説明

複合材料の接続ロッドを製造する方法

本発明は、繊維プリフォーム(2)を使用する複合材料接続ロッドを製造する方法であって、繊維プリフォームが連結部によって共に接続された繊維の複数の主層を具備し、連結部により層がプリフォームを形作るときに互いに対して摺動することができ、プリフォームが接続ロッドの本体を形成する中央部(8)を具備し、かつ2つの対向する側縁部(6,7)と接続ロッドのヨークを形成する延長部(9)とを具備し、中央部において開放輪郭を有する繊維プリフォームを提供するために対向する側縁部同士が距離を保ちつつ、中空形状を有するプリフォームを提供するために繊維プリフォームを形作る段階を含み、次いで、樹脂を注入し、かつこの樹脂を重合させるように続く方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料のロッドを製造する方法と、この方法を用いることによって得られるロッドとに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は航空機の分野の有利な用途を確認し、具体的には、結果としてもたらされるロッドを着陸装置に組み込むことができる。
【0003】
それにもかかわらず、ロッドがこのような用途を特に対象としているものの、他の分野において、特に重量に対して大きな比率の強度を有するロッドを必要とする分野において、このロッドを使用することもできる。
【0004】
一般的に、中空本体を有する複合ロッドは、心棒の周りにフィラメントを巻くことによって、又は織られた繊維の層を巻くことによって得られる。複合ロッドがこのように作成されると、ロッドの本体の厚さは、糸又は層の巻き数によって得られる。このタイプの実施形態では、ロッドのために作成されることができる様々な輪郭は限定されており、具体的にはロッドの断面が閉じられている必要がある。
【0005】
本願出願人によって出願された特許文献1は特に、航空機の分野で使用するための、複合材料のロッドを製造する第2の方法を開示する。このロッドを作成するために、2つの対向する側部を有するパターンが使用され、このパターンは、形作る際に主層が互いに対して摺動できるように、重ね合わせられかつ共に結合された複数の主層で構成された複合繊維布帛から切断される。特許文献1に記載されている方法は、非常に強力に連結するために、面取りした側部が覆われる段階を含む。
【0006】
こうした製造の第2の方法では、ロッドの圧縮強度及び座屈強度が特に閉鎖断面であるという理由で得られ、閉鎖断面により重量を支持することができる。
【0007】
この製造方法は、満足できるものであるものの、対向する側部を共に位置決めしかつ互いに結合することを必要とするという点で複雑である。この方法で作成されることのできる様々なロッドの輪郭は、上述の第1の方法と同様に限定されている。
【0008】
複合ロッドを製造する第3の方法はまた、特許文献2に記載されていて公知である。この方法では、2つの殻状体が、共に組み付けられるときに、ロッドの本体を形成する働きをし、それにより機械的な牽引強度及び圧縮強度を有するロッドを提供する閉鎖横断面を創造する。各殻状体は、粗糸(meches)、一方向のシート又はさらに言えば織られたシートなどの、様々な形で予備含浸繊維を堆積することによって作成される。2つの殻状体を共に組み付ける複雑な作用を、具体的には、接着することによって又は機械的な締結具を使用することによって行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】仏国特許発明第2893683号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/000925号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、以前の方法と比較して簡易化された、複合ロッドを製造する方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明は、複合材料のロッドを繊維プリフォームから製造する方法であって、
繊維プリフォームが連結部によって共に接続された一定数の主繊維層を具備し、
連結部により、プリフォームを形作りつつ、層を互いに対して摺動させることができ、
プリフォームが、ロッドの本体を構成する中央部と、ロッドの柄部を形成する延長部と共に2つの対向する側部とを含み、
この方法は、繊維プリフォームに対して開放輪郭をその中央部に付与するように、2つの対向する側部が距離を保ちつつ、繊維プリフォームを形作る段階を含み、
続いて、樹脂を注入し、かつ繊維プリフォームを重合させる、
方法を提供することにある。
【0012】
したがって、本発明の方法は、本体が側部を共に組み付ける段階を省くことができる開放断面を有するロッドを製造することができ、その結果、ロッドの製造を著しく簡易化する。特許文献2に記載されている方法とは違って、この方法によるロッドは本質的に、樹脂が注入された後に完成し、ロッドの本体は、ロッドに開放断面の第2の殻状体を付設する必要が全くなく、開放状態を維持する。当然に、柄部を形成するために、プリフォームの端部を機械加工する必要が未だにある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る、複合ロッドの実施形態の斜視図。
【図2】図1に示されたロッドを得るのに適切である、平坦に広げられた繊維プリフォームの実施形態の線図。
【図3】ロッドの本体を通過するロッドの断面図。
【図4】ピンが取り付けられたロッド1の平面図。
【図5】サイドブレース(la contrefiche)が本発明のロッドを含む着陸装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
制限しない例による添付の図面を参照して与えられる詳細な実施形態である以下の記載を理解することで、より良好に本発明を理解することができる。
【0015】
図1は、図2に示されているようなプリフォーム2から得られる、本発明の複合ロッド1を示す。複合ロッド1は、有利には、図5に示されるように、着陸装置の要素として、例えばサイドブレースアームとして使用される。
【0016】
複合ロッド1は、フォーク4が各端部に位置して、開放断面又は「通路」断面から構成される主区域を有する本体3を具備する。各フォーク4は2つの柄部5を具備し、これらの柄部は、互いに対面し、図4に示されるように他の構造要素と接続するためのピンを受け取る働きをする。
【0017】
本発明によれば、ロッド1は以下のように製造される。繊維プリフォーム2は最初に、布帛から、好ましくは3方向に織られた繊維の布帛から切断される。繊維プリフォーム2の布帛を製造する1つの技術は、本発明の技術背景を示す特許文献1に記載されている。その文献に記載されている繊維プリフォーム2(又はパターン)を製造する技術を本発明に即して使用することができ、この文献の内容を本出願の一部を形成するものとして考慮すべきである。好ましくは、繊維布帛はよこ糸繊維(fibres de trame)から構成される複数の主層を具備する。よこ糸繊維は、これらの主層を結合させるために、1つの主層から他の主層に延びる被覆繊維(fibres de chaine)によって共に接続される。このように主層を結合することにより、主層を互いに対して固定することができる一方で、繊維プリフォーム2を形作りつつ、さらに具体的には繊維プリフォーム2を湾曲させつつ、主層同士の間で相対的に摺動することができる。プリフォーム2は、好ましくは、よこ糸が繊維プリフォームの対称平面S内で延びるように、布帛から切断される。繊維プリフォーム2は中央部8を含み、中央部は、2つの対向する側部6,7を有する本体3と、柄部を形成する4つの延長部9を構成するものである。
【0018】
その後、プリフォームは、繊維プリフォーム2の2つの対向する側部6,7を互いに距離を保ちつつ互いに向けて折ることによって、中央部8に中空の形状を付与するように形作られる。中央部には、有利には、図3に示されるようにC字形状の通路断面を有する主区域が付与され、好ましくは、心棒の周りに繊維プリフォーム2を被覆することによって形作られる。例えばU字形状又はV字形状の通路を有する、他のタイプの開放断面部材の場合では、ロッドを形成するために、繊維プリフォーム2を折っても、被覆しても、又は湾曲させてもよい。その結果、ロッドの本体は、側部6,7が互いに距離を保つ、開放断面の様々な形状を有することができる。
【0019】
次いで、延長部9は、平行な平面において対になっており、互いに対面するように延び、当然にロッドの柄部を形成する働きをする。
【0020】
次いで、本方法は樹脂注入段階を含む。この段階は、有利には、樹脂を繊維プリフォーム2の繊維に含浸させる樹脂移送成形(Resin transfer molding:RTM)という既知の方法を使用して行われる。
【0021】
このために、プリフォームは、心棒上で形作られつつ、有利には、閉じているRTM法によって樹脂で満たされたモールドに配置される。次いで、組立体は、樹脂を重合させるために加熱される。変形例では、樹脂注入法を使用することも同様に可能である。
【0022】
以上により、固体の中空形状が得られ、これは、図1に示されているようなロッドの柄部を形成するために唯一、機械加工(輪郭削り及び穿孔)される必要のある延長部によって終端する開放断面の中央本体を有する。この作用は、柄部の孔に挿入体を配置することによって終結する。
【0023】
したがって、本発明の方法は、プリフォームの側部を共に組み付ける段階を排除することができる。1又は複数の他の追加的な殻状体を、中空形状に組み付けるために作成する必要がない。
【0024】
さらに、開放断面ロッドのねじり剛性は閉鎖断面のロッドよりも低く、これにより、有利には、このようなロッドをサイドブレースアームとして使用することができる。対応する翼又は機体構造と一体となっている着陸装置の脚部を著しく変形させることが可能であり、このようなロッドのねじり方向の柔軟性は、このような変形を調整することを容易にする。
【0025】
当然に、開放断面の細長い本体の圧縮強度は、同様の壁厚さ及び直径の場合では、閉鎖断面の細長い本体の圧縮強度よりも低い。したがって、結果としてもたらされるロッドが所望の圧縮強度を有することを確保するように、構造を適切に構成することが適当である。
【0026】
具体的には、力がロッドに導入される平面、すなわち図4から理解できる、柄部5の中央軸線Xを含む平面P2は、本体の主区域の断面の重心を通過する平行な平面P3のできるだけ近くを延び、好ましくは図4に示すように平面P3とロッドの本体の底部との間で延びることを確保すると有利である。平面P2と平面P3とが一致すると理想的である。
【0027】
さらに、ロッドの側部の局所的な座屈強度を上げるために、側部6,7を固くすると有利である。
【0028】
この目的を達成するために、具体的な実施形態では、少なくとも繊維プリフォーム2の対称平面Sの方向に異なる厚さの繊維プリフォームが使用される。
【0029】
図3により理解できるように、側部6,7は、プリフォーム2の対称平面に近いプリフォームの部分よりも厚い。
【0030】
複数のやり方によってこのような異なる厚さを得ることができる。第1に、こうした厚さの違いを製織によって得ることができる。さらに、プリフォーム2を、側部に対して所望する厚さに対応する厚さを有する厚い布帛から切断して、次いで、対称平面に向かって側部から、例えば、研磨することによって、又は取り除かれるべき部分の繊維を切断することによって、プリフォームを薄くすることができる。第2の技術では、ロッド本体の最も薄い部分に対応する厚さの布帛からプリフォームを切断し、布帛の主層同士の間に中間繊維層を挿入することによって側部が厚くなるようにする。このような強化技術は、延長部をプリフォームから強化することに関する特許文献1に記載されている。しかしながら、このような強化技術は、有利には、プリフォームの中央部の側部を厚くするのに使用することができる。
【0031】
側部6,7に関して、図3に示されている特殊な形状が、布帛の層が互いに対して摺動すると共に側部に示されているように面取りされた形状を付与する湾曲作用により直接にもたらされることが認識されるべきである。好ましくは、プリフォームが重合された後に、側部の内向き角6’,7’は機械加工によって取り除かれる(取り除かれた部分が点線によって示されている。)。
【0032】
例えば側部が取り除かれた端部又は縁部を有するべく互いに対して平行な側部を折るように構成させることによって、側部6,7を強化するための他の手段を使用することができる。端部又は縁部は、組立体が重合されると、取り除かれたパネルの端部のように、側部を安定させることに貢献する。
【0033】
したがって、この製造方法は、図5に示されているように、結果としてもたらされたロッドを折ることのできる着陸装置のサイドブレースとして使用することができる、高い程度の機械的な強度を確保しつつ、非常に多様な開放輪郭形状、特にC字形状、U字形状、又はさらにはV字形状の通路断面を使用することができる簡易な方法を使用して、ロッドを作成することができる技術を含む先行技術と比較して、著しい利点を有する。
【0034】
以下の特許請求の範囲によって画定される発明の範囲を超えない範囲において、本発明の他の特徴を想定することもできる。
【0035】
具体的には、本発明は、側部を共に接続する作用を省くようにロッド本体の断面を開いたままにするように構成されているものの、それにもかかわらず、一方の側部から他方の側部に延びる、例えば2つの側部上に取り付けられてこれらに固定する平坦な固く薄い壁である、1又は複数の結合部を提供することによって、側部を安定させることができる。このような強化は、局所的に座屈する傾向を減少させるように側部を安定させる以外のあらゆる構造的な機能をもたない。特に、これらはロッドの牽引強度にほとんど又は全く貢献しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料のロッドを繊維プリフォーム(2)から製造する方法であって、
繊維プリフォームが連結部によって共に接続された一定数の主繊維層を具備し、
連結部により、プリフォームを形作りつつ、層を互いに対して摺動させることができ、
プリフォームが、ロッドの本体を構成する中央部(8)と、ロッドの柄部を形成する延長部(9)と共に2つの対向する側部(6,7)とを含み、
この方法は、繊維プリフォームに対して開放輪郭をその中央部に付与するように、2つの対向する側部が距離を保ちつつ、繊維プリフォームに中空形状を付与するように繊維プリフォームを形作る段階を含み、
続いて、樹脂を注入し、かつ繊維プリフォームを重合させる、
方法。
【請求項2】
繊維プリフォームが、樹脂を注入しかつ繊維プリフォームを重合させる前に、形作り心棒の周りに被覆される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
局所的な座屈強度を上げるために側部を固くする、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
固くすることが、プリフォームの対称平面に対して垂直方向に、プリフォームの中央から側部(6,7)に向かって増加する、異なる固さのプリフォームを使用することを含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
プリフォームは、加工されたロッドの柄部の軸を通過する力導入平面(P2)が、ロッドの本体の断面の重心を含む平行な平面(P3)の下を延びるように、又はこの平面と一致するように形作られる、
請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−526690(P2012−526690A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511264(P2012−511264)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056828
【国際公開番号】WO2010/133601
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(511154180)メシエ−ブガッティ−ドウティ (26)
【Fターム(参考)】