説明

誘導加熱調理器

【課題】鍋の中の液体に対流を発生させ、吹き零れを抑制する誘導加熱調理器の提供
【解決手段】主加熱コイルMCと、副加熱コイルSC1〜4と、主加熱コイルMCおよび副加熱コイルSC1〜4と、インバータ回路MIV,SIV1〜SIV4と、これらインバータ回路MIV,SIV1〜SIV4に対して調理メニューに対応した通電パターンを指令する通電制御回路200を有し、通電制御回路200は、初期加熱時の期間T1と、その後の加熱期間T3およびT5において、それぞれ所定の異なる電力を主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4に同時に供給し、それぞれの加熱期間の間に、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4に供給する電力を停止する期間T2,T4,T6を挟み、初期加熱T1、T2以降のT3〜T6の期間を繰り返すようインバータ回路MIV,SIV1〜SIV4に指令する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被調理物を収容した金属鍋等の被加熱物を、その下方から加熱する誘導加熱調理器と、この誘導加熱調理器の制御を実行するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属製鍋などの被加熱物を加熱コイルにより誘導加熱する加熱調理器は、安全・清潔・高効率という優れた特徴が消費者に認知され、近年次第に普及拡大している。
このような誘導加熱調理器は、設置形態によって流し台等の上面に置かれて使用される据置型と、流し台などの厨房家具の中にある設置空間にセットされるビルトイン(組込)型とに大別されるが、何れのタイプにおいても、上面のほぼ全体が耐熱ガラス板等から形成されたトッププレート(天板ともいう)で覆われ、その下方には、一つ又は複数個の誘導加熱源が配置されている。
【0003】
この誘導加熱源としては、同心上かつ略同一平面状に配置した径の異なる複数個の加熱コイルと、加熱コイル夫々に高周波電力を供給する高周波発生電力回路(インバータ回路ともいう)が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
このような構成によれば、径の異なる複数の加熱コイルに対する高周波電力の出力制御を各々個別に行なうことができるので、種々の加熱パターンを形成することができる。
【0004】
また、別の誘導加熱調理器として、中央に円形の加熱コイルを置き、その中央加熱コイルの両側に隣接するように、複数の側部加熱コイルを配置し、中央加熱コイルと側部加熱コイルを別々の高周波発生電力回路で駆動するようにしたものにおいて、複数の側部加熱コイルと中央加熱コイルに流れる高周波電流の向きを考慮することで、側部加熱コイルと中央加熱コイルの間で生ずる誘導起電力を相殺し、広い平面領域を同時加熱する用途などに対応できるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2978069号公報(第1頁、第2頁、図4)
【特許文献2】特許第3725249号公報(第1頁、第2頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の誘導加熱調理器においては、茹でもの調理を行なう際、沸騰状態を維持するために、被加熱物を加熱コイルで連続的に加熱させる必要があり、うどん等の麺を茹でたりする場合は、茹で汁から連続的に泡が発生して、吹き零れやすいという問題があった。特に、茹で汁は粘性があり泡が壊れにくいことと、このような泡が連続的に発生することから、吹き零れがおこる。
一方、特許文献1に記載の誘導加熱調理器において、加熱コイルは同心上に且つ略同一平面上に配した径の異なる複数の加熱コイルを配しており、加熱コイルに対する出力制御は、高周波電力の出力レベル、デューティ比、出力時間間隔などで制御を行なうとされているが、それぞれのコイルに対する出力制御の例では、具体的な出力レベルやデューティ比、出力時間間隔などは示されていない。(特許文献1 図4参照)
【0007】
また、特許文献2に記載の誘導加熱調理器において、加熱コイルは、平形渦巻状の第1加熱コイルと、2つの細長い平形楕円渦巻状の第2加熱コイルとを配置し、第1加熱コイルを同一面状で左右対称に囲む形で、第2加熱コイルが配置されているが、外側の第2加熱コイルは直列接続されているため個別に制御はできず、また具体的な出力レベルやデューティ比、出力時間間隔などは示されていない。(特許文献2 図3参照)
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、被加熱物の中にある水や茹で汁などの液体に、対流の発生を促進できる制御、吹き零れ抑制できる制御を採用した誘導加熱調理器とそのプログラムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決する為には、誘導加熱調理器において、円環状の主加熱コイルと、前記主加熱コイルの側部に近接して配置される扁平形状の複数の副加熱コイルと、前記主加熱コイル及び全ての副加熱コイルに、それぞれ誘導加熱の為の電力を供給するインバータ回路と、前記インバータ回路の出力を制御する制御部と、前記制御部に加熱の動作又は条件の少なくとも何れか一方を指示する操作部を有し、前記制御部は、前記操作部からの指示を受けると、被加熱物の初期加熱期間として第1の期間を設け、該第1の期間の間、前記インバータ回路から前記主加熱コイルおよび複数の前記副加熱コイルに対し、第1の総電力を供給し、かつ、複数の前記副加熱コイルに供給している電力の総和より、前記主加熱コイルに供給している電力が大きくなるように前記第1の総電力を配分し、前記第1の期間の後、前記主加熱コイル、及び、複数の前記副加熱コイルへの誘導加熱電力の供給を所定の期間停止する第2の期間を設け、前記第2の期間の後、前記主加熱コイルおよび複数の前記副加熱コイルに対し、第2の総電力を供給する第3の期間を設け、かつ、複数の前記副加熱コイルに供給する電力の総和より、前記主加熱コイルに供給している電力が小さくなるように前記第2の電力を配分し、前記第3の期間の後、前記主加熱コイル、及び、複数の前記副加熱コイルへの誘導加熱電力の供給を停止した期間4を設け、前記第4の期間の後、前記主加熱コイル、及び、複数の前記N副加熱コイルに対し、第3の総電力を供給する期間5を設け、かつ、複数の前記副加熱コイルに供給している電力の総和より、前記主加熱コイルに供給している電力が大きくなるように前記第3の電力5を配分し、前記第5の期間の後、前記主加熱コイル、及び、複数の前記副加熱コイルへの誘導加熱電力の供給を停止した第6の期間を設け、前記制御部は、前記主加熱コイル、及び、複数の前記第N副加熱コイルに対して、前記第1乃至第6の期間を経た後、前記第3乃至第6の期間の通電制御動作を繰り返す制御を行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、主加熱コイルと、その側方に設けられた少なくとも1つ以上の副加熱コイルで被加熱物の加熱を実行し、茹でもの調理に必要な、加熱中の対流を促進することで調理物をほぐし、沸騰し続けた状態を維持しつつ、電力(火力)停止期間により吹き零れを抑制することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態に係る、ビルトイン型の誘導加熱調理器全体の基本構成を示すブロック図
【図2】実施の形態に係る、ビルトイン型の誘導加熱調理器の天板を外した状態の平面図
【図3】実施の形態に係る、ビルトイン型の誘導加熱調理器における誘導加熱調理器全体の基本的な加熱動作を示す制御ステップ説明図
【図4】本発明の実態の形態に係る、ビルトイン型の誘導加熱調理器における誘導加熱コイルの平面図
【図5】本発明の実態の形態に係る、ビルトイン型の誘導加熱調理器における誘導加熱コイルの加熱動作説明図である。
【図6】実態の形態に係る、ビルトイン型の誘導加熱調理器における誘導加熱コイルの通電説明図(通常鍋:火加減1)
【図7】実態の形態に係る、ビルトイン型の誘導加熱調理器における誘導加熱コイルの通電説明図(通常鍋:火加減2)
【図8】実態の形態に係る、ビルトイン型の誘導加熱調理器における誘導加熱コイルの通電説明図(通常鍋:火加減3)
【図9】実態の形態に係る、ビルトイン型の誘導加熱調理器における誘導加熱コイルの通電説明図(オーバル鍋:火加減1)
【図10】実態の形態に係る、ビルトイン型の誘導加熱調理器における誘導加熱コイルの通電説明図(オーバル鍋:火加減2)
【図11】実態の形態に係る、ビルトイン型の誘導加熱調理器における誘導加熱コイルの通電説明図(オーバル鍋:火加減3)
【図12】実態の形態に係る、ビルトイン型の誘導加熱調理器の、茹でモードの制御動作を示すプログラムのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜図12は、本発明の実施の形態に係る誘導加熱調理器とその制御プログラムを示すものであって、ビルトイン(組込)型の誘導加熱調理器の例を示している。尚、各図において同じ部分又は相当する部分には同じ符号を付している。
【0013】
本発明の実施の形態において用いられる用語をそれぞれ定義する。
加熱手段D(図示していないが、後述する第1の誘導加熱部6L、第2の誘導加熱部6R等を含む加熱源をいう)の「動作条件」とは、加熱するための電気的、物理的な条件を言い、通電時間、通電量(火力)、加熱温度、通電パターン(連続通電、断続通電等)等を総称したものである。つまり加熱手段Dの通電条件をいうものである。
【0014】
以下、図を参照しながら、本発明に係る誘導加熱調理器の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る誘導加熱調理器全体の基本構成を図示するブロック図である。図2は、本発明に係る誘導加熱調理器の全体を、天板を外した状態で示す平面図である。尚、図1および図2において、本願発明に係る誘導加熱調理器の誘導加熱コイル全体を平面図として概略的に示している。
【0015】
図1、図2において、本発明の誘導加熱調理器は、第1の誘導加熱部6Lと第2の誘導加熱部6Rと輻射式中央電気加熱部7を備えた、いわゆる3口の誘導加熱調理器であり、平面視で横長矩形(横長方形ともいう)の本体部Aを備えている。
この本体部Aは、本体部Aの上面全体を水平に設置された平板状のトッププレート21で覆った天板部Bと、本体部Aの上面以外の周囲(外郭)を構成する筐体部C(図示せず)と、鍋や食品等を電気的エネルギー等で加熱する加熱手段Dと、使用者により操作される操作手段Eと、操作手段からの信号を受けて加熱手段を制御する制御手段Fと、加熱手段の動作条件を表示する表示手段Gをそれぞれ備えている。
【0016】
次に、本体部Aの左右中心線CL1を挟んで左側には第1の誘導加熱部6Lが、また右側には第2の誘導加熱部6Rが設置されている。
また、この左右中心線CL1を跨ぐように本体部Aの左右中心部に、表示画面100が配置されている。この表示画面100は、表示手段Gを構成するものであって、例えば、液晶表示画面が用いられる。
【0017】
このような誘導加熱調理器は、トッププレート21の上に磁性を有する、例えば金属から成る鍋等の被加熱物N(以下、単に鍋と称する場合有る)が置かれて、その下方に設置された第1の誘導加熱部6L、第2の誘導加熱部6Rによって誘導加熱される構成になっている。
【0018】
次に、図1、図2及び図4において、MCは第1の誘導加熱源の主加熱コイルMCであり、被加熱物Nを載せるトッププレート21の下方に接近して配置されている。尚、第2図中、破線の円で示したのが鍋等の被加熱物Nの外形を示す。
また、この主加熱コイルMCは、渦巻状に0.1mm〜0.3mm程度の細い線を30本程束にして、この束(以下、集合線という)を1本又は複数本撚りながら巻き、中心点X1を基点として外形形状が円形になるようにして最終的に円盤形に成形されている。
主加熱コイルMCの直径(最大外径寸法)は、約180mm〜200mm程度であり、半径R1は90〜100mmである。
この実施の形態1では、例えば、最大消費電力(最大火力)1.5KWの能力を備えている。
【0019】
次に、副加熱コイルSC1〜SC4は、4個の長円形加熱コイルであり、主加熱コイルMCの中心点X1を基点として前後・左右に、かつ、等間隔にそれぞれ対称的に配置されており、中心点X1から放射状に見た場合の横断寸法、つまり「厚み」(「横幅寸法」ともいう)WAは、主加熱コイルMCの半径R1の50%〜30%程度の大きさであり、図1、図2および図4の例では、WAは40mmに設定されたものが使われている。
【0020】
また、長径MWは前記R1の2倍程度、つまり主加熱コイルMCの直径(最大外径寸法)と同じく180mm〜200mm程度である。
尚、主加熱コイルMCの「側方」とは、特に他の説明と矛盾がない場合、図2で言えば右側、左側は勿論、上側と下側(手前側)を含んでおり、「両側」とは左右両方をいうことは勿論、前後及び斜め方向も意味している。
【0021】
次に、4個の副加熱コイルSC1〜SC4は、主加熱コイルMCの外周面に所定の空間271(数mmから1cm程度の大きさ)を保って配置されている。副加熱コイルSC1〜SC4の相互は、略等間隔(相互に空間273を保って)になっている。
これらの副加熱コイルSC1〜SC4も、集合線を1本又は複数本撚りながら巻き、外形形状が長円形や小判形になるように集合線が所定の方向に巻かれ、その後形状を保つために部分的に結束具で拘束され、又は全体が耐熱性樹脂などで固められることで形成されている。
また、4つの副加熱コイルSC1〜SC4は平面的形状が同じで、縦・横・高さ(厚さ)寸法も全て同一寸法である。従って、1つの副加熱コイルを4個製造し、それを4箇所に配置している。
【0022】
図4に示すように、これら4つの副加熱コイルSC1〜SC4は、中心点X1から半径R1の主コイルMCの周囲において、その接線方向が丁度各副加熱コイルSC1〜SC4の長手方向の中心線と一致している。言い換えると長径方向と一致している。
副加熱コイルSC1〜SC4は、それぞれの集合線が長円形に湾曲しながら伸びて電気的に一本の閉回路を構成している。また主加熱コイルMCの垂直方向寸法(高さ寸法、厚さともいう)と各副加熱コイルSC1〜SC4の垂直方向寸法は同じであり、しかもそれら上面と前記トッププレートの下面との対向間隔は同一寸法になるように水平に設置、固定されている。
【0023】
次に、図1は、誘導加熱調理器に内蔵された電源装置の回路ブロック図である。
電源装置は、単相交流電源を直流電流に変換するコンバータ(例えば、ダイオードブリッジ回路、または整流ブリッジ回路ともいう)と、コンバータの出力端に接続された平滑用コンデンサ、この平滑用コンデンサに並列に接続された第1の誘導加熱部6Lの主加熱コイルMCのための主インバータ回路(電源回路部)MIVと、同様に平滑用コンデンサに並列に接続された各副加熱コイルSC1〜SC4のための副インバータ回路(電源回路部)SIV1〜SIV4を備える。
尚、210Lは、第1の誘導加熱部6Lのインバータ回路であり、主インバータ回路MIVと、4つの副インバータ回路SIV1〜SIV4から構成されている。
【0024】
この主インバータ回路MIVと副インバータ回路SIV1〜SIV4は、コンバータからの直流電流を高周波電流に変換し、それぞれ主加熱コイルMCおよび副加熱コイルSC1〜SC4に高周波電流を(互いに)独立して供給するものである。
【0025】
次に、210Rは、第2の誘導加熱部6Rのためのインバータ回路、210Mは中央電気加熱部7の駆動回路である。
尚、前記第2の誘導加熱部6Rの加熱コイル6RCは、環状に巻かれた1つの加熱コイル又は、内側にあって環状に巻かれた加熱コイルと、この加熱コイルと直列になっている外側の加熱コイルとの二重構成であるから、インバータ回路の構成は、前記したインバータ回路210Lの構成とは異なっている。
【0026】
ここで一般に、誘導加熱コイルのインピーダンスは、誘導加熱コイルの上方に載置された被加熱物Nの有無および大きさ(面積)に依存して変化するので、これに伴って主インバータ回路MIVと副インバータ回路SIV1〜SIV4に流れる電流量も変化する。
本発明の電源装置では、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4に流れるそれぞれの電流量を検出するための電流検出部(検出手段)280を有する。この電流検出部は、後述する被加熱物載置判断部400の一種である。
【0027】
本発明の電源装置では、電流検出部280を用いて、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4に流れる電流量を検出することにより、それぞれのコイルの上方に被加熱物Nが載置されているか否か、または被加熱物Nの底部面積が所定値より大きいか否かを推定し、その推定結果を制御部(以下、「通電制御回路」という)200に伝達することから、被加熱物Nの載置状態について精度よく検出することができる。
【0028】
本発明の電源装置の通電制御回路200は、図示のように、電流検出部280に接続されており、被加熱物Nの載置状態に応じて、主インバータ回路MIVと副インバータ回路SIV1〜SIV4に制御信号を与えるものである。
即ち、通電制御回路200は、電流検出部280で検出された主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4に流れる電流量に関する信号(被加熱物Nの載置状態を示すデータ)を受け、被加熱物Nが載置されていないか、或いは、被加熱物Nの直径が所定値(例えば120mmφ)より小さいと判断した場合には、それら主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4への高周波電流の供給を禁止又は(既に供給開始されている場合はそれを)停止するように主インバータ回路MIVと副インバータ回路SIV1〜SIV4を選択的に制御する。
【0029】
以下、図1〜図4を参照しながら、本発明に係る誘導加熱調理器の基本動作について説明する。まず主電源の操作キー50を投入して加熱準備動作を使用者が操作部(図示せず)で指令した場合、電流検出部280を用いて、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4に流れる電流量を検出することにより、それぞれのコイルの上方に被加熱物Nが載置されているか否か、又は、被加熱物Nの底部面積が所定値より大きいか否かを判定して、この結果を制御部である通電制御回路200に伝達する(ステップMS1)。
【0030】
ステップMS1にて、適合鍋であったと判断した場合、通電制御回路200は操作部E又はその近傍に設置されている表示手段Gの、例えば液晶表示画面に対し、希望する調理メニューを選択するように促す表示して(MS2)、ステップMS3に移行する。
ステップMS1にて、適合しない変形鍋(底面が凹んだもの等)や異常に小さい鍋等の場合は、加熱禁止処理がされる(MS6)。
ステップMS3では、使用者が複数ある動作モードから、動作モードを選択することでステップMS4に移行する。そして、ステップMS4では、使用者がステップMS3で選択した調理メニューや火力、調理時間などに基づき本格的に加熱動作が開始され、ステップMS5に移行する。
【0031】
ここで、ステップMS2において、表示手段Gに表示される調理メニュー、つまり、ステップMS3で使用者が選択可能なモードとして、例えば「高速加熱モード」、「揚げ物モード」、「湯沸しモード」、「予熱モード」、「炊飯モード」、「茹でモード」、「湯沸し+保温モード」がある。
これらのモード(メニュー)から使用者が任意の一つを選択した場合、それらのメニューに対応した制御モードが、通電制御回路200の内蔵プログラムによって自動的に選択され、主加熱コイルMCや副加熱コイルSC1〜SC4のそれぞれの通電可否や通電量(火力)、通電時間などが設定される。調理メニューによっては使用者に任意の火力や通電時間等を設定するように促す表示が表示部にて行われる(MS5)。
【0032】
ここで、「茹でモード」について説明する。
茹でモードとは、主に茹で調理(麺茹、野菜茹で、等)を行う為のモードであり、加熱速度を優先させた調理メニューで、選択部Eで選択する。
(1)加熱工程(沸騰まで):
被加熱物Nに加える電力(以下火力)を手動で設定できる。
主加熱コイルMCと副加熱コイルの合計火力(合計出力)は、120W〜3.0KWまでの範囲で次の16段階の中から使用者が1段階選定する。
150W、200W、300W、400W、500W、625W、750W、875W、1.0KW、1.25KW、1.5KW、1.75KW、2.0KW、2.25KW、2.5KW、3.0KW。
デフォルト値は2KW(使用者が火力を選択しない場合、2KWで加熱開始)。
主副の火力比は、所定の火力比の範囲内になるように自動的に通電制御回路200で決定され、使用者が任意に設定することはできない。例えば主副の火力比は(大火力時)2:3〜(小火力時)1:1まで。
沸騰までの加熱工程全域に亘り、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4は同時駆動され、互いに隣接する領域での高周波電流の向きは一致させるよう制御される。
(2)沸騰以後:
沸騰以降は使用者の操作に基づいて茹でモード用の制御が開始される。
茹でモードの火加減は3段階あり、茹でモードでの調理中であれば、使用者が任意に選択できる。
デフォルト値は火加減2(使用者が火加減を選択しない場合、火加減2で制御開始)。
主加熱コイルMCと副加熱コイルの火力は、火加減や副加熱コイルSC1〜SC4の負荷の有無により自動的に通電制御回路200で決定され、また図5および図6のようにそれぞれ所定の期間ごとに電力および時間が設定されており、使用者が任意に設定することはできない。
終了時は、使用者の操作により手動で停止を行なうか、タイマー操作の設定を行なうことで設定時間がきたら自動で加熱停止を行なう。
【0033】
次に、図12を参照しながら、茹でモードの誘導加熱調理に至る動作を説明する。
図12は通電制御回路200に内蔵された、茹でモードプログラムを示すフローチャートである。
(調理開始前の準備段階)
調理の開始にあたっては、まず前記主電源の操作キー50を操作して主電源を投入し、
前記16段階の火力の中から使用者が1段階選定し、加熱工程(沸騰まで)を行なう。
【0034】
(沸騰以後)
被加熱物内部の水が沸騰した以降は、使用者の操作に基づいて、茹でモード用の制御を開始ステップ1(以下、ステップを「ST」と省略する)し、通電制御回路200の自己診断プログラムが起動し、加熱前の異常有無のチェックが行われ、表示部Gが起動される(ST2、ST3)。
次に、異常がない場合は、被加熱物載置判断部400を構成する検知回路部280によって、主加熱コイルMCと副加熱コイルSCそれぞれのコイルの上方に被加熱物Nが載置されているか否か、又は、被加熱物Nの底部がいずれのコイルの上方に位置するかを検知する(ST5、ST6、ST7)。
【0035】
この検知結果が制御部である通電制御回路200に伝達され、通電制御回路200において、通常鍋(全ての加熱コイルに鍋が載っている)に適する加熱処理にするか、オーバル鍋1(主加熱コイルと副加熱コイルSC1とSC4に鍋が載っている)に適する加熱処理にするか、オーバル鍋2(主加熱コイルと副加熱コイルSC2とSC3に鍋が載っている)に適する加熱処理にするか、小鍋(主加熱コイルのみに鍋が載っている)に適する加熱処理にするかを決定する(ST8、ST9、ST10、ST11)。
尚、この鍋検知は、所定の電流を各加熱コイルに流し、鍋の有無によって変化する負荷を電流センサーで検知することで行う。
【0036】
そして、通電制御回路200のプログラム内に用意した、図6〜図11のように、それぞれの鍋に合った制御内容(火力や電力パターンなど)を選択し(ST12、ST13、ST14、ST15)、その制御内容に基づきインバータ回路210Lは加熱制御を行なう(ST16)。またこの段階で、通電制御回路200は時間計測および温度検知回路31を開始する(ST17)。
【0037】
尚、「小型鍋」の場合は、この実施の形態では中心部の主加熱コイルMCだけでしか加熱しないので、制御内容(火力や通電パターンなど)は大きく異なる。当然、副加熱コイルSCの全部やその一部だけを個別に加熱駆動できないので、副加熱コイルSCを利用した加熱パターンはない。
【0038】
次に、本発明の特徴である茹でモード用の各コイルの電力(火力)及び時間の制御について説明する。
この制御は、茹でもの調理に必要な沸騰状態を維持するために必要な火力を得るため、主加熱コイルMC、副加熱コイルSC1〜SC4に対して同時に加熱駆動を行ない、また対流促進効果を得るため、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4の駆動電力に差をつけるものである。
更に、主加熱コイルMCおよび副加熱コイルSC1〜SC4の高周波電力による駆動を停止する期間を設けることで、吹き零れの抑制を行なうことを特徴とするものである。
【0039】
ここで、図5は、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4に、同時に高周波電流を各インバータ回路MIV、SIV1〜4から供給され、加熱駆動している状態を示す。特に、図5(A)は、主加熱コイルMCの電力が、副加熱コイルSC1〜SC4の電力の総和より大きい状態を示している。また、図5(B)は、副加熱コイルSC1〜4の電力の総和が、主加熱コイルMCの電力より大きいことを示している。
【0040】
(全てのコイルの上方に被加熱物が位置する場合:図12ステップ12のパターン)
まず、4つの副加熱コイルSC1〜4及び主加熱コイルMCの全てのコイルの上方に被加熱物が位置する場合、つまり、全てコイルに負荷が有ると判断した場合について、図5及び図6〜図8を用いて、主加熱コイルMC及び副加熱コイルSC1〜4それぞれに設定される電力の大きさおよび時間を説明する。
【0041】
図6〜図8は、それぞれ、3つの火加減パターンに応じた主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4にそれぞれ設定される火力の大きさ(W)と時間(t)を示した表及びグラフである。
尚、各図の表において、副加熱コイルSCについては、SC1とSC4の合計火力、SC2とSC3の合計火力が期間ごとに示されている。また、SC1とSC4の間、SC2とSC3の間の火力配分は、均等となっている。
【0042】
(火加減「1」の茹でモード)
図6を参照すると、火加減「1」のときの茹でモードにおける各コイルの通電制御について説明する。尚、被加熱物Nの発熱部は、主加熱コイルMCの真上の部分と、副加熱コイルSC1〜4の真上の部分それぞれ亘った状態となっている。
まず、初期加熱時の期間T1においては、麺などの具材投入により、被加熱物中の水などの温度が下がるため、沸騰を維持するために、主加熱コイルMCおよび、副加熱コイルSC1〜SC4全てを駆動した状態を60秒間継続する(図5(A)の状態)。
【0043】
尚、この期間T1において、主加熱コイルMCに設定される火力の大きさを、副加熱コイルSC1〜4それぞれの火力の総和より大きい火力に設定されている(主加熱コイルMC:800W、副加熱コイルSC1〜4の総和:700W、主加熱コイルMCと副加熱コイルSCの火力の総和:1500W)。
このとき、主加熱コイルMCの方の火力が副加熱コイルSC1〜4の火力の総和より強いため、主加熱コイルMCの真上の部分の方が、副加熱コイルSC1〜SC4の真上の部分より、強力に加熱される。
【0044】
これにより、被加熱物Nの内部において、被加熱物Nの主加熱コイルMCの上方に位置する部位から上方に向かう調理物の流れが発生する。つまり、被加熱物Nの底の中心から上方に向かい、調理物の上部で被加熱物Nの中心から外方向に向かう対流YC1が発生する。
尚、期間T1は、本実施の形態では60秒間に設定されているが、初期の加熱期間のため、後述する期間T3やT5より加熱時間を長めに取っている。
【0045】
次に、期間T1の状態で加熱し続けると、うどんなどの麺類等を茹でた場合、外側YC1方向に対流が起き続け、麺など具材の種類や火力の強さ等によっては、吹き零れが発生してしまう。
そこで、主加熱コイルMC及び副加熱コイルSC1〜SC4の高周波電力による駆動を停止する期間T2を設けることで、この期間T2を設けることにより、対流YC1の流速を一時的に停止させる、又は、弱めることで、吹き零れを抑制することができる。(これは、煮立ってきた調理物の茹で汁の泡が壊れる時間ができることからである。)
尚、期間T2は、本実施の形態では2秒間に設定されているが、対流YC1の流速を吹き零れが抑止できる程度に弱められる時間であればよい。
【0046】
次に、期間T3において、再度主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4に火力を入れる。このときの火力の大きさは、主加熱コイルMCの火力は、副加熱コイルSC1〜4の火力の総和より大きく設定される(主加熱コイルMC:650W、副加熱コイルSC1〜4の総和:600W)(図5(A)の状態)。
このように、T2で火力を停止後、再度加熱コイルMCに設定される火力の大きさを、副加熱コイルSC1〜4の火力の総和より大きく設定して火力を入れることにより、被加熱物Nの底の中心から上方に向かい、調理物の上部で被加熱物Nの中心から外方向に向かう対流YC1を期間T1に引き続き連続的に発生させることができる。
これにより、調理物のかき混ぜ効果を高めることができる。(確認)
尚、期間T3の主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4の火力の総和(1250W)は、期間T1の主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4の火力の総和(1500W)より、小さく設定されている。
【0047】
これは、期間T3の状態は、既に調理物の温度がある程度上がっていることから、火力出力の総和を期間T1より小さくしたものである。これにより、麺などの具材を茹で続けると茹で汁が煮立ってきて吹き零れやすくなるのを防ぎ、吹き零れを抑制している。また、無駄な電力の消費を防ぐ効果もある。
また、期間T3は、本実施の形態では20秒間に設定されているが、吹き零れが起きない程度に設定すればよい。
【0048】
次に、期間T4では、期間T2と同様に主加熱コイルMC及び副加熱コイルSC1〜SC4の高周波電力による駆動を停止することで火力を停止し、吹き零れを抑制している。
次に、期間T5においては、期間T3と同様、主加熱コイルMCに設定される火力の大きさを、副加熱コイルSC1〜4の火力の総和より大きい火力に設定し、主加熱コイルMCの真上の火力が強くなり、YC1方向の対流が発生する(図5(A)の状態)。
次に、期間T6では、期間T2と同様に主加熱コイルMC及び副加熱コイルSC1〜SC4の高周波電力による駆動を停止することで火力を停止し、吹き零れを抑制している。
【0049】
以後これらT3〜T6のパターンが、使用者が設定した調理時間の間、繰り返される。
このように、被加熱物に対面する加熱コイルによって火力を異ならせると共に、火力の投入時間と火力の停止時間を設けることにより、調理物に対して対流を起こすことで、かき混ぜ効果があると共に、吹き零れを抑制することができる。
【0050】
(火加減「2」の茹でモード)
次に、図7を参照すると、火加減「2」のときの茹でモードにおける各コイルの通電制御について説明する。尚、被加熱物Nの発熱部は、主加熱コイルMCの真上の部分と、副加熱コイルSC1〜4の真上の部分それぞれ亘った状態となっている。
まず、初期加熱時の期間T1においては、麺などの具材投入により、被加熱物中の水などの温度が下がるため、沸騰を維持するために、主加熱コイルMCおよび、副加熱コイルSC1〜SC4全てを駆動した状態を60秒間継続する。
【0051】
尚、この期間T1において、主加熱コイルMCに設定される火力の大きさを、副加熱コイルSC1〜4それぞれの火力の総和より大きい火力に設定されている(主加熱コイルMC:1050W、副加熱コイルSC1〜4の総和:700W、主加熱コイルMCと副加熱コイルSCの火力の総和:1750W)(図5(A)の状態)。
このとき、主加熱コイルMCの方の火力が副加熱コイルSC1〜4の火力の総和より強いため、主加熱コイルMCの真上の部分の方が、副加熱コイルSC1〜SC4の真上の部分より、強力に加熱される。
【0052】
これにより、被加熱物Nの内部において、被加熱物Nの主加熱コイルMCの上方に位置する部位から上方に向かう調理物の流れが発生する。つまり、被加熱物Nの底の中心から上方に向かい、調理物の上部で被加熱物Nの中心から外方向に向かう対流YC1が発生する。
尚、期間T1は、本実施の形態では60秒間に設定されているが、初期の加熱期間のため、後述する期間T3やT5より加熱時間を長めに取っている。
【0053】
次に、期間T1の状態で加熱し続けると、うどんなどの麺類等を茹でた場合、外側YC1方向に対流が起き続け、麺など具材の種類や火力の強さ等によっては、吹き零れが発生してしまう。
そこで、主加熱コイルMC及び副加熱コイルSC1〜SC4の高周波電力による駆動を停止する期間T2を設けることで、この期間T2を設けることにより、対流YC1の流速を一時的に停止させる、又は、弱めることで、吹き零れを抑制することができる。(これは、煮立ってきた調理物の茹で汁の泡が壊れる時間ができることからである。)
尚、期間T2は、本実施の形態では1秒間に設定されているが、対流YC1の流速を吹き零れが抑止できる程度に弱められる時間であればよい。
【0054】
次に、期間T3において、再度主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4に火力を入れる。このときの火力の大きさは、副加熱コイルSC1〜4の火力の総和は、主加熱コイルMCの火力より大きく設定される(主加熱コイルMC:350W、副加熱コイルSC1〜4の総和:1400W)(図5(B)の状態)。
このように、期間T2で火力を停止後、期間T1とは火力配分が逆となるように、主加熱コイルMCに設定される火力の大きさより、副加熱コイルSC1〜4の火力の総和を大きく設定して火力を入れることにより、被加熱物Nの底の側面側から上方に向かい、調理物の上部で被加熱物Nの側面側から中心に向かう対流YC2を発生させることができる。つまり、対流YC1と逆を向く対流を形成することができる。
これにより、調理物のかき混ぜ効果を高めることができる。
【0055】
尚、期間T3の主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4の火力の総和(1750W)は、期間T1の主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4の火力の総和(1750W)と同じに設定されている。
また、期間T3は、本実施の形態では20秒間に設定されているが、吹き零れが起きない程度に設定すればよい。
【0056】
次に、期間T4では、期間T2と同様に主加熱コイルMC及び副加熱コイルSC1〜SC4の高周波電力による駆動を停止することで火力を停止し、吹き零れを抑制している。
次に、期間T5においては、初期加熱時の期間T1と同様、主加熱コイルMCに設定される火力の大きさを、副加熱コイルSC1〜4の火力の総和より大きい火力に設定し、主加熱コイルMCの真上の火力が強くなり、YC1方向の対流が発生する(図5(A)の状態)。
尚、期間T5における火力は、主加熱コイルMC:975W、副加熱コイルSC1〜SC4の火力の総和:750W、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4の火力の総和:1625W、に設定されている。
【0057】
これは、期間T5の状態は、既に調理物の温度がある程度上がっていることから、火力出力の総和を期間T1より小さくしたものである。これにより、麺などの具材を茹で続けると茹で汁が煮立ってきて吹き零れやすくなるのを防ぎ、吹き零れを抑制している。また、無駄な電力の消費を防ぐ効果もある。
また、期間T3は、本実施の形態では20秒間に設定されているが、吹き零れが起きない程度に設定すればよい。
【0058】
次に、期間T6では、期間T2と同様に主加熱コイルMC及び副加熱コイルSC1〜SC4の高周波電力による駆動を停止することで火力を停止し、吹き零れを抑制している。
以後これらT3〜T6のパターンが、使用者が設定した調理時間の間、繰り返される。
この様に、被加熱物に対面する加熱コイルによって火力を異ならせると共に、適宜、被加熱物に対向する加熱コイルの部分的な火力を入れ替えることで、より複雑な調理物の対流を生み出すことができ、調理物のより高いかき混ぜ効果を期待できる。
また、適宜、火力の停止時間を設けることにより、上記の効果と共に、調理物の吹き零れを抑制することができる。
【0059】
(火加減「3」の茹でモード)
次に、図8を参照すると、火加減「3」のときの茹でモードにおける各コイルの通電制御について説明する。尚、被加熱物Nの発熱部は、主加熱コイルMCの真上の部分と、副加熱コイルSC1〜4の真上の部分それぞれ亘った状態となっている。
まず、初期加熱時の期間T1においては、麺などの具材投入により、被加熱物中の水などの温度が下がるため、沸騰を維持するために、主加熱コイルMCおよび、副加熱コイルSC1〜SC4全てを駆動した状態を60秒間継続する。
【0060】
尚、この期間T1において、主加熱コイルMCに設定される火力の大きさを、副加熱コイルSC1〜4それぞれの火力の総和より大きい火力に設定されている(主加熱コイルMC:1300W、副加熱コイルSC1〜4の総和:700W、主加熱コイルMCと副加熱コイルSCの火力の総和:2000W)(図5(A)の状態)。
このとき、主加熱コイルMCの方の火力が副加熱コイルSC1〜4の火力の総和より強いため、主加熱コイルMCの真上の部分の方が、副加熱コイルSC1〜SC4の真上の部分より、強力に加熱される。
【0061】
これにより、被加熱物Nの内部において、被加熱物Nの主加熱コイルMCの上方に位置する部位から上方に向かう調理物の流れが発生する。つまり、被加熱物Nの底の中心から上方に向かい、調理物の上部で被加熱物Nの中心から外方向に向かう対流YC1が発生する。
尚、期間T1は、本実施の形態では60秒間に設定されているが、初期の加熱期間のため、後述する期間T3やT5より加熱時間を長めに取っている。
【0062】
次に、期間T1の状態で加熱し続けると、うどんなどの麺類等を茹でた場合、外側YC1方向に対流が起き続け、麺など具材の種類や火力の強さ等によっては、吹き零れが発生してしまう。
そこで、主加熱コイルMC及び副加熱コイルSC1〜SC4の高周波電力による駆動を停止する期間T2を設けることで、この期間T2を設けることにより、対流YC1の流速を一時的に停止させる、又は、弱めることで、吹き零れを抑制することができる。(これは、煮立ってきた調理物の茹で汁の泡が壊れる時間ができることからである。)
尚、期間T2は、本実施の形態では1秒間に設定されているが、対流YC1の流速を吹き零れが抑止できる程度に弱められる時間であればよい。
【0063】
次に、期間T3において、再度主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4に火力を入れる。このときの火力の大きさは、副加熱コイルSC1〜4の火力の総和は、主加熱コイルMCの火力より大きく設定される(主加熱コイルMC:417W、副加熱コイルSC1〜4の総和:1458W)(図5(B)の状態)。
このように、期間T2で火力を停止後、期間T1とは火力配分が逆となるように、主加熱コイルMCに設定される火力の大きさより、副加熱コイルSC1〜4の火力の総和を大きく設定して火力を入れることにより、被加熱物Nの底の側面側から上方に向かい、調理物の上部で被加熱物Nの側面側から中心に向かう対流YC2を発生させることができる。つまり、対流YC1と逆を向く対流を形成することができる。
これにより、調理物のかき混ぜ効果を高めることができる。(確認)
【0064】
尚、期間T3の主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4の火力の総和(1875W)は、期間T1の主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4の火力の総和(2000W)より小さく設定されている。
これは、期間T3の状態は、既に調理物の温度がある程度上がっていることから、火力出力の総和を期間T1より小さくしたものである。これにより、麺などの具材を茹で続けると茹で汁が煮立ってきて吹き零れやすくなるのを防ぎ、吹き零れを抑制している。また、無駄な電力の消費を防ぐ効果もある。
また、期間T3は、本実施の形態では20秒間に設定されているが、吹き零れが起きない程度に設定すればよい。
【0065】
次に、期間T4では、期間T2と同様に主加熱コイルMC及び副加熱コイルSC1〜SC4の高周波電力による駆動を停止することで火力を停止し、吹き零れを抑制している。
次に、期間T5においては、初期加熱時の期間T1と同様、主加熱コイルMCに設定される火力の大きさを、副加熱コイルSC1〜4の火力の総和より大きい火力に設定し、主加熱コイルMCの真上の火力が強くなり、YC1方向の対流が発生する(図5(A)の状態)。
尚、期間T5における火力は、主加熱コイルMC:1085W、副加熱コイルSC1〜SC4の火力の総和:750W、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4の火力の総和:790W、に設定されている。
【0066】
これは、期間T5の状態は、既に調理物の温度がある程度上がっていることから、火力出力の総和を期間T1より小さくしたものである。これにより、麺などの具材を茹で続けると茹で汁が煮立ってきて吹き零れやすくなるのを防ぎ、吹き零れを抑制している。また、無駄な電力の消費を防ぐ効果もある。
また、期間T5は、本実施の形態では20秒間に設定されているが、吹き零れが起きない程度に設定すればよい。
【0067】
次に、期間T6では、期間T2と同様に主加熱コイルMC及び副加熱コイルSC1〜SC4の高周波電力による駆動を停止することで火力を停止し、吹き零れを抑制している。
以後これらT3〜T6のパターンが、使用者が設定した調理時間の間、繰り返される。
この様に、被加熱物に対面する加熱コイルによって火力を異ならせると共に、適宜、被加熱物に対向する加熱コイルの部分的な火力を入れ替えることで、より複雑な調理物の対流を生み出すことができ、調理物のより高いかき混ぜ効果を期待できる。
また、適宜、火力の停止時間を設けることにより、上記の効果と共に、調理物の吹き零れを抑制することができる。
【0068】
以上のように図6〜図8において、それぞれの設定時間および設定電力は、沸騰を維持できて吹き零れを抑制できるのであれば、上記の値そのものでなくても良い。
また図6〜図8のような時間制御ではなく、検知した被加熱物の温度を、設定した温度閾値テーブルと比較して閾値を超えた場合は電力を下げるあるいは停止するなどの制御の手段として用いても良く、また時間と温度を組み合わせた制御を行なっても良い。
【0069】
また、図6〜図8でそれぞれ説明したように、本実施の形態では茹でモードの火加減は3段階あり、それぞれ設定電力を変えている。これは使用する鍋などの被調理物のサイズや形状、被調理物の中に入れる麺などの具材の種類や分量などにより、使用者が最適な火加減を調整できるようにするためである。
つまり、この火加減の調整段階は3段階でなくても良く、5段階とか8段階などに細かく分けても良い。
【0070】
(被加熱物が全ての加熱コイルを覆わない場合:図12のステップ10のパターン)
次に、被加熱部が全ての加熱コイルの上方に位置しない場合、例えば、被加熱物が楕円形(いわゆるオーバル鍋)のように特殊な形状の場合の主加熱コイルMCおよび副加熱コイルSC1〜4それぞれに設定される電力の大きさおよび時間を説明する。
図9〜図11は、副加熱コイルSCの一部で負荷無と判断した場合のうち、副加熱コイルSC1およびSC4の組合せが負荷無と判断した場合(つまり、副加熱コイルSC1とSC4の上方に被加熱物が位置しない状態)の主加熱コイルMCおよび副加熱コイルSC1〜4それぞれに設定される電力の大きさおよび時間を示す。
【0071】
(火加減「1」の茹でモード)
図9を参照すると、火加減「1」のときの茹でモードにおける各コイルの通電制御について説明する。尚、被加熱物Nの発熱部は、主加熱コイルMCの真上の部分と、副加熱コイルSC2,3の真上の部分それぞれ亘った状態となっている。
まず、初期加熱時の期間T1においては、麺などの具材投入により、被加熱物中の水などの温度が下がるため、沸騰を維持するために、主加熱コイルMCおよび、副加熱コイルSC2とSC3を駆動した状態を40秒間継続する。
【0072】
尚、この期間T1において、主加熱コイルMCに設定される火力の大きさを、副加熱コイルSC2とSC3の火力の総和より大きい火力に設定されている(主加熱コイルMC:734W、副加熱コイルの総和:391W、主加熱コイルMCと副加熱コイルSCの火力の総和:1125W)。
この時、主加熱コイルMCの方の火力が副加熱コイルSCの火力の総和より強いため、主加熱コイルMCの真上の部分の方が、副加熱コイルの真上の部分より、強力に加熱される。
【0073】
これにより、被加熱物Nの内部において、被加熱物Nの主加熱コイルMCの上方に位置する部位から上方に向かう調理物の流れが発生する。つまり、被加熱物Nの底の中心から上方に向かい、調理物の上部で被加熱物Nの中心から外方向に向かう対流YC1が発生する。
尚、期間T1は、本実施の形態では40秒間に設定されているが、初期の加熱期間のため、後述する期間T3やT5より加熱時間を長めに取っている。
【0074】
次に、期間T1の状態で加熱し続けると、うどんなどの麺類等を茹でた場合、外側YC1方向に対流が起き続け、麺など具材の種類や火力の強さ等によっては、吹き零れが発生してしまう。
そこで、主加熱コイルMC及び副加熱コイルSCの高周波電力による駆動を停止する期間T2を設けて、対流YC1の流速を一時的に停止させる、又は、弱めることで、吹き零れを抑制することができる。(これは、煮立ってきた調理物の茹で汁の泡が壊れる時間ができることからである。)
尚、期間T2は、本実施の形態では2秒間に設定されているが、対流YC1の流速を吹き零れが抑止できる程度に弱められる時間であればよい。
【0075】
次に、期間T3において、再度主加熱コイルMCと副加熱コイルSC2とSC3に火力を入れる。このときの火力の大きさは、主加熱コイルMCの火力は、副加熱コイルSCの火力の総和より大きく設定される(主加熱コイルMC:605W、副加熱コイルSCの総和:330W)(図5(A)の状態)。
このように、T2で火力を停止後、再度加熱コイルMCに設定される火力の大きさを、副加熱コイルSC1〜4の火力の総和より大きく設定して火力を入れることにより、被加熱物Nの底の中心から上方に向かい、調理物の上部で被加熱物Nの中心から外方向に向かう対流YC1を期間T1に引き続き連続的に発生させることができる。
これにより、調理物のかき混ぜ効果を高めることができる。(確認)
尚、期間T3の主加熱コイルMCと副加熱コイルSCの火力の総和(935W)は、期間T1の主加熱コイルMCと副加熱コイルSCの火力の総和(1135W)より、小さく設定されている。
【0076】
これは、期間T3の状態は、既に調理物の温度がある程度上がっていることから、火力出力の総和を期間T1より小さくしたものである。これにより、麺などの具材を茹で続けると茹で汁が煮立ってきて吹き零れやすくなるのを防ぎ、吹き零れを抑制している。また、無駄な電力の消費を防ぐ効果もある。
また、期間T3は、本実施の形態では10秒間に設定されているが、吹き零れが起きない程度に設定すればよい。
【0077】
次に、期間T4では、期間T2と同様に主加熱コイルMC及び副加熱コイルSCの高周波電力による駆動を停止することで火力を停止し、吹き零れを抑制している。
次に、期間T5においては、期間T3と同様、主加熱コイルMCに設定される火力の大きさを、副加熱コイルSCの火力の総和より大きい火力に設定し、主加熱コイルMCの真上の火力が強くなり、YC1方向の対流が発生する(図5(A)の状態)。
次に、期間T6では、期間T2と同様に主加熱コイルMC及び副加熱コイルSC1〜SC4の高周波電力による駆動を停止することで火力を停止し、吹き零れを抑制している。
【0078】
以後これらT3〜T6のパターンが、使用者が設定した調理時間の間、繰り返される。
このように、被加熱物に対面する加熱コイルによって火力を異ならせると共に、火力の投入時間と火力の停止時間を設けることにより、調理物に対して対流を起こすことで、かき混ぜ効果があると共に、吹き零れを抑制することができる。
【0079】
(火加減「2」の茹でモード)
次に、図10を参照すると、火加減「2」のときの茹でモードにおける各コイルの通電制御について説明する。尚、被加熱物Nの発熱部は、主加熱コイルMCの真上の部分と、副加熱コイルSC2とSC3の真上の部分それぞれ亘った状態となっている。
まず、初期加熱時の期間T1においては、麺などの具材投入により、被加熱物中の水などの温度が下がるため、沸騰を維持するために、主加熱コイルMCおよび、副加熱コイルSC2とSC3全てを駆動した状態を40秒間継続する。
【0080】
尚、この期間T1において、主加熱コイルMCに設定される火力の大きさを、副加熱コイルSC2とSC3の火力の総和より大きい火力に設定されている(主加熱コイルMC:734W、副加熱コイルSCの総和:391W、主加熱コイルMCと副加熱コイルSCの火力の総和:1125W)。
この時、主加熱コイルMCの方の火力が副加熱コイルSCの火力の総和より強いため、主加熱コイルMCの真上の部分の方が、副加熱コイルSCの真上の部分より、強力に加熱される。
【0081】
これにより、被加熱物Nの内部において、被加熱物Nの主加熱コイルMCの上方に位置する部位から上方に向かう調理物の流れが発生する。つまり、被加熱物Nの底の中心から上方に向かい、調理物の上部で被加熱物Nの中心から外方向に向かう対流YC1が発生する。
尚、期間T1は、本実施の形態では40秒間に設定されているが、初期の加熱期間のため、後述する期間T3やT5より加熱時間を長めに取っている。
【0082】
次に、期間T1の状態で加熱し続けると、うどんなどの麺類等を茹でた場合、外側YC1方向に対流が起き続け、麺など具材の種類や火力の強さ等によっては、吹き零れが発生してしまう。
そこで、主加熱コイルMC及び副加熱コイルSC1〜SC4の高周波電力による駆動を停止する期間T2を設けることで、この期間T2を設けることにより、対流YC1の流速を一時的に停止させる、又は、弱めることで、吹き零れを抑制することができる。(これは、煮立ってきた調理物の茹で汁の泡が壊れる時間ができることからである。)
尚、期間T2は、本実施の形態では1秒間に設定されているが、対流YC1の流速を吹き零れが抑止できる程度に弱められる時間であればよい。
【0083】
次に、期間T3において、再度主加熱コイルMCと副加熱コイルSC2とSC3に火力を入れる。このときの火力の大きさは、副加熱コイルSCの火力の総和は、主加熱コイルMCの火力より大きく設定される(主加熱コイルMC:197W、副加熱コイルの総和:738W)。
このように、期間T2で火力を停止後、期間T1とは火力配分が逆となるように、主加熱コイルMCに設定される火力の大きさより、副加熱コイルSC1〜4の火力の総和を大きく設定して火力を入れることにより、被加熱物Nの底の側面側から上方に向かい、調理物の上部で被加熱物Nの側面側から中心に向かう対流YC2を発生させることができる。つまり、対流YC1と逆を向く対流を形成することができる。
これにより、調理物のかき混ぜ効果を高めることができる。
【0084】
尚、期間T3の主加熱コイルMCと副加熱コイルSCの火力の総和(935W)は、期間T1の主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4の火力の総和(1125W)より小さく設定されている。
これは、期間T3の状態は、既に調理物の温度がある程度上がっていることから、火力出力の総和を期間T1より小さくしたものである。これにより、麺などの具材を茹で続けると茹で汁が煮立ってきて吹き零れやすくなるのを防ぎ、吹き零れを抑制している。また、無駄な電力の消費を防ぐ効果もある。
また、期間T3は、本実施の形態では20秒間に設定されているが、吹き零れが起きない程度に設定すればよい。
【0085】
次に、期間T4では、期間T2と同様に主加熱コイルMC及び副加熱コイルSCの高周波電力による駆動を停止することで火力を停止し、吹き零れを抑制している。
次に、期間T5においては、初期加熱時の期間T1と同様、主加熱コイルMCに設定される火力の大きさを、副加熱コイルSC2とSC3の火力の総和より大きい火力に設定し、主加熱コイルMCの真上の火力が強くなり、YC1方向の対流が発生する。
尚、期間T5における火力は、主加熱コイルMC:716W、副加熱コイルSCの火力の総和:409W、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC火力の総和:1125W、に設定されている。
また、期間T3は、本実施の形態では10秒間に設定されているが、吹き零れが起きない程度に設定すればよい。
【0086】
次に、期間T6では、期間T2と同様に主加熱コイルMC及び副加熱コイルSC1〜SC4の高周波電力による駆動を停止することで火力を停止し、吹き零れを抑制している。
以後これらT3〜T6のパターンが、使用者が設定した調理時間の間、繰り返される。
この様に、被加熱物に対面する加熱コイルによって火力を異ならせると共に、適宜、被加熱物に対向する加熱コイルの部分的な火力を入れ替えることで、より複雑な調理物の対流を生み出すことができ、調理物のより高いかき混ぜ効果を期待できる。
また、適宜、火力の停止時間を設けることにより、上記の効果と共に、調理物の吹き零れを抑制することができる。
【0087】
(火加減「3」の茹でモード)
次に、図11を参照すると、火加減「3」のときの茹でモードにおける各コイルの通電制御について説明する。尚、被加熱物Nの発熱部は、主加熱コイルMCの真上の部分と、副加熱コイルSC2とSC3の真上の部分それぞれ亘った状態となっている。
まず、初期加熱時の期間T1においては、麺などの具材投入により、被加熱物中の水などの温度が下がるため、沸騰を維持するために、主加熱コイルMCおよび、副加熱コイルSC1〜SC4全てを駆動した状態を40秒間継続する。
【0088】
尚、この期間T1において、主加熱コイルMCに設定される火力の大きさを、副加熱コイルSC2とSC3の火力の総和より大きい火力に設定されている(主加熱コイルMC:734W、副加熱コイルSCの総和:391W、主加熱コイルMCと副加熱コイルSCの火力の総和:1125(W)。
この時、主加熱コイルMCの方の火力が副加熱コイルSCの火力の総和より強いため、主加熱コイルMCの真上の部分の方が、副加熱コイルSCの真上の部分より、強力に加熱される。
【0089】
これにより、被加熱物Nの内部において、被加熱物Nの主加熱コイルMCの上方に位置する部位から上方に向かう調理物の流れが発生する。つまり、被加熱物Nの底の中心から上方に向かい、調理物の上部で被加熱物Nの中心から外方向に向かう対流YC1が発生する。
尚、期間T1は、本実施の形態では40秒間に設定されているが、初期の加熱期間のため、後述する期間T3やT5より加熱時間を長めに取っている。
【0090】
次に、期間T1の状態で加熱し続けると、うどんなどの麺類等を茹でた場合、外側YC1方向に対流が起き続け、麺など具材の種類や火力の強さ等によっては、吹き零れが発生してしまう。
そこで、主加熱コイルMC及び副加熱コイルSCの高周波電力による駆動を停止する期間T2を設けることで、この期間T2を設けることにより、対流YC1の流速を一時的に停止させる、又は、弱めることで、吹き零れを抑制することができる。
尚、期間T2は、本実施の形態では1秒間に設定されているが、対流YC1の流速を吹き零れが抑止できる程度に弱められる時間であればよい
【0091】
次に、期間T3において、再度主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4に火力を入れる。このときの火力の大きさは、副加熱コイルSC2とSC3の火力の総和は、主加熱コイルMCの火力より大きく設定される(主加熱コイルMC:197W、副加熱コイルSCの総和:738W)。
このように、期間T2で火力を停止後、期間T1とは火力配分が逆となるように、主加熱コイルMCに設定される火力の大きさより、副加熱コイルSCの火力の総和を大きく設定して火力を入れることにより、被加熱物Nの底の側面側から上方に向かい、調理物の上部で被加熱物Nの側面側から中心に向かう対流YC2を発生させることができる。
つまり、対流YC1と逆を向く対流を形成することができる。これにより、調理物のかき混ぜ効果を高めることができる。
【0092】
尚、期間T3の主加熱コイルMCと副加熱コイルSCの火力の総和(935W)は、期間T1の主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4の火力の総和(1125W)より小さく設定されている。
これは、期間T3の状態は、既に調理物の温度がある程度上がっていることから、火力出力の総和を期間T1より小さくしたものである。これにより、麺などの具材を茹で続けると茹で汁が煮立ってきて吹き零れやすくなるのを防ぎ、吹き零れを抑制している。また、無駄な電力の消費を防ぐ効果もある。
また、期間T3は、本実施の形態では20秒間に設定されているが、吹き零れが起きない程度に設定すればよい。
【0093】
次に、期間T4では、期間T2と同様に主加熱コイルMC及び副加熱コイルSCの高周波電力による駆動を停止することで火力を停止し、吹き零れを抑制している。
次に、期間T5においては、初期加熱時の期間T1と同様、主加熱コイルMCに設定される火力の大きさを、副加熱コイルSC2とSC3の火力の総和より大きい火力に設定している。これにより、主加熱コイルMCの真上の火力が強くなり、YC1方向の対流が発生する(図5(A)の状態)。
尚、期間T5における火力は、主加熱コイルMC:833W、副加熱コイルSCの火力の総和:417W、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜4の火力の総和:1250W、に設定されている。
また、期間T5は、本実施の形態では10秒間に設定されているが、吹き零れが起きない程度に設定すればよい。
【0094】
次に、期間T6では、期間T2と同様に主加熱コイルMC及び副加熱コイルSC1〜SC4の高周波電力による駆動を停止することで火力を停止し、吹き零れを抑制している。
以後これらT3〜T6のパターンが、使用者が設定した調理時間の間、繰り返される。
この様に、被加熱物に対面する加熱コイルによって火力を異ならせると共に、適宜、被加熱物に対向する加熱コイルの部分的な火力を入れ替えることで、より複雑な調理物の対流を生み出すことができ、調理物のより高いかき混ぜ効果を期待できる。
また、適宜、火力の停止時間を設けることにより、上記の効果と共に、調理物の吹き零れを抑制することができる。
【0095】
このように対角上にある副加熱コイル(この場合SC1、SC4)の負荷がないと判断すると、副加熱コイル(SC1、SC4)は使用しないモードとして扱い、負荷無と判断した副加熱コイル部分については、電力(火力)を入れないように制御し、無駄な電力の消費を防ぐ。
尚、同様に、SC2およびSC3が負荷無と判断された場合は、副加熱コイル(SC2、SC3)を使用しないモードとして、同様の制御を行ない、この場合はSC2、SC3の電力を入れないように制御する(図12のステップ13)。
【0096】
以上のように、図6〜図11に示す時間、及び、電力(火力)は、通電制御回路200の内蔵プログラムによって自動的に選択され、主加熱コイルMCや副加熱コイルSC1〜SC4のそれぞれの通電可否や通電量、通電時間などが設定される。
これにより、茹でモードにおける吹き零れの抑制が可能となると共に、調理物のかき混ぜ効果を期待することができる。
【符号の説明】
【0097】
A 本体部、D 加熱手段、E 操作手段、F 制御手段、G 表示手段、W 横幅寸法、CL1 本体部Aの左右中心線、CL2 第1の誘導加熱部の左右中心線、CL3 第2の誘導加熱部の左右中心線、DB 副加熱コイルの配置外形寸法、N 被加熱物(鍋)、SC 副加熱コイル(群)、SC1〜SC4 副加熱コイル、MC 主加熱コイル、MIV 主加熱コイル用インバータ回路、 SIV1〜SIV4 副加熱コイル用インバータ回路、T1〜T6 期間(区間)、21 トッププレート、31 温度検出回路、100 表示画面、200 通電制御回路、400 被加熱物載置判断部、X1 第1の誘導加熱部の中心点、X2 第2の誘導加熱部の中心点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状の主加熱コイルと、
前記主加熱コイルの側部に近接して配置される扁平形状の複数の副加熱コイルと、
前記主加熱コイル及び全ての副加熱コイルに、それぞれ誘導加熱の為の電力を供給するインバータ回路と、
前記インバータ回路の出力を制御する制御部と、
前記制御部に加熱の動作又は条件の少なくとも何れか一方を指示する操作部を有し、
前記制御部は、前記操作部からの指示を受けると、被加熱物の初期加熱期間として第1の期間を設け、該第1の期間の間、前記インバータ回路から前記主加熱コイルおよび複数の前記副加熱コイルに対し、第1の総電力を供給し、かつ、複数の前記副加熱コイルに供給している電力の総和より、前記主加熱コイルに供給している電力が大きくなるように前記第1の総電力を配分し、
前記第1の期間の後、前記主加熱コイル、及び、複数の前記副加熱コイルへの誘導加熱電力の供給を所定の期間停止する第2の期間を設け、
前記第2の期間の後、前記主加熱コイルおよび複数の前記副加熱コイルに対し、第2の総電力を供給する第3の期間を設け、かつ、複数の前記副加熱コイルに供給する電力の総和より、前記主加熱コイルに供給している電力が小さくなるように前記第2の電力を配分し、
前記第3の期間の後、前記主加熱コイル、及び、複数の前記副加熱コイルへの誘導加熱電力の供給を停止した期間4を設け、
前記第4の期間の後、前記主加熱コイル、及び、複数の前記副加熱コイルに対し、第3の総電力を供給する期間5を設け、かつ、複数の前記副加熱コイルに供給している電力の総和より、前記主加熱コイルに供給している電力が大きくなるように前記第3の電力5を配分し、
前記第5の期間の後、前記主加熱コイル、及び、複数の前記副加熱コイルへの誘導加熱電力の供給を停止した第6の期間を設け、
前記制御部は、前記主加熱コイル、及び、複数の前記第副加熱コイルに対して、前記第1乃至第6の期間を経た後、前記第3乃至第6の期間の通電制御動作を繰り返すことを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項2】
円環状の主加熱コイルと、
前記主加熱コイルの側部に近接して配置される扁平形状の複数の副加熱コイルと、
前記主加熱コイル及び全ての副加熱コイルに、それぞれ誘導加熱の為の電力を供給するインバータ回路と、
前記インバータ回路の出力を制御する制御部と、
前記制御部に加熱の動作又は条件の少なくとも何れか一方を指示する操作部を有し、
前記制御部は、前記操作部からの指示を受けると、被加熱物の初期加熱期間として第1の期間を設け、該第1の期間の間、前記インバータ回路から前記主加熱コイルおよび複数の前記副加熱コイルに対し、第1の総電力を供給し、かつ、複数の前記副加熱コイルに供給している電力の総和より、前記主加熱コイルに供給している電力が大きくなるように前記第1の総電力を配分し、
前記第1の期間の後、前記主加熱コイル、及び、複数の前記副加熱コイルへの誘導加熱電力の供給を所定の期間停止する第2の期間を設け、
前記第2の期間の後、前記主加熱コイルおよび複数の前記副加熱コイルに対し、第2の総電力を供給する第3の期間を設け、かつ、複数の前記副加熱コイルに供給する電力の総和より、前記主加熱コイルに供給している電力が大きくなるように前記第2の電力を配分し、
前記第3の期間の後、前記主加熱コイル、及び、複数の前記副加熱コイルへの誘導加熱電力の供給を停止した期間4を設け、
前記第4の期間の後、前記主加熱コイル、及び、複数の前記副加熱コイルに対し、第3の総電力を供給する期間5を設け、かつ、複数の前記副加熱コイルに供給している電力の総和より、前記主加熱コイルに供給している電力が大きくなるように前記第3の電力5を配分し、
前記第5の期間の後、前記主加熱コイル、及び、複数の前記副加熱コイルへの誘導加熱電力の供給を停止した第6の期間を設け、
前記制御部は、前記主加熱コイル、及び、複数の前記副加熱コイルに対して、前記第1乃至第6の期間を経た後、前記第3乃至第6の期間の通電制御動作を繰り返すことを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項3】
複数の前記副加熱コイルの内、上方に被加熱物が位置している前記副加熱コイルのみ、誘導加熱のための電力を供給することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の誘導加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−65498(P2013−65498A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204217(P2011−204217)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】