説明

誘導加熱乾燥装置

【課題】車両ボディの各部の外板を構成する金属板の材質によって、固有抵抗値が異なるものが存在する場合でも、各部の外板を安定して略均一に加熱して乾燥させることができる誘導加熱乾燥装置を提供すること。
【解決手段】誘導加熱乾燥装置1は、ドア等の開閉部500を組み付けた車両ボディ5の各部の外板に対して誘導加熱を行って、各部の外板の表面を乾燥させるものである。誘導加熱乾燥装置1は、誘導加熱を行うための一つ又は複数の誘導加熱コイル2を有している。車両ボディ5において、各部の外板のいずれかは、残りの外板を構成する第1金属板61とは固有抵抗値の異なる第2金属板62によって構成されている。誘導加熱乾燥装置1は、第1金属板61を加熱する際の誘導加熱コイル2の通電条件と第2金属板62を加熱する際の誘導加熱コイル2の通電条件とを異ならせるよう構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ボディの各部の外板に対して誘導加熱を行う誘導加熱乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両ボディに塗装を行った後には、この車両ボディを乾燥炉内へ搬送し、乾燥炉内において、バーナの燃焼を行って発生させた熱風をファンによって送風して、車両ボディを加熱して乾燥させている。
一方、乾燥炉を用いて乾燥を行う際には、乾燥炉内の温度分布が不均一になったり、塗膜の外面が内面よりも先に乾くことによって塗装の品質に影響が生じたり、塗装面に埃が付着したりする問題が生じるおそれがある。
【0003】
これに対し、例えば、特許文献1の塗装用乾燥炉においては、自動車ボディのうちロッカー部に対向するように少なくとも1つの電磁誘導加熱コイルを設け、ロッカー部に施した塗膜を乾燥させることが開示されている。これにより、熱風による異物の巻き上げを抑制し、ひいては塗膜に異物が付着するといった品質不良を低減している。
また、例えば、特許文献2の電着塗膜形成方法においては、自動車ボディ等の金属製の立体的被塗物に電着塗装を行って得られた塗膜を、複数の誘導加熱装置により選択的に加熱乾燥することが開示されている。これにより、塗膜を加熱するのに時間がかかる、熱風温度を焼き付け温度以上の高温にするため一部が過剰加熱され塗膜が劣化する、金属とプラスチックを一体化した被塗物の電着塗装・乾燥硬化ができない等の問題を改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−87819号公報
【特許文献2】特開2004−2965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自動車等の車両ボディには、ドア、フード、バックドア等の開閉部が取り付けられており、車両ボディを構成する各部の外板には、異なる材質、組成の金属板を用いることが行われている。そのため、金属板の材質等によって固有抵抗値が異なり、誘導加熱を行う際の加熱のし易さが異なって、車両ボディの全体を安定して略均一に加熱することができないおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、車両ボディの各部の外板を構成する金属板の材質等によって、固有抵抗値が異なるものが存在する場合でも、各部の外板を安定して略均一に加熱して乾燥させることができる誘導加熱乾燥装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ドア等の開閉部を組み付けた車両ボディの各部の外板に対して誘導加熱を行って、該各部の外板の表面を乾燥させる誘導加熱乾燥装置であって、
誘導加熱を行うための一つ又は複数の誘導加熱コイルを有しており、
上記外板のいずれかは、残りの上記外板を構成する第1金属板とは固有抵抗値の異なる第2金属板によって構成されており、
上記第1金属板を加熱する際の上記誘導加熱コイルの通電条件と上記第2金属板を加熱する際の上記誘導加熱コイルの通電条件とを異ならせる、又は上記第1金属板と上記第2金属板とを通電条件の異なる上記誘導加熱コイルによってそれぞれ加熱するよう構成してあることを特徴とする誘導加熱乾燥装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
本発明の誘導加熱乾燥装置は、車両ボディの各部の外板について、異なる材質、組成の金属板を用いている場合でも、各部の外板を安定して略均一に加熱することができるものである。
具体的には、本発明の誘導加熱乾燥装置は、第1金属板を加熱する際の誘導加熱コイルの通電条件と第2金属板を加熱する際の誘導加熱コイルの通電条件とを異ならせるよう構成することができる。また、本発明の誘導加熱乾燥装置は、第1金属板と第2金属板とを通電条件の異なる誘導加熱コイルによってそれぞれ加熱するよう構成することもできる。
いずれかの構成を採用することにより、車両ボディの各部の外板を構成する金属板の材質、組成によって、固有抵抗値が異なるものが存在する場合でも、各部の外板を安定して略均一に加熱して乾燥させることができる。
【0009】
上記誘導加熱乾燥装置は、車両ボディの各部の外板に塗装を行って形成した塗装膜を乾燥させるために用いることができる。
また、誘導加熱乾燥装置は、車両ボディの各部の外板に塗布した溶剤を蒸発させるために用いることもできる。外板の表面に溶剤を塗布する場合としては、例えば、外板の表面に傷等が発生していないかを検査するために、外板の表面に溶剤を塗布し、この表面に光を反射させたときの反射角の変化を見る場合がある。この場合、誘導加熱乾燥装置を用いることによって、溶剤を迅速に蒸発させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1における、車両ボディに対して加熱乾燥を行う状態の誘導加熱乾燥装置を示す斜視説明図。
【図2】実施例1における、車両ボディの前面部及び側面部の前方側に対して加熱乾燥を行う状態の誘導加熱乾燥装置を示す側方説明図。
【図3】実施例1における、車両ボディの天面部及び側面部の中間部位に対して加熱乾燥を行う状態の誘導加熱乾燥装置を示す側方説明図。
【図4】実施例1における、車両ボディの背面部及び側面部の後方側に対して加熱乾燥を行う状態の誘導加熱乾燥装置を示す側方説明図。
【図5】実施例1における、車両ボディに対して加熱乾燥を行う状態の他の誘導加熱乾燥装置を示す斜視説明図。
【図6】実施例2における、車両ボディに対して加熱乾燥を行う状態の誘導加熱コイルを示す斜視説明図。
【図7】実施例2における、車両ボディに対して加熱乾燥を行う状態の誘導加熱乾燥装置を示す側方断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述した本発明の誘導加熱乾燥装置における好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記固有抵抗値は、外板を構成する上記第1金属板と上記第2金属板との材質、組成の違いによって決まる値のことをいう。この固有抵抗値は、後述する鋼板とアルミ板との違い等の材質の違いによって異なる値となる。また、この固有抵抗値は、同じ材質であっても組成の違いによって異なる場合も考えられる。
また、上記車両ボディの各部の外板とは、メインボディにおける各部としてのフェンダー、ルーフ、ピラー等の外板、及びメインボディに組み付けた上記開閉部としてのドア(サイドドア)、フード(ボンネット)、ルーフ、バックドア(トランクリッド)等の外板のことをいう。
【0012】
また、上記第1金属板は鉄を用いた鋼板であり、上記第2金属板はアルミニウムを用いたアルミ板であり、上記車両ボディに組み付けた上記開閉部の外板の少なくともいずれかは、上記第2金属板から構成し、上記車両ボディの各部の外板の残部は、上記第1金属板から構成することが好ましい。
この場合には、鋼板とアルミ板との違いに対応して、誘導加熱コイルによる通電条件を変更し、各部の外板を安定して略均一に加熱、乾燥させることができる。
また、鋼板としては、各種の自動車用の鋼板とすることができ、例えば、冷間圧延鋼板、冷間高張力鋼板等を用いることができる。アルミ板としては、自動車用に開発された種々のアルミニウム合金板等を用いることができる。
【0013】
また、上記誘導加熱コイルは、上記車両ボディの左右に位置して、該車両ボディの両側面部をそれぞれ加熱する一対の側面部誘導加熱コイルと、上記車両ボディの中心部に位置して、該車両ボディの前面部、天面部及び背面部を加熱する中心部誘導加熱コイルとを有しており、該中心部誘導加熱コイルは、移動手段によって移動して、上記前面部、天面部及び背面部を順次加熱するよう構成することもできる(請求項2)。
この場合には、車両ボディに対して誘導加熱コイルを適切に配置することができ、少ない数の誘導加熱コイルによって、車両ボディの各部の外板の全体を安定して略均一に加熱、乾燥させることができる。
【0014】
また、上記誘導加熱コイルは、上記第1金属板を加熱する第1誘導加熱コイルと、上記第2金属板を加熱する第2誘導加熱コイルとから構成してあり、上記第1誘導加熱コイルと上記第2誘導加熱コイルとは、移動手段によって別々又は一体的に移動可能に構成してあることが好ましい(請求項3)。
この場合には、誘導加熱コイルを、第1金属板を加熱する第1誘導加熱コイルと、第2金属板を加熱する第2誘導加熱コイルとに予め分けておき、これらを移動手段によって別々又は一体的に移動させて、車両ボディの各部の外板を加熱することができる。そのため、各部の外板の材質の違いに対応した通電条件の異なる複数の誘導加熱コイルを簡単に構成することができる。
【0015】
また、上記誘導加熱コイルには、上記各部の外板が上記第1金属板であるか上記第2金属板であるかの検出を行う磁気センサが設けてあり、該磁気センサによる検出を受けて、上記第1金属板を加熱する際の上記誘導加熱コイルの通電条件と上記第2金属板を加熱する際の上記誘導加熱コイルの通電条件とを異ならせることが好ましい(請求項4)。
この場合には、磁気センサによって、車両ボディにおけるどの部位の外板に第2金属板が用いられ、残りの部位の外板に第1金属板が用いられているかを容易に検出することができる。そのため、車両ボディにおける各部の外板の種類を直接検出して、誘導加熱コイルの通電条件を変化させることができる。
【0016】
また、上記誘導加熱コイルには、上記各部の外板との距離を検出する距離センサが設けてあり、該距離センサによる検出を受けて、上記各部の外板に対する上記誘導加熱コイルの距離を調整するよう構成することが好ましい(請求項5)。
この場合には、車両ボディの各部の外板に対する誘導加熱コイルの距離を精度良く調整することができる。
また、距離センサとしては、光電センサ、超音波センサ等の非接触式のセンサを用いることができる。
【0017】
また、上記車両ボディは、ライン搬送によって上記誘導加熱コイルの設置位置まで搬送するよう構成することが好ましい(請求項6)。
この場合には、誘導加熱乾燥装置を、車両ボディの塗装を行うラインに設置し、このラインを流れる車両ボディに対して、他の塗装工程等と連続して、塗装後の加熱、乾燥を行うことができる。
【実施例】
【0018】
以下に、本発明の誘導加熱乾燥装置にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
(実施例1)
本例の誘導加熱乾燥装置1は、図1に示すごとく、ドア等の開閉部500を組み付けた車両ボディ5の各部の外板(アウターパネル)に対して誘導加熱を行って、各部の外板の表面を乾燥させるものである。誘導加熱乾燥装置1は、誘導加熱を行うための一つ又は複数の誘導加熱コイル2を有している。
車両ボディ5において、各部の外板のいずれかは、残りの外板を構成する第1金属板61とは固有抵抗値の異なる第2金属板62によって構成されている。誘導加熱乾燥装置1は、第1金属板61を加熱する際の誘導加熱コイル2の通電条件と第2金属板62を加熱する際の誘導加熱コイル2の通電条件とを異ならせるよう構成してある。
【0019】
以下に、本例の誘導加熱乾燥装置1につき、図1〜図4を参照して詳説する。
本例の誘導加熱乾燥装置1は、電着塗装等の塗装を行った後の車両ボディ5の各部の外板を加熱し、各部の外板における塗装膜を加熱して乾燥させるために用いる。車両ボディ5は、搬送ラインによって塗装工程から乾燥工程まで搬送されるようになっている。
ここで、車両ボディ5の各部の外板とは、メインボディ50における各部としてのフェンダー、ルーフ、ピラー等の外板、及びメインボディ50に組み付けた開閉部500としてのドア(サイドドア)、フード(ボンネット)、ルーフ、バックドア(トランクリッド)等の外板のことをいう。
【0020】
図1に示すごとく、誘導加熱コイル2は、所定の周波数の交流電圧を印加して、コイルに発生する渦電流により金属製の外板を加熱するよう構成してある。誘導加熱コイル2は、周波数、交流電圧等を変化させて、通電条件を変更可能である。本例の誘導加熱コイル2は、車両ボディ5の左右に位置して、車両ボディ5の両側面部51をそれぞれ加熱する一対の側面部誘導加熱コイル2Aと、車両ボディ5の中心部に位置して、車両ボディ5の前面部52、天面部53及び背面部54を加熱する中心部誘導加熱コイル2Bと、車両ボディ5の底面部55を加熱する底面部誘導加熱コイル2Cとから構成してある。底面部誘導加熱コイル2Cは、搬送ラインの床面に対して固定しておくことができる。
【0021】
本例の第1金属板61は、鉄を用いた鋼板であり、第2金属板62は、アルミニウム合金を用いたアルミ板である。本例の車両ボディ5においては、開閉部500としての前面部52(フード)及び背面部54(バックドア)がアルミ板からなる第2金属板62から構成し、各部の外板の残部、すなわち側面部51(サイドドア、フェンダー、ピラー等)、天面部53(ルーフ)は、鋼板からなる第1金属板61から構成することができる。
側面部誘導加熱コイル2A及び中心部誘導加熱コイル2Bは、いずれも移動手段としての産業用ロボット4のエフェクタ部41に取り付けてある。
【0022】
図2〜図4に示すごとく、側面部誘導加熱コイル2A及び中心部誘導加熱コイル2Bは、ライン搬送される車両ボディ5の各部の外板を加熱するよう構成してある。側面部誘導加熱コイル2A及び中心部誘導加熱コイル2Bには、各部の外板が第1金属板61であるか第2金属板62であるかの検出を行う磁気センサ31と、各部の外板との距離を検出する距離センサ32とが設けてある。
【0023】
側面部誘導加熱コイル2A及び中心部誘導加熱コイル2Bは、それぞれの磁気センサ31による検出を受けて、第1金属板61を加熱する際の通電条件と第2金属板62を加熱する際の通電条件とを異ならせるよう構成してある。具体的には、第2金属板62は、第1金属板61よりも固有抵抗値が低いことにより所定の温度に達し難い。そのため、各誘導加熱コイル2A、2Bは、第2金属板62を加熱する際の通電条件としての周波数、印加電圧等を、第1金属板61を加熱する場合よりも高くするよう構成してある。
なお、本例の車両ボディ5においては、前面部52(フード)及び背面部54(バックドア)のみを第2金属板62から構成した場合には、中心部誘導加熱コイル2Bのみ通電条件を変化させるよう構成することができる。
【0024】
また、側面部誘導加熱コイル2A及び中心部誘導加熱コイル2Bは、それぞれの距離センサ32による検出を受けて、各部の外板に対する距離を調整するよう構成してある。具体的には、産業用ロボット4のエフェクタ部41の移動によって、側面部誘導加熱コイル2A又は中心部誘導加熱コイル2Bを移動させ、車両ボディ5の車種の違いに対応して、車両ボディ5の各部の外板との位置関係が誘導加熱に適切な位置関係になるよう構成してある。
【0025】
図2〜図4は、側面部誘導加熱コイル2A及び中心部誘導加熱コイル2Bによって、車両ボディ5の各部の外板を順次加熱する状態を示す図である。
中心部誘導加熱コイル2Bは、産業用ロボット4によって移動して、車両ボディ5の前面部52(フード)(図2参照)、天面部53(ルーフ)(図3参照)及び背面部54(バックドア)(図4参照)を順次加熱するよう構成してある。また、側面部誘導加熱コイル2Aは、車両ボディ5の側面部51の前方側(フロントフェンダー及びフロントサイドドア)(図2参照)、側面部51の中間部位(リヤサイドドア)(図3参照)、側面部51の後方側(リヤフェンダー)(図4参照)を順次加熱するよう構成してある。
【0026】
なお、図5に示すごとく、側面部誘導加熱コイル2Aは、車両ボディ5の前後方向に対して複数個を配設し、各側面部誘導加熱コイル2Aの通電条件を異ならせることもできる。この場合、側面部誘導加熱コイル2Aは、搬送ラインの床面に固定しておくことができる。そして、側面部51における開閉部500としてのドアを第2金属板62から構成し、残りの側面部51の部位を第1金属板61から構成したときには、第1金属板61を加熱する側面部誘導加熱コイル2Aと、第2金属板62を加熱する側面部誘導加熱コイル2Aとの通電条件を異ならせることができる。
【0027】
本例の誘導加熱乾燥装置1は、車両ボディ5の各部の外板について、異なる材質、組成の金属板を用いている場合でも、各部の外板を安定して略均一に加熱することができるものである。具体的には、本例の誘導加熱乾燥装置1は、一対の側面部誘導加熱コイル2Aと中心部誘導加熱コイル2Bとを、産業用ロボット4によってそれぞれ別々に移動させることができる。これにより、搬送ラインを流れる車両ボディ5に対して、一対の側面部誘導加熱コイル2Aと中心部誘導加熱コイル2Bとを、適宜適切な位置に移動させながら、前工程としての塗装工程において車両ボディ5の各部の外板に施工した塗装膜を加熱し乾燥させることができる。
【0028】
また、距離センサ32を用いることによって、車両ボディ5の各部の外板に対する各誘導加熱コイル2の距離を精度良く調整することができる。これにより、搬送ラインに複数の車種の車両ボディ5が流れ、複数の車種の車両ボディ5の各部の外板に施工した塗装膜を加熱、乾燥させる際にも、各部の外板に対する各誘導加熱コイル2の距離を適切に制御することができる。また、磁気センサ31を用いることによって、車両ボディ5において、第1金属板61が用いられている部位の外板と、第2金属板62が用いられている部位の外板とを直接検出して、中心部誘導加熱コイル2Bの通電条件を変化させることができる。
【0029】
それ故、本例の誘導加熱乾燥装置1によれば、車両ボディ5の各部の外板を構成する金属板の材質によって、固有抵抗値が異なるものが存在する場合でも、各部の外板を安定して略均一に加熱して乾燥させることができる。
【0030】
(実施例2)
本例は、図6、図7に示すごとく、車両ボディ5の各部の外板を構成する第1金属板61と第2金属板62とを、通電条件の異なる第1誘導加熱コイル2Dと第2誘導加熱コイル2Eとによってそれぞれ加熱するよう構成した例である。
本例の第1誘導加熱コイル2Dと第2誘導加熱コイル2Eとは、移動手段としての昇降装置7に対して配設してあり、搬送ラインを流れる車両ボディ5に対して昇降して、車両ボディ5の各部の外板を加熱、乾燥するよう構成してある。
【0031】
車両ボディ5の各部の外板は、前面部52(フード)及び背面部54(バックドア)がアルミ板による第2金属板62から構成されており、各部の外板の残部は、鋼板による第1金属板61から構成されている。そして、昇降装置7においては、車両ボディ5の両側面部51及び天面部53に対向する位置に第1誘導加熱コイル2Dが配設され、車両ボディ5の前面部52及び背面部54に対向する位置に第2誘導加熱コイル2Eが配設されている。また、車両ボディ5の底面部55を加熱する第1誘導加熱コイル2Dは、搬送ラインの床面に配設してある。
そして、第2金属板62を加熱する第2誘導加熱コイル2Eは、鋼板に比べて加熱し難いアルミ板を加熱するため、周波数、印加電圧等が第1金属板61を加熱する第1誘導加熱コイル2Dよりも高く設定してある。
【0032】
本例においては、誘導加熱コイル2を、第1金属板61を加熱する第1誘導加熱コイル2Dと、第2金属板62を加熱する第2誘導加熱コイル2Eとに予め分けておき、これらを昇降装置7によって移動(昇降)させて、車両ボディ5の各部の外板を加熱することができる。そのため、各部の外板の材質(固有抵抗値)の違いに対応した通電条件の異なる複数の誘導加熱コイル2D、2Eを簡単に構成することができる。
本例においても、その他の構成は上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 誘導加熱乾燥装置
2 誘導加熱コイル
2A 側面部誘導加熱コイル
2B 中心部誘導加熱コイル
2D 第1誘導加熱コイル
2E 第2誘導加熱コイル
31 磁気センサ
32 距離センサ
4 産業用ロボット
5 車両ボディ
50 メインボディ
500 開閉部
51 両側面部
52 前面部
53 天面部
54 背面部
61 第1金属板
62 第2金属板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア等の開閉部を組み付けた車両ボディの各部の外板に対して誘導加熱を行って、該各部の外板の表面を乾燥させる誘導加熱乾燥装置であって、
誘導加熱を行うための一つ又は複数の誘導加熱コイルを有しており、
上記外板のいずれかは、残りの上記外板を構成する第1金属板とは固有抵抗値の異なる第2金属板によって構成されており、
上記第1金属板を加熱する際の上記誘導加熱コイルの通電条件と上記第2金属板を加熱する際の上記誘導加熱コイルの通電条件とを異ならせる、又は上記第1金属板と上記第2金属板とを通電条件の異なる上記誘導加熱コイルによってそれぞれ加熱するよう構成してあることを特徴とする誘導加熱乾燥装置。
【請求項2】
請求項1において、上記誘導加熱コイルは、上記車両ボディの左右に位置して、該車両ボディの両側面部をそれぞれ加熱する一対の側面部誘導加熱コイルと、上記車両ボディの中心部に位置して、該車両ボディの前面部、天面部及び背面部を加熱する中心部誘導加熱コイルとを有しており、
該中心部誘導加熱コイルは、移動手段によって移動して、上記前面部、天面部及び背面部を順次加熱するよう構成してあることを特徴とする誘導加熱乾燥装置。
【請求項3】
請求項1において、上記誘導加熱コイルは、上記第1金属板を加熱する第1誘導加熱コイルと、上記第2金属板を加熱する第2誘導加熱コイルとから構成してあり、
上記第1誘導加熱コイルと上記第2誘導加熱コイルとは、移動手段によって別々又は一体的に移動可能に構成してあることを特徴とする誘導加熱乾燥装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記誘導加熱コイルには、上記各部の外板が上記第1金属板であるか上記第2金属板であるかの検出を行う磁気センサが設けてあり、
該磁気センサによる検出を受けて、上記第1金属板を加熱する際の上記誘導加熱コイルの通電条件と上記第2金属板を加熱する際の上記誘導加熱コイルの通電条件とを異ならせることを特徴とする誘導加熱乾燥装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記誘導加熱コイルには、上記各部の外板との距離を検出する距離センサが設けてあり、
該距離センサによる検出を受けて、上記各部の外板に対する上記誘導加熱コイルの距離を調整するよう構成してあることを特徴とする誘導加熱乾燥装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、上記誘導加熱コイルは、ライン搬送される上記車両ボディの各部の外板を加熱するよう構成してあることを特徴とする誘導加熱乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−69500(P2011−69500A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218264(P2009−218264)
【出願日】平成21年9月22日(2009.9.22)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】