説明

複合材料、および発光素子

【課題】耐熱性に優れ、長時間安定に駆動できる耐久性が高く、消費電力の上昇が少ない発光素子を提供する。
【解決手段】上記発光素子は、無機材料であるシロキサン結合によって結合した骨格中のシリコンに有機基が結合している材料103を有し、当該有機基と電子の授受を行うことが可能な遷移金属の酸化物104等を有する。有機基102は正孔輸送性を有し、例えばアリールアミン骨格又はピロール骨格を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子に用いられる材料に関する。また電極間に有機物を含む発光性材料
を挟み電極間に電流を流すことで発光する素子(発光素子)に関し、特に耐熱性に優れ、
発光時間の蓄積に伴う輝度の劣化が小さい発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機材料による発光素子を用いた発光装置やディスプレイの開発が盛んに行われ
ている。発光素子は、一対の電極間に有機化合物を挟み込むことで作製されるが、液晶表
示装置と異なりそれ自体が発光するのでバックライトなどの光源がいらない上、素子自体
が非常に薄いため薄型軽量ディスプレイを作製するにあたり非常に有利である。
【0003】
発光素子の発光機構は、陰極から注入された電子および陽極から注入された正孔が有機
化合物中の発光中心で再結合して分子励起子を形成し、その分子励起子が基底状態に戻る
際にエネルギーを放出して発光するといわれている。励起状態には一重項励起と三重項励
起が知られ、発光はどちらの励起状態を経ても可能であると考えられている。
【0004】
電極間に挟まれた有機化合物層は、積層構造となっていることが多く、この積層構造は
「正孔輸送層/発光層/電子輸送層」という、機能分離型の積層構造が代表的である。正
孔と電子が再結合する発光層を挟んで正孔の輸送性が高い材料による層を陽極として機能
する電極側に、電子の輸送性が高い材料による層を陰極側に配置することによって効率良
く正孔及び電子の輸送を行うことが出来、さらに正孔及び電子が再結合する確率も高める
ことができる。このような構造は非常に発光効率が高いため、現在研究開発が進められて
いる発光表示装置はほとんどこのような構造が採用されている(例えば非特許文献1参照
)。
【0005】
また、他の構造としては陽極として機能する電極側から正孔注入層、正孔輸送層、発光層
、電子輸送層、または正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の順に
積層する構造などがあり、それぞれの機能に特化した材料により各層は構成されている。
なお、発光層と電子輸送層の両方の機能を備える層など、これらの機能を2種類以上兼ね
る層であっても良い。
【0006】
有機化合物を含む層は上記のように積層構造が代表的であるが、単層構造で形成される
ものや、混合層であっても良く、また、発光層に対して蛍光性色素等がドーピングされて
いても良い。
【0007】
ところで、このような発光素子は耐久性や耐熱性に問題がある。このような発光素子は
上記したように有機化合物を用いた有機薄膜を積層して形成されている為、有機化合物の
薄膜の脆弱さがその要因であると考えられる。
【0008】
一方で、有機薄膜ではなく、シロキサン結合により構成された骨格中に有機化合物(正
孔輸送性化合物、電子輸送性化合物、発光性化合物)を分散した層を適用し、発光素子を
作製した例もある(例えば特許文献1及び非特許文献2参照)。なお、特許文献1におい
ては素子の耐久性や耐熱性が向上するとも報告されている。
【0009】
発光素子は駆動する際に発熱したり真夏の車中のように過酷な環境の中で用いられるこ
ともあったりすることから、発光素子に用いられる材料の耐熱性は重要なファクターであ
る。
【0010】
しかし、上記特許文献1や非特許文献2において開示されている発光素子は絶縁性であ
るシロキサン結合により構成された骨格中に有機化合物が分散されている為、従来の発光
素子と比較して電流が流れにくくなってしまう。
【0011】
これら発光素子は流す電流に比例して発光輝度が高くなるため、電流が流れにくいとい
うことは所定の輝度を得る為の電圧(駆動電圧)が高くなってしまう。そして、駆動電圧
が高くなった結果として発光素子を用いて作製した発光装置の消費電力が上昇してしまう
という問題があった。
【0012】
また、ゴミ等に起因する発光素子の短絡を抑制する為には、発光素子の膜厚を厚くする
ことが効果的であるが、特許文献1や非特許文献2で示されているような構成の発光素子
において膜厚を厚くすると駆動電圧の上昇はさらに顕在化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000−306669号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Chihaya Adachi、外3名、ジャパニーズ ジャーナル オブ アプライド フィジクス、Vol.27、No.2、1988、pp.L269−L271
【非特許文献2】トニー ダンタス デ モレイス、外3名、アドバンスト マテリアルズ、Vol.11、NO.2、107−112(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明では耐熱性に優れた発光素子を作製することができる複合材料を提供す
ることを課題とする。また、本発明では長時間安定に駆動できる耐久性の高い発光素子を
作製することができる複合材料を提供することを課題とする。また、そのどちらも同時に
満たす発光素子を作製することができる複合材料を提供することを課題とする。また、上
記課題を満たしつつ、消費電力の上昇が少ない発光素子を作製することができる複合材料
を提供することを課題とする。
【0016】
また、発光素子における電極間の短絡を防止しやすく、消費電力の低い発光素子を作製
することができる複合材料を提供することを課題とする。
【0017】
また、本発明では耐熱性に優れた発光素子を提供することを課題とする。また、本発明
では長時間安定に駆動できる耐久性の高い発光素子を提供することを課題とする。また、
そのどちらも同時に満たす発光素子を提供することを課題とする。また、上記課題を満た
しつつ、消費電力の上昇が少ない発光素子を提供することを課題とする。
【0018】
また、発光素子における電極間の短絡を防止しやすく、消費電力の低い発光素子を提供
することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決することが出来る本発明の複合材料は、シロキサン結合によって結合し
た骨格中のシリコンに有機基が共有結合を介して結合している有機無機ハイブリッド材料
と、当該有機基と電子の授受を行うことが可能な物質とを有することを特徴とする。
【0020】
なお、有機無機ハイブリッド材料とは、無機材料と有機材料が結合してなる材料のこと
を言い、本発明においては、主にシロキサン結合によって結合した骨格中の一部のシリコ
ンに有機基が結合している材料のことを有機無機ハイブリッド材料と言っている。
【0021】
上記課題を解決することが出来る本発明の発光素子は一対の電極と、一対の電極の間に
電流を流すことで発光する発光層を有し、一対の電極の間にシロキサン結合によって結合
した骨格中のシリコンに有機基が共有結合を介して結合している有機無機ハイブリッド材
料と、当該有機基と電子の授受を行うことが可能な物質とを有する複合材料よりなる層を
少なくとも一層有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
上記構成を有する本発明の複合材料を用いた発光素子は、耐熱性に優れた発光素子とな
る。また、上記構成を有する本発明の複合材料を用いた発光素子は長時間安定に駆動でき
る発光素子となる。また、上記構成を有する本発明の複合材料を用いた発光素子は耐熱性
に優れ且つ長時間安定に駆動できる発光素子となる。また、本発明の複合材料を用いた発
光素子は、上記効果に加えて消費電力の上昇が少ない発光素子となる。
【0023】
上記構成を有する本発明の発光素子は、耐熱性に優れた発光素子とすることができる。
また、上記構成を有する本発明の発光素子は長時間安定に駆動できる発光素子とすること
ができる。また、上記構成を有する本発明の発光素子は耐熱性に優れ且つ長時間安定に駆
動できる発光素子とすることができる。また、本発明の構成を有する発光素子は、上記効
果に加えて消費電力の上昇が少ない発光素子とすることができる。
【0024】
また、短絡を防止しやすく且つ消費電力の低い発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の複合材料の模式図
【図2】本発明の複合材料における電子授受の様子を表す模式図
【図3】本発明の薄膜発光素子の作製工程を表す図。
【図4】本発明の薄膜発光素子の作製工程を表す図。
【図5】表示装置の構成を例示した図。
【図6】本発明の発光装置の上面図及び断面図。
【図7】本発明が適用可能な電子機器の例示した図。
【図8】表示装置の構成を例示した図。
【図9】表示装置の画素回路一例を示す図。
【図10】表示装置の保護回路の一例を示す図。
【図11】本発明の発光素子の構成の一例。
【図12】本発明の発光素子の構成の一例。
【図13】本発明の複合材料と比較サンプルの吸収スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、本発明は多く
の異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱すること
なくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従っ
て、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0027】
なお、本発明において発光素子の一対の電極のうち、電位が高くなるように電圧をかけ
た際、発光が得られる方の電極を陽極として機能する電極と言い、電位が低くなるように
電圧をかけた際、発光が得られる方の電極を陰極として機能する電極と言う。
【0028】
また、本発明において特に断りの無い限り、正孔注入輸送層及び正孔輸送層は、正孔の
輸送性が電子の輸送性より高い物質で形成され発光層よりも陽極として機能する電極側に
位置している層のことを言い、また、電子注入輸送層及び電子輸送層とは電子の輸送性が
正孔の輸送性より高い物質で形成され、発光層よりも陰極として機能する電極側に位置し
ている層のことを言う。また、これらの両方の機能を備える層であっても良い。また、発
光層がいずれかの機能を兼ねている場合もある。
【0029】
(実施の形態1)
本発明の複合材料は、図1にその模式図を示したように、シロキサン結合100によっ
て結合した骨格101中のシリコンに有機基102が共有結合を介して結合している有機
無機ハイブリッド材料103に対し、当該有機基と電子の授受を行うことが可能な物質1
04がさらに添加されている。そして、図2にその模式図を示したように電子の授受を行
うことによって電子もしくは正孔が発生し、複合材料の電子もしくは正孔の注入性や導電
性が向上する。図2ではトリフェニルアミノ基を有するシリカマトリクスにモリブデン酸
化物(MoOx)を含有させることで、モリブデン酸化物がトリフェニルアミノ基の不対
電子を受容し、トリフェニルアミノ基に正孔が発生する様子を示した模式図である。
【0030】
本発明の複合材料はシロキサン結合により構成された骨格を有することから耐熱性や耐
久性に優れた材料である。また、当該骨格中のシリコンに有機基が共有結合していること
によって、シロキサン結合により構成された骨格を有する材料に当該有機基が有する正孔
又は電子の注入もしくは輸送性を有せしめることができる。また、当該有機無機ハイブリ
ッド材料における有機基と電子の授受を行うことができる材料がさらに添加されているこ
とによって、正孔又は電子の注入もしくは輸送性を向上させ、さらには導電性を向上させ
ることができる。
【0031】
まず、正孔注入層もしくは正孔輸送層に用いることが可能な複合材料について説明する。
【0032】
シロキサン結合により構成された骨格中のシリコンに共有結合し、当該骨格に正孔注入
性又は/及び正孔輸送性を有せしめる有機基としては、アリールアミン骨格、ピロール骨
格を有することが望ましい。本発明の複合材料における有機無機ハイブリッド材料は、前
記した骨格を有する有機基がシリコンに共有結合したアルコキシシランを重縮合すること
によって得られる。あるいはまた、前記した骨格を有する有機基を有するアルコキシシラ
ンとテトラアルコキシシランの両方を用いて重縮合させても得られる。そのような有機基
を有するアルコキシシランの例としては以下のようなものが挙げられる。アリールアミン
骨格を有するアルコキシシランとして下記構造式(1)乃至(3)が、ピロール骨格を有
するアルコキシシランとして下記構造式(4)乃至(6)が、アリールアミン骨格とピロ
ール骨格の両方を有していても良くそのような有機基を有するアルコキシシランとして下
記構造式(7)が挙げられる。なお、これら有機基を有するアルコキシシランは一種類の
み用いてもよいし、複数種類を用いても構わない。複数種類の有機基を有するアルコキシ
シランを用いた場合は複数種類の有機基がシロキサン結合により構成された骨格中のシリ
コンに共有結合した複合材料を得ることが出来る。
【0033】
【化1】

【0034】
【化2】

【0035】
【化3】

【0036】
また、当該有機基より電子を受容し、複合材料の正孔注入性又は/及び正孔輸送性を向
上させることが可能な物質としては電子受容性を有する、遷移金属の酸化物もしくは水酸
化物が挙げられる。これらの中から一種類もしくは複数種類を用いる。具体的には、例え
ば、チタン、バナジウム、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、ニオブの
酸化物または水酸化物が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0037】
シロキサン結合により構成された骨格中のシリコンに上記した(1)〜(7)中に示し
たようなアルコキシシラン中の有機基が共有結合した有機無機ハイブリット材料に、それ
ら有機基より電子を受容することが可能な上記物質を1種もしくは複数種さらに添加する
ことで、正孔注入層もしくは正孔輸送層として使用することが可能な複合材料を作製する
ことができる。このような本発明の複合材料は、従来の有機無機ハイブリッド材料とは異
なり、正孔キャリアが発生しているため、高い正孔注入性および輸送性を有し、導電性が
高い。
【0038】
続いて、電子注入層もしくは電子輸送層に用いることが可能な複合材料について説明す
る。
【0039】
シロキサン結合により構成された骨格中のシリコンに共有結合し、シロキサン結合によ
り構成された骨格に電子注入性又は/及び電子輸送性を有せしめる有機基としては、ピリ
ジン骨格、フェナントロリン骨格、キノリン骨格、ピラジン骨格、トリアジン骨格、イミ
ダゾール骨格、トリアゾール骨格、オキサジアゾール骨格、チアジアゾール骨格、オキサ
ゾール骨格又はチアゾール骨格を有することが好ましい。本発明の複合材料における有機
無機ハイブリッド材料は、前記した骨格を有する有機基がシリコンに共有結合したアルコ
キシシランを重縮合することによって得られる。あるいはまた、前記した骨格を有する有
機基を有するアルコキシシランとテトラアルコキシシランの両方を用いて重縮合させても
得られる。そのような有機基を有するアルコキシシランの例としては以下のようなものが
挙げられる。ピリジン骨格を有する有機基を有するアルコキシシランとして下記構造式(
8)〜(14)(特に、下記構造式(10)乃至(13)はフェナントロリン骨格であり
、下記(14)はキノリン骨格である)が、ピラジン骨格を有する有機基を有するアルコ
キシシランとして下記構造式(15)が、トリアゾール骨格を有する有機基を有するアル
コキシシランとして下記構造式(16)が、イミダゾール骨格を有する有機基を有するア
ルコキシシランとして下記構造式(17)が、オキサジアゾール骨格を有する有機基を有
するアルコキシシランとして下記構造式(18)が、チアジアゾール骨格を有する有機基
を有するアルコキシシランとして下記構造式(19)が、オキサゾール骨格を有する有機
基を有するアルコキシシランとして下記構造式(20)が、チアゾール骨格を有する有機
基を有するアルコキシシランとして下記構造式(21)が挙げられる。なお、これら有機
基を有するアルコキシシランは一種類のみ用いてもよいし、複数種類を用いても構わない
。複数種類の有機基を有するアルコキシシランを用いた場合は複数種類の有機基がシロキ
サン結合により構成された骨格中のシリコンに共有結合した複合材料を得ることが出来る

【0040】
【化4】

【0041】
【化5】

【0042】
【化6】

【0043】
【化7】

【0044】
【化8】

【0045】
【化9】

【0046】
【化10】

【0047】
【化11】

【0048】
【化12】

【0049】
【化13】

【0050】
また、当該有機基に電子を供与し、複合材料の電子注入性又は/及び電子輸送性を向上
させることが可能な物質としては電子供与性を示す物質が望ましく、アルカリ金属又はア
ルカリ土類金属の酸化物もしくは水酸化物が挙げられる。これらの中から一種類もしくは
複数種類を用いる。具体的には、例えば、リチウム、バリウムの酸化物または水酸化物が
挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0051】
シロキサン結合により構成された骨格中のシリコンに上記した(8)〜(21)中に示
したような有機基が共有結合した有機無機ハイブリット材料に、それら有機基に電子を供
与することが可能な上記物質を1種もしくは複数種さらに添加することで、電子注入層も
しくは電子輸送層として使用することが可能な複合材料を作製することができる。このよ
うな本発明の複合材料は、従来の有機無機ハイブリッド材料とは異なり、電子キャリアが
発生しているため、高い電子注入性および輸送性を有し、導電性が高い。
【0052】
なお、本実施の形態は他の実施の形態と矛盾の無い限り組み合わせて用いることが可能
である。
【0053】
(実施の形態2)
本実施の形態では実施の形態1に示したような複合材料をアルコキシド法によるゾルー
ゲル法を用いて製造する方法について説明する。
【0054】
まず、テトラエトキシシラン及び/又はメチルトリエトキシシランと、実施の形態1に
おいて示した、シロキサン結合により構成された骨格に正孔注入又は輸送性もしくは電子
注入又は輸送性を付与することが可能な有機基を当該骨格中のシリコンに共有結合させた
アルコキシシランを酸性もしくはアルカリ性とした溶媒(例えば低級アルコール等)に溶
解し、溶液1を作製する。酸性、もしくはアルカリ性とすることによってテトラエトキシ
シラン及び/又はメチルトリエトキシシラン、有機基を有するアルコキシシランが重縮合
しゾルが形成される。重縮合後の状態が酸性とした場合は繊維状となり、アルカリ性とし
た場合は塊状となるため、溶液1の液性は酸性であることが望ましい。溶液1のpHはp
H1からpH3程度となるようにするとさらに好ましい。
【0055】
溶液1はさらに加熱撹拌や熟成のどちらか、又は両方をおこなうことによってさらに重
縮合反応を進行させても良い。加熱撹拌は数十度で数時間、熟成の場合は室温中で十数時
間から24時間程度行えばよい。
【0056】
溶液1はテトラエトキシシラン及び/又はメチルトリエトキシシランを用いず、有機基
を有するアルコキシシランのみで作製しても構わないが、好ましくはテトラエトキシシラ
ン及び/又はメチルトリエトキシシランと有機基を有するアルコキシシランとの比がモル
比で10:1から1:10の間であることが望ましい。さらに好ましくはテトラエトキシ
シラン及び/又はメチルトリエトキシシランと有機基を有するアルコキシシランとの比が
モル比で5:1から1:5であることが望ましい。
【0057】
次に、当該有機基と電子の授受を行うことが可能な金属酸化物における金属の金属アル
コキシド−有機溶媒溶液のゾルを作製する(溶液2)。また、溶液2には水や安定化剤と
してβ−ジケトンなどを加えても良い。安定化剤としては、アセチルアセトン、アセト酢
酸エチル及びベンゾイルアセトンに代表されるβ−ジケトンを用いることができる。
【0058】
有機溶媒としては、低級アルコール類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、クロロホ
ルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、アセトンなどが挙げられ、これらを単独もしく
は混合して使用する。低級アルコール類としてはメタノール、エタノール、n−プロパノ
ール、n−ブタノール、sec−ブタノール及びtert−ブタノールなどを用いること
ができる。
【0059】
金属のアルコキシドとしては、エトキシド、n−プロポキシド、イソプロポキシド、n−
ブトキシド、sec−ブトキシド、tert−ブトキシドなどが挙げられる。なお、これ
らのアルコキシドは液状であるかあるいは有機溶媒に溶解しやすいものが好ましい。
【0060】
最後に溶液2を溶液1に添加し、撹拌後、塗布し、焼成(100℃〜300℃で数時間
)することによって、シロキサン結合により構成された骨格中のシリコンに有機基が共有
結合した有機無機ハイブリッド材料に、有機基と電子の授受を行うことが可能な物質が添
加された複合材料を作製することができる。焼成は大気中でも窒素などの不活性雰囲気中
でも真空中でもよい。この際、シロキサン結合により構成された骨格に正孔注入又は輸送
性もしくは電子注入又は輸送性を付与することが可能な有機基のモル数と、溶液2におけ
る金属アルコキシドのモル数との比は5:1から1:5であることが望ましく、さらに好
ましくは2:1から1:2であることが望ましい。
【0061】
上記塗布は湿式塗布法、例えばディップコート法、スピンコート法、インクジェット法
などの液滴塗布法を用いることができる。
【0062】
この本発明の複合材料を発光素子の機能層として用いることによって耐熱性に優れた発
光素子とすることができる。また、長時間安定に駆動できる発光素子とすることができる

【0063】
なお、溶液2は金属の金属アルコキシド−有機溶媒溶液のみであっても構わないが、溶
液1と混合した際、沈殿が析出してしまわないようにβ−ジケトンなどの弱いキレート剤
を安定化剤として加えておくことが望ましい。安定化剤としては、アセチルアセトン、ア
セト酢酸エチル及びベンゾイルアセトンに代表されるβ−ジケトンを用いることができる

【0064】
水は金属アルコキシドを加水分解し、重縮合する為に加えるが、金属アルコキシドの加水
分解は必ずしも必須ではない。また、水を加えた際に沈殿が析出するようであればβ−ジ
ケトンなどの弱いキレート剤を安定化剤として加えておくことが望ましい。さらに安定化
剤は焼成することによって金属より脱離するような材料であることが望ましい。安定化剤
としては、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル及びベンゾイルアセトンに代表されるβ
−ジケトンを用いることができる。
【0065】
なお、金属アルコキシドに対する安定化剤の量は2当量以下0.1当量以上、好ましく
は1当量以下0.5当量以上であることが望ましい。
【0066】
このような方法で作製された本発明の複合材料は、シロキサン結合により構成された骨
格に有機基が結合しており、さらに当該骨格中に金属酸化物又は/及び金属水酸化物が分
散された構造となる。また、一部シロキサン結合により構成された骨格の中に当該金属酸
化物が組み込まれた構造となる(つまり、金属−酸素−ケイ素結合を有する構造となる)

【0067】
また、当該複合材料は、シロキサン結合中のシリコンに共有結合した有機基と電子の授受
を行うことが可能な物質が添加されていることによって、導電性やキャリヤ注入、輸送性
が向上している。これにより、この複合材料を発光素子の機能層として用いることによっ
て消費電力を大幅に増大させることなく耐熱性に優れ、長時間安定に駆動することができ
る発光素子とすることができる。
【0068】
なお、本発明の複合材料は、従来の有機無機ハイブリッド材料に比べて導電性に優れて
いるため、当該複合材料を機能層として形成した発光素子は機能層の膜厚を厚く形成して
も駆動電圧の上昇が少ない。そのため、発光素子の一対の電極のうち、先に形成される方
の電極と発光層との間の機能層の膜厚を厚く形成することができ、ゴミなどによる発光素
子の短絡が起きることを低減することができる。膜厚は100nm以上あればこのような
不良を有効に低減することが出来る。
【0069】
厚膜化する機能層には、シロキサン結合中のシリコンに共有結合した有機基と電子の授受
を行うことが可能な物質を含むため、導電性やキャリヤ注入、輸送性が向上しており、駆
動電圧を大幅に上昇させることなく、すなわち消費電力を大幅に増大することなくゴミな
どによる発光素子の短絡が起きることを低減できる。
【0070】
続いて、具体的に発光素子の正孔注入輸送層として用いることが可能な複合材料を作製
する例を示す。本実施の形態ではシロキサン結合中のシリコンに共有結合する有機基とし
てトリフェニルアミノ基、シリコンに共有結合したトリフェニルアミノ基と電子の授受を
行うことができる物質として酸化モリブデンを例として本発明の複合材料を作製する。
【0071】
なお、他の有機基を用いる場合や、当該有機基と電子の授受を行うことが出来る物質と
して他の金属酸化物を用いる場合も基本原理は全て同じである。材料は当該複合材料を用
いて作製する機能層の種類によって実施の形態1に示した組み合わせの中から選択すれば
よい。
【0072】
まず、材料として用いるトリフェニルアミノ基が付いたアルコキシシラン(N−(4−
トリエトキシシリルフェニル)−N、N−ジフェニルアミン)を合成する方法について説
明する。また、反応スキームを式(22)に示す。
【0073】
【化14】

【0074】
トリフェニルアミンをNBS(N−ブロモコハク酸イミド)と処理する、あるいは臭素
と反応させることで、N−(4−ブロモフェニル)−N,N−ジフェニルアミンが得られ
る(A)。得られたN−(4−ブロモフェニル)−N,N−ジフェニルアミンを、ブチル
リチウム、あるいはマグネシウムと反応させてメタル化する(B)。得られるメタル化物
とクロロトリエトキシシランとの反応により、N−(4−トリエトキシシリルフェニル)
−N,N−ジフェニルアミンが得られる(C)。シロキサン結合により構成された骨格に
正孔注入又は輸送性もしくは電子注入又は輸送性を付与することが可能な有機基として、
トリフェニルアミンではなく他の有機基を用いる場合も同様の方法、もしくは他の公知の
方法でもって合成すればよい。
【0075】
続いて得られたN−(4−トリエトキシシリルフェニル)−N,N−ジフェニルアミンを
用いて本発明の複合材料の膜を作製する方法を説明する。また、作製スキームを式(23
)〜(25)に示す。
【0076】
トリフェニルアミノ基を有するアルコキシシラン(N−(4−トリエトキシシリルフェ
ニル)−N、N−ジフェニルアミン:化合物A)とテトラエトキシシラン(化合物B)を
1:1のモル比でエタノール−塩酸溶液に溶解し、溶液1を作製する。溶液1のpHは2
となるように塩酸量を調整し、有機基を有するアルコキシシラン(化合物A)とテトラエ
トキシシラン(化合物B)とを重縮合させる。加熱、もしくは熟成することでさらに重縮
合を進めても良い。重合度は沈殿が析出しない程度とする(式(23))。
【0077】
【化15】

【0078】
ペンタアルコキシモリブデン(例えば、ペンタエトキシモリブデン)(化合物C)のア
ルコール溶液に、安定化剤であるアセト酢酸エチル(化合物D)と水を加えたゾル溶液、
溶液2を作製する。安定化剤はモリブデンアルコキシド(化合物C)の1当量加える(式
(24))。安定化剤を加えることでモリブデンアルコキシドの重合を抑制し、重合体が
沈殿して析出してしまうことを防ぐことができる。
【0079】
【化16】

【0080】
最後に溶液2に溶液1を添加し、撹拌後、スピンコート法により膜形成面に塗布し、1
50℃で2時間焼成することで本発明の複合材料による膜が形成される(式(25))。
【0081】
【化17】

【0082】
このようにして作製した本発明の複合材料を発光素子の正孔注入層及び/又は正孔輸送
層として用いることによって耐熱性に優れた発光素子とすることができる。また、長時間
安定に駆動できる発光素子とすることができる。
【0083】
(実施の形態3)
本実施の形態では解膠を用いた方法により実施の形態1に示した材料を製造する方法に
ついて説明する。
【0084】
まず、テトラエトキシシラン及び/又はメチルトリエトキシシランと、シロキサン結合
により構成された骨格中のシリコンに正孔注入又は輸送性もしくは電子注入又は輸送性を
付与することが可能な有機基を共有結合させたアルコキシシランを、アルコール/塩酸溶
液に溶解し加熱撹拌し得られる溶液1は、実施の形態2と同様に形成する。
【0085】
続いて、当該有機基と電子の授受を行うことが可能な金属酸化物における金属の塩化物
水溶液にアンモニア水溶液を滴下し、当該金属の水酸化物の多核沈殿を作製する。水酸化
物の多核沈殿は、室温で十数時間から24時間程度熟成しても良い。この沈殿を酢酸を含
む溶液に加えて還流することにより解膠し、ゾルを得る(溶液3)。
【0086】
還流は、酢酸を含む溶液中の金属水酸化物が酸化物のコロイドとなり透明な粘性を有す
る液体(ゾル)となるまで適当な温度で数時間行えばよい。
【0087】
なお、この解膠を用いる方法を使用する場合は水酸化物の多核沈殿を得ることが必要で
あり、水酸化物の多核沈殿を作製しない金属に関してはこの方法を用いることが出来ない
。この方法を用いると安定化剤を用いることなく金属酸化物のゾルを得ることが出来るた
め、遷移金属酸化物や13族の金属酸化物に関しては好ましく用いることができる。なお
、酢酸は沸点が118℃と低い為、焼成温度を適当に設定することで希散し、機能層の特
性に影響を及ぼす心配は少ない。
【0088】
最後に溶液3を溶液1に添加し、撹拌後、塗布し、焼成(100℃〜300℃で数時間
)することによって、シロキサン結合により構成された骨格中のシリコンに有機基が共有
結合した有機無機ハイブリッド材料に、当該有機基と電子の授受を行うことが可能な物質
が添加された複合材料を作製することができる。焼成は大気中でも窒素などの不活性雰囲
気中でも真空中でもよい。この際、シロキサン結合により構成された骨格に正孔注入又は
輸送性もしくは電子注入又は輸送性を付与することが可能な有機基のモル数と、溶液3に
含まれる金属のモル数との比は5:1から1:5であることが望ましく、さらに好ましく
は2:1から1:2であることが望ましい。
【0089】
上記塗布は湿式塗布法、例えばディップコート法、スピンコート法、インクジェット法
などの液滴塗布法を用いることができる。
【0090】
この本発明の複合材料を発光素子の機能層として用いることによって耐熱性に優れた発
光素子とすることができる。また、長時間安定に駆動できる発光素子とすることができる

【0091】
なお、本発明の複合材料を機能層として形成した発光素子は機能層の膜厚を厚く形成し
ても駆動電圧の上昇が少ない。そのため、発光素子の一対の電極のうち、先に形成される
方の電極と発光層との間の機能層の膜厚を厚く形成することができ、ゴミなどによる発光
素子の短絡が起きることを低減することができる。膜厚は100nm以上あればこのよう
な不良を有効に低減することが出来る。
【0092】
厚膜化する機能層には、シロキサン結合中のシリコンに共有結合した有機基と電子の授受
を行うことが可能な物質を含むため、導電性やキャリヤ注入、輸送性が向上しており、駆
動電圧を大幅に上昇させることなく、すなわち消費電力を大幅に増大することなくゴミな
どによる発光素子の短絡が起きることを低減することができる。
【0093】
続いて、具体的に発光素子の正孔注入層及び/又は正孔輸送層として用いることが可能
な複合材料を作製する例を示す。本実施の形態ではシロキサン結合により構成された骨格
中のシリコンに共有結合する有機基としてトリフェニルアミノ基、トリフェニルアミノ基
と電子の授受を行うことができる物質として酸化アルミニウムを例として説明を行う。
【0094】
なお、他の有機基を用いる場合や、当該有機基と電子の授受を行うことが出来る物質と
して他の金属酸化物を用いる場合も基本原理は全て同じである。材料は当該複合材料を用
いて作製する機能層の種類によって実施の形態1に示した組み合わせの中から選択すれば
よい。
【0095】
トリフェニルアミノ基が付いたアルコキシシラン(N−(4−トリエトキシシリルフェ
ニル)−N,N−ジフェニルアミン)の合成方法については実施の形態2に記載した方法
と同様であるので省略する。
【0096】
得られたN−(4−トリエトキシシリルフェニル)−N,N−ジフェニルアミンを用い
て本発明の複合材料の膜を作製する方法を説明する。なお、溶液1の作製方法については
実施の形態2に記載した方法と同様の方法によって作製することが出来るので省略する。
【0097】
塩化アルミニウムの水溶液にアンモニア水溶液を滴下し、水酸化アルミニウムの多核沈
殿を得る(式(26))。得られた水酸化アルミニウムの多核沈殿を濾過し、純水で洗浄
してから酢酸を含む溶液に加え、80℃で8時間還流することにより解膠し、ゾルを作製
する(式(27))。
【0098】
【化18】

【0099】
【化19】

【0100】
最後に溶液3に溶液1を添加し、撹拌後の塗布、焼成などの操作は実施の形態2記載し
た方法と同様であるので省略する。
【0101】
このようにして作製した本発明の複合材料を発光素子の正孔注入層及び/又は正孔輸送
層として用いることによって耐熱性に優れた発光素子とすることができる。また、長時間
安定に駆動できる発光素子とすることができる。
【0102】
(実施の形態4)
続いて本発明の発光素子について説明する。本発明の発光素子は電子注入層、電子輸送
層、正孔注入層及び正孔輸送層に代表される各機能層の少なくとも一層が、実施の形態1
乃至実施の形態3で示したような、シロキサン結合により構成された骨格中のシリコンに
有機基が共有結合を介して結合しているハイブリッド材料に、当該有機基と電子の授受を
行うことが可能な物質をさらに添加した複合材料により形成された発光素子である。
【0103】
本発明の発光素子は上記複合材料により形成された層の外に少なくとも発光物質を含む
発光層を一対の電極間に挟んでなっており、電圧をかけることによって発光層から発光を
得ることができる。
【0104】
このような構成を有する本発明の発光素子は、電子注入層、電子輸送層、正孔注入層及
び正孔輸送層に代表される各機能層のうち少なくとも1層がシロキサン結合により構成さ
れた骨格を有する材料により形成されていることによって耐熱性に優れた発光素子とする
ことができる。また、長時間安定に駆動できる発光素子とすることができる。
【0105】
また、当該複合材料は、シロキサン結合により構成された骨格中のシリコンに共有結合
した有機基と電子の授受を行うことが可能な物質が添加されていることによって、導電性
やキャリヤ注入、輸送性が向上している。これにより、消費電力を大幅に増大させること
なく、シロキサン結合により構成された骨格を有する機能層を形成することが可能となる

【0106】
また、本発明の発光素子は、シロキサン結合により構成された骨格を有し、当該骨格中
のシリコンに共有結合した有機基と電子の授受を行うことが可能な物質を添加している複
合材料を用いることで、耐熱性の良い、又は/及び長時間安定に駆動できる発光素子とす
ることができ、且つ消費電力の小さい発光素子を作製することが可能となる。
【0107】
なお、本発明の発光素子は上記機能層のうち、複合材料で形成しなかった層をさらに他
の材料により設けても良い。この場合も耐熱性、耐久性に最も問題のある層を複合材料で
形成することによって耐熱性、耐久性を向上させることができる。
【0108】
なお、本発明の複合材料を機能層として形成した発光素子は機能層の膜厚を厚く形成し
ても駆動電圧の上昇が少ない。そのため、発光素子の一対の電極のうち、先に形成される
方の電極と発光層との間の機能層の膜厚を厚く形成することができ、ゴミなどによる発光
素子の短絡が起きることを低減することができる。膜厚は100nm以上あればこのよう
な不良を有効に低減することが出来る。
【0109】
厚膜化する機能層にはシロキサン結合中のシリコンに共有結合した有機基と電子の授受を
行うことが可能な物質を含むため、導電性やキャリヤ注入、輸送性が向上しており、駆動
電圧を大幅に上昇させることなく、すなわち消費電力を大幅に増大することなくゴミなど
による発光素子の短絡が起きることを低減することができる。
【0110】
なお、本発明の発光素子は電子注入層、電子輸送層、正孔注入層及び正孔輸送層に代表
される機能層のいずれか一層が上記複合材料により形成されていても良いし、2以上の複
数層が上記複合材料により形成されていても良い。また、上記機能層の全てが上記複合材
料により形成されていても良い。
【0111】
また、発光層もシリカマトリクスを有する有機無機ハイブリッド材料で形成することで
さらに耐熱性に優れ、長時間安定に駆動することができる発光素子を作製することができ
る。この際、発光層には電圧をかけることで発光する有機基を有するアルコキシシランを
テトラエトキシシランやメチルトリエトキシシランなどと重縮合し作製したゾルを、発光
層を形成したい表面に塗布、焼成することにより、シロキサン結合によって結合した骨格
中におけるシリコンに、電圧をかけることで発光する有機基が共有結合した構成の発光層
を形成することができる。なお、ゾルを作製する際は有機基を有するアルコキシシランの
みを重縮合したゾルであっても良い。なお、このゾルの作製方法については本発明の実施
の形態2における溶液1の作製方法に準じ、塗布、焼成方法は本発明の複合材料の塗布、
焼成方法に準じる。これによりシリカマトリクスを有する有機無機ハイブリッド材料で発
光層を作製することができる。
【0112】
続いて本発明の発光素子例の模式図を図11、図12に示す。図11(A)において、
は基板などの絶縁表面200上に第1の電極201が形成され、さらにその上に本発明の
複合材料で形成された正孔注入輸送層202、発光層203、本発明の複合材料で形成さ
れた電子注入輸送層204が順に積層されている。また、その上には発光素子の第2の電
極205が設けられ、当該発光素子を駆動する際には第1の電極201が第2の電極20
5より電位が高くなるように電圧を印可する(即ち第1の電極201が陽極として機能し
、第2の電極205が陰極として機能する)ことで発光が得られる構造となっている。
【0113】
発光層は蒸着法により形成しても、上記したようなシリカマトリクスを有し、電圧をか
けることで発光する有機基を有する有機無機ハイブリッド材料により形成されていても良
い。
【0114】
また、この構成では正孔注入輸送層202と電子注入輸送層204との両方を本発明の
複合材料により形成したが、いずれか一方のみ本発明の複合材料で形成しても構わない。
【0115】
本発明の複合材料で形成しない層に関しては、公知の材料で、蒸着法など公知の方法に
より形成すればよい。
【0116】
図11(A)に記載したような発光素子は耐熱性に優れ、長期にわたっても安定に駆動
することが可能な発光素子とすることが可能である。
【0117】
図11(B)は、図11(A)における正孔注入輸送層202を厚膜化して形成した正
孔注入輸送層206を有する発光素子の模式図である。その他の層は図11(A)と同様
であるので説明を省略する。発光素子は極薄い薄膜を積層することで形成するが、下部に
形成された第1の電極201に曲率が小さく高さの高い凸部(ゴミや下部の凹凸起因と考
えられる)が存在すると、薄膜が当該凸部を覆いきれず、膜が途切れてしまうことによっ
てショートなどの不良が発生する。一方でそれを防ぐ為に膜を厚く形成すると、抵抗が高
くなり、駆動電圧が上昇してしまうと言う不都合があった。しかし、本発明の複合材料は
有機無機ハイブリッド材料で結合したキャリア輸送性を有する有機基と、当該有機基と電
子の授受を行うことが可能な物質の両方を含んでいるため、導電率が高く、厚膜化しても
抵抗の上昇を抑えることができる。また、図11(B)の構成を有する発光素子は基本的
に図11(A)の構成を有しているため、耐熱性に優れ、長期にわたっても安定に駆動す
ることが可能な発光素子である。このことから、図11(B)の構成を有する本発明の発
光素子は耐熱性に優れ、長期にわたっても安定に駆動することが可能であり、不良の少な
い発光素子であることがわかる。
【0118】
図12(A)は図11(A)における電子注入輸送層204と第2の電極205(陰極
として働く電極)との間に、本発明の複合材料による正孔注入輸送層207を形成した例
である。正孔注入輸送層207は複合材料中における有機無機ハイブリッド材料の有機基
として、正孔の注入もしくは輸送性に優れた基を用い、当該有機基とから電子を受容する
ことが可能な物質をさらに有する複合材料、即ち、本来ならば発光層203を基準として
、陽極として働く電極側、即ち第1の電極201側に用いられる材料で形成されている。
【0119】
しかし、発光層203を基準として陰極として働く電極側に、本発明の複合材料による
電子注入輸送層204と本発明の複合材料による正孔注入輸送層207を順に積層するこ
とによって、電圧をかけると本発明の複合材料による電子注入輸送層204より電子が発
生し発光層に注入され、本発明の複合材料による正孔注入輸送層207より正孔が発生し
陰極として働く電極に注入することによって電流が流れ、発光を得ることができる。
【0120】
また、同様に、発光層203を基準として陽極として働く電極(第1の電極201)側
に電子注入輸送層を設ける構成も可能である。すなわち、陽極として働く電極側から順に
、本発明の複合材料による電子注入輸送層、本発明の複合材料による正孔注入輸送層、発
光層203と積層する。これにより電圧をかけると電子注入輸送層から陽極として働く電
極に電子が注入され、正孔注入輸送層から発光層203にホールが注入されることによっ
て電流が流れ、発光を得ることができる。
【0121】
なお、このような電子注入輸送層と正孔注入輸送層を積層する構造は発光層203を中心
として陰極として働く電極側、陽極として働く電極側のどちらに設けても良いし、その両
方に設けても良い。
【0122】
このような構成を有する発光素子は第1の電極201や第2の電極205として、仕事
関数を考慮せずに材料を選択することが出来、反射電極や透明電極など構造に併せてより
好適な電極を選択することが可能となる。
【0123】
図12(B)は白色発光を得ることが可能な発光素子の例である。図11(A)におけ
る正孔注入輸送層202と電子注入輸送層204との間に第1の発光層208、間隔層2
09、第2の発光層210が設けられている。第1の発光層208と第2の発光層210
の材料は赤と青緑など、互いに補色となる関係を有する発光色を呈する材料により形成す
ることで白色発光を得ることができる。
【0124】
間隔層209は正孔輸送性を有する材料、電子輸送性を有する材料、バイポーラ性を有
する材料、ホールブロッキング性を有する材料、キャリアを発生する材料等により形成す
ることが出来、透光性を有することが条件である。間隔層209は第1の発光層208の
発光と第2の発光層210との発光がエネルギー移動によりどちらかのみ強く発光してし
まうことを防ぐ目的で設けられ、このような現象が起こらないのであれば、特に設けずと
も良い。
【0125】
図12(B)の構成を有する発光素子は白色発光を得ることが出来るうえ、耐熱性に優
れ、長時間安定に駆動できる発光素子である。このような素子は照明用途に好適に用いる
ことができる。
【0126】
なお、本実施の形態は他の実施の形態と矛盾の無い限り組み合わせて用いることが可能
である。
【0127】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1もしくは実施の形態2に記載の本発明の発光装置につ
いて図3、図4を参照し、作製方法を示しながら説明する。なお、本実施の形態ではアク
ティブマトリクス型の発光装置を作製する例を示したが、パッシブマトリクス型の発光装
置であっても本発明の発光装置を適用することができるのはもちろんである。
【0128】
まず、基板50上に第1の下地絶縁層51a、第2の下地絶縁層51bを形成した後、
さらに半導体層を第2の下地絶縁層51b上に形成する。(図3(A))
【0129】
基板50の材料としてはガラス、石英やプラスチック(ポリイミド、アクリル、ポリエ
チレンテレフタラート、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエーテルスルホンな
ど)等を用いることができる。これら基板は必要に応じてCMP等により研磨してから使
用しても良い。本実施の形態においてはガラス基板を用いる。
【0130】
第1の下地絶縁層51a、第2の下地絶縁層51bは基板50中のアルカリ金属やアル
カリ土類金属など、半導体層の特性に悪影響を及ぼすような元素が半導体層中に拡散する
のを防ぐ為に設ける。材料としては酸化珪素、窒化珪素、窒素を含む酸化珪素、酸素を含
む窒化珪素などを用いることができる。本実施の形態では第1の下地絶縁層51aを窒化
珪素で、第2の下地絶縁層51bを酸化珪素で形成する。本実施の形態では、下地絶縁層
を第1の下地絶縁層51a、第2の下地絶縁層51bの2層で形成したが、単層で形成し
てもかまわないし、2層以上の多層であってもかまわない。また、基板からの不純物の拡
散が問題にならないようであれば下地絶縁層は設ける必要がない。
【0131】
続いて形成される半導体層は本実施の形態では非晶質珪素膜をレーザ結晶化して得る。
第2の下地絶縁層51b上に非晶質珪素膜を25〜100nm(好ましくは30〜60n
m)の膜厚で形成する。作製方法としては公知の方法、例えばスパッタ法、減圧CVD法
またはプラズマCVD法などが使用できる。その後、500℃で1時間の加熱処理を行い
水素出しをする。
【0132】
続いてレーザ照射装置を用いて非晶質珪素膜を結晶化して結晶質珪素膜を形成する。本
実施の形態のレーザ結晶化ではエキシマレーザを使用し、発振されたレーザビームを光学
系を用いて線状のビームスポットに加工し非晶質珪素膜に照射することで結晶質珪素膜と
し、半導体層として用いる。
【0133】
非晶質珪素膜の他の結晶化の方法としては、他に、熱処理のみにより結晶化を行う方法
や結晶化を促進する触媒元素を用い加熱処理を行う事によって行う方法もある。結晶化を
促進する元素としてはニッケル、鉄、パラジウム、スズ、鉛、コバルト、白金、銅、金な
どが挙げられ、このような元素を用いることによって熱処理のみで結晶化を行った場合に
比べ、低温、短時間で結晶化が行われるため、ガラス基板などへのダメージが少ない。熱
処理のみにより結晶化をする場合は、基板50を熱に強い石英基板などにすればよい。
【0134】
続いて、必要に応じて半導体層にしきい値をコントロールする為に微量の不純物添加、
いわゆるチャネルドーピングを行う。要求されるしきい値を得る為にN型もしくはP型を
呈する不純物(リン、ボロンなど)をイオンドーピング法などにより添加する。
【0135】
その後、図3(A)に示すように半導体層を所定の形状に成形し、島状の半導体層52
を得る。成形は半導体層にフォトレジストを塗布し、所定のマスク形状を露光し、焼成し
て、半導体層上にレジストマスクを形成し、このマスクを用いてエッチングをすることに
より行われる。
【0136】
続いて半導体層52を覆うようにゲート絶縁層53を形成する。ゲート絶縁層53はプラ
ズマCVD法またはスパッタ法を用いて膜厚を40〜150nmとして珪素を含む絶縁層
で形成する。本実施の形態では酸化珪素を用いて形成する。
【0137】
次いで、ゲート絶縁層53上にゲート電極54を形成する。ゲート電極54はタンタル
、タングステン、チタン、モリブデン、アルミニウム、銅、クロム、ニオブから選ばれた
元素、または元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で形成してもよい。また、
リン等の不純物元素をドーピングした多結晶珪素膜に代表される半導体膜を用いてもよい
。また、AgPdCu合金を用いてもよい。
【0138】
また、本実施の形態ではゲート電極54は単層で形成されているが、下層にタングステ
ン、上層にモリブデンなどの2層以上の積層構造でもかまわない。積層構造としてゲート
電極を形成する場合であっても前段で述べた材料を使用するとよい。また、その組み合わ
せも適宜選択すればよい。ゲート電極54の加工はフォトレジストを用いたマスクを利用
し、エッチングをして行う。
【0139】
続いて、ゲート電極54をマスクとして半導体層52に高濃度の不純物を添加する。こ
れによって半導体層52、ゲート絶縁層53、及びゲート電極54を含む薄膜トランジス
タ70が形成される。
【0140】
なお、薄膜トランジスタの作製工程については特に限定されず、所望の構造のトランジ
スタを作製できるように適宜変更すればよい。
【0141】
本実施の形態では、レーザ結晶化を使用して結晶化した結晶性シリコン膜を用いたトッ
プゲートの薄膜トランジスタを用いたが、非晶質半導体膜を用いたボトムゲート型の薄膜
トランジスタを画素部に用いることも可能である。非晶質半導体は珪素だけではなくシリ
コンゲルマニウムも用いることができ、シリコンゲルマニウムを用いる場合、ゲルマニウ
ムの濃度は0.01〜4.5atomic%程度であることが好ましい。
【0142】
また非晶質半導体中に0.5nm〜20nmの結晶を粒観察することができる微結晶半
導体膜(セミアモルファス半導体)を用いてもよい。また0.5nm〜20nmの結晶を
粒観察することができる微結晶はいわゆるマイクロクリスタル(μc)とも呼ばれている

【0143】
セミアモルファス半導体であるセミアモルファスシリコン(SASとも表記する)は、
珪化物気体をグロー放電分解することにより得ることができる。代表的な珪化物気体とし
ては、SiHであり、その他にもSi、SiHCl、SiHCl、SiC
、SiFなどを用いることができる。この珪化物気体を水素、水素とヘリウム、ア
ルゴン、クリプトン、ネオンから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈して用い
ることでSASの形成を容易なものとすることができる。希釈率は10倍〜1000倍の
範囲で珪化物気体を希釈することが好ましい。グロー放電分解による被膜の反応生成は0
.1Pa〜133Paの範囲の圧力で行えば良い。グロー放電を形成するための電力は1
MHz〜120MHz、好ましくは13MHz〜60MHzの高周波電力を供給すれば良
い。基板加熱温度は300度以下が好ましく、100〜250度の基板加熱温度が好適で
ある。
【0144】
このようにして形成されたSASはラマンスペクトルが520cm−1よりも低波数側
にシフトしており、X線回折ではSi結晶格子に由来するとされる(111)、(220
)の回折ピークが観測される。未結合手(ダングリングボンド)を終端する為に水素また
はハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。膜中の不純物元素として
、酸素、窒素、炭素などの大気成分の不純物は1×1020cm−1以下とすることが望
ましく、特に、酸素濃度は5×1019/cm以下、好ましくは1×1019/cm
以下とする。SASを用いて作製したTFTの移動度は、μ=1〜10cm/Vsec
となる。
【0145】
また、このSASをレーザでさらに結晶化して用いても良い。
【0146】
続いて、ゲート電極54、ゲート絶縁層53を覆って絶縁膜(水素化膜)59を窒化珪
素により形成する。絶縁膜(水素化膜)59を形成したら480℃で1時間程度加熱を行
って、不純物元素の活性化及び半導体層52の水素化を行う。
【0147】
続いて、絶縁膜(水素化膜)59を覆う第1の層間絶縁層60を形成する。第1の層間
絶縁層60を形成する材料としては酸化珪素、アクリル、ポリイミドやシロキサン、lo
w−k材料等をもちいるとよい。本実施の形態では酸化珪素膜を第1の層間絶縁層として
形成した。(図3(B))
【0148】
次に、半導体層52に至るコンタクトホールを開口する。コンタクトホールはレジスト
マスクを用いて、半導体層52が露出するまでエッチングを行うことで形成することがで
き、ウエットエッチング、ドライエッチングどちらでも形成することができる。なお、条
件によって一回でエッチングを行ってしまっても良いし、複数回に分けてエッチングを行
っても良い。また、複数回でエッチングする際は、ウエットエッチングとドライエッチン
グの両方を用いても良い。(図3(C))
【0149】
そして、当該コンタクトホールや第1の層間絶縁層60を覆う導電層を形成する。当該導
電層を所望の形状に加工し、接続部61a、配線61bなどが形成される。この配線はア
ルミニウム、銅、アルミニウムと炭素とニッケルの合金、アルミニウムと炭素とモリブデ
ンの合金等の単層でも良いが、形成順にモリブデン、アルミニウム、モリブデンの積層構
造やチタン、アルミニウム、チタンやチタン、窒化チタン、アルミニウム、チタンといっ
た積層構造でも良い。(図3(D))
【0150】
その後、接続部61a、配線61b、第1の層間絶縁層60を覆って第2の層間絶縁層
63を形成する。第2の層間絶縁層63の材料としては自己平坦性を有するアクリル、ポ
リイミド、シロキサンなどの塗布膜が好適に利用できる。本実施の形態ではシロキサンを
第2の層間絶縁層63として用いる。(図3(E))
【0151】
続いて第2の層間絶縁層63上に窒化珪素などで絶縁層を形成してもよい。これは後の
画素電極のエッチングにおいて、第2の層間絶縁層63が必要以上にエッチングされてし
まうのを防ぐ為に形成する。そのため、画素電極と第2の層間絶縁層のエッチングレート
の比が大きい場合には特に設けなくとも良い。続いて、第2の層間絶縁層63を貫通して
接続部61aに至るコンタクトホールを形成する。
【0152】
そして当該コンタクトホールと第2の層間絶縁層63(もしくは絶縁層)を覆って、透
光性を有する導電層を形成したのち、当該透光性を有する導電層を加工して薄膜発光素子
の第1の電極64を形成する。ここで第1の電極64は接続部61aと電気的に接触して
いる。
【0153】
第1の電極64の材料としてはアルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、白金(
Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)
、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、リチウム(Li)
、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(S
r)、チタン(Ti)などの導電性を有する金属、又はそれらの合金、または金属材料の
窒化物(例えばTiN)、インジウム錫酸化物(ITO)、珪素を含有するITO(IT
SO)、酸化インジウムに酸化亜鉛(ZnO)を混合したIZO等の金属酸化物などの導
電膜により形成することができる。
【0154】
また、発光を取り出す方の電極は透明性を有する導電膜により形成すれば良く、ITO、
ITSO、IZOなどの金属酸化物の他、Al、Ag等金属の極薄膜を用いる。また、第
2の電極の方から発光を取り出す場合は第1の電極は反射率の高い材料(Al、Ag等)
を用いることができる。本実施の形態ではITSOを第1の電極64として用いた(図4
(A))。
【0155】
次に第2の層間絶縁層63(もしくは絶縁層)及び第1の電極64を覆って有機材料も
しくは無機材料からなる絶縁層を形成する。続いて当該絶縁層を第1の電極64の一部が
露出するように加工し、隔壁65を形成する。隔壁65の材料としては、感光性を有する
有機材料(アクリル、ポリイミドなど)が好適に用いられるが、感光性を有さない有機材
料や無機材料で形成してもかまわない。また、隔壁65の材料にチタンブラックやカーボ
ンナイトライドなどの黒色顔料や染料を分散材などを用いて分散し、隔壁65を黒くする
ことでブラックマトリクス様に用いても良い。隔壁65の開口部に面する端面は曲率を有
し、当該曲率が連続的に変化するテーパー形状をしていることが望ましい(図4(B))

【0156】
次に、隔壁65から露出した第1の電極64を覆って、トリフェニルアミノ基が付いた
シリカマトリクスに酸化モリブデンをさらに有する複合材料により正孔注入層を作製する
。この正孔注入層は実施の形態2に記載の方法で作製すればよく、塗布にはインクジェッ
ト法を用いるとよい。次に発光層を実施の形態4で記載したシリカマトリクスを有する有
機無機ハイブリッド材料で発光層を作製する。塗布は同様にインクジェット法により行う
。続いて、ピリジン基が付いたシリカマトリクスに酸化リチウムをさらに有する複合材料
により電子注入層を作製する。この電子注入層も実施の形態2に記載の方法で作製すれば
よく、塗布にはインクジェット法を用いるとよい。
【0157】
続いて発光積層体66を覆う第2の電極67を形成する。これによって第1の電極64
と第2の電極67との間に発光層を含む積層体を挟んでなる発光素子93を作製すること
ができ、第1の電極に第2の電極より高い電圧をかけることによって発光を得ることがで
きる。第2の電極67の形成に用いられる電極材料としては第1の電極の材料と同様の材
料を用いることができる。本実施の形態ではアルミニウムを第2の電極として用いた。
【0158】
上記のような構成を有する発光素子は、発光素子にシロキサン結合により構成された骨
格を有する複合材料が用いられていることから耐熱性や耐久性に優れた発光素子である。
また、当該骨格に電子又は正孔注入もしくは輸送性を付与している有機基と電子の授受を
行うことができる材料がさらに添加されている複合材料が用いられていることから、正孔
又は電子の注入もしくは輸送性が向上し、さらには導電性が向上した発光素子とすること
ができる。
【0159】
また、正孔又は電子の注入もしくは輸送性が向上し、さらに導電性が向上した複合材料
を用いて第1の電極上の機能層の厚さを100nm以上に厚く形成することで、駆動電圧
の大幅上昇を招かずに第1の電極上のゴミなどによる不良の発生を低減させることができ
る。
【0160】
なお、本実施の形態では、正孔輸送層を第1の電極上に形成したが、第1の電極上には
電子輸送層を設け、積層順を反転させた構成としても良い。この場合、第1の電極にかけ
る電圧を第2の電極にかける電圧より低くすることで発光を得ることができる。
【0161】
その後、プラズマCVD法により窒素を含む酸化珪素膜をパッシベーション膜として形
成する。窒素を含む酸化珪素膜を用いる場合には、プラズマCVD法でSiH、N
、NHから作製される酸化窒化ケイ素膜、またはSiH、NOから作製される酸化
窒化ケイ素膜、あるいはSiH、NOをArで希釈したガスから形成される酸化窒化
ケイ素膜を形成すれば良い。
【0162】
また、パッシベーション膜としてSiH、NO、Hから作製される酸化窒化水素
化ケイ素膜を適用しても良い。もちろん、パッシベーション膜は単層構造に限定されるも
のではなく、他のケイ素を含む絶縁層を単層構造、もしくは積層構造として用いても良い
。また、窒化炭素膜と窒化ケイ素膜の多層膜やスチレンポリマーの多層膜、窒化ケイ素膜
やダイヤモンドライクカーボン膜を窒素を含む酸化珪素膜の代わりに形成してもよい。
【0163】
続いて発光素子を水などの劣化を促進する物質から保護するために、表示部の封止を行
う。対向基板を封止に用いる場合は、絶縁性のシール材により、外部接続部が露出するよ
うに貼り合わせる。対向基板と素子基板との間の空間には乾燥した窒素などの不活性気体
を充填しても良いし、シール材を画素部全面に塗布しそれにより対向基板を貼り合わせて
も良い。シール材には紫外線硬化樹脂などを用いると好適である。シール材には乾燥剤や
基板間のギャップを一定に保つための粒子を混入しておいても良い。続いて外部接続部に
フレキシブル配線基板を貼り付けることによって、発光装置が完成する。
【0164】
以上のように作製した発光装置の構成の1例を図5参照しながら説明する。なお、形が
異なっていても同様の機能を示す部分には同じ符号を付し、その説明を省略する部分もあ
る。本実施の形態では、LDD構造を有する薄膜トランジスタ70が接続部61aを介し
て発光素子93に接続している。
【0165】
図5(A)は第1の電極64が透光性を有する導電膜により形成されており、基板50
側に発光積層体66より発せられた光が取り出される構造である。なお94は対向基板で
あり、発光素子93が形成された後、シール材などを用い、基板50に固着される。対向
基板94と素子との間に透光性を有する樹脂88等を充填し、封止することによって発光
素子93が水分により劣化することを防ぐ事ができる。また、樹脂88が吸湿性を有して
いることが望ましい。さらに樹脂88中に透光性の高い乾燥剤89を分散させるとさらに
水分の影響を抑えることが可能になるためさらに望ましい形態である。
【0166】
図5(B)は第1の電極64と第2の電極67両方が透光性を有する導電膜により形成
されており、基板50及び対向基板94の両方に光を取り出すことが可能な構成となって
いる。また、この構成では基板50と対向基板94の外側に偏光板90を設けることによ
って画面が透けてしまうことを防ぐことができ、視認性が向上する。偏光板90の外側に
は保護フィルム91を設けると良い。
【0167】
なお、表示機能を有する本発明の発光装置には、アナログのビデオ信号、デジタルのビ
デオ信号のどちらを用いてもよい。デジタルのビデオ信号を用いる場合はそのビデオ信号
が電圧を用いているものと、電流を用いているものとに分けられる。発光素子の発光時に
おいて、画素に入力されるビデオ信号は、定電圧のものと、定電流のものがあり、ビデオ
信号が定電圧のものには、発光素子に印加される電圧が一定のものと、発光素子に流れる
電流が一定のものとがある。またビデオ信号が定電流のものには、発光素子に印加される
電圧が一定のものと、発光素子に流れる電流が一定のものとがある。この発光素子に印加
される電圧が一定のものは定電圧駆動であり、発光素子に流れる電流が一定のものは定電
流駆動である。定電流駆動は、発光素子の抵抗変化によらず、一定の電流が流れる。本発
明の発光表示装置及びその駆動方法には、上記したいずれの駆動方法を用いてもよい。
【0168】
本実施の形態のような方法で形成された本発明の発光装置は当該発光装置が有する発光
素子の第2の電極67の材料を選択する際、仕事関数を考慮する必要が無くなる。また、
第2の電極67を作製する材料を選択する際、材料選択の幅が広がる。これにより、より
当該発光素子が有する構成に適した材料を使用することが出来るようになる。
【0169】
本実施の形態は実施の形態1乃至実施の形態4の適当な構成と組み合わせて用いること
が可能である。
【0170】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一形態に相当する発光装置のパネルの外観について図6を
用いて説明する。図6(A)は基板上に形成されたトランジスタおよび発光素子を対向基
板4006との間に形成したシール材によって封止したパネルの上面図であり、図6(B
)は図6(A)の断面図に相応する。また、このパネルに搭載されている発光素子の有す
る構造は、実施の形態4に示したような構成である。
【0171】
基板4001上に設けられた画素部4002と信号線駆動回路4003と走査線駆動回
路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また、画素部40
02と信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004の上に対向基板4006が設
けられている。よって画素部4002と信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路40
04とは基板4001とシール材4005と対向基板4006とによって充填材4007
と共に密封されている。
【0172】
また、基板4001上に設けられた画素部4002と信号線駆動回路4003と走査線
駆動回路4004とは薄膜トランジスタを複数有しており、図6(B)では信号線駆動回
路4003に含まれる薄膜トランジスタ4008と、画素部4002に含まれる薄膜トラ
ンジスタ4010とを示す。
【0173】
また、発光素子4011は、薄膜トランジスタ4010と電気的に接続されている。
【0174】
また、引き回し配線4014は画素部4002と信号線駆動回路4003と、走査線駆
動回路4004とに、信号、または電源電圧を供給する為の配線に相当する。引き回し配
線4014は、引き回し配線4015a及び引き回し配線4015bを介して接続端子4
016と接続されている。接続端子4016はフレキシブルプリントサーキット(FPC
)4018が有する端子と異方性導電膜4019を介して電気的に接続されている。
【0175】
なお、充填材4007としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化
樹脂または熱硬化樹脂を用いることができ、ポリビニルクロライド、アクリル、ポリイミ
ド、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルブチラル、またはエチレンビニレンアセテ
ートを用いる事ができる。
【0176】
なお、本発明の発光装置は発光素子を有する画素部が形成されたパネルと、該パネルに
ICが実装されたモジュールとをその範疇に含む。
【0177】
本実施の形態のような構成のパネル及びモジュールは、発光素子にシロキサン結合によ
り構成された骨格を有する複合材料が用いられていることから耐熱性や耐久性に優れたパ
ネル及びモジュールである。また、当該骨格に電子又は正孔注入もしくは輸送性を付与し
ている有機基と電子の授受を行うことができる材料がさらに添加されている複合材料が用
いられていることから、正孔又は電子の注入もしくは輸送性が向上し、さらには導電性が
向上したパネル及びモジュールとすることができる。
【0178】
また、正孔又は電子の注入もしくは輸送性が向上し、さらに導電性が向上した複合材料
を用いて第1の電極上の機能層の厚さを100nm以上に厚く形成することで、駆動電圧
の大幅上昇を招かずに第1の電極上のゴミなどによる不良の発生を低減させることができ
る。
【0179】
本実施の形態は実施の形態1乃至実施の形態5の適当な構成と組み合わせて用いること
が可能である。
【0180】
(実施の形態7)
実施の形態6にその一例を示したようなモジュールを搭載した本発明の電子機器として
、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレ
イ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオコンポ等)、コンピュー
タ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機また
は電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Vers
atile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプ
レイを備えた装置)などが挙げられる。それらの電子機器の具体例を図7に示す。
【0181】
図7(A)は発光表示装置でありテレビ受像器やパーソナルコンピュータのモニターな
どがこれに当たる。筐体2001、表示部2003、スピーカー部2004等を含む。本
発明の発光表示装置は表示部2003耐熱性に優れ、長時間安定に駆動できるため信頼性
の高い発光表示装置である。画素部にはコントラストを高めるため、偏光板、又は円偏光
板を備えるとよい。例えば、封止基板へ1/4λ板、1/2λ板、偏光板の順にフィルム
を設けるとよい。さらに偏光板上に反射防止膜を設けてもよい。
【0182】
図7(B)は携帯電話であり、本体2101、筐体2102、表示部2103、音声入
力部2104、音声出力部2105、操作キー2106、アンテナ2108等を含む。本
発明の携帯電話は表示部2103は耐熱性に優れ、長時間安定に駆動できるため信頼性の
高い携帯電話である。
【0183】
図7(C)はコンピュータであり、本体2201、筐体2202、表示部2203、キ
ーボード2204、外部接続ポート2205、ポインティングマウス2206等を含む。
本発明のコンピュータは表示部2203は耐熱性に優れ、長時間安定に駆動できるため信
頼性のコンピュータである。図7(C)ではノート型のコンピュータを例示したが、デス
クトップ型のコンピュータなどにも適用することが可能である。
【0184】
図7(D)はモバイルコンピュータであり、本体2301、表示部2302、スイッチ
2303、操作キー2304、赤外線ポート2305等を含む。本発明のモバイルコンピ
ュータは表示部2302は耐熱性に優れ、長時間安定に駆動できるため信頼性の高いモバ
イルコンピュータである。
【0185】
図7(E)は携帯型のゲーム機であり、筐体2401、表示部2402、スピーカー部
2403、操作キー2404、記録媒体挿入部2405等を含む。本発明の携帯型ゲーム
機は表示部2402の有する発光素子は耐熱性に優れ、長時間安定に駆動できるため信頼
性の高い携帯型ゲーム機である。
【0186】
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に用いることが
可能である。
【0187】
(実施の形態8) 図8には下面発光、両面発光、上面発光の例を示した。実施の形態2
に作製工程を記載した構造は図8(C)の構造に相当する。図8(A)、(B)は図8(
C)における第1の層間絶縁層63を自己平坦性を有する材料で形成し、薄膜トランジス
タ70に接続する配線と発光素子の第1の電極64を同じ層間絶縁層上に形成した場合の
構成である。図8(A)は発光素子の第1の電極64のみを透光性を有する材料で形成し
、発光装置の下部に向かって光が射出する下面発光の構成、図8(B)はITOやITS
O、IZOなど透光性を有する材料を第2の電極67として形成することで図8(B)の
ように両面より光を取り出すことのできる両面発光の発光表示装置を得ることが可能とな
る。なお、アルミニウムや銀など厚膜で形成すると非透光性であるが、薄膜化すると透光
性を有するようになるため、アルミニウムや銀の透光性を有する程度の薄膜で第2の電極
67を形成しても両面発光とすることができる。
【0188】
(実施の形態9) 本実施の形態では、実施の形態6で示したパネル、モジュールが有す
る画素回路、保護回路及びそれらの動作について説明する。なお、図3、図4に示してき
た断面図は駆動用TFT1403と発光素子1405の断面図となっている。
【0189】
図9(A)に示す画素は、列方向に信号線1410及び電源線1411、1412、行
方向に走査線1414が配置される。また、スイッチング用TFT1401、駆動用TF
T1403、電流制御用TFT1404、容量素子1402及び発光素子1405を有す
る。
【0190】
図9(C)に示す画素は、駆動用TFT1403のゲート電極が、行方向に配置された
電源線1412に接続される点が異なっており、それ以外は図9(A)に示す画素と同じ
構成である。つまり、図9(A)(C)に示す両画素は、同じ等価回路図を示す。しかし
ながら、列方向に電源線1412が配置される場合(図9(A))と、行方向に電源線1
412が配置される場合(図9(C))とでは、各電源線は異なるレイヤーの導電膜で形
成される。ここでは、駆動用TFT1403のゲート電極が接続される配線に注目し、こ
れらを作製するレイヤーが異なることを表すために、図9(A)(C)として分けて記載
する。
【0191】
図9(A)(C)に示す画素の特徴として、画素内に駆動用TFT1403と電流制御
用TFT1404が直列に接続されており、駆動用TFT1403のチャネル長L(14
03)、チャネル幅W(1403)、電流制御用TFT1404のチャネル長L(140
4)、チャネル幅W(1404)は、L(1403)/W(1403):L(1404)
/W(1404)=5〜6000:1を満たすように設定するとよい。
【0192】
なお、駆動用TFT1403は、飽和領域で動作し発光素子1405に流れる電流値を
制御する役目を有し、電流制御用TFT1404は線形領域で動作し発光素子1405に
対する電流の供給を制御する役目を有する。両TFTは同じ導電型を有していると作製工
程上好ましく、本実施の形態ではnチャネル型TFTとして形成する。また駆動用TFT
1403には、エンハンスメント型だけでなく、ディプリーション型のTFTを用いても
よい。上記構成を有する本発明は、電流制御用TFT1404が線形領域で動作するため
に、電流制御用TFT1404のVgsの僅かな変動は、発光素子1405の電流値に影
響を及ぼさない。つまり、発光素子1405の電流値は、飽和領域で動作する駆動用TF
T1403により決定することができる。上記構成により、TFTの特性バラツキに起因
した発光素子の輝度ムラを改善して、画質を向上させた発光装置を提供することができる

【0193】
図9(A)〜(D)に示す画素において、スイッチング用TFT1401は、画素に対
するビデオ信号の入力を制御するものであり、スイッチング用TFT1401がオンとな
ると、画素内にビデオ信号が入力される。すると、容量素子1402にそのビデオ信号の
電圧が保持される。なお図9(A)(C)には、容量素子1402を設けた構成を示した
が、本発明はこれに限定されず、ビデオ信号を保持する容量がゲート容量などでまかなう
ことが可能な場合には、容量素子1402を設けなくてもよい。
【0194】
図9(B)に示す画素は、TFT1406と走査線1415を追加している以外は、図
9(A)に示す画素構成と同じである。同様に、図9(D)に示す画素は、TFT140
6と走査線1415を追加している以外は、図9(C)に示す画素構成と同じである。
【0195】
TFT1406は、新たに配置された走査線1415によりオン又はオフが制御される
。TFT1406がオンとなると、容量素子1402に保持された電荷は放電し、電流制
御用TFT1404がオフとなる。つまり、TFT1406の配置により、強制的に発光
素子1405に電流が流れない状態を作ることができる。そのためTFT1406を消去
用TFTと呼ぶことができる。従って、図9(B)(D)の構成は、全ての画素に対する
信号の書き込みを待つことなく、書き込み期間の開始と同時又は直後に点灯期間を開始す
ることができるため、デューティ比を向上することが可能となる。
【0196】
図9(E)に示す画素は、列方向に信号線1410、電源線1411、行方向に走査線
1414が配置される。また、スイッチング用TFT1401、駆動用TFT1403、
容量素子1402及び発光素子1405を有する。図9(F)に示す画素は、TFT14
06と走査線1415を追加している以外は、図7(E)に示す画素構成と同じである。
なお、図9(F)の構成も、TFT1406の配置により、デューティ比を向上すること
が可能となる。
【0197】
以上のように、多様な画素回路を採用することができる。特に、非晶質半導体膜から薄
膜トランジスタを形成する場合、駆動用TFT1403の半導体膜を大きくすると好まし
い。そのため、上記画素回路において、電界発光層からの光が封止基板側から射出する上
面発光型とすると好ましい。
【0198】
このようなアクティブマトリクス型の発光装置は、画素密度が増えた場合、各画素にT
FTが設けられているため低電圧駆動でき、有利であると考えられている。
【0199】
本実施の形態では、一画素に各TFTが設けられるアクティブマトリクス型の発光装置
について説明したが、一列毎にTFTが設けられるパッシブマトリクス型の発光装置を形
成することもできる。パッシブマトリクス型の発光装置は、各画素にTFTが設けられて
いないため、高開口率となる。発光が電界発光層の両側へ射出する発光装置の場合、パッ
シブマトリクス型の発光装置を用いると透過率が高まる。
【0200】
これらのような画素回路をさらに有する本発明の発光装置は、耐熱性に優れ、長時間安
定に駆動できるため信頼性が高い上、上記各々の回路の特徴を有する表示装置とすること
ができる。
【0201】
続いて、図9(E)に示す等価回路を用い、走査線及び信号線に保護回路としてダイオ
ードを設ける場合について説明する。
【0202】
図10には、画素部1500にスイッチング用TFT1401、駆動用TFT1403
、容量素子1402、発光素子1405が設けられている。信号線1410には、ダイオ
ード1561と1562が設けられている。ダイオード1561と1562は、スイッチ
ング用TFT1401又は1403と同様に、上記実施の形態に基づき作製され、ゲート
電極、半導体層、ソース電極及びドレイン電極等を有する。ダイオード1561と156
2は、ゲート電極と、ドレイン電極又はソース電極とを接続することによりダイオードと
して動作させている。
【0203】
ダイオードと接続する共通電位線1554、1555はゲート電極と同じレイヤーで形
成している。従って、ダイオードのソース電極又はドレイン電極と接続するには、ゲート
絶縁層にコンタクトホールを形成する必要がある。
【0204】
走査線1414に設けられるダイオードも同様な構成である。
【0205】
このように、本発明によれば、入力段に設けられる保護ダイオードを同時に形成するこ
とができる。なお、保護ダイオードを形成する位置は、これに限定されず、駆動回路と画
素との間に設けることもできる。
【0206】
このような保護回路を有する本発明の発光装置は、当該発光装置は耐熱性に優れ、長時間
安定に駆動できるため信頼性が高く、上記構成を有することで、発光装置としての信頼性
をさらに高めることが可能となる。
【実施例1】
【0207】
本実施例では、本発明の複合材料の作製例を具体的に例示する。
【0208】
《実施例のサンプルの作製》
[1.構造式(1)で表されるアルコキシシランの合成]
300ml三ツ口フラスコに、4−ブロモトリフェニルアミン4.86g(15mmo
l)およびテトラヒドロフラン(THF)50mlを入れ、窒素雰囲気中、−78度で攪
拌しながらn−ブチルリチウム(15%ヘキサン溶液)11.39ml(18mmol)
を滴下した。30分攪拌した後、トリエトキシクロロシラン3.67g(18mmol)
を滴下した。室温まで昇温し、終夜攪拌した後、THFを減圧下にて除去した。その後、
ヘキサンを加えてLiBrを析出させて濾去し、さらにヘキサンを減圧下にて除去するこ
とにより、構造式(1)で表されるN−(4−トリエトキシシリルフェニル)−N、N−
ジフェニルアミン(略称;TPA−Si)を5.9g得た(収率96.5%)。
【0209】
[2.ゾルの調製]
次に、水分濃度を数ppm程度に保ったグローブボックス内において、上記で合成した
TPA−Siを0.421g(1.0mmol)、メチルトリメトキシシラン(東京化成
工業社製)を0.139g(1.0mmol)採取し、7.43g(100mmol)の
THFに分散した溶液1を調製した。
【0210】
これとは別に、同グローブボックス内において、バナジウムトリイソプロポキシドオキ
シド(高純度化学社製)を0.244g(1.0mmol)、安定化剤としてアセト酢酸
エチル(キシダ化学社製)を0.136g(1.0mmol)採取し、6.89g(96
mmol)のTHFに分散した溶液2を調製した。
【0211】
そして、同グローブボックス内において、溶液1に溶液2を撹拌しながら滴下し、その
後2時間撹拌することで、本発明の複合材料を作製するためのゾルを得た。なお、このゾ
ルにおいては、TPA−Si:メチルトリメトキシシラン:バナジウムトリイソプロポキ
シドオキシド:アセト酢酸エチル:THF=1.0:1.0:1.0:1.0:196(
単位;[mmol])となっている。
【0212】
[3.本発明の複合材料の作製]
さらに、得られたゾルを0.45μmのフィルターに通しながらガラス基板上に滴下し
、2000rpm・60秒の条件でスピンコートした。スピンコートされた基板と純水を
入れたビーカーとを電気炉内に入れ、70℃で8時間加熱することで、水蒸気により加水
分解した。さらに、純水が入っているビーカーを炉内から取り出し、150℃で16時間
焼成することにより本発明の複合材料を得た。本実施例の複合材料においては、シロキサ
ン結合によって結合した骨格中のシリコンに共有結合を介して結合している有機基は、4
−トリフェニルアミノ基であり、この有機基と電子の授受を行うことが可能な物質は酸化
バナジウムである。
【0213】
《比較サンプル1の作製》
比較のため、上記実施例からバナジウムトリイソプロポキシドオキシドを除いたゾルを
調製し、比較サンプル1を作製した。すなわち、0.217g(0.53mmol)のT
PA−Siと0.072g(0.53mmol)のメチルトリメトキシシランが7.40
g(100mmol)のTHFに分散されたゾルを、上記実施例と同様に調製し、同様の
条件でガラス基板上に塗布、焼成したサンプルを作製した。本比較サンプル1は、有機基
(4−トリフェニルアミノ基)と電子の授受を行うことが可能な物質である酸化バナジウ
ムを入れていない従来の有機無機ハイブリッド材料である。
【0214】
《比較サンプル2の作製》
比較のため、上記実施例からTPA−Siを除いたゾルを調製し、比較サンプル2を作
製した。すなわち、0.072g(0.53mmol)のメチルトリメトキシシラン、0
.122g(0.50mmol)のバナジウムトリイソプロポキシドオキシド、および0
.067g(0.51mmol)のアセト酢酸エチルが7.21g(100mmol)の
THFに分散されたゾルを、上記実施例と同様に調製し、同様の条件でガラス基板上に塗
布、焼成したサンプルを作製した。本比較サンプル2は酸化バナジウムは存在するが、酸
化バナジウムと電子の授受を行うことができる有機基(4−トリフェニルアミノ基)がな
く、メチル基しかない有機無機ハイブリッド材料である。
【0215】
《実験結果》
分光光度計(日立製、U−4000)を用い、上述のようにして作製した本実施例のサ
ンプル、比較サンプル1、および比較サンプル2の紫外−可視−赤外吸収スペクトルを測
定した。結果を図13(a)に示す。また、400nm〜1200nmの可視域から近赤
外領域にかけてのスペクトルを拡大した図を、図13(b)に示す。
【0216】
図13に示す通り、本実施例のサンプルのスペクトルは、比較サンプル1および2に比
べ、600nm〜800nmの可視/赤外の境界領域付近においてブロードな吸収スペク
トルを有している。このブロードな吸収は、比較サンプル1および2では見られないこと
から、4−トリフェニルアミノ基と酸化バナジウムとの間で電荷移動が生じていることが
示唆される。アリールアミノ基は一般に電子供与性が高いことから、4−トリフェニルア
ミノ基が電子供与体、酸化バナジウムが電子受容体となっていると考えられる。
【0217】
なお、ゾル−ゲル法では、加水分解および焼成により、酸化物骨格(金属−酸素−金属の
結合)が形成されることが知られている。すなわち、TPA−Siとメチルトリメトキシ
シランによりシロキサン結合が形成され、バナジウムトリイソプロポキシドオキシドは酸
化バナジウム骨格を形成する。したがって、上述した本実施例から、シロキサン結合によ
って結合した骨格中のシリコンに有機基(4−トリフェニルアミノ基)が共有結合を介し
て結合している有機無機ハイブリッド材料と、その有機基と電子の授受を行うことが可能
な物質(酸化バナジウム)とを有する複合材料を作製することができた。
【符号の説明】
【0218】
50 基板
52 半導体層
53 ゲート絶縁層
54 ゲート電極
59 絶縁膜(水素化膜)
60 層間絶縁層
63 層間絶縁層
64 電極
65 隔壁
66 発光積層体
67 電極
70 薄膜トランジスタ
88 樹脂
89 乾燥剤
90 偏光板
91 保護フィルム
93 発光素子
94 対向基板
100 シロキサン結合
101 骨格
102 有機基
103 有機無機ハイブリッド材料
104 物質
200 絶縁表面
201 電極
202 正孔注入輸送層
203 発光層
204 電子注入輸送層
205 電極
206 正孔注入輸送層
207 正孔注入輸送層
208 発光層
209 間隔層
210 発光層
51a 下地絶縁層
51b 下地絶縁層
61a 接続部
61b 配線
1401 スイッチング用TFT
1402 容量素子
1403 駆動用TFT
1404 電流制御用TFT
1405 発光素子
1406 TFT
1410 信号線
1411 電源線
1412 電源線
1414 走査線
1415 走査線
1500 画素部
1554 共通電位線
1561 ダイオード
2001 筐体
2003 表示部
2004 スピーカー部
2101 本体
2102 筐体
2103 表示部
2104 音声入力部
2105 音声出力部
2106 操作キー
2108 アンテナ
2201 本体
2202 筐体
2203 表示部
2204 キーボード
2205 外部接続ポート
2206 ポインティングマウス
2301 本体
2302 表示部
2303 スイッチ
2304 操作キー
2305 赤外線ポート
2401 筐体
2402 表示部
2403 スピーカー部
2404 操作キー
2405 記録媒体挿入部
4001 基板
4001 基板
4002 画素部
4003 信号線駆動回路
4004 走査線駆動回路
4005 シール材
4006 対向基板
4007 充填材
4008 薄膜トランジスタ
4010 薄膜トランジスタ
4011 発光素子
4014 配線
4016 接続端子
4018 フレキシブルプリントサーキット(FPC)
4019 異方性導電膜
4015a 配線
4015b 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキサン結合によって結合した骨格中のシリコンに有機基が結合している材料と、
前記有機基と電子の授受をすることができる遷移金属の酸化物又は遷移金属の水酸化物と、を有し、
前記有機基は正孔輸送性を有する有機基であり、
前記遷移金属は、チタン、バナジウム、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、ニオブのいずれかであることを特徴とする複合材料。
【請求項2】
シロキサン結合によって結合した骨格中のシリコンに有機基が結合している材料と、
前記有機基と電子の授受をすることができる遷移金属の酸化物又は遷移金属の水酸化物と、を有し、
前記有機基はアリールアミン骨格又はピロール骨格を有し、
前記遷移金属は、チタン、バナジウム、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、ニオブのいずれかであることを特徴とする複合材料。
【請求項3】
シロキサン結合によって結合した骨格中のシリコンに有機基が結合している材料と、
前記有機基と電子の授受をすることができる遷移金属の酸化物又は遷移金属の水酸化物と、を有し、
前記シロキサン結合によって結合した骨格中におけるシリコンの一つもしくは複数に有機基が結合し、
前記有機基は、アリールアミン骨格、ピロール骨格を有する有機基の中から選ばれた一種もしくは複数種であり、
前記遷移金属は、チタン、バナジウム、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、ニオブのいずれかであることを特徴とする複合材料。
【請求項4】
下記構造式(1)乃至(7)のいずれか一に記載されたモノアルコキシシランを用いて重縮合することにより得られる材料と、
前記材料が有する有機基と電子の授受をすることができる遷移金属の酸化物又は遷移金属の水酸化物と、を有し、
前記遷移金属は、チタン、バナジウム、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、ニオブのいずれかであることを特徴とする複合材料。
【化1】

【請求項5】
一対の電極と、
前記一対の電極の間に電流を流すことで発光する発光層と、複合材料よりなる層と、を有し、
前記複合材料は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の複合材料であることを特徴とする発光素子。
【請求項6】
請求項5において、
前記発光層は、シロキサン結合によって結合した骨格中におけるシリコンに、電圧をかけることで発光する有機基を有する層であることを特徴とする発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−92344(P2012−92344A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−264410(P2011−264410)
【出願日】平成23年12月2日(2011.12.2)
【分割の表示】特願2005−308125(P2005−308125)の分割
【原出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】