、請求項7のように、液体密封工程は、第2部材を射出成形するための射出成形型内に第1部材を載置する前に実行するようにしても良い。このようにすれば、射出成形型に液体密封工程を実行するための改造を施す必要がない。
【0017】
また、請求項8のように、第1部材準備工程において、第1部材を射出成形するための射出成形型内に第1部材成形用の熱可塑性ポリマー材料を射出して充填すると共に空洞形成用の液体を注入する液体アシスト射出成形を行うことで空洞を有する第1部材を成形し、液体密封工程において、第1部材の空洞内に空洞形成用の液体を残存させて空洞充填用の液体として利用するようにしても良い。このようにすれば、液体密封工程で第1部材の空洞内に空洞充填用の液体を注入する必要がなくなる(又は不足分だけ空洞充填用の液体を補充するだけ済む)。
【0018】
更に、請求項9のように、液体密封工程において、空洞充填用の液体として水を用いるようにしても良い。このようにすれば、空洞充填用の液体(水)を簡単に供給することができる。
【0019】
また、請求項10のように、液体排出工程は、第2部材を射出成形するための射出成形型内に複合成形品を載置して該射出成形型を閉じた状態で実行するようにしても良い。このようにすれば、射出成形型で複合成形品(第1部材)を安定保持した状態で第1部材の空洞内から空洞充填用の液体を排出することができる。
【0020】
また、請求項11に係る発明は、内部に空洞を有すると共に該空洞と外部とを連通する連通孔が形成された第1部材の少なくとも外面に第2部材を射出成形して第1部材と第2部材とが一体化した複合成形品の製造に適用され、第2部材を射出成形するための射出成形型が開いているときに該射出成形型内に第1部材を載置可能で、射出成形型を閉じたときに射出成形型の成形面と第1部材の外面の一部とによって第2部材成形用キャビティが形成され、第2部材成形用キャビティ内に加熱溶融した第2部材成形用の熱可塑性ポリマー材料を射出して充填することで第2部材を成形すると共に第1部材の少なくとも外面に第2部材を固着させて第1部材と第2部材とを一体化した複合成形品を製造する装置であって、射出成形型には第1部材の連通孔に対応する位置に流路接続部が設けられ、射出成形型を閉じたときに第1部材の連通孔の周囲の外面に流路接続部が密接して、流路接続部を介して第1部材の空洞内に流体を注入可能にすると共に、流路接続部を介して第1部材の空洞内から流体を排出可能にするように構成したものである。
【0021】
この構成では、流路接続部を介して第1部材の空洞内に空洞充填用の液体を注入することができるため、第1部材の空洞内に空洞充填用の液体を満たして密封した状態で、第2部材を成形して第1部材と第2部材とを一体化した複合成形品を形成することができる。この後、流路接続部を介して第1部材の空洞内から空洞充填用の液体を排出することができる。
【0022】
この場合、請求項12のように、第1部材には2つの連通孔が形成され、射出成形型には該2つの連通孔に対応する位置にそれぞれ流路接続部が設けられ、一方の流路接続部を介して第1部材の空洞内に流体を注入可能にすると共に、他方の流路接続部を介して第1部材の空洞内から流体を排出可能にするように構成しても良い。このようにすれば、一方の流路接続部を介して第1部材の空洞内に空洞充填用の液体を注入することができ、その後、他方の流路接続部を介して第1部材の空洞内から空洞充填用の液体を排出することができる。
【0023】
また、請求項13のように、一方の流路接続部には、流路切替手段を介して液体供給源と圧縮空気供給源のいずれか一方と連通可能に流路を接続し、他方の流路接続部には、流路開閉手段を介して射出成形型の外部と連通可能に流路を接続するようにしても良い。このようにすれば、流路切替手段と流路開閉手段によって流体(液体又は空気)の注入及び排出の切り替えを容易に行うことができる。
【0024】
更に、請求項14のように、流路切替手段と流路開閉手段をそれぞれ予め設定した手順で作動させる制御手段を設けるようにしても良い。このようにすれば、流体(液体又は空気)の注入及び排出の切り替えを自動的に行うことができる。
【0025】
また、請求項15のように、流路接続部の先端に弾性材料製のシール部材を設け、射出成形型を閉じたときにシール部材が第1部材の連通孔の周囲を取り囲んで該第1部材の外面に密接するようにしても良い。このようにすれば、第1部材と流路接続部との間の気密性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は本発明の一実施例におけるピラーモールの正面図である。
【図2】図2はピラーモールの裏面図である。
【図3】図3は図1のA−A断面図である。
【図4】図4は図1のB−B断面図である。
【図5】図5は第1の射出成形型の平面図である。
【図6】図6は図5のC−C断面図である。
【図7】図7は図5のD−D断面図である。
【図8】図8は第2の射出成形型の平面図である。
【図9】図9は図8のE−E断面図である。
【図10】図10は図8のF−F断面図である。
【図11】図11は流路接続部及びその周辺部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態を、自動車のフロントピラーに沿って装着されるピラーモールディング(以下単に「ピラーモール」という)に適用して具体化した一実施例を説明する。
【0028】
まず、図1乃至図4に基づいてピラーモール11の概略構成を説明する。
図1乃至図4に示すように、長尺なピラーモール11(複合成形品)は、モール本体12(第1部材)の少なくとも外面にクッション部材13(第2部材)を射出成形してモール本体12とクッション部材13とを一体化したものであり、モール本体12の内部には、モール本体12の周壁31によって周囲を囲まれて長手方向に延びる空洞14が形成されている。
【0029】
モール本体12は、クッション部材13よりも硬質で剛性を有するモール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料で成形されている。モール本体12を成形する熱可塑性ポリマー材料としては、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリルエチレンプロピレンスチレン樹脂(AES樹脂)、硬質又は半硬質のポリ塩化ビニル樹脂(rigid PVC樹脂)、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)、ポリエチレン樹脂(PE樹脂)、ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、ポリアミド樹脂(PA樹脂)等の熱可塑性合成樹脂が用いられる。
【0030】
一方、クッション部材13は、モール本体12よりも軟質のクッション部材成形用の熱可塑性ポリマー材料で成形されている。クッション部材13を成形する熱可塑性ポリマー材料としては、例えば、軟質のポリ塩化ビニル樹脂(plasticized PVC樹脂)、塩素化エチレンコポリマー、エチレンビニルアセテート(EVA)、オレフィン系又はスチレン系の熱可塑性エラストマー等の熱可塑性合成樹脂が用いられる。
【0031】
モール本体12とクッション部材13の成形材料は、SP(溶解度パラメータ)値が互いに同一か近似のものを選択して用いると、クッション部材13の射出成形の際に両方の成形材料が溶け合って熱融着する。但し、モール本体12の表面にモール本体12とクッション部材13の成形材料を接着する接着剤層を予め形成して、両方の成形材料が接着剤層を介して接着されるようにしておけば、どのような成形材料の組み合わせを選択しても良い。
【0032】
図1及び図2に示すように、ピラーモール11は、モール本体12の長手方向の外周を取り囲むようにクッション部材13がモール本体12の外周縁に沿って一体的に設けられている。モール本体12の裏面には、後述するガスアシスト射出成形によりモール本体12を成形する際にガスを注入するガス注入孔15とガスを排出するガス排出孔16が形成されている。ガス注入孔15は、モール本体12の長手方向の一方の端部に形成され、ガス排出孔16は、モール本体12の長手方向の他方の端部(ガス注入孔15と反対側の端部)に形成されている。
【0033】
図3及び図4に示すように、モール本体12の裏面には、水受けせき用の突出部17と車体パネル装着用の突出部18が設けられ、車体パネル装着用の突出部18の所定位置には、クリップ等を係合保持するための係合孔19が形成されている。また、クッション部材13は、モール本体12の横断面の外周部において、互いに離れた複数箇所(本実施例では二箇所)に形成され、クッション部材13の所定位置には、モール本体12の裏面側で幅方向の両側のクッション部材13を連結する連結部20が設けられている。
【0034】
次に、図5乃至図11に基づいてピラーモール11の製造装置(射出成形型)及び製造方法について説明する。
図5乃至図7に示すように、モール本体12を射出成形するための第1の射出成形型21には、モール本体成形用キャビティ22が設けられている。また、図7に示すように、第1の射出成形型21には、モール本体成形用キャビティ22内にモール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料を射出する射出ゲート23が設けられ、この射出ゲート23の近傍に、モール本体成形用キャビティ22内に空洞形成用の高圧ガスを注入するガス注入部24が設けられている。更に、モール本体成形用キャビティ22内に射出されたモール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料が最も遅く到達する部分(モール本体成形用キャビティ22の長手方向で射出ゲート23と反対側の端部)に排出流路25を介して連通する排出用キャビティ26が設けられている。この排出用キャビティ26を形成する内壁面の一部は、移動可能なスライドコア27で形成されている。
【0035】
射出成形機の射出ノズル(図示せず)から射出されて加熱溶融したモール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料は、ランナー28→スプルー29→射出ゲート23→モール本体成形用キャビティ22→排出用キャビティ26の経路で流動し、高圧ガス供給源30(例えば高圧ガスポンプ)から圧送された高圧ガスは、ガス注入部24→モール本体成形用キャビティ22→排出用キャビティ26の経路で流動するようになっている。尚、高圧ガスを注入する位置は、適宜変更しても良く、例えば、ランナー28や射出ノズル(図示せず)等から高圧ガスを注入するようにしても良い。
【0036】
ピラーモール11を製造する場合には、まず、モール本体成形工程(第1部材準備工程)を実行する。このモール本体成形工程では、第1の射出成形型21のモール本体成形用キャビティ22内にモール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料(例えば熱可塑性合成樹脂)を射出して充填すると共に空洞形成用のガス(例えば窒素ガス)を注入するガスアシスト射出成形をフルショット法又はショートショット法で行うことで空洞14を有するモール本体12を成形する。これにより、ひけの発生を防止し軽量化したモール本体12を容易に成形することができる。
【0037】
フルショット法でガスアシスト射出成形を行う場合には、第1の射出成形型21を閉じた後、射出ゲート23からモール本体成形用キャビティ22内に加熱溶融したモール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料を射出して、モール本体成形用キャビティ22内に加熱溶融したモール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料を充填し、モール本体成形用キャビティ22内全体にモール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料が満たされた後、モール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料の射出を停止する。
【0038】
更に、モール本体成形用キャビティ22内に充填されたモール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料が固化する前(少なくとも横断面における厚肉の中心部が軟化している状態のとき)に、モール本体成形用キャビティ22内に充填されたモール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料内にガス注入部24から高圧ガスを注入する。これにより、モール本体12を成形する熱可塑性ポリマー材料のうちのガス注入部24に対応する位置に、ガスを注入するガス注入孔15が形成される。
【0039】
モール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料内に注入された高圧ガスが膨張してモール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料の内部に空洞14を形成しながら進行するため、モール本体成形用キャビティ22内のモール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料の一部が排出用キャビティ26へ排出される。尚、排出用キャビティ26の容積をモール本体12の空洞14の容積よりも大きく設定しておくことで、高圧ガスが少なくとも排出流路25まで進行して少なくとも排出流路25まで空洞14が連続して形成される。これにより、モール本体12を成形する熱可塑性ポリマー材料のうちの排出流路25に対応する位置に、ガスを排出するガス排出孔16が形成される。
【0040】
一方、ショートショット法でガスアシスト射出成形を行う場合には、第1の射出成形型21を閉じた後、射出ゲート23からモール本体成形用キャビティ22内に加熱溶融したモール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料を射出して、モール本体成形用キャビティ22内に加熱溶融したモール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料を充填するが、この際、モール本体成形用キャビティ22内へのモール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料の射出量(充填量)がモール本体成形用キャビティ22の容積のよりも少ない所定量(モール本体成形用キャビティ22の容積から空洞14の容積を差し引いた量で、実用的にはモール本体成形用キャビティ22の容積の概ね75〜90%の量)に達した時点で、モール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料の射出を停止する。
【0041】
更に、モール本体成形用キャビティ22内に充填されたモール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料が固化する前(少なくとも横断面における厚肉の中心部が軟化している状態のとき)に、モール本体成形用キャビティ22内に充填されたモール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料内にガス注入部24から高圧ガスを注入する。これにより、モール本体12を成形する熱可塑性ポリマー材料のうちのガス注入部24に対応する位置に、ガスを注入するガス注入孔15が形成される。
【0042】
モール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料内に注入された高圧ガスが膨張してモール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料の内部に空洞14を形成しながら進行するため、モール本体成形用キャビティ22内のモール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料がモール本体成形用キャビティ22の末端部まで流動し、モール本体成形用キャビティ22内のモール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料の一部が排出用キャビティ26へ排出される。これにより、モール本体12を成形する熱可塑性ポリマー材料のうちの排出流路25に対応する位置に、ガスを排出するガス排出孔16が形成される。尚、ショートショット法でガスアシスト射出成形を行う場合には、排出用キャビティ26を設けない射出成形型を用いても良く、排出キャビティ26を設けない場合には、モール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料がモール本体成形用キャビティ22の末端部に達した時点でモール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料の流動が阻止される。
【0043】
以上のようにして、フルショット法又はショートショット法でガスアシスト射出成形を行った後、高圧ガスの圧力を保ったままモール本体成形用キャビティ22内のモール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料を冷却固化させることで、内部に空洞14を有するモール本体12を成形し、モール本体成形用キャビティ22内のモール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料が固化した後、第1の射出成形型21を開いて、モール本体12を取り出す。
【0044】
取り出したモール本体12には、ガス注入部24に対応する位置に形成されたガス注入孔15が空洞14と外部とを連通する連通孔として残される。必要に応じてガス注入孔15の部分を所定形状に切断する。更に、モール本体12に連結した排出材料部分(排出用キャビティ26に排出されたポリマー材料で成形された部分)を切断することで、排出流路25に対応する位置に形成されたガス排出孔16が空洞14と外部とを連通する連通孔として残される。尚、排出用キャビティ26を設けない射出成形型を用いてショートショット法でモール本体12を成形した場合には、モール本体12にガス排出孔16が形成されないため、所定位置に工具で孔を開けて連通孔を形成する。
【0045】
図8乃至図10に示すように、クッション部材13を射出成形するための第2の射出成形型32は、射出成形型32内にモール本体12を載置した状態で該射出成形型32を閉じたときに、モール本体12の表裏両面(クッション部材13が成形される部分以外の部分)を挟持してモール本体12を固定すると共に、射出成形型32の成形面とモール本体12の外面の一部とによってクッション部材成形用キャビティ33,33(第2部材成形用キャビティ)がモール本体12の横断面の外周部にそれぞれ形成されるようになっている。
【0046】
図9に示すように、第2の射出成形型32には、モール本体12の水受けせき用の突出部17に対応する位置でクッション部材13の連結部20となる部分を成形するキャビティである連通路39の近傍に、クッション部材成形用キャビティ33内にクッション部材成形用の熱可塑性ポリマー材料を射出する射出ゲート34が設けられている。射出成形機の射出ノズル(図示せず)から射出されて加熱溶融したクッション部材成形用の熱可塑性ポリマー材料は、ランナー35→スプルー36→射出ゲート34→クッション部材成形用キャビティ33の経路で流動するようになっている。また、射出ゲート34から射出された溶融材料は、一方のクッション部材成形用キャビティ33に充填され、連通路39を通って他方のクッション部材成形用キャビティ33に流れる。これによって溶融材料が各成形用キャビティ33,33にそれぞれ不足なく充填される。また、第2の射出成形型32には、モール本体12のパネル装着用の突出部18の係合孔19に嵌まり込むボールプランジャー37が設けられている。
【0047】
尚、射出ゲート34を設ける位置は、適宜変更しても良く、例えば、クッション部材13の連結部20の中央部付近に対応する位置(図9中に二点鎖線で示す位置)に射出ゲート34を設けたり、或は、モール本体12の水受けせき用の突出部17の側方又はパネル装着用の突出部18の側方に射出ゲート34を設けるようにしても良い。更に、射出ゲート34は、1箇所に限定されず、クッション部材成形用キャビティ33の長手方向に沿って所定間隔で複数箇所に設けるようにしても良い。また、連通路39(連結部20)も長手方向に沿って複数箇所に設けるようにしても良い。
【0048】
更に、図10に示すように、第2の射出成形型32には、モール本体12のガス排出孔16(以下「連通孔16」と表記することもある)に対応する位置に、流体注入用の流路接続部38が設けられると共に、モール本体12のガス注入孔15(以下「連通孔15」と表記することもある)に対応する位置に、流体排出用の流路接続部39が設けられている。第2の射出成形型32を閉じたときに、モール本体12の連通孔16の周囲に流路接続部38が密接すると共に、モール本体12の連通孔15の周囲に流路接続部39が密接して、流体注入用の流路接続部38を介してモール本体12の空洞14内に流体(液体又は空気)を注入可能にすると共に、流体排出用の流路接続部39を介してモール本体12の空洞14内から流体を排出可能にするようになっている。
【0049】
流体注入用の流路接続部38には、注入流路40が接続され、この注入流路40が流路切替バルブV1(流路切替手段)を介して液体供給源41(例えば液体ポンプ)と圧縮空気供給源42(例えばコンプレッサ)に接続されている。流路切替バルブV1によって、注入流路40を液体供給源41に連通させる流路と、注入流路40を圧縮空気供給源42に連通させる流路とを切り替えるようになっている。注入流路40のうちの流路切替バルブV1と流路接続部38との間には、注入流路40を開閉する流路開閉バルブV2が設けられている。一方、流体排出用の流路接続部39には、排出流路43が接続され、この排出流路43が射出成形型32の外部と連通可能に設けられている。排出流路43の途中には、排出流路43を開閉する流路開閉バルブV3(流路開閉手段)が設けられている。
【0050】
これらの流路切替バルブV1と流路開閉バルブV2,V3によって流体(液体又は空気)の注入及び排出の切り替えを容易に行うことができる。また、これらの流路切替バルブV1と流路開閉バルブV2,V3は、それぞれ制御装置44(制御手段)によって予め設定した手順で作動するように制御され、流体(液体又は空気)の注入及び排出の切り替えを自動的に行うことができるようになっている。尚、流路切替バルブV1と流路開閉バルブV2,V3は、射出成形型32の中に組み込むようにしても良い。
【0051】
流体注入用の流路接続部38と流体排出用の流路接続部39の構成は、実質的に同じ構成であるため、共通の図面(図11)を用いて説明する。
図11に示すように、流体注入用の流路接続部38の内部には、注入流路40と連通する注入孔45が形成されると共に、流路接続部38の先端には、弾性材料製(例えばゴム製)の環状のシール部材47(例えばOリング)が注入孔45を取り囲むように設けられ、第2の射出成形型32を閉じたときに、シール部材47がモール本体12の連通孔16の外側開口部の周囲を取り囲んでモール本体12の外面に密接するようになっている。
【0052】
一方、流体排出用の流路接続部39の内部には、排出流路43と連通する排出孔46が形成されると共に、流路接続部39の先端には、弾性材料製(例えばゴム製)の環状のシール部材48(例えばOリング)が排出孔46を取り囲むように設けられ、第2の射出成形型32を閉じたときに、シール部材48がモール本体12の連通孔15の外側開口部の周囲を取り囲んでモール本体12の外面に密接するようになっている。これにより、モール本体12と流路接続部38,39との間の気密性を高めることができるようになっている。
【0053】
ピラーモール11を製造する場合には、前述したモール本体成形工程(第1部材準備工程)を実行してモール本体12を射出成形した後、クッション部材13を射出成形するための第2の射出成形型32が開いているときに該射出成形型32内の所定位置にモール本体12を載置する載置工程を実行する。
【0054】
この後、第2の射出成形型32を閉じて、該射出成形型32でモール本体12の表裏両面(クッション部材13が成形される部分以外の部分)を挟持してモール本体12を固定すると共に、射出成形型32の内面の一部の成形面とモール本体12の外面の一部とによってクッション部材成形用キャビティ33を形成するキャビティ形成工程を実行する。この際、モール本体12の連通孔16の周囲の外表面に流路接続部38が密接すると共に、モール本体12の連通孔15の周囲の外表面に流路接続部39が密接して、モール本体12と流路接続部38,39との間の気密性が付与される。
【0055】
この後、第2の射出成形型32内にモール本体12を載置して該射出成形型32を閉じた状態で、モール本体12の空洞14内に空洞充填用の液体(例えば水)を注入して満たした状態で密封する液体密封工程を実行する。これにより、射出成形型32でモール本体12を安定保持した状態でモール本体12の空洞14内に空洞充填用の液体を満たして密封する。また、本実施例では、ガスアシスト射出成形によりモール本体12を成形する際にガス排出孔として形成された連通孔16を空洞充填用の液体の注入孔として利用し、一方の連通孔16から空洞14内に空洞充填用の液体を注入しながら他方の連通孔15から空洞14内のガスを排出することで、モール本体12の空洞14内に空洞充填用の液体を効率良く注入する。
【0056】
ここで、空洞充填用の液体として用いる水は、射出成形型32を冷却する際に用いる通常の冷却水を使用できる。このようにすれば、空洞充填用の液体(水)を簡単に供給することができる。また、空洞充填用の液体は、射出成形型32の錆を防ぐために防錆剤(例えば、カルボン酸型界面活性剤、アルキルリン酸塩化合物系防錆剤等)を混合した水を用いるようにしても良い。この場合には、後述する液体排出工程で排出した空洞充填用の液体を回収して再利用するのが経済的で好ましい。或は、空洞充填用の液体は、消泡剤や破泡剤を入れた水溶液を用いるようにしても良い。これにより、空洞14内に注入された水の中に気泡を生じさせず又は生じても破裂させて、液体(水)だけで空洞14を満たすことができ、液体の非圧縮性(圧力が加わったときに容積が縮小しない性質)を高めることができる(空洞14内に液体と気体が混ざり合っていると、高い非圧縮性が得られない可能性がある)。
【0057】
この液体密封工程では、まず、流路切替バルブV1を液体供給位置に切り替えて注入流路40を液体供給源41に連通させた後、流路開閉バルブV2を流路開放位置に切り替えて注入流路40を開放すると共に、流路開閉バルブV3を流路開放位置に切り替えて排出流路43を開放する。これにより、液体供給源41から供給される空洞充填用の液体(例えば水)を、注入流路40→流路接続部38→連通孔16の経路でモール本体12の空洞14内に注入する。この際、モール本体12の空洞14の容積を越える体積の液体を注入して、空洞14内を液体で満たす。これにより、空洞14内のガスは、注入される液体に押されて流動し、連通孔15→流路接続部39→排出流路43の経路で射出成形型32の外部に排出される。このときに、空洞14の容積を越えた過剰の液体(液体の一部)も排出される。
【0058】
この後、モール本体12の空洞14内が液体で満たされたときに、(A案)流路開閉バルブV3を流路閉鎖位置に切り替えて排出流路43を閉鎖した後、流路開閉バルブV2を流路閉鎖位置に切り替えて注入流路40を閉鎖する。或は、(B案)流路開閉バルブV3を流路閉鎖位置に切り替えて排出流路43を閉鎖するが、流路開閉バルブV2を流路開放位置に維持して注入流路40を開放状態に維持すると共に、流路切替バルブV1を液体供給位置に維持して注入流路40を液体供給源41に連通させた状態に維持する。このようにして、モール本体12の空洞14内に空洞充填用の液体を満たした状態で密封することで、モール本体12の周壁31(空洞14の周囲を囲む壁)を内側から補強して、モール本体12の周壁31の全体に亘って外圧に対する剛性を高める。
【0059】
この後、第2の射出成形型32のクッション部材成形用キャビティ33内に加熱溶融したクッション部材成形用の熱可塑性ポリマー材料(例えば熱可塑性合成樹脂)を射出して充填することでクッション部材13を成形すると共にモール本体12の少なくとも外面にクッション部材13を固着させてモール本体12とクッション部材13とを一体化したピラーモール11を形成するクッション部材成形工程(第2部材成形工程)を実行する。
【0060】
このクッション部材成形工程では、射出ゲート34からクッション部材成形用キャビティ33内に加熱溶融したクッション部材成形用の熱可塑性ポリマー材料を射出して、クッション部材成形用キャビティ33内に加熱溶融したクッション部材成形用の熱可塑性ポリマー材料を充填し、モール本体12の所定位置にクッション部材13を成形する。
【0061】
この際、モール本体12は、空洞14内に満たされた空洞充填用の液体によって周壁31(空洞14の周囲を囲む壁)が内側から補強されて、周壁31の全体に亘って外圧に対する剛性が高められているため、加熱溶融したクッション部材成形用の熱可塑性ポリマー材料の射出圧力がモール本体12の周壁31に作用しても、モール本体12の周壁31の全体に亘って変形や破損が生じない。
【0062】
また、このクッション部材成形工程において、空洞充填用の液体の温度は、モール本体12の熱変形温度よりも低く且つモール本体12のうちのクッション部材成形用キャビティ33を形成する部分の外面温度をクッション部材13との溶着又は接着を阻害する温度に低下させない温度(クッション部材13との溶着又は接着を阻害する温度よりも高い温度)である。これにより、加熱溶融したクッション部材成形用の熱可塑性ポリマー材料がモール本体12の周壁31に接触して周壁31の温度が上昇しても、空洞14内の液体によって熱が奪われて冷却されるので、モール本体12の周壁31が熱変形温度以上の温度に上昇するのが防止されて、軟化せずに所定の機械的強度を保つことができ、モール本体12の周壁31の変形や破損を効果的に防止することができると共に、クッション部材13との溶着又は接着を良好に行うことができる。
【0063】
更に、このクッション部材成形工程において、射出成形型32の内面のうちのクッション部材成形用キャビティ33の成形面以外の内面は、モール本体12のうちのクッション部材成形用キャビティ33を形成する部分以外の部分の外面に接触してモール本体12の接触部分の周壁31が外側に向けて膨張するのを阻止するようになっている。
【0064】
第2の射出成形型32のクッション部材成形用キャビティ33内のクッション部材成形用の熱可塑性ポリマー材料(クッション部材13)が冷却固化した後、第2の射出成形型32内にピラーモール11を載置して該射出成形型32を閉じた状態で、モール本体12の空洞14内の液体を排出する液体排出工程を実行する。これにより、射出成形型32でピラーモール11(モール本体12)を安定保持した状態でモール本体12の空洞14内から空洞充填用の液体を排出する。また、本実施例では、ガスアシスト射出成形によりモール本体12を成形する際にガス注入孔として形成された連通孔15を空洞充填用の液体の排出孔として利用し、一方の連通孔16から空洞14内に圧縮空気を注入しながら他方の連通孔15から空洞14内の液体を排出することで、モール本体12の空洞14から空洞充填用の液体を効率良く排出する。
【0065】
この液体排出工程では、前記液体密封工程で(A案)を実行した場合には、流路切替バルブV1を圧縮空気供給位置に切り替えて注入流路40を圧縮空気供給源42に連通させた後、流路開閉バルブV2を流路開放位置に切り替えて注入流路40を開放すると共に、流路開閉バルブV3を流路開放位置に切り替えて排出流路43を開放する。或は、前記液体密封工程で(B案)を実行した場合には、流路切替バルブV1を圧縮空気供給位置に切り替えて注入流路40を圧縮空気供給源42に連通させた後、流路開閉バルブV3を流路開放位置に切り替えて排出流路43を開放する。これにより、圧縮空気供給源42から供給される圧縮空気を、注入流路40→流路接続部38→連通孔16の経路でモール本体12の空洞14内に注入する。これにより、空洞14内の液体は、注入される気体に押されて流動し、連通孔15→流路接続部39→排出流路43の経路で射出成形型32の外部に排出される。
【0066】
この後、モール本体12の空洞14内の液体がほぼ全て排出されたときに、流路開閉バルブV2を流路閉鎖位置に切り替えて注入流路40を閉鎖して、モール本体12の空洞14内への圧縮空気の供給を停止する。これにより、モール本体12の空洞14内がほぼ大気圧になる。
【0067】
この後、第2の射出成形型32を開いて、モール本体12とクッション部材13とを一体化したピラーモール11を取り出す取出工程を実行する。これにより、ピラーモール11の製造が完了する。
【0068】
以上説明した本実施例では、クッション部材成形工程の前にモール本体12の空洞14内に空洞充填用の液体を満たして密封するようにしたので、モール本体12の周壁31(空洞14の周囲を囲む壁)を内側から補強して、モール本体12の周壁31の全体に亘って外圧に対する剛性を高めることができる。これにより、クッション部材13を射出成形する際に、加熱溶融したクッション部材成形用の熱可塑性ポリマー材料の射出圧力がモール本体12の周壁31に作用しても、モール本体12の周壁31の全体に亘って変形や破損を防止できる。しかも、モール本体12の空洞14内の液体を凍結させる必要がないため、生産コストや生産効率の悪化を招くことなく、ピラーモール11を容易に製造することができる。
【0069】
また、本実施例では、ガスアシスト射出成形によりモール本体12を成形する際にガス排出孔として形成された連通孔16を空洞充填用の液体の注入孔として利用し、ガスアシスト射出成形によりモール本体12を成形する際にガス注入孔として形成された連通孔15を空洞充填用の液体の排出孔として利用するようにしたので、空洞充填用の液体の注入孔や排出孔を新たに設ける必要がない。
尚、連通孔15を空洞充填用の液体の注入孔として利用し、連通孔16を空洞充填用の液体の排出孔として利用するようにしても良い。
【0070】
また、上記実施例では、第2の射出成形型32内にモール本体12を載置して該射出成形型32を閉じた状態で液体密封工程を実行するようにしたが、これに限定されず、第2の射出成形型32内にモール本体12を載置する前に液体密封工程を実行するようにしても良い。このようにすれば、射出成形型32に液体密封工程を実行するための改造を施す必要がない。
【0071】
また、上記実施例では、ガスアシスト射出成形を行うことで空洞14を有するモール本体12を成形するようにしたが、これに限定されず、モール本体成形工程において、モール本体12を射出成形するための射出成形型内にモール本体成形用の熱可塑性ポリマー材料を射出して充填すると共に空洞形成用の液体(例えば水)を注入する液体アシスト射出成形を行うことで空洞14を有するモール本体12を成形し、液体密封工程において、モール本体12の空洞14内に空洞形成用の液体を残存させて空洞充填用の液体として利用するようにしても良い。この場合、モール本体12のガス注入孔15、ガス排出孔16を、それぞれ空洞形成用の液体注入孔、空洞形成用の液体排出孔として使用すれば良い。このようにすれば、液体密封工程でモール本体12の空洞14内に空洞充填用の液体を注入する必要がなくなる(又は不足分だけ空洞充填用の液体を補充するだけ済む)。
【0072】
また、上記実施例では、モール本体12の長手方向の外周を取り囲むようにクッション部材13を環状に設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、モール本体12の幅方向の片側の周壁31に沿ってクッション部材13を設けるようにしても良い。また、クッション部材13を成形する前にモール本体12の表面に塗装等の着色やクリアーの表面処理を施すようにしても良い。
【0073】
その他、本発明は、自動車のフロントピラーに沿って装着されるピラーモールディングに限定されず、例えば、センターピラーやリアピラーに沿って装着されるピラーモールディング、側部車体パネルに装着されるボディサイドモールディング、ホイールアーチに沿って装着されるホイールアーチモールディング(マッドガードを含む)、ドア開口窓の下縁に沿って装着されるベルトモールディング等、内部に空洞を有する第1部材の外面に第2部材を射出成形して一体化した複合成形品であれば、本発明を適用して実施できる。
【符号の説明】
【0074】
11…ピラーモール(複合成形品)、12…モール本体(第1部材)、13…クッション部材(第2部材)、14…空洞、15…ガス注入孔(連通孔)、16…ガス排出孔(連通孔)、21…第1の射出成形型、22…モール本体成形用キャビティ、23…射出ゲート、24…ガス注入部、26…排出用キャビティ、30…高圧ガス供給源、32…第2の射出成形型、33…クッション部材成形用キャビティ(第2部材成形用キャビティ)、34…射出ゲート、38,39…流路接続部、40…注入流路、41…液体供給源、42…圧縮空気供給源、43…排出流路、44…制御装置(制御手段)、47,48…シール部材、V1…流路切替バルブ(流路切替手段)、V2…流路開閉バルブ、V3…流路開閉バルブ(流路開閉手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁によって周囲を囲まれた空洞を内部に有する第1部材の少なくとも外面に第2部材を射出成形して前記第1部材と前記第2部材とが一体化した複合成形品を製造する方法であって、
前記第1部材を準備する第1部材準備工程と、
前記第2部材を射出成形するための射出成形型が開いているときに該射出成形型内に前記第1部材を載置する載置工程と、
前記射出成形型を閉じて該射出成形型で前記第1部材を部分的に挟持して固定すると共に前記射出成形型の成形面と前記第1部材の外面の一部とによって第2部材成形用キャビティを形成するキャビティ形成工程と、
前記第2部材成形用キャビティ内に加熱溶融した第2部材成形用の熱可塑性ポリマー材料を射出して充填することで前記第2部材を成形すると共に前記第1部材の少なくとも外面に前記第2部材を固着させて前記第1部材と前記第2部材とを一体化した複合成形品を形成する第2部材成形工程と、
前記射出成形型を開いて前記複合成形品を取り出す取出工程と、
前記第2部材成形工程の前に前記第1部材に前記空洞と外部とを連通する連通孔を形成しておき、該連通孔から前記第1部材の空洞内に空洞充填用の液体を注入して満たした状態で密封する液体密封工程と、
前記第2部材成形工程の後に前記第1部材の空洞内の前記空洞充填用の液体を排出する液体排出工程とを含み、
前記第1部材の空洞内に前記空洞充填用の液体を満たして密封した状態で前記第2部材成形工程を実行し、該第2部材成形工程において、前記空洞充填用の液体の温度は、前記第1部材の熱変形温度よりも低く且つ前記第1部材の前記第2部材成形用キャビティを形成する部分の外面温度を前記第2部材との溶着又は接着を阻害する温度に低下させない温度であり、前記射出成形型の内面は、前記第1部材の前記第2部材成形用キャビティを形成する部分以外の周壁の外面に接触して該第1部材の前記接触部分の周壁が外側に向けて膨張するのを阻止することを特徴とする複合成形品の製造方法。
【請求項2】
前記第1部材準備工程において、前記第1部材を射出成形するための射出成形型内に第1部材成形用の熱可塑性ポリマー材料を射出して充填すると共に空洞形成用のガスを注入するガスアシスト射出成形を行うことで前記空洞を有する第1部材を成形することを特徴とする請求項1に記載の複合成形品の製造方法。
【請求項3】
前記ガスアシスト射出成形により前記第1部材を成形する際に該第1部材にガスを注入するガス注入孔としての連通孔とガスを排出するガス排出孔としての連通孔を形成しておき、そのうちの一方の連通孔を前記液体密封工程において前記空洞充填用の液体の注入孔として利用して他方の連通孔を前記空洞充填用の液体の排出孔として利用することを特徴とする請求項2に記載の複合成形品の製造方法。
【請求項4】
前記液体密封工程において、前記一方の連通孔から前記空洞内に前記空洞充填用の液体を注入すると共に前記他方の連通孔から前記空洞内のガスを排出することを特徴とする請求項3に記載の複合成形品の製造方法。
【請求項5】
前記液体排出工程において、前記一方の連通孔から前記空洞内に圧縮空気を注入して前記他方の連通孔から前記空洞内の前記空洞充填用の液体を排出することを特徴とする請求項3又は4に記載の複合成形品の製造方法。
【請求項6】
前記液体密封工程は、前記第2部材を射出成形するための射出成形型内に前記第1部材を載置して該射出成形型を閉じた状態で実行することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の複合成形品の製造方法。
【請求項7】
前記液体密封工程は、前記第2部材を射出成形するための射出成形型内に前記第1部材を載置する前に実行することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の複合成形品の製造方法。
【請求項8】
前記第1部材準備工程において、前記第1部材を射出成形するための射出成形型内に第1部材成形用の熱可塑性ポリマー材料を射出して充填すると共に空洞形成用の液体を注入する液体アシスト射出成形を行うことで前記空洞を有する第1部材を成形し、
前記液体密封工程において、前記第1部材の空洞内に前記空洞形成用の液体を残存させて前記空洞充填用の液体として利用することを特徴とする請求項1に記載の複合成形品の製造方法。
【請求項9】
前記液体密封工程において、前記空洞充填用の液体として水を用いることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の複合成形品の製造方法。
【請求項10】
前記液体排出工程は、前記第2部材を射出成形するための射出成形型内に前記複合成形品を載置して該射出成形型を閉じた状態で実行することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の複合成形品の製造方法。
【請求項11】
内部に空洞を有すると共に該空洞と外部とを連通する連通孔が形成された第1部材の少なくとも外面に第2部材を射出成形して前記第1部材と前記第2部材とが一体化した複合成形品の製造に適用され、前記第2部材を射出成形するための射出成形型が開いているときに該射出成形型内に前記第1部材を載置可能で、前記射出成形型を閉じたときに前記射出成形型の成形面と前記第1部材の外面の一部とによって第2部材成形用キャビティが形成され、前記第2部材成形用キャビティ内に加熱溶融した第2部材成形用の熱可塑性ポリマー材料を射出して充填することで前記第2部材を成形すると共に前記第1部材の少なくとも外面に前記第2部材を固着させて前記第1部材と前記第2部材とを一体化した複合成形品を製造する装置であって、
前記射出成形型には前記第1部材の連通孔に対応する位置に流路接続部が設けられ、前記射出成形型を閉じたときに前記第1部材の連通孔の周囲の外面に前記流路接続部が密接して、前記流路接続部を介して前記第1部材の空洞内に流体を注入可能にすると共に、前記流路接続部を介して前記第1部材の空洞内から流体を排出可能にするように構成されていることを特徴とする複合成形品の製造装置。
【請求項12】
前記第1部材には2つの連通孔が形成され、前記射出成形型には該2つの連通孔に対応する位置にそれぞれ前記流路接続部が設けられ、一方の流路接続部を介して前記第1部材の空洞内に流体を注入可能にすると共に、他方の流路接続部を介して前記第1部材の空洞内から流体を排出可能にするように構成されていることを特徴とする請求項11に記載の複合成形品の製造装置。
【請求項13】
前記一方の流路接続部には、流路切替手段を介して液体供給源と圧縮空気供給源のいずれか一方と連通可能に流路が接続され、
前記他方の流路接続部には、流路開閉手段を介して前記射出成形型の外部と連通可能に流路が接続されていることを特徴とする請求項12に記載の複合成形品の製造装置。
【請求項14】
前記流路切替手段と前記流路開閉手段をそれぞれ予め設定した手順で作動させる制御手段を備えていることを特徴とする請求項13に記載の複合成形品の製造装置。
【請求項15】
前記流路接続部の先端に弾性材料製のシール部材が設けられ、前記射出成形型を閉じたときに前記シール部材が前記第1部材の連通孔の周囲を取り囲んで該第1部材の外面に密接することを特徴とする請求項11乃至14のいずれかに記載の複合成形品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−121199(P2011−121199A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278769(P2009−278769)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000219705)東海興業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】