説明

複合樹脂におけるシンチレータを備えた放射線感受性検出器

放射線感応性検出器は、フォトセンサ素子122とフォトセンサ素子122に光結合したシンチレータ116とを含む。シンチレータ116は、粉末シンチレータと、この粉末シンチレータと混ぜ合わされる樹脂とを含む。粉末シンチレータと樹脂との屈折率不整合は、7%を下回る。1つの非限定の例において、複合シンチレータ材料は、慣例的な又はスペクトルのCTにおいて高解像度検出器として配される光ファイバリーフを形成するために用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広く、放射線感受性検出器に関する。これは、コンピュータ断層撮影(CT)システムに向けた特定の用途とともに説明されるが、他の医療用イメージング用途及び医療用以外のイメージング用途にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ断層撮影(CT)システムは、電離放射線のソースであって検査領域を横断する放射線について回転しこの放射線を放出するソースと、当該検査領域を横断する放射線を検出する放射線感受性検出器とを含む。このような検出器アレイは、ディクセル(dixel)[検出器要素]の複数の行及び列を備えた2次元放射線検知検出器アレイを含みうる。各ディクセルは、シンチレータ要素を含み、この要素は、x線の吸収により刺激された光を生成し、フォトセンサアレイの対応の要素に光学的に結合される。シンチレータ要素は、電離放射線を受け、これを示す光を生成し、フォトセンサは、当該光を受信し、これを示す電気信号を生成する。これら信号は、当該検査領域を示すボリューム画像データを発生するように復元される。このボリューム画像データは、当該検査領域を示す1つ又は複数の画像を発生するように処理されることができる。
【0003】
慣例的に、シンチレータは、シンチレータ粉末を焼結することによって、又は高い温度及び圧力での結晶化によって形成することができる。残念なことに、これらの処理は、繊細で高価であり、放射線感受性検出器のためにシンチレータ画素のアレイを形成するために冗長な構造化を必要とする脆いシンチレータを生成する。
【0004】
焼結及び結晶化を含まない技術を用いることもできる。例を挙げると、Pham Gia氏ら(2005年11月22日に出願された米国特許第7,265,357B2号)は、粉末ガドリニウム酸硫化物(GdS又はGOS)とパラフィンろうとの混合物を含むシンチレータを開示している。残念なことに、GOSは、約2.2の屈折率(n)を有し、パラフィンろうは、約1.4ないし1.6の屈折率を有する。したがって、これら2つの材料の屈折率不整合は、27%よりも大きく、粒子境界において比較的大なる散乱となり、もって光効率を低下させることになる。
【0005】
Pham Gia氏らは、ポリマが1.7より大きい屈折率を有する場合が好ましいものとなると開示している。このため、Pham Gia氏らは、ナノ粒子の二酸化チタン(TiO)を、0.5%から2.0%の間、パラフィンろうと混ぜ合わせ、ポリマの屈折率を上昇させるようにしている。パラフィンろうに2.0%のTiOを加えることは、ポリマの屈折率を増加させることができ、GOSとポリマとの屈折率不整合を減らしてその不整合を25%以下となるようにすることができる。しかしながら、このような不整合は、粒子境界において比較的大量の散乱を依然としてもたらす可能生があり、光効率を減少させることになる。付加的なTiOを加えることにより、散乱及びかすみを増加させる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の各態様は、上述した問題などに取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様によれば、放射線感受性検出器は、フォトセンサ素子と、このフォトセンサ素子に光学的に結合したシンチレータとを含む。シンチレータは、粉末シンチレータと、当該粉末シンチレータと混合した樹脂とを含む。当該粉末シンチレータと当該樹脂との屈折率不整合は、7パーセント(7%)を下回る。
【0008】
他の態様において、医療画像形成システムは、検査領域を横断する放射線を放出する放射線源と、当該検査領域を横断する放射線を検出する検出器アレイとを含む。この検出器アレイは、複数のフォトセンサ素子と、複数のフォトセンサ素子に光学的に結合したシンチレータとを含む。シンチレータは、粉末シンチレータと、この粉末シンチレータと混合した樹脂とを含む。粉末シンチレータと樹脂との屈折率不整合は、10パーセント(10%)を下回る。
【0009】
他の態様において、放射線感応性検出器は、整合屈折率の樹脂に埋め込まれたシンチレータ粉末を含む複合シンチレータ材料を持つ光ファイバリーフ形状を含む。このような実施例の1つにおいて、各光ファイバリーフは、高いスペクトル分解能で入射x線放射線を検出するよう入射x線放射線に直角に方向付けられている。第2の実施例において、当該各リーフは、高い空間解像度で入射x線放射線を検出するよう入射x線放射線に平行に位置づけられる。
【0010】
本発明のさらに他の態様は、以下の詳細な説明を読み理解することにより、通常の当業者によって把握されることとなる。
【0011】
本発明は、様々な構成部及び構成部の様々な構成の形態、並びに様々なステップ及びステップの様々な構成の形態をとることができる。図面は、専ら好適実施例を図示する目的のものであり、本発明を限定するものと解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】具体例の画像形成システムを示す図。
【図2】具体例のシンチレータ画素を示す図。
【図3】ディクセル光効率のグラフ。
【図4】具体例の方法を示す図。
【図5】具体例のシンチレータを示す図。
【図6】具体例のシンチレータ水を示す図。
【図7】高い空間解像度を有する結合されたフォトセンサのアレイと関連した具体例のシンチレータを示す図。
【図8】結合されたフォトセンサによる具体例のマルチレイヤスペクトルCTシンチレータを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照すると、コンピュータ断層撮影(CT)システム100は、長手のすなわちz軸106の周りの検査領域104について回転する回転ガントリ部102を含む。回転ガントリ部102は、検査領域104を横断する放射線を発生し放出するx線管などのx線源108を支持している。
【0014】
放射線感応性検出器アレイ110は、複数の投影角又はビューについて線源108により放出された放射線を検出し、少なくとも180度プラス扇角にわたり投影情報が得られるようにしている。検出器アレイ110は、検出された放射線を示す信号又は投影データを発生する。検出器アレイ110は、積分期間において、検出された放射線を示す電流又は電圧を積分する積分検出器、又は検出されたフォトンを2つ以上のエネルギ窓を通じてエネルギ分解する計数検出器とすることができることが分かる筈である。
【0015】
図示の検出器アレイ110は、フォトセンサ素子122の対応の行118及び列120に結合される複数の行112及び列114のシンチレータ画素116を含む。フィラー124は、少なくともシンチレータ画素116の間に存在する。1つの非限定的具体例において、検出器アレイ110は、16行の16個のディクセルを含み、これは、シンチレータ画素116と対応のフォトセンサ素子122とを含み、256個のディクセルを持つ検出器アレイ110をレンダリングする。ディクセルの他の数も考えられる。また、単一のシンチレータ画素を、複数のフォトセンサ素子と共に使うことができ、或いは、単一のフォトセンサ素子を複数のシンチレータ画素と共に使うことができる。
【0016】
放射線は、シンチレータ画素116に当たり、これら画素は当該放射線を示す光を発生し、この光はフォトセンサ122により受けられる。フォトセンサ122は、フォトダイオード、フォトエレメントなどを含みうるものであり、各々が、対応のシンチレータ画素116から受けた光を示す信号を生成する。図示の検出器アレイ110におけるシンチレータ画素116及びフォトセンサディクセル122の数、サイズ、形状、間隙などは、説明を目的として提示されており、限定するものではないことは分かる筈である。
【0017】
以下により詳しく説明するように、シンチレータ画素116は、粉末シンチレータ/樹脂混合物(当該粉末シンチレータ及び当該樹脂はほぼ整合された屈折率を有する)のような複合材料を含み、これにより、当該複合物は、より大なる屈折率不整合を持つ混合物に対して、相対的により高い光効率を有することになる。例えば、この屈折率不整合は、7パーセント(7%)未満の如き10パーセント(%)を下回るものとすることができ、当該光効率は、50パーセント(50%)を凌ぐものとすることができる。このような混合物は、当該粉末を焼結することなく又は結晶化による大きな結晶を形成することなく当該樹脂において当該粉末シンチレータを分散させることにより形成可能である。
【0018】
復元器126は、ボリューム画像データを発生するために検出器アレイ110により発生される投影データを復元する。ボリューム画像データは、検査領域104内の対象物を示している。
【0019】
コンピュータは、オペレータコンソール128として仕える。コンソール128は、モニタ又はディスプレイなどの人が判読可能な出力装置と、キーボードやマウスなどの入力装置とを含む。コンソールに常駐するソフトウェアにより、オペレータは、例えばグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を介して、スキャナ100を制御しこれと対話動作することができる。
【0020】
カウチのようなオブジェクト支持体130は、検査領域104において患者又は他のオブジェクトを支持する。オブジェクト支持体130は、スキャン処理を行いながら検査領域104に対して当該オブジェクトを案内するように移動可能である。
【0021】
図2は、一例のシンチレータ素子116を示している。図示のシンチレータ素子116は、約3ミリメートル(mm)の高さ「H」と、約1mmの幅「W」と、約1mmの長さ「L」を有する。図示のシンチレータ素子116は、粉末シンチレータと、エピ硫化物又はポリエピ硫化物のような樹脂との混合物を含む。この複合物は、適切なシンチレータの約70重量パーセントを含む。適切なシンチレータの例には、米国特許出願に係る文献のUS4,958,080に説明されているような単結晶LYSO(Lu1.8.2SiO:Ce)又はLSO(Ce2xLu2(1−x)SiO)がある。適切なエピ硫化物の例には、米国特許出願に係る文献のUS6,534,589において説明されるエピ硫化物がある。粉末シンチレータは、約1.81の屈折率(n)を有し、樹脂は、約1.71の屈折率を有する。それ故、当該屈折率不整合は、約5.5パーセント(5.5%)である。図示のシンチレータ素子116の光出力効率は、50パーセントよりも大きい。すなわち、当該粉末からのシンチレーションにより放出される光学的フォトンの50パーセント超が、当該フォトセンサによる集光のためのシンチレータ素子の基部から現れる。図3は、LYSO(n=1.81)及び樹脂の混合物を含むこの幾何学的構造のディクセルのための光出力効率を当該樹脂の屈折率の関数として示すグラフを示している。
【0022】
図4は、図示のシンチレータ素子116を形成するための一例の方法を示している。402において、適切な量の樹脂及び粉末シンチレータが得られる。一例において、これは、約2.5グラム(g)の樹脂と約1.5gのLYSO粉末を得ることを含む。次いで404において、樹脂及び粉末シンチレータが処理される。例を挙げると、粉末シンチレータ及び樹脂が脱ガス処理にかけられる。これは、300トルよりも低い圧力による真空状態で室温(摂氏約20度)で粉末シンチレータ及び樹脂の脱ガス処理を別々に行うことを含みうる。406では、脱ガス処理の約30分以上を過ぎた後、粉末シンチレータは樹脂に加えられる。1つの例では、粉末シンチレータは、真空状態で樹脂に加えられる。
【0023】
408において、粉末シンチレータ及び樹脂が混ぜ合わされる。1つの例において、粉末シンチレータ及び樹脂は、回転ボールミルを用いて、例えば一夜の間に、又はSynergy Devices Speedmixerなどの高速遠心性ミキサを数分間用いて、混合される。410において、かかる混合物が処理される。例を挙げると、この混合物は、米国特許出願に係る文献のUS6,531,532に説明されるように、300トル以上の真空状態で室温にて2時間にわたり脱ガス処理される。412において、当該混合物は、所望サイズのウェーハに対応するガラス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、他の合成フッ素重合体又は他の材料の鋳型に入れて鋳造される。414において、当該混合物は処理される。例えば、この混合物を、真空状態下で摂氏30度で約15分間加熱してもよい。
【0024】
そして416において、当該混合物は、摂氏90度で約48時間にわたり硬化させられる。418において、当該ウェーハは、シンチレータウェーハを形成するよう室温へと毎時摂氏20度のレートで冷却することによって焼鈍される。一例において、当該ウェーハは、概ね、幅18mm×長さ25mm×高さ3.5mmのものとすることができる。420において、このウェーハは、精細回転のこぎりなどを用いて適切なサイズのシンチレータ素子を形成するようダイスカットされる。例えば、1つの例においては、結果として得られる素子116は、図2に示されるように、概ね、3mm(H)×1mm(W)×1mm(L)とされる。他の例において、結果として得られるディクセルは、約1.5mm×1mm×1mmである。各ディクセルは、入射放射線の約98%を吸収することができる。他のサイズも想定される。シンチレータ素子どうしの間隙は、エポキシ樹脂にマイクロ粒子(0.3μ)二酸化チタン(TiO)を含む化合物のような反射性アンダーフィル化合物を用いて充填されるようにしてもよい。
【0025】
バリエーションにつき説明する。
【0026】
他の実施例において、限定はしないが、ステアリン酸、オレイン酸又は脂肪酸、アミンアミド類(aminamides)などを含む界面活性剤のような湿潤剤は、粉末シンチレータ/樹脂混合物に加えられることができ、これが、当該樹脂における粉末シンチレータの分散を補助することができる。
【0027】
また、LiAlH,NaBHのような還元剤は、シンチレータにおけるHO、HClなどの如き小分子の放射線誘発形成により生じうる着色を軽減するよう粉末シンチレータ/樹脂混合物に含まれるようにすることができる。
【0028】
上述した例において、粉末シンチレータは、LYSOを含有した。他の実施例において、Luは、スカンジウム(Sc)により部分的又は全体的に置換されうるものであり、密度の低いシンチレータ材料となることができる。1つの例において、結果として得られるシンチレータ材料は、LYSOに対して低い屈折率を有しうるものであり、集光効率を改善することができる。
【0029】
他の実施例においては、他のシンチレータ材料が想定される。例えば、以下の材料のうちの1つ又は複数を、付加的又は代替的に用いることができる。当該材料は、タリウムをドープしたヨウ化セシウム(CsI(Tl))(n=1.79)、タリウムをドープしたヨウ化ナトリウム(NaI(Tl))(n=1.85)、ナトリウムをドープしたヨウ化セシウム(CsI(Na))(n=1.84)、これ以外のアルカリハライド類、LSO、ガーネット(一般式:X(ZO)[Xは2価のものである]、全ての金属イオンが3価(〜1.7<n<〜1.9)であるところのZ及び4価の金属イオンすなわちX(ZO及び/又は他のシンチレータ材料である。CsI(Tl)は、吸湿性であり、これに伴いその単結晶形態において限定された使用のものとなるが、複合材料に組み入れられることができ、これにより当該樹脂がこれを封じ込め、これを大気水分による侵食に至ることのできないものとする。
【0030】
適切なガーネットの例には、限定はしないが、Ce3+又はPr3+がドープされたガーネットを含み、これらは、一般には、100ナノ秒(ns)よりも短い減衰時間を有するという点で高速エミッタとなる。例えば、YAl12:Ce,LuAl12:Ce,GdAl12:Ce,(Lu,Y,Gd)Al12:Ce,(Lu,Y,Gd)Ga12:Ce,(Lu,Y,Gd)(Al,Ga)12:Ce,CaScSi12:Ce,(Ca)(Sc,Al)Si12:Ce,Y(Sc,Al)12:Ce,Lu(Sc,Al)12:Ce,(Lu,Y)(Sc,Al)12:Ce,(Lu,Y)(Sc,Al,Ga)12:Ce,YAl12:Pr,LuAl12:Pr,(Lu,Y)Al12:Pr,及びNd+3又はEr3+がドープされたガーネット、である。
【0031】
他の適切な化合物には、LnI:Ce,LnBr:Ce,LnCl:Ce,LnSiO:Ce,LnSi:Ce,RbLnBr:Ce,MLnH:Ce(M=Li,Na,K,Cs,Rb及びH=F,Cl)のようなランタニド(Ln=Sc,Y,La,Gd,Lu)の化合物を含む。他の適切な化合物は、対応のPr+をドープした材料を含む。他の適切な化合物は、SrS:Ce又はCaS:Ceのような他の材料を含み、これは、付加的に、Al,SiOなどの薄い共形保護被覆、及びEu2+がドープされた同じホスト格子及びホスト格子被覆組み合わせにより被覆されることができる。他の適切な粉末シンチレータは、10ミクロン(μs)よりも短い放出減衰時間を持つ活性剤イオンを含む。適切な活性剤イオンには、限定はしないが、Ce3+,Nd3+,Pr3+,Eu2+,Er3+,Tlがある。また、粉末シンチレータは、薄い共形保護被覆を含むようにしてもよい。
【0032】
他の実施例において、他の樹脂が想定される。例えば、他の実施例において、樹脂は、米国特許出願に係る文献の6,534,589B1において説明されているものの如きエピ硫化物を含む。他の実施例において、樹脂は、米国特許出願に係る文献のUS6,891,017において説明されているEssilor社のエピ硫化物のようなエピ硫化物を含む。他の実施例において、樹脂は、米国特許出願に係る文献のUS7,274,024B2において説明されているものの如き添加物を持つエポキシを含む。他の実施例において、樹脂は、米国特許出願に係る文献のUS7,091,307B2において説明されているものの如き硫黄を有するポリマを含む。他の実施例において、樹脂は、米国特許出願公開第2006/0022356A17号において説明されているものの如きポリカルボジイミドを含む。
【0033】
図5は、上述したシンチレータ複合物などのシンチレータ複合物500が散乱線除去グリッド504を持つシンチレータアレイ502と関連して用いられる実施例を示している。散乱線除去グリッド504は、散乱線除去プレートを含み、これは、金属の比較的薄い部分から形成可能である。図示の例において、シンチレータ複合物500は、重合化の前にセパレータ508の間の隙間506の中へ入れられる。セパレータ508は、白い塗料又は他の反射性材料の薄い層のような反射材料で被覆されるようにしてもよい。このような層は、ディッピング工程により塗布されることができる。或いは、当該セパレータは、アルミニウム、銀又は他の光輝金属被覆によりメッキ処理されるようにしてもよい。
【0034】
図6は、上述したシンチレータ複合物のようなシンチレータ複合物が、「光輝光ファイバ」繊維、リーフ又はシート602を形成するために用いられる実施例を示している。この例において、シンチレータ複合物は、最初に鋳造され、圧延され又は押し出し成形されて、重合化の前に例えば100ミクロンの厚さの薄いシート602を形成するようにしている。シート602は、低い屈折率(例えば、n=1.4)の膜604により被覆されるようにすることができる。このような膜604は、2ミクロン未満の厚さとすることができる。この膜は、「蛍光光ファイバ」リーフ素子を提供するように、ディッピング、蒸着又はその他の技術によって塗布することができる。
【0035】
図7は、フォトダイオードアレイ704に結合されるシンチレータアレイ702に関連してシート602が用いられる実施例を示している。図示されるように、この例では、シート602は、フォトダイオード706の上方に位置づけられる。各々が約90ミクロンの厚さの10個の被覆シート602は、格子プレート708の間に位置づけられ、5つのシートのセットが対応のフォトダイオード706の上に位置合わせされる。このようなシンチレータ構成は、各々が0.5mm幅のフォトダイオードに光を伝送することができる。高精細CTスキャナのこの実施例において、フォトダイオード706の有効領域が十分に小さくされた場合、CTスキャナの解像度は、焦点サイズによってのみ限定される。代替えの実施例においては、ディジタル光子計数素子を代替的に用いることができる。この場合、オンチップスイッチを、高い計数レートで当該チャネルを分離するために用いることができる。
【0036】
図8は、スペクトルCT構成においてシート602が用いられる実施例を示している。図8において、x線は、図の上部から下に向かってx線が入射し、複数のシート602は互いに平行に、衝突放射線の方向に直角に位置合わせされている。この構成において、シート602は、光出力をフォトダイオードの各行に横に伝送し、これはアナログ又はディジタルとすることができる。より具体的には、入射放射線は、必要な停止パワーを得るために、各々が例えば100ミクロンの厚さで垂直方向に重なる約30個の複合シンチレータリーフ602の系列において吸収される。放出された蛍光光は、各々が100ミクロン以上の高さとなりうる、フォトダイオード802のアレイの感応性領域内へ横へ注ぎ込むよう「ファイバ」光学素子により強制される。
【0037】
スペクトルCTにおける使用のための図示の実施例において、フォトダイオード802は、個々の入射光子によりガイガーアバランシェ動作に起動される多画素光子計数アレイである。結果として得られる信号は、パルス計数回路804により処理され、読出電子回路806を通じて出力される。重なるデッキ構造は、各シンチレータと向かい合った多数のダイオードのために十分な領域を提供し、広いダイナミックレンジ(最大計数レート/最小計数レート)を提供する。一実施例において、各シンチレータシート602内の横方向の投影光路は、1mm以下であり、実質的な光損失を伴うことなく、当該粉末とプラスチックマトリクス樹脂との間の屈折率不整合の相当な程度を許容する。
【0038】
以上、本発明を、好適実施例を参照して説明した。これまでの詳細な説明を読み理解することにより、第三者には変形や変更が可能なものである。本発明は、添付の請求項の範囲又はその等価範囲内に入る限り、このような変形及び変更を全て含むものと解釈されるべきことを意図するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線感応性検出器であって、
フォトセンサ素子と、
前記フォトセンサ素子に光結合されたシンチレータと、
を有し、前記シンチレータは、
粉末シンチレータと、
前記粉末シンチレータと混合される樹脂であって、前記粉末シンチレータと当該樹脂との間の屈折率不整合が7%未満であるものとした樹脂と、
を有する、
検出器。
【請求項2】
請求項1に記載の検出器であって、前記粉末シンチレータは、LYSOを含む、検出器。
【請求項3】
請求項2に記載の検出器であって、前記樹脂は、約1.71の屈折率を有する、検出器。
【請求項4】
請求項2に記載の検出器であって、前記樹脂は、ポリエピ硫化物、硫化物系ポリマ又はポリカルボジイミドのうちの1つを含む、検出器。
【請求項5】
請求項2に記載の検出器であって、前記樹脂は、プラスチック母材を含む、検出器。
【請求項6】
請求項1に記載の検出器であって、前記粉末シンチレータは、CsI(Tl)、NaI(Tl)及びCsI(Na)からなるグループからの材料を含む、検出器。
【請求項7】
請求項1に記載の検出器であって、前記粉末シンチレータは、YAl12:Ce,LuAl12:Ce,GdAl12:Ce,(Lu,Y,Gd)Al12:Ce,(Lu,Y,Gd)Ga12:Ce,(Lu,Y,Gd)(Al,Ga)12:Ce,CaScSi12:Ce,(Ca)(Sc,Al)Si12:Ce,Y(Sc,Al)12:Ce,Lu(Sc,Al)12:Ce,(Lu,Y)(Sc,Al)12:Ce,(Lu,Y)(Sc,Al,Ga)12:Ce,YAl12:Pr,LuAl12:Pr及び(Lu,Y)Al12:Prからなるグループからの材料を含む、検出器。
【請求項8】
請求項1に記載の検出器であって、前記粉末シンチレータは、Nd3+がドープされたガーネット及びEr3+がドープされたガーネットからなるグループからの材料を含む、検出器。
【請求項9】
請求項1に記載の検出器であって、前記粉末シンチレータは、LnI:Ce,LnBr:Ce,LnCl:Ce,LnSiO:Ce,LnSi:Ce,RbLnBr:Ce,MLnH:Ce及び対応のPr3+がドープされた塩からなるグループからの材料を含む、検出器。
【請求項10】
請求項1に記載の検出器であって、前記粉末シンチレータは、SrS:Ce,Alが被覆されたSrS:Ce,SiOが被覆されたSrS:Ce,CaS:Ce,Alが被覆されたCaS:Ce及びSiOが被覆されたCaS:Ce並びに同じホスト格子及びEu2+がドープされたホスト格子組み合わせからなるグループからの材料を含む、検出器。
【請求項11】
請求項1に記載の検出器であって、前記シンチレータは、各シンチレータ画素が複数のフォトセンサ素子のうちの1つに対応する複数のシンチレータ画素を含む、検出器。
【請求項12】
請求項1に記載の検出器であって、コンピュータ断層撮影スキャナの一部である検出器。
【請求項13】
請求項1に記載の検出器であって、光子計数検出器。
【請求項14】
請求項1に記載の検出器であって、積分検出器。
【請求項15】
請求項1に記載の検出器であって、前記シンチレータは、入射放射線に平行に堆積された複合蛍光材料を含みフォトダイオードアレイへ下方に放出光を注ぎ込む複数の光ファイバリーフを含む、検出器。
【請求項16】
請求項1に記載の検出器であって、前記シンチレータは、入射放射線に直角に堆積された複合蛍光材料を含みフォトダイオードアレイへ横方向に放出光を注ぎ込む複数の光ファイバリーフを含む、検出器。
【請求項17】
医療画像形成システムであって、
検査領域を横断する放射線を放出する放射線源と、
前記検査領域を横断する放射線を検出する検出器アレイと、
を有し、前記検出器アレイは、
複数のフォトセンサ素子と、
前記複数のフォトセンサ素子に光結合したシンチレータと、
を含み、前記シンチレータは、
粉末シンチレータと、
前記粉末シンチレータと混ぜ合わされる樹脂であって、前記粉末シンチレータと当該樹脂との屈折率不整合が10%を下回るようにした樹脂と、
を含む、
システム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムであって、前記粉末シンチレータ及び前記樹脂の双方は、当該放出される放射線の波長において約1.7ないし約1.9の屈折率を有する、システム。
【請求項19】
請求項17に記載のシステムであって、前記粉末シンチレータは、10ナノ秒より短い発光減衰時間の活性剤イオンを含む、システム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムであって、前記活性剤イオンは、Ce3+,Nd3+,Pr3+,Eu2+,Er3+,Tlのうちの1つである、システム。
【請求項21】
請求項17に記載のシステムであって、前記粉末シンチレータは、薄い共形保護被覆を含む、システム。
【請求項22】
請求項21に記載のシステムであって、前記活性剤イオンは、Ce3+,Nd3+,Pr3+,Eu2+,Er3+,Tlのうちの1つである、システム。
【請求項23】
請求項17に記載のシステムであって、前記粉末シンチレータは、LYSOを含み、前記樹脂は、エピ硫化物、ポリカルボジイミド又は硫化物に基づくポリマのうちの少なくとも1つを含む、システム。
【請求項24】
請求項17に記載のシステムであって、前記シンチレータは、互いに平行にかつ当該入射放射線に直角に配される、複合蛍光材料を含む光ファイバリーフのアレイを含む、システム。
【請求項25】
請求項17に記載のシステムであって、前記粉末シンチレータは、LSOを含む、システム。
【請求項26】
請求項17に記載のシステムであって、前記屈折率不整合は、5.5%より小さい、システム。
【請求項27】
放射線感応性検出器であって、
屈折率を整合させる樹脂に埋め込まれたシンチレータ粉末を持つ複合シンチレータ材料を含む第1の光ファイバリーフを含み、前記第1の光ファイバリーフは、入射x線放射線に直角に方向づけられ当該入射x線放射線を検出する、
検出器。
【請求項28】
請求項27に記載の放射線感応性検出器であって、少なくとも第2の光ファイバリーフをさらに含み、前記第1及び第2の光ファイバリーフは、互いに平行に堆積される、検出器。
【請求項29】
請求項27に記載の放射線感応性検出器であって、前記第1の光ファイバリーフにおいて発せられた光は、フォトダイオードアレイの素子に向かって横方向に当該リーフを横断する、検出器。
【請求項30】
請求項27に記載の放射線感応性検出器であって、スペクトルCT検出器アレイの一部である検出器。
【請求項31】
放射線感応性検出器であって、整合屈折率の樹脂に埋め込まれたシンチレータ粉末を持つ複合シンチレータ材料を含む第1の光ファイバリーフを有し、前記第1の光ファイバリーフは、入射x線放射線に平行に方向づけられ当該入射x線放射線を検出する、検出器。
【請求項32】
請求項31に記載の放射線感応性検出器であって、少なくとも第2の光ファイバリーフをさらに含み、前記第1及び第2の光ファイバリーフは、互いに平行に堆積される、検出器。
【請求項33】
請求項31に記載の放射線感応性検出器であって、前記第1の光ファイバリーフにおいて発せられる光は、フォトダイオードアレイの素子に向かい横方向に前記第1の光ファイバリーフを横断する、検出器。
【請求項34】
請求項31に記載の放射線感応性検出器であって、高精細CT検出器アレイの一部である検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−508202(P2011−508202A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538995(P2010−538995)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/IB2008/055276
【国際公開番号】WO2009/083852
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】