説明

複合樹脂廃材の粉体化方法及び装置

【課題】増大する複合樹脂廃材のうち特に再資源化が困難な複合積層品の使用済み廃材を効率よく粉体化及び分離・分級を行うことにより、複合樹脂廃材の構成素材別の再資源化に寄与することを課題とする。
【解決手段】多数の切れ刃を外周側に持つ内筒と、内周側に持つ外筒とを適度な間隔を保持して嵌合させ、回転方向、回転数を個別に制御し、内筒及び外筒の回転により切削粉砕し、それぞれの構成成分に分離するとともに、各成分の粒径、形状、比重などの物質特性に応じて風力、篩、重力等の複数の手法の組合せにより分級することにより、該廃材の構成素材別の再資源化を実現する.

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業廃棄物として排出されるプラスチック系廃材再資源化において、特に再資源化が困難な複合樹脂廃材の微粉化と該廃材を構成する各成分の分離・分級により、該廃材から再資源化用原料を生産する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来手法の主として物理的打撃による「剪断破砕」や「衝撃破砕」あるいは「すりつぶし」手法による粉体化では、粗破砕から始まる何回かの工程を繰り返して破砕を行う方法が一般的であり、これらによると、処理プラントの大型化、使用エネルギーの増大、コストの上昇、不純物等の混入による品質の低下は免れない。とくに異種素材が複合している廃材は、微粉化と分離が不可能であるため、その殆どが焼却もしくは埋立処分に付されている。
【0003】
複合樹脂廃材には塩化ビニル系等、焼却に不適なものも多く含まれており、しかも炭酸カルシウムなど充填剤が50%以上もある廃材においては、熱カロリー的にも焼却は不向きである。
【0004】
近年、廃樹脂製品のマテリアルリサイクルの必要性が増大しており、これらの廃材の再資源化のためには、その用途に応じた粒径に粉体化されていること、さらに不純分が分離された粉体であることが要求されているため、任意の粒度に粉体化し、分離・分級する技術の確立は急務である。
【0005】
なお、発明者等は、特願2001−324200において「一軸型切削粉砕装置」の提言を行っており、すでに実用化しているが、本発明による切刃内蔵型二軸内外簡回転切削粉砕装置は、板状、シート状を主とする廃材だけでなく、塊状、極薄状例えば、廃壁紙の折り畳んだもの等も容易に微粉化することが可能であり粉体化の対象となる廃材の範囲をさらに拡大するものでもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、増大する複合樹脂廃材のうち特に再資源化が困難な塩ビ系内装廃材、塩ビ壁紙、レンタルゴムマット等の複合積層品の使用済み廃材を効率よく粉体化及び分離・分級を行うことにより、該廃材の構成素材別の再資源化に寄与することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、剪断、衝撃、すりつぶし等の粉砕の従来手法に対し、多数の切れ刃を外周側に持つ内筒と、内周側に持つ外筒とを適度な間隔を保持して嵌合させ、所定の粒度の粉体生産に適した回転方向、回転数を個別に制御し、内筒及び外筒の相対する刃間に供給された該廃材を内筒及び外筒の回転により切削粉砕する手法を用いて、複合樹脂廃材を所定の粒度に粉体化する。その後、該粉体品を反毛あるいは揉み解し機構を有する装置にて解砕し、それぞれの構成成分に分離するとともに、該成分の粒径、形状、比重などの物質特性に応じて風力、篩、重力等の複数の手法の組合せにより分級することにより、該廃材の構成素材別の再資源化を実現する.
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来は殆ど焼却あるいは埋立処分に付されていた複合樹脂廃材からそれぞれの構成成分の特性を生かした良質の再資源化用原料を生産することにより、循環型社会の形成に寄与することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を実施する最良の形態として、以下の実施例に示すように、内装複合樹脂廃材の粉体化及び分離・分級を行った例について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は本発明の実施形態の一例であり、産業廃棄物として排出される複合樹脂廃材の再資源化プロセス図である。使用済み廃材のうち図1の右半分に記載する塊状、不定形、極薄、軟質等の廃材の代表例の一つとして塩ビ壁紙の再資源化について説明する。
【0011】
塩ビ壁紙は、おおよそ次のような配合により生産されている。
高充填、高発泡のメカニカルエンボス壁紙の配合例(参考文献:五十嵐敏郎著「塩ビペースト加工−特徴と応用」(株)ラバーダイジェスト社刊)

上記ペーストを難燃性裏打ち紙にグラビア方式で印刷した後、加熱しながら発泡処理、エンボス処理などを行い壁紙を完成する。
【0012】
塩ビ壁紙は、前述のとおり、塩ビ印刷層と裏打ち紙が強固に固着されており、かつ充填剤としての炭酸カルシウム、二酸化チタンなど無機物が約117重量部、全体の40.2%を占めている。加えて、使用済みの塩ビ壁紙は、その殆どに接着材やモルタルなどが付着しており、しかも解体現場において折り畳まれ塊状になっているものが多い。廃棄物処理業界においては、処理困難物として敬遠されてきた。
【0013】
図2は、このような廃塩ビ壁紙の処理工程のプロセス図である。まず、前処理工程として細片化装置(後述)を用いて10ミリ角程度に細片化した後、冷却あるいは加湿・氷結等の工程を経て本発明による切刃内蔵型二軸内外筒回転切削粉砕装置に圧送、微粉化する。
【0014】
前述したとおり、解体現場等から回収される使用済み塩ビ壁紙は、塊状に折り畳まれており、あるいは引きちぎれているもの、裏面に接着材やモルタルなど付着物のあるものが多く、そのままでの装置投入は不可である。
【0015】
上記使用済み塩ビ壁紙は、公知の剪段式二軸破砕機により100ミリ角程度に粗破砕し、前処理工程用細片化装置に投入される。
【0016】
該前処理用細片化装置は、外周部に多数の切れ刃を有する内筒と内周部に固定刃を有する外筒を具備する内筒回転式一軸細片化装置であり、粗破砕後の廃塩ビ壁紙は、該装置に投入され、約500〜1000回転/分の速度で約10ミリ角に細片化される。
【0017】
本発明による切刃内蔵型二軸内外筒回転切削粉砕装置は、内筒回転速度3000〜6000回転/分と高速回転であることから、発熱及び融着による被加工物の刃物への付着を防止するため、該装置に冷却手段を設けるだけでなく前述の細片化された該廃材を冷却する必要がある。
【0018】
冷却の手法としては、ドライアイス、液化炭酸ガス、液化窒素ガス等を直接あるいは間接に用いる方法の他、加湿・氷結による方法もある。とくに、塩ビ壁紙、タイルカーペット、繊維付ゴムマット等のように吸湿性の高い素材や、弾性および柔軟性にとんだ素材においては、少量の水分で加湿・氷結し、硬化させておくことは、後述の粉体化工程の効率化につながる。
【0019】
廃塩ビ壁紙の見かけ比重は200kg/mで、氷結に必要な加湿水分を20kg/mとすると加湿後の廃塩ビ壁紙は1m当り220kgの重量となり、本発明における冷却装置が、時間当り5mの処理を行うためには、乾品廃材1000kg、加湿後1100kgとなり、冷却に必要なエネルギーは、水分量に比例する。
【0020】
例えば加湿水分量200kg/20℃を−20℃の氷にするのに必要な熱量は、空気等外部からの熱量20%程度加算したとしても、約15kw/hrとなり、連続的な冷却に適したダブルコンタクトベルトフリーザーやドラムフリーザーなど極めてコンパクトな冷却装置を用いることができる。(参考文献:「冷凍空調便覧新版第5版」社団法人日本冷凍協会刊)
【0021】
細片化された廃塩ビ壁紙を前記冷却装置により−20℃程度に冷却、氷結した該廃材は、本発明による切刃内蔵型二軸内外筒回転切削粉砕装置に投入される。
【0022】
図3は、前項切刃内蔵型二軸内外筒回転切削粉砕装置の概念図であり、図4は刃物部の概念図である。該装置において、内筒を時計回りに6000回転/分で高速回転させると、例えば直径200ミリの刃物部周速は226km/hrに達し、新幹線並みの高速切削を実現する。一方外筒は、内周側に有する切れ刃で被加工物を切削するだけでなく、反時計回りに内筒より低速に回転させることによって、高速回転する内筒の動きに伴う被加工物の挙動を抑制し、内筒の切れ刃による切削作用を促進する。
【0023】
さらに、内筒と外筒の回転速度及び回転方向制御は、被加工物を筒内の刃間に保持する時間調節を可能とし、従来の外筒が回転しない内筒回転型一軸切削粉砕方式では課題となっていた被加工物が未加工のまますり抜ける場合があるという現象の解決につながるとともに、粉体粒度の精密制御の実現につながる。
【0024】
スクリューフィーダ等の廃材供給装置(図示せず)によって、切刃内蔵型二軸内外筒回転切削粉砕装置の外筒部に設けられた投入口から供給された氷結細片は、切れ刃を有する内外筒の回転による圧縮及び切削作用によって、一気に所定の粒度、例えば約100ミクロンに粉体化される。
【0025】
図5は、約100ミクロンに粉体化された複合粉体を分離・分級するシステムの概念図である。塩ビ壁紙は、キャリアとしての裏打ち紙と塩ビ印刷層が強固に固着しており、これらの分離が極めて困難であることが再資源化が遅れている大きな要因の一つとなっており、これらの分離・分級技術の確立が強く望まれている。
【0026】
廃塩ビ壁紙から得られた100ミクロン程度の複合粉体は、構成成分別にほぼ分離されているが、湿分も影響して、それぞれが絡み合った状態で混合している。
【0027】
したがって、該複合粉体を乾燥後、揉み解し用解砕装置例えばセルミルシリーズ(商品名:(株)瑞光製)などを用いて解繊、解砕し、図5に示す複合分級装置に投入する。
【0028】
複合分級装置においては、まず解砕後の粉体に風力を利用し、質量分級を行う。分離されたパルプ繊維等の軽質分はブロア吸引によりサイクロンで捕集し、その他重質分はその比重に応じて振動篩分級機の所定のゾーンに落下し、さらにそれぞれの粒径により分級される。図6は分級後の塩ビ樹脂分(1)とパルプ繊維分(2)の顕微鏡写真である。
【0029】
分級されたそれぞれの粉体は、塩ビ樹脂分は塩ビ再生コンパウンドとして、炭酸カルシウム等充填剤は再度各種樹脂製品の充填剤として、また、パルプ繊維分は紙製品あるいは樹脂製品の増量材としてそれぞれ再利用される。
【産業上の利用可能性】
【0030】
産業廃棄物として排出されるいわゆる「廃プラスチック類」のマテリアルリサイクルにおいては、破砕や、粉体化は必須の工程である。本発明による100ミクロン程度までの微粉化を実現する粉体化技術と高純度を実現する高度分級技術は、建築、自動車、電気、IT分野などから発生する複合樹脂廃材の再資源化に大きく寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一例を示す複合樹脂廃材の再資源化プロセス図である
【図2】廃塩ビ壁紙の処理工程のプロセス図である。
【図3】切刃内蔵型二軸内外筒回転切削粉砕装置の概念図である。
【図4】刃物部の概念図である。
【図5】複合粉体の分離・分級システム概念図である。
【図6】分級後の塩ビ樹脂分(1)とパルプ繊維分(2)の顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0032】
1. 被加工物の投入口
2. 内周側に切れ刃を有する外筒
3. 外周側に切れ刃を有する内筒
4. 内筒と同調して回転する回転軸
5. 排出用羽根
6. 粉体排出口
7. 外筒内周部の刃物形状の一例
8. 内筒外周部の刃物形状の一例
9. 複合粉体の揉み解し解砕装置
10.複合分級装置
11.サイクロン
12.集塵機
13.ブロアー
14.分級後の粉体品(重質系)
15.分級後の粉体品(中重質系)
16.分級後の粉体品(軽質系)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業廃棄物として排出される複合樹脂廃材の再資源化に適した微粉体の製造装置において、多数の切れ刃を外周側に持つ内筒と、内周側に持つ外筒とを適度な間隔を保持して嵌合させ、所定の粒度の粉体生産に適した回転方向、回転数を個別に制御し、内筒及び外筒の相対する刃間に供給された該廃材を内筒及び外筒の回転により切削粉砕し、所定の粒度への粉体化を可能とする複合樹脂廃材の粉体化装置。
【請求項2】
請求項1の粉体化装置において、外筒側に該廃材の供給用投入口を1個あるいは複数個設け、該投入口を介して該廃材を内筒と外筒の隙間に圧送するスクリューフィーダ等供給装置を具備するとともに、内筒と外筒の嵌合隙間の両端より排出される加工後の粉体を内筒と同調して回転する内筒回転軸に設けた多数個の排出用羽根を用いて、該粉体の速やかな排出を行い、さらに羽根の剪断作用により一層の粉体化を促進することを特長とする複合樹脂廃材の粉体化装置。
【請求項3】
請求項1及び2に記載する粉体化装置において、内筒及び外筒は、それぞれ個別に回転方向及び回転速度を制御可能な機構とし、また該廃材の供給装置においても、その供給速度、供給量を制御可能な機構とすることにより、該廃材の任意の粒度への粉体化を可能とする複合樹脂廃材の粉体化装置。
【請求項4】
請求項1、2及び3に記載する粉体化装置において、該装置の冷却手段を設けるとともに、特に熱可塑性樹脂あるいは低融点樹脂廃材を高速度で粉体化する場合、該装置内での該廃材の融着を防ぎ、素材の劣化を防止するため、該装置及び投入時の該廃材を−20℃程度に冷却する手段を有することを特長とする複合樹脂廃材の粉体化装置。
【請求項5】
請求項1、2、3及び4に記載する粉体化装置により、粉体化された繊維、パルプ(紙)、樹脂、充填剤等が絡み合っている複合粉体を、反毛あるいは揉み解し機構を有する装置にて解砕し、それぞれの構成成分に分離するとともに、該成分の粒径、形状、比重などの物質特性に応じて風力、篩、重力等の複数の手法の組合せにより分級することを特長とする廃材粉体の分離・分級方法。
【請求項6】
請求項1、2、3及び4に記載する粉体化装置を用いて複合樹脂廃材から100ミクロン以下の再資源化用原料を生産する場合において、あらかじめ10ミリ角程度に細片化した該廃材を、冷却あるいは加湿・氷結した上、該粉体化装置により一気に該細片を100ミクロン以下に粉体化し、請求項5に記載する複合分級方法を用いて各構成成分に分離・分級することを特長とする微粉体化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−252964(P2007−252964A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−166396(P2004−166396)
【出願日】平成16年5月10日(2004.5.10)
【出願人】(503471695)リファインバース株式会社 (4)
【Fターム(参考)】