説明

複合材料、これにより製造された複合フィルムおよび複合フィルムの製造方法

本発明は、ガラスクロス(Glass cloth);およびジフェニルシランジオールおよびアルコキシシランを含む有機‐無機ハイブリッド組成物を含む複合材料、これにより製造された複合フィルムおよび複合フィルムの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスクロス(Glass cloth)と有機‐無機ハイブリッド組成物を含む複合材料、これにより製造された複合フィルムおよび複合フィルムの製造方法に関する。
【0002】
本出願は2007年10月18日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2007−0105173号および第10−2007−0105176号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0003】
表示装置、額縁、工芸、容器などに用いられるガラス基板は、小さい線膨脹係数、優れたガスバリアー性、高い光透過度、優れた表面平坦度、優れた耐熱性と耐化学性などの色々な長所を有しているが、衝撃に弱いために壊れやすく、密度が高いために重いという短所がある。
【0004】
最近、液晶や有機発光表示装置、電子ペーパーに対する関心が急増するにつれ、これらの基板をガラスからプラスチックに代替する研究が活発に進行している。
【0005】
基本基材であるプラスチックフィルムと機能性コーティング層を有するプラスチック基板をガラス基板の代わりに用いれば、表示装置の全体重さが軽くなり、デザインの柔軟性を付与することができ、衝撃に強く、連続工程で製造する場合にガラス基板に比べて経済性がある。
【0006】
そこで、プラスチックフィルムが表示装置に用いられるためには、トランジスタ素子の工程温度、透明電極の蒸着温度に耐えられる高いガラス転移温度、液晶と有機発光材料の老化を防止するための酸素と水蒸気に対する遮断特性、工程温度変化に応じた基板の歪みを防止するための小さい線膨脹係数と寸法安定性、既存のガラス基板に用いられる工程機器との互換性を有する高い機械的強度、エッチング工程に耐えられる耐化学性、高い光透過度および少ない複屈折率、表面の耐スクラッチ性などの特性が要求される。
【0007】
このような表示装置用プラスチックフィルムの要求物性のうち、低い線膨脹係数(CTE)は特に重要な物性であり、ガラスクロス(glass cloth)を用いてプラスチックフィルムを製造する方法が低い線膨脹係数を有する基板を提供する方法中の1つである。
【0008】
低い線膨脹係数(CTE)の値を実現するためには、タイトに織られたガラスクロスを用いなければならない。すなわち、ガラスクロスの織り間隔が狭いほど、プラスチックフィルムの製造後、低い線膨脹係数を提供することができる。(図4参照)
【0009】
しかし、ガラスクロスをエポキシまたはポリマーのような有機物と共に用いてフィルムを製造する場合、ガラス繊維(glass fiber)の間で発生する気泡(air bubble)のため、タイトに織られたガラスクロスを用いるのに限界があり、ガラスクロスと有機物の低い界面接着力(adhesion)のために界面からクラック(crack)が生じる。
【0010】
有機物とガラスクロスを共に用いてフィルムを製造する一例として、US2005/0203239号には、エポキシあるいはポリマーなどの有機物にガラスクロスを含浸して硬化する方法が記載されている。
【0011】
しかし、この場合、ガラスクロスと有機物間の界面における接着力が不足しており、これを解消するためにガラスクロスの表面を改質する方法を利用したが、依然として低い界面接着力によって界面クラック(crack)が生じる問題点がある。
【0012】
また、エポキシあるいはポリマーなどの有機物にガラスクロスを含浸してフィルムを製造する場合、硬化あるいは溶媒揮発のために長い工程時間が必要となるので生産性が低いという問題点がある。
【0013】
また、既存のエポキシあるいはポリマーなどの有機物にガラスクロスを含浸してフィルムを製造する場合、粘度が高いためにガラスクロスの間で発生する気泡(air bubble)を除去するのが難しく、これを改善するために高温で工程を進行させるか、真空で進行させることができるものの、この工程が複雑であるために工程進行が容易ではないという問題点がある。
【0014】
また、既存のエポキシあるいはポリマーなどの有機物にガラスクロスを含浸してフィルムを製造する場合にラミネーション(lamination)工程を利用するが、これでは連続工程を遂行し難いという問題点がある。
【0015】
また、ガラスクロスと既存のエポキシあるいはポリマーなどの有機物は、波長に応じた屈折率依存性が相異なるので透明なフィルムを製造し難いという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】US2005/0203239号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、ガラス繊維の界面クラックおよび気泡発生を防止し、生産性が向上された複合材料、これにより製造された複合フィルムおよび複合フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
また、前記有機‐無機ハイブリッド組成物の屈折率を調節し、透明複合材料、これにより製造された透明複合フィルムおよび透明複合フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、ガラスクロス(Glass cloth);およびジフェニルシランジオールおよびアルコキシシランを含む有機‐無機ハイブリッド組成物を含む複合材料を提供する。
【0020】
本発明に係る複合材料から製造され、ガラスクロス(Glass cloth);およびジフェニルシランジオールおよびアルコキシシランを含む有機‐無機ハイブリッド組成物を含む複合フィルムを提供する。
【0021】
本発明に係る複合フィルムを含む電子装置を提供する。
【0022】
本発明は、a)ガラスクロス(Glass cloth)を準備するステップ;b)ジフェニルシランジオールおよびアルコキシシランを含むゾル(sol)状態の有機‐無機ハイブリッド組成物を製造するステップ;およびc)前記ガラスクロスを前記ゾル(sol)状態の有機‐無機ハイブリッド組成物に含浸および硬化させるステップを含む複合フィルムの製造方法を提供する。
【0023】
本発明によれば、硬化後の有機‐無機ハイブリッド組成物の屈折率と前記ガラスクロスとの屈折率差が0.01以下になるように前記有機‐無機ハイブリッド組成物の屈折率を調節すれば、透明複合材料、透明複合フィルム、透明複合フィルムを含む電子装置および透明複合フィルムの製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、低い粘度および短い硬化時間の有機‐無機ハイブリッド組成物とガラスクロス間のゾル−ゲル(sol−gel)反応を通じて製造することにより、ガラス繊維の界面接着力が向上され、ガラス繊維の界面における界面クラック発生および気泡の発生を防止することができる。
【0025】
既存のエポキシあるいはポリマーを用いる場合には硬化あるいは溶媒揮発のために長い工程時間が要求されるのに対し、有機‐無機ハイブリッド(organic−inorganic hybrid)の短い硬化反応によってフィルムの生産性を向上させることができる。
【0026】
低い粘度および短い硬化時間の有機‐無機ハイブリッド組成物にガラスクロスを含浸して硬化する方法を数回繰り返してフィルムを製造する連続工程が可能であるので生産性を向上させることができる。
【0027】
また、本発明により、前記有機‐無機ハイブリッド組成物の屈折率を調節し、前記有機‐無機ハイブリッド組成物の硬化後、有機‐無機ハイブリッド組成物と前記ガラスクロスとの屈折率差が0.01以下である場合、透明複合材料、透明複合フィルム、透明複合フィルムを含む電子装置および透明複合フィルムの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による屈折率を調節しない複合フィルムまたは屈折率を調節した透明複合フィルムを製造する過程を示す図である。
【図2】比較例1による複合フィルムと本発明の実施例1による透明複合フィルムのクラックテスト(Crack test)の結果を示す写真である。
【図3】ガラスクロスの屈折率に合わせて屈折率を調節していない実施例2による複合フィルムと、ガラスクロスの屈折率に合わせて屈折率を調節した本発明の実施例3による透明複合フィルムの光透過度を比較した写真である。
【図4】織り間隔が異なるガラスクロス(Glass cloth)の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る複合材料は、ガラスクロス(Glass cloth);およびジフェニルシランジオールおよびアルコキシシランを含む有機‐無機ハイブリッド組成物を含む。
【0030】
前記ガラスクロスは、ガラス繊維(fiber)の原料成分、太さ、模様に応じて色々な種類に分けることができ、ガラスクロスの織りのタイプ、1バンドルのファイバー(fiber)本数に応じて色々な種類に分けることができる。これらのうちから選択して用いることができる。
【0031】
前記ガラスクロスの厚さは10〜200μmであってもよい。
【0032】
前記ガラスクロスは1.51(s−glass)〜1.56(e−glass)の屈折率値を有する。
【0033】
前記ジフェニルシランジオールは主要成分であって、添加されて内部柔軟剤の役割を果たすことにより、複合フィルムとして求められる特定な要求物性である柔軟性を向上させることができる。
【0034】
ここで、ジフェニルシランジオールと金属アルコキシドを共に用いる場合、有機‐無機ハイブリッド組成物が、例えば、1.48〜1.60の間の屈折率を有するように屈折率を調節することができる。また、2官能性のジフェニルシランジオールと前記金属アルコキシドを共に用いる場合、金属アルコキシドの架橋構造の調節によって屈曲性を向上させることができる。
【0035】
前記アルコキシシランは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、およびアミノプロピルトリメトキシシランのうちから選択された1種以上であってもよい。
【0036】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物は、前記ジフェニルシランジオール100重量部に対し、前記アルコキシシラン10〜100重量部を含むことができる。
【0037】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物は、硬化後、前記ガラスクロスとの屈折率差が0.01以下であってもよい。ここで、0.01以下の屈折率差とは、硬化後の有機‐無機ハイブリッド組成物の屈折率と前記ガラスクロスの屈折率との差が0.01以下であることを意味し、硬化後の有機‐無機ハイブリッド組成物の屈折率とは、ガラスクロスを含まない状態で有機‐無機ハイブリッド組成物だけを硬化させた後に測定した屈折率を意味する。
【0038】
このように、前記有機‐無機ハイブリッド組成物の硬化後、前記有機‐無機ハイブリッド組成物と前記ガラスクロスとの屈折率差が0.01以下である場合には、透明複合材料および透明複合フィルム(実施例1、3、4参照)を提供することができ、屈折率を調節しない場合には、複合材料およびこれにより製造された複合フィルム(実施例2参照)を提供することができる。
【0039】
前記ジフェニルシランジオールと前記アルコキシシランのうちのいずれか1つは前記ガラスクロスより大きい屈折率を有し;他の1つは前記ガラスクロスより小さい屈折率または前記ガラスクロスと同等な屈折率を有してもよい。
【0040】
ここで、一例として、1.51の屈折率を有するガラスクロスを用いる場合、有機‐無機ハイブリッド組成物は、前記ガラスクロスの屈折率より大きい1.513の屈折率を有するジフェニルシランジオール、および前記ガラスクロスの屈折率より小さいか同等の1.38〜1.51の屈折率を有するアルコキシシランを含むことができる。このような有機‐無機ハイブリッド組成物を硬化させた後に屈折率を測定すれば、前記ガラスクロスとの屈折率差が0.01以下である。好ましくは0.005以下である。これにより、透明複合材料、透明複合フィルムを提供することができる。
【0041】
本発明に係る有機‐無機ハイブリッド組成物は、ポリマーおよび/または金属アルコキシドをさらに含むことができる。ここで、金属アルコキシドを用いる場合、波長に応じた複屈折差を減少させることができる。
【0042】
前記ポリマーとしては熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、より好ましくは可視光線を透過させられる透明熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0043】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−ノルボルネン共重合体、エチレン−DMON共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、およびアイオノマー樹脂からなる群から選択されたポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレートからなる群から選択されたポリエステル;ナイロン−6、またはナイロン−6,6;メタキシレンジアミン−アジピン酸縮重合体;アミド系樹脂;アクリル樹脂;ポリスチレンまたはスチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、およびポリアクリロニトリルからなる群から選択されたスチレン−アクリロニトリル系樹脂;三酢酸セルロースおよび二酢酸セルロースからなる群から選択された疎水化セルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、およびポリテトラフルオロエチレンからなる群から選択されたハロゲン含有樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、およびセルロース誘導体からなる群から選択された水素結合性樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリフェニレンオキシド;ポリメチレンオキシド;および液晶樹脂のうちから選択された1種以上であってもよい。ここで、前記アクリル樹脂としてはポリメチルメタクリレートを例として挙げられる。
【0044】
また、前記ポリマーとして用いることのできる樹脂は耐熱性に優れるものが好ましく、例えば、ガラス転移点(Tg)が、120℃以上300℃以下、より好ましくは、150℃以上300℃以下、さらに好ましくは、180℃以上300℃以下の樹脂であってもよい。
【0045】
前記熱可塑性樹脂のうちの耐熱性に優れた樹脂としては、例えば、エチレン−ノルボルネン共重合体、エチレン−DMON共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、三酢酸セルロース、二酢酸セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、および液晶樹脂のうちから選択された1種以上の樹脂であってもよい。すなわち、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物がポリマーをさらに含む場合、前記有機‐無機ハイブリッド組成物は、前記ジフェニルシランジオール100重量部に対し、前記アルコキシシラン10〜100重量部および前記ポリマー0超過100重量部以下を含むことができる。
【0047】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物が前記ジフェニルシランジオール、前記アルコキシシラン、および前記ポリマーを含む場合、3成分のうちのいずれか1つは前記ガラスクロスより大きい屈折率を有し;他の1つは前記ガラスクロスより小さい屈折率または前記ガラスクロスと同等の屈折率を有し;残りの1つは前記ガラスクロスより小さい屈折率または前記ガラスクロスと同等の屈折率または前記ガラスクロスより大きい屈折率を有してもよい。このような有機‐無機ハイブリッド組成物を硬化させた後に屈折率を測定すれば、前記ガラスクロスとの屈折率差が0.01以下である。好ましくは0.005以下である。これにより、透明複合材料、透明複合フィルムを提供することができる。
【0048】
ここで、一例として、1.51の屈折率を有するガラスクロスを用いる場合、有機‐無機ハイブリッド組成物は、前記ガラスクロスの屈折率より大きい1.513の屈折率を有するジフェニルシランジオール、前記ガラスクロスの屈折率より小さいか同等の1.38〜1.51の屈折率を有するアルコキシシラン、および前記ガラスクロスの屈折率と同等であるか大きい1.51〜1.78の屈折率を有するポリマーを含むことができる。ここで、前記ポリマーの一例として1.586の屈折率を有するポリカーボネートを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0049】
前記金属アルコキシドとしては、チタニウムブトキシド、チタニウムプロポキシド、アルミニウムブトキシド、およびジルコニウムプロポキシドのうちから選択された1種以上であってもよい。
【0050】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物がポリマーおよび金属アルコキシドをさらに含む場合、前記有機‐無機ハイブリッド組成物は、前記ジフェニルシランジオール100重量部に対し、前記アルコキシシラン10〜100重量部、前記ポリマー0超過100重量部以下、および前記金属アルコキシド0超過100重量部以下を含むことができる。
【0051】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物がジフェニルシランジオール、アルコキシシラン、ポリマー、および金属アルコキシドを含む場合、4成分のうちのいずれか1つは前記ガラスクロスより大きい屈折率を有し;他の1つは前記ガラスクロスより小さい屈折率または前記ガラスクロスと同等の屈折率を有し;残りの2つは各々独立に前記ガラスクロスより小さい屈折率または前記ガラスクロスと同等な屈折率または前記ガラスクロスより大きい屈折率を有してもよい。
【0052】
このような有機‐無機ハイブリッド組成物を硬化させた後に屈折率を測定すれば、前記ガラスクロスとの屈折率差が0.01以下である。好ましくは0.005以下である。これにより、透明複合材料および透明複合フィルムを提供することができる。
【0053】
ここで、一例として、1.51の屈折率を有するガラスクロスを用いる場合、有機‐無機ハイブリッド組成物は、前記ガラスクロスの屈折率より大きい1.513の屈折率を有するジフェニルシランジオール、前記ガラスクロスの屈折率より小さいか同等の1.38〜1.51の屈折率を有するアルコキシシラン、および前記ガラスクロスの屈折率と同等であるか大きい1.51〜1.78の屈折率を有するポリマー、および前記ガラスクロスの屈折率より大きい1.7〜2.7の屈折率を有する金属アルコキシドを含むことができる。ここで、前記ポリマーの一例として1.586の屈折率を有するポリカーボネートを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0054】
本発明に係る複合フィルムは、本発明に係る複合材料から製造され、ガラスクロス(Glass cloth);およびジフェニルシランジオールおよびアルコキシシランを含む有機‐無機ハイブリッド組成物を含むことができる。前述した実施状態の内容が全て適用されるので具体的な説明は省略する。
【0055】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物はポリマーおよび/または金属アルコキシドを含むことができる。
【0056】
ここで、前記有機‐無機ハイブリッド組成物の硬化後、有機‐無機ハイブリッド組成物と前記ガラスクロスとの屈折率差が0.01以下である場合、透明複合フィルムを提供することができる。
【0057】
このように、前記有機‐無機ハイブリッド組成物の硬化後、有機‐無機ハイブリッド組成物と前記ガラスクロスとの屈折率差が0.01以下である場合には、透明複合フィルム(実施例1、3、4参照)を提供することができ、屈折率を調節しない場合には、複合フィルム(実施例2)を提供することができる。
【0058】
本発明に係る複合フィルムまたは透明複合フィルムは、各種ディスプレイ素子の基板、太陽電池の基板、ディスプレイ装置の機能性フィルムなど、様々な電子装置の基板および機能性フィルムとして用いられる。
【0059】
例えば、本発明に係る複合フィルムまたは透明複合フィルムを液晶表示素子(LCD)基板、カラーフィルタ基板、有機EL表示素子の基板、ディスプレイ装置の光学フィルムとして用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
一方、本発明に係る電子装置は、前記本発明に係る複合フィルムまたは透明複合フィルムを含むことができる。
【0061】
前記電子装置としては各種ディスプレイ装置、太陽電池が例として挙げられる。
【0062】
本発明に係る複合フィルムの製造方法は、a)ガラスクロス(Glass cloth)を準備するステップ;b)ジフェニルシランジオールおよびアルコキシシランを含むゾル(sol)状態の有機‐無機ハイブリッド組成物を製造するステップ;およびc)前記ガラスクロスを前記ゾル(sol)状態の有機‐無機ハイブリッド組成物に含浸および硬化させるステップを含むことができる(図1参照)。
【0063】
そこで、前記有機‐無機ハイブリッド組成物と前記ガラスクロス間のゾル−ゲル(sol−gel)反応を通じて組成物とガラスとの間の接着力が向上され、このように向上された接着力は、製造された透明複合フィルムにクラック(crack)のない特性を持たせる。
【0064】
前記ガラスクロスは、ガラス繊維(fiber)の原料成分、太さ、模様に応じて色々な種類に分けることができ、ガラスクロスの織りのタイプ、1バンドルのファイバー(fiber)本数に応じて色々な種類に分けることができる。これらのうちから選択して用いることができる。
【0065】
前記ガラスクロスの厚さは10〜200μmであってもよい。
【0066】
前記ガラスクロスは1.51(s−glass)〜1.56(e−glass)の屈折率値を有する。
【0067】
前記ジフェニルシランジオールは主要成分であって、添加されて内部柔軟剤の役割を果たすことにより、複合フィルムとして求められる特定な要求物性である柔軟性を向上させることができる。
【0068】
具体的に説明すれば、ジフェニルシランジオールはアルコキシシランと共に用いられて架橋の程度を調節し、これによって複合フィルムの柔軟性を向上させることができる。
【0069】
また、部分加水分解程度の低いジフェニルシランジオールをアルコキシシランと共に用いれば、これを含む有機‐無機ハイブリッド組成物にガラスクロスを含浸することが容易になることによって複合フィルムに気泡が生成されることを防止することができ、クラックのない複合フィルムを製造できるようになる。
【0070】
このようにジフェニルシランジオールを添加する場合、複合フィルムの柔軟性を確保しつつ、耐熱性および寸法安定性に優れた複合フィルムを提供することができる。
【0071】
前記アルコキシシランは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、およびアミノプロピルトリメトキシシランのうちから選択された1種以上であってもよい。
【0072】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物は、前記ジフェニルシランジオール100重量部に対し、前記アルコキシシラン10〜100重量部を含むことができる。
【0073】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物は、硬化後、前記ガラスクロスとの屈折率差が0.01以下であってもよい。この場合に、透明複合フィルムを製造することができる。ここで、前記有機‐無機ハイブリッド組成物の硬化後有機‐無機ハイブリッド組成物と前記ガラスクロスとの屈折率差が0.01以下になるように前記有機‐無機ハイブリッド組成物の屈折率を調節する場合、透明複合フィルムを製造できる透明複合フィルムの製造方法を提供することができる(図1参照)。
【0074】
このように、前記有機‐無機ハイブリッド組成物の硬化後、有機‐無機ハイブリッド組成物と前記ガラスクロスとの屈折率差が0.01以下になるように前記有機‐無機ハイブリッド組成物の屈折率を調節する場合には、透明複合フィルムの製造方法を提供することができ、屈折率を調節しない場合には、複合フィルムの製造方法を提供することができる。
【0075】
前記ジフェニルシランジオールと前記アルコキシシランのうちのいずれか1つは前記ガラスクロスより大きい屈折率を有し;他の1つは前記ガラスクロスより小さい屈折率または前記ガラスクロスと同等な屈折率を有してもよい。
【0076】
ここで、一例として、1.51の屈折率を有するガラスクロスを用いる場合、有機‐無機ハイブリッド組成物は、前記ガラスクロスの屈折率より大きい1.513の屈折率を有するジフェニルシランジオール、および前記ガラスクロスの屈折率より小さいか同等な1.38〜1.51の屈折率を有するアルコキシシランを含むことができる。このような有機‐無機ハイブリッド組成物を硬化させた後に屈折率を測定すれば、前記ガラスクロスとの屈折率差が0.01以下である。好ましくは0.005以下である。これにより、透明複合フィルムを製造することができる。
【0077】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物は、ポリマーおよび/または金属アルコキシドをさらに含むことができる。
【0078】
前記ポリマーとしては熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、より好ましくは可視光線を透過できる透明熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0079】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−ノルボルネン共重合体、エチレン−DMON共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、およびアイオノマー樹脂からなる群から選択されたポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレートからなる群から選択されたポリエステル;ナイロン−6、またはナイロン−6,6;メタキシレンジアミン−アジピン酸縮重合体;アミド系樹脂;アクリル樹脂;ポリスチレンまたはスチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、およびポリアクリロニトリルからなる群から選択されたスチレン−アクリロニトリル系樹脂;三酢酸セルロースおよび二酢酸セルロースからなる群から選択された疎水化セルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、およびポリテトラフルオロエチレンからなる群から選択されたハロゲン含有樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、およびセルロース誘導体からなる群から選択された水素結合性樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリフェニレンオキシド;ポリメチレンオキシド;および液晶樹脂のうちから選択された1種以上であってもよい。ここで、前記アミド系樹脂としてはポリメチルメタクリルイミドを例として挙げられ、前記アクリル樹脂としてはポリメチルメタクリレートが例として挙げられる。
【0080】
また、前記ポリマーとして用いることのできる樹脂は耐熱性に優れることが好ましく、例えば、ガラス転移点(Tg)が、120℃以上300℃以下、より好ましくは、150℃以上300℃以下、さらに好ましくは、180℃以上300℃以下の樹脂であってもよい。
【0081】
前記熱可塑性樹脂のうちの耐熱性に優れた樹脂としては、例えば、エチレン−ノルボルネン共重合体、エチレン−DMON共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、三酢酸セルロース、二酢酸セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、および液晶樹脂のうちから選択された1種以上の樹脂であってもよい。すなわち、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物が前記ポリマーをさらに含む場合、有機‐無機ハイブリッド組成物は、前記ジフェニルシランジオール100重量部に対し、前記アルコキシシラン10〜100重量部および前記ポリマー0超過100重量部以下を含むことができる。
【0083】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物が前記ジフェニルシランジオール、前記アルコキシシラン、および前記ポリマーを含む場合、3成分のうちのいずれか1つは前記ガラスクロスより大きい屈折率を有し;他の1つは前記ガラスクロスより小さい屈折率または前記ガラスクロスと同等な屈折率を有し;残りの1つは前記ガラスクロスより小さい屈折率または前記ガラスクロスと同等な屈折率または前記ガラスクロスより大きい屈折率を有してもよい。このような有機‐無機ハイブリッド組成物を硬化させた後に屈折率を測定すれば、前記ガラスクロスとの屈折率差が0.01以下である。好ましくは0.005以下である。これにより、透明複合フィルムを製造することができる。
【0084】
ここで、一例として、1.51の屈折率を有するガラスクロスを用いる場合、有機‐無機ハイブリッド組成物は、前記ガラスクロスの屈折率より大きい1.513の屈折率を有するジフェニルシランジオール、前記ガラスクロスの屈折率より小さいか同等な1.38〜1.51の屈折率を有するアルコキシシラン、および前記ガラスクロスの屈折率と同等であるか大きい1.51〜1.78の屈折率を有するポリマーを含むことができる。ここで、前記ポリマーの一例として1.586の屈折率を有するポリカーボネートを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0085】
前記金属アルコキシドは、チタニウムブトキシド、チタニウムプロポキシド、アルミニウムブトキシド、およびジルコニウムプロポキシドのうちから選択された1種以上であってもよい。
【0086】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物がポリマーおよび金属アルコキシドをさらに含む場合、前記有機‐無機ハイブリッド組成物は、前記ジフェニルシランジオール100重量部に対し、前記アルコキシシラン10〜100重量部、前記ポリマー0超過100重量部以下、および前記金属アルコキシド0超過100重量部以下を含むことができる。
【0087】
具体的には、前記ジフェニルシランジオール100重量部、前記ジフェニルシランジオール100重量部に対して前記アルコキシシラン10〜100重量部、および前記金属アルコキシド0超過100重量部以下を混合し、前記ジフェニルシランジオール100重量部に対して蒸留水0超過100重量部以下を添加した後、25〜100℃の範囲内で10分〜24時間部分加水分解反応をさせた後、前記ジフェニルシランジオール100重量部に対して前記ポリマー0超過100重量部以下を添加して、前記有機‐無機ハイブリッド組成物を製造することができる。
【0088】
前記b)ステップにおいて、ゾル状態の低い粘度の安定した有機‐無機ハイブリッド組成物を製造するためには、0℃以上100℃以下、より好適には、0℃以上50℃以下、最適には、0℃以上25℃以下で反応させる。
【0089】
前記b)ステップにおいて、前記ゾル状態の有機‐無機ハイブリッド組成物の製造時、反応を25℃で徐々に進行させれば、有機‐無機ハイブリッド組成物の急激なゲル化を防止することができる。
【0090】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物がジフェニルシランジオール、アルコキシシラン、ポリマー、および金属アルコキシドを含む場合、4成分のうちのいずれか1つは前記ガラスクロスより大きい屈折率を有し;他の1つは前記ガラスクロスより小さい屈折率または前記ガラスクロスと同等の屈折率を有し;残りの2つは各々独立に前記ガラスクロスより小さい屈折率または前記ガラスクロスと同等の屈折率または前記ガラスクロスより大きい屈折率を有してもよい。
【0091】
このような有機‐無機ハイブリッド組成物を硬化させた後に屈折率を測定すれば、前記ガラスクロスとの屈折率差が0.01以下である。好ましくは0.005以下である。これにより、透明複合フィルムを製造することができる。
【0092】
ここで、一例として、1.51の屈折率を有するガラスクロスを用いる場合、有機‐無機ハイブリッド組成物は、前記ガラスクロスの屈折率より大きい1.513の屈折率を有するジフェニルシランジオール、前記ガラスクロスの屈折率より小さいか同等の1.38〜1.51の屈折率を有するアルコキシシラン、および前記ガラスクロスの屈折率と同等であるか大きい1.51〜1.78の屈折率を有するポリマー、および前記ガラスクロスの屈折率より大きい1.7〜2.7の屈折率を有する金属アルコキシドを含むことができる。ここで、前記ポリマーの一例として1.586の屈折率を有するポリカーボネートを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
前記c)ステップを少なくとも1回以上繰り返すことができる。すなわち、前記ガラスクロス(Glass cloth)を前記ゾル(sol)状態の有機‐無機ハイブリッド組成物に含浸させた後、これを硬化させる過程を1回遂行することもでき、含浸させた後に硬化させる過程を数回繰り返し遂行することもできる。このように低い粘度および短い硬化時間の有機‐無機ハイブリッド組成物にガラスクロスを含浸して硬化する方法を数回繰り返して、複合フィルムまたは透明複合フィルムを製造する連続工程が可能であるので生産性を向上させることができる。
【0094】
前記c)ステップにおいて、前記ガラスクロスとしては酸素雰囲気炉(furnace)において500〜700℃で10分〜60分間バーニング(burning)したものを用いることができる。このようにバーニングして用いる場合、ガラスクロスの表面に吸着される有機物を除去することによって含浸溶液とガラスクロス表面との密着性を高めることができる。
【0095】
前記c)ステップにおいては、前記ガラスクロスを前記ゾル(sol)状態の有機‐無機ハイブリッド組成物に含浸させた後、50〜300℃で5分〜2時間硬化させることができる。既存のエポキシあるいはポリマーを用いる場合には、硬化あるいは溶媒揮発のために長い工程時間が要求されるのに対し、有機‐無機ハイブリッド(organic−inorganic hybrid)の短い硬化反応によって複合フィルムまたは透明複合フィルムの生産性を向上させることができる。
【0096】
このように、本発明に係る前述した製造方法により、複合フィルムまたは透明複合フィルムを製造することができる。
【実施例】
【0097】
以下では添付図面および実施例を参照して本発明をより具体的に説明する。但し、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるものではない。
【0098】
実施例1
ジフェニルシランジオール(硬化前屈折率:1.513)100.0重量部、テトラエトキシシラン(硬化前屈折率:1.382)32.5重量部、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(硬化前屈折率:1.429)64.0重量部、アミノプロピルトリメトキシシラン(硬化前屈折率:1.424)0.5重量部、アルミニウムブトキシド(硬化前屈折率:1.439、硬化後屈折率:1.7)2.0重量部、ジルコニウムプロポキシド(硬化前屈折率:1.451、硬化後屈折率:2.2)1.0重量部を混合し、ここに蒸留水80.0重量部を添加して、25℃で24時間部分加水分解反応させることによって、ゾル(sol)状態の有機‐無機ハイブリッド組成物を製造し、ここにポリアリレート5重量部を混合し、ゾル状態の含浸用有機‐無機ハイブリッド組成物を製造した。
表面の有機物を除去するために、酸素雰囲気炉(furnace)において500℃で10分間バーニング(burning)したS−glassで製造されたガラスクロス(厚さ50μm、屈折率1.51)をゾル(sol)状態の含浸用有機‐無機ハイブリッド組成物に1次含浸(dipping)した後、常温で1分間残留溶媒を除去し、120℃のオーブン(oven)で5分間1次硬化した。
硬化後、2次含浸と硬化は1次含浸および硬化と同じ方法で進行させて透明複合フィルムを製造した。
【0099】
実施例2
ゾル(sol)状態の含浸用有機‐無機ハイブリッド組成物の製造時、アルミニウムブトキシド、ジルコニウムプロポキシドおよびポリアリレートを添加しないことを除いては、実施例1と同じ方法によって複合フィルムを製造した。
【0100】
実施例3
ジフェニルシランジオール(硬化前屈折率:1.513)100.0重量部、テトラエトキシシラン(硬化前屈折率:1.382)32.5重量部、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(硬化前屈折率:1.429)64.0重量部、アミノプロピルトリメトキシシラン(硬化前屈折率:1.424)0.5重量部、アルミニウムブトキシド(硬化前屈折率:1.439、硬化後屈折率:1.7)2.0重量部、ジルコニウムプロポキシド(硬化前屈折率:1.451、硬化後屈折率:2.2)1.0重量部、およびチタニウムブトキシド(硬化前屈折率:1.49、硬化後屈折率:2.7)30.0重量部を混合し、ここに蒸留水80.0重量部を添加して、25℃で24時間部分加水分解反応させることによって、ゾル(sol)状態の有機‐無機ハイブリッド組成物を製造し、ここにポリアリレート5重量部を混合し、ゾル状態の含浸用有機‐無機ハイブリッド組成物を製造した。
表面の有機物を除去するために、酸素雰囲気炉(furnace)において500℃/10分間バーニング(burning)したE−glassで製造されたガラスクロス(厚さ50μm、屈折率1.56)をゾル状態の含浸用有機‐無機ハイブリッド組成物に1次含浸(dipping)した後、常温で1分間残留溶媒を除去し、120℃のオーブン(oven)で5分間1次硬化した。
硬化後、2次含浸と硬化は1次含浸および硬化と同じ方法で進行させて透明複合フィルムを製造した。
【0101】
実施例4
ゾル状態の含浸用有機‐無機ハイブリッド組成物の製造時、アルミニウムブトキシド、ジルコニウムプロポキシド、チタニウムブトキシド、およびポリアリレートを添加せず、E−glassの代わりにS−glassを用いたことを除いては、実施例3と同じ方法によって透明複合フィルムを製造した。
【0102】
比較例1
エポキシ化合物(商品名ERL−4221、Dow Chemical)100重量部、硬化剤である無水物(ANHYDRIDE)(MH700G、New Japan Chemical)134重量部、トリフェニルホスホニウムブロマイド(triphenylphosphonium bromide)2重量部、およびメチルエチルケトン(methylethylketone)150重量部を混合し、製造された含浸溶液にS−glassで製造されたガラスクロス(厚さ50μm、屈折率1.56)を含浸し、100℃で2時間、120℃で2時間、150℃で2時間、200℃で2時間、および240℃で2時間順次硬化して複合フィルムを製造した。
【0103】
比較例2
ジフェニルシランジオールを用いないことを除いては、実施例1と同じ方法によって複合フィルムを製造した。
【0104】
実験例
実施例1〜4による複合フィルムおよび比較例1〜2による複合フィルムの厚さを走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)で測定し、線膨脹係数、ガラス転移温度を測定し、クラックテストをし、その結果を表1および図2〜3に示す。また、屈折率および光透過度も測定した。
【0105】
ここで、表1のガラスクロスの屈折率は、ガラスクロスを実施例1〜4および比較例2の含浸用有機‐無機ハイブリッド組成物および比較例1の含浸溶液に各々含浸させる前に測定したものであり、本来のガラスクロスが有する固有の屈折率である。
【0106】
また、表1において、硬化後組成物の屈折率は、実施例1〜4および比較例2で製造された含浸用有機‐無機ハイブリッド組成物および比較例1で製造された含浸溶液にガラスクロスを含浸させることなく、実施例1〜4および比較例2で製造された含浸用有機‐無機ハイブリッド組成物だけを硬化させた後、また、比較例1で製造された含浸溶液だけを硬化させた後、それぞれの硬化物の屈折率を測定したものである。すなわち、表1の硬化後組成物の屈折率は、ガラスクロスを含まずに硬化した実施例1〜4および比較例2の組成物だけの屈折率およびガラスクロスを含まずに硬化した比較例1の含浸溶液だけの屈折率である。
【0107】
また、表1の光透過度は、ガラスクロスを実施例1〜4および比較例2による含浸用有機‐無機ハイブリッド組成物および比較例1の含浸溶液に各々含浸および硬化させて製造したそれぞれのフィルムの光透過度を測定した値である。
【0108】
測定条件は各々下記の通りである。
1)線膨脹係数:ASTM D696に基づき、熱機械分析器(TMA;Thermomechnical Analysis)で5gfの応力下で分当たり10℃昇温しながら測定し、鉛筆硬度は200gの荷重下でASTM D3363の方法で測定する。
2)ガラス転移温度(Tg):熱機械分析器(DSC;Differential Scanning Calorimeter;TA Instrument社、DSC2010)で分当たり10℃昇温しながら測定する。
3)屈折率:光学特性分析器(ATAGO、DR−M4)で589nmにおける屈折率を測定する。
4)光透過度:ASTM D1003に基づき、各々Varian社のUV−分光計を使用し、可視光線領域である380〜780nmの範囲で測定する。
5)クラックテスト(Crack test):フィルムを直径が1cmである円筒に密着するように巻いた後にクラックの発生程度を確認する。
【0109】
【表1】

【0110】
本発明に係る実施例1〜4の場合、複合フィルムの厚さは各々55、59、55、および60μm、線膨脹係数は各々17、18、17、および18ppm/K、ガラス転移温度は各々230、221、230、および220℃であるため、本発明の実施例1〜4による複合フィルムが表示装置用基板として用いられる場合、表示装置用基板としての主な要求物性に好適な厚さ、線膨脹係数およびガラス転移温度を有することを確認することができる。
【0111】
また、クラックの生成程度を観察するために曲げテストを実施した結果、図2の写真および表1から、比較例1〜2による複合フィルムの場合には、クラックが発生したが、実施例1〜4による複合フィルムの場合には、ガラスクロスと有機‐無機ハイブリッド組成物の界面接着力に優れるため、ガラス繊維の間に界面クラックが発生しないことを確認することができた。
【0112】
また、図2の写真から、比較例1による複合フィルムの場合には、気泡が生成したが、実施例1による複合フィルムの場合には、ガラスクロスと有機‐無機ハイブリッド組成物の界面接着力に優れるため、気泡が生成しないことを確認することができた。
【0113】
また、実施例2の場合には、高い透明度を要求しない複合フィルムを提供するために屈折率を調節しなかったが、透明複合フィルムを提供するためにガラスクロスの屈折率を基準に屈折率を調節した実施例1、3および4の場合には、光透過度(%)が高いため、高い透明度が求められる透明複合フィルムを提供できることを表1および図3の写真から確認することができる。
【0114】
具体的に説明すれば、実施例1、3および4は、用いるガラスクロスの屈折率を基準にして、有機‐無機ハイブリッド組成物の硬化後の有機‐無機ハイブリッド組成物と前記ガラスクロスとの屈折率差が0.01以下になるように前記有機‐無機ハイブリッド組成物の屈折率を調節したケースであり、実施例2は、屈折率差が0.01を超過するケースである。
【0115】
表1および図3の写真から、屈折率を調節しない実施例2の場合には、光透過度が23%であって、高い透明度が求められない複合フィルムとして使用可能であり、S−glassの屈折率である1.51に合わせて屈折率を調節した実施例1および4の場合と、E−glassの屈折率である1.56に合わせて屈折率を調節した実施例3の場合には、光透過度が各々85%、81%および82%であって、透明度に優れるため、優れる透明度を提供する透明複合フィルムとして使用可能であることを確認することができる。
【0116】
このように、本発明によれば、ジフェニルシランジオールを含み、低い粘度および高い反応性の有機‐無機ハイブリッド(organic−inorganic hybrid)から製造された組成物とタイト(緊密)に織られたガラスクロス(glass cloth)を用いて複合フィルムを製造することにより、気泡およびクラックのない複合フィルムを提供することができる。
【0117】
また、本発明に係る複合フィルムは、ガラスクロス(glass cloth)の基本的な特性である低い線膨脹係数(CTE)、低い熱変形性、高い耐熱性、および高い柔軟性などの物性を維持すると同時に架橋された有機‐無機ハイブリッド(organic−inorganic hybrid)の構造を有することにより、本発明に係る複合フィルムはガラス転移温度(Tg)に拘らずに高温にも用いることができる。
【0118】
また、本発明によれば、硬化後の有機‐無機ハイブリッド組成物の屈折率とガラスクロスの屈折率との差が0.01以下になるように、ガラスクロスの屈折率を基準に有機‐無機ハイブリッド組成物の屈折率を調節して製造する場合、透明基板として使用可能な透明複合フィルムを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスクロス(Glass cloth);および
ジフェニルシランジオールおよびアルコキシシランを含む有機‐無機ハイブリッド組成物を含む複合材料。
【請求項2】
前記ガラスクロスの厚さは10〜200μmである、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物は、硬化後、前記ガラスクロスとの屈折率差が0.01以下である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項4】
前記ジフェニルシランジオールと前記アルコキシシランのうちのいずれか1つは前記ガラスクロスより大きい屈折率を有し;他の1つは前記ガラスクロスより小さい屈折率または前記ガラスクロスと同等の屈折率を有する、請求項3に記載の複合材料。
【請求項5】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物はポリマーをさらに含み、
前記ジフェニルシランジオール、前記アルコキシシランおよび前記ポリマーのうちのいずれか1つは前記ガラスクロスより大きい屈折率を有し;他の1つは前記ガラスクロスより小さい屈折率または前記ガラスクロスと同等の屈折率を有する、請求項3に記載の複合材料。
【請求項6】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物はポリマーおよび金属アルコキシドをさらに含み、
前記ジフェニルシランジオール、前記アルコキシシラン、前記ポリマーおよび前記金属アルコキシドのうちのいずれか1つは前記ガラスクロスより大きい屈折率を有し;他の1つは前記ガラスクロスより小さい屈折率または前記ガラスクロスと同等の屈折率を有する、請求項3に記載の複合材料。
【請求項7】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物は、前記ジフェニルシランジオール100重量部に対し、前記アルコキシシラン10〜100重量部を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項8】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物はポリマーをさらに含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項9】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物は、前記ジフェニルシランジオール100重量部に対し、前記アルコキシシラン10〜100重量部および前記ポリマー0超過100重量部以下を含む、請求項8に記載の複合材料。
【請求項10】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物は金属アルコキシドをさらに含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項11】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物はポリマーをさらに含み、
前記有機‐無機ハイブリッド組成物は、前記ジフェニルシランジオール100重量部に対し、前記アルコキシシラン10〜100重量部、前記ポリマー0超過100重量部以下、および前記金属アルコキシド0超過100重量部以下を含む、請求項10に記載の複合材料。
【請求項12】
ガラスクロス(Glass cloth);および
ジフェニルシランジオールおよびアルコキシシランを含む有機‐無機ハイブリッド組成物を含む複合フィルム。
【請求項13】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物は、硬化後、前記ガラスクロスとの屈折率差が0.01以下である、請求項12に記載の複合フィルム。
【請求項14】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物はポリマーと金属アルコキシドのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項12または13に記載の複合フィルム。
【請求項15】
請求項14に記載の複合フィルムを含む電子装置。
【請求項16】
a)ガラスクロス(Glass cloth)を準備するステップ;
b)ジフェニルシランジオールおよびアルコキシシランを含むゾル(sol)状態の有機‐無機ハイブリッド組成物を製造するステップ;および
c)前記ガラスクロスを前記ゾル(sol)状態の有機‐無機ハイブリッド組成物に含浸および硬化させるステップ
を含む複合フィルムの製造方法。
【請求項17】
前記a)ステップにおいて、前記ガラスクロスの厚さは10〜200μmである、請求項16に記載の複合フィルムの製造方法。
【請求項18】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物は、硬化後、前記ガラスクロスとの屈折率差が0.01以下である、請求項16に記載の複合フィルムの製造方法。
【請求項19】
前記ジフェニルシランジオールと前記アルコキシシランのうちのいずれか1つは前記ガラスクロスより大きい屈折率を有し;他の1つは前記ガラスクロスより小さい屈折率または前記ガラスクロスと同等の屈折率を有する、請求項18に記載の複合フィルムの製造方法。
【請求項20】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物はポリマーをさらに含み、
前記ジフェニルシランジオール、前記アルコキシシランおよび前記ポリマーのうちのいずれか1つは前記ガラスクロスより大きい屈折率を有し;他の1つは前記ガラスクロスより小さい屈折率または前記ガラスクロスと同等の屈折率を有する、請求項18に記載の複合フィルムの製造方法。
【請求項21】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物はポリマーおよび金属アルコキシドをさらに含み、
前記ジフェニルシランジオール、前記アルコキシシラン、前記ポリマーおよび前記金属アルコキシドのうちのいずれか1つは前記ガラスクロスより大きい屈折率を有し;他の1つは前記ガラスクロスより小さい屈折率または前記ガラスクロスと同等の屈折率を有する、請求項18に記載の複合フィルムの製造方法。
【請求項22】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物は、前記ジフェニルシランジオール100重量部に対し、前記アルコキシシラン10〜100重量部を含む、請求項16に記載の複合フィルムの製造方法。
【請求項23】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物はポリマーをさらに含む、請求項16に記載の複合フィルムの製造方法。
【請求項24】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物は、前記ジフェニルシランジオール100重量部に対し、前記アルコキシシラン10〜100重量部および前記ポリマー0超過100重量部以下を含む、請求項23に記載の複合フィルムの製造方法。
【請求項25】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物は金属アルコキシドをさらに含む、請求項16に記載の複合フィルムの製造方法。
【請求項26】
前記有機‐無機ハイブリッド組成物はポリマーをさらに含み、
前記有機‐無機ハイブリッド組成物は、前記ジフェニルシランジオール100重量部に対し、前記アルコキシシラン10〜100重量部、前記ポリマー0超過100重量部以下、および前記金属アルコキシド0超過100重量部以下を含む、請求項25に記載の複合フィルムの製造方法。
【請求項27】
前記c)ステップを1回以上繰り返す、請求項16に記載の複合フィルムの製造方法。
【請求項28】
前記c)ステップにおいて、前記ガラスクロスとしては、酸素雰囲気炉(furnace)において500〜700℃で10分〜60分間バーニング(burning)したものを用いる、請求項16に記載の複合フィルムの製造方法。
【請求項29】
前記c)ステップにおいては、前記ガラスクロスを前記ゾル(sol)状態の有機‐無機ハイブリッド組成物に含浸させた後、50〜300℃で5分〜2時間硬化させる、請求項16に記載の複合フィルムの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2011−500915(P2011−500915A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529880(P2010−529880)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006173
【国際公開番号】WO2009/051453
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】