誘導加熱調理器
【課題】棒状の高透磁率材料を多く配置した場合、径方向中心で高透磁率材料が密になり加熱コイル用の風路がなくなり、加熱コイルが冷却できない問題があった
【解決手段】中心部に設けられた第1のコイル体21及びこの第1のコイル体21の外周囲にリング状の間隙を介して配設された第2のコイル体22からなる調理器具を加熱するための円形状の加熱コイル2と、この加熱コイル2に電流を通電する駆動回路と、上記加熱コイル2の一側に放射状に配置された複数の高透磁率部材49を備えた誘導加熱調理器において、上記高透磁率部材49は、上記第1のコイル体21の直下に対応する位置の上部に凹部49bが形成されてなるものである。
【解決手段】中心部に設けられた第1のコイル体21及びこの第1のコイル体21の外周囲にリング状の間隙を介して配設された第2のコイル体22からなる調理器具を加熱するための円形状の加熱コイル2と、この加熱コイル2に電流を通電する駆動回路と、上記加熱コイル2の一側に放射状に配置された複数の高透磁率部材49を備えた誘導加熱調理器において、上記高透磁率部材49は、上記第1のコイル体21の直下に対応する位置の上部に凹部49bが形成されてなるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は誘導加熱調理器に関し、さらに詳細には加熱コイルの冷却性を確保しつつ加熱コイルの半径方向の発熱密度を均一化した誘導加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
IHクッキングヒータや炊飯器などの誘導加熱調理器では、円形状の加熱コイルに数十kHzの交流の電流を通電し、導電体からなる鍋や釜などの調理器具に流れる電流で調理器具を加熱する。調理器具に対する発熱効率を向上させるため、加熱コイルの下にフェライトなどの高透磁率部材を配置して加熱コイルが発生する磁束を集める方法が採られるが、高価なフェライトの量を極力少なくするために、一般に径方向に沿って棒状のフェライトを複数配置する。例えば、IHクッキングヒータにおいてフェライトの幅を径方向に沿って一定の形状としたものを十字状に配置し、中心部を空隙としたものがある(例えば、特許文献1参照)。一方、IH炊飯器において径方向に沿って一定の割合で幅を増大させた棒状のフェライトを十字状に配置し、中心部を空隙としたものがある(例えば、特許文献2参照)。また、上記特許文献1の第7図には、調理器具の温度分布を均一化するために幅が一定のブロック状のフェライトを、発熱密度の低い中心部近傍と最外周部に分割配値した例が示されている。
【0003】
【特許文献1】特開昭59−25194号公報(第2頁、第1図、第7図)
【特許文献2】特開2003−332034号公報(第1頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フェライトの幅を径方向に沿って一定にした場合、例えば半径100mmの調理器具(鍋)底の半径方向の発熱密度を計算すると、図17の参考図に示すように、調理器具底面中心部からの距離R=0の中心部近傍と外周部近傍が低く、中心部と外周部との中間部が高い曲線となる。従って、中心部近傍と外周部分にフェライトを極力多く配置して磁束を集中させることで半径方向の温度分布を均一化することが考えられる。上記特許文献1の第1図に示された従来技術では全体的な発熱効率は改善されるものの、フェライトが半径方向に均一断面であるため温度分布の均一化は困難である。上記特許文献1の第7図に示された従来技術では、中心部近傍と外周部分にフェライトが配設されているので、一定の温度分布の均一化は期待できるものの、フェライトが径方向に分割されており、幅も一様なので細かく鍋の発熱密度分布を調整できない。またフェライトを多数箇所に分散して設置するので組立に手間を要する課題があった。
【0005】
また、上記特許文献2に示された従来技術では半径方向に沿ってR=0の中心部に近づくにつれて、フェライトの幅が細くなっているため、半径方向に沿った発熱密度分布は、発熱密度のピークより内側のR=0近傍では更に発熱密度が低下する問題があった。なお、参考までに中心部の発熱効率のみに着目して発熱効率を上げるためには、図18の参考図に示すように、円形状の加熱コイル100に対し、フェライトなどの高透磁率部材200をR=0近傍で埋め尽くす必要があり、このような構成では加熱コイル1の冷却が困難になるという課題もあった。
【0006】
この発明は上記のような従来技術の課題を解消するためになされたもので、発熱効率を高めつつ径方向に沿った発熱密度分布が均一化され、しかも加熱コイルの中心部の冷却を図ることができる誘導加熱調理器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る誘導加熱調理器は、中心部に設けられた第1のコイル体及びこの第1のコイル体の外周囲にリング状の間隙を介して配設された第2のコイル体からなる調理器具を加熱するための円形状の加熱コイルと、この加熱コイルに電流を通電する駆動回路と、上記加熱コイルの一側に放射状に配置された複数の高透磁率部材を備えた誘導加熱調理器において、上記高透磁率部材は、上記第1のコイル体の直下に対応する位置の上部に凹部が形成されてなるものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明においては、高透磁率部材を、中心部に設けられた第1のコイル体の直下に対応する位置の上部に凹部が形成されたものとしたことにより、高透磁率部材の量を最適にしながら発熱効率を高めつつ、半径方向に対する発熱密度分布を均一化し、加熱コイルの半径方向中心部を冷却する風路も確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による誘導加熱調理器の要部を模式的に説明する図であり、(a)は高透磁率部材の形状及び加熱コイルに対する配置を示す背面図、(b)は高透磁率部材を示す平面図、図2は図1(a)の側面断面図である。図において、誘導加熱調理器1は、円形状の加熱コイル2、この加熱コイル2に高周波電流を通電する駆動回路3、及び加熱コイル2の背面側(下側)に放射状に配設された複数(この例では8本)の高透磁率部材としてのフェライト4などを備えて構成され、周方向に隣接するフェライト4の間の空間は加熱コイル2を冷却するための風路5を形成している。鍋や釜などの調理器具6は、加熱コイル2の上部に設けられた図示省略している天板の上に載置される。なお、高透磁率部材としては一般にフェライトが用いられるので、以下特に区別を要しない限りフェライトと称する。
【0010】
上記各フェライト4は、加熱コイル2の中心軸θに平行な方向の厚さが略一様で、半径方向には、最内周部Aと中間部Bは幅が狭く、即ち小断面積部4a、4bとして構成され、これら最内周部Aと中間部Bとの間の中心部近傍に、該小断面積部4a、4bよりも幅が広く、即ち断面積が大きく形成された第1の大断面積部4cが形成されている。そして、フェライト4は中間部Bの小断面積部4bから最外周部Cに向けて幅広に形成され、最外周部Cも第2の大断面積部4dとして構成された例えば1本の棒状に形成されている。
【0011】
また、隣接するフェライト4の小断面積部4a相互の間には風路5を構成する所定の空隙5aが設けられ、加熱コイル2の外側から中心に至るまで風路5が放射状に確保されている。上記中間部Bの小断面積部4bは図17に示す半径方向の発熱密度分布における略ピーク付近に対応する位置に設定され、第1の大断面積部4cはそれより中心部側に、第2の大断面積部4dは発熱密度が低い最外周部C位置に対応するように設けられている。なお、本書において中間部Bは最内周部Aと最外周部Cの間の部分を意味しており、寸法的に2分の1付近の位置のみに限定されるものではない。その他の構成は従来装置と同様である。
【0012】
次に、上記のように構成された実施の形態1の動作について説明する。駆動回路3により加熱コイル2に高周波電流を通電すると、加熱コイル2のまわりに磁束が発生するが、加熱コイル2の近傍にフェライト4が設置されていることにより、フェライト4に誘導磁化が生じ、その結果フェライト4を通る磁束が増加してフェライト4部の磁気回路が低抵抗になり、調理器具6に侵入する磁束も増えて発生する渦電流も増加し、調理器具6の発熱密度及び加熱効率も増加する。
【0013】
この実施の形態1では、フェライト4の幅を広げて形成された第1の大断面積部4cが最内周部Aの近傍に、第2の大断面積部4dが最外周部Cに位置するように加熱コイル2の下面に放射状に配設されていることにより、図17に示す発熱密度が低くなる部分での発熱密度が向上され、調理器具6に対する半径方向の発熱密度分布が均一化される。また、加熱コイル2の中心部近傍では、隣接するフェライト4相互の間に空隙5aがあることにより、フェライト4による磁束密度の向上は若干犠牲にされることになるが、加熱コイル2の中心に至る風路5が確保されることにより、加熱コイル2に対して必要な冷却が行なわれる。
【0014】
上記のように、実施の形態1によれば、加熱効率を高めながら調理器具6に対する半径方向の発熱密度分布が均一化され、しかも加熱コイル2の風路5が確保できることで加熱コイル2の冷却を充分に行なえる誘導加熱調理器を得ることができる。調理器具6の温度分布が径方向に沿って一定に近づけられたことで、食材を均一に加熱できる。また、発熱密度が高い半径方向におけるフェライト4の中間部Bの幅を狭くしたことにより、高価なフェライト量を低減できる。また、一体的に形成された同一形状のフェライト4を放射方向に配置すればよいので、構成が簡単で組立も容易にできる。なお、フェライト4は必ずしも一体的なものに限定されず、分割されたものでも発熱密度分布の均一化と加熱コイル2の冷却を高めることができる。
【0015】
実施の形態2.
図3はこの発明の実施の形態2に係る誘導加熱調理器の要部を模式的に示すもので、(a)は高透磁率部材と加熱コイルを示す背面図、(b)は側面断面図である。この実施の形態2は、上記実施の形態1においてはフェライト4の断面積を半径方向に沿って幅を変えたのに対し、厚みを変えることで断面積を半径方向に変えたものである。即ち、フェライト41の平面形状は、加熱コイル2の半径方向に中間部Bより外側は一定の幅で形成され、中間部Bの中心寄りから最内周部Aにかけて先細りに形成されている。
【0016】
そして、フェライト41の厚さは、図3(b)に示すように最内周部Aの若干外周部寄り、及び中間部Bが薄く、それぞれ小断面積部41a、及び小断面積部41bとして形成され、最内周部Aと中間部Bの間、及び最外周部Cが厚く、それぞれ大断面積部41c、及び大断面積部41dが形成されている。なお、この例では最内周部Aの先端部41eも厚く形成されているが、幅が狭くなっているので断面積は必ずしも大きくはない。なお、図では最内周部Aで隣接するフェライト41相互がほとんど接触しているが、実施の形態1と同様に空隙を設けて風路を広げることもできる。その他の構成は上記実施の形態1と同様である。
【0017】
上記のように構成された実施の形態2においては、実施の形態1と同様に、発熱密度が低い最内周部Aの近傍、及び最外周部C近傍の位置では、フェライト41の断面積を厚みを増やすことで大きくし、発熱密度がピークとなる中間部B近傍の位置では厚みを薄くしたことにより、フェライトの幅を増加させた場合と同様、発熱密度分布を均一化できる効果が得られる。また、風路を確保することもできる。また、特に加熱効率が悪化する最内周部Aに近い先端部41eの厚みを増大させたことにより、R=0付近の加熱効率を向上できる。なお、半径が大きい場合には、周方向に沿った長さが長くなり、広い面積で厚みが増え、図示省略している回路基板や装着された機器類との干渉が問題になる場合があるので、フェライト41の幅を広げる方式と組み合わせるようにしても良い。また、R=0近傍の中心付近ではフェライト41が下方へ突出する部分の割合も小さく、基板等の機器との干渉も起こり難い。
【0018】
実施の形態3.
図4はこの発明の実施の形態3に係る誘導加熱調理器の要部を模式的に示す側面断面図である。図において、加熱コイル2の下部に配設されたフェライト42は、中間部より外周側に配設された透磁率が一般的なレベルで安価に得られる第1の高透磁率材料42aと、この第1の高透磁率材料42aの中心部側に隣接して配設された透磁率がさらに高い第2の高透磁率材料42bからなり、第1の高透磁率材料42aの部分は断面積に換算して略実施の形態1と同様に幅を加熱コイル2の半径方向に変化させることで発熱密度分布の均一化を図ったものである。
【0019】
上記のように構成された実施の形態3では、実施の形態1または2において、フェライトの幅や、厚みを増やして断面積を増大させた部分を、より高透磁率である第2の高透磁率材料42bを用いて構成することで低抵抗化を図り、最内周部Aの加熱コイル2を冷却するための風路を確保しつつ発熱密度分布の均一化を図ったもので、実施の形態1または2と同様な効果が得られる他、透磁率がより高い第2の高透磁率材料42bを用いたことで、厚さの増大量を抑えることができるので、装置をコンパクトにできる効果も得られる。なお、より高透磁率である第2の高透磁率材料42bの配設位置は図4に例示したものに限定されないことは言うまでもない。例えば、最外周部Cの部分に第2の高透磁率材料42bを追加し、あるいは第1の高透磁率材料42aの最外周部Cに対応する部分を第2の高透磁率材料42bに置き換えても良い。
【0020】
実施の形態4.
図5はこの発明の実施の形態4に係る誘導加熱調理器の要部を模式的に示す側面断面図、図6はその変形例を示す側面断面図である。図5において、フェライト43は、中間部Bより外周側に位置する第1の部分43aと、この第1の部分43aの中心部側に段部を介して隣接する第2の部分43bからなり、第2の部分43bと加熱コイル2の下面との間には風路5(図示されていない)に連通する隙間51が形成されている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0021】
この実施の形態4では、最内周部AのR=0付近にフェライト43と加熱コイル2の間に形成された大きな隙間51に冷却風が通流されることにより、加熱コイル2の中心部がより効率的に冷却され、例えば実施の形態1のようにフェライト4を密集させたことによって冷却効率が不足する恐れを解消できる。なお、図6の変形例に示すように、第1の部分43aの中心部側に段部を介して隣接する第2の部分43cの厚みを増大させ、あるいは透磁率がより高い材料を使用することで、加熱コイル2との距離を大きくしたことによる加熱効率の悪化を防止することもできる。
【0022】
実施の形態5.
図7〜図10はこの発明の実施の形態5による誘導加熱調理器の要部を説明するもので、図7は高透磁率部材及び加熱コイル部分を模式的に示す背面図、図8はその側面断面図、図9は図7に示す構成での調理器具底部での発熱密度を示す図、図10は図7の変形例を示す背面図である。図において、加熱コイル2は中心部に配設された円形状の第1のコイル体21と、この第1のコイル体の外周囲に円形リング状の間隙Dを介して配設された第2のコイル体22からなり、間隙Dには調理器具6の温度を検知するための複数の温度センサ7が設けられている。そしてフェライト44は、厚さが略一定で、半径方向に間隙Dに対応する位置に幅を広げた大断面積部44aが形成されている。
【0023】
上記構成における調理器具6の温度分布を解析計算した結果を図9に示す。図9より、2分割されてコイルがない間隙D部分の直上の調理器具6の中間部Bに対応する位置では、加熱コイル2の磁界が低く発熱効率が落ちるが、フェライト44の大断面積部44aを間隙D部分に対応するように配設したことで、この部分での発熱効率が向上され、調理器具6の温度分布が改善されている。なお、図10の変形例は、加熱コイル2の最外周部Cの発熱密度が低い部分に対応するフェライト45の断面積も、図1の例と同様に幅を広げた大断面積部45bとしたことで、図9に示す最外周部分の発熱効率を改善することができる。この結果、全体的に半径方向に、より均一な分布を得ることができる。更には、発熱密度が高い部分の断面積が小さく構成されることで、フェライトの量を最小化できコストを低減できる効果も得られる。なお、フェライト44または45の幅を広げる代わりに厚さを厚くし、あるいは双方を組み合せて構成しても良いことは言うまでもない。
【0024】
実施の形態6.
図11はこの発明の実施の形態6による誘導加熱調理器の要部を示す部分断面図である。図において、加熱コイル2は上記図7に示す実施の形態5と同様に径方向に間隙Dを介して2分割されている。フェライト46は、発熱密度が下がる間隙Dの中に進入するように一部が厚く形成された大断面積部46aが形成されている。その他の構成は実施の形態5と同様である。一般にフェライトは断面積が大きいほど磁束を集める効果が高いが、負荷である調理器具6から遠ざかるほど効果は小さくなる。例えばフェライト中の磁気モーメントが作る磁界は磁気モーメント位置の三乗に比例して減少する。従って、フェライトは極力調理器具6に近い方に配置した方が効果は大きい。この実施の形態6では、第1のコイル体21と第2のコイル体22の間隙Dに進入するように調理器具6に近づけて大断面積部46aが構成されていることにより、発熱効率の改善効果が高く、半径方向の温度分布を一層均一化できる。なお、例えば実施の形態5等と組み合わせて構成しても良い。
【0025】
実施の形態7.
図12及び図13はこの発明の実施の形態7による誘導加熱調理器の要部を模式的に説明するもので、図12は高透磁率部材及び加熱コイル部分を模式的に示す背面図、図13は図12のXIII−XIII線における矢視断面図に相当する図である。図において、加熱コイル2は上記図7に示す実施の形態5と同様に径方向に間隙Dを介して2分割され、空隙Dに同様の温度センサ7が複数設けられている。そしてフェライト47は、加熱コイル2の半径方向に放射状に配設され、中心付近から中心に向けて先細りとなっている他は同一の幅で形成された棒状のフェライト本体47aと、間隙Dにおける隣接するフェライト本体47a相互の間にそれぞれ設置されたブロック状高透磁率部材47bとからなっている。
【0026】
上記のように構成された実施の形態7においては、発熱密度分布が悪化する2分割コイルの間隙Dの領域に磁束を集中させるブロック状高透磁率部材47bを配設したことにより、加熱コイル2の半径方向に対する温度分布の均一化を図ることができる。また、この間隙D部はコイル体が存在せず、従ってコイル体の冷却を必要としない位置であり、また中心と最外周の中間部であることから周方向のスペースも相応に大きいので、ブロック状高透磁率部材47bを調理器具6に近接させて多数配置することも可能であり、温度分布を容易に均一化できる。また、加熱コイル2冷却の悪化の問題も生じない。なお、フェライト本体47aの幅は径方向に沿って一定としたが、間隙Dに対応する部分及び最外周部Cを例えば図10のように幅広に形成しても良い。
【0027】
実施の形態8.
図14及び図15はこの発明の実施の形態8による誘導加熱調理器の要部を模式的に説明するもので、図14は高透磁率部材及び加熱コイル部分を模式的に示す背面図、図15は図14のXV−XV線における矢視断面図に相当する図である。この実施の形態8は、実施の形態7に示すブロック状高透磁率部材47bに相当する断面積の増加分を、フェライト本体48aと一体にし、間隙Dの中に進入するように上方に突出形成された大断面積部48bとして構成したものである。これにより、フェライト48の数を増やさずに、間隙D位置でフェライト48の大断面積部48bがより調理器具6に近づくので、組立が容易で発熱効率もより向上し、半径方向に沿った温度分布を均一化できる。
【0028】
実施の形態9.
図16はこの発明の実施の形態9による誘導加熱調理器の要部を模式的に示す側面断面図である。この実施の形態9では、加熱コイル2が上記図7に示す実施の形態5と同様に径方向に間隙Dを介して2分割された第1のコイル体21と第2のコイル体22から構成されている。そしてフェライト49は、第1のコイル体21に対応する位置の上面を削る如く形成された凹部49bを有する小断面積部49aが設けられている。上記実施の形態5の図9に示すように、加熱コイル2が2分割されたものでは内側に配設された第1のコイル体21に対応する位置に発熱密度のピーク位置がある。また、加熱コイル2は冷却が必要であり、この発熱密度のピーク位置は調理器具6の発熱密度を下げたい領域となっている。
【0029】
然るに、この実施の形態9では、凹部49bを設けたことで該凹部49bが加熱コイル2の冷却用風路として機能し、しかも小断面積部49aとなっていることにより調理器具6の発熱密度を下げることができる。一方、発熱密度が低い第1のコイル体21の最内周部A及び最外周部Cは、フェライト49が延在されていることにより磁束が集中され、発熱効率が高められる。なお、半径方向に沿ってフェライト49の断面積を例えば図10などに例示したものと同様に発熱密度に応じて凹凸などによる変化を持たせても良いことは言うまでもない。上記のように構成された実施の形態9によれば、発熱効率あるいは調理器具6の温度の半径方向に沿った分布をより一定にでき、かつ風路も確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施の形態1による誘導加熱調理器の要部を模式的に説明する図であり、(a)は高透磁率部材の形状及び加熱コイルに対する配置を示す背面図、(b)は高透磁率部材を示す平面図。
【図2】図1(a)の側面断面図。
【図3】この発明の実施の形態2に係る誘導加熱調理器の要部を模式的に示すもので、(a)は高透磁率部材と加熱コイルを示す背面図、(b)は側面断面図。
【図4】この発明の実施の形態3に係る誘導加熱調理器の要部を模式的に示す側面断面図。
【図5】この発明の実施の形態4に係る誘導加熱調理器の要部を模式的に示す側面断面図。
【図6】図5の変形例を示す側面断面図である。
【図7】この発明の実施の形態5による誘導加熱調理器の要部を模式的に示す背面図。
【図8】図7の側面断面図。
【図9】図7に示す構成での調理器具底部での発熱密度を示す図。
【図10】図7の変形例を示す背面図。
【図11】この発明の実施の形態6による誘導加熱調理器の要部を示す部分断面図。
【図12】この発明の実施の形態7による誘導加熱調理器の要部を模式的示す背面図。
【図13】図12のXIII−XIII線における矢視断面図に相当する図。
【図14】この発明の実施の形態8による誘導加熱調理器の要部を模式的に示す背面図。
【図15】図14のXV−XV線における矢視断面図に相当する図。
【図16】この発明の実施の形態9による誘導加熱調理器の要部を模式的に示す側面断面図。
【図17】フェライトの幅を径方向に沿って一定にした場合、調理器具の半径に対する調理器具底の発熱密度の計算結果を示す参考図。
【図18】加熱コイル中心部の発熱効率を上げるためのフェライトの配置例を説明する参考図。
【符号の説明】
【0031】
1 誘導加熱調理器、 2 加熱コイル、 21 第1のコイル体、 22 第2のコイル体、 3 駆動回路、 4、41、42、43、44、45、46、47、48、49 フェライト(高透磁率部材)、 4a、4b、41a、41b、49a 小断面積部、 4c、4d、41c、41d、44a、45b、46a、48b 大断面積部、 41e 先端部、 42a 第1の高透磁率材料、 42b 第2の高透磁率材料、 43a 第1の部分、 43b、43c 第2の部分、 47a、48a フェライト本体、 47b ブロック状高透磁率部材、 49b 凹部、 5 風路、 5a 空隙、 51 隙間、 6 調理器具、 7 温度センサ、 A 最内周部、 B 中間部、 C 最外周部、 D 間隙、 R 調理器具底面中心部から半径方向の距離、 θ 中心軸。
【技術分野】
【0001】
この発明は誘導加熱調理器に関し、さらに詳細には加熱コイルの冷却性を確保しつつ加熱コイルの半径方向の発熱密度を均一化した誘導加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
IHクッキングヒータや炊飯器などの誘導加熱調理器では、円形状の加熱コイルに数十kHzの交流の電流を通電し、導電体からなる鍋や釜などの調理器具に流れる電流で調理器具を加熱する。調理器具に対する発熱効率を向上させるため、加熱コイルの下にフェライトなどの高透磁率部材を配置して加熱コイルが発生する磁束を集める方法が採られるが、高価なフェライトの量を極力少なくするために、一般に径方向に沿って棒状のフェライトを複数配置する。例えば、IHクッキングヒータにおいてフェライトの幅を径方向に沿って一定の形状としたものを十字状に配置し、中心部を空隙としたものがある(例えば、特許文献1参照)。一方、IH炊飯器において径方向に沿って一定の割合で幅を増大させた棒状のフェライトを十字状に配置し、中心部を空隙としたものがある(例えば、特許文献2参照)。また、上記特許文献1の第7図には、調理器具の温度分布を均一化するために幅が一定のブロック状のフェライトを、発熱密度の低い中心部近傍と最外周部に分割配値した例が示されている。
【0003】
【特許文献1】特開昭59−25194号公報(第2頁、第1図、第7図)
【特許文献2】特開2003−332034号公報(第1頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フェライトの幅を径方向に沿って一定にした場合、例えば半径100mmの調理器具(鍋)底の半径方向の発熱密度を計算すると、図17の参考図に示すように、調理器具底面中心部からの距離R=0の中心部近傍と外周部近傍が低く、中心部と外周部との中間部が高い曲線となる。従って、中心部近傍と外周部分にフェライトを極力多く配置して磁束を集中させることで半径方向の温度分布を均一化することが考えられる。上記特許文献1の第1図に示された従来技術では全体的な発熱効率は改善されるものの、フェライトが半径方向に均一断面であるため温度分布の均一化は困難である。上記特許文献1の第7図に示された従来技術では、中心部近傍と外周部分にフェライトが配設されているので、一定の温度分布の均一化は期待できるものの、フェライトが径方向に分割されており、幅も一様なので細かく鍋の発熱密度分布を調整できない。またフェライトを多数箇所に分散して設置するので組立に手間を要する課題があった。
【0005】
また、上記特許文献2に示された従来技術では半径方向に沿ってR=0の中心部に近づくにつれて、フェライトの幅が細くなっているため、半径方向に沿った発熱密度分布は、発熱密度のピークより内側のR=0近傍では更に発熱密度が低下する問題があった。なお、参考までに中心部の発熱効率のみに着目して発熱効率を上げるためには、図18の参考図に示すように、円形状の加熱コイル100に対し、フェライトなどの高透磁率部材200をR=0近傍で埋め尽くす必要があり、このような構成では加熱コイル1の冷却が困難になるという課題もあった。
【0006】
この発明は上記のような従来技術の課題を解消するためになされたもので、発熱効率を高めつつ径方向に沿った発熱密度分布が均一化され、しかも加熱コイルの中心部の冷却を図ることができる誘導加熱調理器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る誘導加熱調理器は、中心部に設けられた第1のコイル体及びこの第1のコイル体の外周囲にリング状の間隙を介して配設された第2のコイル体からなる調理器具を加熱するための円形状の加熱コイルと、この加熱コイルに電流を通電する駆動回路と、上記加熱コイルの一側に放射状に配置された複数の高透磁率部材を備えた誘導加熱調理器において、上記高透磁率部材は、上記第1のコイル体の直下に対応する位置の上部に凹部が形成されてなるものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明においては、高透磁率部材を、中心部に設けられた第1のコイル体の直下に対応する位置の上部に凹部が形成されたものとしたことにより、高透磁率部材の量を最適にしながら発熱効率を高めつつ、半径方向に対する発熱密度分布を均一化し、加熱コイルの半径方向中心部を冷却する風路も確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による誘導加熱調理器の要部を模式的に説明する図であり、(a)は高透磁率部材の形状及び加熱コイルに対する配置を示す背面図、(b)は高透磁率部材を示す平面図、図2は図1(a)の側面断面図である。図において、誘導加熱調理器1は、円形状の加熱コイル2、この加熱コイル2に高周波電流を通電する駆動回路3、及び加熱コイル2の背面側(下側)に放射状に配設された複数(この例では8本)の高透磁率部材としてのフェライト4などを備えて構成され、周方向に隣接するフェライト4の間の空間は加熱コイル2を冷却するための風路5を形成している。鍋や釜などの調理器具6は、加熱コイル2の上部に設けられた図示省略している天板の上に載置される。なお、高透磁率部材としては一般にフェライトが用いられるので、以下特に区別を要しない限りフェライトと称する。
【0010】
上記各フェライト4は、加熱コイル2の中心軸θに平行な方向の厚さが略一様で、半径方向には、最内周部Aと中間部Bは幅が狭く、即ち小断面積部4a、4bとして構成され、これら最内周部Aと中間部Bとの間の中心部近傍に、該小断面積部4a、4bよりも幅が広く、即ち断面積が大きく形成された第1の大断面積部4cが形成されている。そして、フェライト4は中間部Bの小断面積部4bから最外周部Cに向けて幅広に形成され、最外周部Cも第2の大断面積部4dとして構成された例えば1本の棒状に形成されている。
【0011】
また、隣接するフェライト4の小断面積部4a相互の間には風路5を構成する所定の空隙5aが設けられ、加熱コイル2の外側から中心に至るまで風路5が放射状に確保されている。上記中間部Bの小断面積部4bは図17に示す半径方向の発熱密度分布における略ピーク付近に対応する位置に設定され、第1の大断面積部4cはそれより中心部側に、第2の大断面積部4dは発熱密度が低い最外周部C位置に対応するように設けられている。なお、本書において中間部Bは最内周部Aと最外周部Cの間の部分を意味しており、寸法的に2分の1付近の位置のみに限定されるものではない。その他の構成は従来装置と同様である。
【0012】
次に、上記のように構成された実施の形態1の動作について説明する。駆動回路3により加熱コイル2に高周波電流を通電すると、加熱コイル2のまわりに磁束が発生するが、加熱コイル2の近傍にフェライト4が設置されていることにより、フェライト4に誘導磁化が生じ、その結果フェライト4を通る磁束が増加してフェライト4部の磁気回路が低抵抗になり、調理器具6に侵入する磁束も増えて発生する渦電流も増加し、調理器具6の発熱密度及び加熱効率も増加する。
【0013】
この実施の形態1では、フェライト4の幅を広げて形成された第1の大断面積部4cが最内周部Aの近傍に、第2の大断面積部4dが最外周部Cに位置するように加熱コイル2の下面に放射状に配設されていることにより、図17に示す発熱密度が低くなる部分での発熱密度が向上され、調理器具6に対する半径方向の発熱密度分布が均一化される。また、加熱コイル2の中心部近傍では、隣接するフェライト4相互の間に空隙5aがあることにより、フェライト4による磁束密度の向上は若干犠牲にされることになるが、加熱コイル2の中心に至る風路5が確保されることにより、加熱コイル2に対して必要な冷却が行なわれる。
【0014】
上記のように、実施の形態1によれば、加熱効率を高めながら調理器具6に対する半径方向の発熱密度分布が均一化され、しかも加熱コイル2の風路5が確保できることで加熱コイル2の冷却を充分に行なえる誘導加熱調理器を得ることができる。調理器具6の温度分布が径方向に沿って一定に近づけられたことで、食材を均一に加熱できる。また、発熱密度が高い半径方向におけるフェライト4の中間部Bの幅を狭くしたことにより、高価なフェライト量を低減できる。また、一体的に形成された同一形状のフェライト4を放射方向に配置すればよいので、構成が簡単で組立も容易にできる。なお、フェライト4は必ずしも一体的なものに限定されず、分割されたものでも発熱密度分布の均一化と加熱コイル2の冷却を高めることができる。
【0015】
実施の形態2.
図3はこの発明の実施の形態2に係る誘導加熱調理器の要部を模式的に示すもので、(a)は高透磁率部材と加熱コイルを示す背面図、(b)は側面断面図である。この実施の形態2は、上記実施の形態1においてはフェライト4の断面積を半径方向に沿って幅を変えたのに対し、厚みを変えることで断面積を半径方向に変えたものである。即ち、フェライト41の平面形状は、加熱コイル2の半径方向に中間部Bより外側は一定の幅で形成され、中間部Bの中心寄りから最内周部Aにかけて先細りに形成されている。
【0016】
そして、フェライト41の厚さは、図3(b)に示すように最内周部Aの若干外周部寄り、及び中間部Bが薄く、それぞれ小断面積部41a、及び小断面積部41bとして形成され、最内周部Aと中間部Bの間、及び最外周部Cが厚く、それぞれ大断面積部41c、及び大断面積部41dが形成されている。なお、この例では最内周部Aの先端部41eも厚く形成されているが、幅が狭くなっているので断面積は必ずしも大きくはない。なお、図では最内周部Aで隣接するフェライト41相互がほとんど接触しているが、実施の形態1と同様に空隙を設けて風路を広げることもできる。その他の構成は上記実施の形態1と同様である。
【0017】
上記のように構成された実施の形態2においては、実施の形態1と同様に、発熱密度が低い最内周部Aの近傍、及び最外周部C近傍の位置では、フェライト41の断面積を厚みを増やすことで大きくし、発熱密度がピークとなる中間部B近傍の位置では厚みを薄くしたことにより、フェライトの幅を増加させた場合と同様、発熱密度分布を均一化できる効果が得られる。また、風路を確保することもできる。また、特に加熱効率が悪化する最内周部Aに近い先端部41eの厚みを増大させたことにより、R=0付近の加熱効率を向上できる。なお、半径が大きい場合には、周方向に沿った長さが長くなり、広い面積で厚みが増え、図示省略している回路基板や装着された機器類との干渉が問題になる場合があるので、フェライト41の幅を広げる方式と組み合わせるようにしても良い。また、R=0近傍の中心付近ではフェライト41が下方へ突出する部分の割合も小さく、基板等の機器との干渉も起こり難い。
【0018】
実施の形態3.
図4はこの発明の実施の形態3に係る誘導加熱調理器の要部を模式的に示す側面断面図である。図において、加熱コイル2の下部に配設されたフェライト42は、中間部より外周側に配設された透磁率が一般的なレベルで安価に得られる第1の高透磁率材料42aと、この第1の高透磁率材料42aの中心部側に隣接して配設された透磁率がさらに高い第2の高透磁率材料42bからなり、第1の高透磁率材料42aの部分は断面積に換算して略実施の形態1と同様に幅を加熱コイル2の半径方向に変化させることで発熱密度分布の均一化を図ったものである。
【0019】
上記のように構成された実施の形態3では、実施の形態1または2において、フェライトの幅や、厚みを増やして断面積を増大させた部分を、より高透磁率である第2の高透磁率材料42bを用いて構成することで低抵抗化を図り、最内周部Aの加熱コイル2を冷却するための風路を確保しつつ発熱密度分布の均一化を図ったもので、実施の形態1または2と同様な効果が得られる他、透磁率がより高い第2の高透磁率材料42bを用いたことで、厚さの増大量を抑えることができるので、装置をコンパクトにできる効果も得られる。なお、より高透磁率である第2の高透磁率材料42bの配設位置は図4に例示したものに限定されないことは言うまでもない。例えば、最外周部Cの部分に第2の高透磁率材料42bを追加し、あるいは第1の高透磁率材料42aの最外周部Cに対応する部分を第2の高透磁率材料42bに置き換えても良い。
【0020】
実施の形態4.
図5はこの発明の実施の形態4に係る誘導加熱調理器の要部を模式的に示す側面断面図、図6はその変形例を示す側面断面図である。図5において、フェライト43は、中間部Bより外周側に位置する第1の部分43aと、この第1の部分43aの中心部側に段部を介して隣接する第2の部分43bからなり、第2の部分43bと加熱コイル2の下面との間には風路5(図示されていない)に連通する隙間51が形成されている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0021】
この実施の形態4では、最内周部AのR=0付近にフェライト43と加熱コイル2の間に形成された大きな隙間51に冷却風が通流されることにより、加熱コイル2の中心部がより効率的に冷却され、例えば実施の形態1のようにフェライト4を密集させたことによって冷却効率が不足する恐れを解消できる。なお、図6の変形例に示すように、第1の部分43aの中心部側に段部を介して隣接する第2の部分43cの厚みを増大させ、あるいは透磁率がより高い材料を使用することで、加熱コイル2との距離を大きくしたことによる加熱効率の悪化を防止することもできる。
【0022】
実施の形態5.
図7〜図10はこの発明の実施の形態5による誘導加熱調理器の要部を説明するもので、図7は高透磁率部材及び加熱コイル部分を模式的に示す背面図、図8はその側面断面図、図9は図7に示す構成での調理器具底部での発熱密度を示す図、図10は図7の変形例を示す背面図である。図において、加熱コイル2は中心部に配設された円形状の第1のコイル体21と、この第1のコイル体の外周囲に円形リング状の間隙Dを介して配設された第2のコイル体22からなり、間隙Dには調理器具6の温度を検知するための複数の温度センサ7が設けられている。そしてフェライト44は、厚さが略一定で、半径方向に間隙Dに対応する位置に幅を広げた大断面積部44aが形成されている。
【0023】
上記構成における調理器具6の温度分布を解析計算した結果を図9に示す。図9より、2分割されてコイルがない間隙D部分の直上の調理器具6の中間部Bに対応する位置では、加熱コイル2の磁界が低く発熱効率が落ちるが、フェライト44の大断面積部44aを間隙D部分に対応するように配設したことで、この部分での発熱効率が向上され、調理器具6の温度分布が改善されている。なお、図10の変形例は、加熱コイル2の最外周部Cの発熱密度が低い部分に対応するフェライト45の断面積も、図1の例と同様に幅を広げた大断面積部45bとしたことで、図9に示す最外周部分の発熱効率を改善することができる。この結果、全体的に半径方向に、より均一な分布を得ることができる。更には、発熱密度が高い部分の断面積が小さく構成されることで、フェライトの量を最小化できコストを低減できる効果も得られる。なお、フェライト44または45の幅を広げる代わりに厚さを厚くし、あるいは双方を組み合せて構成しても良いことは言うまでもない。
【0024】
実施の形態6.
図11はこの発明の実施の形態6による誘導加熱調理器の要部を示す部分断面図である。図において、加熱コイル2は上記図7に示す実施の形態5と同様に径方向に間隙Dを介して2分割されている。フェライト46は、発熱密度が下がる間隙Dの中に進入するように一部が厚く形成された大断面積部46aが形成されている。その他の構成は実施の形態5と同様である。一般にフェライトは断面積が大きいほど磁束を集める効果が高いが、負荷である調理器具6から遠ざかるほど効果は小さくなる。例えばフェライト中の磁気モーメントが作る磁界は磁気モーメント位置の三乗に比例して減少する。従って、フェライトは極力調理器具6に近い方に配置した方が効果は大きい。この実施の形態6では、第1のコイル体21と第2のコイル体22の間隙Dに進入するように調理器具6に近づけて大断面積部46aが構成されていることにより、発熱効率の改善効果が高く、半径方向の温度分布を一層均一化できる。なお、例えば実施の形態5等と組み合わせて構成しても良い。
【0025】
実施の形態7.
図12及び図13はこの発明の実施の形態7による誘導加熱調理器の要部を模式的に説明するもので、図12は高透磁率部材及び加熱コイル部分を模式的に示す背面図、図13は図12のXIII−XIII線における矢視断面図に相当する図である。図において、加熱コイル2は上記図7に示す実施の形態5と同様に径方向に間隙Dを介して2分割され、空隙Dに同様の温度センサ7が複数設けられている。そしてフェライト47は、加熱コイル2の半径方向に放射状に配設され、中心付近から中心に向けて先細りとなっている他は同一の幅で形成された棒状のフェライト本体47aと、間隙Dにおける隣接するフェライト本体47a相互の間にそれぞれ設置されたブロック状高透磁率部材47bとからなっている。
【0026】
上記のように構成された実施の形態7においては、発熱密度分布が悪化する2分割コイルの間隙Dの領域に磁束を集中させるブロック状高透磁率部材47bを配設したことにより、加熱コイル2の半径方向に対する温度分布の均一化を図ることができる。また、この間隙D部はコイル体が存在せず、従ってコイル体の冷却を必要としない位置であり、また中心と最外周の中間部であることから周方向のスペースも相応に大きいので、ブロック状高透磁率部材47bを調理器具6に近接させて多数配置することも可能であり、温度分布を容易に均一化できる。また、加熱コイル2冷却の悪化の問題も生じない。なお、フェライト本体47aの幅は径方向に沿って一定としたが、間隙Dに対応する部分及び最外周部Cを例えば図10のように幅広に形成しても良い。
【0027】
実施の形態8.
図14及び図15はこの発明の実施の形態8による誘導加熱調理器の要部を模式的に説明するもので、図14は高透磁率部材及び加熱コイル部分を模式的に示す背面図、図15は図14のXV−XV線における矢視断面図に相当する図である。この実施の形態8は、実施の形態7に示すブロック状高透磁率部材47bに相当する断面積の増加分を、フェライト本体48aと一体にし、間隙Dの中に進入するように上方に突出形成された大断面積部48bとして構成したものである。これにより、フェライト48の数を増やさずに、間隙D位置でフェライト48の大断面積部48bがより調理器具6に近づくので、組立が容易で発熱効率もより向上し、半径方向に沿った温度分布を均一化できる。
【0028】
実施の形態9.
図16はこの発明の実施の形態9による誘導加熱調理器の要部を模式的に示す側面断面図である。この実施の形態9では、加熱コイル2が上記図7に示す実施の形態5と同様に径方向に間隙Dを介して2分割された第1のコイル体21と第2のコイル体22から構成されている。そしてフェライト49は、第1のコイル体21に対応する位置の上面を削る如く形成された凹部49bを有する小断面積部49aが設けられている。上記実施の形態5の図9に示すように、加熱コイル2が2分割されたものでは内側に配設された第1のコイル体21に対応する位置に発熱密度のピーク位置がある。また、加熱コイル2は冷却が必要であり、この発熱密度のピーク位置は調理器具6の発熱密度を下げたい領域となっている。
【0029】
然るに、この実施の形態9では、凹部49bを設けたことで該凹部49bが加熱コイル2の冷却用風路として機能し、しかも小断面積部49aとなっていることにより調理器具6の発熱密度を下げることができる。一方、発熱密度が低い第1のコイル体21の最内周部A及び最外周部Cは、フェライト49が延在されていることにより磁束が集中され、発熱効率が高められる。なお、半径方向に沿ってフェライト49の断面積を例えば図10などに例示したものと同様に発熱密度に応じて凹凸などによる変化を持たせても良いことは言うまでもない。上記のように構成された実施の形態9によれば、発熱効率あるいは調理器具6の温度の半径方向に沿った分布をより一定にでき、かつ風路も確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施の形態1による誘導加熱調理器の要部を模式的に説明する図であり、(a)は高透磁率部材の形状及び加熱コイルに対する配置を示す背面図、(b)は高透磁率部材を示す平面図。
【図2】図1(a)の側面断面図。
【図3】この発明の実施の形態2に係る誘導加熱調理器の要部を模式的に示すもので、(a)は高透磁率部材と加熱コイルを示す背面図、(b)は側面断面図。
【図4】この発明の実施の形態3に係る誘導加熱調理器の要部を模式的に示す側面断面図。
【図5】この発明の実施の形態4に係る誘導加熱調理器の要部を模式的に示す側面断面図。
【図6】図5の変形例を示す側面断面図である。
【図7】この発明の実施の形態5による誘導加熱調理器の要部を模式的に示す背面図。
【図8】図7の側面断面図。
【図9】図7に示す構成での調理器具底部での発熱密度を示す図。
【図10】図7の変形例を示す背面図。
【図11】この発明の実施の形態6による誘導加熱調理器の要部を示す部分断面図。
【図12】この発明の実施の形態7による誘導加熱調理器の要部を模式的示す背面図。
【図13】図12のXIII−XIII線における矢視断面図に相当する図。
【図14】この発明の実施の形態8による誘導加熱調理器の要部を模式的に示す背面図。
【図15】図14のXV−XV線における矢視断面図に相当する図。
【図16】この発明の実施の形態9による誘導加熱調理器の要部を模式的に示す側面断面図。
【図17】フェライトの幅を径方向に沿って一定にした場合、調理器具の半径に対する調理器具底の発熱密度の計算結果を示す参考図。
【図18】加熱コイル中心部の発熱効率を上げるためのフェライトの配置例を説明する参考図。
【符号の説明】
【0031】
1 誘導加熱調理器、 2 加熱コイル、 21 第1のコイル体、 22 第2のコイル体、 3 駆動回路、 4、41、42、43、44、45、46、47、48、49 フェライト(高透磁率部材)、 4a、4b、41a、41b、49a 小断面積部、 4c、4d、41c、41d、44a、45b、46a、48b 大断面積部、 41e 先端部、 42a 第1の高透磁率材料、 42b 第2の高透磁率材料、 43a 第1の部分、 43b、43c 第2の部分、 47a、48a フェライト本体、 47b ブロック状高透磁率部材、 49b 凹部、 5 風路、 5a 空隙、 51 隙間、 6 調理器具、 7 温度センサ、 A 最内周部、 B 中間部、 C 最外周部、 D 間隙、 R 調理器具底面中心部から半径方向の距離、 θ 中心軸。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に設けられた第1のコイル体及びこの第1のコイル体の外周囲にリング状の間隙を介して配設された第2のコイル体からなる調理器具を加熱するための円形状の加熱コイルと、この加熱コイルに電流を通電する駆動回路と、上記加熱コイルの一側に放射状に配置された複数の高透磁率部材を備えた誘導加熱調理器において、上記高透磁率部材は、上記第1のコイル体の直下に対応する位置の上部に凹部が形成されてなることを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項2】
上記凹部は、上記高透磁率部材の上面を削ることにより形成されることを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱調理器。
【請求項1】
中心部に設けられた第1のコイル体及びこの第1のコイル体の外周囲にリング状の間隙を介して配設された第2のコイル体からなる調理器具を加熱するための円形状の加熱コイルと、この加熱コイルに電流を通電する駆動回路と、上記加熱コイルの一側に放射状に配置された複数の高透磁率部材を備えた誘導加熱調理器において、上記高透磁率部材は、上記第1のコイル体の直下に対応する位置の上部に凹部が形成されてなることを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項2】
上記凹部は、上記高透磁率部材の上面を削ることにより形成されることを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱調理器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−59717(P2012−59717A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−280720(P2011−280720)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【分割の表示】特願2006−156752(P2006−156752)の分割
【原出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【分割の表示】特願2006−156752(P2006−156752)の分割
【原出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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