説明

複合食品の製造方法

【課題】 乾燥により食品の形状変化がなく、内部まで充分に液体が含浸処理できて味にムラがなく品質の良い複合食品であり、しかも保存性が良好なものを製造することである。
【解決手段】 耐圧性容器1に真空ポンプ2の吸気路3を接続し、耐圧性容器1の内部に冷凍機4の凝縮器5を装置すると共に、ヒータ付きの棚6を設けた真空凍結乾燥装置を基本の構造とし、さらに棚6には固形状食品を含浸処理可能な開放容器8を載置し、この開放容器8の内側に大気圧下の液体状食品9を供給可能な給液路10を開閉可能に接続した構造からなる複合食品の製造装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、固形状食品に液体状食品を含浸した複合食品の製造方法およびその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の真空凍結乾燥技術は、通称、フリーズドライ技術としてよく知られており、一般的な真空凍結乾燥装置は、真空乾燥缶内に蒸気圧と釣り合った低温の冷凍パイプを設け、凍結された食品から昇華してくる水蒸気を冷凍パイプに凝結させて分離除去すると共に、凝縮できない非凝縮性のガスは真空ポンプで缶外に排出することにより、缶内の真空度を低く保ち、凍結した食品の品温を飽和蒸気圧と対応させて乾燥を行なう。
【0003】
このような凍結乾燥技術によって果実などの食品を乾燥させた後、大気圧下でアルコールや糖類に時間をかけて浸漬し、菓子を製造することが、知られている(特許文献1)。
【0004】
また、穀物、肉、魚、野菜、果物などの食品を、食品中の水分が凍結しないように温度調整しながら減圧乾燥した後、減圧下で液体成分と接触させて食品中に液体成分を含浸させて効率よく調味する方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭 55−050855号公報
【特許文献2】特開2002−354988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した従来の特許文献1に記載の昇華による乾燥方法では、真空凍結乾燥によって食品が形状を崩すことなく乾燥処理される点で好ましいが、その後に、常圧で糖類などの液体の含浸を行なっているので、食品の内部まで充分に液体を充填されたものになっておらず、均質な調味で充分に味の良好なものは製造できず、また品質保存性も充分改良されていないという問題点がある。
【0007】
また、上記した特許文献2に記載された減圧含浸処理方法では、食品が表面から水等の液体の蒸発により乾燥するので、その際に液体成分が毛管現象によって食品中の孔を通って移動し、その際に食品中の液体成分に分離や濃縮などが起こり、細胞は収縮し、食品の表面は硬化して本来の形状が崩れてしまうという問題点がある。
【0008】
また、食品中の水分が凍結しないように温度調整しながら減圧乾燥した後、減圧下で含浸することによって食品は、内部まで充分に乾燥してから含浸しているとはいえないので、液体の置換も充分になすことは困難であり、味も保存性も充分に改良したものが得られなかった。
【0009】
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して、乾燥により食品の形状変化がなく、内部まで充分に液体が含浸処理できて味にムラがなく品質の良い複合食品であり、しかも保存性が良好なものを製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、この発明においては、固形状食品を真空凍結乾燥することにより液体成分を凍結し昇華させて乾燥させた後、この乾燥により形成された気孔に液体状食品を減圧下で含浸し、次いで昇圧して液体状食品を前記気孔内に浸透させることからなる複合食品の製造方法としたのである。
【0011】
上記した工程からなるこの発明の複合食品の製造方法によれば、食品中の水分などの液体は、凍結した固体から昇華によって乾燥するので、乾燥処理の際に食品中に液体移動が起こらず、乾燥処理後にも処理前の固形状食品の本来形状が保たれる。
【0012】
また、昇華により内部まで乾燥した固形状食品は、全体のあらゆる部分に微細な気孔が形成され均一に多孔質化しているので、液体が均一かつ充分に浸み込みやすいものであり、このような固形状食品に対して減圧下で液体状食品を含浸した後、処理雰囲気を昇圧すると、液体状食品を固形状食品の全体に均等に無理なく浸透させることができる。
【0013】
また、このようにして真空凍結乾燥機の真空室(チャンバーとも称される)内で減圧下で乾燥した固形状食品に対して液体状食品を含浸すると、固形状食品に空気が触れずに液体状食品が均等に無理なく短時間に浸透して気孔内に充填される。そのため、液体状食品が充填された気孔には空気が侵入し難くなり、大気中に曝されても気孔内は酸化されに難く、言い換えれば経時劣化し難く日持ちの良い複合食品になる。
【0014】
また、含浸処理に用いる液体状食品として、水分活性値が微生物の増殖を抑制可能であるように低く調整されたものを採用すれば、さらに食品の保存期間を長くすることが可能であり、品質を経時的に長く安定させて保存性に優れたものになる。
【0015】
また、上記製造工程において、固形状食品の気孔に液状食品を減圧下で含浸する際、固形状食品を氷結温度以上に加熱する複合食品の製造方法とすれば、固形状食品の表面に、液状食品が凍結することなく、油脂などの粘度の高いものでも速やかにすなわち短時間に浸み込ませることができ、効率よく、ムラなく品質の良い複合食品を製造できる。
【0016】
また、前記同様の課題を解決するために、耐圧性容器に真空ポンプの吸気路を接続し、前記耐圧性容器の内部に冷凍機の凝縮器を装置すると共にヒータ付き棚を設けた真空凍結乾燥装置において、前記棚には固形状食品を含浸処理可能な開放容器を載置し、この開放容器内に大気圧下の液体食品を供給可能な給液路を開閉可能に接続した複合食品の製造装置とすることができる。
【0017】
上記したように構成されるこの発明の複合食品の製造装置は、真空ポンプで減圧された耐圧性容器内に置かれた固形状食品が、凍結した状態から昇華した水蒸気などの液体蒸気が分離して乾燥し、液体蒸気は冷凍機の凝縮器に凝結して付着して減圧雰囲気から除去される。その際、固形状食品は、昇華熱が奪われることにより温度が下がり、そのために飽和水蒸気圧が下がって昇華速度が徐々に低下するが、昇華熱を補うように開放容器を介してヒータ付き棚上にて加熱すれば、昇華が持続され、充分に乾燥させることができる。
【0018】
このようにして乾燥した固形状食品は、開放容器内で給液路から大気圧下の液体食品が供給されることにより、液体食品が含浸されると同時に圧力差で浸透され、食品の表面から内部まで均等に液体食品を充填することができ、ムラなく品質の良い複合食品を製造できる。
【発明の効果】
【0019】
本願の複合食品の製造方法に係る発明は、昇華により多孔質化した固形状食品に液体状食品を減圧下で含浸し、次いで昇圧して液体状食品を気孔内に充分に浸透させるので、乾燥により食品の形状変化がなく、内部まで充分に液体が含浸処理でき、味にムラなく品質の良好な複合食品となり、しかも保存性の良い複合食品を製造できる利点がある。
【0020】
また、本願の複合食品の製造装置に係る発明は、真空凍結乾燥装置内の開放容器内に大気圧下の液体食品を供給可能な給液路を開閉可能に接続したので、前記開放容器内で真空凍結乾燥状態の固形状食品に、大気圧下の液体食品を供給することができ、食品の表面から内部まで均等に液体食品を充填することができ、ムラなく品質の良い、保存性の良好な複合食品を製造できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態の製造方法に用いる装置の概略説明図
【図2】実施形態の製造装置の要部を示す正面図
【図3】実施形態の製造装置の開放容器と固形状食品を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の複合食品の製造方法とそれに用いる製造装置に係る実施形態を以下に添付図面に基づいて説明する。
図1〜3に示すように、複合食品の製造装置は、耐圧性容器1に真空ポンプ2の吸気路3を接続し、耐圧性容器1の内部に冷凍機4の凝縮器5を装置すると共に、ヒータ付きの棚6を設けた真空凍結乾燥装置を基本の構造とし、さらに棚6には固形状食品7(図3参照)を含浸処理可能な開放容器8を載置し、この開放容器8の内側に大気圧下の液体状食品9を供給可能な給液路10を開閉可能に接続した構造からなる複合食品の製造装置である。
【0023】
前記した耐圧性容器1は、食品用の真空凍結乾燥装置で通常に使用できるものであり、真空ポンプ2、冷凍機4についても汎用のものを採用可能である。図2に示すように耐圧性容器1は、正面に蓋11を有し、これをヒンジ12とねじ止め式のハンドル13によって手動で開閉して、処理対象物を出し入れできる。
【0024】
凝縮器5は、冷凍機における熱交換器としてコールドトラップとも別称され、よく知られた構造であり、例えばU字管を介して複数の直線管が連結し、一定長さで折り返し往復する管路からなるものを例示できる。
【0025】
また、ヒータ付きの棚6は、シーズヒーターや熱媒体(オイルなど)の流通管を棚本体と一体に設けることにより電気加熱や熱媒体の流通などにより、温度調整の可能なものであり、その上方にもヒータ14を併用して設けたものが好ましい。
また、図1中の符号15は、氷などの凝結物を溶かして除去するために水を噴射する融氷装置であり、符号16はドレン管、符号17はピラニー真空計であり、符号18は棚温度調節計である。
【0026】
図2に示すように、給液路10は、耐圧性容器1の外部に液溜容器19を有し、これに溜めた液体状食品9を開閉栓20、21の開閉操作により、耐圧性容器1の内部の開放容器8の内側に導入できる管状物で構成されている。開放容器8は、上面や上部が雰囲気に開放されて通気性があり、かつ液体を収容でき、固形状食品7を浸漬処理可能なものである。
【0027】
給液路10は、開閉栓20、21を介して適宜に給液可能に設けられており、耐圧性容器1内が減圧されている場合には、特にポンプ手段を有しなくても開閉栓20を開き、開閉栓21を閉じる操作により重力による位置エネルギー差によって給液可能である。また、必要に応じて開閉栓21を開いて大気圧に適宜に開放し、液体状食品9を耐圧性容器1の内外圧力差によって開放容器8内に急速に注入もしくは噴射して注入することも可能である。
液溜容器19を含めた給液路10は、ステンレス鋼などの金属やシリコーン樹脂などの食品機械用の素材で形成される。
【0028】
このような構造の製造装置を用い、複合食品を製造するには、先ず、製造装置の真空凍結乾燥機能を用いて固形状食品7を凍結し、その液体成分を昇華させて真空凍結乾燥させ、次いで、これに液体状食品を含浸し、この含浸の完了後、または含浸させると同時に真空乾燥時の減圧雰囲気から耐圧性容器1の外気圧(通常は大気圧)まで昇圧する。
【0029】
この発明で製造される固形状食品は、食品またはその素材であって、フリーズドライ処理の可能な固形状のものであれば特に種類を限定なく採用でき、たとえば畜肉類(牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉など)、食用卵(鶏卵など)、魚介類(魚、エビ、イカなど)、野菜(タマネギ、トマト、イモ、ニンニク、ネギ、マメなど)や果物、海藻類などであり、その他にも可食性素材であれば周知な素材を広く採用できる。
【0030】
また、この発明に用いる液状食品は、ソルビトールなど周知の甘味料や、クエン酸などの酸味料、果汁または香味油、香辛料、着色料、出し汁などを含み成分調整された水溶性、油溶性または乳化物などからなる調味液、スープ、植物性又は動物性油脂、茶、酒類、アルコール、水などからなり、含浸に際して液状化でき含浸可能な周知な食品である。
【0031】
真空凍結乾燥工程は、通常の手順に従って行なえばよく、例えば固形状食品を−10〜−50℃程度に予備凍結し、これを真空凍結乾燥装置の耐圧性容器1内の棚6に載置したパレット状の開放容器8内に収容し、真空ポンプ2を作動させると共に、冷凍機4を作動させて、凝縮器5をコールドトラップとし、これに水分等の蒸気を凝結させる。
【0032】
このとき、凝縮器5の温度はできるだけ低くし、かつ耐圧性容器内の棚6上の温度はできるだけ上げておくことが、飽和水蒸気圧を上げることにより乾燥速度を上げるため、さらには蒸発潜熱を供給するために好ましい。
【0033】
一方、このような真空乾燥工程とは別に、前記した液体状食品9を耐圧性容器1の外部に設けられた液溜容器19に予め保持しておく。液溜容器19は、開閉栓(コック)21を開けて液体状食品9を外部から適量導入し、その後は開閉栓21を閉じて通常は密閉しておく。
【0034】
次いで、前記工程で凍結乾燥した固形状食品7に対し、給液路10の開閉栓21を閉じたまま開閉栓20を開けて液体状食品9を耐圧性容器1の開放容器8の内側に重力で注入し、給液しながら固形状食品7に液体状食品9を減圧下で含浸する。
【0035】
給液を続け、液体状食品9が給液路10および液溜容器19からなくなり、液体状食品9が固形状食品7の気孔に浸透した後、開閉栓21を開放すると、大気に開放された給液路10を介して耐圧性容器1には大気が流入する。なお、液体状食品9が給液路10および液溜容器19からなくなる以前に、耐圧性容器1に別途設けた開閉栓を用いて耐圧性容器1に大気を導入することも可能であるのは勿論である。
【0036】
このようにして液体状食品9は大気圧によって気孔内により深く侵入し、固形状食品の表面から内部までムラなく均等に充填され、品質の安定した保存性の良い複合食品が製造される。このとき使用される液状食品は、固形状食品の品質を損なわないように低温に調整された状態で使用されることが好ましい。
【0037】
このようにすると、固形状食品の内部は空気よりも先に液体状食品が早く浸透するから、空気に接触することなく、保存性の良い、例えば常温保存も可能なしっとりしたスナックなどの複合食品を製造できる。また、高粘度の油や油脂等も浸透可能であり、熱変性しやすい液状食品も変質することなく、固形状食品に浸透させて複合食品を製造することができる。
【0038】
また、液体状食品として、濃縮スープを調整し、その水分活性値を例えば0.8aw以下、好ましくは0.75aw以下、より好ましくは0.6aw以下に調整しておけば、極めて保存性のよい複合食品を製造できる。例示すれば、真空乾燥させた食肉類に水分活性を所定値に調整した濃縮スープを含浸することにより、食前に熱湯を注げば即席の肉入りスープとなる複合インスタント食品になる。
【実施例1】
【0039】
[練乳含有のイチゴの製造]
(i) 生鮮イチゴ果実(とよのか)を水洗後、額部(へた)を切り落とし、3〜5mmにスライスし、比較的小さなものはそのまま用いた。
(ii) 庫内温度−30℃の冷凍庫に収容し、予備凍結した。
(iii) これを実施形態で説明した構造の真空凍結乾燥器付き複合食品製造装置に収容し、棚上の開放容器内に置いて、真空凍結乾燥機能を作用させて乾燥させた。
(iv) 乾燥工程の終了したイチゴに対し、予め調整しておいた調味液(練乳+食塩+ソルビトール+水で、水分活性0.8aw以下に調整したもの。)を注入し、導入管を介して耐圧性容器を大気圧に開放し、昇圧させて含浸および浸透を行なった。
(v) 浸透が完了したことを目視にて確認した後、イチゴを複合食品製造装置から取り出し、常温保存の可能な練乳含有のイチゴを製造した。
【実施例2】
【0040】
[オレンジ味のリンゴスナック菓子の製造]
(i) 生鮮リンゴ果実を水洗後、皮を剥いて果肉部を3〜5mmにスライスした。
(ii) 庫内温度−30℃の冷凍庫に収容し、予備凍結した。
(iii) これを実施形態で説明した構造の真空凍結乾燥器付き複合食品製造装置に収容し、棚上の開放容器内に置いて、真空凍結乾燥機能を作用させて乾燥させた。
(iv) 乾燥工程の終了したリンゴに対し、予め調整しておいた調味液(濃縮タイプのオレンジ果汁+ソルビット+食塩で、水分活性0.8aw以下に調整したもの。)を注入し、導入管を介して耐圧性容器を大気圧に開放し、昇圧させて含浸および浸透を行なった。
(v) 浸透が完了したことを目視にて確認した後、リンゴを複合食品製造装置から取り出し、常温保存の可能なオレンジ味のリンゴスナック菓子を製造した。
【実施例3】
【0041】
[しっとりした食味のリンゴスナック菓子の製造]
(i) 生鮮リンゴ果実を水洗後、皮を剥いて果肉部を3〜5mmにスライスした。
(ii) 庫内温度−30℃の冷凍庫に収容し、予備凍結した。
(iii) これを実施形態で説明した構造の真空凍結乾燥器付き複合食品製造装置に収容し、棚上の開放容器内に置いて、真空凍結乾燥機能を作用させて乾燥させた。
(iv) 乾燥工程の終了したリンゴに対し、予め調整しておいた調味液(濃縮リンゴ果汁+ソルビット+食塩+クエン酸で、水分活性0.8aw以下に調整したもの。)を注入し、導入管を介して耐圧性容器を大気圧に開放し、昇圧させて含浸および浸透を行なった。
(v) 浸透が完了したことを目視にて確認した後、リンゴを複合食品製造装置から取り出し、しっとりした食味のリンゴスナック菓子を製造した。
【実施例4】
【0042】
[調理豆腐の製造]
(i) 豆腐を1〜2cm角の立方体形に、いわゆるダイスカットし、沸騰水中で1〜2分加熱した。
(ii) これを庫内温度−30℃の冷凍庫に収容し、予備凍結した。
(iii) これを実施形態で説明した構造の真空凍結乾燥器付き複合食品製造装置に収容し、棚上の開放容器内に置いて、真空凍結乾燥機能を作用させて乾燥させた。
(iv) 乾燥工程の終了した豆腐に対し、予め調整しておいた調味液(だし汁+醤油+砂糖で味付けした調味液)を注入し、導入管を介して耐圧性容器を大気圧に開放し、昇圧させて含浸および浸透を行なった。
(v) 浸透が完了したことを目視にて確認した後、豆腐を複合食品製造装置から取り出し、即席調理豆腐を製造した。得られた豆腐は、素材100gの豆腐が78gの味付け豆腐になり、これをスープ等の具材とし、お湯を注ぐとだし汁で煮た豆腐料理となった。またはそのまま食しても美味しいものが得られた。
【実施例5】
【0043】
[クッキングオニオンの製造]
(i) タマネギを1〜2cm角の立方体形に、いわゆるダイスカットし、沸騰水中で1〜2分加熱した。
(ii) これを庫内温度−30℃の冷凍庫に収容し、予備凍結した。
(iii) これを実施形態で説明した構造の真空凍結乾燥器付き複合食品製造装置に収容し、棚上の開放容器内に置いて、真空凍結乾燥機能を作用させて乾燥させた。
(iv) 乾燥工程の終了したタマネギに対し、予め調整しておいた香味油を注入し、導入管を介して耐圧性容器を大気圧に開放し、昇圧させて含浸および浸透を行なった。
(v) 浸透が完了したことを目視にて確認した後、タマネギを複合食品製造装置から取り出し、表面に付いた油を拭い取り、クッキングオニオンを製造した。得られた調理済みタマネギは、素材100gのタマネギが70gになり、これをスープ等の具材とれば、表面に浮き美味しい具材になった。またはそのまま食してもしっかりした食感を残した美味しいクッキングオニオンが得られた。
【0044】
以上のようにして得られた実施例の複合食品は、保存性にも優れたものであり、常温で1ヶ月以上の品質を保持でき、真空包装または窒素充填包装などを併用すれば、数ヶ月から1年以上の賞味性のよい品質を保持できた。
【符号の説明】
【0045】
1 耐圧性容器
2 真空ポンプ
3 吸気路
4 冷凍機
5 凝縮器
6 ヒータ付きの棚
7 固形状食品
8 開放容器
9 液体状食品
10 給液路
11 蓋
12 ヒンジ
13 ハンドル
14 ヒータ
15 融氷装置
16 ドレン
17 ピラニー真空計
18 棚温度調節計
19 液溜容器
20、21 開閉栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形状食品を真空凍結乾燥することにより液体成分を凍結し昇華させて乾燥させた後、この乾燥により前記固形状食品に形成された気孔に液体状食品を減圧下で含浸し、次いで昇圧して液体状食品を前記気孔内に浸透させることからなる複合食品の製造方法。
【請求項2】
固形状食品の気孔に液状食品を減圧下で含浸する際、固形状食品を氷結温度以上に加熱する請求項1に記載の複合食品の製造方法。
【請求項3】
耐圧性容器に真空ポンプの吸気路を接続し、前記耐圧性容器内部に冷凍機の凝縮器を装置すると共にヒータ付き棚を設けた真空凍結乾燥装置において、
前記棚には固形状食品を含浸処理可能な開放容器を載置し、この開放容器内に大気圧下の液体食品を供給可能な給液路を開閉可能に接続したことを特徴とする複合食品の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−273577(P2010−273577A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127697(P2009−127697)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(593015540)ファインフーズ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】