説明

誘導加熱コイルの製造装置及び誘導加熱コイルの製造方法

【課題】線材202における巻き軸252Aに直線状に巻き掛けられる直線部202Aの直線性を確保する。
【解決手段】巻き軸252Aの角部252Cに巻き掛けられる位置に予め折り目を付与する。これにより、線材202が巻き軸252Aの断面形状にならって巻き取られる。このため、線材202における巻き軸252Aに直線状に巻き掛けられる直線部202Aの直線性が確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱コイルの製造装置及び誘導加熱コイルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、線材供給部3から供給される導電性線材CWを、コイル巻線金型4を回転させて巻き付け、所望のコイル巻形状の電気コイルに加工するにあたり、コイル巻線金型4の導電性線材を巻き付ける巻線部位40が長辺部40aの場合には、当該コイル巻線金型4を線材供給部3から離反する方向Dに当該長辺部40aの長さに応じた距離だけ直線移動させて導電性線材CWに所定張力を付加し、コイル巻線金型4の導電性線材を巻き付ける巻線部位40が短辺部40bの場合には、コイル巻線金型4を回転させる電気コイルの巻線加工方法が開示されている。
【0003】
特許文献2には、加圧ローラ11によってリッツ線2を平角状に、素線21が断線しない加圧力で1次圧延し、この1次圧延されたリッツ線2に対して所定張力を付与すると共に、2加圧ローラ13によって2次圧延した状態でコイル巻形状に加工して巻回体3′を形成させ、このコイル巻形状の巻回体3′のリッツ線2間に接着剤を塗布した後、当該巻回体3′を球帯状に変形しながら加圧し、接着剤が固化した後に加圧を解除して巻回体3′を最終形状である球帯状の巻回体3に形成させる誘導加熱コイルの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−168618号公報
【特許文献2】特開2000−215972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、誘導加熱コイルにおける巻き軸に直線状に巻き掛けられる直線部の直線性を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、線材を断面四角状の巻き軸で巻き取る巻取装置と、前記巻取装置によって巻き取られる前記線材に対して、前記巻き軸の角部に巻き掛けられる位置に予め折り目を付与する折り目付与装置と、を備える誘導加熱コイルの製造装置である。
【0007】
請求項2の発明は、前記折り目付与装置によって折り目が付与される前記線材を供給する線材供給部と、前記線材供給部から供給された前記線材を前記折り目付与装置へ搬送する搬送装置と、を備え、前記巻取装置は、前記搬送装置による前記線材の搬送量に応じて前記巻き軸を回転させ、前記折り目付与装置によって折り目が付与された前記線材を前記折り目付与装置との間で弛ませた状態で前記線材を巻き取る請求項1に記載の誘導加熱コイルの製造装置である。
【0008】
晴求項3の発明は、前記巻取装置は、前記巻き軸に設けられ、前記巻き軸に巻き掛けられる前記線材が収容される溝部と、前記溝部に前記線材を前記巻き軸の軸方向に対して直角の方向(垂直な方向)に押し入れる押入部材と、を有する請求項1又は2に記載の誘導加熱コイルの製造装置である。
【0009】
請求項4の発明は、前記巻取装置は、前記巻き軸に巻き取られた前記線材を前記巻き軸の軸方向に圧縮して成形する圧縮部材を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘導加熱コイルの製造装置である。
【0010】
請求項5の発明は、前記搬送装置は、前記線材を圧縮して前記線材を断面四角形状に成形しながら搬送する請求項1〜4のいずれか1項に記載の誘導加熱コイルの製造装置である。
【0011】
請求項6の発明は、線材を断面四角状の巻き軸で巻き取る誘導加熱コイルの製造方法であって、前記巻き軸で巻き取られる前記線材に対して、前記巻き軸の角部に巻き掛けられる位置に予め折り目を付与する折り目付与工程と、前記折り目付与工程で折り目が付与された前記線材を前記巻き軸で巻き取る巻取工程と、を備える誘導加熱コイルの製造方法である。
【0012】
請求項7の発明は、前記巻取工程では、前記折り目付与工程において前記折り目を前記線材に付与する折り目付与装置と前記巻き軸との間で前記線材を弛ませた状態でその線材を巻き取る請求項6に記載の誘導加熱コイルの製造方法である。
【0013】
請求項8の発明は、前記巻取工程で前記巻き軸に巻き取られた前記線材を前記巻き軸の軸方向に圧縮して成形する成形工程を備える請求項6又は7に記載の誘導加熱コイルの製造方法である。
【0014】
請求項9の発明は、前記折り目付与工程で折り目を付与される前記線材を予め線材を圧縮して断面四角形状に成形する成形工程を備える請求項6〜8のいずれか1項に記載の誘導加熱コイルの製造方法である。
【0015】
請求項10の発明は、前記巻取装置は、前記巻き軸の少なくとも一端側における軸幅が、前記巻き軸の軸方向に向かって徐々に狭くなる請求項4に記載の誘導加熱コイルの製造装置である。
【0016】
請求項11の発明は、前記圧縮部材で圧縮された線材を、その圧縮方向へ凸状に湾曲するように支持する支持体と、前記支持体に支持された線材を圧縮する圧縮体と、を有する圧縮装置を備える請求項4に記載の誘導加熱コイルの製造装置である。
【0017】
請求項12の発明は、前記線材が巻き付けられ、回転して前記線材を送り出す巻付部材と、前記巻付部材に巻き付けられた線材の残量の減少に伴って前記巻付部材の回転速度を増加するように前記巻付部材を回転駆動して、前記折り目付与装置へ向けて前記線材を供給する駆動部と、を有する線材供給部を備える請求項1に記載の誘導加熱コイルの製造装置である。
【0018】
請求項13の発明は、前記折り目付与装置によって折り目が付与される前記線材を供給する線材供給部と、前記線材供給部から供給された前記線材を前記折り目付与装置へ搬送する搬送装置と、前記線材供給部の下流側であってかつ前記搬送装置の上流側に配置され、前記線材が巻き掛けられ、前記搬送装置で搬送される前記線材に従動して回転する従動ロールと、前記従動ロールの回転に基づき、前記搬送装置の搬送量を測定する測定部と、前記従動ロールに対する前記線材の巻き掛け量が増える側へ向けて、前記線材へ張力を付与する張力付与機構と、を備える請求項1に記載の誘導加熱コイルの製造装置である。
【0019】
請求項14の発明は、前記巻取工程では、少なくとも一端側における軸幅が自らの軸方向に向かって徐々に狭くなる巻き軸で前記線材を巻き取り、前記成形工程では、前記巻き軸に巻き取られた状態の前記線材を前記巻き軸の軸方向に圧縮して成形する請求項8に記載の誘導加熱コイルの製造方法である。
【0020】
請求項15の発明は、前記線材を前記巻き軸の軸方向に圧縮して成形する成形工程は、前記巻き軸に直線状に巻き取られた状態の前記線材を前記巻き軸の軸方向に一次圧縮し、さらに、前記線材を湾曲状に支持しながら前記線材を二次圧縮する請求項8に記載の誘導加熱コイルの製造方法である。
【0021】
請求項16の発明は、巻付部材に巻かれた線材の残量の減少に伴って前記巻付部材の回転速度を増加するように前記巻付部材を回転駆動して、折り目が付与される前記線材を供給する供給工程を備える請求項6に記載の誘導加熱コイルの製造方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の請求項1の構成によれば、巻き軸の角部に巻き掛けられる位置に予め折り目を付与しない構成に比べ、誘導加熱コイルにおける巻き軸に直線状に巻き掛けられる直線部の直線性を確保できる。
【0023】
本発明の請求項2の構成によれば、折り目が付与された線材に張力が付与されるように線材を巻き取る構成に比べ、折り目が付与されたままの線材を巻き軸に巻き取らせることができる。
【0024】
本発明の請求項3の構成によれば、線材を溝部に押し入れない構成に比べ、巻き軸の軸方向に対して直角の方向(垂直な方向)に密に線材を整列させることができる。
【0025】
本発明の請求項4の構成によれば、線材を巻き軸の軸方向に圧縮しない構成に比べ、線材の折り目部分で生じた巻き軸の軸方向の膨みを小さくすることができる。
【0026】
本発明の請求項5の構成によれば、線材を断面四角形状に成形しない構成に比べ、巻き軸の軸方向に対して直角の方向(垂直な方向)に密に線材を整列させることができる。
【0027】
本発明の請求項6の構成によれば、巻き軸の角部に巻き掛けられる位置に予め折り目を付与しない場合に比べ、誘導加熱コイルにおける巻き軸に直線状に巻き掛けられる直線部の直線性を確保できる。
【0028】
本発明の請求項7の構成によれば、折り目が付与された線材に張力が付与されるように線材を巻き取る場合に比べ、折り目が付与されたままの線材を巻き軸に巻き取らせることができる。
【0029】
本発明の請求項8の構成によれば、線材を巻き軸の軸方向に圧縮しない構成に比べ、線材の折り目部分で生じた巻き軸の軸方向の膨みを小さくすることができる。
【0030】
本発明の請求項9の構成によれば、線材を断面四角形状に成形しない場合に比べ、巻き軸の軸方向に対して垂直な方向に密に線材を整列させることができる。
【0031】
本発明の請求項10の構成によれば、巻き軸の軸幅が変化しない構成に比べ、製造された誘導加熱コイルを、ボビンの円弧状の外周面に形成された凸部に巻かれるように該外周面上に設置した場合に、前記凸部と誘導加熱コイルとの間に隙間が形成されにくい。
【0032】
本発明の請求項11の構成によれば、圧縮装置を備えない構成に比べ、製造された誘導加熱コイルを、ボビンの円弧状の外周面に形成された凸部に巻かれるように該外周面上に設置した場合に、前記凸部と誘導加熱コイルとの間に隙間が形成されにくい。
【0033】
本発明の請求項12の構成によれば、巻付部材に巻き付けられた線材の残量の変化に関わらず巻付部材の回転速度が一定である構成に比べ、巻付部材に巻き付けられた線材の残量が減少した場合でも折り目付与装置へ向けた線材の供給量が一定化される。
【0034】
本発明の請求項13の構成によれば、張力付与機構を備えない構成に比べ、線材と従動ロールとの間ですべりが生じにくい。
【0035】
本発明の請求項14の構成によれば、巻き軸の軸幅が変化しない場合に比べ、製造された誘導加熱コイルを、ボビンの円弧状の外周面に形成された凸部に巻かれるように該外周面上に設置した場合に、前記凸部と誘導加熱コイルとの間に隙間が形成されにくい。
【0036】
本発明の請求項15の構成によれば、二次圧縮しない場合に比べ、製造された誘導加熱コイルを、ボビンの円弧状の外周面に形成された凸部に巻かれるように該外周面上に設置した場合に、前記凸部と誘導加熱コイルとの間に隙間が形成されにくい。
【0037】
本発明の請求項16の構成によれば、巻付部材に巻き付けられた線材の残量の変化に関わらず巻付部材の回転速度が一定である場合に比べ、巻付部材に巻き付けられた線材の残量が減少した場合でも線材の供給量が一定化される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態に係るコイル製造装置の構成を示す概略図である。
【図2】本実施形態に係る搬送装置の構成を示す概略図である。
【図3】本実施形態に係る折り目付与装置の構成を示す概略図である。
【図4】本実施形態に係る巻取装置の構成を示す正面図である。
【図5】本実施形態に係る巻取装置の構成を示す側面図である。
【図6】本実施形態(A)及び比較例(B)において、巻き軸に線材を巻き取った状態を示す概略図である。
【図7】他の折り目付与装置の構成を示す概略図である。
【図8】コイル製造装置の製造物である誘導加熱コイルが適用された画像形成装置の構成を示す概略図である。
【図9】図8に示す画像形成装置に適用された定着装置の断面図である。
【図10】図9に示す定着装置の部分断面図である。
【図11】図9に示す定着装置に係る定着ベルトの部分断面図である。
【図12】図9に示す定着装置に係る制御回路及び通電回路の接続図である。
【図13】本実施形態に係る巻取部材の具体的な構成を示す図である。
【図14】巻取部材の変形例を示す図である。
【図15】成形工程に係る二次圧縮に用いられる圧縮装置の構成を示す概略図である。
【図16】図15に示す圧縮装置を用いて成形した線材を定着装置のボビンに設置した状態を示す図である。
【図17】本実施形態に係る線材供給部における線材の残量の多少を示す概略図である。
【図18】変形例に係るコイル製造装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
〔コイル製造装置200の構成〕
まず、誘導加熱コイルを製造するコイル製造装置200の構成を説明する。図1は、本実施形態に係るコイル製造装置200の構成を示す概略図である。
【0040】
コイル製造装置200は、図1に示すように、導電性を有する線材202を断面四角状(具体的には、断面長方形状)の巻き軸252Aで巻き取る巻取装置250と、巻取装置250によって巻き取られる線材202に対して、巻き軸252Aの角部252Cに巻き掛けられる位置に予め折り目を付与する折り目付与装置240と、を備えている。
【0041】
さらに、コイル製造装置200は、折り目付与装置240によって折り目が付与される線材202を供給する線材供給部210と、線材供給部210から供給された線材202を折り目付与装置240へ搬送する搬送装置230と、搬送装置230が搬送する線材202の搬送量を計測する計測装置220と、を備えている。
【0042】
コイル製造装置200では、線材供給部210、計測装置220、搬送装置230、折り目付与装置240及び巻取装置250が、この順で、線材202の搬送経路に沿って配置されている。
【0043】
(線材供給部)
線材供給部210は、線材202が巻き付けられて収容されるボビン212と、ボビン212を回転可能に支持する支持体としてのボビンフォルダ218と、を備えている。
【0044】
ボビン212は、線材202が巻かれた巻き軸214と、巻き軸214の軸方向両端部で半径方向へ鍔状に張り出した唾部としてのフランジ216と、を有して構成されている。
【0045】
ボビンフォルダ218は、ボビン212の巻き軸214の軸心を回転軸として回転可能にボビン212を支持している。
【0046】
ボビンフォルダ218には、線材202が巻き軸214から巻き出される方向(図1において反時計周り方向)へボビン212を回転駆動する駆動モータ219が設けられている。
【0047】
線材202は、断面円形状とされ、複数の細線を撚って構成されている。細線は、電流が流れる導体とその電流を絶縁する絶縁被膜とで構成されており、いわゆるマグネットワイヤー(エナメル線)で構成されている。細線は、例えば、45本又は90本で1本の線材202を構成している。
【0048】
(計測装置)
計測装置220は、搬送装置230に対する線材202の搬送方向(送り方向)上流側で、搬送装置230に搬送される線材202に張力を付与する張力付与部材の一例としてのバックテンションロール222を備えている。具体的には、バックテンションロール222は、線材202を挟む一対のロールで構成されている。バックテンションロール222では、挟んだ線材202から予め定められたトルクが作用すると、線材202に従動して回転するようになっている。すなわち、バックテンションロール222は、予め定められたトルクが線材202から作用するまでは回転せずに、線材202に搬送抵抗を与えることで、搬送装置230との間で線材202に張力を付与する構成となっている。
【0049】
なお、張力付与部材としては、バックテンションロール222に限られず、線材202への接触等により線材202に張力を付与するものであればよい。
【0050】
搬送装置230に対する線材202の搬送方向(送り方向)上流側であって、かつ、バックテンションロール222に対する線材202の搬送方向(送り方向)下流側には、搬送装置230に搬送される線材202に従動して回転する従動ロール224が設けられている。
【0051】
従動ロール224は、材料の選択及び線材202の挟み込み圧力の調整等により、線材202と接触した部分で滑りが生じにくくなっており、線材202の搬送に伴って回転するように構成されている。
【0052】
バックテンションロール222によって線材202に張力が作用することにより、搬送装置230とバックテンションロール222との間においては、線材202の弛みが解消され、搬送装置230で搬送した量と、従動ロール224が接触している部分での線材202の送り量と、が変動しない構成とされている。
【0053】
従動ロール224には、従動ロール224の回転量(回転数)を計測するロータリエンコーダ226が設けられている。ロータリエンコーダ226は、従動ロール224の回転軸上、又は、従動ロール224の回転がギヤ等により伝達されて回転する回転軸上に設けられた円板226Aを備えている。円板226Aには、半径方向に延びるスリット226Bが周方向に沿って、予め定められた間隔で複数形成されている。
【0054】
さらに、ロータリエンコーダ226は発光部(図示省略)と受光部(図示省略)とを有する検知手段の一例としてのフォトインタラプター226Cを備えている。
【0055】
フォトインタラプター226Cでは、発光部から発せられてスリット226Bを通過する光を、受光部で受光することで、発光部と受光部との間を通過したスリット226Bの数をカウントし、従動ロール224の回転量(回転数)、すなわち、線材202の搬送量が計測されるようになっている。
【0056】
具体的には、フォトインタラプター226Cは、フォトインタラプター226Cに接続された制御部260に、スリット226Bを通過する光を受光することで生成される検知信号(パルス信号)を送るようになっている。なお、制御部260については後述する。
【0057】
(搬送装置)
搬送装置230は、搬送方向上流側(図1における紙面左側)から見た図2に示すように、線材202を4方向から挟んで搬送する4つの搬送ロール232で構成されている。具体的には、4つの搬送ロール232は、一の搬送ロール232Aと、一の搬送ロール232Aが線材202に対して接触する向き(図2における紙面下方から上方に向かう向き)に対する反対の向き(図2における紙面上方から下方に向かう向き)から接触する1つの搬送ロール232Bと、搬送ロール232Aと232Bの接触方向(図2における紙面上下方向)に対して直角方向(図2における紙面左右方向)から互いが対向して線材202に接触する2つの搬送ロール232Cと、で構成されている。
【0058】
図1に示すように、各搬送ロール232には、搬送ロール232を回転駆動する駆動部の一例としての駆動モータ234が設けられている。各搬送ロール232は、各駆動モータ234によって、同一の回転速度(周速度)でそれぞれが回転駆動される。
【0059】
搬送ロール232は、線材202を外周面で4方向から挟んで圧縮することで、線材202を断面四角形状に成形しながら(平角化しながら)搬送するようになっている。ここでいう断面四角形状への成形(平角化)とは、線材202の断面を円形状から四角形状にすること、又は、線材202の断面を円形状から四角形状に近づけることをいう。
【0060】
なお、本実施形態では、互いが対向する搬送ロール232A及び搬送ロール232Bの外周面の軸方向(図2における紙面左右方向)に沿った幅が、互いが対向する2つの搬送ロール232Cの外周面の軸方向(図2における紙面上下方向)に沿った幅よりも広くされており、線材202は、断面長方形状となるように成形される。
【0061】
(折り目付与装置)
折り目付与装置240は、図3に示すように、断面四角状(具体的には、断面長方形状)に形成されたブロック242を備えている。ブロック242の断面における四角形状とは、四辺で囲まれ、各辺の間に角部242Cを有する形状であり、角部242Cは丸みを有していても良い。また、ブロック242の断面における長方形状とは、対向する一対の短辺と対向する一対の長辺とで囲まれ、短辺と長辺との間に角部242Cを有する形状であり、角部242Cは丸みを有していても良い。ここで、角部242Cに丸みを付ける場合は、R3程度の小さいものであることが望ましい。
【0062】
ブロック242の第1面(図3において上面)242Aに対向する位置には、第1面242Aに線材202を押さえ付ける押え部材としての押えロール244が設けられている。
【0063】
押えロール244に対する線材202の搬送方向下流側(図3における紙面右側)には、第1面242Aに対して直角(垂直)をなす第2面242Bに線材202を押し付ける押付部材としての押付ロール246が設けられている。
【0064】
押付ロール246には、第2面242Bに対向する対向位置(図3(B))と、対向位置から押えロール244側に退避した退避位置(図3(A))との間で、押付ロール246を第2面242Bに沿って移動させる駆動機構248が設けられている。
【0065】
駆動機構248は、弾性力によって押付ロール246を対向位置から退避位置に向かって押す又は引っ張る引っ張りバネ等の弾性部材(図示省略)と、この弾性部材の弾性力に対抗して押付ロール246を対向位置に移動させるためのカム248Bと、カム248Bを回転させる駆動モータ248A、とを備えている。
【0066】
折り目付与装置240では、押えロール244で線材202を第1面242Aに押さえ、その線材202における第1面242Aから第2面242B側(図3(A)において右側)にはみ出した部位を、カム248Bの回転により退避位置から対向位置に移動する押付ロール246によって第2面242Bに押し付けることで(図3(B))、第1面242Aと第2面242Bと間の角部242Cに沿った折り目を線材202に付与するようになっている。
【0067】
(巻取装置)
巻取装置250は、図4に示すように、支持体(図示省略)に回転可能に支持された回転体254と、回転体254を回転駆動する駆動モータ256と、回転体254に固定されて回転体254と一体に回転し線材202を巻き取る巻取部材252と、を備えている。回転体254は、図4に示す正面視にて(回転体254の回転軸方向一方側から見て)、円形状に形成されている。
【0068】
巻取部材252は、正断面視にて四角状(具体的には、断面長方形状)に形成された前述の巻き軸252Aと、巻き軸252Aの軸方向両端部で軸方向に対して直角方向へ鍔状に張り出した唾部としての一対のフランジ252Bと、を備えて構成されている。
【0069】
巻き軸252Aの断面における四角形状とは、四辺で囲まれ、各辺の間に角部252Cを有する形状であり、角部252Cは丸みを有していても良い。また、巻き軸252Aの断面における長方形状とは、対向する一対の短辺と対向する一対の長辺とで囲まれ、短辺と長辺との間に角部252Cを有する形状であり、角部252Cは丸みを有していても良い。ここで、角部252Cに丸みを付ける場合は、R3程度の小さいものであることが望ましい。
【0070】
一対のフランジ252Bの間には、図5に示すように、巻き軸252Aに巻き掛けられる線材202が収容される溝部258が設けられている。
【0071】
回転体254が支持された支持体(図示省略)には、図4に示すように、溝部258に線材202を巻き軸252Aの軸方向(図5の紙面左右方向)に対して直角の方向(図5の紙面上下方向)に整列させながら押し入れる押入部材の一例としての押入ロール259が3つ設けられている。
【0072】
各押入ロール259は、弾性部材としての板バネ257を介して支持体(図示省略)に支持されており、板バネ257の弾性力により、溝部258に入り込むように巻き軸252Aに押し付けられている。3つの押入ロール259は、巻き軸252Aに対して三方向(図4において、上方・左方・右方)から接触するように配置されている。
【0073】
巻取装置250では、図4(A)及び図4(B)に示すように、回転体254の回転に伴って、巻取部材252の向きが変化した場合でも、各押入ロール259は、板バネ257の弾性力により、巻き軸252Aに追従し、巻き軸252Aへ線材202を押し付けた状態が維持されるようになっている。
【0074】
また、一対のフランジ252Bは、少なくとも一方が、他方に対して接近する方向(図5における紙面左右方向)に移動可能とされており、巻き軸252Aに巻き掛けられた線材202を巻き軸252Aの軸方向へ圧縮することで線材202の成形が可能とされている。すなわち、フランジ252Bは巻き軸252Aに巻き取られた線材202を巻き軸252Aの軸方向に圧縮して成形する圧縮部材として機能する。折り目付与装置240により折り目が付与された線材202は、折り目部分において、巻き軸252Aの軸方向に膨らみが生じている。しかし、かかる線材202の膨らみ部分は、圧縮部材により圧縮成形されるので、無くすことができる。
【0075】
(制御部)
制御部260は、フォトインタラプター226Cから取得した検知信号に基づき、線材供給部210における駆動モータ219、搬送装置230における駆動モータ234、折り目付与装置240における駆動機構248及び巻取装置250における駆動モータ256を制御するようになっている。
【0076】
具体的には、制御部260は、搬送装置230における駆動モータ234によって搬送ロール232を回転駆動させ、フォトインタラプター226Cから検知信号に基づき、線材202が予め定められた搬送量を搬送されたことを検出すると、駆動モータ234によって搬送ロール232を停止させる。
【0077】
上記の予め定められた搬送量は、線材202における巻き軸252Aの角部252Cに巻き掛けられる位置が、折り目付与装置240において折り目が付与される位置、すなわち、ブロック242の角部242Cで停止するように設定される。
【0078】
なお、線材202における巻き軸252Aの角部252Cに巻き掛けられる位置には、角部252Cに直接巻き掛けられる位置と、線材202を介して角部252Cに巻き掛けられる位置と、が含まれる。
【0079】
また、制御部260は、搬送ロール232の駆動に同期させて、線材供給部210における駆動モータ219によってボビン212を回転駆動させる。
【0080】
また、制御部260は、搬送ロール232を停止させた状態で、折り目付与装置240における駆動機構248によって、押付ロール246を退避位置から対向位置に移動させ、線材202に折り目を付与し、押付ロール246を対向位置から退避位置に移動させて停止させる。
【0081】
また、制御部260は、折り目付与装置240によって折り目が付与された線材202を折り目付与装置240との間で弛ませた状態で線材202が巻き取られるように、フォトインタラプター226Cからの検知信号に基づき、駆動モータ256によって巻き軸252Aを回転させる。具体的には、折り目付与装置240(ブロック242)から巻取装置250(巻き軸252A)までの経路上の距離を超える量が、折り目付与装置240よりも搬送方向下流側へ搬送されると、巻き軸252Aが回転開始され、上記の距離を超えた量以下を巻き取る回転量で巻き軸252Aが回転される。
【0082】
なお、本実施形態に係るコイル製造装置200による製造物である誘導加熱コイルは、電磁誘導の原理を利用して加熱する誘導加熱に用いられるコイルである。誘導加熱コイルの使用例として、誘導加熱コイルが用いられた画像形成装置について後述する。
【0083】
〔コイル製造装置200を用いた誘導加熱コイルの製造方法〕
次に、コイル製造装置200を用いた誘導加熱コイルの製造方法(製造工程)を説明する。
【0084】
(成形工程)
コイル製造装置200では、線材供給部210のボビン212から供給された線材202が、搬送装置230の搬送ロール232によって折り目付与装置240へ搬送される。
【0085】
このとき、線材202は、4つの搬送ロール232で挟んで圧縮されることで、線材202を断面四角形状に成形されながら搬送される。すなわち、線材202は、折り目が付与される前に予め圧縮されることで断面四角形状に成形される。
【0086】
(折り目付与工程)
線材202の搬送は、線材202における巻き軸252Aの角部252Cに巻き掛けられる位置が、ブロック242の角部242Cに位置すると、停止される。
【0087】
線材202は、押えロール244で第1面242Aに押さえ付けられ、第1面242Aから第2面242B側(図3(A)において右側)にはみ出した部位が、カム248Bの回転により退避位置から対向位置に移動する押付ロール246によって、第2面242Bに押し付けられることで(図3(B))、第1面242Aと第2面242Bと間の角部242Cに沿った折り目が付与される。
【0088】
これにより、線材202は、巻き軸252Aの角部252Cに巻き掛けられる位置に予め折り目が付与される。
【0089】
(巻取工程)
折り目が付与された線材202は、巻取装置250へ搬送され、巻き軸252Aで巻き取られる。
【0090】
この巻取工程では、折り目付与工程において折り目が付与された線材202は、折り目付与装置240(ブロック242)と巻取装置250(巻き軸252A)との間で弛んだ状態で巻き取られる。
【0091】
(成形工程)
巻取工程において、巻き軸252Aで巻き取られた線材202は、フランジ252Bによって巻き軸252Aの軸方向に圧縮されて成形される。線材202は、折り目付与工程において付与された折り目の部分のみが、他の部分と比較して図3の紙面前後方向に突出する。しかし、この突出部は、かかる成形工程により、圧縮成形されるので、無くすことができる。
【0092】
以上のようにして、コイル製造装置200において、誘導加熱コイルが製造される。本実施形態では、巻き軸252Aの角部252Cに巻き掛けられる位置に予め折り目を付与するので、図6(A)に示すように、巻き軸252Aの断面形状にならって巻き取られる。
【0093】
一方、巻き軸252Aの角部252Cに巻き掛けられる位置に予め折り目を付与しない比較例では、図6(B)に示すように、線材202が角部252CでR状に膨らむ。また、巻き軸252Aの外周側にいくほど、線材202の膨らみは大きくなる。
【0094】
従って、本実施形態では、上記比較例に構成に比べて、線材202における巻き軸252Aに直線状に巻き掛けられる直線部202Aの直線性が確保される。これにより、本実施形態では、上記比較例の構成に比べて、製造された誘導加熱コイルにおいて、発熱に寄与する直線部202Aが長くなる。
【0095】
また、本実施形態では、線材202は、折り目付与装置240(ブロック242)と巻取装置250(巻き軸252A)との間で弛んだ状態で巻き取られる。このため、折り目が付与された線材202に張力が付与されるように線材202を巻き取る構成に比べ、折り目が付与された線材202の折り目が元に戻らない。これにより、折り目が付与されたままの線材202が巻き軸252Aに巻き取られる。
【0096】
また、本実施形態では、押入ロール259が、巻取部材252の溝部258に線材202を押し入れる。このため、線材202を溝部258に押し入れない構成に比べ、巻き軸252Aの軸方向に対して直角の方向(垂直な方向)に密に線材202が整列される。
【0097】
また、本実施形態では、巻き軸252Aで巻き取られた線材202は、フランジ252Bによって巻き軸252Aの軸方向に圧縮されて成形される。このため、線材202を巻き軸252Aの軸方向に圧縮しない構成に比べ、線材202の折り目部分で生じた巻き軸の軸方向への膨みが小さくなる。
【0098】
また、本実施形態では、線材202は、折り目が付与される前に予め圧縮されることで断面四角形状に成形される。このため、線材202を断面四角形状に成形しない構成に比べ、巻き軸252Aの軸方向に対して直角の方向(垂直な方向)に密に線材202が整列される。なお、本実施形態では、折り目を線材202に付与する前に予め断面四角形状に成形されているので、巻取装置250のフランジ252Bの圧縮力を弱められる。
【0099】
〔他の折り目付与装置〕
なお、折り目付与装置240に替えて、図7に示す折り目付与装置340を用いても良い。折り目付与装置340は、図7に示すように、断面四角状(具体的には、断面長方形状)に形成されたブロック342を備えている。ブロック342の断面における四角形状とは、四辺で囲まれ、各辺の間に角部342Cを有する形状であり、角部342Cは丸みを有していても良い。また、ブロック342の断面における長方形状とは、対向する一対の短辺と対向する一対の長辺とで囲まれ、短辺と長辺との間に角部342Cを有する形状であり、角部342Cは丸みを有していても良い。
【0100】
ブロック342の第1面(図7において上面)342Aに対向する位置に回転軸334を有する回転部材346を備えている。回転軸334は、第1面342Aに線材202を押さえる押え部材として機能する。回転軸334には、回転軸334を回転される駆動モータ348が設けられている。
【0101】
回転部材346は、角部342Cに沿ってL字状に屈曲されており、駆動モータ348によって回転軸334にて回転することで、先端部346Aが、第1面342Aに対して垂直をなす第2面342Bに対向する対向位置(図7(B))と、対向位置から押え部材(回転軸334)側に退避した退避位置(図7(A))との間で移動するようになっている。
【0102】
折り目付与装置340では、回転軸334で線材202を第1面342Aに押さえ、その線材202における第1面342Aから第2面342B側(図7(A)において右側)にはみ出した部位を、回転軸334の回転により退避位置から対向位置に移動する回転部材346の先端部346Aによって第2面342Bに押し付けることで(図7(B))、第1面342Aと第2面342Bと間の角部342Cに沿った折り目を線材202に付与するようになっている。
【0103】
〔画像形成装置10の構成〕
次に、コイル製造装置200によって製造される誘導加熱コイルが適用される画像形成装置10の構成を説明する。図8は、本実施形態に係る画像形成装置10の構成を示す概略図である。
【0104】
画像形成装置10は、図8に示すように、各構成部品が内部に収容される画像形成装置本体11を備えている。画像形成装置本体11の内部には、用紙等の記録媒体Pが収容される記録媒体収容部12と、記録媒体Pに画像を形成する画像形成部14と、記録媒体収容部12から画像形成部14へ記録媒体Pを搬送する搬送部16と、画像形成装置10の各部の動作を制御する制御部20と、が設けられている。また、画像形成装置本体11の側部には、画像形成部14によって画像が形成された記録媒体Pが排出される記録媒体排出部18が設けられている。
【0105】
画像形成部14は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像を形成する画像形成ユニット22Y、22M、22C、22K(以下、22Y〜22Kと示す)と、画像形成ユニット22Y〜22Kで形成されたトナー画像が転写される中間転写ベルト24と、画像形成ユニット22Y〜22Kで形成されたトナー画像を中間転写ベルト24に転写する第1転写部材の一例としての第1転写ロール26と、第1転写ロール26によって中間転写ベルト24に転写されたトナー画像を中間転写ベルト24から記録媒体Pへ転写する第2転写部材の一例としての第2転写ロール28と、第2転写ロール28によって中間転写ベルト24から記録媒体Pへ転写されたトナー画像を記録媒体Pに定着させる定着装置100と、を備えている。
【0106】
画像形成ユニット22Y〜22Kは、水平方向に沿って並んで配置されている。また、画像形成ユニット22Y〜22Kは、一方向(図8における時計回り方向)へ回転する感光体32をそれぞれ有している。
【0107】
各感光体32の周囲には、感光体32の回転方向上流側から順に、感光体32を帯電させる帯電装置60と、帯電装置60によって帯電した感光体32を露光して感光体32に静電潜像を形成する露光装置36と、露光装置36によって感光体32に形成された静電潜像を現像して感光体32にトナー画像を形成する現像装置38と、中間転写ベルト24へのトナー画像の転写後において感光体32に残留する現像剤を除去する除去装置40と、が設けられている。
【0108】
露光装置36は、制御部20から送られた画像情報に基づき静電潜像を形成するようになっている。制御部20から送られる画像情報としては、例えば、外部装置で生成されその外部装置から制御部20が取得する画像情報や、画像形成装置10において原稿等の画像を読み取ることで生成される画像情報などがある。なお、図8において、露光装置36からの露光光を矢印Lにて示している。
【0109】
中間転写ベルト24は、環状に形成されると共に、画像形成ユニット22Y〜22Kの下側に配置されている。中間転写ベルト24の内周側に、中間転写ベルト24が巻き掛けられる巻掛ロール42、43、44、45、46が設けられている。中間転写ベルト24は、巻掛ロール42、43、44、45、46のいずれかが回転駆動することによって、感光体32と接触しながら一方向(図8における反時計回り方向)へ循環移動(回転)するようになっている。なお、巻掛ロール42は、中間転写ベルト24を挟んで第2転写ロール28に対向する対向ロールとされている。
【0110】
また、中間転写ベルト24の外周側には、中間転写ベルト24の外周面に接触して、記録媒体Pへのトナー画像の転写後において中間転写ベルト24に残留する現像剤を除去する除去装置25が、中間転写ベルト24を挟んで巻掛ロール43に対向して設けられている。
【0111】
第1転写ロール26は、中間転写ベルト24を挟んで感光体32に対向している。第1転写ロール26と感光体32との間が、感光体32に形成されたトナー画像が中間転写ベルト24に転写される第1転写位置とされている。
【0112】
第2転写ロール28は、中間転写ベルト24を挟んで巻掛ロール42と対向している。第2転写ロール28と巻掛ロール42との間が、中間転写ベルト24に転写されたトナー画像が記録媒体Pに転写される第2転写位置とされている。
【0113】
搬送部16は、記録媒体収容部12に収容された記録媒体Pを送り出す送出ロール46と、送出ロール46に送り出された記録媒体Pが搬送される搬送路48と、搬送路48に沿って配置され送出ロール46によって送り出された記録媒体Pを第2転写位置へ搬送する複数の搬送ロール50と、を備えて構成されている。
【0114】
第2転写位置より搬送方向下流側には、第2転写位置でトナー画像が転写された記録媒体Pを定着装置100へ搬送する搬送ベルト58が設けられている。
【0115】
定着装置100は、搬送ベルト58より搬送方向下流側に配置されており、搬送ベルト58から搬送された記録媒体Pに対し、第2転写位置で転写されたトナー画像を定着させる。定着装置100よりも搬送方向下流側には、トナー画像が定着された記録媒体Pを記録媒体排出部18へ排出する排出ロール52が設けられている。
【0116】
次に、画像形成装置10における、記録媒体Pへ画像を形成する画像形成動作について説明する。
【0117】
画像形成装置10では、記録媒体収容部12から送出ロール46によって送り出された記録媒体Pが、複数の搬送ロール50によって第2転写位置へ送り込まれる。
【0118】
一方、画像形成ユニット22Y〜22Kでは、帯電装置60によって帯電した感光体32が、露光装置36によって露光されて感光体32に静電潜像が形成される。その静電潜像が現像装置38によって現像されて感光体32にトナー画像が形成される。画像形成ユニット22Y〜22Kで形成された各色のトナー画像は、第1転写位置にて中間転写ベルト24に重ねられて、カラー画像が形成される。そして、中間転写ベルト24に形成されたカラー画像が、第2転写位置にて記録媒体Pへ転写される。
【0119】
トナー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置100へ搬送され、転写されたトナー画像が定着装置100により定着される。トナー画像が定着された記録媒体Pは、排出ロール52によって記録媒体排出部18に排出される。以上のように、一連の画像形成動作が行われる。
【0120】
〔定着装置100の構成〕
次に、定着装置100の構成について説明する。図9は、定着装置100の構成を示す概略図である。
【0121】
図9に示すように、定着装置100は、記録媒体Pの進入又は排出を行うための開口が形成された筐体106を備えている。筐体106の内側には、一方向(図9における矢印D方向)へ回転可能に支持された無端状の定着ベルト102が設けられている。
【0122】
定着ベルト102の外周面と対向する位置には、絶縁性の材料で構成されたボビン108が配置されている。ボビン108は、定着ベルト102の外周面に倣った略円弧状に形成されており、ボビン108には、定着ベルト102と反対側(図9における上側)に向けて凸部108Aが突設されている。
【0123】
ボビン108の凸部108Aは、平面視にて(上方側から見て)、記録媒体Pの搬送方向と直交する幅方向を長辺とする長方形状をしている。この凸部108Aには、通電によって磁界Hを発生させる励磁コイル110が複数回巻き回されている。具体的には、励磁コイル110は、記録媒体Pの搬送方向(図9における左右方向)に短い短辺をなし、記録媒体Pの搬送方向と直交する幅方向(図9における紙面の奥行き方向)に長い長辺をなすように平面視長方形状に巻き回されている。この励磁コイル110は、コイル製造装置200による製造物である誘導加熱コイルに相当する。
【0124】
定着ベルト102と反対側(図9における上側)で励磁コイル110と対向する位置には、ボビン108の円弧状に倣って略円弧状に形成されたフェライト等の磁性体で構成された磁路形成部材112が配置され、ボビン108に支持されている。
【0125】
図10に示すように、磁路形成部材112は、定着ベルト102の幅方向に沿って複数配置されており、定着ベルト102の幅方向に沿って設けられた非磁性体で構成された保持部材113によって保持されている。なお、磁路形成部材112は、保持部材113の長手方向中央部では等間隔に配置され、長手方向両端部では、間隔を詰めて、あるいは、接触して配置されている。このように磁路形成部材112を配置することで、定着ベルト102の幅方向の磁界Hの分布を調整している。
【0126】
ここで、図11に示すように、定着ベルト102は、内側(図11における下側)から外側(図11における上側)に向けて基層130、発熱層132、保護層134、弾性層136、及び離型層138で構成されており、これらが積層され一体となっている。
【0127】
基層130は、定着ベルト102の強度を保持するためのベース(土台)となるもので、例えば、ポリイミドで構成される。なお、基層130には、ポリイミドのような樹脂の他に、鉄、ニッケル、シリコン、ホウ素、ニオブ、銅、ジルコニウム、コバルト等の金属、又はこれらの合金で構成される金属軟磁性材料を用いてもよい。
【0128】
発熱層132は、前述の磁界Hを打ち消す磁界を生成するように渦電流が流れる電磁誘導作用により発熱する金属材料で構成される。また、発熱層132は、磁界Hの磁束を貫通させるために、いわゆる表皮深さよりも薄く構成される必要がある。ここで、発熱層132としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、ビスマス、ベリリウム、アンチモン、又はこれらの合金の金属材料が用いられる。
【0129】
保護層134には、機械的強度が発熱層132より高く、繰り返し歪みに強い材料で、錆びや腐食に強い材料が用いられる。
【0130】
弾性層136には、優れた弾性と耐熱性が得られる等の観点から、シリコン系ゴム、又はフッ素系ゴムが用いられる。
【0131】
離型層138は、記録媒体P上で溶融されたトナーT(図9参照)との接着力を弱めて、記録媒体Pを定着ベルト102から剥離し易くするために設けられる。優れた表面離型性を得るためには、離型層138として、フッ素樹脂、シリコン樹脂、又はポリイミド樹脂が用いられる。
【0132】
一方、図9に示すように、定着ベルト102の内側には、非磁性体であるアルミニウムで構成された角柱状の支柱114が、定着ベルト102の幅方向を長手方向として非接触で配置され、両端が定着装置100の筐体106に固定されている。支柱114は、底面側に長手方向に沿って凹部114Aが形成されており、凹部114Aには、定着ベルト102を予め定められた圧力で外側に向けて押圧するための樹脂製の押圧パッド116が固定されている。押圧パッド116は、弾性を有する部材で構成され、一端面が定着ベルト102の内周面と接触して定着ベルト102を外方向へ押圧している。
【0133】
また、定着ベルト102の内側で支柱114の上方には、励磁コイル110と対向するように、円弧状に形成された発熱体118が設けられている。
【0134】
発熱体118は、定着ベルト102の幅方向を長手方向とする略半円筒状の部材であり、表面が定着ベルト102の内面と接触するように配置されている。また、発熱体118は、鉄系の合金で構成されており、磁路形成部材112と発熱体118の間で、前述の磁界Hによる閉磁路を形成すると共に、磁界Hの電磁誘導作用により発熱するようになっている。
【0135】
発熱体118の長手方向の予め定められた位置で、且つ内周側の周方向両端部には、略L字状の支持部が形成された2個の支持部材122の一端がそれぞれ取付けられている。
【0136】
前述の制御部20(図1参照)の内部に設けられた制御回路142が、図12に示すように、配線144を介して通電回路146に接続されている。通電回路146は、配線148、150を介して前述の励磁コイル110に接続されている。
【0137】
ここで、制御回路142は、通電回路146を駆動して励磁コイル110に通電し、磁気回路としての磁界H(図9参照)を発生させる。通電回路146は、制御回路142から送られる電気信号に基づいて駆動又は駆動停止され、配線148、150を介して励磁コイル110に予め定められた周波数の交流電流を供給又は供給停止するようになっている。
【0138】
一方、図9に示すように、定着ベルト102の外周面と対向する位置には、定着ベルト102を押圧パッド116に向けて加圧するとともに、図示しないモータ及びギヤで構成された駆動機構により矢印E方向に回転する加圧ロール104が配置されている。
【0139】
加圧ロール104は、アルミニウム等の金属で構成された芯金105の周囲に、シリコンゴム及びPFAが被覆された構成となっている。ここで、加圧ロール104が定着ベルト102を押圧パッド116側に加圧しており、定着ベルト102と加圧ロール104の接触部(ニップ部)において、定着ベルト102は、内側に凹んだ状態となっている。
【0140】
このニップ部の形状は、トナーTが載った記録媒体Pが通過するときに、定着ベルト102から剥離させる方向に湾曲した形状となっている。このため、矢印IN方向から搬送されてきた記録媒体Pは、それ自体の腰の強さでニップ部の形状に倣って矢印OUT方向に排出される。
【0141】
次に、定着装置100の定着動作について説明する。
【0142】
定着装置100では、制御部20によって図示しない駆動モータが駆動され、加圧ロール104が矢印E方向へ回転して、定着ベルト102が矢印D方向へ従動回転する。このとき、制御回路142からの電気信号に基づいて通電回路146が駆動され、励磁コイル110に交流電流が供給される。
【0143】
励磁コイル110に交流電流が供給されると、励磁コイル110の周囲に磁気回路としての磁界Hが生成消滅を繰り返す。そして、磁界Hが定着ベルト102の発熱層132を横切ると、磁界Hの変化を妨げる磁界が生じるように発熱層132に渦電流が発生する。発熱層132は、発熱層132の表皮抵抗、及び発熱層132を流れる渦電流の大きさに比例して発熱し、これによって定着ベルト102が加熱される。
【0144】
また、同様にして、磁界Hの電磁誘導作用により、発熱体118が発熱し、定着ベルト102が加熱される。このように、発熱層132と発熱体118を同一の励磁コイル110で加熱させる。
【0145】
定着装置100に送り込まれた記録媒体Pは、加熱された定着ベルト102と、加圧ロール104とによって加熱押圧され、トナー画像が記録媒体P表面に定着される。そして、定着された記録媒体Pは、筐体106から排出される。
【0146】
〔巻取装置250における巻取部材252の具体的な構成及び巻取部材252の変形例〕
図13は、巻取部材252の具体的な構成を示す図(断面図)であり、図14は、巻取部材252の変形例を示す図(断面図)である。
【0147】
巻取装置250における巻取部材252の一対のフランジ252Bは、具体的には、図13(A)及び図13(B)に示すように、一方が巻き軸252Aに対して固定された固定フランジ255Aとされ、他方が固定フランジ255Aに対して接離する方向(図13における上下方向)へ移動可能とされた可動フランジ255Bとされている。すなわち、可動フランジ255Bは巻き軸252Aに巻き取られた状態の線材202を巻き軸252Aの軸方向に圧縮して成形する圧縮部材として機能する。
【0148】
巻き軸252Aは、側面(線材202が巻き掛けられる巻掛面)253Aが、固定フランジ255Aの表面(巻き掛けられた線材202が接触する接触面)253Bに対して直角になっている。
【0149】
この巻取部材252で巻き取られた状態の線材202の成形工程においては、図13(B)に示すように、可動フランジ255Bが巻き軸252Aの軸方向に沿って、固定フランジ255A側へ移動して、矢印Fで示すように線材202を圧縮する。可動フランジ255Bによる線材202の圧縮は、線材202の圧縮方向の高さ(図13の紙面上下方向の寸法)が所望の値となるまで行われる。このとき、規制部材251が、線材202に対して外周側から接触して、線材202の外周側への移動を規制する。
【0150】
そして、上記のように成形された線材202が、図13(C)に示すように、定着装置100(図9参照)におけるボビン108の凸部108Aに巻き回されると共に、ボビン108の表面108Bに接着剤で接着される。
【0151】
ここで、巻き軸252Aは、図14(A)及び図14(B)に示すように、固定フランジ255Aから可動フランジ255B側に向かって徐々に軸幅が狭くなるテーパ形状に形成されていてもよい。具体的には、巻き軸252Aの一端側(固定フランジ255A側)における軸幅が、固定フランジ255Aから可動フランジ255Bの圧縮方向上流側(巻き軸252Aの軸方向)に向かって徐々に狭くなっている。これにより、巻き軸252Aの側面(線材202が巻き掛けられる巻掛面)253Aが、固定フランジ255Aの表面(巻き掛けられた線材202が接触する接触面)253Bに対して、鈍角に傾斜している。なお、巻き軸252Aの軸幅は、一部でなく、全体が変化する構成であってもよい。
【0152】
また、この図14(A)(B)に示す構成においては、巻き軸252Aの軸幅が、図13(A)(B)に示す構成に比べて、可動フランジ255B側で狭くなっており、軸幅が狭くなった分、線材202の収容空間は、図13(A)(B)に示す構成に比べて大きくなっている。
【0153】
この図14に示す構成においても、同様に、テーパ形状の巻取部材252によって線材202が巻き取られ(巻取工程)、この巻取部材252で巻き取られた状態の線材202が、図14(B)に示すように、可動フランジ255Bが巻き軸252Aの軸方向に沿って、固定フランジ255A側へ移動して、矢印Fで示すように線材202を圧縮する(成形工程)。可動フランジ255Bによる線材202の圧縮は、線材202の圧縮方向の高さ(図14の紙面上下方向の寸法)が所望の値となるまで行われる。このとき、規制部材251が、線材202に対して外周側から接触して、線材202の外周側への移動を規制する。
【0154】
図14(A)(B)に示す構成では、線材202の収容空間が、図13(A)(B)に示す構成に比べて大きいので、図14(B)に示すように、可動フランジ255Bを固定フランジ255A側へ移動させて矢印Fで示すように線材202を圧縮する成形工程において、図13(A)(B)に示す構成に比べ、線材202に対する圧縮力が低減される。
【0155】
また、図14(B)に示す成形工程において、線材202が、巻き軸252Aのテーパに倣った形状に圧縮されるため、図14(C)に示すように、線材202をボビン108に設置した際に、ボビン108の凸部108Aと線材202との間に隙間が形成されにくい。
【0156】
〔巻き軸252Aで巻き取られた線材202の成形工程の変形例〕
変形例に係る成形工程では、巻き軸252Aに直線状に巻き取られた線材202が、フランジ252Bによって巻き軸252Aの軸方向に圧縮されて成形した(一次圧縮)後において、後述する圧縮装置360(図15参照)を用いて、さらに線材202を圧縮して成形する(二次圧縮)。
【0157】
なお、線材202の圧縮方向の高さが、二次圧縮において所望の高さになるように、一次圧縮及び二次圧縮における圧縮力が設定されている。すなわち、フランジ252Bによって圧縮する一次圧縮では、線材202の圧縮方向の高さが、所望の高さより高くなるように圧縮力が設定されている。
【0158】
圧縮装置360は、図15に示すように、上下に分割されて構成されており、線材を湾曲状に支持する支持体の一例としての下型362と、支持体に支持された線材を圧縮する圧縮体の一例としての上型361と、を有している。下型362は、上面362Bが、上方へ凸となる円弧状に湾曲している。具体的には、下型362の上面362Bは、本成形工程を経た誘導加熱コイルが設置されるボビン108の円弧状の表面108B(図13(C)参照)に倣った形状とされている。従って、下型362は、フランジ252Bによって圧縮された線材202を、その圧縮方向(軸方向)へ凸状に湾曲するように支持する構成とされている。
【0159】
また、下型362の上面362Bの中央部には、上型361の凸部361Aが挿入される凹部362Aが形成されている。
【0160】
上型361は、下面361Bが、上方へ凹となる円弧状に湾曲している。具体的には、上型361の下面361Bは、本成形工程を経た誘導加熱コイルが設置されるボビン108の円弧状の表面108B(図13(C)参照)に倣った形状とされている。また、上型361の下面361Bの中央部には、ボビン108の凸部108Aに倣った形状の凸部361Aが形成されている。凸部361Aは、ボビン108の凸部108Aと同様に、底面視にて(下方側から見て)、記録媒体Pの搬送方向と直交する幅方向を長辺とする長方形状をしている。
【0161】
この圧縮装置360では、上型361が下方へ移動して、上型361と下型362との間に挟まれた線材202を、矢印Fで示すように圧縮する(二次圧縮)。このとき、規制部材363が、線材202に対して外周側から接触して、線材202の外周側への移動を規制する。
【0162】
上記の二次圧縮により、線材202がボビン108の形状に倣った形状となる。従って、図16に示すように、線材202をボビン108に設置した際に、ボビン108の凸部108Aと線材202との間(矢印A参照)及び線材202同士の間(矢印B参照)に隙間が形成されにくい。
【0163】
〔線材供給部210における駆動モータ219の具体的な制御方法〕
次に、線材供給部210における駆動モータ219の具体的な制御方法について説明する。
【0164】
制御部260は、前述のように、搬送ロール232の駆動に同期させて、線材供給部210における駆動モータ219(駆動部の一例)によって、線材202が巻き付けられた巻付部材の一例としてのボビン212を回転駆動させる。これにより、ボビン212が回転して線材202が送り出される。ここで、搬送ロール232の駆動モータ234の回転速度を一定とすれば、搬送ロール232における線材202の搬送速度は一定となるが、線材供給部210の駆動モータ219の回転速度を一定としても、ボビン212に巻き付けられた線材202の残量によってボビン212の1回転あたりの線材202の供給量が変化するため、線材供給部210における線材202の供給量は、一定とならない。
【0165】
すなわち、図17(A)に示すように、ボビン212に巻き付けられた線材202の残量が多い場合には、ボビン212の1回転あたりの線材202の供給量が多く、図17(B)に示すように、線材202が減少すると、ボビン212の1回転あたりの線材202の供給量も減少する。
【0166】
そこで、制御部260は、直前の側長動作(計測装置220による直前の1個の誘導加熱コイルを製造する際に使用した線材202の使用量の計測)の測長量(ロータリエンコーダ226のカウント値から算出)と、線材供給部210の駆動モータ(ステッピングモータ)219に入力した回転パルス数とから線材202の残量(ボビンに巻き付けられた線材202の外周の長さ=ボビンが1回転したときに送り出される線材202の長さ)を算出し、線材供給部210の駆動モータ219の回転速度(単位時間に入力する回転パルス数)を設定する構成となっている。
【0167】
具体的には、制御部260は、まず、直前の測長動作から下記(1)〜(3)のデータを取得する。
(1)(計測装置220のロータリエンコーダ226のカウント値)×(計測装置220ロータリエンコーダ226の1カウント当たりの線材202の送り量(mm))=1個の誘導加熱コイルを製造する際に使用した線材202の使用量:Cp(mm)
(2)線材供給部210の駆動モータ219に入力した回転パルス数:Mp(パルス)
(3)ボビン212が1回転するときのモーターパルス数(設定値):R(パルス/回転)
【0168】
次に、制御部260は、下記の式(1)によって、線材202の残量(ボビンが1回転したときに送り出される線材202の長さ)(S(mm/回転))を計算する。
式(1)S=(Cp×R)÷Mp
【0169】
次に、上記で得た線材202の残量(S)から線材供給部210の駆動モータ219の回転速度V(パルス/sec)を算出する。線材送り出し速度(設定値):Vs(mm/sec)のとき、線材供給部210の駆動モータ219の回転速度V(パルス/sec)は、V=(Vs÷S)×Rで算出される。
【0170】
この構成によれば、ボビン212に巻き付けられた線材202の残量の減少に伴ってボビン212の回転速度を増加するように、ボビン212を回転駆動して線材202が、搬送装置230へ供給される(供給工程)。このため、線材202の線材残量が変化しても、ユーザーが設定した線材送り出し速度Vsで、搬送ロール232の駆動に同期して、線材202が供給される。
【0171】
なお、線材供給部210の駆動モータ219の回転速度の初期設定は、例えば、線材供給部210のボビン212に収容された線材202の線材残量(外周)を予め測定することで求められる。
【0172】
〔他のコイル製造装置400の構成〕
誘導加熱コイルを製造するコイル製造装置としては、コイル製造装置200に替えて、コイル製造装置400としてもよい。図18は、コイル製造装置400の構成を示す概略図である。
【0173】
コイル製造装置400は、具体的には、図18に示すように、コイル製造装置200における線材供給部210及び計測装置220に替えて、折り目付与装置240によって折り目が付与される線材202を供給する線材供給部410と、搬送装置230が搬送する線材202の搬送量を計測する計測装置420と、を備えている。なお、コイル製造装置200と共通する構成(巻取装置250、折り目付与装置240及び搬送装置230など)については、適宜、同一符号を付して説明を省略する。
【0174】
コイル製造装置400では、線材供給部410、計測装置420、搬送装置230、折り目付与装置240及び巻取装置250が、この順で、線材202の搬送経路に沿って配置されている。
【0175】
(線材供給部)
線材供給部410は、線材供給部210と同様に、線材202が巻き付けられて収容されるボビン412と、ボビン412を回転可能に支持する支持体としてのボビンフォルダ418と、を備えている。
【0176】
ボビン412は、線材202が巻かれた巻き軸414と、巻き軸414の軸方向両端部で半径方向へ鍔状に張り出した唾部としてのフランジ416と、を有して構成されている。
【0177】
ボビンフォルダ418は、ボビン412の巻き軸414の軸心を回転軸として回転可能にボビン412を支持している。
【0178】
ボビンフォルダ418には、線材202が巻き軸414から巻き出される方向(図181において反時計周り方向)へボビン412を回転駆動する駆動モータ419が設けられている。
【0179】
また、線材供給部410は、後述の従動ロール424に対する線材202の巻き掛け量が増える側へ向けて、線材202へ張力を付与する張力付与機構417を備えている。具体的には、張力付与機構417は、線材202が巻き掛けられる巻掛部材の一例としての巻掛ロール417Aと、線材202に張力が付与される張力付与方向(図18における右方向)へ巻掛ロール417Aを付勢する付勢部材の一例としての引っ張りばね417Bと、を備えている。これにより、張力付与機構417は、線材202に対する後述の従動ロール424側(図18における右方向)へ向けて、線材202に張力を付与する。
【0180】
さらに、張力付与機構417は、張力付与方向下流側及び張力付与方向上流側に配置された一対の検知手段の一例としての検知センサ417C、417Dを備えている。検知センサ417C、417Dは、それぞれ、後述の制御部460に接続されており、巻掛ロール417A又は線材202を検知した検知信号を制御部460に送るように構成されている。また、線材供給部410は、計測装置420に対して、その下方に配置されている。
【0181】
(計測装置)
計測装置420は、搬送装置230に搬送される線材202に従動して回転する従動ロール424を備えている。
【0182】
従動ロール424は、搬送装置230の搬送ロール232に対する線材202の搬送方向(送り方向)上流側であって、かつ線材供給部410の巻掛ロール417Aに対する線材202の搬送方向(送り方向)下流側に配置されている。具体的には、従動ロール424は、巻掛ロール417Aに対して上方側に配置され、搬送ロール232に対して水平方向側に配置されている。
【0183】
従動ロール424は、材料の選択及び線材202の挟み込み圧力の調整等により、線材202と接触した部分で滑りが生じにくくなっており、線材202の搬送に伴って回転するように構成されている。
【0184】
張力付与機構417によって線材202に張力が作用することにより、搬送装置230と張力付与機構417との間においては、線材202の弛みが解消され、搬送装置230で搬送した量と、従動ロール424が接触している部分での線材202の送り量と、が変動しにくい構成とされている。
【0185】
従動ロール424には、従動ロール424の回転に基づき、搬送装置230の搬送量を測定する測定部の一例としてのロータリエンコーダ426が設けられている。ロータリエンコーダ426は、従動ロール424の回転軸上、又は、従動ロール424の回転がギヤ等により伝達されて回転する回転軸上に設けられた円板426Aを備えている。円板426Aには、半径方向に延びるスリット426Bが周方向に沿って、予め定められた間隔で複数形成されている。
【0186】
さらに、ロータリエンコーダ426は発光部(図示省略)と受光部(図示省略)とを有する検知手段の一例としてのフォトインタラプター426Cを備えている。
【0187】
フォトインタラプター426Cでは、発光部から発せられてスリット426Bを通過する光を、受光部で受光することで、発光部と受光部との間を通過したスリット426Bの数をカウントし、従動ロール424の回転量(回転数)、すなわち、線材202の搬送量が計測されるようになっている。
【0188】
具体的には、フォトインタラプター426Cは、フォトインタラプター426Cに接続された制御部460に、スリット426Bを通過する光を受光することで生成される検知信号(パルス信号)を送るようになっている。
【0189】
なお、従動ロール424に対する線材202の搬送方向(送り方向)下流側であって、かつ、搬送装置230の搬送ロール232に対する線材202の搬送方向(送り方向)上流側には、線材202を搬送する搬送ロール428が設けられている。搬送ロール428は、線材202を挟み、搬送される線材202に従動して回転する一対の従動ロールで構成されている。
【0190】
(制御部)
制御部460は、制御部260における制御に加えて、張力付与機構417における検知センサ417C、417Dに基づく制御がなされる。
【0191】
具体的には、制御部460は、制御部260と同様に、搬送ロール232の駆動に同期させて、線材供給部410における駆動モータ419によってボビン412を回転駆動させる。これに加えて、制御部460は、張力付与方向下流側にある検知センサ417Cから検知信号を取得すると、線材供給部410における線材202の送り出し量が、搬送装置230における線材202の搬送量よりも少なくなるように、駆動モータ419を駆動させる。一方、張力付与方向上流側にある検知センサ417Dから検知信号を制御部260が取得すると、制御部260は、線材供給部410における線材202の送り出し量が、搬送装置230における線材202の搬送量よりも多くなるように、駆動モータ419を駆動させる。
【0192】
この構成によれば、線材202に付与される張力が一定化し、ロータリエンコーダ426によって側長される線材202の伸縮が抑制される。また、線材202の従動ロール424に対する巻き掛け量が、線材202が直線状に進行する構成に比べて、大きくなる。これにより、線材202と従動ロール424との間ですべりが生じにくく、線材202の搬送量と従動ロール424の従動回転量との間に誤差が生じにくくなる。
尚、制御部460は、前記した「巻取装置250における巻取部材252の具体的な構成及び巻取部材252の変形例」で説明した構成を付加しても良く、かかる構成によれば一定量の線材202をさらに安定して供給することができる。
【0193】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成しても良い。
また、前記した実施形態においては、直前の1個の誘導加熱コイルを製造する際に使用した線材202の使用量に基づいて線材供給部210の駆動モータ(ステッピングモータ)に入力する回転パルス数を算出する構成を示したが、1個の誘導加熱コイルを製造する途中において複数回実施しても良い。
【符号の説明】
【0194】
200 コイル製造装置
202 線材
210 線材供給部
212 ボビン(巻付部材の一例)
219 駆動モータ(駆動部の一例)
230 搬送装置
240 折り目付与装置
250 巻取装置
252A 巻き軸
252B フランジ(圧縮部材の一例)
252C 角部
258 溝部
259 押入ロール(押入部材の一例)
340 折り目付与装置
361 上型(圧縮体の一例)
362 下型(支持体の一例)
360 圧縮装置
400 コイル製造装置
410 線材供給部
417 張力付与機構
430 搬送装置
424 従動ロール
426 ロータリエンコーダ(測定部の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材を断面四角状の巻き軸で巻き取る巻取装置と、
前記巻取装置によって巻き取られる前記線材に対して、前記巻き軸の角部に巻き掛けられる位置に予め折り目を付与する折り目付与装置と、
を備える誘導加熱コイルの製造装置。
【請求項2】
前記折り目付与装置によって折り目が付与される前記線材を供給する線材供給部と、
前記線材供給部から供給された前記線材を前記折り目付与装置へ搬送する搬送装置と、を備え、
前記巻取装置は、前記搬送装置による前記線材の搬送量に応じて前記巻き軸を回転させ、
前記折り目付与装置によって折り目が付与された前記線材を前記折り目付与装置との間で弛ませた状態で前記線材を巻き取る請求項1に記載の誘導加熱コイルの製造装置。
【請求項3】
前記巻取装置は、
前記巻き軸に設けられ、前記巻き軸に巻き掛けられる前記線材が収容される溝部と、
前記溝部に前記線材を前記巻き軸の軸方向に対して直角の方向に押し入れる押入部材と、
を有する請求項1又は2に記載の誘導加熱コイルの製造装置。
【請求項4】
前記巻取装置は、前記巻き軸に巻き取られた前記線材を前記巻き軸の軸方向に圧縮して成形する圧縮部材を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘導加熱コイルの製造装置。
【請求項5】
前記搬送装置は、前記線材を圧縮して前記線材を断面四角形状に成形しながら搬送する請求項1〜4のいずれか1項に記載の誘導加熱コイルの製造装置。
【請求項6】
線材を断面四角状の巻き軸で巻き取る誘導加熱コイルの製造方法であって、
前記巻き軸で巻き取られる前記線材に対して、前記巻き軸の角部に巻き掛けられる位置に予め折り目を付与する折り目付与工程と、
前記折り目付与工程で折り目が付与された前記線材を前記巻き軸で巻き取る巻取工程と、
を備える誘導加熱コイルの製造方法。
【請求項7】
前記巻取工程では、前記折り目付与工程において前記折り目を前記線材に付与する折り目付与装置と前記巻き軸との間で前記線材を弛ませた状態でその線材を巻き取る請求項6に記載の誘導加熱コイルの製造方法。
【請求項8】
前記巻取工程で前記巻き軸に巻き取られた前記線材を前記巻き軸の軸方向に圧縮して成形する成形工程を備える請求項6又は7に記載の誘導加熱コイルの製造方法。
【請求項9】
前記折り目付与工程で折り目を付与される前記線材を予め線材を圧縮して断面四角形状に成形する成形工程を備える請求項6〜8のいずれか1項に記載の誘導加熱コイルの製造方法。
【請求項10】
前記巻取装置は、前記巻き軸の少なくとも一端側における軸幅が、前記巻き軸の軸方向に向かって徐々に狭くなる請求項4に記載の誘導加熱コイルの製造装置。
【請求項11】
前記圧縮部材で圧縮された線材を、その圧縮方向へ凸状に湾曲するように支持する支持体と、
前記支持体に支持された線材を圧縮する圧縮体と、を有する圧縮装置を備える請求項4に記載の誘導加熱コイルの製造装置。
【請求項12】
前記線材が巻き付けられ、回転して前記線材を送り出す巻付部材と、
前記巻付部材に巻き付けられた線材の残量の減少に伴って前記巻付部材の回転速度を増加するように前記巻付部材を回転駆動して、前記折り目付与装置へ向けて前記線材を供給する駆動部と、
を有する線材供給部
を備える請求項1に記載の誘導加熱コイルの製造装置。
【請求項13】
前記折り目付与装置によって折り目が付与される前記線材を供給する線材供給部と、
前記線材供給部から供給された前記線材を前記折り目付与装置へ搬送する搬送装置と、
前記線材供給部の下流側であってかつ前記搬送装置の上流側に配置され、前記線材が巻き掛けられ、前記搬送装置で搬送される前記線材に従動して回転する従動ロールと、
前記従動ロールの回転に基づき、前記搬送装置の搬送量を測定する測定部と、
前記従動ロールに対する前記線材の巻き掛け量が増える側へ向けて、前記線材へ張力を付与する張力付与機構と、
を備える請求項1に記載の誘導加熱コイルの製造装置。
【請求項14】
前記巻取工程では、少なくとも一端側における軸幅が自らの軸方向に向かって徐々に狭くなる巻き軸で前記線材を巻き取り、
前記成形工程では、前記巻き軸に巻き取られた状態の前記線材を前記巻き軸の軸方向に圧縮して成形する請求項8に記載の誘導加熱コイルの製造方法。
【請求項15】
前記線材を前記巻き軸の軸方向に圧縮して成形する成形工程は、
前記巻き軸に直線状に巻き取られた状態の前記線材を前記巻き軸の軸方向に一次圧縮し、さらに、前記線材を湾曲状に支持しながら前記線材を二次圧縮する請求項8に記載の誘導加熱コイルの製造方法。
【請求項16】
巻付部材に巻かれた線材の残量の減少に伴って前記巻付部材の回転速度を増加するように前記巻付部材を回転駆動して、折り目が付与される前記線材を供給する供給工程を備える請求項6に記載の誘導加熱コイルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−59689(P2012−59689A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24314(P2011−24314)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【特許番号】特許第4771014号(P4771014)
【特許公報発行日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】