説明

誘導灯装置

【課題】非常時に誘導灯を拡大表示させることで視認性を向上させ、誘導灯を確実に認知できるようにした。
【解決手段】誘導灯装置1は、LED2の発光によりピクトグラム3を表示し、ピクトグラム3の表示面の大きさを変更できるように構成されている。ピクトグラム3は、制御手段4を介して災害を検知する非常検知部5に接続され、非常検知部5が作動していない通常時にはピクトグラム3を通常時表示とし、例えば火災などで非常検知部5が作動した時には制御手段4によって制御してピクトグラム3を大きな拡大表示に切り替えてピクトグラム3の視認性を大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災などの非常時に非難口へ誘導するための誘導灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、避難口の存在を喚起させるための誘導灯は、一定の輝度で常時点灯するものが一般的であり、火災などの災害発生時の避難の際に誰にでも容易に認知できるように視認性がよく、その存在を喚起できるように設置されている。
また、映画館や劇場などの施設で使用される誘導灯としては、上演中の会場内の雰囲気(例えば照明による演出効果など)を損なわないような意匠性が要求されると共に、不特定多数の人が集まることから避難時にはとくに視認性に優れ、円滑に避難できるような誘導灯が要求されている。そこで、このような要求に対応できる誘導灯が、例えば特許文献1乃至3に提案されている。
特許文献1は、非常時のみに避難誘導灯として作動させ、通常時は照明灯として動作するものである。
特許文献2は、誘導灯の明るさを任意に設定することができ、非常時には誘導灯の明るさを最大にすることにより、観客などの避難を円滑に行なえるようにしたものである。
特許文献3は、人が居る時間帯のみスタンバイ状態に切り替えられ、火災時などで室内に煙が充満するような場合に誘導灯を発光させるようにした避難誘導灯システムである。
【特許文献1】特開平9−82118号公報
【特許文献2】特開平6−196272号公報
【特許文献3】特開2004−302974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の誘導灯では、以下のような問題があった。
誘導灯の大きさは、消防庁の規定(平成11年消防庁告示第2号)により表示面の大きさ(正方形の場合は一辺が12cm以上、長方形の場合は、短辺10cm以上かつ面積300cm以上)が定められている。そして、とくに上述した映画館や劇場などにおける意匠性の観点から、規定の大きさを超える表示面の誘導灯を設置することが少ないといった現状がある。そのため、場内の広い空間では誘導灯の視認性が悪く、多数の人の全員が誘導灯を認知することが確実ではなく、円滑に避難できないといった問題があった。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、非常時に誘導灯を拡大表示させることで視認性を向上させ、誘導灯を確実に認知できるようにした誘導灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る誘導灯装置では、発光ダイオードの発光により誘導灯が表示され、誘導灯の表示の大きさが変更可能に設けられていることを特徴としている。
本発明では、使用状態や緊急度に応じて誘導灯の表示面の大きさを適宜変えて表示することができる。これにより、誘導灯装置を避難口付近に設置し、火災通常時には誘導灯を避難口の存在を喚起できる程度の大きさの表示面とし、火災発生時などの非常時には誘導灯の表示面を大きくすることで、誘導灯の視認性を大きくすることができる。
【0006】
また、本発明に係る誘導灯装置では、誘導灯は、制御手段を介して災害を検知する非常検知部に接続され、非常検知部が作動した非常時には、制御手段によって誘導灯を通常時に表示される通常時表示から通常時表示より大きな表示面をなす拡大表示となるように制御されることが好ましい。
本発明では、非常検知部が作動していない通常時には誘導灯を通常時表示とし、例えば火災などで非常検知部が作動した時には制御手段によって制御して誘導灯を大きな拡大表示に切り替えることができる。
【0007】
また、本発明に係る誘導灯装置では、発光ダイオードの光量を変えて誘導灯の輝度を変化させることが好ましい。
本発明では、発光ダイオードの光量を調整して誘導灯の輝度を変更できることから、例えば映画館や劇場などで使用を想定した場合に、上映中は必要最低限(すなわち、認知性を損なわない程度)の輝度にして会場の雰囲気の低下を防ぐことができ、上映終了後に緩やかに明るくすることができる。このように誘導灯を低輝度にすることで、用途に好適な誘導灯装置を設置することができる。
【0008】
また、本発明に係る誘導灯装置では、誘導灯は、点滅することが好ましい。
本発明では、誘導灯を点滅させることによって、人の目を効果的に惹き付けることができ、さらに視認性を高める効果を奏する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の誘導灯装置によれば、使用状態や緊急度に応じて誘導灯の表示面の大きさを適宜変えて表示できる。そのため、火災などの非常時に誘導灯を拡大表示として存在を強調することで、その視認性を向上させ、例えば映画館や劇場などの広い場内で不特定多数の人がいるような施設であっても、場内の全員が誘導灯を確実に認知することができ、円滑な避難が行なえる。しかも、通常時には、誘導灯の大きさを拡大表示より小さな表示面で表示し、映画館や劇場などの場内の意匠性や雰囲気を低下させないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る誘導灯装置の実施の形態について、図1および図2に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態による誘導灯装置の概要を示す図、図2は非常時におけるピクトグラムの表示状態を示す図である。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態による誘導灯装置1は、例えば映画館や劇場などの避難口(扉など)の付近(本実施の形態では避難口の上部)に設置されるものである。
誘導灯装置1は、平面上に格子状に配列された複数の発光ダイオード(以下、「LED2」と略称する)を備えた電光掲示板をなし、そのLED2によって所定の輝度でピクトグラム3(誘導灯)を表示するものである。そして、ピクトグラム3は、その表示面の寸法が変更可能とされ、任意の大きさの表示で表示できるようになっている。なお、LED2は、表示するピクトグラム3に応じた適宜な色のものが使用される。
【0012】
具体的に誘導灯装置1のピクトグラム3は、通常時(後述する非常検知部5が作動していない状態など)に避難口の存在を喚起できる程度の大きさをなす通常時表示T1(図1参照)と、通常時表示T1より大きな表示をなす拡大表示T2(図2参照)との二種類に設定されている。ここで、誘導灯装置1の大きさは、設定されたピクトグラム3の拡大表示T2を表示できる大きさとされる。
【0013】
また、本誘導灯装置1は、制御手段4を介して火災検知器などの非常検知部5に接続されている。そして、本誘導灯装置1では、通常時(非常検知部5が作動していない状態)にはピクトグラム3が通常時表示T1(図1)で表示され、例えば火災などで非常検知部5が作動した時にはピクトグラム3の表示の大きさを通常時表示T1から拡大表示T2(図2参照)に切り替えるように制御手段4によって制御される。
【0014】
上述のように実施の形態による誘導灯装置では、使用状態や緊急度に応じて誘導灯をなすピクトグラム3の表示の大きさを適宜変えて表示できる。そのため、火災などの非常時にピクトグラム3を拡大表示T2として存在を強調することで、その視認性を向上させ、例えば映画館や劇場などの広い場内で不特定多数の人がいるような施設であっても、場内の全員がピクトグラム3を確実に認知することができ、円滑な避難が行なえる。
しかも、通常時には、ピクトグラム3の大きさを拡大表示T2より小さな表示で表示し、映画館や劇場などの場内の意匠性や雰囲気を低下させないようにすることができる。
【0015】
次に、本発明の実施の形態の変形例について、図3に基づいて説明するが、上述の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施の形態と異なる構成について説明する。
図3は本発明の実施の形態の変形例による誘導灯装置の概要を示す図である。
図3に示すように、本変形例の誘導灯装置1は、通常時におけるピクトグラム3の輝度を変更可能にしたものであり、LED2の光量を変えることで、通常時表示T1のピクトグラム3の輝度(これを「通常輝度」とする)より小さな輝度をなす低輝度表示T3が設定されている。つまり、本変形例では、例えば映画館や劇場などで場内に観客がいない場合や上映、上演中の場合など使用状態に応じて、雰囲気(例えば、照明効果など)を損なわない程度の輝度をなす低輝度表示T3でピクトグラム3が表示される。そして、上映終了後に通常輝度をなす通常時表示T1に切り替えるようにすることができる。
なお、変形例の場合も実施の形態と同様に、火災などによる非難時には、通常時表示T1或いは低輝度表示T3の状態に関わらず、拡大表示T2(図2参照)に切り替えることができる。
【0016】
このように、本変形例では、ピクトグラム3の光量を調整できることから、映画館や劇場などで使用を想定した場合に、上映中は必要最低限、すなわち、認知性を損なわない程度の輝度にして会場の雰囲気の低下を防ぐことができ、上映終了後に緩やかに明るくすることができる。このようにピクトグラム3を低輝度にすることで、用途に好適な誘導灯装置1を設置することができる。
なお、低輝度表示T3では、上述したように避難口の存在を喚起できる程度の輝度が確保されるものとする。
【0017】
以上、本発明による誘導灯装置の実施の形態及び変形例について説明したが、本発明は上記の実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態及び変形例では例えば映画館や劇場などに採用しているが、このような施設、用途に限定されるものではなく、例えば商業施設、ホテル、学校、病院など多数の人が集まるような建物、場所に使用することができる。
また、本実施の形態及び変形例で表示されるピクトグラム3は誘導灯の一例であって、このピクトグラム3に限定されず、絵文字のほかに文字のみや避難経路を示す矢印マークなどであってもかまわない。
【0018】
さらに、誘導灯(ピクトグラム3)の表示面の大きさは、規定されている大きさを以上であれば、とくに制限されるものではない。そして、本実施の形態ではピクトグラム3における表示面の大きさのパターン数を通常時表示T1と拡大表示T2の二種類、変形例ではこれに低輝度表示T3を加えた三種類としているが、これらのパターン数であることに限定されることはない。つまり、4種類以上の表示面に設定してもよく、使用状況に合わせて誘導灯を適宜な大きさで表示することができる。
さらにまた、ピクトグラム3は、拡大表示T2のとき(或いは通常時表示T1、低輝度表示T3のとき)に、点灯だけでなく点滅させるようにしてもよい。それによって、人の目を効果的に惹き付けることができ、さらに視認性を高める効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態による誘導灯装置の概要を示す図である。
【図2】非常時におけるピクトグラムの表示状態を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態の変形例による誘導灯装置の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
1 誘導灯装置
2 LED(発光ダイオード)
3 ピクトグラム(誘導灯)
4 制御手段
5 非常検知部
T1 通常時表示
T2 拡大表示
T3 低輝度表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災などの非常時に避難口へ誘導するための誘導灯装置であって、
発光ダイオードの発光により誘導灯が表示され、前記誘導灯の表示の大きさが変更可能に設けられていることを特徴とする誘導灯装置。
【請求項2】
前記誘導灯は、制御手段を介して災害を検知する非常検知部に接続され、
前記非常検知部が作動した非常時には、前記制御手段によって前記誘導灯を通常時に表示される通常時表示から、該通常時表示より大きな表示面をなす拡大表示となるように制御されることを特徴とする請求項1に記載の誘導灯装置。
【請求項3】
前記発光ダイオードの光量を変えて前記誘導灯の輝度を変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導灯装置。
【請求項4】
前記誘導灯は、点滅することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の誘導灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−257320(P2008−257320A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96215(P2007−96215)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】