説明

角速度センサの0点電位補正方法およびナビゲーション装置

【課題】 角速度センサの0点電位を補正する機会を格段に増やすことによって、0点電位の補正を十分に行うことができ、ひいては、ナビゲーションを高精度に行うことができる「角速度センサの0点電位補正方法およびナビゲーション装置」を提供すること。
【解決手段】 所定の区間における車両の実走行履歴と、当該所定の区間における道路形状とを比較し、実走行履歴が道路形状と一致しない場合には、角速度センサ11の0点電位の値を現在の値から変更することによって実走行履歴を道路形状と一致させる処理を行い、この処理によって変更された0点電位を、0点電位の基準値として設定することによって0点電位を補正すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角速度センサの0点電位補正方法およびナビゲーション装置に係り、特に、車両に搭載された角速度センサの0点電位を、0点電位の基準値と一致するように補正するのに好適な角速度センサの0点電位補正方法およびナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車載用のナビゲーション装置においては、角速度センサと称される車両の角速度を計測するセンサが用いられている。
【0003】
この角速度センサは、車速センサ等とともに自車位置を測位するために重要な役割を担っている。
【0004】
しかしながら、この角速度センサは、角速度0〔rad/s〕に対応する電位である0点電位の出力特性が、温度に依存して変化し、さらに、当該出力特性が個体ごとに異なるといった性質を有している。
【0005】
したがって、ナビゲーション装置が常に正確な自車位置を把握するためには、角速度センサの0点電位を、1つの基準値と一致させることが不可欠となっていた。
【0006】
そこで、これまでにも、角速度センサの0点電位を補正するために種々の方法が採用されていた。
【0007】
1つの方法としては、自車が走行する前などにおいて、角速度センサを起動した直後の角速度センサの電位の出力値を0点電位の基準値として設定しておき、次に角速度センサを起動した直後において、角速度センサの出力値(0点電位)が前記設定した基準値からずれている場合に、出力値を前記基準値と一致させるように補正する方法が採用されている。
【0008】
また、他の方法としては、信号待ちや安全確認のために停車した場合などにおいて、自車が所定の時間(例えば3秒)停車したときの角速度センサの電位の出力値を0点電位の基準値として設定しておき、次に自車が所定の時間停車したときに、角速度センサの出力値(0点電位)が前記設定した基準値からずれている場合に、出力値を前記基準値と一致させるように補正する方法が採用されている。
【0009】
さらに、他の方法としては、直線道路を直進している場合などにおいて、角度センサが所定の時間(例えば10秒)ばらつきのない電位を出力し続けたときの出力値を0点電位の基準値として設定しておき、次に角度センサが所定の時間ばらつきのない電位を出力し続けたときに、角速度センサの出力値(0点電位)が前記設定した基準値からずれている場合に、出力値を前記基準値と一致させるように補正する方法が採用されている。
【0010】
なお、これらの方法には、GPSによって取得した自車位置の情報が補佐的に用いられる場合がある。
【0011】
【特許文献1】特開平9−318384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、角速度センサは、起動直後において電位が安定しないという起動ドリフト特性を有するため、前述した角速度センサを起動した直後の角速度センサの電位の出力値を0点電位の基準値として設定して補正を行う方法では、適切な補正を行うことができない場合がある。
【0013】
また、交通状況によっては、信号待ちや安全確認のために停車する機会が少ない場合もあるため、前述した所定の時間の停車時における角速度センサの電位の出力値を0点電位の基準値として設定して補正を行う方法では、補正の機会が少なすぎる場合がある。
【0014】
さらに、地理的条件によっては、直線道路を直進する機会が少ない場合もあるため、前述した角度センサが所定の時間ばらつきのない電圧を出力し続けたときの出力値を0点電位の基準値として設定して補正を行う方法では、やはり補正の機会が少なすぎる場合がある。
【0015】
したがって、従来は、角速度センサの0点電位の補正を十分に行うことができないといった問題が発生していた。
【0016】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、角速度センサの0点電位を補正する機会を格段に増やすことによって、0点電位の補正を十分に行うことができ、ひいては、ナビゲーションを高精度に行うことができる角速度センサの0点電位補正方法およびナビゲーション装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述した目的を達成するため、本発明に係る角速度センサの0点電位補正方法の特徴は、車両に搭載された角速度センサの0点電位を、0点電位の基準値と一致させるように補正する角速度センサの0点電位補正方法であって、角速度センサの0点電位に依存する所定の区間における車両の実走行履歴と、当該所定の区間における道路形状とを比較し、前記実走行履歴が前記道路形状と一致しない場合には、前記角速度センサの0点電位の値を現在の値から変更することによって前記実走行履歴を前記道路形状と一致させる処理を行い、この処理によって変更された0点電位を、0点電位の基準値として設定することによって0点電位を補正する点にある。
【0018】
そして、このような方法によれば、所定の区間における車両が実際に走行した軌跡である実走行履歴(以下、同様)を、当該区間における道路形状と一致させる処理を行い、この処理によって変更された0点電位を基準値として設定して0点電位の補正を行うことにより、0点電位の補正あるいは現在の値の保持を、車両が所定の区間を経るたびに行うことが可能となる。
【0019】
また、本発明に係る角速度センサの0点電位補正方法の特徴は、車両に搭載された角速度センサの0点電位を、0点電位の基準値と一致させるように補正する角速度センサの0点電位補正方法であって、角速度センサの0点電位に依存する所定の区間における車両の実走行履歴と、当該区間における道路形状とを比較し、前記実走行履歴が前記道路形状と一致しない場合には、前記角速度センサの0点電位の値を現在の値から変更することによって前記実走行履歴を前記道路形状と一致させる処理を複数回行い、これら複数回の処理によって変更された各0点電位から補正値を求め、この補正値を0点電位の基準値として設定することによって0点電位を補正する点にある。
【0020】
そして、このような方法によれば、所定の区間における車両の実走行履歴を当該区間における道路形状と一致させる処理を複数回行い、これら複数回の処理によって変更された各0点電位から求められた補正値を基準値として設定して0点電位の補正を行うことにより、0点電位の補正あるいは現在の値の保持を、車両が所定の区間を経るたびに更に高精度に行うことが可能となる。
【0021】
さらに、本発明に係る角速度センサの0点電位補正方法の特徴は、実走行履歴を回転させたとしても回転後における実走行履歴が道路形状と一致しない場合に、前記角速度センサの0点電位の値を現在の値から変更することによって前記実走行履歴を前記道路形状と一致させる処理を行う点にある。
【0022】
そして、このような方法によれば、例えば、所定の区間の始点における自車両の方位(以下、自車方位と称する)が適正でなかった等の、0点電位が基準値からずれていること以外の原因によって実走行履歴が道路形状と一致しなかった場合において、実走行履歴を回転させることによって回転後における実走行履歴が前記道路形状と一致すれば、0点電位を補正する必要はなく、現在の値を保持することが可能となる。
【0023】
さらにまた、本発明に係るナビゲーション装置の特徴は、角速度センサと、当該角速度センサの0点電位を、0点電位の基準値と一致させるように補正する補正手段とを備えたナビゲーション装置であって、前記補正手段が、角速度センサの0点電位に依存する所定の区間における車両の実走行履歴と、当該所定の区間における道路形状とを比較し、前記実走行履歴が前記道路形状と一致しない場合には、前記角速度センサの0点電位の値を現在の値から変更することによって前記実走行履歴を前記道路形状と一致させる処理を行い、この処理によって変更された0点電位を、0点電位の基準値として設定することによって0点電位を補正する点にある。
【0024】
そして、このような構成によれば、補正手段により、所定の区間における車両の実走行履歴を当該区間における道路形状と一致させる処理を行い、この処理によって変更された0点電位を基準値として設定して0点電位の補正を行うことにより、角速度センサの0点電位の補正あるいは現在の値の保持を、車両が所定の区間を経るたびに行うことが可能となる。
【0025】
また、本発明に係るナビゲーション装置の特徴は、角速度センサと、当該角速度センサの0点電位を、0点電位の基準値と一致させるように補正する補正手段とを備えたナビゲーション装置であって、前記補正手段が、角速度センサの0点電位に依存する所定の区間における車両の実走行履歴と、当該区間における道路形状とを比較し、前記実走行履歴が前記道路形状と一致しない場合には、前記角速度センサの0点電位の値を現在の値から変更することによって前記実走行履歴を前記道路形状と一致させる処理を複数回行い、これら複数回の処理によって変更された各0点電位から補正値を求め、この補正値を0点電位の基準値として設定することによって0点電位を補正する点にある。
【0026】
そして、このような構成によれば、補正手段により、所定の区間における車両の実走行履歴を当該区間における道路形状と一致させる処理を複数回行い、これら複数回の処理によって変更された各0点電位から求められた補正値を基準値として設定して0点電位の補正を行うことにより、角速度センサの0点電位の補正あるいは現在の値の保持を、車両が所定の区間を経るたびに更に高精度に行うことが可能となる。
【0027】
さらに、本発明に係るナビゲーション装置の特徴は、補正手段が、実走行履歴を回転させたとしても回転後における実走行履歴が道路形状と一致しない場合に、前記角速度センサの0点電位の値を現在の値から変更することによって前記実走行履歴を前記道路形状と一致させる処理を行う点にある。
【0028】
そして、このような構成によれば、0点電位が基準値からずれていること以外の原因によって実走行履歴が道路形状と一致しなかった場合において、実走行履歴を回転させることによって回転後における実走行履歴が前記道路形状と一致すれば、角速度センサの0点電位を補正する必要はなく、現在の値を保持することが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る角速度センサの0点電位補正方法によれば、所定の区間における車両の実走行履歴を当該区間における道路形状と一致させる処理を行い、この処理によって変更された0点電位を基準値として設定して0点電位の補正を行うことにより、0点電位の補正あるいは現在の値の保持を、車両が所定の区間を経るたびに行うことができる結果、角速度センサの0点電位を補正する機会を格段に増やすことによって、0点電位の補正を十分に行うことができ、ひいては、ナビゲーションを高精度に行うことができる。
【0030】
さらに、付加的な効果としては、本発明によれば、温度特性が悪い安価な角速度センサを用いる場合においても、良好な温度特性を有する高価な角速度センサと同様の性能(例えば自車位置追従性能)を発揮することができ、コストを削減することができる。
【0031】
また、本発明に係る角速度センサの0点電位補正方法によれば、所定の区間における車両の実走行履歴を当該区間における道路形状と一致させる処理を複数回行い、これら複数回の処理によって変更された各0点電位から求められた補正値を基準値として設定して0点電位の補正を行うことにより、0点電位の補正あるいは現在の値の保持を、車両が所定の区間を経るたびに更に高精度に行うことができる結果、角速度センサの0点電位を更に高精度に補正する機会を格段に増やすことによって、0点電位の補正を十分にかつ更に高精度に行うことができ、ひいては、ナビゲーションを更に高精度に行うことができる。
【0032】
さらに、本発明に係る角速度センサの0点電位補正方法によれば、0点電位が基準値からずれていること以外の原因によって実走行履歴が道路形状と一致しなかった場合において、実走行履歴を回転させることによって回転後における実走行履歴が前記道路形状と一致すれば、0点電位を補正する必要はなく、現在の値を保持することができる結果、0点電位の補正を無駄なく効率的に行うことができる。
【0033】
さらにまた、本発明に係るナビゲーション装置によれば、補正手段により、所定の区間における車両の実走行履歴を当該区間における道路形状と一致させる処理を行い、この処理によって変更された0点電位を基準値として設定して0点電位の補正を行うことにより、角速度センサの0点電位の補正あるいは現在の値の保持を、車両が所定の区間を経るたびに行うことができる結果、角速度センサの0点電位を補正する機会を格段に増やすことによって、0点電位の補正を十分に行うことができ、ナビゲーションを高精度に行うことができる。
【0034】
また、本発明に係るナビゲーション装置によれば、補正手段により、所定の区間における車両の実走行履歴を当該区間における道路形状と一致させる処理を複数回行い、これら複数回の処理によって変更された各0点電位から求められた補正値を基準値として設定して0点電位の補正を行うことにより、角速度センサの0点電位の補正あるいは現在の値の保持を、車両が所定の区間を経るたびに更に高精度に行うことができる結果、角速度センサの0点電位を更に高精度に補正する機会を格段に増やすことによって、0点電位の補正を十分にかつ更に高精度に行うことができ、ナビゲーションを更に高精度に行うことができる。
【0035】
さらに、本発明に係るナビゲーション装置によれば、0点電位が基準値からずれていること以外の原因によって実走行履歴が道路形状と一致しなかった場合において、実走行履歴を回転させることによって回転後における実走行履歴が前記道路形状と一致すれば、角速度センサの0点電位を補正する必要はなく、現在の値を保持することができる結果、0点電位の補正を無駄なく効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明に係るナビゲーション装置の実施形態について、図1乃至図6を参照して説明する。
【0037】
図1に示すように、本実施形態におけるナビゲーション装置1は、大別すると、ナビゲーション装置本体2と、このナビゲーション装置本体2の入力側に接続された自立航法センサ3、地図・地域情報格納部5、人工衛星情報受信部6および交通情報受信部7と、ナビゲーション装置本体2の出力側に接続されたディスプレイ装置8と、ナビゲーション装置本体2と相互に通信可能に接続されたネットワーク機器9および外部通信機器10とによって構成されている。
【0038】
自立航法センサ3は、角速度センサ11を有しており、この角速度センサ11は、車両の角速度を検出して検出結果を出力するようになっている。この検出結果は、当然、角速度0〔rad/s〕に対応する角速度センサ11の0点電位(以下、単に0点電位と称する)に依存した値をとることになる。
【0039】
ここで、角速度センサ11の検出結果は、ナビゲーションにおける自車位置の測位等に用いられるため、常に適正な値を示すことが好ましく、そのためには、0点電位が所定の基準値と一致していることが必要となる。
【0040】
しかし、前述したように、0点電位は、温度に依存する出力特性を有する上に、個体によって出力特性が異なるため、一定した値をとることが困難である。
【0041】
そこで、本実施形態においては、0点電位を基準値と一致させる0点電位補正を行うための手段が講ぜられている。
【0042】
すなわち、本実施形態において、ナビゲーション装置本体2には、0点電位を補正する補正手段としての制御・演算部12が内蔵されている。
【0043】
制御・演算部12の入力側には、前述した角速度センサ11が接続されており、この角速度センサ11から出力された前記検出結果は、インターフェース14(I.F.)を介して制御・演算部に入力されるようになっている。
【0044】
また、自立航法センサ3は、加速度センサ15を有しており、この加速度センサ15は、車両の加速度を検出して検出結果を出力するようになっている。加速度センサ15から出力された検出結果は、インターフェース14(I.F.)を介して制御・演算部12に入力されるようになっている。
【0045】
さらに、自立航法センサ3は、距離センサ16を有しており、この距離センサ16は、車両の走行距離を検出して検出結果を出力するようになっている。距離センサ16から出力された検出結果は、インターフェース14(I.F.)を介して制御・演算部12に入力されるようになっている。
【0046】
人工衛星情報受信部6は、GPS/DGPS受信機18を有しており、このGPS/DGPS受信機18は、GPSやDGPS(ディファレンシャルGPS)によって自車の絶対位置の情報を受信し、受信結果を出力するようになっている。GPS/DGPS受信機18から出力された受信結果は、インターフェース14(I.F.)を介して制御・演算部12に入力されるようになっている。
【0047】
制御・演算部12には、データ記憶部19が接続されており、このデータ記憶部19は、演算用メモリ20、一時記憶用メモリ21およびデータ保存用メモリ22を有している。
【0048】
制御・演算部12は、自立航法センサ3から入力された検出結果をデータ記憶部19の一時記憶用メモリ21またはデータ保存用メモリ22に記憶させるようになっている。
【0049】
そして、制御・演算部12は、一時記憶用メモリ21またはデータ保存用メモリ22に記憶された自立航法センサ3の検出結果を読み出し、この読み出した検出結果に基づいて、所定の区間における車両の実走行履歴(以下、単に実走行履歴と略称する)を、演算用メモリ20を用いて演算するようになっている。
【0050】
この演算によって求められた実走行履歴は、0点電位、自立航法センサ3における各センサ11,15,16の検出結果および所定の区間の始点における自車方位に依存した形状の軌跡を示すものとなる。なお、自車方位については、GPS/DGPS受信機18の受信結果に基づいて取得することができる。
【0051】
そして、制御・演算部12は、前記演算によって求められた実走行履歴のデータを、一時記憶用メモリ21またはデータ保存用メモリ22に記憶させるようになっている。
【0052】
地図・地域情報格納部5は、地図情報や地域情報が格納されたメモリカード24、iVDR(Information Versatile Disk for Removable usage)25、HDD(ハードディスクドライブ)26およびCD/DVD−ROM27の各構成部を有しており、これらの構成部は、それぞれインターフェース14(I.F.)を介して制御・演算部12に接続されている。
【0053】
制御・演算部12は、地図・地域情報格納部5から地図情報を読み出すとともに、GPS/DGPS受信機18から自車の絶対位置の情報を取得してマップマッチングを行うことによって、前記所定の区間における道路形状(以下、単に道路形状と略称する)を取得するようになっている。
【0054】
そして、制御・演算部12は、取得した前記道路形状のデータを、一時記憶用メモリ21またはデータ保存用メモリ22に記憶させるようになっている。
【0055】
さらに、制御・演算部12は、一時記憶用メモリ21またはデータ保存用メモリ22から、前記実走行履歴のデータと、前記道路形状のデータとを読み出して両者を比較し、両者が一致するか否かを判定するようになっている。
【0056】
そして、制御・演算部12は、図2に示すように、地点Aと地点Bとを結ぶ前記所定の区間において、前記実走行履歴と、前記道路形状とが一致する場合には、0点電位の値が基準値と一致する適正な値であると判断し、0点電位の値を現在の値に保持するようになっている。
【0057】
一方、制御・演算部12は、図3および図4に示すように、前記実走行履歴と、前記道路形状とが一致しない場合には、前記実走行履歴を回転させる回転処理を行い、回転後における実走行履歴が、前記道路形状と一致するか否かを判定するようになっている。
【0058】
そして、制御・演算部12は、前記回転処理の結果、図3の実走行履歴を回転させた後の図5に示すように、回転後における実走行履歴が、前記道路形状と一致した場合には、図2の場合と同様に0点電位の値が基準値と一致する適正な値であると判断し、0点電位の値を現在の値に保持するようになっている。
【0059】
なお、図3における実走行履歴は、0点電位の値は基準値と一致しているが、前記所定の区間の始点における自車方位が適正でなかった場合に示される軌跡である。
【0060】
これに対し、制御・演算部12は、前記回転処理の結果、図4の実走行履歴を回転させた後の図6に示すように、回転後における実走行履歴が、前記道路形状と一致しない場合には、現在の0点電位の値が基準値からずれていると判断して、0点電位を基準値に一致させる補正を行うようになっている。
【0061】
すなわち、制御・演算部12は、0点電位の値を現在の値から変更することによって、前記実走行履歴を前記道路形状と一致させる処理を行うようになっている。
【0062】
この処理において、制御・演算部12は、0点電位を変更した後における実走行履歴(以下、シミュレート軌跡と称する)が、前記道路形状と一致するか否かのシミュレーションを行うようになっている。
【0063】
このシミュレーションは、0点電位の値を逐次変更することによって、シミュレート軌跡が前記道路形状と一致するまで繰り返し行われるようになっている。 また、制御・演算部12は、前記実走行履歴を前記道路形状と一致させる処理を行うに際して、必要に応じて、シミュレート軌跡を回転させる回転処理も行うようになっている(図8ステップ16参照)。
【0064】
そして、制御・演算部12は、前記シミュレーションの結果、シミュレート軌跡が道路形状と一致した場合には、当該シミュレーションによる変更後における0点電位を基準値として設定するようになっている。これにより、0点電位の値を基準値と一致する値に補正することができる。
【0065】
そして、制御・演算部12は、前記回転処理後における判定によって現在の値に保持された0点電位(基準値)あるいは前記シミュレーションによって補正された0点電位(基準値)のデータをデータ保存用メモリ22に記憶させ、この記憶させた0点電位に基づいて、自車位置の測位等のナビゲーションに必要な制御を行うようになっている。
【0066】
したがって、本実施形態においては、制御・演算部12によるシミュレーションによって、前記実走行履歴を前記道路形状と一致させる処理を行い、この処理によって変更された0点電位を基準値として設定して0点電位の補正を行うことにより、0点電位の補正あるいは現在の値の保持を、車両が所定の区間を経るたびに行うことが可能となる。また、実走行履歴を回転させることによって回転後における実走行履歴が前記道路形状と一致すれば、0点電位を補正せずに現在の値を保持することができる結果、0点電位の補正を無駄なく効率的に行うことが可能となる。
【0067】
なお、前記実走行履歴を前記道路形状と一致させる処理は、必ずしも車両が所定の区間を経た直後に行う必要はなく、当該所定の区間に対応する実走行履歴のデータと道路形状のデータとをデータ記憶部19に記憶させておきさえすれば、車両が所定の区間を経て時間が経過した後においても、データ記憶部19から各データを読み出すことによっていつでも実行することができる。
【0068】
また、前記所定の区間については、コンセプトに応じて種々の値を設定することができる。例えば、200mの走行距離を前記所定の区間としてもよい。この場合には、0点電位の補正あるいは現在の値の保持を、車両が200m進行するたびに行うことが可能となる。
【0069】
ところで、前記実走行履歴を前記道路形状と一致させる処理を前記所定の区間につき1回のみ行い、この処理によって変更された0点電位を基準値として設定すれば、0点電位を補正することはできるが、この1回の処理が、誤った道路形状を取得した上でなされたものである場合には、補正後の0点電位が今まで以上に誤った値を示す虞がある。
【0070】
そこで、より好ましい実施形態としては、制御・演算部12によって、前記所定の区間ごとに、前記実走行履歴を前記道路形状と一致させる処理を複数回行い、これら複数回の処理によって変更された各0点電位から補正値を求め、この補正値を0点電位の基準値として設定することによって0点電位を補正する。
【0071】
なお、前記補正値は、例えば、前記複数回の処理によって変更された各0点電位から算出された平均値であってもよいし、または、各0点電位における最も頻度の高い値を前記補正値とする多数決によって求められた多数決値であってもよい。多数決値の場合、例えば、1回目の処理によって変更された0点電位が2600mV、2回目が2650mV、3回目が2600mVとなる場合には、2600mVが補正値となる。
【0072】
そのようにすれば、例えば、所定の区間について誤った道路形状を取得した上で前記実走行履歴を前記道路形状と一致させる処理が1回なされたとしても、同じ区間について正しい道路形状を取得した上で前記実走行履歴を前記道路形状と一致させる処理を多数回行い、各処理によって変更された0点電位から求められた補正値(例えば、平均値や多数決値等)を基準値として設定することができる。
【0073】
この結果、誤った道路形状が取得されている場合における誤差を少なくすることができ、角速度センサ11の0点電位の補正を更に高精度に行うことが可能となる。
【0074】
なお、前記実走行履歴を前記道路形状と一致させる処理を複数回行う場合、各処理に対応する道路形状は、同一の区間についてのものであるが、各道路形状は、制御・演算部12による複数回のマップマッチングによって個別に取得されていることが前提となる。
【0075】
上記構成の他にも、ナビゲーション装置1は、交通情報受信部7にVICS/RDS受信機28を有しており、このVICS/RDS受信機28は、VICS(Vehicle Information and Communication System)やRDS(Radio Data System)によって交通情報を受信し、受信結果を出力するようになっている。VICS/RDS受信機28から出力された受信結果は、インターフェース14(I.F.)を介して制御・演算部12に入力されるようになっている。
【0076】
また、制御・演算部12には、画像処理部30が接続されており、この画像処理部30は、制御・演算部12の制御により、ナビゲーションの際にディスプレイ装置8に表示させる画像データを作成して出力するようになっている。画像処理部30によって出力された画像データは、インターフェース14(I.F.)を介してディスプレイ装置8に入力されるようになっている。
【0077】
さらに、制御・演算部12には、音声処理部31が接続されており、この音声処理部31は、制御・演算部12の制御により、ナビゲーションの際にディスプレイ装置8の図示しないスピーカに音声出力させる音声データを作成して出力するようになっている。音声処理部31によって出力された音声データは、インターフェース14(I.F.)を介してディスプレイ装置8に入力されるようになっている。
【0078】
次に、本発明に係る角速度センサ11の0点電位補正方法の実施形態について、図7および図8を参照して説明する。
【0079】
なお、本実施形態における0点電位補正方法は、前述したナビゲーション装置1を用いて行うことができる。
【0080】
すなわち、0点電位補正処理を開始した後、まず、図7のステップ1(ST1)に示すように、制御・演算部12によって前記実走行履歴と前記道路形状とが一致するか否かを判定し、一致する場合にはステップ2(ST2)に進み、一致しない場合にはステップ3(ST3)に進む。
【0081】
ステップ2(ST2)において、制御・演算部12は、0点電位が基準値と一致した適正な値であると判断して0点電位の値を現在の値に保持して処理を終了する。
【0082】
一方、ステップ3(ST3)においては、制御・演算部12により、実走行履歴を回転させる回転処理を行った後に、ステップ4(ST4)に進む。
【0083】
なお、ステップ3(ST3)から後述するステップ6(ST6)までの工程は、0点電位を補正する必要があるか否かを判断する工程となる。
【0084】
次いで、ステップ4(ST4)においては、制御・演算部12により、回転後における実走行履歴が道路形状と一致するか否かを判定し、一致する場合にはステップ7(ST7)に進み、一致しない場合にはステップ5(ST5)に進む。
【0085】
ステップ7(ST7)においては、制御・演算部12により、0点電位の値は基準値と一致しているが前記所定の区間の始点における自車方位が適正でなかったと判断して自車方位を修正する。そして、自車方位を修正した後には、ステップ2(ST2)に進む。
【0086】
一方、ステップ5(ST5)においては、制御・演算部12により、マッチングが不可能であるか否か、すなわち、実走行履歴の回転角度を変更したとしても回転後における実走行履歴を道路形状と一致させることが不可能であるか否かを判定し、不可能な場合にはステップ8(ST8)に進み、可能な場合にはステップ6(ST6)に進む。
【0087】
ステップ8(ST8)においては、0点電位の値を現在の値から補正する処理(以下、本処理と称する)に移行する(図8参照)。
【0088】
一方、ステップ6(ST6)においては、制御・演算部12により、実走行履歴の回転角度を変更した後にステップ3(ST3)に戻る。
【0089】
次いで、図8に示すように、図7のステップ8(ST8)を受けて本処理を開始した後に、図8のステップ11(ST11)に示すように、現在の0点電位の値を待避させる。そして、現在の0点電位の値を待避させた後にステップ12(ST12)に進む。なお、このときの現在の0点電位の値を待避させておく時間については、ステップ12(ST12)以降のシミュレーションの結果が収束せずに、すなわちシミュレート軌跡が道路形状と一致せずに、発散する場合のことを考慮して適当な値を設定することが好ましい。
【0090】
次いで、ステップ12(ST12)においては、制御・演算部12により、0点電位の値を現在の値から変更した後にステップ13(ST13)に進む。
【0091】
次いで、ステップ13(ST13)においては、制御・演算部12により、ステップ13(ST13)において変更した0点電位の値を用いてシミュレーションを開始した後にステップ14(ST14)に進む。
【0092】
次いで、ステップ14(ST14)においては、制御・演算部12により、シミュレート軌跡が道路形状と一致するか否かを判定し、一致する場合にはステップ15(ST15)に進み、一致しない場合にはステップ16(ST16)に進む。
【0093】
ステップ15(ST15)においては、制御・演算部12により、0点電位の値をシミュレーションによって変更された値に置換することによって、置換した0点電位の値を基準値として設定して処理を終了する。
【0094】
一方、ステップ16(ST16)においては、制御・演算部12により、シミュレート軌跡を回転させる回転処理を行った後に、ステップ17(ST17)に進む。
【0095】
次いで、ステップ17(ST17)においては、制御・演算部12により、回転後におけるシミュレート軌跡が道路形状と一致するか否かを判定し、一致する場合にはステップ20(ST20)に進み、一致しない場合にはステップ18(ST18)に進む。
【0096】
ステップ20(ST20)においては、制御・演算部12により、0点電位の値は基準値と一致しているが自車方位が適正でなかったと判断して自車方位を修正する。そして、自車方位を修正した後に、ステップ15(ST15)に進む。
【0097】
一方、ステップ18(ST18)においては、制御・演算部12により、マッチングが不可能であるか否か、すなわち、シミュレート軌跡の回転角度を変更したとしても回転後におけるシミュレート軌跡を道路形状と一致させることが不可能であるか否かを判定し、不可能な場合にはステップ15(ST15)に進み、可能な場合にはステップ19(ST19)に進む。
【0098】
ステップ19(ST19)においては、制御・演算部12により、シミュレート軌跡の回転角度を変更した後にステップ16(ST16)に戻る。
【0099】
以上述べたように、本発明に係る角速度センサ11の0点電位補正方法およびナビゲーション装置1によれば、所定の区間における車両の実走行履歴を当該区間における道路形状と一致させる処理を行い、この処理によって変更された0点電位を基準値として設定して0点電位の補正を行うことにより、0点電位の補正あるいは現在の値の保持を、車両が所定の区間を経るたびに行うことができる。
【0100】
この結果、角速度センサ11の0点電位を補正する機会を格段に増やすことによって、0点電位の補正を十分に行うことができ、ひいては、ナビゲーションを高精度に行うことができる。
【0101】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明に係るナビゲーション装置の実施形態を示すブロック図
【図2】本発明に係るナビゲーション装置の実施形態において、実走行履歴と道路形状との一致状態を示す説明図
【図3】本発明に係るナビゲーション装置の実施形態において、自車方位が不正で0点電位が適正な場合における実走行履歴と道路形状との不一致状態を示す説明図
【図4】本発明に係るナビゲーション装置の実施形態において、自車方位および0点電位補正の双方が不正な場合における実走行履歴と道路形状との不一致状態を示す説明図
【図5】図3の実走行履歴を回転させた後における実走行履歴と道路形状との一致状態を示す説明図
【図6】図4の実走行履歴を回転させた後における実走行履歴と道路形状との不一致状態を示す説明図
【図7】本発明に係る角速度センサの0点電位補正の実施形態を示すフローチャート
【図8】本発明に係る角速度センサの0点電位補正の実施形態において、図7の後続の工程(本処理)を示すフローチャート
【符号の説明】
【0103】
1 ナビゲーション装置
11 角速度センサ
12 制御・演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された角速度センサの0点電位を、0点電位の基準値と一致させるように補正する角速度センサの0点電位補正方法であって、
角速度センサの0点電位に依存する所定の区間における車両の実走行履歴と、当該所定の区間における道路形状とを比較し、
前記実走行履歴が前記道路形状と一致しない場合には、前記角速度センサの0点電位の値を現在の値から変更することによって前記実走行履歴を前記道路形状と一致させる処理を行い、
この処理によって変更された0点電位を、0点電位の基準値として設定することによって0点電位を補正すること
を特徴とする角速度センサの0点電位補正方法。
【請求項2】
車両に搭載された角速度センサの0点電位を、0点電位の基準値と一致させるように補正する角速度センサの0点電位補正方法であって、
角速度センサの0点電位に依存する所定の区間における車両の実走行履歴と、当該区間における道路形状とを比較し、
前記実走行履歴が前記道路形状と一致しない場合には、前記角速度センサの0点電位の値を現在の値から変更することによって前記実走行履歴を前記道路形状と一致させる処理を複数回行い、
これら複数回の処理によって変更された各0点電位から補正値を求め、
この補正値を0点電位の基準値として設定することによって0点電位を補正すること
を特徴とする角速度センサの0点電位補正方法。
【請求項3】
前記実走行履歴を回転させたとしても回転後における実走行履歴が前記道路形状と一致しない場合に、前記角速度センサの0点電位の値を現在の値から変更することによって前記実走行履歴を前記道路形状と一致させる処理を行うこと
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の角速度センサの0点電位補正方法。
【請求項4】
角速度センサと、当該角速度センサの0点電位を、0点電位の基準値と一致させるように補正する補正手段とを備えたナビゲーション装置であって、
前記補正手段は、
角速度センサの0点電位に依存する所定の区間における車両の実走行履歴と、当該所定の区間における道路形状とを比較し、
前記実走行履歴が前記道路形状と一致しない場合には、前記角速度センサの0点電位の値を現在の値から変更することによって前記実走行履歴を前記道路形状と一致させる処理を行い、
この処理によって変更された0点電位を、0点電位の基準値として設定することによって0点電位を補正すること
を特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
角速度センサと、当該角速度センサの0点電位を、0点電位の基準値と一致させるように補正する補正手段とを備えたナビゲーション装置であって、
前記補正手段は、
角速度センサの0点電位に依存する所定の区間における車両の実走行履歴と、当該区間における道路形状とを比較し、
前記実走行履歴が前記道路形状と一致しない場合には、前記角速度センサの0点電位の値を現在の値から変更することによって前記実走行履歴を前記道路形状と一致させる処理を複数回行い、
これら複数回の処理によって変更された各0点電位から補正値を求め、
この補正値を0点電位の基準値として設定することによって0点電位を補正すること
を特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
前記補正手段は、
前記実走行履歴を回転させたとしても回転後における実走行履歴が前記道路形状と一致しない場合に、前記角速度センサの0点電位の値を現在の値から変更することによって前記実走行履歴を前記道路形状と一致させる処理を行うこと
を特徴とする請求項4または請求項5に記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−162330(P2006−162330A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351275(P2004−351275)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】