説明

試験装置、測定装置および電子デバイス

【課題】被測定信号のジッタを容易に測定する。
【解決手段】被測定信号の良否を判定する試験装置であって、周期が既知の基準信号のパルス数と、被測定信号のパルス数とを、同一の測定期間内で並行して計数する計数ステップを複数回繰り返す周波数カウンタと、同一の測定期間内で計数した基準信号および被測定信号のパルス数の比、および、基準信号の周期に基づいて、測定期間における被測定信号の平均周期を、それぞれの計数ステップについて算出する平均周期算出部と、平均周期算出部が算出した平均周期のばらつきを算出するノイズ算出部と、平均周期のばらつきに基づいて、被測定信号の良否を判定する判定部とを備える試験装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験装置、測定装置および電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイス等の被試験デバイスの試験において、被試験デバイスが出力する被測定信号に含まれるノイズを測定する技術が知られている。例えば、タイムインターバルアナライザを用いてジッタを測定する技術、および、入力信号を複素数の解析信号に変換してジッタを測定する技術が知られている(特許文献1参照)。
特許文献1 特開2001−337121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、タイムインターバルアナライザ等を用いてジッタを測定する場合、測定コストが上昇してしまう。また、解析信号を用いる場合、測定データの演算が煩雑になる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、被測定信号の良否を判定する試験装置であって、周期が既知の基準信号のパルス数と、被測定信号のパルス数とを、同一の測定期間内で並行して計数する計数ステップを複数回繰り返す周波数カウンタと、同一の測定期間内で計数した基準信号および被測定信号のパルス数の比、および、基準信号の周期に基づいて、測定期間における被測定信号の平均周期を、それぞれの計数ステップについて算出する平均周期算出部と、平均周期算出部が算出した平均周期のばらつきを算出するノイズ算出部と、平均周期のばらつきに基づいて、被測定信号の良否を判定する判定部とを備える試験装置を提供する。
【0005】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】被測定信号の良否を判定する試験装置100の構成の一例を示す。
【図2】周波数カウンタ10の動作例を示す。
【図3】測定装置300において測定される被測定信号のノイズの一例を示す。
【図4】測定装置300において測定される被測定信号のノイズの他の例を示す。
【図5】測定装置300における測定の周波数特性の一例を示す。
【図6】フリッカノイズの周波数特性に、図5に示した測定装置300の周波数特性を重畳した特性を示す。
【図7】測定期間を変化させた場合の、ノイズ算出部32の算出結果の一例を示す。
【図8】図7における算出値S1から求めたフリッカノイズの測定スペクトルの一例を示す。
【図9】図7における算出値S2から求めたフリッカノイズの測定スペクトルの一例を示す。
【図10】平均周期算出部20が、各計数ステップにおいて算出する平均周期の一例を示す。
【図11】ノイズ算出部32が補正した、各計数ステップにおける平均周期の一例を示す。
【図12】測定装置300の他の構成例を示す図である。
【図13】被試験デバイス200の他の構成例を示す。
【図14】測定装置300の他の構成例を示す。
【図15】測定装置300の他の構成例を示す。
【図16】被試験デバイス200の他の構成例を示す。
【図17】電子デバイス400の構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、被測定信号の良否を判定する試験装置100の構成の一例を示す。試験装置100は、半導体デバイス等の被試験デバイスが出力する被測定信号の良否を判定してよい。試験装置100は、測定装置300および判定部34を備える。
【0009】
測定装置300は、被測定信号に含まれるノイズを測定する。例えば測定装置300は、被測定信号のジッタを測定する。測定装置300は、入力部60、周波数カウンタ10、平均周期算出部20、ノイズ算出部32、および、基準信号生成部50を有する。
【0010】
入力部60は、外部から受け取った被測定信号を周波数カウンタ10に入力する。基準信号生成部50は、予め定められた周波数の基準信号を生成して周波数カウンタ10に入力する。基準信号生成部50は発振器であってよい。
【0011】
周波数カウンタ10は、周期が既知の基準信号のパルス数と、被測定信号のパルス数とを、同一の測定期間内で並行して計数する。また、周波数カウンタ10は、基準信号および被測定信号のパルス数を測定期間内で並行して計数する計数ステップを、複数回繰り返す。周波数カウンタ10は、被測定信号のパルスをn個計数する期間を、測定期間としてよい(ただし、nは自然数)。
【0012】
平均周期算出部20は、同一の測定期間内で計数した基準信号および被測定信号のパルス数の比、および、基準信号の周期に基づいて、それぞれの測定期間における被測定信号の平均周期を算出する。各測定期間における被測定信号の平均周期Taは、下式で与えられる。
Ta=(m×Tr)/n
ただし、mは当該測定期間で計数された基準信号のパルス数を示す自然数、Trは基準信号の周期を指す。平均周期算出部20は、それぞれの計数ステップについて、計数結果に応じた平均周期Taを算出する。
【0013】
ノイズ算出部32は、複数の計数ステップに対して平均周期算出部20が算出した複数の平均周期Taのばらつきを算出する。平均周期Taのばらつきとは、例えば平均周期Taのピークツゥピーク値、RMS値、標準偏差等の、平均周期Taの分布に応じた統計値を指す。
【0014】
判定部34は、平均周期Taのばらつきに基づいて、被測定信号の良否を判定する。判定部34は、平均周期Taのばらつきを示す統計値が、予め定められた基準を満たすか否かを判定してよい。
【0015】
図2は、周波数カウンタ10の動作例を示す。図2では、被測定信号および基準信号のパルスの立ち上がりエッジのタイミングを示す。上述したように、周波数カウンタ10は、同一の測定期間内で被測定信号および基準信号のパルス数を並行して計数する。測定期間は、周波数カウンタ10が被測定信号のパルスをn個計数する期間であってよく、周波数カウンタ10が基準信号のパルスをm個計数する期間であってもよい。
【0016】
図3は、測定装置300において測定される被測定信号のノイズの一例を示す。図3において、横軸は時間を示す。縦軸は周期ジッタの強度を示す。周期ジッタの強度は、例えば被測定信号の各サイクルの長さが、理想的な長さからどれだけ離れているかを示す。
【0017】
被測定信号の平均周期Taは、被測定信号の理想的な周期と、測定期間内における周期ジッタの積分値を被測定信号のパルス数nで除算した値との和となる。被測定信号の理想的な周期は一定なので、被測定信号の平均周期Taの変動が、周期ジッタに対応する。
【0018】
なお、測定期間に含まれる周期ジッタの積分値は、測定期間に対するジッタの相対位相によって変化する。例えば図3のように、周期が測定期間の1/2となるサイン波ジッタが被測定信号に含まれている場合を説明する。この場合、測定期間におけるジッタの積分値は、図3に示すように、サイン波ジッタの初期位相と、測定期間の開始タイミングとが一致する場合に最大となる。なお、サイン波ジッタの初期位相は、サイン波のレベルが負から正に遷移する位相を指す。また、測定期間におけるジッタの積分値は、サイン波ジッタの初期位相が、測定期間の開始タイミングに対してπだけずれた場合に最小となる。
【0019】
このように、測定期間に対する被測定信号の相対位相によって、測定されるジッタ値が変動するので、周波数カウンタ10は、同一の測定期間内で被測定信号および基準信号のパルス数を計数する計数ステップを、複数回繰り返すことが好ましい。そして、平均周期算出部20は、それぞれの計数ステップで算出した被測定信号の平均周期Taのピークツゥピーク値等を算出する。
【0020】
なお、周波数カウンタ10における測定期間は、被測定信号のジッタ周期の整数倍、または、整数分の1と一致しないことが好ましい。一般に、ジッタと周波数カウンタの測定期間とは同期していないが、周波数カウンタ10における測定期間の開始、または、終了のタイミングが一定間隔とならないように制御して、ジッタと測定期間とが同期しないように制御してもよい。例えば、測定期間を規定する被測定信号または基準信号のパルスの計数値を変化させることで、ジッタと測定期間とを非同期にできる。一例として、被測定信号のパルスをn個計数する期間を測定期間とする場合、周波数カウンタ10は、nの値を変化させてよい。
【0021】
このように、複数の計数ステップにわたって被測定信号のジッタを測定することで、ジッタの位相の影響を低減してジッタを測定できる。なお、周波数カウンタ10を用いた場合、ジッタの周波数により、ジッタの測定ゲインが変化する。
【0022】
図4は、測定装置300において測定される被測定信号のノイズの他の例を示す。図4において、横軸は時間を示す。縦軸は周期ジッタの強度を示す。図4に示す周期ジッタの周期を、測定期間の1/5.5とする。この場合においても、測定期間におけるジッタの積分値は、サイン波ジッタの初期位相と、測定期間の開始タイミングとが一致する場合に最大となる。
【0023】
しかし、サイン波ジッタの最初の5周期は、上側および下側波形が相殺されるので、測定される周期ジッタは、最後の上側波形だけとなる。なお上側波形は、ジッタ波形のうちレベルが正の部分を指す。下側波形は、ジッタ波形のうちレベルが負の部分を指す。このため、測定される周期ジッタの積分値は、図3に示す例の積分値を1/2とすると、図4の例では、1/11となる。このように、周波数カウンタ10を用いた測定では、ジッタの周波数により、ジッタの測定ゲインが変化する。
【0024】
図5は、測定装置300における測定の周波数特性の一例を示す。図5において横軸はジッタの周波数を対数で示す。縦軸は測定ゲインをデシベルで示す。また、図5における縦軸は、ノイズのパワーを測定した場合の測定ゲインを示す。また、図5では、測定期間をTg1、Tg2、Tg3としたときの、それぞれの周波数特性を示す。
【0025】
図3から明らかなように、ジッタの周期が測定期間の2倍以下になると、ジッタの位相によらず、測定期間内にジッタの上側波形の少なくとも一部、および、下側波形の少なくとも一部の双方が含まれる。このため、ジッタの周期が測定期間の2倍以下になると、ジッタの上側波形および下側波形の少なくとも一部が相殺され、測定ゲインが減衰する。なお、ジッタの周期が測定期間の2倍となる場合の、ジッタの周波数を減衰開始周波数とする。
【0026】
また、ジッタの周期がより小さくなると、図3および図4に示したように、相殺される上側波形および下側波形の領域が増加する。このため、ジッタの測定ゲインは、ジッタの周波数が減衰開始周波数以上の帯域において徐々に減衰する。本例の場合、減衰開始周波数以上の帯域では、ジッタの測定ゲインは−20dB/decで減衰する。上述したように、減衰開始周波数は、測定期間の長さに依存するので、測定期間をTg1、Tg2、Tg3と変化させると、減衰開始周波数も変化する。なお図5の例では、Tg1>Tg2>Tg3とする。
【0027】
また、ジッタの周期が、測定期間の整数分の1倍の場合には、測定期間に含まれるジッタの上側波形および下側波形が全て相殺されるので、当該周波数において測定ゲインが零になる。ただし、図5において各ピークを点線で結んだ稜線は、上述したように、−20dB/decの傾きを有する。
【0028】
図5に示すように、周波数カウンタ10における測定期間を制御することで、測定装置300におけるノイズ測定の周波数特性を制御することができる。測定装置300は、周波数カウンタ10における測定期間を制御する制御部を更に備えてよい。また、図5に示すように、測定装置300は、ローパスフィルタの特性を有する。このためノイズ算出部32は、被測定信号に含まれる、比較的に低周波数のフリッカノイズを算出してよい。
【0029】
図6は、フリッカノイズの周波数特性に、図5に示した測定装置300の周波数特性を重畳した特性を示す。つまり、フリッカノイズのパワーを測定装置300で測定した場合の、測定結果の周波数特性を示す。フリッカノイズとは、強度が1/fに比例するノイズを指す。図5に関連して説明したように、測定装置300の周波数特性は、減衰開始周波数以下の帯域では、一定のゲインを示す。このため、重畳後の周波数特性は、減衰開始周波数以下の帯域では、フリッカノイズと同様に−20dB/decで減衰する。
【0030】
また、減衰開始周波数以上の帯域では、測定装置300の周波数特性のゲインは、−20dB/decで減衰するので、当該領域の測定結果は、−40dB/decで減衰する。図6に示した重畳後の周波数特性を周波数軸で積分した値が、フリッカノイズの時間軸での測定値と対応するので、ノイズ算出部32の算出結果から、被測定信号に含まれるフリッカノイズの周波数特性を算出することができる。
【0031】
図7は、測定期間を変化させた場合の、ノイズ算出部32の算出結果の一例を示す。本例の周波数カウンタ10は、計数ステップを予め定められた回数実行する毎に、測定期間を変化させる。当該予め定められた回数は、例えば1000回等のように、被測定信号の平均周期Taのばらつきのピークツゥピーク値等を十分測定できる程度の回数であることが好ましい。ノイズ算出部32は、当該予め定められた回数の計数ステップ毎に、被測定信号の平均周期Taのばらつきのピークツゥピーク値を算出してよく、被測定信号の平均周期TaのばらつきのRMS値を算出してもよい。
【0032】
図6に示したように、測定期間を変化させると、測定装置300の周波数特性が変化するので、ノイズ算出部32の算出値も変化する。より具体的には、測定期間をより長くすると、減衰開始周波数がより小さくなり、周波数特性の積分値も小さくなる。従って、時間軸におけるノイズの算出値も、図7に示すように小さくなる。
【0033】
ノイズ算出部32は、被測定信号の平均周期Taのばらつきを示す、ピークツゥピーク値またはRMS値等の算出値に基づいて、被測定信号に含まれるフリッカノイズのスペクトルを算出してよい。ノイズ算出部32は、測定期間の値毎に、平均周期Taのばらつきを算出する。ノイズ算出部32は、算出した複数の平均周期Taのばらつきに基づいて、フリッカノイズのスペクトルを決定してよい。
【0034】
より具体的には、ノイズ算出部32は、それぞれの算出値から、フリッカノイズの測定スペクトルを算出する。時間軸におけるフリッカノイズのRMS値は、周波数軸のパワースペクトルを積分した値に対応する。より具体的には、パワースペクトルの積分値の平方根から、時間軸のRMS値を算出できる。また、フリッカノイズの測定スペクトルは、減衰開始周波数以下では−20dB/decで減衰して、減衰開始周波数以上では−40dB/decで減衰することが既知なので、時間軸におけるフリッカノイズのRMS値から、フリッカノイズの測定スペクトルを算出することができる。
【0035】
図8は、図7における算出値S1から求めたフリッカノイズの測定スペクトルの一例を示す。図8においては、算出した測定スペクトルを斜線で示す。また、被測定信号に実際に含まれるフリッカノイズを実線で示す。上述したように、減衰開始周波数以下の帯域では、測定スペクトルα1は−20dB/decで減衰する。また、減衰開始周波数以上の帯域では、測定スペクトルβ1は−40dB/decで減衰する。
【0036】
また、減衰開始周波数は、周波数カウンタ10の測定期間により決定できる。従って、測定スペクトルの積分値が、算出値S1に対応する値となるように、基本周波数(f=0)におけるパワーP1を算出することで、算出値S1に対応する測定スペクトルを決定できる。ノイズ算出部32は、算出値S1に基づいて、基本周波数における測定スペクトルのパワーP1を算出してよい。また、ノイズ算出部32は、当該パワーP1から−20dB/decで減衰するスペクトルを算出することで、フリッカノイズのスペクトルを得てよい。
【0037】
図9は、図7における算出値S2から求めたフリッカノイズの測定スペクトルの一例を示す。図8に関連して説明したように、ノイズ算出部32は、算出値S2に対応する測定スペクトルを算出してよい。なお、ノイズ算出部32は、測定誤差を低減するべく、複数の算出値S1、S2、・・・に対応する複数の測定スペクトルを算出してよい。そして、複数の測定スペクトルから、フリッカノイズのスペクトルを決定してよい。
【0038】
例えばノイズ算出部32は、複数の測定スペクトルの、基本周波数におけるパワーP1、P2、・・・の平均値Paを算出する。ノイズ算出部32は、当該平均値Paから−20dB/decで減衰するスペクトルを、フリッカノイズのスペクトルとする。判定部34は、フリッカノイズのスペクトルに基づいて、被測定信号の良否を判定してよい。例えば判定部34は、上述した平均値Paが、所定の範囲内か否かに基づいて、被測定信号の良否を判定する。
【0039】
上述した処理により、被測定信号に含まれるフリッカノイズを解析して、被測定信号の良否を判定することができる。上述した例では、ノイズ算出部32は、複数の算出値S1、S2、・・・からフリッカノイズのスペクトルを決定したが、他の例では、一つの算出値からフリッカノイズのスペクトルを決定してもよい。
【0040】
また、測定装置300が測定するノイズは、フリッカノイズに限定されない。測定装置300は、上述した処理により、予め定められた低周波帯域におけるスペクトルの傾きが既知のノイズを測定してよい。測定装置300には、使用者等により予めスペクトルの傾きが入力されてよい。測定装置300は、ホワイトノイズ等のように、各周波数において一定のパワーのノイズスペクトルを算出してもよい。
【0041】
また、当該予め定められた低周波帯域は、減衰開始周波数に応じて定められてよい。例えば、当該予め定められた低周波帯域は、0から減衰開始周波数の2倍から10倍程度の周波数までの帯域を指す。
【0042】
図10は、平均周期算出部20が、各計数ステップにおいて算出する平均周期Taの一例を示す。本例では、被測定信号の平均周期Taが、ジッタとは別に、温度変動、電源変動等の要因で、全体的に経時変化する例を示す。このような場合、平均周期算出部20の算出結果に基づいて、ピークツゥピーク値、RMS値等を算出すると、全体的な経時変化の影響により、ジッタを精度よく算出できない。
【0043】
図11は、ノイズ算出部32が補正した、各計数ステップにおける平均周期Taの一例を示す。ノイズ算出部32は、予め定められた計数ステップの回数毎における、平均周期Taのばらつきの平均値が略一定値となるように、それぞれの平均周期Taの値を補正する。図11の例では、ノイズ算出部32は、図10に示した平均周期Taを、計数ステップ100回毎にグループ分けする。そして、各グループにおける平均周期Taの平均値が略一定となるように、各グループにおける平均周期Taの値をシフトする。
【0044】
ノイズ算出部32は、補正した平均周期Taに基づいて、ジッタのピークツゥピーク値、RMS値等を算出する。このような処理により、被測定信号の平均周期Taにおける経時変化の影響を低減して、ジッタを精度よく測定することができる。
【0045】
図12は、測定装置300の他の構成例を示す図である。本例の測定装置300は、図1から図11に関連して説明した測定装置300の構成に加え、デバイス制御部40を更に備える。また、測定装置300は、被測定信号を出力する被試験デバイス200の良否を判定してよい。例えば測定装置300は、被測定信号のジッタの測定値が、予め定められた範囲内か否かにより、被試験デバイス200の良否を判定する。
【0046】
被試験デバイス200は、例えばSerDes回路であって、並列に配置された複数の並列回路202と、動作クロックを生成するクロック発生部206と、変換部204と、出力バッファ208とを備える。変換部204は、複数の並列回路202から受け取るパラレル信号を、動作クロックに応じて順次選択して生成したシリアル信号を出力する。出力バッファ208は、シリアル信号を外部に出力する。
【0047】
デバイス制御部40は、変換部204から出力されるシリアル信号が、変換部204の動作周期に応じてH論理およびL論理が交互にあらわれるクロック信号となるように、複数の並列回路202を制御する。例えばデバイス制御部40は、それぞれの並列回路202が出力する論理値を、変換部204において選択される順序に応じて、H論理およびL論理に交互に固定する。例えばデバイス制御部40は、偶数番目に選択される並列回路202の出力をL論理に固定して、奇数番目に選択される並列回路202の出力をH論理に固定する。
【0048】
これにより、変換部204が出力するシリアル信号を、一定周期のクロック信号にすることができる。周波数カウンタ10は、デバイス制御部40が複数の並列回路202の出力を制御した後に、変換部204が出力するシリアル信号を測定する。このような制御により、変換部204、クロック発生部206等で生じるジッタを、測定装置300を用いて測定することができる。
【0049】
図13は、被試験デバイス200の他の構成例を示す。本例の被試験デバイス200は、被試験回路210、フィードバック部214、および、選択部212を備える。測定装置300は、図12に示した測定装置300と同一の構成を有する。被試験回路210は、入力信号に応じた出力信号を出力する。被試験回路210は、例えば遅延回路を有する。被試験回路210は、被試験デバイス200が電気機器に搭載された場合に、当該電気機器の機能の一部を実行する回路に含まれてよい。
【0050】
フィードバック部214は、被試験回路210が出力する出力信号を、被試験回路210の出力ラインから分岐して受け取り、被試験回路210の入力にフィードバックする。選択部212は、被試験回路210に、外部からの入力信号またはフィードバック部214からの信号のいずれを入力するかを選択する。
【0051】
デバイス制御部40は、選択部212にフィードバック部214からの信号を選択させる。被試験回路210が出力する信号を、被試験回路210の入力にフィードバックすることで、被試験回路210から一定周期の発振信号を出力させることができる。周波数カウンタ10は、デバイス制御部40が複数の並列回路202の出力を制御した後に、変換部204が出力する信号を測定する。このような制御により、被試験回路210における遅延量の変動を、測定装置300を用いて測定することができる。
【0052】
また、測定装置300は、被試験回路210における遅延設定を変更して、遅延設定毎に被試験回路210の遅延量の変動を測定してよい。また、被試験デバイス200は、被試験回路210、フィードバック部214、および、選択部212を並列に2つずつ備え、2つのループを形成してもよい。測定装置300は、一方の被試験回路210の遅延設定毎の遅延量の変動を測定する場合において、他方の被試験回路210の遅延量を並行して測定することで、温度変動等の経時変化の影響を補償してよい。
【0053】
具体的には、第1の被試験回路210および第2の被試験回路210は、共通の電源から電源電圧を受け取る。第1の選択部212および第2の選択部212は、それぞれ対応するフィードバック部214からの信号と、共通の入力信号とを受け取る。第1のフィードバック部214および第2のフィードバック部214は、対応する被試験回路210が出力する信号を、対応する選択部212にフィードバックする。
【0054】
測定装置300は、第1の被試験回路210に、異なる遅延設定値を順次設定する。このとき、測定装置300は、第2の被試験回路210の遅延設定値を変化させない。そして、測定装置300は、遅延設定値毎に、第1の被試験回路210が出力する発振信号の平均周期Taのばらつき(すなわち、第1の被試験回路210における遅延量の変動)を測定する。このとき、測定装置300は、第2の被試験回路210が出力する発振信号の平均周期Taのばらつきを並行して測定する。測定装置300は、2つの周波数カウンタ10および平均周期算出部20を備えてよい。
【0055】
第2の被試験回路210の遅延設定値が変化しないので、第2の被試験回路210が出力する発振信号に対して、平均周期算出部20が算出する平均周期Taの全体的な変動は、温度変動等の影響を示している。このため、ノイズ算出部32は、第1の被試験回路210が出力する発振信号に対して、平均周期算出部20が算出した平均周期Taを、第2の被試験回路210が出力する発振信号に対して、平均周期算出部20が算出した平均周期Taを用いて補正する。
【0056】
より具体的には、ノイズ算出部32は、第2の被試験回路210が出力する発振信号に対して、平均周期算出部20が算出した平均周期Taの、長期的な変動を検出してよい。例えばノイズ算出部32は、平均周期算出部20が算出した平均周期Taの変動の低周波成分を検出する。ノイズ算出部32は、当該低周波成分を、第1の被試験回路210が出力する発振信号に対して、平均周期算出部20が算出した平均周期Taから減じることで、当該測定結果における長期的な経時変化を補償することができる。
【0057】
図14は、測定装置300の他の構成例を示す。本例の被試験デバイス200は、例えば遅延回路等を有しており、入力信号に応じた出力信号を出力する。測定装置300は、図1から図11に関連して説明した測定装置300の構成に加え、選択部212、フィードバック部214、および、デバイス制御部40を更に備える。なお、選択部212およびフィードバック部214は、被試験デバイス200が載置されるパフォーマンスボード等の基板に設けられてよい。
【0058】
選択部212、フィードバック部214、および、デバイス制御部40の機能は、図13において説明した選択部212、フィードバック部214、および、デバイス制御部40の機能と同一であってよい。つまり、本例の測定装置300は、図13に関連して説明した選択部212及びフィードバック部214を備える点で、図13に関連して説明した測定装置300と相違する。このような構成により、被試験デバイス200における遅延量の変動を、測定装置300を用いて測定することができる。
【0059】
図15は、測定装置300の他の構成例を示す。本例の測定装置300は、図1から図11に関連して説明した測定装置300の構成に加え、電圧制御発振器70を更に備える。また、本例の被試験デバイス200は、電源220を備える。
【0060】
電圧制御発振器70は、電源220が生成する電圧を受け取り、当該電圧に応じた周波数の発振信号を出力する。周波数カウンタ10は、電圧制御発振器70が出力する発振信号を測定する。このような構成により、電源220における電源電圧変動を検出することができる。
【0061】
図16は、被試験デバイス200の他の構成例を示す。測定装置300は、図14に示した測定装置300と同一の構成を有する。本例の測定装置300は、被試験デバイス200のクロックツリーにおける経路遅延の変動を測定する。被試験デバイス200は、入力バッファ230および複数のバッファ232を備える。
【0062】
入力バッファ230は、入力されるクロック信号を、それぞれのバッファ232に分岐して伝送する。それぞれのバッファ232は、入力バッファ230から受け取ったクロック信号を、被試験デバイス200における対応する回路ブロックに供給する。これにより、被試験デバイス200の各回路ブロックに、同一のクロックが分配される。
【0063】
周波数カウンタ10は、それぞれのバッファ232が出力するクロック信号を、被試験デバイス200の外部に取り出して測定する。また、フィードバック部214は、周波数カウンタ10と並列に設けられ、クロック信号を被試験デバイス200の入力側にフィードバックする。
【0064】
選択部212は、外部から入力される入力クロックと、フィードバック部214からフィードバックされるクロック信号とのいずれかを選択して、入力バッファ230に入力する。デバイス制御部40は、選択部212を制御する。このような制御により、入力バッファ230から、バッファ232までの経路を含むループを形成して、発振信号を生成することができる。このため、被試験デバイス200の内部における、経路の遅延量の変動を測定することができる。測定装置300は、それぞれのバッファ232を順番に選択して、それぞれの経路の遅延量の変動を測定してよい。
【0065】
図17は、電子デバイス400の構成例を示す。電子デバイス400は、動作回路402および測定装置300を内蔵する。動作回路402は、入力信号に応じた出力信号を生成する。例えば動作回路402は、電子デバイス400が電気機器に実装された場合に、当該電気機器の機能の一部を実行する。
【0066】
測定装置300は、図1から図16に関連して説明したいずれかの測定装置300と同一の機能および構成を有してよい。測定装置300は、動作回路402が出力する被測定信号を測定する。測定装置300は、被測定信号に含まれるジッタの測定結果を外部に出力してよい。
【0067】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0068】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0069】
10・・・周波数カウンタ、20・・・平均周期算出部、32・・・ノイズ算出部、34・・・判定部、40・・・デバイス制御部、50・・・基準信号生成部、60・・・入力部、70・・・電圧制御発振器、100・・・試験装置、200・・・被試験デバイス、202・・・並列回路、204・・・変換部、206・・・クロック発生部、208・・・出力バッファ、210・・・被試験回路、212・・・選択部、214・・・フィードバック部、220・・・電源、230・・・入力バッファ、232・・・バッファ、300・・・測定装置、400・・・電子デバイス、402・・・動作回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定信号の良否を判定する試験装置であって、
周期が既知の基準信号のパルス数と、前記被測定信号のパルス数とを、同一の測定期間内で並行して計数する計数ステップを複数回繰り返す周波数カウンタと、
同一の前記測定期間内で計数した前記基準信号および前記被測定信号のパルス数の比、および、前記基準信号の周期に基づいて、前記測定期間における前記被測定信号の平均周期を、それぞれの前記計数ステップについて算出する平均周期算出部と、
前記平均周期算出部が算出した前記平均周期のばらつきを算出するノイズ算出部と、
前記平均周期のばらつきに基づいて、前記被測定信号の良否を判定する判定部と
を備える試験装置。
【請求項2】
前記周波数カウンタは、前記計数ステップを予め定められた回数実行する毎に、前記測定期間を変化させる請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記ノイズ算出部は、前記平均周期算出部が算出した前記平均周期のばらつきに基づいて、予め定められた低周波帯域におけるスペクトルの傾きが既知のノイズの前記スペクトルを算出する
請求項2に記載の試験装置。
【請求項4】
前記ノイズ算出部は、前記測定期間の値毎に前記平均周期のばらつきを算出し、算出した複数の前記平均周期のばらつきに基づいて、前記ノイズのスペクトルを決定する
請求項3に記載の試験装置。
【請求項5】
前記周波数カウンタは、前記被測定信号の前記測定期間の開始、または、終了のタイミングが一定間隔とならないように、前記計数ステップを繰り返す請求項2に記載の試験装置。
【請求項6】
前記ノイズ算出部は、予め定められた前記計数ステップの回数毎の前記平均周期のばらつきの平均値が一定値となるように、それぞれの前記平均周期の値を補正する請求項2に記載の試験装置。
【請求項7】
前記試験装置は、前記被測定信号を出力する被試験デバイスの良否を判定し、
前記被試験デバイスは、
並列に配置された複数の並列回路と、
動作クロックを生成するクロック発生部と、
前記複数の並列回路から受け取るパラレル信号を、前記動作クロックに応じて順次選択して生成したシリアル信号を出力する変換部と
を備え、
前記試験装置は、前記シリアル信号が、前記変換部の動作周期に応じてH論理およびL論理が交互にあらわれるクロック信号となるように、前記複数の並列回路を制御するデバイス制御部を更に備える請求項2に記載の試験装置。
【請求項8】
前記試験装置は、前記被測定信号を出力する被試験デバイスの良否を判定し、
前記被試験デバイスは、
入力信号に応じた出力信号を出力する被試験回路と、
前記被試験回路が出力する前記出力信号を、前記被試験回路の出力ラインから分岐して受け取り、前記被試験回路の入力にフィードバックするフィードバック部と、
前記被試験回路に、前記入力信号および前記フィードバック部からの信号のいずれを入力するかを選択する選択部と
を備え、
前記試験装置は、前記選択部に前記フィードバック部からの信号を選択させるデバイス制御部を更に備える請求項2に記載の試験装置。
【請求項9】
前記試験装置は、前記被測定信号を出力する被試験デバイスの良否を判定し、
前記被試験デバイスは、入力信号に応じた出力信号を出力し、
前記試験装置は、
前記被試験デバイスが出力する信号を受け取り、前記被試験デバイスにフィードバックするフィードバック部と、
前記被試験デバイスに、前記入力信号および前記フィードバック部からの信号のいずれを入力するかを選択する選択部と
を更に備える請求項2に記載の試験装置。
【請求項10】
被測定信号を測定する測定装置であって、
周期が既知の基準信号のパルス数と、前記被測定信号のパルス数とを、同一の測定期間内で並行して計数する計数ステップを複数回繰り返す周波数カウンタと、
同一の前記測定期間内で計数した前記基準信号および前記被測定信号のパルス数の比、および、前記基準信号の周期に基づいて、前記測定期間における前記被測定信号の平均周期を、それぞれの前記計数ステップについて算出する平均周期算出部と、
前記平均周期算出部が算出した前記平均周期のばらつきを算出するノイズ算出部と
を備える測定装置。
【請求項11】
動作回路が出力する被測定信号を測定する、請求項10に記載の測定装置を内蔵した電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−154009(P2011−154009A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17462(P2010−17462)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】