説明

誘電体磁器組成物の製造方法および電子部品の製造方法

【課題】容量温度特性の絶対値が大きくても、広い温度範囲において容量変化率を該絶対値に対し所定範囲にある誘電体磁器組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】(Ba1−x−ySrCa(Ti1−zZr )Oで表される主成分を有する誘電体磁器組成物の製造方法であり、(Ba1−x1−ySrx1Ca(Ti1−zZr)Oで表される第1主成分原料と、(Ba1−x2−ySrx2Ca(Ti1−zZr)Oで表される第2主成分原料とを準備する工程と、第1主成分および第2主成分の原料を混合、焼成する工程とを有し、第1主成分のモル数をa、第2主成分のモル数をbとし、a+b=1、a:b=20:80〜80:20、0.20≦x≦0.40、x=ax1+bx2、x1/x2≧1.05、0≦y≦0.20、0≦z≦0.30、0.950≦m≦1.050である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体磁器組成物の製造方法および電子部品の製造方法に関し、さらに詳しくは、容量温度特性の絶対値が大きい場合であっても、広い温度範囲において、容量変化率を該絶対値に対し所定の範囲にすることができる誘電体磁器組成物、およびこの誘電体磁器組成物を誘電体層に有する電子部品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
VR(Voltage Regulator)とは、ノート型パソコンなどのCPUを駆動させるDC/DCコンバータの電圧を一定にする機構である。このVRの出力電流はインダクタの抵抗(Rdc)によって検出される。しかし、発熱などによりRdcが変化することにより、検出値に誤差を与えてしまうという問題があり、幅広い温度範囲において、正常に使用できることが望まれている。
【0003】
そこで、現状では、NTCサーミスタを使用することで誤差を補正する方法が採られている。
【0004】
また、VR機構の回路には通常コンデンサが用いられており、例えば、−5000ppm/℃程度の絶対値が大きな容量温度特性を持つコンデンサを用いることによっても、この誤差を補正できると考えられる。この方法を用いることにより、NTCサーミスタが不必要になり、コストメリットが生じる。
【0005】
しかし、コンデンサの容量温度特性は絶対値が小さい(温度変化に対して容量変化が小さい)ものが望まれるため、現状では容量温度特性の絶対値が大きなコンデンサの報告はほとんどされていない。なお、通常のコンデンサは容量温度特性の絶対値が最大の場合でも、−1000ppm/℃あるいは、350ppm/℃程度である。
【0006】
特許文献1には、−1500〜−5000ppm/℃の容量温度特性を持ち、さらにSrTiOを20〜95重量%含有するセラミックを誘電体として用いたセラミックコンデンサが開示されている。しかし、特許文献1のセラミックコンデンサの誘電体層の組成は不明な部分があり、その他の成分については全く記載がない。また、どのような温度範囲において、上記の容量温度特性を有し得るかの記載もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平5−61998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような現状を鑑みて、本発明は、容量温度特性の絶対値が大きい場合であっても、広い温度範囲において、容量変化率を該絶対値に対し所定の範囲にすることができる誘電体磁器組成物、およびこの誘電体磁器組成物を誘電体層に有する電子部品を製造する方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、主成分の原料として、組成の異なる複数の原料を用いることにより、大きな容量温度特性(たとえば−7000〜−3000ppm/℃)を有する誘電体磁器組成物を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る誘電体磁器組成物の製造方法は、
一般式(Ba1−x−y SrCa(Ti1−z Zr)Oで表される主成分を有する誘電体磁器組成物を製造する方法であって、
一般式(Ba1−x1−y Srx1 Ca(Ti1−z Zr)Oで表される第1主成分の原料と一般式(Ba1−x2−y Srx2 Ca(Ti1−z Zr)Oで表される第1主成分の原料とを準備する工程と、
前記第1主成分の原料および前記第2主成分の原料を混合し、前記主成分の原料を得る工程と、
前記主成分の原料を焼成する工程と、を有し、
前記主成分のモル数を1とし、前記第1主成分のモル数をaとし、前記第2主成分のモル数をbとした場合に、a+b=1、a:b=20:80〜80:20であり、
前記x、x1、x2、aおよびbが、0.20≦x≦0.40、x=(ax1+bx2)、x1/x2≧1.05である関係を満足し、
前記yが0≦y≦0.20、
前記zが0≦z≦0.30、
前記mが0.950≦m≦1.050であることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記誘電体磁器組成物が、
Mgの酸化物から成る第1副成分と、
MnあるいはCrから選択される少なくとも1種の元素の酸化物から成る第2副成分と、
Rの酸化物(ただし、Rは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、HoおよびYbから選択される少なくとも1種)から成る第3副成分と、
Siを含む酸化物から成る第4副成分と、を有し、
前記主成分100モルに対して、各副成分の比率が、
第1副成分:0.5〜5モル(元素換算)、
第2副成分:0.05〜2モル(元素換算)、
第3副成分:1〜8モル(元素換算)、
第4副成分:0.5〜5モル(酸化物、または複合酸化物換算)である。
【0012】
好ましくは、前記誘電体磁器組成物が、
V、Mo、W、TaおよびNbから選択される少なくとも1種の元素の酸化物からなる第5副成分を、前記主成分100モルに対して、各元素換算で、0〜0.2モル含有する。
【0013】
本発明に係る電子部品の製造方法は、
誘電体層と電極層とを有する電子部品を製造する方法であって、
前記誘電体層が、一般式(Ba1−x−y SrCa(Ti1−z Zr)Oで表される主成分を有する誘電体磁器組成物から構成されており、
一般式(Ba1−x1−y Srx1 Ca(Ti1−z Zr)Oで表される第1主成分の原料と一般式(Ba1−x2−y Srx2 Ca(Ti1−z Zr)Oで表される第1主成分の原料とを準備する工程と、
前記第1主成分の原料および前記第2主成分の原料を混合し、前記主成分の原料を得る工程と、
前記主成分の原料を含む焼成前誘電体層を形成する工程と、
前記焼成前誘電体層を焼成する工程と、を有し、
前記主成分のモル数を1とし、前記第1主成分のモル数をaとし、前記第2主成分のモル数をbとした場合に、a+b=1、a:b=20:80〜80:20であり、
前記x、x1、x2、aおよびbが、0.20≦x≦0.40、x=(ax1+bx2)、x1/x2≧1.05である関係を満足し、
前記yが0≦y≦0.20、
前記zが0≦z≦0.30、
前記mが0.950≦m≦1.050であることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る方法により製造される電子部品としては、特に限定されず、たとえば誘電体層と共に内部電極層とが交互に積層してあるコンデンサ素子本体を有する積層セラミックコンデンサが挙げられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、主成分の原料として、組成の異なる複数の原料を用いることにより、幅広い温度範囲(例えば、−25〜105℃あるいは−55〜150℃)において、25℃における静電容量を基準とした静電容量変化率が、25℃における静電容量を基準とした容量温度特性を示す傾きaを有する直線に対して、−15〜+5%の範囲内にある誘電体磁器組成物を製造することができる。この傾きaはたとえば−7000〜−3000ppm/℃という非常に大きい値であることが特徴である。
【0016】
また、たとえば、複数の主成分の原料の組成比を変化させたり副成分を含有させるなどして、より広い温度範囲において、傾きaに対する静電容量変化率をより狭い範囲とすることができる。
【0017】
そのため、積層セラミックコンデンサなどの電子部品の誘電体層として、本発明により製造される誘電体磁器組成物を使用して、電子部品を製造することにより、例えば、NTCサーミスタを使用しなくても、Rdcの変化によるVRの出力電流の検出値の誤差を補正できる電子部品が得られる。また、本発明により製造される誘電体磁器組成物を用いるものであり、容量温度特性の絶対値が大きいことを必要とするものであれば、この用途に限定されない。
【0018】
このような誘電体磁器組成物が得られる理由は次のように考えられる。
【0019】
SrTiOは、比較的、容量温度特性の絶対値が大きいが(−3300ppm/℃)、その比誘電率のピークは特定の温度範囲(−25〜105℃)よりも、かなり低い温度において表れる。なお、ピークはキュリー温度の近傍で現れる。
【0020】
したがって、このピークが高温側にシフトすることにより、ピークより高温側の大きな勾配の部分が、特定の温度範囲に入る。なお、ピークを高温側にシフトさせる方法としては、SrTiOの一部をBaなどに置換することが考えられる。Baなどのイオン半径の大きな元素はピークを高温側へシフトさせる効果があるため、比誘電率のピークが高温側にシフトし、それにより、上記の温度範囲(−25〜105℃)に、ピークより高温側の大きな勾配部分が入る。
【0021】
本発明では、主成分の原料として、組成の異なる複数の原料を用いることにより、非常に大きな容量温度特性を維持しつつ、上記の温度範囲をより広いものとすることができ、しかも該容量温度特性に対する変化率をより狭い範囲とすることができる。
【0022】
また、副成分を含有させることにより、大きな傾き、つまり、絶対値が大きな容量温度特性を維持し、静電容量変化率を一定の範囲内としつつ、所望の特性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る製造方法により製造される積層セラミックコンデンサの断面図である。
【図2A】図2Aは、25℃における静電容量を基準とした容量温度特性を示す、傾き−5000ppm/℃を有する直線に対して静電容量変化率が−15%および+5%となる直線と、−25℃と105℃を示す直線とにより囲まれる平行四辺形が示されているグラフである。
【図2B】図2Bは、25℃における静電容量を基準とした容量温度特性を示す、傾き−3000ppm/℃を有する直線に対して静電容量変化率が−15%および+5%となる直線と、−25℃と105℃を示す直線とにより囲まれる平行四辺形が示されているグラフである。
【図3】図3は、試料1および4について、25℃における静電容量を基準とした容量温度特性を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0025】
積層セラミックコンデンサ1
本発明に係る方法により製造される電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。このコンデンサ素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよい。
【0026】
内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。また、一対の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
【0027】
誘電体層2
本実施形態では、誘電体層2は、以下に示す誘電体磁器組成物を含有する。該誘電体磁器組成物は、(Ba1−x−y SrCa(Ti1−z Zr)Oの一般式で表される主成分と、Mgの酸化物から成る第1副成分と、MnまたはCrから選択される少なくとも1種の元素の酸化物から成る第2副成分と、Rの酸化物(ただし、Rは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、HoおよびYbから選択される少なくとも1種)から成る第3副成分と、Siを含む酸化物から成る第4副成分と、を有する。
【0028】
誘電体組成物の主成分は、上記の一般式で表されるペロブスカイト構造を有する化合物であり、ペロブスカイト構造におけるAサイトをBa,SrあるいはCaが占め、BサイトをTiあるいはZrが占めている。
【0029】
この一般式において、xは、主成分のAサイト(Ba,SrおよびCa)におけるSrの比率を表しており、0.20≦x≦0.40、好ましくは、0.25≦x≦0.35である。xが小さすぎると誘電損失や静電容量変化率が悪化する傾向にあり、xが大きすぎると比誘電率が低下し、低温側の静電容量変化率が悪化する傾向にある。
【0030】
また、yは、AサイトにおけるCaの比率を表しており、0≦y≦0.20、好ましくは、0≦y≦0.1、さらに好ましくはy=0である。yが大きすぎると静電容量変化率が平坦化し、本願で好ましいとする範囲外となる傾向にある。
【0031】
また、zは、主成分のBサイト(TiおよびZr)におけるZrの比率を表しており、0≦z≦0.30、好ましくは、0≦z≦0.1、さらに好ましくはz=0である。zが大きすぎると比誘電率が低下し、静電容量変化率が平坦化して、本願で好ましいとする範囲外となる傾向にある。
【0032】
なお、y=0かつz=0の場合には、上記の一般式は、(Ba1−x SrTi で表され、xはBaとSrとの比率を示す。この場合であっても、xは上記の範囲であることが好ましい。
【0033】
上記の一般式において、mは、主成分のAサイトを占める原子とBサイトを占める原子とのモル比を表す。mは、0.950〜1.050であり、好ましくは、0.98〜1.02である。
【0034】
第1副成分(Mgの酸化物)の含有量は、主成分100モルに対して、元素換算で0.5〜5モルであり、好ましくは1〜4モルであり、さらに好ましくは1.5〜3モルである。第1副成分の含有量が少なすぎると、静電容量変化率が悪化し、高温負荷寿命が悪化する傾向にある。一方、多すぎると、緻密に焼結しなくなる傾向にある。
【0035】
第2副成分は、Mnの酸化物またはCrの酸化物から選択される少なくとも1種であり、絶縁抵抗の観点から、好ましくはMnの酸化物である。
【0036】
第2副成分の含有量は、主成分100モルに対して、元素換算で0.05〜2モルであり、好ましくは0.1〜1モルであり、さらに好ましくは0.1〜0.5モルである。第2副成分の含有量が少なすぎると、絶縁抵抗が悪化する傾向にある。一方、多すぎると、高温負荷寿命が悪化する傾向にある。
【0037】
第3副成分におけるRは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、HoおよびYbから選択される少なくとも1種であり、高温負荷寿命と静電容量変化率の観点から、好ましくはTbおよびYであり、より好ましくはYである。
【0038】
第3副成分(Rの酸化物)の含有量は、主成分100モルに対して、元素換算で1〜8モルであり、好ましくは2〜7モルであり、さらに好ましくは3〜5モルである。第3副成分の含有量が少なすぎると、高温負荷寿命が悪化する傾向にある。一方、多すぎると、緻密に焼結しなくなる傾向にある。
【0039】
第4副成分(Siを含む酸化物)の含有量は、主成分100モルに対して、酸化物換算で0.5〜5モルであり、好ましくは1〜4.5モルであり、さらに好ましくは2〜3.5モルである。第4副成分の含有量が少なすぎると、静電容量変化率が悪化する傾向にある。一方、多すぎると、緻密に焼結しなくなる傾向にある。
【0040】
Siを含む酸化物は複合酸化物でも、単純酸化物でもよいが、好ましくは複合酸化物であり、(Ba,Ca)SiO2+n (ただし、n=0.8〜1.2)であることがより好ましい。また、(Ba,Ca)SiO2+n におけるnは、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0.8〜1.2である。nが小さすぎると、主成分に含まれるチタン酸バリウムと反応して誘電体特性を悪化させてしまう傾向にある。一方、nが大きすぎると、融点が高くなって焼結性を悪化させる傾向にある。なお、第4副成分においてBaとCaとの比率は任意であり、一方だけを含有するものであってもよい。
【0041】
上記の誘電体磁器組成物は、上記の主成分および第1〜4副成分に加え、第5副成分を有することが好ましい。第5副成分はV、Mo、W、TaおよびNbから選択される少なくとも1種の元素の酸化物であり、高温負荷寿命の観点から、好ましくはNbの酸化物およびVの酸化物であり、より好ましくはVの酸化物である。
【0042】
第5副成分の含有量は、主成分100モルに対して、各元素換算で好ましくは0〜0.2モルであり、より好ましくは0.01〜0.07モルであり、さらに好ましくは0.02〜0.06モルである。第5副成分の含有量が多すぎると、絶縁抵抗が悪化する傾向にある。
【0043】
本明細書では、各成分を構成する各酸化物または複合酸化物を化学量論組成で表しているが、各酸化物または複合酸化物の酸化状態は、化学量論組成から外れるものであってもよい。ただし、各成分の上記比率は、第4副成分を除いて、各成分を構成する酸化物に含有される金属量による元素換算により求める。また、第4副成分は、酸化物または複合酸化物換算により求める。
【0044】
なお、上記主成分および副成分を焼結させることにより得られる焼結体の平均焼結体粒径は、好ましくは0.2〜1.5μmであり、より好ましくは0.2〜0.8μmである。
【0045】
誘電体層2の厚みは、特に限定されず、積層セラミックコンデンサ1の用途に応じて適宜決定すれば良い。
【0046】
上述の誘電体磁器組成物は、後述する方法により製造されることで、たとえば−55〜150℃という極めて広い温度範囲において、25℃における静電容量を基準とした静電容量変化率が、25℃における静電容量を基準とした容量温度特性を示す傾きaを有する直線に対して、−10〜+5%という極めて狭い範囲内にある。
【0047】
しかも、この傾きaは、たとえば−7000〜−3000ppm/℃という非常に大きな値であり、主成分の組成や副成分の組成等を変化させることにより上記の範囲内で制御される。傾きaは、好ましくは−6000〜−4000ppm/℃であり、より好ましくは−5500〜−4500ppm/℃である。
【0048】
なお、傾きaを有する直線に対する静電容量変化率について、図2Aおよび図2Bを用いて説明すると、図2Aおよび図2Bは横軸を温度、縦軸を静電容量変化率としたグラフである。このグラフにおいて、−15%と+5%とを表す2本の平行線と、−25℃と105℃とを表す2本の平行線により囲まれる範囲(平行四辺形)が、傾きaを示す直線に対する−15〜+5%の範囲である。
【0049】
すなわち、この範囲は、傾きaが−5000ppm/℃の場合は、図2Aに示される平行四辺形で囲まれる範囲となり、傾きaが−3000ppm/℃の場合は、図2Bに示される平行四辺形で囲まれる範囲となる。
【0050】
内部電極層3
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、誘電体層2の構成材料が耐還元性を有するため、比較的安価な卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn,Cr,CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。また、内部電極層3は、市販の電極用ペーストを使用して形成してもよい。内部電極層3の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
【0051】
外部電極4
外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、本発明では安価なNi,Cuや、これらの合金を用いることができる。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
【0052】
積層セラミックコンデンサ1の製造方法
本実施形態に係る製造方法の一例として、積層セラミックコンデンサ1を製造する方法について説明する。積層セラミックコンデンサ1を製造する方法としては、後述する第1主成分の原料および前記第2主成分の原料を混合して得られる主成分の原料を含む焼成前誘電体層を形成し、該焼成前誘電体層を焼成する工程を有していれば特に制限されず、たとえば、乾式成形、湿式成形、押出成形などにより製造してもよい。
【0053】
本実施形態では、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成してコンデンサを製造する方法について具体的に説明する。
【0054】
まず、誘電体層用ペーストに含まれる誘電体原料(誘電体磁器組成物粉末)を準備する。
【0055】
本実施形態では、誘電体原料に含まれる主成分(Ba1−x−y SrCa(Ti1−z Zr)Oの原料として、複数の原料を準備する。具体的には、第1主成分の原料として、一般式(Ba1−x1−y Srx1 Ca(Ti1−z Zr)Oで表される酸化物を準備する。また、第2主成分の原料として、一般式(Ba1−x2−y Srx2 Ca(Ti1−z Zr)Oで表される酸化物を準備する。
【0056】
この第1主成分の原料と第2主成分の原料との含有割合は、主成分のモル数を1とし、第1主成分のモル数をaとし、第2主成分のモル数をbとした場合に、a+b=1かつa:b=20:80〜80:20となるように調整される。
【0057】
また、本実施形態において、上記のx1(第1主成分におけるSrの比率)と、x2(第2主成分におけるSrの比率)と、の比は、x1/x2≧1.05である関係を満足する。
【0058】
すなわち、第1主成分に含まれるSrは、第2主成分に含まれるSrよりも多く、第1主成分と第2主成分とは組成が異なる。また、x1およびx2は上記の関係を満足すればよいため、たとえばx2が0であってもよい。すなわち、第2主成分が(Ba1−yCa(Ti1−zZr)Oとなる組成を有していてもよい。
【0059】
なお、一般式(Ba1−x−y SrCa(Ti1−z Zr)Oで表される主成分におけるxは、上記より、x=(ax1+bx2)と表される。
【0060】
したがって、主成分の原料として、Srの比率が異なる複数の原料を上記の関係を満足するように準備すればよい。このようにすることで、極めて広い温度範囲において、非常に大きな容量温度特性に対する静電容量変化率が極めて狭い範囲内にある誘電体磁器組成物を得ることができる。
【0061】
なお、第1主成分および第2主成分の原料としては、上記した酸化物等を用いることができるが、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、たとえば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。
【0062】
続いて、誘電体磁器組成物が副成分を含有する場合には、副成分の原料を準備する。副成分の原料としては、上記した各副成分の酸化物やその混合物、複合酸化物を用いることができるが、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、たとえば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。
【0063】
また、上記の第1主成分、第2主成分および副成分の原料のうち、少なくとも一部については、各酸化物または複合酸化物、焼成により各酸化物または複合酸化物となる化合物を、そのまま用いても良いし、あるいは、予め仮焼し、焙焼粉として用いても良い。
【0064】
なお、第1主成分および第2主成分の原料の平均原料粒径は、好ましくは0.15〜0.7μm、より好ましくは0.2〜0.5μmである。平均原料粒径は0.15μmより小さいと平均焼結体粒径が0.2μm以下となり、比誘電率が低下し、高温側での静電容量変化率が悪化する傾向にある。また、平均原料粒径が0.7μmより大きいと、平均焼結体粒径が1.5μm以上となり、高温負荷寿命が悪化し、低温側の静電容量変化率が悪化する傾向にある。
【0065】
上記で準備した第1主成分の原料および第2主成分の原料を、有機ビヒクルとともに混合し、塗料化して、主成分の原料が含まれる誘電体層用ペーストを調製する。必要に応じて、副成分の原料を混合してもよい。誘電体層用ペーストは、有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。
【0066】
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
【0067】
また、誘電体層用ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、誘電体原料とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、たとえば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
【0068】
内部電極層用ペーストは、上記した各種導電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。
【0069】
外部電極用ペーストは、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
【0070】
上記した各ペースト中の有機ビヒクルの含有量に特に制限はなく、通常の含有量、たとえば、バインダは1〜5重量%程度、溶剤は10〜50重量%程度とすればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10重量%以下とすることが好ましい。
【0071】
印刷法を用いる場合、誘電体層用ペーストおよび内部電極層用ペーストを、PET等の基板上に印刷、積層し、基板から剥離した後、所定形状に切断してグリーンチップとする。
【0072】
また、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷した後、これらを積層し所定形状に切断してグリーンチップとする。
【0073】
焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ条件としては、昇温速度を好ましくは5〜300℃/時間、保持温度を好ましくは180〜400℃、温度保持時間を好ましくは0.5〜24時間とする。また、焼成雰囲気は、空気もしくは還元性雰囲気とする。
【0074】
グリーンチップ焼成時の雰囲気は、内部電極層用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、10−14〜10−10MPaとすることが好ましい。酸素分圧が上記範囲未満であると、内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがある。また、酸素分圧が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。
【0075】
また、焼成時の保持温度は、好ましくは1000〜1400℃である。保持温度が上記範囲未満であると緻密化が不十分となり、上記の範囲を超えると、内部電極層の異常焼結による電極の途切れや、内部電極層構成材料の拡散による容量温度特性の悪化、誘電体磁器組成物の還元が生じやすくなる。
【0076】
これ以外の焼成条件としては、昇温速度を好ましくは50〜500℃/時間、温度保持時間を好ましくは0.5〜8時間、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時間とする。また、焼成雰囲気は還元性雰囲気とすることが好ましい。
【0077】
還元性雰囲気中で焼成した後、コンデンサ素子本体にはアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これによりIR寿命を著しく長くすることができるので、信頼性が向上する。
【0078】
アニール雰囲気中の酸素分圧は、10−9〜10−5MPaとすることが好ましい。また、アニールの際の保持温度は、1100℃以下、特に500〜1100℃とすることが好ましく、温度保持時間は0〜20時間が好ましい。
【0079】
上記した脱バインダ処理、焼成およびアニールにおいて、Nガスや混合ガス等を加湿するには、たとえばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5〜75℃程度が好ましい。また、脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
【0080】
上記のようにして得られたコンデンサ素子本体に、端面研磨を施し、外部電極用ペーストを塗布して焼成し、外部電極4を形成する。そして、必要に応じ、外部電極4表面に、めっき等により被覆層を形成する。
【0081】
このようにして製造された本実施形態の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【0083】
たとえば、上述した実施形態では、本発明に係る方法により製造される電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、このような電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、上記構成の誘電体層を有するものであれば何でも良い。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0085】
実施例1
まず、第1主成分の原料として、平均原料粒径が0.35μmであって、x1が表1および3に示す値である(Ba1−x1−y Srx1 Ca(Ti1−z Zr)O を準備した。続いて、第2主成分の原料として、平均原料粒径が0.35μmであって、x2が表1および3に示す値である(Ba1−x2−y Srx2 Ca(Ti1−z Zr)O を準備した。また、副成分の原料として、MgCO(第1副成分)、MnO(第2副成分)、Y(第3副成分)、BaCaSiO(第4副成分)およびV(第5副成分)を準備した。
【0086】
上記で準備した主成分の原料および副成分の原料をボールミルにて混合した。得られた混合粉を1200℃で予め仮焼して、平均粒径0.4μmの仮焼粉を調製した。次いで、得られた仮焼粉を、ボールミルで15時間、湿式粉砕し、乾燥して、誘電体原料を得た。なお、MgCOは、焼成後には、MgOとして誘電体磁器組成物中に含有されることとなる。
【0087】
主成分の組成および各副成分の含有量は、表1および3に示す量あるいは割合となるようにした。
【0088】
次いで、得られた誘電体原料:100重量部と、ポリビニルブチラール樹脂:10重量部と、可塑剤としてのジブチルフタレート(DBP):5重量部と、溶媒としてのアルコール:100重量部とをボールミルで混合してペースト化し、誘電体層用ペーストを得た。
【0089】
また、上記とは別に、Ni粒子:45重量部と、テルピネオール:52重量部と、エチルセルロース:3重量部とを、3本ロールにより混練し、スラリー化して内部電極層用ペーストを作製した。
【0090】
そして、上記にて作製した誘電体層用ペーストを用いて、PETフィルム上に、乾燥後の厚みが10μmとなるようにグリーンシートを形成した。次いで、この上に内部電極層用ペーストを用いて、電極層を所定パターンで印刷した後、PETフィルムからシートを剥離し、電極層を有するグリーンシートを作製した。次いで、電極層を有するグリーンシートを複数枚積層し、加圧接着することによりグリーン積層体とし、このグリーン積層体を所定サイズに切断することにより、グリーンチップを得た。
【0091】
次いで、得られたグリーンチップについて、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行って、積層セラミック焼成体を得た。
【0092】
脱バインダ処理条件は、昇温速度:25℃/時間、保持温度:250℃、温度保持時間:8時間、雰囲気:空気中とした。
【0093】
焼成条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1300℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したN+H混合ガス(酸素分圧:10−12MPa)とした。
【0094】
アニール条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1100℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したNガス(酸素分圧:10−7MPa)とした。
【0095】
次いで、得られた積層セラミック焼成体の端面をサンドブラストにて研磨した後、外部電極としてIn−Gaを塗布し、図1に示す積層セラミックコンデンサの試料を得た。得られたコンデンサ試料のサイズは、3.2mm×1.6mm×3.2mmであり、誘電体層の厚み8μm、内部電極層の厚み1.5μm、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は4とした。
【0096】
得られた各コンデンサ試料について、比誘電率(εs)、誘電損失(tanδ)、絶縁抵抗(IR)、静電容量変化率(TC)、高温負荷寿命(HALT)、平均焼結体粒径を下記に示す方法により測定した。
【0097】
比誘電率εs
比誘電率εsは、コンデンサ試料に対し、基準温度25℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数1kHz,入力信号レベル(測定電圧)1.0Vrmsの条件下で測定された静電容量から算出した(単位なし)。比誘電率は高いほうが好ましく、本実施例では、1000以上を良好とした。結果を表2および表4に示す。
【0098】
誘電損失(tanδ)
誘電損失(tanδ)は、コンデンサ試料に対し、基準温度25℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数1kHz,入力信号レベル(測定電圧)1.0Vrmsの条件下で測定した。誘電損失は低いほうが好ましく、本実施例では、3%以下を良好とした。結果を表2および表4に示す。
【0099】
絶縁抵抗(IR)
絶縁抵抗(IR)は、コンデンサの試料に対し、絶縁抵抗計(アドバンテスト社製R8340A)を用いて、25℃においてDC100Vを、60秒間印加した後の絶縁抵抗IRを測定した。絶縁抵抗は高いほうが好ましく、本実施例では、1×1010MΩ以上を良好とした。結果を表2および表4に示す。
【0100】
静電容量変化率(TC)
コンデンサ試料に対し、−55℃と150℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4284A)にて、周波数1kHz、入力信号レベル(測定電圧)1Vrmsの条件で静電容量を測定し、基準温度25℃における静電容量に対する−55℃および150℃での静電容量の変化率(単位は%)を算出した。本実施例では、−10〜+5%以内を良好とした。結果を表2および表4に示す。
【0101】
また、試料1および4については、25℃における静電容量を基準として、−55℃から150℃における容量変化率を示すグラフを図3とした。
【0102】
高温負荷寿命(HALT)
コンデンサ試料に対し、200℃にて、40V/μmの電界下で直流電圧の印加状態に保持し、寿命時間を測定することにより、高温負荷寿命(HALT)を評価した。本実施例においては、印加開始から絶縁抵抗が一桁落ちるまでの時間を寿命と定義した。また、この高温負荷寿命は、10個のコンデンサ試料について行った。本実施例では、3.1時間以上を良好とした。結果を表2および表4に示す。
【0103】
平均焼結体粒径
誘電体粒子の平均焼結体粒径の測定方法としては、まず、得られたコンデンサ試料を内部電極に垂直な面で切断し、その切断面を研磨した。そして、その研磨面にケミカルエッチングを施し、その後、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察を行い、コード法により焼結体の形状を球と仮定して算出した。結果を表2および表4に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【0106】
【表3】

【0107】
【表4】

【0108】
表1〜表4より、第1主成分におけるSrおよび第2主成分におけるSrの比を示すx1/x2が本発明の範囲外である場合には(試料1、2、10および11)、−55℃〜150℃における静電容量変化率が本願において良好とする範囲よりも大きくなっており、好ましくないことが確認できた。
【0109】
また、主成分におけるy、zおよびmが本発明の範囲外である場合には(試料17、21、22および25)、静電容量変化率が本願において良好とする範囲よりも大きくなる、あるいは所望の特性が得られないことが確認できた。
【0110】
また、第1副成分〜第5副成分の含有量が本発明の好ましい範囲外である場合には(試料26、29、30、33、35、38、49、52および58)、静電容量変化率が本願において良好とする範囲よりも大きくなる、あるいは所望の特性が得られないことが確認できた。
【0111】
これに対し、本発明の範囲内である試料は、静電容量変化率が本願において良好とする範囲を満足し、しかも所望の特性も満足することが確認できた。
【0112】
また、図3から、試料1は、静電容量変化率が本願において良好とする範囲を満足しないものの、試料4は、静電容量変化率が本願において良好とする範囲を満足していることが視覚的に確認できた。すなわち、試料4は、−55〜150℃の温度範囲において、非常に大きな容量温度特性を示す直線に対して、25℃における静電容量を基準とした静電容量変化率が、−10〜+5%の範囲内にあることが確認できた。
【符号の説明】
【0113】
1… 積層セラミックコンデンサ
10… コンデンサ素子本体
2… 誘電体層
3… 内部電極層
4… 外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(Ba1−x−y SrCa(Ti1−z Zr)Oで表される主成分を有する誘電体磁器組成物を製造する方法であって、
一般式(Ba1−x1−y Srx1 Ca(Ti1−z Zr)Oで表される第1主成分の原料と一般式(Ba1−x2−y Srx2 Ca(Ti1−z Zr)Oで表される第2主成分の原料とを準備する工程と、
前記第1主成分の原料および前記第2主成分の原料を混合し、前記主成分の原料を得る工程と、
前記主成分の原料を焼成する工程と、を有し、
前記主成分のモル数を1とし、前記第1主成分のモル数をaとし、前記第2主成分のモル数をbとした場合に、a+b=1、a:b=20:80〜80:20であり、
前記x、x1、x2、aおよびbが、0.20≦x≦0.40、x=(ax1+bx2)、x1/x2≧1.05である関係を満足し、
前記yが0≦y≦0.20、
前記zが0≦z≦0.30、
前記mが0.950≦m≦1.050であることを特徴とする誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項2】
前記誘電体磁器組成物が、
Mgの酸化物から成る第1副成分と、
MnあるいはCrから選択される少なくとも1種の元素の酸化物から成る第2副成分と、
Rの酸化物(ただし、Rは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、HoおよびYbから選択される少なくとも1種)から成る第3副成分と、
Siを含む酸化物から成る第4副成分と、を有し、
前記主成分100モルに対して、各副成分の比率が、
第1副成分:0.5〜5モル(元素換算)、
第2副成分:0.05〜2モル(元素換算)、
第3副成分:1〜8モル(元素換算)、
第4副成分:0.5〜5モル(酸化物、または複合酸化物換算)である請求項1に記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項3】
前記誘電体磁器組成物が、
V、Mo、W、TaおよびNbから選択される少なくとも1種の元素の酸化物からなる第5副成分を、前記主成分100モルに対して、各元素換算で、0〜0.2モル含有する請求項2に記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項4】
誘電体層と電極層とを有する電子部品を製造する方法であって、
前記誘電体層が、一般式(Ba1−x−y SrCa(Ti1−z Zr)Oで表される主成分を有する誘電体磁器組成物から構成されており、
一般式(Ba1−x1−y Srx1 Ca(Ti1−z Zr)Oで表される第1主成分の原料と一般式(Ba1−x2−y Srx2 Ca(Ti1−z Zr)Oで表される第2主成分の原料とを準備する工程と、
前記第1主成分の原料および前記第2主成分の原料を混合し、前記主成分の原料を得る工程と、
前記主成分の原料を含む焼成前誘電体層を形成する工程と、
前記焼成前誘電体層を焼成する工程と、を有し、
前記主成分のモル数を1とし、前記第1主成分のモル数をaとし、前記第2主成分のモル数をbとした場合に、a+b=1、a:b=20:80〜80:20であり、
前記x、x1、x2、aおよびbが、0.20≦x≦0.40、x=(ax1+bx2)、x1/x2≧1.05である関係を満足し、
前記yが0≦y≦0.20、
前記zが0≦z≦0.30、
前記mが0.950≦m≦1.050であることを特徴とする電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−162397(P2011−162397A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26921(P2010−26921)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】