説明

誘導加熱調理器及びその製造方法

【課題】本発明は、誘導加熱調理器の組立工程における煩雑な検査・調整作業を可能な限り簡便化し、且つより正確な駆動制御を精度高く行うことができる誘導加熱調理器及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】誘導加熱調理器は、誘導加熱調理器を駆動制御するためのプログラムが記憶されたフラッシュメモリ(14)を持つマイクロコンピュータ(9)を有し、マイクロコンピュータにはプログラムを書き替えるために外部装置との通信を行う入出力回路が設けられており、マイクロコンピュータがテストプログラムを実行して、電流検知手段(6)の検出値および電源電圧検知手段(7)の検出値などを検知して、プログラムの書き替えを行い誘導加熱調理器が製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱により加熱調理する誘導加熱調理器に関し、特にマイクロコンピュータを有する誘導加熱調理器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱は電磁誘導で金属を加熱できるため、金属製の鍋を高効率で直接加熱することが可能であり、調理器の多くに用いられてきている。このような誘導加熱の特性を生かした調理器の一つとして炊飯器がある。最近の炊飯器においては、米種やユーザの好みに対応できるように種々の炊飯シーケンスを実行することが可能な炊飯器が提供されている。このような炊飯器においては、誘導加熱手段である誘導加熱コイルに対する駆動制御を行い、鍋に加える電力を制御しているものがある。この電力を検知する為に、入力電流を検知する電流検知回路と電源電圧を検知する電圧検知回路を設け、この電流検知回路の出力値と電圧検知回路の出力値をマイクロコンピュータ(以後、マイコンと省略する)において演算処理し、当該炊飯器における基準値になるように、スイッチング素子のオン時間を制御している。
【0003】
これらの電流検知回路や電圧検知回路を構成する部品の個々においては、特性のバラツキが存在するため、正確な電力制御を行うためには、出荷前の個々の炊飯器においてバラツキ調整を行う必要がある。
バラツキ調整を行う方法としては、電流検知回路や電圧検知回路の構成部品に可変抵抗器を実装して、入力電力が設定基準値となるよう調整する方法がある。(例えば、特許文献1参照。)
また、炊飯器に電源電圧検知手段、電源電流検知手段および電源電圧電流調整手段を設け、電源電圧電流調整手段により電圧レベルを調整するものが開示されている。この炊飯器においては、調整完了後に不揮発性メモリに調整値を記憶させておき、再度の電力調整を容易なものとしている。(例えば、特許文献2参照。)
【0004】
上記のように、誘導加熱調理器における炊飯器では、部品個々のバラツキに応じたバラツキ調整を工場出荷前の段階で行うことにより、炊飯器における電気回路を構成する各部品のバラツキに起因する電力の変動要因を無くしていた。
【特許文献1】特開平11−056602号公報
【特許文献2】特開2005−130991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の誘導加熱調理器における炊飯器においては、工場出荷前の組立工程において各炊飯器を起動して電力検査を行い、その検査結果に応じて個々の炊飯器における可変抵抗器等を用いてバラツキ調整を行っていた。また、炊飯器以外の誘導加熱調理器においても、正確な駆動制御が必要な機器においては、それぞれの機器の電力を予め検査して同様の調整を行っていた。
【0006】
上記のように誘導加熱調理器においては、正確な駆動制御を行うために機器の組立の最終段階において検査とバラツキ調整作業が必要であり、組立工程における煩雑な作業の一つとなっていた。
また、可変抵抗に変わって外部メモリを用いてバラツキ調整を行う場合には、外部メモリとマイコンとの通信不良が起きたときに、正常に動作しないという信頼性上の課題があった。
また、誘導加熱調理器においては、電気回路を構成する部品等が経年変化によりその特性が変わる場合がある。そのような場合においても継続して同じ制御プログラムを実行していると望ましい調理ができないという問題があった。
【0007】
本発明は、誘導加熱調理器の組立工程における煩雑な検査・調整作業を簡便化し、且つより正確な駆動制御を継続して精度高く行うことができる誘導加熱調理器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点の誘導加熱調理器は、フラッシュメモリを内蔵したマイクロコンピュータを有し、前記フラッシュメモリには誘導加熱調理器を駆動制御するための制御プログラムが記憶されており、前記マイクロコンピュータには前記フラッシュメモリ内に記憶された前記制御プログラムを書き替えるために外部装置との通信を行う入出力回路が設けられている。このように構成された第1の観点の誘導加熱調理器は、外部メモリが不要となり、外部メモリとマイコン間の通信が不要となるので、通信不良がなくなり信頼性が高くなる。また、変更できるデータ数が外部メモリの容量の影響を受けなくなり、一台ごとに最適な調整を行うことが可能となる。また、フラッシュマイコンなので、制御プログラムの書き換えを容易に、且つ確実に行うことが可能となる。
【0009】
本発明の第2の観点の誘導加熱調理器は、前記の第1の観点における誘導加熱調理器が入力電流を検知する電流検知手段を有し、フラッシュメモリに記憶された制御プログラムは前記電流検知手段の検出値が入力電流設定値になるように制御するプログラムを有し、前記制御プログラムの書き替え時に前記入力電流設定値を書き替え可能に設定している。このように構成された第2の観点の誘導加熱調理器においては、正確な電流値で制御することができ、バラツキ調整用の可変抵抗や外部メモリが不要となり実装面積を小さくすることができる。
【0010】
本発明の第3の観点の誘導加熱調理器は、前記第2の観点における誘導加熱調理器のマイクロコンピュータと前記マイクロコンピュータの電源回路と電流検知手段は、制御プログラムの検査時に電気的に接続されるよう構成されている。このように構成された第3の観点の誘導加熱調理器においては、バラツキの要因となる電気部品が接続された状態で制御プログラムの検査が行われるため、精度の高い検査を少ない工程で行うことが可能となる。また、誘導加熱調理器のマイクロコンピュータとマイクロコンピュータの電源回路と電流検知手段のバラツキの要因となる電気部品を実質的に1つの基板に実装することにより、その基板だけで検査が可能のとなり、完成品でのバラツキ調整工程を省略することができる。
【0011】
本発明の第4の観点の誘導加熱調理器は、前記第2および第3の観点における誘導過熱調理器が、交流電源の電圧を検知する電源電圧検知手段を有し、フラッシュメモリに記憶された制御プログラムは前記電源電圧検知手段の検出値と電源電圧基準値に基づいて、入力電流設定値を補正するように制御するプログラムを有し、前記フラッシュメモリの書き替え時に前記電源電圧基準値を書き替え可能に設定している。このように構成された第4の観点の誘導加熱調理器においては、正確な電源電圧を検知することが可能となり、正確な電力を制御することができる。また、バラツキ調整用の可変抵抗や外部メモリが不要となり実装面積を小さくすることができる。
【0012】
本発明の第5の観点の誘導加熱調理器は、前記第2から第4の観点における誘導加熱調理器が、被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルを通電、遮断するスイッチング素子と、前記スイッチング素子の両端電圧を検知する素子電圧検知手段と、を有し、
フラッシュメモリに記憶された制御プログラムは、前記素子電圧検知手段の検出値が素子電圧上限値を超えないように前記スイッチング手段のオン時間を制御するプログラムを有し、前記フラッシュメモリの書き替え時に前記素子電圧上限値が書き替え可能に設定されている。このように構成された第5の観点の誘導加熱調理器においては、スイッチング素子が確実に最大定格以下で動作するようにマイクロコンピュータにより制御することが可能となり、スイッチング素子の破壊を防止することができる。
【0013】
本発明の第6の観点の誘導加熱調理器は、前記第2から第5の観点における誘導加熱調理器が炊飯器であり、フラッシュメモリに記憶された制御プログラムは炊飯シーケンスプログラムを有し、前記炊飯シーケンスプログラムには入力電流設定値がデータとして入力されている。このように構成された第6の観点の誘導加熱調理器においては、炊飯器シーケンスプログラムを全て書き替えることが可能となり、炊飯器の経年変化にあわせて、炊飯シーケンスプログラムを書き替えて、安定した炊飯性能を長期間持続することができる。
【0014】
本発明の第7の観点の誘導加熱調理器は、前記第2から第6の誘導加熱調理器のフラッシュメモリに記憶された制御プログラムがテストプログラムを有し、前記テストプログラムを実行することにより、電流検知手段の検出値を出力するように構成されている。このように構成された第7の観点の誘導加熱調理器においては、外部装置で入力電流検知手段のバラツキを確認することが可能となり、制御プログラムの書き替えの際に、入力電流検知手段のバラツキを考慮した値に書き替えることができる。
【0015】
本発明の第8の観点の誘導加熱調理器は、前記第2から第6の観点における誘導加熱調理器のフラッシュメモリに記憶された制御プログラムがテストプログラムを有し、前記テストプログラムを実行することにより、電流検知手段の検出値と電源電圧検知手段の検出値を出力するように構成されている。このように構成された第8の観点の誘導加熱調理器においては、外部装置で入力電流検知手段と電源電圧検知手段のバラツキを確認することが可能となり、制御プログラムの書き替えの際に、これらのバラツキを考慮した値に書き替えることができる。
【0016】
本発明の第9の観点の誘導加熱調理器は、前記第2から第6の観点における誘導加熱調理器のフラッシュメモリに記憶された制御プログラムがテストプログラムを有し、前記テストプログラムを実行することにより、電流検知手段の検出値と電源電圧検知手段の検出値と素子電圧検知手段の検出値を出力するように構成されている。このように構成された第9の観点の誘導加熱調理器においては、外部装置で入力電流検知手段と電源電圧検知手段と素子電圧検知手段のバラツキを確認することが可能となり、制御プログラムの書き替えの際に、これらのバラツキを考慮した値に書き替えることができる。
【0017】
本発明の第10の観点の誘導加熱調理器の製造方法は、フラッシュメモリを内蔵したマイクロコンピュータを有する誘導加熱調理器の製造方法であって、
前記誘導加熱調理器は、前記フラッシュメモリ内に記憶された制御プログラムを書き替えるために外部装置との通信を行う入出力回路と、入力電流を検知する電流検知手段と、交流電源の電圧を検知する電源電圧検知手段と、誘導加熱コイルを通電、遮断するスイッチング素子の両端電圧を検知する素子電圧検知手段と、を有し、
誘導加熱調理器の製造方法においては、前記マイクロコンピュータがテストプログラムを実行して、前記電流検知手段の検出値、前記電源電圧検知手段の検出値、および前記素子電圧検知手段の検出値を送信データとして外部装置に送信し、
前記外部装置は前記送信データに基づき入力電流設定値、電源電圧基準値、および素子電圧上限値を変更した制御プログラムを前記フラッシュメモリに書き込んでいる。このように構成された第10の観点の誘導加熱調理器の製造方法においては、マイクロコンピュータが読み込んでいるデータに変更するため、検知バラツキの小さい誘導加熱調理器を提供することができる。
【0018】
本発明の第11の観点の誘導加熱調理器の製造方法は、前記第10の観点の誘導加熱調理器の製造方法において、外部装置による制御プログラムの書き替えが製品組立前の基板実装状態で行われる。このように構成された第11の観点の誘導加熱調理器の製造方法においては、基板状態でバラツキ調整を行うため、製品組立後の調整が不要となり、操作キーによる調整や可変抵抗による調整が不要となり、煩雑な調整工程が不要となる。
【0019】
本発明の第12の観点の誘導加熱調理器の製造方法は、前記第10の観点の誘導加熱調理器の製造方法において、マイクロコンピュータと外部装置との通信が入出力端子に接続された有線通信手段を介して行われる。このように構成された第12の観点の誘導加熱調理器の製造方法においては、有線通信手段、例えばコネクタを介して通信が行われるため、炊飯器の経年変化で電力にバラツキが生じた場合でも、その場で、フラッシュメモリを書き替えすることができるため、長期間、バラツキの小さい誘導加熱調理器を提供することが可能となる。
【0020】
本発明の第13の観点の誘導加熱調理器の製造方法は、前記第10の観点の誘導加熱調理器の製造方法において、マイクロコンピュータと外部装置との通信が無線通信手段を介して行われる。このように構成された第13の観点の誘導加熱調理器の製造方法においては、無線通信手段を介して外部装置と通信し、フラッシュメモリに記憶されたプログラムを書き替えることができるため、プログラムの書き替えのために炊飯器を分解したりする必要がなく、その場で書き替えが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、誘導加熱調理器の組立工程における検査・調整作業の簡便化を図ることが可能となり、且つより正確な駆動制御を継続して精度高く行うことができる誘導加熱調理器及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る誘導加熱調理器及びその製造方法について好適な実施の形態として炊飯器を示して詳細に説明する。本発明の誘導加熱調理器としては炊飯器に限定されるものではなく、誘導加熱を用いて制御プログラムに基づいて動作する調理器、例えば電子レンジ、スチームレンジ、クッキングヒータ等の調理器であれば適用可能である。なお、以下に説明する実施の形態においては、本発明の特徴を詳細に説明するものであるが、この実施の形態における開示内容は構成の細部において変化してしかるべきものであり、各構成要素の組合せや順序の変化は請求された特許請求の範囲及び本発明の技術的思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【0023】
[実施の形態1]
図1は本発明に係る実施の形態1の誘導加熱調理器としての炊飯器の構成を示すブロック図である。図2は実施の形態1の炊飯器の構成を一部ブロック化して示した回路図である。
【0024】
図1に示すように、炊飯器の内釜1には被加熱物である被調理物が収納された状態において、ユーザが指定した炊飯シーケンスに従って誘導加熱手段である誘導加熱コイル2により設定された電力及び温度により加熱される。誘導加熱コイル2はインバータ回路3により形成された高周波電力が供給されて誘導加熱する。内釜1の加熱状態は温度検知手段である温度検知器8により検知され、その検知信号が後述するフラッシュマイコン9に送られている。ここでフラッシュマイコン9とは、フラッシュメモリ14を内蔵するマイクロコンピュータである。フラッシュメモリ14は、記憶されたデータの消去、書き込みを行うことができるものであり、フラッシュメモリ14への電源供給が遮断されても、記憶されているデータは保持される。
【0025】
実施の形態1の誘導加熱調理器としての炊飯器においては、商用電源4から入力された電源電流を電流検知手段である電流検知回路6により検出して電圧信号に変換し、その電圧信号をフラッシュマイコン9に入力している。即ち、実施の形態1の炊飯器においては、入力される電流値が常に検知されている。また、電源電圧検知手段である電源電圧検知回路7は、商用電源4から供給される電源電圧を検出し、その検出した電圧信号はフラッシュマイコン9に入力されている。
【0026】
フラッシュマイコン9には、演算制御処理を行う中枢部である中央演算回路(CPU)13、書き換え可能である記憶手段であるフラッシュメモリ14、アナログ電圧をデジタル値に変換するAD変換器15、外部とのデータ伝送を行う入出力ポートを有する入出力回路16であるシリアルインターフェース等が少なくとも設けられている。なお、フラッシュマイコン9は、実施の形態1の説明においては省略するが、タイマ回路、クロック発生回路等の一般的に設けられている回路を有するものである。
実施の形態1の炊飯器には、液晶表示パネル(LCD)等が用いられ、フラッシュマイコン9からのデータ等を表示する表示部11と、ユーザの炊飯指令、設定及び調整等を行うための操作部12が設けられている。
【0027】
図2は実施の形態1の炊飯器の構成を一部ブロック化して示した回路図である。
商用電源4から供給された電力は、整流手段であるダイオードブリッジ23により全波整流される。コンデンサ24は電源周波数の2倍の周波数は平滑せず、高周波成分を吸収するフィルタの役割を果たしている。誘導加熱コイル2と並列に共振用コンデンサ25が設けられており、スイッチング素子であるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)26のスイッチング動作により高周波電流が、設定された炊飯シーケンスプログラム18に応じて誘導加熱コイル2に供給される。このIGBT26と並列に還流ダイオードが接続されている。実施の形態1の炊飯器においては、IGBT26のオン時間により供給電力を制御するよう構成されており、誘導加熱コイル2への電流量を制御して内釜1に対する加熱制御を行っている。実施の形態1においては、共振用コンデンサ25及びIGBT26によりインバータ回路3が構成されている。
【0028】
インバータ駆動制御回路5は、フラッシュマイコン9からの制御信号が入力され、IGBT26のゲート端子に駆動信号を出力する。駆動信号により励起されたIGBT26は、誘導加熱コイル2に高周波電流を出力し、内釜1を誘導加熱する。フラッシュマイコン9のフラッシュメモリ14には各種炊飯シーケンスのデータが格納されており、ユーザにより選択された炊飯シーケンスプログラム18に従ってフラッシュマイコン9から制御信号が出力されるよう構成されている。
【0029】
商用電源4に接続された半波整流平滑回路41は、商用電源4から入力された電圧信号を整流ダイオードと電解コンデンサにより約141Vの電圧に半波整流平滑する。スイッチング電源42は、半波整流平滑回路41の出力値である約141Vの電圧を専用ICとコイルを用いて20Vの直流電圧に降圧している。5V直流電源43においては、トランジスタとツェナーダイオードでエミッタフォロア回路が構成されており、スイッチング電源42からの出力値である20Vの直流電圧を5Vの直流電圧に降圧している。この5V直流電源43がフラッシュマイコン9とその周辺回路に電力を供給している。また、5V直流電源43はフラッシュマイコン9内のAD変換器15の基準電圧源として直流電圧を供給している。
【0030】
電流検知回路6には入力電流を検知するためにカレントトランス(CT)27が商用電源4とダイオードブリッジ23との間に設けられており、カレントトランス27の1次側に商用電源4からの電流が検出される。カレントトランス27の2次側の出力は、ダイオードブリッジ28で全波整流され、電解コンデンサ29で平滑される。電解コンデンサ29により平滑された電圧は、抵抗により分圧されて、入力電流を示す信号としてフラッシュマイコン9のAD変換器15に入力される。CPU13はAD変換器15が変換した入力値(デジタル値)と入力電流設定値(デジタル値)との差を演算し、入力電流設定値より入力値の方が小さい場合は、スイッチング素子のオン時間を増やし、入力電流設定値より入力値の方が大きい場合はスイッチング素子のオン時間を減らす。この制御プログラムはフラッシュメモリ14に記憶されている。
【0031】
電源電圧検知回路7においては、商用電源4からダイオード30により半波整流され、抵抗器で分圧されて、この分圧された電圧をトランジスタ31とコンデンサ32を有するエミッタフォロア回路でピークホールドする。この電源電圧検知回路7の出力は、電源電圧を示す信号としてフラッシュマイコン9のAD変換器15に入力される。CPU13は、AD変換器15が変換した入力値(デジタル値)と電源電圧基準値(デジタル値)との差を演算し、その演算結果に基づいて入力電流設定値(デジタル値)を補正する。例えば、電源電圧基準値より入力値の方が小さい場合は、入力電流設定値を大きくし、電源電圧基準値より入力値の方が大きい場合は、入力電流設定値を小さくする。その結果、入力電力がほぼ一定となる。
【0032】
内釜1の温度を検出する温度検知手段である温度検知器8は、例えばサーミスタで構成されており、内釜1の温度を示す信号をフラッシュマイコン9に入力している。
スイッチング手段であるIGBT26の両端電圧は、素子電圧検知手段である素子電圧検知回路40により検出されている。
素子電圧検知回路40は、特に図示していないが、複数の抵抗の直列回路からなる抵抗分圧回路と、この抵抗分圧回路の出力電圧のピーク値を保持するエミッタフォロア回路で構成されており、IGBT26の両端電圧(コレクタ−エミッタ間電圧)に相当する電圧をフラッシュマイコン9のAD変換器15に出力している。
フラッシュマイコン9は素子電圧検知回路40の検出値がIGBT26の素子電圧上限値を超えないように、IGBT26のオン時間を制御している。フラッシュメモリ14に記憶されている制御プログラムには、素子電圧検知回路40の検出値が素子電圧上限値を超えないようにIGBT26のオン時間を制御するためのプログラムを有しており、フラッシュメモリ14の書き替え時において素子電圧上限値が書き替えられるよう構成されている。
なお、実施の形態1では、スイッチング素子のオン時間を制御する要素に入力電流設定値と素子電圧上限値があるが、この二つの制御は矛盾しない。なぜなら、この二つの制御プログラムの結果得られるスイッチング素子のオン時間の内、オン時間の小さい方を選択するように制御プログラムを構成しているからである。
【0033】
以上のように、フラッシュマイコン9には、入力電流を示す信号、電源電圧を示す信号、内釜1の温度を示す信号、およびIGBT26の両端電圧を示す信号が入力されている。これらの入力信号は、全てフラッシュマイコン9のAD変換器15に入力されている。このAD変換器15の基準電圧は5V直流電源43により供給されている。
上記のようにフラッシュマイコン9に入力された、入力電流を示す信号、電源電圧を示す信号、内釜1の温度を示す信号、およびIGBT26の両端電圧を示す信号に基づいて、フラッシュメモリ14の制御プログラムにおけるそれぞれの設定値が書き替えられるよう構成されている。
【0034】
実施の形態1においては、炊飯器への入力電流が実際は同じであっても、電流検知回路6を構成する電子部品の特性がバラツキを有していると、電流検知回路6の検出値は変動する。また、5V直流電源43の構成部品の特性がバラツキを有していると、5V直流電源43の出力電圧が変動する。このような変動が生じると、フラッシュマイコン9のAD変換器15の検出したデジタル値が変動し、入力電流の変動として検知(検知バラツキ)する。例えば、5V直流電源43の出力電圧が5Vであり、電流検知回路6の出力電圧が4Vの場合、フラッシュマイコン9が検出した入力電流に相当するデジタル値は(0xcc)となる。一方、5V直流電源43の出力電圧が4.5Vで、電流検知回路6の出力電圧が4Vの場合、フラッシュマイコンが検出した入力電流に相当するデジタル値は(0xe3)となる。
【0035】
上記のように検知されるバラツキの要因としては、電流検知回路6の構成部品の特性のバラツキとフラッシュマイコン9に電力供給する5V直流電源43の構成部品の特性のバラツキが大きく影響している。このため、入力電流の検知バラツキを正確に検知し、その検知バラツキを可能な限り低減させるためには、制御プログラムの検査においては電流検知回路6と5V直流電源43とフラッシュマイコン9を電気的に接続した状態で行う必要がある。
【0036】
図3は実施の形態1の誘導加熱調理器である炊飯器の炊飯シーケンスを示している。
この炊飯シーケンスは図1および図2に示したフラッシュメモリ9に記憶されている。図3に示すように、実施の形態1における炊飯シーケンスは、浸水工程、炊き上げ工程、沸騰維持工程、およびむらし工程を有して構成されている。
以下、図1、図2および図3を参照しつつ、実施の形態1における炊飯シーケンスについて説明する。
【0037】
浸水工程では、フラッシュマイコン9内のタイマを用いて、計時時間が第1の所定時間t1(通常20分前後)になるまで、温度検知器8の検知温度が第1の所定温度(通常55℃前後)になるように内釜1が加熱される。このとき、フラッシュマイコン9はIGBT26をオンオフ制御し、誘導加熱コイル2に高周波電流を流している。浸水工程における加熱手段である誘導加熱コイル2への入力電流の設定値はIs1である。浸水工程は、糊化温度よりも低温の水に米を浸し、予め米に吸水させておくことにより、浸水工程より後の工程において、米の中心部まで十分に糊化させるために設定されている。また、浸水工程は、米に含まれるアミラーゼにより澱粉を分解しグルコースを生成させる工程でもあり、この工程において、飯の甘味を生み出すのである。
【0038】
次に、浸水工程終了後、炊き上げ工程に移行する。炊き上げ工程では、図3に示すように、温度検知器8の検知温度が第2の所定温度T2(水の沸点(通常100℃近傍))になるまで、内釜1を加熱するものである。この時、内釜1の温度を素早く立ち上げるために、最初の数秒間、入力電流の設定値をIs2に設定する。図3から明らかなように、炊き上げ工程における設定値Is2は、浸水工程における設定値Is1より高い値に設定されている。
【0039】
なお、炊き上げ工程では、温度検知器8の検知温度により誘導加熱コイル2を制御したが、別途、内釜1の開口部を覆う蓋の温度を検知する蓋温度検知手段を設け、この蓋温度検知手段の検知温度が所定温度に達するまで、誘導加熱コイル2が内釜1を加熱することも可能である。
【0040】
引き続き、炊き上げ工程終了後、沸騰維持工程に移行する。沸騰維持工程においては、内釜1に水が存在する間は、温度検知器8の検知温度が、図3に示すように、第2の所定温度(水の沸点(通常100℃近傍))で沸騰状態を維持するように、フラッシュマイコン9がIGBT26のオン時間を制御して、誘導加熱コイル2に高周波電流を供給し、内釜1を加熱する。そして、沸騰維持工程の時間が経過していくと、内釜1内の水が蒸発して、内釜1内に水がなくなり、内釜1の温度が急激に上昇する。温度検知器8の検知温度が、第3の所定温度(水の沸点以上(通常130℃近傍))に到達すると、フラッシュマイコン9は内釜1内に水がなくなったと判断して、沸騰維持工程を終了する。この沸騰維持工程は、米澱粉を糊化させる工程であり、炊飯後の飯の糊化度は100%近くに達するが、この工程終了時には糊化度は50〜60%程度となる。
【0041】
次に、むらし工程に進む。むらし工程では、図3に示すように、フラッシュマイコン9のタイマによる計時時間が第2の所定時間t2(通常15分前後)になるまで、温度検知器8の検知温度が第2の所定温度(通常100℃近傍)で維持するように、フラッシュマイコン9がIGBT26をオンオフ制御して、誘導加熱コイル2に高周波電流を供給し、内釜1を加熱する。むらし工程は沸騰維持工程に引き続き、米澱粉を糊化させる工程であり、むらし工程の開始時には糊化度は50〜60%程度であったものが、むらし工程終了時、すなわち、炊飯終了時には、糊化度は100%近くに達する。
【0042】
上記のように構成された実施の形態1の炊飯器において、入力された電源電圧が同じであっても電気回路を構成する部品等のバラツキにより検出された電力値は僅かに変動しているため、個々の炊飯器において同じ設定値の炊飯シーケンスプログラム18で動作させると、内釜1を加熱する電力が異なるため、異なる炊飯状態となる場合が生じる。
【0043】
しかし、実施の形態1の炊飯器においては、フラッシュマイコン9のフラッシュメモリ14にはテストプログラムである電力テストプログラム17が格納されており、後述する検査機22を炊飯器に接続して、電力テストプログラム17を実行することにより、当該炊飯器を構成するフラッシュマイコン9が検知した値を知ることができる。なお、電力テストプログラム17はフラッシュメモリ14とは別の記憶手段であるROMを設け、そのROMに格納しても良い。
【0044】
次に、例えば、1200Wの炊飯器において、検査機22により電力テストプログラム17を実行する動作について図4を参照しつつ説明する。図4は電力テストプログラム17を実行するフローチャートである。
【0045】
図4において、ステップ101では、カレントトランス27の1次巻線に設定電流である12Aの電流を供給する。
ステップ102では、フラッシュマイコン9が検知した電流検知回路6の検出値をデジタル値に変換して検査機22に出力する。カレントトランス27の1次巻線に12Aの電流を供給したとき、電流検知回路6が検出する標準値は、例えば4Vであり、その4Vに相当するデジタル値が(0xcc)であっても、実際の検出値が、例えば3.8Vであれば、その3.8Vに相当するデジタル値(0xc2)が検出データIsnewとして検査機22に出力される。
【0046】
ステップ103においては、検出データIsnewが当該炊飯器のカレントトランス27の1次巻線に12Aが流れた時のフラッシュマイコン9に入力される電圧であるため、この検出データIsnewのデジタル値(0xc2)が新たな入力電流設定値Isとして、後述するフラッシュマイコン書込器10によりフラッシュマイコン9に書き込まれる。
このように電力テストプログラムを実行することにより、目標電流(例えば12A)が入力されたときのフラッシュマイコン9の検知電圧を検出し、その検出された電圧を新たな設定値の電源電圧基準値として、炊飯シーケンスプログラム18が書き換えられる。
【0047】
なお、カレントトランス27に大電流である12Aを流すには検査設備を大型化する必要がある。そこで、カレントトランス27の1次巻線に12Aの大電流を流さずにカレントトランス27の2次巻線からの出力電流に相当する電流値を検査器22から供給する下記に説明する疑似電流入力方法を用いても良い。
【0048】
疑似電流入力方法について具体的に説明する。
まず、カレントトランス27の1次巻線と2次巻線の比率により電流比率を推定する。例えば、1次巻線が1ターン、2次巻線が3000ターンであれば、1次巻線に12A流れたときは、2次巻線にはその1/3000の4mAが流れる。そこで、ダイオードブリッジ28の入力側に4mAの定電流源を接続し、その時のフラッシュマイコン9の読み込み値がデジタル値でいくつであるかを検出する。ただし、この疑似電流入力方法にはカレントトランス27のバラツキが含まれないため、予めカレントトランス27の1次巻線と2次巻線の電流比を測定しておき、そのデータを基に各基板ごとに定電流源の電流値を変更し、調整するように構成しても良い。
【0049】
上記のような入力電流検出方法を用いることにより、炊飯器に組み込む前の基板状態において電力調整が可能となり自動検査器の使用が可能となる。即ち、バラツキ調整時に人が機械に触れる必要がなくなり、調整時に製品に傷を付けたり、製品が壊れたりすることが防止される。
【0050】
実施の形態1の炊飯器において、フラッシュメモリ14に格納された炊飯シーケンスプログラム18における設定値を書き換える場合には、フラッシュマイコン9の入出力回路16にフラッシュマイコン書込器10を接続する。フラッシュマイコン書込器10は、フラッシュ書込プログラム20がその記憶手段に格納されており、中央処理装置(CPU)19により入出力回路21を介して接続されたフラッシュマイコン9の炊飯シーケンスプログラム18が書き換えられる。フラッシュ書込プログラム20にしたがって、検査器22が検知したフラッシュマイコン9からの出力値が新しい設定値として入力され、その結果、フラッシュメモリ14に格納されている全ての炊飯シーケンスプログラム18に対して当該炊飯器に対応した設定値が入力される。
【0051】
なお、実施の形態1の炊飯器においては電流検知回路6にカレントトランス27が用いられており、前述のようにカレントトランス27においても個々でバラツキが存在するため、個々のカレントトランス27における偏差を示すデータを予め入手し、そのカレントトランス27のデータをテストプログラムに書き込んでおき、当該カレントトランスの偏差を考慮に入れた設定値を算出するよう構成しても良い。なお、各カレントトランスにその特性値が書き込まれたICチップを張り付けておき、製品組立時に各カレントトランスの特性を読み込み、その読み込んだ特性値を考慮した炊飯シーケンスプログラム18を形成しても良い。
【0052】
また、実施の形態1の誘導加熱調理器においては、フラッシュマイコン9に設けられた入出力回路16を無線による双方向通信が可能な構成としても良い。このように構成された誘導加熱調理器においては、フラッシュマイコン9に格納されたプログラムの書き換え用接続端子に接続するための、例えば開口(接続端子用孔)を特別に設ける必要がなく、外観設計における規制を少なくすることができる。
【0053】
[実施の形態2]
次に、本発明に係る実施の形態2の誘導加熱調理器について説明する。実施の形態2の誘導加熱調理器として、炊飯器を例に挙げて説明する。
【0054】
実施の形態2の誘導加熱調理器である炊飯器においては、前述の実施の形態1の炊飯器と同様にフラッシュマイコンが用いられており、このフラッシュマイコンのフラッシュメモリに電力テストプログラムの他に更正プログラムが記憶されている。なお、この更正プログラムは別の記憶手段であるROMに格納するよう更正しても良い。実施の形態2の誘導加熱調理器である炊飯器においては、実施の形態1の炊飯器と実質的に同様の構成を有しているため実施の形態1において用いた符号を適用して説明する。
【0055】
実施の形態2の炊飯器において用いられている更正プログラムは、製品として出荷され、使用された後の状態において、当該炊飯器における電気回路の特性を検出し、検出された検査データに基づき、制御プログラムである炊飯シーケンスプログラム18を更正するものである。使用後の炊飯器における電気回路を構成する部品等においては、経年変化等により、当該炊飯器の特性が変化する場合がある。そのような場合に、炊飯器においては予め設定している設定電力と異なる電力で炊飯シーケンスプログラム18が動作し、美味しい飯が炊けない等の問題が発生するときがある。このような場合に、実施の形態2の誘導加熱調理器においては、フラッシュメモリ9又はROMに記憶されている更正プログラムを実行して、誘導加熱調理器における電気回路の特性を検出し、検出された検査データに基づき炊飯シーケンスプログラム18を更正するものである。
【0056】
実施の形態2の炊飯器においては、更正プログラムおよびフラッシュ書込器10のフラッシュ書込プログラムを実行する場合、まず、安定化交流電源と電力計と電圧計が必要である。
以下、実施の形態2の炊飯器において、更正プログラムおよびフラッシュ書込プログラムを実行する場合の動作について図5を参照しつつ説明する。図5は更正プログラムおよびフラッシュ書込プログラムを実行する場合のフローチャートである。
【0057】
図5において、ステップ201では、炊飯器において更正プログラムを開始し、1200Wで動作するモードに設定する。しかし、実際は経年変化などにより電気回路部品、特に電解コンデンサの定数が変動し、例えば1180W程度で動作している場合がある。
【0058】
ステップ202において、当該炊飯器の実際の入力電力が1200Wであるか否かが検出される。ステップ202において入力電力が例えば1180Wであった場合、当該炊飯器の特定の操作スイッチに対して所定の操作(例えば、炊飯器に設けられたパワー調整スイッチをオン状態とする)を行うことにより、フラッシュマイコン9内部の入力電流設定値が変更される(ステップ203)。実施の形態2においては、操作スイッチにおけるパワー調整スイッチを押圧することにより入力電力の調整ができるよう構成されている。
【0059】
ステップ202では当該炊飯器の入力電力が1200Wになったか否かを電力計によりサービスマンが確認する。入力電力が1200Wとなった場合には、そのときにフラッシュマイコン9が設定している入力電流設定値(Isnew)を検査器22に出力する(ステップ204)。
ステップ205では、検査器22が検出した入力電流設定値(Isnew)を新しい設定値Isとして、フラッシュマイコン書込器10がフラッシュマイコン9に対して、フラッシュ書込プログラム20によりデータ書き込みを行う。
【0060】
上記のように構成された実施の形態2の誘導加熱調理器は、工場から出荷後のユーザの使用時において、制御プログラムの通りに動作しない場合、更正プログラムを起動することにより、当該誘導加熱調理器の制御プログラムにおける設定値(電力設定値、温度設定値、計時設定値等)の確認が可能となる。もし、制御プログラムの設定値等が当該誘導加熱調理器に適合しなくなっている場合には、検査データにより更正されて当該誘導加熱調理器に適合した制御プログラムがフラッシュマイコン9に格納される。この結果、実施の形態2の誘導加熱調理器においては、制御プログラムの更正を容易に行うことが可能であり、信頼性が高く寿命の長い誘導加熱調理器を提供することが可能となる。
【0061】
なお、実施の形態2の誘導加熱調理器においては、検査器22を用いて更正プログラムを起動するよう構成されているが、誘導加熱調理器の電源線を介した伝送回線によりメーカ側から検査指令を出力し、その検査指令に応じて更正プログラムが起動するよう構成することも可能である。この場合、更正プログラムが起動され、検出された検査データにより制御プログラムが更正される。このような更正処理は、電源線を介した伝送回線を通じて中央に集められ、中央で更正処理の推移が管理される。もし、中央において更正処理において問題等が検知された場合には、即当該誘導加熱調理器を使用しているユーザに連絡され、適切な処理が施される。
【0062】
[実施の形態3]
次に、本発明に係る実施の形態3の誘導加熱調理器について説明する。実施の形態3の誘導加熱調理器においても、炊飯器を例に挙げて説明するが、本発明の誘導加熱調理器としては炊飯器に限定されるものではなく、誘導加熱を用いて制御プログラムに基づいて動作する調理器であれば適用可能である。
【0063】
実施の形態3の誘導加熱調理器である炊飯器は、フラッシュメモリに炊飯シーケンス書込プログラムが格納されている。その他の構成は、前述の実施の形態1の誘導加熱調理器と実質的に同じ構成であるため、実施の形態1の説明において用いた符号を適用する。炊飯シーケンス書込プログラムは、実施の形態2において説明した更正プログラムとフラッシュ書込プログラムを組み合わせたものであり、当該炊飯器自体において検査データに基づいて炊飯シーケンスプログラム18を書き直すものである。
【0064】
炊飯器を長期間使用した結果、電気回路を構成する部品に経年変化等により、炊飯器における特性が変わっていく。実施の形態3の炊飯器においては、そのように特性が変わった場合に、そのときの特性に合わせて自己解決型で炊飯シーケンスプログラム18を書き換え更正するものである。炊飯シーケンスプログラム18をそのときの特性に対応して書き換える場合、当該炊飯器の操作部におけるスイッチ操作により炊飯シーケンス書込プログラムの更正プログラムをまず起動する。この更正プログラムを起動するときは内釜1に所定量の水を入れた状態で行われる。更正プログラムが起動すると疑似炊飯動作が開始され、電力データ、温度データ、計時データ等が検査データとして検知される。
【0065】
炊飯シーケンス書込プログラムにおいて、検知された検査データに基づいて炊飯シーケンスプログラム18の設定値が書き換えられ、当該炊飯器に最適な炊飯シーケンスプログラム18が形成される。なお、この炊飯シーケンス書込プログラムにおいては、当該炊飯器の稼働時間や使用頻度等が考慮されて、検査データの調整が行われている。ただし、メーカ側で予め決めていた稼働保証時間、使用保証期間等を超過していた場合には、当該炊飯シーケンス書込プログラムは起動しないよう構成されている。
【0066】
上記のように構成された実施の形態3の誘導加熱調理器は、自己解決型であるため制御プログラムの更正を特殊の器具を用いることなく容易に、且つ確実に行うことができる。したがって、実施の形態3の誘導加熱調理器は、結果として長期間、所望の制御プログラムが確実に動作して、美味しい飯を炊くことが可能となる。
【0067】
[実施の形態4]
図6は本発明に係る実施の形態4の誘導加熱調理器の回路部品の主要部を実装した基板を示す概略図である。図6において、61はフラッシュマイコンであり、第1の基板62に実装されている。図6においてフラッシュマイコン61を点線で示しているのは、第1の基板62の背面(裏側)に実装されているためである。68はコネクタであり、フラッシュマイコン61の入出力回路に接続し、第1の基板62に実装されている。
【0068】
第1の基板62には、特に図示していないが、操作部および表示部に使用される部品が実装されている。例えば、LCD、LED、モーメンタリスイッチなどが第1の基板62に実装されている。
第1の基板62とケーブル68を介して電気的に接続された第2の基板67には、電流検知回路63、半波整流平滑回路64、スイッチング電源65、および5V直流電源66が実装されている。また、第2の基板67には、特に図示していないが、インバータ回路を構成するスイッチング素子や商用電源を整流するダイオードブリッジ、高周波ノイズをフィルタするコンデンサなどが実装されている。
制御プログラムの検査時において、第1の基板62と第2の基板67は機械的に接続された状態であり、検査後において、第1の基板62と第2の基板67は分割されて、炊飯器内部に組み込まれる。
【0069】
前述の実施の形態1の炊飯器において説明したように、入力電流の検知バラツキの要因は電流検知回路63の入力電流に対する出力電圧のバラツキと、5V直流電源66の出力電圧のバラツキにある。このため、図6に示すように、検査時においてフラッシュマイコン61と電流検知回路63と5V直流電源66が電気的に接続状態であれば、入力電流の検知バラツキの要因を含んだ状態で検査を行うことができ、そのときのフラッシュマイコン61が検出した入力電流値には検知バラツキの要因が含まれている。このとき検出したフラッシュマイコン61の入力電流値を新しい入力電流設定値とすれば、入力電流の検知バラツキのない誘導加熱調理器を実現できる。
また、実施の形態4では、フラッシュマイコン61の入出力回路とコネクタ68が接続されている。このような構成にすることにより、炊飯器に基板を組み込んだ後でも、コネクタ68を通じてフラッシュマイコン61と検査器やフラッシュマイコン書込器を接続し、有線で通信することができる。従って、例えば、炊飯器の長期使用により、電流検知回路63や5V直流電源66の電気的特性が経年変化したとしても、コネクタ68を通じてフラッシュマイコン61と検査器を有線で通信し、更正プログラムを実施することにより、入力電流のバラツキを抑えることができる。
【0070】
なお、実施の形態4の炊飯器におけるフラッシュマイコン61、電流検知回路63、半波整流平滑回路64、スイッチング電源65、および5V直流電源66は、前述の実施の形態1の炊飯器におけるフラッシュマイコン9、電流検知回路6、半波整流平滑回路41、スイッチング電源42、および5V直流電源43にそれぞれが相当するものである。
また、実施の形態4では、フラッシュマイコン61の入出力回路にコネクタ68を接続し、検査器やフラッシュマイコン書込器と有線通信できるようにしているが、コネクタ68の変わりに無線アンテナを接続し、検査器やフラッシュマイコン書込器と無線で通信できるよう構成することも可能である。
【0071】
実施の形態4の構成においては、炊飯器への組み込み前の基板状態でバラツキ調整を行うことが可能となり、誘導加熱調理器の組立後の調整をなくすことができる。基板状態で検査、バラツキ調整を行えば、組立完成品で検査、バラツキ調整を行うよりも、検査する場所を節約することができ、工場の省スペース化を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、誘導加熱により加熱調理する誘導加熱調理器において、個々の誘導加熱調理器固有の特性を考慮した制御プログラムが実行されるため、所望の調理を確実に行うことが可能となり、汎用性が高く有用である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係る実施の形態1の誘導加熱調理器としての炊飯器の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る実施の形態1の炊飯器の構成を一部ブロック図で示した回路図である。
【図3】本発明に係る実施の形態1の誘導加熱調理器である炊飯器の炊飯シーケンスを示すグラフである。
【図4】本発明に係る実施の形態1の誘導加熱調理器における電力テストプログラム17を実行するフローチャートである。
【図5】本発明に係る実施の形態2の誘導加熱調理器における更正プログラムおよびフラッシュ書込プログラムを実行する場合のフローチャートである。
【図6】本発明に係る実施の形態4の誘導加熱調理器の回路部品の主要部を実装した基板を示す概略図である。
【符号の説明】
【0074】
1 内釜
2 誘導加熱コイル
3 インバータ回路
4 商用電源
5 インバータ駆動制御回路
6 電源電流検知回路
7 電源電圧検知回路
8 温度検知器
9 フラッシュマイコン
10 フラッシュマイコン書込器
11 表示部
12 操作部
13 中央演算回路
14 フラッシュメモリ
15 AD変換器
16 入出力回路
17 電力テストプログラム
18 炊飯シーケンス
19 中央処理装置
20 フラッシュ書込みプログラム
21 入出力回路
22 検査器
40 素子電圧検出回路
41 半波整流平滑回路
42 スイッチング電源
43 5V直流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラッシュメモリを内蔵したマイクロコンピュータを有し、前記フラッシュメモリには誘導加熱調理器を駆動制御するための制御プログラムが記憶されており、前記マイクロコンピュータには前記フラッシュメモリ内に記憶された前記制御プログラムを書き替えるために外部装置との通信を行う入出力回路が設けられた誘導加熱調理器。
【請求項2】
入力電流を検知する電流検知手段を有し、フラッシュメモリに記憶された制御プログラムは前記電流検知手段の検出値が入力電流設定値になるように制御するプログラムを有し、前記制御プログラムの書き替え時に前記入力電流設定値を書き替え可能に設定した請求項1に記載の誘導加熱調理器。
【請求項3】
マイクロコンピュータと前記マイクロコンピュータの電源回路と電流検知手段は、制御プログラムの検査時に電気的に接続されるよう構成された請求項2に記載の誘導加熱調理器。
【請求項4】
交流電源の電圧を検知する電源電圧検知手段を有し、フラッシュメモリに記憶された制御プログラムは前記電源電圧検知手段の検出値と電源電圧基準値に基づいて、入力電流設定値を補正するように制御するプログラムを有し、前記フラッシュメモリの書き替え時に前記電源電圧基準値を書き替え可能に設定した請求項2または3のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項5】
被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルを通電、遮断するスイッチング素子と、前記スイッチング素子の両端電圧を検知する素子電圧検知手段と、を有し、
フラッシュメモリに記憶された制御プログラムは、前記素子電圧検知手段の検出値が素子電圧上限値を超えないように前記スイッチング手段のオン時間を制御するプログラムを有し、前記フラッシュメモリの書き替え時に前記素子電圧上限値が書き替え可能に設定された請求項2乃至4のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項6】
誘導加熱調理器が炊飯器であり、フラッシュメモリに記憶された制御プログラムは炊飯シーケンスプログラムを有し、前記炊飯シーケンスプログラムには入力電流設定値がデータとして入力されている請求項2乃至5のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項7】
フラッシュメモリに記憶された制御プログラムはテストプログラムを有し、前記テストプログラムを実行することにより、電流検知手段の検出値を出力するように構成された請求項2乃至6のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項8】
フラッシュメモリに記憶された制御プログラムはテストプログラムを有し、前記テストプログラムを実行することにより、電流検知手段の検出値と電源電圧検知手段の検出値を出力するように構成された請求項2乃至6のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項9】
フラッシュメモリに記憶された制御プログラムはテストプログラムを有し、前記テストプログラムを実行することにより、電流検知手段の検出値と電源電圧検知手段の検出値と素子電圧検知手段の検出値を出力するように構成された請求項2乃至6のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項10】
フラッシュメモリを内蔵したマイクロコンピュータを有する誘導加熱調理器の製造方法であって、
前記誘導加熱調理器は、前記フラッシュメモリ内に記憶された制御プログラムを書き替えるために外部装置との通信を行う入出力回路と、入力電流を検知する電流検知手段と、交流電源の電圧を検知する電源電圧検知手段と、誘導加熱コイルを通電、遮断するスイッチング素子の両端電圧を検知する素子電圧検知手段と、を有し、
前記マイクロコンピュータがテストプログラムを実行して、前記電流検知手段の検出値、前記電源電圧検知手段の検出値、および前記素子電圧検知手段の検出値を送信データとして外部装置に送信し、
前記外部装置は前記送信データに基づき入力電流設定値、電源電圧基準値、および素子電圧上限値を変更した制御プログラムを前記フラッシュメモリに書き込む誘導加熱調理器の製造方法。
【請求項11】
外部装置による制御プログラムの書き替えが製品組立前の基板実装状態で行われる請求項10に記載の誘導加熱調理器の製造方法。
【請求項12】
マイクロコンピュータと外部装置との通信が入出力端子に接続された有線通信手段を介して行われる請求項10に記載の誘導加熱調理器の製造方法。
【請求項13】
マイクロコンピュータと外部装置との通信が無線通信手段を介して行われる請求項10に記載の誘導加熱調理器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−206673(P2008−206673A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45519(P2007−45519)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】