説明

複合粒子及びその製法

【課題】 酸化亜鉛の表面活性を高度に抑制し、高い透明性と紫外線遮蔽性を併せ持つ複合粒子及びその製法、並びにそれを含有する化粧料の提供。
【解決手段】 結晶化度80%以下のポリオレフィン系樹脂と酸化亜鉛を含み、溶融分散法又は溶融噴霧冷却法で得られる複合粒子、あるいは結晶化度80%以下のポリオレフィン系樹脂と酸化亜鉛を含む粒子であって、25℃の0.5mol/Lの塩酸溶液(溶液組成は水とエタノールが等体積比)に1時間浸漬した後の粒子内酸化亜鉛残存率が50重量%以上である複合粒子、及びその製法、並びにこの複合粒子を含有する化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた紫外線遮蔽性と透明性を有し、更に酸化亜鉛の表面活性を大幅に抑制したポリオレフィン系樹脂と酸化亜鉛を含む複合粒子及びその製法、並びにそれを含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オゾン層が一部、破壊されていることによって、地表に到達する紫外線量の増加が問題にされており、従来に増して、効果の高い日焼け止め化粧料が要望されている。従来、このような日焼け止め化粧料における紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、安息香酸系、メトキシケイ皮酸系等の有機化合物が用いられているが、これら有機化合物では、広い範囲の波長域の紫外線を吸収することができないことや、皮膚への刺激性の問題等から、より安全な紫外線遮蔽剤が求められている。
【0003】
地表に到達する紫外線には、水疱、紅斑等の炎症(所謂日焼け)を起こす短波長の紫外線(B領域:280〜320nm)に加え、より長波長の紫外線(A領域:320〜400nm)が相乗して、皮膚の老化や発癌性を引き起こすことが明らかにされており、近年、特に、A領域の紫外線の遮蔽に大きな関心がもたれている。
【0004】
ところで、酸化亜鉛は、本来、380nm付近に鋭い吸収端を有するので、A領域の紫外線に対する遮蔽効果が高いが、更に、その後になって、超微粒子酸化亜鉛が開発され、この超微粒子酸化亜鉛は、B領域からA領域の広い波長域にわたる紫外線を遮蔽するのみならず、超微粒子ルチル型酸化チタンが屈折率2.7を有するところ、超微粒子酸化亜鉛は屈折率が2.0と小さく、透明性に優れているので、紫外線遮蔽剤として注目されている。
【0005】
他方、酸化亜鉛は、元来、水に微量溶解する性質があり、その溶出亜鉛イオンによる生理作用が化粧品分野では古くより収斂剤として利用されている。更に、脂肪酸と反応して金属石鹸を生成する化学反応性は、皮膚から分泌される皮脂を吸収して、化粧持ちをよくしたり、また、体臭成分を吸収するデオドラント効果として利用されることもある。
【0006】
しかし、これらの生理活性と化学反応性は、酸化亜鉛を超微粒子化することによって一層強くなる傾向にあり、今後、皮膚組織に対する安全性がより求められた場合、粒子表面の活性を抑制することが望ましい。
【0007】
また、上述した酸化亜鉛の水への溶解性と化学反応性は、化粧料の配合設計上、種々の不都合を来している。即ち、化粧料の最も重要な原料成分は、人体の主要な構成成分でもある水であるが、超微粒子酸化亜鉛を含む化粧料の場合、溶出亜鉛イオンが他成分と反応するために、水の比率を高めることができず、処方の自由度が狭められている。例えば、従来の超微粒子酸化亜鉛を含む日焼け止め化粧料の場合、水の比率を50%以上にすることは困難であり、乳化製品の殆どは、油中水型(W/O)に限定されている。こうした乳化製品は、オイルベースであるためにさっぱりした使用感が得られにくい。
【0008】
更に、超微粒子酸化亜鉛の化粧料への使用は、超微粒子酸化亜鉛が化粧品の他の配合成分である種々の油剤、香料、色料、有機紫外線吸収剤、水溶性高分子等と反応して、化粧料の粘度の増加や低減、異臭の発生、変色等を起こす問題からも、処方の自由度を狭めている。
【0009】
そこで、特許文献1には、微粒子酸化亜鉛の表面にアルミニウム、ケイ素、ジルコニウム又はスズの酸化物若しくは水酸化物を被覆し、酸化亜鉛の触媒活性を低下させて、化粧料中の有機系ビヒクルの変質を抑制し、また微粒子酸化亜鉛の動摩擦係数を低減させて、滑りや感触の悪化を防止する技術が開示されている。しかし、このような被覆層を表面に設けた微粒子酸化亜鉛では、光触媒活性の抑制は、尚、非常に不十分であり、特に、酸化亜鉛が本来有する水への溶解性と化学反応性は、殆ど抑制することができない。
【0010】
特許文献2には、酸化亜鉛粒子の表面にケイ素酸化物からなる高密度の被覆層を設けることによって、純水への溶解度を抑制する技術が開示されているが、この特許文献の実施例中にも示されているとおり室温7日間保存品においてわずかながら粘度の低減が見られる。
【0011】
特許文献3には、酸化亜鉛を分散させたモノマー相を懸濁重合もしくは乳化重合法で粒子化することで、他成分のビヒクルへの作用を抑制する技術が開示されている。一般的に懸濁又は乳化重合系で使用されるモノマーとしては、スチレン、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、酢酸ビニル等が挙げられるが、得られるポリマーの耐薬品性はどれも乏しい。例えば特許文献3の実施例中で用いられているメタクリル酸メチルはエステル結合を有するため、耐薬品性は十分とはいえない。また、一般的に化粧料に配合されるエタノールや油剤に対しても膨潤性を示すため、実質的に酸化亜鉛とビヒクルなど他の成分との反応を十分に抑制するには至っていない。
【0012】
他方、一般に微粒子はそのままでは凝集体を形成し易い。そのため微粒子をモノマー中に分散後モノマーを重合して固定化したり、微粒子を溶融樹脂中に混練分散後に樹脂を固化して固定化したりする事が行われている。
【0013】
微粒子を樹脂中に固化して固定化する方法では樹脂を小粒径化するために、溶融状態で気相中に噴霧したり、樹脂を固化後に粉砕したりすることが行われている。
【0014】
そこで、特許文献4には、溶融樹脂を回転円板式ノズルを用いて噴霧冷却する技術が開示されている。しかし、この方法で得られる樹脂粒子の粒径は30〜200μm程度であり、小粒径化には限界がある。
【特許文献1】特開平3−183620号公報
【特許文献2】特開平11−302015号公報
【特許文献3】特開平8−53568号公報
【特許文献4】特開平6−167835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、酸化亜鉛における上述した種々の問題、中でも、日焼け止め化粧料に用いるための超微粒子酸化亜鉛における問題を解決し、酸化亜鉛の表面活性を高度に抑制し、高い透明性と紫外線遮蔽性を併せ持つ複合粒子及びその製法、並びにそれを含有する化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、結晶化度80%以下のポリオレフィン系樹脂と酸化亜鉛を含み、溶融分散法又は溶融噴霧冷却法で得られる複合粒子、あるいは結晶化度80%以下のポリオレフィン系樹脂と酸化亜鉛を含む粒子であって、25℃の0.5mol/Lの塩酸溶液(溶液組成は水とエタノールが等体積比)に1時間浸漬した後の粒子内酸化亜鉛残存率が50重量%以上である複合粒子、並びにこの複合粒子を含有する化粧料を提供する。
【0017】
また、本発明は、ポリオレフィン系樹脂と酸化亜鉛を混合した後、該混合物をポリオレフィン系樹脂の軟化温度(又は融点)以上の温度で冷媒中に噴霧して冷却固化する、上記複合粒子の製法、更には、噴霧を、3流体以上のノズルを用いて行う、上記複合粒子の製法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の複合粒子は、純水や塩酸水溶液への酸化亜鉛の溶解度が著しく抑制され、酸化亜鉛の表面活性を高度に抑制して、高い透明性と紫外線遮蔽性を併せ持つことができ、紫外線遮蔽用化粧料に好適に用いることができる。
また、本発明の製法、特に噴霧を、3流体以上のノズルを用いて行うことにより、得られる複合粒子は、樹脂中に超微粒子酸化亜鉛が均一に分散され、複合粒子の体積平均粒径が30μm以下で、かつ粒径5μm以下の粒子の割合が15体積%以上の複合粒子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[ポリオレフィン系樹脂]
本発明に用いるポリオレフィン系樹脂は、酸化亜鉛の表面活性を抑制し、酸化亜鉛の溶解度を低減させる観点から、結晶化度が80%以下のポリオレフィン系樹脂が用いられ、結晶化度70%以下のポリオレフィン系樹脂がより好ましい。この場合、種類の異なるポリオレフィン系樹脂を混合して使用してもよく、ポリオレフィン系樹脂混合物の結晶化度が80%以下であればよい。
【0020】
尚、結晶化度は、X線回折法により、下記測定条件で求めることが出来る。
【0021】
<X線回折法の測定条件>
装置名:理学電機(株)製、RINT2500
多重ピーク分離法
線源:CuKa
管電流:120mA
管電圧:40kV
スキャンスピード:10°/min
【0022】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリメチルペンテン、ポリメチルブテン、ポリブタジエン等のオレフィン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体等のオレフィン共重合体等が挙げられる。また、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素原子を有するポリオレフィンも用いることができる。これらのポリオレフィン系樹脂の中では、ポリエチレンが特に好ましい。ポリエチレンとしては、酸化亜鉛の分散性を良くする観点から、酸変性物が有効である。
【0023】
本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂は、溶融粘度が低いものが好ましい。ポリオレフィン系樹脂の融点又は軟化温度は、複合粒子の製造しやすさの観点から、80℃以上が好ましく、100℃以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、製造の容易さから、200℃以下が好ましい。ポリオレフィン系樹脂の融点は、JIS K0064:1992により測定できる。
ポリオレフィン系樹脂の分子量は、樹脂の溶融粘度および強度の観点から、500〜20000が好ましく、1000〜10000が更に好ましい。ポリオレフィン系樹脂の分子量は、粘度法により求めることが出来る。
【0024】
[酸化亜鉛]
本発明における酸化亜鉛は、粒径0.1μm以下の酸化亜鉛が、紫外線遮蔽性を得るために好ましい。また、酸化亜鉛表面を予め疎水化処理した酸化亜鉛を用いると、ポリオレフィン系樹脂との混練性を高めることが出来るため好ましい。酸化亜鉛の表面処理方法としては、オルガノポリシロキサンによる表面処理等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0025】
[複合粒子]
本発明の複合粒子は、酸化亜鉛と結晶化度80%以下のポリオレフィン系樹脂を主成分とするもので、本発明の効果を損なわない限り、その他の成分、例えば無機及び有機顔料、有機染料等の色材、界面活性剤、シリコーン化合物あるいは酸化防止剤等を含有しても良い。
【0026】
複合粒子中のポリオレフィン系樹脂と酸化亜鉛の割合は、後述する製法への適性と紫外線遮蔽効果の観点から、ポリオレフィン系樹脂/酸化亜鉛(重量比)が、99/1〜30/70が好ましく、95/5〜50/50が更に好ましく、80/20〜60/40が特に好ましい。
【0027】
本発明の複合粒子の体積平均粒径は、ざらつき感やきしみ感を抑制する観点から、0.5〜30μmが好ましく、2〜10μmが更に好ましい。
ここで体積平均粒径は、コールターカウンター(装置名:ベックマンコールター社製,LS−230)を用いて、エタノール中で測定した値である。
【0028】
[複合粒子の製法]
本発明の複合粒子の製法としては、溶融分散法又は溶融噴霧冷却法が好ましく、溶融噴霧冷却法が更に好ましい。他の製法として、噴霧乾燥法、ハイブリダイゼーションが挙げられるが、これらの方法では原理上複合粒子表面にクラックや孔が生じやすく、酸化亜鉛と外界を遮蔽することが難しい。
【0029】
溶融分散法とは、ポリオレフィン系樹脂等の分散質と酸化亜鉛を、これと相溶しない分散媒中で、分散質の融点(又は軟化点)以上の温度環境において、機械的剪断力や分散剤の働きを利用して希望する粒径にまで分散した後、分散質の融点(又は軟化点)以下の温度にまで冷却し、固体の粒子として得る方法である。例えば、分散質としてポリエチレン、分散媒として水又はグリセリンが挙げられる。これらの操作は高圧下で行っても良い。
溶融噴霧冷却法は、ポリオレフィン系樹脂と酸化亜鉛を混合した後、該混合物をポリオレフィン系樹脂の軟化温度(又は融点)以上の温度で冷媒中に噴霧して冷却固化する方法であり、このような方法で得られた複合粒子は、粒子表面にクラックや孔が生じにくく、酸化亜鉛と外界を遮蔽することが可能である。
【0030】
本発明の製造法においては、まずポリオレフィン系樹脂と酸化亜鉛を予備混合する。この時のポリオレフィン系樹脂と酸化亜鉛の配合割合は、良好な紫外線遮蔽効果を得る観点から、ポリオレフィン系樹脂/酸化亜鉛の重量比で、99/1〜30/70が好ましく、95/5〜50/50が更に好ましく、80/20〜60/40が特に好ましい。混練は、ポリオレフィン系樹脂中に酸化亜鉛を一次粒子に近い状態で分散するように混練することが、優れた紫外線遮蔽性、透明性を得るために望ましい。混練に用いられる機器としては、プラストミル、プラネタリー、ロールミル、ニーダー、エクストルーダー等が挙げられる。
【0031】
次に、上記混合物をポリオレフィン系樹脂の軟化温度(又は融点)以上に加熱した熱溶融混練物を、回転ディスクアトマイザー、1流体、又は2流体以上、好ましくは2流体以上、更に好ましくは3流体以上の複数流体ノズルを使用して、好ましくは5〜50℃の冷媒中に噴霧し、冷却固化して、複合粒子を回収する。好ましくは、圧縮ガスと共に、冷媒中に噴霧する。冷媒としては、特に気相が好ましい。流体として使用する圧縮ガスは、好ましくは9.8×104Pa以上、更に好ましくは9.8×104〜29.4×104Paの圧縮空気や圧縮窒素を用いることができる。この気体は、噴霧温度以上に加熱したものを使用することが、ノズル部での冷却によるつまりを防止し、連続的に粒子を製造できるため、好ましい。
【0032】
3流体以上の複数流体ノズルとしては、噴霧粒子の微粒化性能と構造の簡易さから、ペンシル型ノズル、ストレート型ノズルが好ましく、特に3流体のペンシル型ノズル、4流体のストレート型ノズルなどを好ましく用いることができる。ペンシル型ノズルはストレート型ノズルに比較して、縮流により衝突点の流体速度及び破砕力が大きいことからより好ましい。4流体のストレート型ノズルの一例を図1に、3流体のペンシル型ノズルの一例を図2に示す。図2中、(a)は正面図、(b)は平面図である。図1及び2において、1は樹脂と酸化亜鉛の溶融混練物の流路、2は噴霧気体の流路、3は噴霧粒子、4はノズルエッジ、5は衝突焦点である。
【0033】
3流体のペンシル型ノズル、4流体のストレート型ノズルとしては藤崎電機(株)製、Micro Mist Dryer MDL-050Cの3流体ペンシル型ノズル、4流体ストレート型ノズルを好ましく用いることができる。
【0034】
溶融混練物をノズルで噴霧する際の噴霧気体/混練物の容量比は微粒子を得る観点から1000/1以上が好ましく、5000/1以上が更に好ましい。容量比の上限は特にないが、経済性の観点から100000/1以下が好ましい。
【0035】
噴霧温度は、良好な噴霧性を得る観点から、ポリオレフィン系樹脂と酸化亜鉛との混合物の粘度が好ましくは800mPa・s以下、更に好ましくは300mPa・s以下、特に好ましくは100mPa・s以下になる温度である。下限は特にないが、10mPa・s以上となる温度が好ましい。
【0036】
[粒子内酸化亜鉛残存率]
本発明の複合粒子は、高い酸化亜鉛の活性抑制性を示すが、その評価尺度として塩酸処理後の粒子内酸化亜鉛残存率を用いることができる。すなわち、酸化亜鉛は酸性水中では完全に溶解してしまう性質であることから、複合粒子を酸性水で洗浄し、酸化亜鉛量を測定し、酸性水洗浄の前後で比較して残存率を算出することで、表面活性抑制性の評価を行うことが出来る。本発明の複合粒子の塩酸処理後の粒子内酸化亜鉛残存率は、具体的には下記の試験例1に示す方法により測定することができる。塩酸処理後の粒子内酸化亜鉛残存率が100重量%に近い方が、酸化亜鉛の活性が抑制されていることを示す。
本発明の複合粒子は、塩酸処理後の粒子内酸化亜鉛残存率が、50重量%以上が好まし く、70重量%以上がより好ましく、80重量%以上が更に好ましく、90重量%以上が特に好ましく、水中油型(O/W)の乳化製品で安定に使用することができる。
【0037】
塩酸処理後の酸化亜鉛残存率を求めるための酸化亜鉛有効分は複合粒子の強熱残分で測定することができるが、必要に応じて、ろ液のICP発光分析等、他の手法も利用することが出来る。
【0038】
[紫外線遮蔽性と透明性]
本発明の複合粒子は、優れた紫外線遮蔽性と透明性が両立していることが好ましい。この評価の尺度としては、複合粒子をシリコーンオイルに均一分散したものを光路長50μmの石英セルに入れ、分光光度計で透過スペクトルを測定し、可視光領域である550nmの波長と、紫外線領域である350nmの波長の透過率の差分ΔTを用いることが有効である。ΔTが大きいほど優れた紫外線遮蔽性と透明性を併せ持つ性質であるといえる。シリコーンオイルと複合粒子の混合比は、シリコーンオイル100重量部に対し、複合粒子を酸化亜鉛として1重量部とする。シリコーンオイルとしては、SI−UGE(花王(株)製、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン)を好ましく使用することが出来る。この差分ΔTは、好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上、特に好ましくは50%以上である。
【0039】
[化粧料]
本発明の化粧料中、本発明に係わる複合粒子の含有量は、その化粧料の目的に応じて適宜選択することができ、特に限定されるものではないが、0.1〜50重量%、特に1〜30重量%が好ましい。
【0040】
本発明の化粧料の形態は特に限定されず、油中水型又は水中油型の乳化化粧料、油性化粧料、スプレー化粧料、スティック状化粧料、水性化粧料、シート状化粧料、ゲル状化粧料等のいずれでもよい。また本発明の化粧料の種類も特に限定されず、例えばパック、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、ネイルエナメル、ローション、コールドクリーム、ハンドクリーム、皮膚洗浄剤、柔軟化化粧料、栄養化粧料、収斂化粧料、美白化粧料、シワ改善化粧料、老化防止化粧料、洗浄用化粧料、制汗剤、デオドラント剤等の皮膚化粧料;シャンプー、リンス、トリートメント、整髪剤、養毛剤等の毛髪化粧料が挙げられ、紫外線遮蔽効果、皮膚隠蔽効果を発揮させ得る化粧料が好ましく、メイクアップ化粧料、サンスクリーン化粧料、下地化粧料として用いられるものが更に好ましい。
【0041】
本発明の化粧料は、アルコールを含有することができる。アルコールとしては、エタノール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール等の炭素数1〜6の1価又は多価アルコールが挙げられ、中でも1価アルコール、特にエタノールが好ましい。アルコールの配合量は、本発明の化粧料中5〜30重量%が好ましく、また本発明に係わる複合粒子の1〜50重量倍とすることが特に好ましい。
【0042】
本発明の化粧料には、更に化粧料成分として一般に使用されているその他の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で、上記化粧料の形態、種類等に応じて適宜配合することができる。
【0043】
かかる化粧料成分としては、例えばマイカ、タルク、セリサイト、カオリン、ナイロンパウダー、ポリメチルシルセスキオキサン、硫酸バリウム等の体質顔料;酸化チタン、亜鉛華、酸化鉄等の固形顔料;これら粉体をシリコーン処理、金属石鹸処理、N−アシルグルタミン酸処理等の表面疎水化処理した粉体;固体状又は液状のパラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、セレシン、オゾケライト、モンタンろう等の炭化水素類 ;オリーブ、地ろう、カルナウバろう、ラノリン、鯨ろう等の植物性油脂、動物性油脂又はろう;ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンジステアリン酸エステル、グリセリンモノオレイン酸エステル、イソプロピルミリスチン酸エステル、イソプロピルステアリン酸エステル、ブチルステアリン酸エステル等の脂肪酸又はそのエステル類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、パルミチルアルコール、ヘキシルドデシルアルコール等の高級アルコール類;カチオン化セルロース、カルボキシベタイン型ポリマー、カチオン化シリコーン等の吸着又は増粘剤;グリコール、ソルビトール等の保湿作用を有する多価アルコール類;ポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル・アルキル変性シリコーン、グリセリルエーテル変性シリコーン等のシリコーン油用の乳化剤;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、トラガント、寒天、ゼラチン等の増粘剤;アルミニウムヒドロキシクロリド、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性臭化アルミニウム、アルミニウムフェノールスルホン酸、塩基性ヨウ化アルミニウム等の制汗剤;3,4,4−トリクロロカルバアニリド(TCC)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、レゾルシン、フェノール、ソルビン酸、サリチル酸、ヘキサクロロフェン等の殺菌剤;ジャ香、スカトール、レモンオイル、ラベンダーオイル、アブソリュート、ジャスミン、バニリン、ベンゾイン、ベンジルアセテート、メントール等のマスキング剤、その他、乳化安定剤、キレート剤、紫外線防御剤、pH調整剤、防腐剤、色素類、美白剤、鎮痛消炎剤、鎮痒剤、殺菌消毒剤、収斂剤、皮膚軟化剤、ホルモン剤等の薬効成分;水;界面活性剤;W/O又はO/W型乳化剤、香料等が挙げられる。
【実施例】
【0044】
例中の「%」、「部」は、特に記載がない限り、それぞれ「重量%」、「重量部」である。また、ポリオレフィン系樹脂の融点は、JIS K0064:1992により測定した値である。
【0045】
実施例1
ポリオレフィン系樹脂として三井ハイワックスHW−220MP(三井化学(株)製、ポリエチレン、分子量2000、融点107℃、結晶化度65%)、酸化亜鉛としてFINEX−50S−LP2(平均一次粒径0.02μm、ポリシロキサン処理酸化亜鉛、堺化学(株)製)を、重量混合比率(HW−220MP:FINEX−50S−LP2)70:30で混合し、エクストルーダーPCM30((株)池貝製)を用いて、スクリュー回転数200rpm、シリンダー温度100℃、フィード10kg/時にて混練した。次に下記条件の造粒装置を用い、ポリエチレンと酸化亜鉛の溶融混練物を25℃気相中に噴霧冷却し、複合粒子として回収した。粗大粒子を篩でカットして得られた粒子の平均粒径は3.3μm、強熱残分により測定した複合粒子中の酸化亜鉛含有量は29重量%であった。
【0046】
<造粒装置の条件>
ノズル:4流体ノズル ストレート型(藤崎電機(株)製)
混練物温度:150℃
混練物送液量:5mL/分
アシストエア温度:500℃
アシストエア流量:50L/分
【0047】
実施例2
ポリオレフィン系樹脂として三井ハイワックスHW−220MP(三井化学(株)製、ポリエチレン、分子量2000、融点107℃、結晶化度65%)及び三井ハイワックスHW−100P(三井化学(株)製、ポリエチレン、分子量900、融点116℃、結晶化度90%)、酸化亜鉛としてFINEX−50S−LP2(平均一次粒径0.02μm、ポリシロキサン処理酸化亜鉛、堺化学(株)製))を、重量混合比率(HW−220M P:HW−100P:FINEX−50S−LP2)35:35:30で混合した以外は実施例1と同じ操作にて処理を行い、複合粒子を回収した。樹脂成分の結晶化度は、77.5%であり、粗大粒子を篩でカットして得られた粒子の平均粒径は3.7μm、強熱残分により測定した複合粒子中の酸化亜鉛含有量は29重量%であった。
【0048】
比較例1
実施例1において、ポリオレフィン系樹脂として三井ハイワックスHW−100P(三井化学(株)製、ポリエチレン、分子量900、融点116℃、結晶化度90%)を使用した以外は、同操作にて処理を行い、複合粒子を回収した。粗大粒子を篩でカットして得られた粒子の平均粒径は2.8μm、強熱残分により測定した複合粒子中の酸化亜鉛含有量は30重量%であった。
【0049】
比較例2
実施例1において、ポリオレフィン系樹脂としてC105(シューマン・サゾール社、ポリエチレン、分子量1300、融点100℃以上、結晶化度88%)を使用した以外は、同操作にて処理を行い、複合粒子を回収した。粗大粒子を篩でカットして得られた粒子の平均粒径は3.4μm、強熱残分により測定した複合粒子中の酸化亜鉛含有量は29重量%であった。
【0050】
比較例3
酸化亜鉛微粒子表面を高密度シリカ層でカプセル化した、不活性化タイプ超微粒子酸化亜鉛である、FINEX−K2−LP2(堺化学(株)製、酸化亜鉛分75%)を、本比較例の粒子として用いた。
【0051】
比較例4
下記方法に従い、微粒子酸化亜鉛を含有するメタクリル酸メチル・エチレングリコールジメタクリレート共重合体粒子(平均粒径10.9μm、酸化亜鉛含有量14重量%)を調製した。
【0052】
(1)微粒子酸化亜鉛の分散液の製造
次の各材料を混合し、ボールミルを用いて10時間分散処理を行い、微粒子酸化亜鉛の分散液を得た。
微粒子酸化亜鉛 25部
(FINEX−75、堺化学(株)製 平均粒径0.02μm)
メタクリル酸メチル(樹脂モノマー) 69部
スルホコハク酸ジアルキルナトリウム 6部
(ペレックスOT−P、花王(株)製、分散剤)
【0053】
(2)樹脂粒子の製造
以下に示す樹脂モノマー相と水相とを混合し、これをホモミキサー内で8000rpmで5分間攪拌し、モノマー滴が約5μmになるように調整した。次に、この分散体を攪拌機及び温度計を備えた反応装置に移し、55℃に昇温して重合を開始させた。更に、5時間、この温度で重合させたのち、室温まで冷却し、吸引濾過にて得られた樹脂粒子を分離した。適量の温水で洗浄し、次にメタノールで洗浄した後、55℃にて10時間乾燥させて、樹脂粒子を作製した。
【0054】
<樹脂モノマー相>
(1)の微粒子酸化亜鉛の分散液 48部
メタクリル酸メチル(樹脂モノマー) 52部
エチレングリコールジメタクリレート 20部
(NK ESTER 1G、新中村化学工業(株)製、架橋剤)
2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル(重合開始剤) 0.2部
<水相>
イオン交換水 500部
ポリビニルアルコール 10部
(EG−30、日本合成化学工業(株)製、ケン化度87 %)。
【0055】
試験例1:酸洗浄試験(塩酸処理後の粒子内酸化亜鉛残存率)
0.5mol/L塩酸水溶液25mLとエタノール25mLを混合し、更に実施例及び比較例で得た粒子を酸化亜鉛として1g相当量混合し、100mLのスクリュー管に入れ、振とう機(ストローク長10cm、100往復/分)にセットし、室温(25℃)で2時間振とうした。分散液を孔径0.5μmのPTFEメンブランフィルターで減圧ろ過し、更にエタノールで洗浄し、70℃熱風乾燥機にて12時間乾燥したものを塩酸処理後の粒子とした。この粒子を800℃、2時間処理して得られた強熱残分を、塩酸処理後の粒子内の酸化亜鉛量とし、塩酸処理後の粒子内酸化亜鉛残存率を以下の式(I)で算出した。結果を表1に示す。
【0056】
塩酸処理後の粒子内酸化亜鉛残存率(%)=(A2/A1)×100 (I)
ここで
A1:塩酸処理前の粒子中の酸化亜鉛含有量(%)
A2:塩酸処理後の粒子中の酸化亜鉛含有量(%)
【0057】
試験例2:処方安定性試験(UVケア製剤での安定性)
精製水79.12g、アクリル酸系増粘剤(ETD2020、BFGoodrich社製)0.3g、アクリル酸系増粘剤(pemulen TR−2、日光ケミカルズ(株)製)0.2g、及びメチルパラペン0.2gを仕込み、全体が均一となるよう撹拌混合し、次いでトリエタノールアミン水溶液(有効分89%)を0.18g添加し、さらに全体が均一となるよう撹拌混合して評価用ベースジェルを調製した。
100mlカップに、酸化亜鉛0.3gを含有する重量の評価用粒子及びエタノール3.0gを混合し、超音波分散機を用いて均一に分散した。さらに評価用ベースジェル16.0gを混合し、高速インペラー分散機を使用して全体が均一となるまで撹拌し、室温(25℃)環境下で3時間保存し、これを評価ジェルとした。
【0058】
得られた評価ジェルの粘度をB型粘度計を用いて25℃、6rpmの測定条件で測定し、外観を観察した。実施例の複合粒子を配合した評価ジェルは高粘度であり粒子が均一に分散したが、比較例の粒子を配合した評価ジェルは測定下限の1000mPa・s以下まで粘度が低下しており、目視による観察において液と粒子の分離が見られた。
実施例の粒子を配合した評価ジェルを、さらに50℃環境下で21日間保存した。保存後においても粘度が保たれており、外観上、液の分離は見られなかった。下記の式(II)に従って求めた粘度変化率を表1に示した。
【0059】
粘度変化率(%)=(η2/η1)×100 (II)
ここで、
η1:評価ジェルの調製時の粘度(mPa・s)
η2:評価ジェルの保存後の粘度(mPa・s)
【0060】
試験例3:光学特性試験(紫外線遮蔽性及び透明性の評価)
SI−UGE(花王(株)製、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン)100部に対し、実施例及び比較例で得た粒子を酸化亜鉛として1部相当量混合し、ヘラを使って均一に分散した。このものを、光路長50μmの石英セルに入れ、分光光度計(島津製作所(株)製、UV−2550)を使用して、550nmと350nmの波長における透過率の差分をΔTとして算出した。結果を表1に示す。いずれの複合粒子も良好な紫外線遮 蔽性と透明性を有しており、化粧料として良好な性能を有していることが示される。
【0061】
【表1】

【0062】
実施例3
熱可塑性樹脂として三井ハイワックスHW−220MP(三井ケミカル(株)製、ポリエチレン、分子量2000、融点107℃、結晶化度65%)、酸化亜鉛としてFINEX−50S−LP2(平均一次粒径0.02μm、ポリシロキサン処理酸化亜鉛、堺化学(株)製)を、ポリエチレン/酸化亜鉛の重量混合比70/30で混合し、エクストルーダーPCM30((株)池貝製)を用いて、スクリュー回転数200r/min.、シリンダー温度100℃、フィード10kg/時にて混練した。次に、噴霧ノズルとして、ストレート型4流体ノズル(Micro Mist Dryer MDL-050C、藤崎電機(株)製)を用い、150℃で噴霧窒素/混練物の容量比21000/1で25℃気相中に噴霧冷却し、複合粒子として回収した。得られた粒子の体積平均粒径は12.4μm、粒径5μm以下の粒子の含有率は15.8体積%であった。
【0063】
実施例4
実施例3において、噴霧ノズルとしてペンシル型3流体ノズル(Micro Mist Dryer MDL-050C、藤崎電機(株)製)を用いた以外は、同操作にて処理を行い、複合粒子を回収した。得られた粒子の体積平均粒径は8.4μm、粒径5μm以下の粒子の含有率は27.1体積%であった。
【0064】
実施例5
実施例4において、熱可塑性樹脂として三井ハイワックスHW−220MP(三井ケミカル(株)製、ポリエチレン、分子量2000、融点107℃、結晶化度65%)および三井ハイワックスHW−100P(三井ケミカル(株)製、ポリエチレン、分子量900、融点116℃、結晶化度90%)、酸化亜鉛としてFINEX−50S−LP2(平均一次粒径0.02μm、ポリシロキサン処理酸化亜鉛、堺化学(株)製)を使用し、HW−220MP/HW−100P/酸化亜鉛の重量混合比35/35/30で混合した以外は、同操作にて処理を行い、複合粒子を回収した。得られた粒子の体積平均粒径は5.4μm、粒径5μm以下の粒子の含有率は52.1体積%であった。
【0065】
実施例6
実施例5において、噴霧窒素/混練物の容量比を10000/1とした以外は、同操作にて処理を行い、複合粒子を回収した。得られた粒子の体積平均粒径は5.8μm、粒径5μm以下の粒子の含有率は50.2体積%であった。
【0066】
実施例3〜6の噴霧条件及び結果をまとめて表2に示す。
【0067】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】4流体のストレート型ノズルの一例を示す図である。
【図2】3流体のペンシル型ノズルの一例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 樹脂と酸化亜鉛の溶融混練物の流路
2 噴霧気体の流路
3 噴霧粒子
4 ノズルエッジ
5 衝突焦点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶化度80%以下のポリオレフィン系樹脂と酸化亜鉛を含み、溶融分散法又は溶融噴霧冷却法で得られる複合粒子。
【請求項2】
結晶化度80%以下のポリオレフィン系樹脂と酸化亜鉛を含む粒子であって、25℃の0.5mol/Lの塩酸溶液(溶液組成は水とエタノールが等体積比)に1時間浸漬した後の粒子内酸化亜鉛残存率が50重量%以上である、複合粒子。
【請求項3】
複合粒子中のポリオレフィン系樹脂と酸化亜鉛の重量比が、ポリオレフィン系樹脂/酸化亜鉛=99/1〜30/70である請求項1又は2記載の複合粒子。
【請求項4】
体積平均粒径が0.5〜30μmである請求項1〜3いずれかに記載の複合粒子。
【請求項5】
ポリオレフィン系樹脂と酸化亜鉛を混合した後、該混合物をポリオレフィン系樹脂の軟化温度(又は融点)以上の温度で冷媒中に噴霧して冷却固化する、請求項1〜4いずれかに記載の複合粒子の製法。
【請求項6】
噴霧を、3流体以上のノズルを用いて行う、請求項5記載の複合粒子の製法。
【請求項7】
3流体以上のノズルが、ストレート型ノズル又はペンシル型ノズルである請求項6記載の複合粒子の製法。
【請求項8】
ポリオレフィン系樹脂と酸化亜鉛の混合物を噴霧する際の、噴霧気体/混合物の容量比が、1000/1〜100000/1である請求項5〜7いずれかに記載の複合粒子の製法。
【請求項9】
請求項1〜4いずれかに記載の複合粒子を含有する化粧料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−124366(P2006−124366A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−372886(P2004−372886)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】