説明

認識マーク認識装置

【課題】 補強板が無い構造でもCOFパッケージの認識マークの認識率を向上できる認識マーク認識装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 ステージ21上に、配線基板22に配置される認識マーク23を撮影する認識カメラ25の焦点が合う領域よりも深さが深い凹部26を設けることにより、前記認識カメラ25が前記認識マーク23の表面に焦点を合わせて前記認識マーク23を撮影する際に、前記ステージ上の傷や紋様に焦点が合うことが無くなるため、前記認識マーク23の認識率を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性を有する配線基板に半導体素子を実装する際に認識マークの位置を検出する認識マーク認識装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ドライバー等に用いるCOF(Chip On Film)などのパッケージでは、半導体素子を実装する配線基板として、ポリイミドなどの光透過性を有するテープ状の配線基板が用いられている。
【0003】
配線基板に半導体素子を実装する際には、実装装置のステージ上に配線基板を配置し、認識マークの上方から照明光を照射して配線基板上に設けられた認識マークと半導体素子の認識マークとを認識カメラで撮影し、それぞれの認識マークの位置情報から所定の位置に位置合わせして半導体素子を実装する。認識マークの認識率が低下すると、半導体素子の実装精度の低下や実装装置が停止することによる生産効率の低下を招くため、認識マークの認識率は可能な限り向上させる必要がある。
【0004】
しかしながら、配線基板が光透過性を有する場合、配線基板の裏面が実装用のステージに密着しているため、認識マークの上方から照射する照明光が配線基板を透過し、ステージで反射した反射光が認識カメラに入射するため、認識マークのコントラストが低下して認識マークの認識率が低下する。また、認識マークを透過して配線基板の裏面に接する実装用のステージの表面が見えるため、ステージ上の傷やステージの表面仕上げの紋様により認識マークの認識率が低下する。このため、配線基板の裏面に張り合わせた補強板を利用して配線基板とステージとの間に距離を設けることで認識マークの認識率を向上させる構造が提言されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
以下、従来技術による配線基板上の認識マークの認識率を向上させる方法について図4を用いて説明する。
図4は従来の認識マーク認識装置を示す構成図である。
【0006】
図4において、1はステージ、2は光透過性を有する配線基板、3は配線基板の表面に形成された認識マーク、4は配線基板の裏面に張り合わされた補強板で、ステージ1上に配置される。5は認識マーク3より大きい領域で補強板4に形成された抜き穴、6は認識マーク3を配線基板2の上方より撮影する認識カメラ、7は認識マーク3を上方より照らす照明光、8は照明光7がステージ1に反射した反射光である。
【0007】
認識マーク3より大きい領域で補強板4に抜き穴5が形成されているため、認識カメラ6で認識マーク3を撮影する際に補強板4の表面で照明光7が反射することが無く、認識マーク3と背景のコントラストを向上させることで認識率を向上させている。
【特許文献1】特開2001−7460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の方法では補強板4が必要であるため、一般の液晶用COFパッケージとして多用されている補強板が無い構造には適用することができない。
補強板4が無い場合は、図5に示す従来の液晶用COFにおける認識マーク認識装置を示す構成図から分かるように、照明光7がステージ1に反射した反射光8が認識カメラ6に入射し認識マーク3のコントラストが低下し認識率が低下する。
【0009】
一方、液晶用COFのパッケージ組立に用いる視野が500μm〜700μm角程度の認識カメラ6の焦点深度(図5中にWで示す)は100μm程度である。また、液晶用TCPやCOFパッケージの場合の配線基板2は可撓性を持たせるため、一般に30μm〜80μm程度のポリイミドフィルムを用いる。また、認識マーク3の厚みはポリイミドフィルム上の配線層である銅箔をエッチングして形成するため、一般的には8μm〜18μmである。
【0010】
このため、光透過性を有する配線基板2を直接ステージ1上に配置した場合、認識カメラ6の焦点を認識マーク3の表面に合わせると、同時にステージ1の表面の傷や紋様にも焦点が合うため、更に認識率が低下する。
【0011】
本発明は上記問題を解決するもので、補強板が無い構造でもCOFパッケージの認識マークの認識率を向上できる認識マーク認識装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の認識マーク認識装置は、配線基板に半導体素子を実装するに際し、前記配線基板および前記半導体素子の認識マークの位置を認識する認識マーク認識装置であって、照射光を発生する光源と、前記照射光に照らされた前記認識マークを撮影する認識カメラと、前記配線基板が載置され、前記認識カメラの焦点深度より深い凹部を設けるステージとを有することを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の認識マーク認識装置は、請求項1記載の認識マーク認識装置において、前記凹部の表面がステージ面に対し傾斜し、かつ、前記凹部の最も浅い部分が前記焦点深度より深いことを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の認識マーク認識装置は、請求項1または請求項2いずれかに記載の認識マーク認識装置において、前記凹部の底面及び側面の少なくとも一部を被覆する反射防止層を設けることを特徴とする。
【0015】
以上により、補強板が無い構造でもCOFパッケージの認識マークの認識率を向上できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の認識マーク認識装置は、ステージ上に、配線基板に配置される認識マークを撮影する認識カメラの焦点が合う領域よりも深さが深い凹部を設けることにより、前記認識カメラが前記認識マークの表面に焦点を合わせて前記認識マークを撮影する際に、前記ステージ上の傷や紋様に焦点が合うことが無くなるため、前記認識マークの認識率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施の形態1における認識マーク認識装置を示す構成図である。
【0018】
図1において、21はステージ、22はステージ21上に配置した光透過性を有する配線基板、23は配線基板22上に形成された認識マークである。24は認識マーク23の上方の光源より認識マーク23を含む領域を照らす照明光、25は認識マーク23の上方より認識マーク23を撮影する認識カメラ、26はステージ21上の認識マーク23が形成された領域に設けられた凹部である。Wは認識カメラ25の焦点深度を示す。すなわちWの領域で認識カメラ25の焦点が合う。またDは凹部26のステージ21表面からの深さを示す。
【0019】
ここでステージ21の材料としては、例えば、加工性が良く腐食や傷がつきにくい材料としてステンレス等を用いる。配線基板22には、一般的な30μmピッチ程度の配線を有するCOFパッケージを用途とするため、液晶パネルに実装する場合の可撓性と強度の観点から、厚み40μm程度のポリイミドフィルムを用いる。また、認識マーク23は、ポリイミド基板上の配線層である厚み8um程度の銅箔の一部をエッチングによりパターニングして形成する。認識カメラ25の視野は、一般的なCOF用フリップチップボンダーの場合には500μm〜700μm角程度であり、焦点深度Wは100μm〜200μmであるため、認識マーク23の大きさは形状が十分認識でき、かつ、認識カメラの視野から外れない大きさとして200μm〜300μm角程度に形成する。
【0020】
ここで、認識カメラ25の焦点深度Wを200μm、認識マーク23の厚みを8μm、認識マーク23の形状は200um角の正方形とする。凹部26の開口部は認識マーク23の全領域が含まれる形状とし、例えば400μm角の正方形とする。また、配線基板22の厚みは40μmとする。
【0021】
このような構成において、認識マーク23の撮影時に認識カメラ25の焦点を認識マーク23の表面に合わせた場合、ステージ21の表面から下方に50μm程度までは認識カメラ25の焦点が合うことになる。
【0022】
このため、ステージ21の表面に形成する凹部26の深さDを50μmより十分深く、例えば、300μm程度に形成すると、前記認識マークの凹部26の底面27の傷や紋様には認識カメラ25の焦点が合わなくなり、認識マーク23の認識率を低下させることが無い。
【0023】
なお、認識マーク23の形状は正方形として説明したが、長方形や十字形状、円形など、認識しやすい形状であれば良い。また、凹部26の開口部は正方形としたが、認識マーク23に重ならず、ステージ21に対する加工性の良い形状であれば良く、円形や長方形などでも良い。
【0024】
以上のように、本発明の実施の形態1によれば、ステージ21の表面に形成する凹部26の深さDを認識カメラ25の焦点が合う範囲よりも十分深く形成することで、凹部26の底面27の傷や紋様には認識カメラ25の焦点が合わなくなり、認識マーク23の認識精度を向上する効果が得られる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について図面を参照しながら説明する。
【0025】
図2は本発明の実施の形態2における認識マーク認識装置を示す構成図である。
図2において、21はステージ、22は光透過性を有する配線基板、23は認識マークである。24は照明光、25は認識カメラ、Wは認識カメラ25の焦点深度であり、これらは本発明の実施の形態1と同一である。
【0026】
26はステージ21上の認識マーク23が形成された領域に設けられた凹部であり、凹部26の底面28はステージ21の表面に対し傾斜して形成されている。29は照明光24が凹部26の底面28で反射した反射光である。
【0027】
また、D´は凹部26のステージ表面21から最も浅い部分の深さを示す。
ここで、本発明の実施の形態1と同様にステージ21の表面に形成する凹部27のステージ表面21から最も浅い部分深さD´を認識カメラ25の焦点が合う範囲よりも十分深く形成することで、凹部26の底面28の傷や紋様には認識カメラ25の焦点が合わなくなり、認識マーク23の認識精度を向上することができる。
【0028】
加えて、凹部26の底面28がステージ21の表面に対し傾斜して形成されているため、上方より凹部26に入射する照明光24が凹部26の底面28で反射し、その反射光29が認識カメラ25に入射しないため、認識マーク23のコントラストを低下させることが無くなるため、認識マーク23の認識率を更に向上させることができる。
【0029】
以上のように、本発明の実施の形態2によれば、本発明の実施の形態1における効果に加え、凹部26の底面28がステージ21の表面に対し傾斜して形成されていることから、照明光24の底面28での反射光29が認識カメラ25に入射しないため、認識マーク23のコントラストを低下させることが無く、認識マーク23の認識率を更に向上する効果が得られる。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について図面を参照しながら説明する。
【0030】
図3は本発明の実施の形態3における認識マーク認識装置を示す構成図である。
図3において、21はステージ、22は光透過性を有する配線基板、23は認識マークである。24は照明光、25は認識カメラ、26はステージ21に形成された凹部、27は凹部26の底面、Wは認識カメラ25の焦点深度、Dはステージ21の表面からの凹部26の深さであり、これらは本発明の実施の形態1及び実施の形態2と同一である。
【0031】
また、30は凹部26の底面27及び側面を被覆する反射防止層である。
反射防止層30は、認識カメラ25に入射される照明光24を吸収する材質と厚みと領域であれば良く、例えば、凹部26を形成した後のステージ21の上部から凹部26の底面27及び側面にスプレー塗布により100μm厚み程度に樹脂被膜を形成した後にステージ21の表面を研磨することで形成できる。
【0032】
この他、例えば、ステージ21が金属の場合は、ウエットエッチ法で凹部26の底面27及び側面に微小な凹凸を形成した後にステージ21の表面を研磨することでも形成できる。
【0033】
このように、凹部26の底面及び側面27が反射防止層30で被覆されることにより、照明光24が凹部26の底面27及び側面で反射することを抑制し、反射光が減衰することで、認識カメラ25において底面27を認識することが少なくなるので、認識マーク23のコントラストを低下させることが無く、認識マーク23の認識率を更に向上させることができる。
【0034】
以上のように、本発明の実施の形態3によれば、本発明の実施の形態1及び実施の形態2の効果に加え、凹部26の底面27及び側面が反射防止層30で被覆されているため、凹部26の底面27及び側面での反射光が減衰することで認識マーク23のコントラストを低下させることが無く、認識マーク23の認識率を更に向上する効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、補強板が無い構造でもCOFパッケージの認識マークの認識率を向上でき、光透過性を有する配線基板に半導体素子を実装する際に認識マークの位置を検出する認識マーク認識装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施の形態1における認識マーク認識装置を示す構成図
【図2】実施の形態2における認識マーク認識装置を示す構成図
【図3】実施の形態3における認識マーク認識装置を示す構成図
【図4】従来の認識マーク認識装置を示す構成図
【図5】従来の液晶用COFにおける認識マーク認識装置を示す構成図
【符号の説明】
【0037】
1 ステージ
2 配線基板
3 認識マーク
4 補強板
5 抜き穴
6 認識カメラ
7 照明光
8 反射光
21 ステージ
22 配線基板
23 認識マーク
24 照明光
25 認識カメラ
26 凹部
27 底面
28 底面
29 反射光
30 反射防止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板に半導体素子を実装するに際し、前記配線基板および前記半導体素子の認識マークの位置を認識する認識マーク認識装置であって、
照射光を発生する光源と、
前記照射光に照らされた前記認識マークを撮影する認識カメラと、
前記配線基板が載置され、前記認識カメラの焦点深度より深い凹部を設けるステージと
を有することを特徴とする認識マーク認識装置。
【請求項2】
前記凹部の表面がステージ面に対し傾斜し、
かつ、前記凹部の最も浅い部分が前記焦点深度より深いことを特徴とする請求項1記載の認識マーク認識装置。
【請求項3】
前記凹部の底面及び側面の少なくとも一部を被覆する反射防止層を設けることを特徴とする請求項1または請求項2いずれかに記載の認識マーク認識装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−269698(P2006−269698A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85075(P2005−85075)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】