説明

触媒処理方法および無電解めっき方法

【課題】無電解めっき方法を可能とするための触媒層を、レジストを用いることなく正確に任意のパターンに形成する。
【解決手段】基材1を塩酸酸性の塩化錫水溶液に接触させ、基材1に塩化第一錫の塩化錫膜2を形成する錫処理工程と、塩化錫膜2のうちめっき膜形成部9に水8を接触させながら、非めっき膜形成部3を乾燥させて酸化させ4価の錫とし、塩化錫膜2を塩化第一錫からなるめっき膜形成部9と4価の錫からなる非めっき膜形成部3とにパターニングするパターニング工程と、めっき膜形成部9に、パラジウム金属を付着させて触媒層11を形成する付着工程と、基材1をめっき液に接触させてめっき膜形成部9に銅めっき膜12を形成するめっき処理工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に対し無電解めっき方法によりめっき膜を形成することを可能にするための触媒処理方法、この触媒処理方法を利用した無電解めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、ガラスやセラミック等からなる基材、さらには樹脂等からなる基材にめっき膜を形成する方法として、無電解めっき方法が知られている。
【0003】
この無電解めっき方法は、例えば、脱脂処理したガラス基材に任意のパターンの触媒層を形成した後、このガラス基材をめっき液に浸漬させることにより、ガラス基材に任意のパターンのめっき膜を形成するようになっている。
【0004】
ここで、近年、レジストを用いることなく任意のパターンの触媒層を形成する触媒処理方法として、紫外線を用いる方法が考えられている。
【0005】
この紫外線を用いて任意のパターンの触媒層を形成する触媒処理方法は、まず、基材を塩化錫水溶液に接触させて、前記基材に2価の塩化第一錫の塩化錫膜を形成した後、前記塩化錫膜におけるめっき膜が形成されない非めっき膜形成部に紫外線を照射する。すると、紫外線が照射された部分が酸化して4価の錫となり、紫外線が照射されなかった部分は2価の錫のままの状態となり、これにより、前記塩化錫膜が、2価の塩化第1錫からなるめっき膜形成部と4価の錫からなる非めっき膜形成部とにパターニング形成される。この塩化錫膜がパターニング形成された基材を塩化パラジウム水溶液に浸漬させると、塩化第一錫によってパラジウムイオンが還元して、めっき膜形成部にのみパラジウム金属が付着し、非めっき膜形成部にはパラジウム金属が付着しない。このように、任意の部分にのみパラジウム金属を付着させることにより、任意のパターンの触媒層を形成していた(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
そして、この任意のパターンの触媒層が形成された基材を銅めっき液に浸漬させることにより、任意のパターンの銅めっき膜を形成していた。
【0007】
しかし、前述の触媒処理方法によれば、塩化錫膜における非めっき膜形成部に紫外線を照射することにより塩化第一錫を酸化させて4価の錫とする際に、めっき膜形成部の塩化第一錫も空気中に存在する酸素と結合してしまい、これにより酸化して4価の錫となってしまうことがあった。このような場合、塩化錫膜のめっき膜形成部であって4価の錫となってしまった部分には、パラジウム金属を付着させることはできず、この結果、触媒層を任意のパターンに形成することができない場合があるという問題を有していた。特に、平面形状が大きい基材に任意のパターンの触媒層を形成する場合や、触媒層をファインピッチのパターンに形成するのは困難であった。
【0008】
【非特許文献1】本間英夫、保坂哲也、「紫外線露光による選択的無電解めっき」、日本化学会誌、1977年、No.11、p.1614〜1619
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、無電解めっき方法を可能とするための触媒層を、レジストを用いることなく正確に任意のパターンに形成することができる触媒処理方法および無電解めっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明に係る触媒処理方法の特徴は、基材に対し無電解めっき膜の形成を可能にする触媒処理方法であって、前記基材に、塩化第一錫を含む塩化錫膜を形成する錫処理工程と、前記塩化錫膜を前記めっき膜が形成されるめっき形成部と前記めっき膜が形成されない非めっき形成部とにパターニングするパターニング工程とを有し、前記パターニング工程が、前記塩化錫膜の一部と空気との接触を遮断しながら前記塩化錫膜の残部を酸化させることにより、前記塩化錫膜を、酸化されて4価の錫を多く含む前記非めっき膜形成部と、酸化されずに2価の錫を多く含む前記めっき膜形成部とにパターニングするものである点にある。
【0011】
この本発明に係る触媒処理方法によれば、パターニング工程において、非めっき膜形成部を酸化させる際、めっき膜形成部は空気から遮断されているので、めっき膜形成部が空気中の酸素と過剰に接触して酸化してしまうのを防止することができる。
【0012】
本発明に係る他の触媒処理方法の特徴は、前記パターニング工程における前記めっき膜形成部と空気との接触を遮断する手段として、前記塩化錫膜を水に接触させる点にある。
【0013】
この本発明に係る他の触媒処理方法によれば、非めっき膜形成部を酸化させる際、めっき膜形成部は水に接触しているので、めっき膜形成部が空気中の酸素と過剰に接触して酸化してしまうのを防止することができる。
【0014】
本発明に係る他の触媒処理方法の特徴は、前記パターニング工程の後、前記めっき膜形成部に、触媒となる金属を付着させて触媒層を形成する付着工程を有する点にある。
【0015】
この本発明に係る他の触媒処理方法によれば、めっき膜形成部に触媒となる金属を付着させることにより、任意のパターンの触媒層を形成することができる。
【0016】
本発明に係る他の触媒処理方法の特徴は、前記錫処理工程において、前記基材を塩酸酸性の塩化錫水溶液に接触させて前記塩化錫膜を形成する点にある。
【0017】
この本発明に係る他の触媒処理方法によれば、塩酸酸性の塩化錫水溶液は、時間が経過しても容易に加水分解せず、粉末状の錫酸化物が形成されにくく、長時間安定した状態であるので、安定した塩化第一錫の錫塩化膜を長時間同じ塩化錫水溶液を用いて形成することができる。
【0018】
本発明に係る他の触媒処理方法の特徴は、前記パターニング工程において、前記めっき膜形成部を水に接触させながら、前記非めっき膜形成部を乾燥させて酸化させる点にある。
【0019】
この本発明に係る他の触媒処理方法によれば、非めっき膜形成部を乾燥して酸化させる際、めっき膜形成部は水に接触しているので、めっき膜形成部が空気中の酸素と過剰に接触して酸化してしまうのを防止することができる。
【0020】
本発明に係る他の触媒処理方法の特徴は、前記パターニング工程において、前記塩化錫膜の全体を水に接触させながら、前記非めっき膜形成部に紫外線を照射して酸化させる点にある。
【0021】
この本発明に係る他の触媒処理方法によれば、非めっき膜形成部に紫外線を照射して酸化させる際、めっき膜形成部は水に接触しているので、めっき膜形成部が空気中の酸素と過剰に接触して酸化してしまうのを防止することができる。
【0022】
本発明に係る他の触媒処理方法の特徴は、前記パターニング工程における前記紫外線の波長が、254nm以下である点にある。
【0023】
この本発明に係る他の触媒処理方法によれば、非めっき膜形成部に照射する紫外線の波長を254nm以下とすることにより、水中において効率的に酸素ラジカルを発生させることができ、確実に非めっき膜形成部を酸化させることができる。
【0024】
また、本発明に係る無電解めっき方法の特徴は、基材に塩化第一錫を含む塩化錫膜を形成する錫処理工程と、前記塩化錫膜をめっき膜が形成されるめっき膜形成部と、前記めっき膜が形成されない非めっき膜形成部とにパターニングするパターニング工程と、前記パターニング工程の後、前記めっき膜形成部に、触媒となる金属を付着させて触媒層を形成する付着工程と、前記基材をめっき液に接触させて、前記めっき膜形成部にめっき膜を形成するめっき処理工程とを有し、前記パターニング工程が、前記塩化錫膜の一部と空気との接触を遮断しながら前記塩化錫膜の残部を酸化させることにより、前記塩化錫膜を、酸化されて4価の錫を多く含む前記非めっき膜形成部と、酸化されずに2価の錫を多く含む前記めっき膜形成部とにパターニングするものである点にある。
【0025】
この本発明に係る無電解めっき方法によれば、パターニング工程において、非めっき膜形成部を酸化させる際、めっき膜形成部は空気から遮断されているので、めっき膜形成部が空気中の酸素と過剰に接触して酸化してしまうのを防止することができる。これにより、塩化錫膜におけるめっき膜形成部と非めっき膜形成部とを確実にめっき膜形成部と非めっき膜形成部とにパターン形成することができる。めっき膜形成部に触媒となる金属を付着させることにより、任意のパターンの触媒層を形成することができ、ひいては任意のパターンのめっき膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上述べたように、本発明に係る触媒処理方法によれば、非めっき膜形成部のみを酸化させて4価の錫とし、めっき膜形成部を塩化第一錫のままの状態とすることができるので、触媒となる金属をめっき膜形成部の塩化第一錫に付着させることにより、正確に任意のパターンの触媒層を形成することができる。
【0027】
また、本発明に係る無電解めっき方法によれば、非めっき膜形成部のみを酸化させて4価の錫とし、めっき膜形成部を塩化第一錫のままの状態とすることができるので、触媒となる金属をめっき膜形成部の塩化第一錫に付着させることができ、この結果、正確に任意のパターンの触媒層、ひいてはめっき膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係る触媒処理方法およびこの触媒処理方法を用いた無電解めっき方法の第1の実施形態を図1から図4を参照して説明する。
【0029】
図1は、本実施形態に係る触媒処理方法を用いた無電解めっき方法の各工程を示すフローチャート、図2(a)〜(h)は、本実施形態の無電解めっき方法の各工程を示す概略図である。ここで、本実施形態においては、基材1に銅めっき膜12を形成する場合を用いて説明するが、本発明に係る触媒処理方法および無電解めっき方法は、銅めっき膜12を形成する場合に限定されず、種々のめっき膜を形成する場合に用いることができる。
【0030】
図1および図2(a)に示すように、本実施形態においては、まず、基材1に対し、この基材1に付着したごみや油脂類等の不純物を除去するための脱脂洗浄等の前処理工程を行う(ST1)。この前処理工程は、公知の方法によって行うことができる。
【0031】
本実施形態において用いられる基材1としては、特に限定されず、例えば、ガラス基材やセラミック基材等の他、ポリイミド、エポキシ、ポリカーボネート等の樹脂を材料とする樹脂基材1等、種々の基材1を用いることができる。
【0032】
前処理工程の後、図2(b)に示すように、前記基材1を塩化錫水溶液に浸漬させる等により接触させて、基材1に塩化第一錫の塩化錫膜2を形成する錫処理工程を行う(ST2)。この塩化錫水溶液は、塩化錫水溶液の安定を図る等の観点から、塩酸酸性であることが好ましい。
【0033】
錫処理工程の後、塩化錫膜2におけるめっき膜が形成されない非めっき膜形成部3を酸化させて4価の錫とし、塩化錫膜2をめっき膜が形成される塩化第一錫からなるめっき膜形成部9と4価の錫からなる非めっき膜形成部3とにパターニングするパターニング工程を行う(ST3)。
【0034】
パターニング工程は、図2(c)および図3に示すように、塩化錫膜2が形成された基材1を水8に浸漬させた後(ST21)、図2(d)に示すように、塩化錫膜2のうちめっき膜形成部9に水8を接触させて、塩化錫膜2を押さえ治具10で押さえながら(ST22)、基材1を水8中から取り出す(ST23)。この押さえ治具10は、塩化錫膜2のうちめっき膜形成部9に対向する部分が凸部10aにより形成され、非めっき膜形成部3に対向する部分が凹部10bにより形成されており、凸部10aの表面と塩化錫膜2の表面との間に水8を介在させながら塩化錫膜2を押さえるようになっている。
【0035】
その後、図2(e)に示すように、塩化錫膜2の非めっき膜形成部3に空気を供給して非めっき膜形成部3を乾燥させる(ST24)。これにより、非めっき膜形成部3の塩化錫膜2の塩化第一錫と空気中の酸素とを結合させることによって、図2(f)に示すように、塩化錫膜2の非めっき膜形成部3を酸化させて4価の錫とし、塩化錫膜2を塩化第一錫からなるめっき膜形成部9と4価の錫からなる非めっき膜形成部3とにパターニングする。
【0036】
パターニング工程の後、図2(g)に示すように、塩化錫膜2のめっき膜形成部9に触媒となる金属を付着させて触媒層11を形成する付着工程を行う(ST4)。本実施形態においては、基材1を塩酸酸性の塩化パラジウム水溶液に浸漬させる。すると、塩化第一錫によってパラジウムイオンが還元して、めっき膜形成部9にのみパラジウム金属が付着し、非めっき膜形成部3においてはパラジウム金属が付着しない。このように、めっき膜形成部9にのみパラジウム金属を付着させることにより、任意のパターンの触媒層11を形成する。
【0037】
続いて、基材1を銅めっき液に浸漬させることにより、めっき処理工程を行う(ST5)。これにより、図2(h)に示すように、触媒層11のパラジウム金属を核として金属銅を析出させ、基材1における触媒層11が形成された部分に銅めっき膜12を形成する。
【0038】
めっき処理工程の各種処理条件としては、公知の無電解銅めっき方法を利用することができ、また、銅めっき液としては、例えば、銅イオンの他、ニッケルイオンや、酒石酸ナトリウムカリウム四水和物等の錯化剤、ホルムアルデヒド等の還元剤、水酸化ナトリウム等のpH調整剤、およびキレート剤等を含む銅めっき液を用いることができる。
【0039】
さらに、銅めっき膜12が形成された基材1を、十分洗浄して乾燥させた後、例えば、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中や真空中等の実質的に酸素および水素を含まない雰囲気中において、所定の熱処理温度により所定の熱処理時間加熱する熱処理工程を行う(ST6)。
【0040】
これにより、基材1上に任意のパターンの銅めっき膜12が完成する。
【0041】
次に、本実施形態に係る触媒処理方法を用いた無電解めっき方法の作用について説明する。
【0042】
本実施形態によれば、パターニング工程において、水8中において押さえ治具10によって塩化錫膜2を押さえた後、押さえ治具10によって塩化錫膜2を押さえながら基材1を水8中から取り出すことにより、凸部10aの表面と塩化錫膜2のめっき膜形成部9の表面との間に水8を介在させながら、塩化錫膜2の非めっき膜形成部3を乾燥して酸化させる。このように、非めっき膜形成部3を乾燥して酸化させる際、めっき膜形成部9は水8に接触しているので、めっき膜形成部9が空気中の酸素と過剰に接触して酸化してしまうのを防止することができる。
【0043】
したがって、非めっき膜形成部3のみを酸化させて4価の錫とし、めっき膜形成部9を塩化第一錫のままの状態とすることができ、これにより、パラジウム金属をめっき膜形成部9に付着させることができるので、この結果、正確かつ確実に任意のパターンの触媒層11、ひいては銅めっき膜12を形成することができる。
【0044】
また、塩酸酸性の塩化錫水溶液は、時間経過しても容易に加水分解せず、粉末状の錫酸化物が形成されにくく、長時間安定した状態であるので、錫処理工程において塩酸酸性の塩化錫水溶液を用いることにより、安定した塩化第一錫の錫塩化膜を長時間同じ塩化錫水溶液を用いて形成することができる。
【0045】
次に、本発明に係る他の触媒処理方法を用いた無電解めっき方法の第2の実施形態を、図4(a)〜(f)を用いて説明する。ここで、第1の実施形態と同一の構成については、同一の符号を用いて説明する。
【0046】
まず、図4(a)に示すように、第2の実施形態においては、第1の実施形態と同様に、基材1に対し脱脂洗浄等の前処理工程を行った後、図4(b)に示すように、前記基材1を塩化錫水溶液に浸漬させる等により接触させて、基材1に塩化第一錫の塩化錫膜2を形成する錫処理工程を行う。第2の実施形態においても、塩化錫水溶液は、塩酸酸性であることが好ましい。
【0047】
続いて、塩化錫膜2の非めっき膜形成部3を酸化させて4価の錫とし、塩化錫膜2を塩化第一錫からなるめっき膜形成部9と4価の錫からなる非めっき膜形成部3とにパターニングするパターニング工程を行う。
【0048】
パターニング工程は、図4(c)に示すように、塩化錫膜2が形成された基材1を水8に浸漬させながら、めっき膜形成部9を被覆し、非めっき膜形成部3を露出させるパターンのマスク14を基材1におけるめっき膜を形成する被処理面1aに対向して配置させる。そして、マスク14と基材1の被処理面1aとの間に水8を介在させながら、マスク14を介して塩化錫膜2に紫外線を照射する。すると、紫外線の照射により、水8中において酸素ラジカルが発生し、非めっき膜形成部3における塩化錫膜2の塩化第一錫と水8中の酸素ラジカルとが結合して、塩化錫膜2の非めっき膜形成部3が酸化し、4価の錫となる。
【0049】
紫外線を照射するにあたっては、例えば、低圧水銀灯を用いることができる。また、低圧水銀灯を用いた場合に水8の結合が切れる値が254nmであり、紫外線の波長が254nmより長いと、水8中において酸素ラジカルを効率的に発生させることができず塩化錫膜2の塩化第一錫を十分に酸化させることができない等の理由から、照射する紫外線の波長は254nm以下であることが好ましい。
【0050】
これにより、図4(d)に示すように、塩化錫膜2を、塩化第一錫からなるめっき膜形成部9と4価の錫からなる非めっき膜形成部3とにパターニングする。
【0051】
パターニング工程の後、第1の実施形態と同様に、図4(e)に示すように、塩化錫膜2のめっき膜形成部9に、パラジウム金属等の触媒となる金属を付着させて触媒層11を形成する付着工程を行い、任意のパターンの触媒層11を形成する。その後、触媒層11が形成された基材1を、銅めっき液に浸漬させることにより、めっき処理工程を行い、図4(f)に示すように、基材1に任意のパターンの銅めっき膜12を形成する。そして、銅めっき膜12が形成された基材1を十分洗浄して乾燥させた後、熱処理工程を行うことにより、基材1上に任意のパターンの銅めっき膜12が完成する。
【0052】
次に、第2の実施形態に係る触媒処理方法を用いた無電解めっき方法の作用について説明する。
【0053】
第2の実施形態によれば、パターニング工程において、水8中において任意のパターンのマスク14を基材1の被処理面1aに対向させることにより、マスク14と基材1の被処理面1aとの間に水8を介在させながら、塩化錫膜2の非めっき膜形成部3に紫外線を照射して酸化させる。このように、非めっき膜形成部3に紫外線を照射して酸化させる際、めっき膜形成部9は水8に接触しているので、めっき膜形成部9が空気中の酸素と過剰に接触して酸化してしまうのを防止することができる。
【0054】
したがって、非めっき膜形成部3のみを酸化させて4価の錫とし、めっき膜形成部9を塩化第一錫のままの状態とすることができ、これにより、パラジウム金属をめっき膜形成部9に付着させることができるので、この結果、正確かつ確実に任意のパターンの触媒層11、ひいては任意のパターンの銅めっき膜12を形成することができる。
【0055】
また、パターニング工程において、非めっき膜形成部3に照射する紫外線の波長を254nm以下とすることにより、水8中において効率的に酸素ラジカルを発生させることができ、確実に非めっき膜形成部3の塩化錫膜2を酸化させることができる。
【0056】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することが可能である。
【0057】
たとえば、第1および第2の実施形態においては、塩化錫膜2のめっき膜形成部9が空気に接触するのを遮断する手段として、めっき膜形成部9に水8を接触させているが、これに限定されるものではなく、塩化錫膜2のめっき膜形成部9が空気と接触するのを遮断しながら、非めっき膜形成部3の塩化錫膜と酸素とを結合させることができればよい。
【0058】
また、非めっき膜形成部3を酸化させる手段として、第1実施形態においては非めっき膜形成部3を乾燥させることにより非めっき膜形成部3に空気を供給し、第2実施形態においては非めっき膜形成部3に紫外線を照射するようになっているが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0059】
(実施例1)
基材として、ホウ珪酸ガラスからなる外形が100mmΦ、厚み寸法が0.7mmtのガラス基材を用意し、前処理工程として、前記ガラス基材を、液温が50℃、水酸化ナトリウムの濃度が15%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて、3分間脱脂洗浄した。
【0060】
続いて、錫処理工程において、液温が室温、塩化第一錫の濃度が5×10−3mol/Lの塩酸酸性の塩化錫水溶液を用意し、ガラス基材を前記塩化錫水溶液に3分間浸漬させて、ガラス基材に塩化第一錫の塩化錫膜を形成した。
【0061】
次に、塩化錫膜のめっき膜形成部に対向する部分が凸部、非めっき膜形成部に対向する部分が凹部に形成された押さえ治具を用いて、ガラス基材を水中に浸漬させながら押さえ治具により塩化錫膜を押さえた後、ガラス基材を水から取り上げた。そして、凸部の表面とめっき膜形成部の表面との間に水を介在させながら、非めっき膜形成部に空気を供給して非めっき膜形成部を乾燥させた。これにより、非めっき膜形成部の塩化錫膜は、酸化して4価の錫となった。
【0062】
さらに、付着工程において、液温が30℃、パラジウムイオンの濃度が3×10−3mol/Lの塩酸酸性塩化パラジウム水溶液を用意し、前記ガラス基材を、前記塩化パラジウム水溶液に2分間浸漬させて、塩化錫膜におけるめっき膜形成部にパラジウム金属を付着させた。
【0063】
そして、前記ガラス基材に対してめっき処理を行った。めっき処理工程においては、2.5g/L(0.039mol/L)の銅イオンと、0.138g/Lのニッケルイオンが添加され、錯化剤として酒石酸ナトリウムカリウム4水和物(ロッシェル塩)と、還元剤として、約0.2%のホルムアルデヒドと、約0.1%のキレート剤とを含む銅めっき液を用意した。さらに、前記銅めっき液には、pH調整として約1.5g/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)が含まれており、pHは12.6に調整されている。そして、前記ガラス基材を、液温が30℃に設定された前記銅めっき液に1時間浸漬させて、基材上に銅めっき膜を形成した。
【0064】
その後、ガラス基材に対し、窒素雰囲気中において300℃の熱処理温度および1時間の熱処理時間の条件の下、3kgf/cmの圧力を加えながら、熱処理工程を行い、銅めっき膜を完成させた。
【0065】
このように銅めっき膜を形成した場合、塩化錫膜におけるめっき膜形成部を酸化させることなく、非めっき膜形成部のみを確実に酸化させることができ、正確に任意のパターンの触媒層、ひいては銅めっき膜を形成することができた。また、ガラス基材における銅めっき膜の引っ張り強度は30〜60Mpaとなり、ガラス基材と銅めっき膜との十分な密着力を確保することができた。
【0066】
(実施例2)
基材として、ホウ珪酸ガラスからなる外形が100mmΦ、厚み寸法が0.7mmtのガラス基材を用意し、前処理工程として、前記ガラス基材を、液温が50℃、水酸化ナトリウムの濃度が15%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて、3分間脱脂洗浄した。
【0067】
続いて、錫処理工程において、液温が室温、塩化第一錫の濃度が5×10−3mol/Lの塩酸酸性の塩化錫水溶液を用意し、ガラス基材を前記塩化錫水溶液に3分間浸漬させて、ガラス基材に塩化第一錫の塩化錫膜を形成した。
【0068】
次に、前記ガラス基材を水中に浸漬させながら、水中において、塩化錫膜のめっき膜形成部を被覆し、非めっき膜形成部を露出させるパターンのマスクを、前記ガラス基材の被処理面に対向して配置した。そして、マスクとガラス基材の秘書裏面との間に水を介在させながら、塩化錫膜の非めっき膜形成部に低圧水銀灯を用いて波長が254nm、光量が800μW/cmの紫外線を照射し、非めっき膜形成部の塩化錫膜の塩化第一錫を酸化させて4価の錫とした。
【0069】
さらに、付着工程において、液温が30℃、パラジウムイオンの濃度が3×10−3mol/Lの塩酸酸性塩化パラジウム水溶液を用意し、前記ガラス基材を、前記塩化パラジウム水溶液に2分間浸漬させて、塩化錫膜におけるめっき膜形成部にパラジウム金属を付着させた。
【0070】
そして、前記ガラス基材に対してめっき処理を行った。めっき処理工程においては、2.5g/L(0.039mol/L)の銅イオンと、0.138g/Lのニッケルイオンが添加され、錯化剤として酒石酸ナトリウムカリウム4水和物(ロッシェル塩)と、還元剤として、約0.2%のホルムアルデヒドと、約0.1%のキレート剤とを含む銅めっき液を用意した。さらに、前記銅めっき液には、pH調整として約1.5g/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)が含まれており、pHは12.6に調整されている。そして、前記ガラス基材を、液温が30℃に設定された前記銅めっき液に1時間浸漬させて、基材上に銅めっき膜を形成した。
【0071】
その後、ガラス基材に対し、窒素雰囲気中において300℃の熱処理温度および1時間の熱処理時間の条件の下、3kgf/cmの圧力を加えながら、熱処理工程を行い、銅めっき膜を完成させた。
【0072】
このように銅めっき膜を形成した場合、塩化錫膜におけるめっき膜形成部を酸化させることなく、非めっき膜形成部のみを確実に酸化させることができ、正確に任意のパターンの触媒層、ひいては銅めっき膜を形成することができた。また、ガラス基材における銅めっき膜の引っ張り強度は30〜60Mpaとなり、ガラス基材と銅めっき膜との十分な密着力を確保することができた。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係る触媒処理方法を用いた無電解めっき方法の各工程の一実施形態を示すフローチャート
【図2】(a)〜(h)は、図1の無電解めっき方法の各工程を示す概略図
【図3】図1のパターニング工程における各工程を示すフローチャート
【図4】(a)〜(f)は、本発明に係る他の触媒処理方法を用いた無電解めっき方法の各工程を示す概略図
【符号の説明】
【0074】
1 基材
1a 被処理面
2 塩化錫膜
3 非めっき膜形成部
6 めっき膜形成部
7 非めっき膜形成部
8 水
9 めっき膜形成部
10 押さえ治具
10a 凸部
10b 凹部
11 触媒層
12 銅めっき膜



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に対し無電解めっき膜の形成を可能にする触媒処理方法であって、
前記基材に、塩化第一錫を含む塩化錫膜を形成する錫処理工程と、
前記塩化錫膜を前記めっき膜が形成されるめっき膜形成部と前記めっき膜が形成されない非めっき膜形成部とにパターニングするパターニング工程とを有し、
前記パターニング工程が、前記塩化錫の一部と空気との接触を遮断しながら、前記塩化錫膜の残部を酸化させることにより、前記塩化錫膜を、酸化されて4価の錫を多く含む前記非めっき膜形成部と、酸化されずに2価の錫を多く含む前記めっき膜形成部とにパターニングするものであることを特徴とする触媒処理方法。
【請求項2】
前記パターニング工程における前記めっき膜形成部と空気との接触を遮断する手段として、前記塩化錫膜を水に接触させることを特徴とする請求項1に記載の触媒処理方法。
【請求項3】
前記パターニング工程の後、前記めっき膜形成部に、触媒となる金属を付着させて触媒層を形成する付着工程を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の触媒処理方法。
【請求項4】
前記錫処理工程において、前記基材を塩酸酸性の塩化錫水溶液に接触させて前記塩化錫膜を形成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の触媒処理方法。
【請求項5】
前記パターニング工程において、前記めっき膜形成部を水に接触させながら、前記非めっき膜形成部を乾燥させて酸化させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の触媒処理方法。
【請求項6】
前記パターニング工程において、前記塩化錫膜の全体を水に接触させながら、前記非めっき膜形成部に紫外線を照射して酸化させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の触媒処理方法。
【請求項7】
前記パターニング工程における前記紫外線の波長が、254nm以下であることを特徴とする請求項6に記載の触媒処理方法。
【請求項8】
基材に塩化第一錫を含む塩化錫膜を形成する錫処理工程と、
前記塩化錫膜をめっき膜が形成されるめっき膜形成部と、前記めっき膜が形成されない非めっき形成部とにパターニングするパターニング工程と、
前記パターニング工程の後、前記めっき膜形成部に、触媒となる金属を付着させて触媒層を形成する付着工程と、
前記基材をめっき液に接触させて、前記めっき膜形成部にめっき膜を形成するめっき処理工程とを有することを特徴とする無電解めっき方法であって、
前記パターニング工程が、前記塩化錫膜の一部と空気との接触を遮断しながら前記塩化錫膜の残部を酸化させることにより、前記塩化錫膜を、酸化されて4価の錫を多く含む前記非めっき膜形成部と、酸化されずに2価の錫を多く含む前記めっき膜形成部とにパターニングするものであることを特徴とする無電解めっき方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−154277(P2007−154277A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353222(P2005−353222)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】