説明

要素が機械加工されている間に該要素の厚さ寸法をチェックするための装置および方法

研削作業中に半導体ウエハ(1)の厚さ寸法をチェックするための装置は、ウエハ(1)の機械加工される表面(2)上に赤外線を伝送して、前記表面、ウエハの反対側の表面(2’)、および/または、ウエハ中の異なる層を分離する表面(2”,2”’)によって反射されるビームを検出する光学プローブ(3)を含む。放射されて反射される放射線のビームは、部分的に空気(15)を通り抜け且つ部分的に略層流を伴って流れる低流量液体のクッション(30)を通り抜ける既知の一定の不連続性を伴う経路(4)に沿って進む。光学プローブのための支持・位置決め要素(7)は、液体クッションを形成する液圧ダクト(22,25)を含む。厚さ寸法をチェックするための方法は、前記経路での液体クッションの形成を伴っており、放射されて反射される放射線のビームが前記経路に沿って進行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削機械での機械加工中に半導体ウエハの厚さ寸法をチェックするための装置であって、赤外線帯域の光源と、反射ビームの検出器と、光学プローブとを有し、機械加工されるウエハの第1の表面へ向けて赤外線ビームを長手方向経路に沿って放射するとともに、第1の表面と機械加工されるウエハによって画定される少なくとも1つの異なる表面とによって反射されるビームを長手方向経路にほぼ沿って受けるために光源および検出器が光学プローブに接続される検出システムと、光学プローブのための支持・位置決め要素と、検出システムに接続される制御・処理ユニットと、を含む装置に関する。
【0002】
また、本発明は、研削機械での機械加工中に赤外線光学プローブと関連する支持・位置決め要素とによって半導体ウエハの厚さ寸法をチェックするための方法であって、赤外線ビームを供給するとともに、該赤外線ビームを光学プローブを通じて長手方向経路に沿って機械加工されるウエハの第1の表面へ向けて伝送するステップと、第1の表面と機械加工されるウエハによって画定される少なくとも1つの異なる表面とによって反射されて長手方向経路および光学プローブを通じて受けられるビームを検出するステップと、機械加工されるウエハの厚さ寸法に関する情報を得るために干渉システムを用いて反射ビームを処理するステップと、を含む方法に関する。
【背景技術】
【0003】
機械工具、より具体的には研削機械および研磨機械での機械加工の過程で半導体スライスまたはウエハの厚さ寸法をチェックするための既知のシステムが存在する。
【0004】
既知のシステムは、様々な種類のものがあり、例えば、機械加工されるウエハの少なくとも1つの表面と接触する機械的な感触器を有するゲージヘッドを挙げることができる。
【0005】
チェックされる部品に作用することができ且つ特定の寸法値を下回ることを許容しないこの種のシステムは、一方側がフィルムまたは支持要素に固定される半導体ウエハの厚さを正確にチェックすることが必要とされる事象では、頻繁に起こることから、適用され得ない。他の既知のシステムは、異なる種類のプローブ、例えば容量プローブ、誘導プローブ(渦電流プローブまたは他のプローブ)、または、超音波プローブを使用する。しかしながら、これらのシステムの限界は、チェックされ得る寸法(例えば、100ミクロン未満の厚さをチェックすることができない)および達成できる分解能(10ミクロン以上)の両方に関係する。これらの限界を克服するため、光学プローブを有するシステムを使用できる。US−A−6437868は、チェックされるべきウエハを支持する要素の内側に軸方向に位置される反射光学系を含むこの種の用途に関連している。ウエハまたはウエハを形成する層は、それを形成する1つまたは複数の材料(半導体材料、一般的にはシリコン)の特性に起因して、使用される赤外光を部分的に透過し、また、材料の厚さは、研削される側に対して反対側でチェックされる。
【0006】
しばしば、研削される側と同じ側でチェックを行なうことが必要であり或いは都合が良く、また、光学プローブは、例えばJP−A−08−216016で公開された日本国特許出願に示されるように、そのようなチェックを行なうことができる。行なわれるチェックの信頼性を向上させるため、一般に、光学プローブが作用する表面を空気または水などの清浄流体によって清浄に維持することが都合良い。
【0007】
このようにすると、特に伝送要素の不連続性および/または清浄流体の乱流現象に起因する送信ビームおよび/または受信ビームの特性の望ましくない制御不可能な変化により、光学プローブの動作が影響を受ける場合がある。また、様々な媒体が、放射線の部分吸収をもたらし、それにより、プローブに戻される光強度を制限する。
【0008】
結果として、より高い電気的増幅を使用することが必要であり、そのため、プローブがバックグラウンドノイズに晒されることが多くなる。
【0009】
清浄空気が使用される場合には、チェックを妨げて表面を汚染する異物を取り込まないように、この清浄空気を注意深く濾過しなければならならず、その結果、コストの増大がもたらされる。更に、機械加工される部品、特に非常に小さいシリコン厚(5−10ミクロンまで)に対する空気ジェットの機械的な作用を無視できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、研削作業中に半導体ウエハの厚さ寸法をチェックするための装置および方法であって、特に信頼でき、柔軟な態様で適用され得るとともに、高い性能基準を確保し、したがって、既知の装置および方法の問題を克服する、装置および方法を提供することである。この目的および他の目的は、請求項1および請求項11のそれぞれに係る装置および方法によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る装置は、光学プローブと、そのようなプローブのための特定の支持・位置決め要素とを含み、光学プローブによって放射されて受けられるビームが通過する限られた領域で低流量流体がパイプにより送られる。実際には、乱流を引き起こすことなく部品表面を清浄に維持する流体層または層流状態のクッションが形成される。プローブは、空気を通り抜ける経路の部分(吸収性が低い)およびプローブと部品の機械加工される表面との間の空間を満たす流体クッション中の経路の短い部分(吸収性が限られる)にわたって一般的には赤外線帯域の光ビームが進行するように支持・位置決め要素内に位置されて基準付けられる。空気中の経路の部分と流体中の経路の部分とがガラスによって分離されることが好ましい。利用される流体は、研削作業の過程で使用されるものと同じ流体であることが有益であり、一般的には脱塩水である。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、支持・位置決め要素は、分離ガラスに接するように配置される径方向チャンネル(例えば、互いに対して90°の角度を成す4つの径方向チャンネル)を含む。流体は、径方向チャンネルにより送られて、そのようなガラスを包む。このようにして、気泡の形成が防止され、流体の規則的な流れおよび層流の維持が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】幾つかの細部が部分的に正面図で示された本発明に係る厚さチェックのための装置の簡略化された側断面図である。
【図2】図1のII−II破線に従った図1に示される装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで、添付図面を参照して、本発明を非限定的な例として説明する。
【0015】
図1は、要素の厚さ寸法をチェックするための装置を作業状態で示している。チェックされる要素は、例えば、不連続面2’’、2’’’によって分離される異なる物理的特徴を有する層1’、1’’、1’’’から形成されてもよいシリコンなどの半導体材料から成るスライスまたはウエハ1である。層および不連続面を有するウエハの構造は、それ自体良く知られており、非常に概略的な態様で図1に示されている。また、層の数および寸法も単なる一例として示されている。厚さチェックは、ウエハ1の第1の表面2が適切な機械工具で研削される間に行なうことができ、前記機械工具は、それ自体知られており、簡単にするために、参照符号6が研削ホイールを簡略化された態様で示す状態で図1に表わされている。
【0016】
検出システムは、光ファイバ5によって制御・処理ユニット10に接続される既知のタイプの光学プローブ3と、赤外線帯域の光を発する光源11と、反射ビームを受けて対応する電気信号を与える検出器12とを含む。光源11および検出器12は、それ自体知られており、例えば制御・処理ユニット10の構成要素として簡略化された態様で図1に示されている。支持・位置決め要素7は外部支持体9に対して既知の態様で固定されており、プローブ3を収容してこのプローブの位置を第1の表面2に対して規定する。図1に正面図で部分的に示される保護シース13は、光ファイバ5を収容する。
【0017】
前述したように、光学プローブ3は既知のタイプのものである。動作の詳細に立ち入ることなく、プローブ3は赤外線のビームを放射し、該ビームは、長手方向経路4に沿って進んで、部分的にウエハ1の第1の表面2によって反射されるとともに部分的にウエハ1を通り抜け−これは、それぞれの層1’、1’’、1’’’を形成する材料の典型的な特性に起因する−、不連続面2’’、2’’’によっておよび/または反対側の外面2’によって反射される。異なる表面2、2’、2’’および/または2’’’によって反射されるビームは、同じ長手方向経路4にほぼ沿って進行して検出器12へと伝送され、検出器の出力信号は、ウエハの厚さ寸法、すなわち、層1’、1’’、1’’’の厚さおよび/またはウエハ1の全体の厚さに関する情報を得るために制御・処理ユニット10の回路で干渉方法によって適切に処理される。この種のシステムは、極めて小さい厚さを有するウエハを(10ミクロン未満であっても)チェックすることができる。
【0018】
支持・位置決め要素7は、放射線ビームが長手方向経路に沿って通過できるようにするためにプローブ3と連通する軸方向開口15を伴う略円筒状に形成された本体14を有する。本体14の一端には例えばネジ結合によって閉塞プレート16が接続され、該閉塞プレートは、軸方向開口15と位置合わせされる出口穴17を含む。本体14とプレート16との間には分離ガラス20が配置されており、この分離ガラスは、これらの2つの部品間の結合により軸方向開口15でロックされる。ガラス20は、リングガスケットまたは“Oリング”19によってそのような軸方向開口15をシールする。
【0019】
支持・位置決め要素7のプレート16には、径方向入口開口23を有する液圧ダクト22と、径方向入口開口23と出口穴17とを連通させる内部チャンネル25とが存在し、出口穴17は、図1に示される作業位置にあるウエハ1の第1の表面2と対向する。図示の例において、内部チャンネル25は、4つであって、長手方向経路4に対して径方向に配置されており、互いに対して90°の角度を成すように配置される。液圧ダクト22の径方向開口23は、−図1に矢印26によって簡略化された態様で示される既知の方法で−低流量液体27の外部液体源と連通しており、例えば、前記液体は、研削工程において冷却剤として使用される。液体27は液圧ダクト22によって出口穴17へ向けて送られ、そのような液体27は、出口穴17を通じてプレート16から流出して、ウエハ1の機械加工される表面2に達する。径方向に配置されてガラス20の表面に接する4つの内部チャンネル25の存在は、ガラス20を包む略層流の状態で穴17を通じて流出する液体27の規則的な流れを向上させるとともに、プローブ3とウエハ1の表面2との間に液体クッション30を形成する。
【0020】
そのため、(放射されて反射される)放射線のビームの長手方向経路4は、吸収が最小である軸方向開口15中の空気を通り抜ける経路の部分と、分離ガラス20を一旦通過した後における略層流で流れる液体クッション30を通り抜ける経路の短い部分とを含む。したがって、そのような長手方向経路4における不連続性は、制御下にあり、一定である(例えば乱流水の表面の場合のように偶発的ではない)。これは、ビームの長手方向経路4中に存在する偽りの厚さを特定して排除できるアルゴリズムで動作することが可能であるため、干渉プロセスによって得られる結果を十分信頼できるものにする。
【0021】
本明細書中でこれまで図示して説明してきたものに関する変形は、例えば、支持・位置決め要素における液圧ダクト22の実施および構造において実現可能である。実際には、内部チャンネルの数および/または配置が前述した内部チャンンネル(25)に対して異なり得るが、それにより、先に挙げられて強調された適切な特性を有する液体クッション30の形成が確保される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削機械(6)での機械加工中に半導体ウエハ(1)の厚さ寸法をチェックするための装置であって、
赤外線帯域の光源(11)と、反射ビームの検出器(12)と、光学プローブ(3)とを有し、機械加工されるウエハ(1)の第1の表面(2)へ向けて赤外線ビームを長手方向経路(4)に沿って放射するとともに、前記第1の表面(2)と機械加工されるウエハ(1)によって画定される少なくとも1つの異なる表面(2’、2’’、2’’’)とによって反射されるビームを前記長手方向経路(4)にほぼ沿って受けるために前記光源(11)および前記検出器(12)が光学プローブ(3)に接続される検出システムと、
光学プローブ(3)のための支持・位置決め要素(7)と、
検出システムに接続される制御・処理ユニット(10)と、
を含む装置において、
前記支持・位置決め要素(7)が液圧ダクト(22)を含み、該液圧ダクトは、液体(27)の外部液体源に接続されるとともに、光学プローブ(3)と機械加工されるウエハ(1)の前記第1の表面(2)との間に層流状態の液体(27)のクッション(30)を形成するようになっており、前記長手方向経路(4)が前記液体クッション(30)を含むことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記液圧ダクト(22)は、ウエハ(1)の前記第1の表面(2)と対向して配置されるようになっている出口穴(17)と連通する入口開口(23)および内部チャンネル(25)を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記内部チャンネル(25)が前記長手方向経路(4)に対して径方向に配置される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記内部チャンネル(25)は、4つであり、それらが互いに対して90°の角度を成すように配置される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
支持・位置決め要素(7)が本体(14)と閉塞プレート(16)とを含み、前記液圧ダクト(22)が閉塞プレート(16)に設けられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
支持・位置決め要素(7)が軸方向開口(15)を形成し、長手方向経路(4)が前記軸方向開口(15)を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
軸方向開口(15)がガラス(20)によって液圧ダクト(22)からシール分離される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記液体(27)が脱塩水である、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記液体(27)が研削機械によるウエハ(1)の機械加工でも使用される、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記検出器(12)は、受けられる反射ビームに対応する電気信号を発するようになっており、制御・処理ユニット(10)は、検出器(12)に接続され且つ前記電気信号を受けて干渉タイプの処理を実行するようになっている回路を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
研削機械(6)での機械加工中に赤外線光学プローブ(3)と関連する支持・位置決め要素(7)とによって半導体ウエハ(1)の厚さ寸法をチェックするための方法であって、
赤外線ビームを発生させるとともに、該赤外線ビームを光学プローブ(3)を通じて長手方向経路(4)に沿って機械加工されるウエハ(1)の第1の表面(2)へ向けて伝送するステップと、
前記第1の表面(2)と機械加工されるウエハ(1)によって画定される少なくとも1つの異なる表面(2’、2’’、2’’’)とによって反射されて長手方向経路(4)および光学プローブ(3)を通じて受けられるビームを検出するステップと、
機械加工されるウエハ(1)の厚さ寸法に関する情報を得るために干渉システムを用いて反射ビームを処理するステップと、
を含む方法において、
前記支持・位置決め要素(7)に配置される液圧ダクト(22)を通じて液体(27)を送るとともに、光学プローブ(3)と機械加工されるウエハ(1)の前記第1の表面(2)との間に層流状態の前記液体(27)のクッション(30)を形成し、前記長手方向経路(4)が液体クッション(30)を含むステップと、
を更に含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
長手方向経路(4)が空気を通り抜ける経路の部分(15)も含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記液体(27)は、研削機械によるウエハ(1)の機械加工で使用される冷却剤である、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ウエハによって画定される前記少なくとも1つの異なる表面は、前記第1の表面(2)と反対側のウエハ(1)の外面(2’)である請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ウエハ(1)が少なくとも2つの層(1’、1’’、1’’’)から形成され、ウエハによって画定される前記少なくとも1つの異なる表面は、前記少なくとも2つの層(1’、1’’、1’’’)を分離する不連続面(2’’、2’’’)である請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−533605(P2010−533605A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517371(P2010−517371)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059438
【国際公開番号】WO2009/013231
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(500200708)マーポス、ソチエタ、ペル、アツィオーニ (33)
【氏名又は名称原語表記】MARPOSS S.P.A.
【Fターム(参考)】