説明

読影支援装置、読影支援方法、およびそのプログラム

【課題】 読影時の診断効率を向上させる。
【解決手段】 3次元医用画像の断面画像を複数表示して、断面表示手段のより表示された複数の断面画像うちのいずれかの断面画像上に存在する注目領域ROIを指示する。指示された注目領域ROIの位置を、注目領域ROIを指示した断面画像以外の断面画像上において認識可能に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の読影レポートの作成を支援する読影レポート作成支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、CT(Computed Tomography;コンピュータ断層撮影)やMRI((Magnetic Resonance Imaging;磁気共鳴画像)等により取得された複数のスライス画像データの集合体として構成される3次元画像データに基づいて生成される断面画像や3次元表示画像から、病変部を発見し、またその病変部の状態を観察して、疾病の有無や進行状況の診断を行うことが行われている。この3次元画像データは、従来の2次元の放射線画像データと比較して、被写体についてより多くの情報を有しているため、精度の高い診断が可能とである。
【0003】
また、撮影された画像を観察して行われる画像診断は、通常、次のような手順で行われる。まず、画像診断を依頼する検査依頼科(例えば内科)から、放射線科に検査オーダーが出されると、この検査オーダーに従って撮影が行われる。この検査オーダーには、患者のID番号、患者氏名、生年月日、性別、検査依頼科名、検査依頼医師氏名、検査のモダリティ(CR装置、CT装置、MRI装置など)、検査部位、検査目的、臨床情報などが含まれ、検査オーダーに従って、検査技師が撮影を行なう。次に、読影医師が撮影された画像を読影し、その読影結果にしたがって読影レポートを作成する。この読影レポートが担当医師に送られ、担当医師の治療方針の決定に活用される。
【0004】
しかし、このような読影レポートを手入力するには、非常な手間と時間が必要になる。そこで、CADと読影レポートの定型分を利用して、その負担を軽減する方法が提案されている(例えば、特許文献1など)。
【特許文献1】特開平7−31591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように3次元画像データに対しても、診断をした結果を読影レポートとして入力する。しかしながら、ある断層像を読影して異常陰影に関するレポートの作成が終わり、次の断層像に移って読影すると、すでに別のスライスでレポートした病変であるかどうかがわからなくなる場合があり、診断効率を悪くしていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、読影時の診断効率を向上させるための読影支援装置、読影支援方法およびそのプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の読影支援装置は、被写体を撮影して得られた3次元医用画像を記憶する3次元医用画像記憶手段と、
前記3次元医用画像の断面画像を複数表示する断面表示手段と、
該断面表示手段により表示された複数の断面画像うちのいずれかの断面画像上に存在する注目領域を指示する指示手段と、
該指示手段により指示された注目領域の位置を記録する位置記録手段と、
前記注目領域を指示した断面画像以外の断面画像上において、前記注目領域の位置を認識可能に表示する注目領域位置表示手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
また、本願発明の読影支援方法は、被写体を撮影して得られた3次元医用画像3次元医用画像の断面画像を複数表示する断面表示ステップと、
該断面表示ステップにより表示された複数の断面画像うちのいずれかの断面画像上に存在する注目領域を指示する指示ステップと、
該指示ステップにより指示された注目領域の位置を記録する位置記録ステップと、
前記注目領域を指示した断面画像以外の断面画像上において、前記注目領域の位置を認識可能に表示する注目領域位置表示ステップとを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
また、本願発明のプログラムは、コンピュータを、
被写体を撮影して得られた3次元医用画像の断面画像を複数表示する断面表示手段と、
該断面表示手段により表示された複数の断面画像うちのいずれかの断面画像上に存在する注目領域を指示する指示手段と、
該指示手段により指示された注目領域の位置を記録する位置記録手段と、
前記注目領域を指示した断面画像以外の断面画像上において、前記注目領域の位置を認識可能に表示する注目領域位置表示手段として機能させることを特徴とするものである。
【0010】
「3次元医用画像」とは、多数のボクセルデータからなるボリュームデータであり、ボクセルデータごとに濃度値の情報を保持し、骨や臓器などの解剖学的構造物を表した画像をいう。例えば、CTやMRIなどの断層撮影装置によって撮影された画像である。
【0011】
また、「3次元医用画像の断面画像」は1つのモダリティで撮影された3次元医用画像から作成した断面画像だけではなく、異なるモダリティで撮影された3次元医用画像の断面画像であってもよい。例えば、CTとMRIの両方の断面画像であったり、CTとMRIの断面画像を重ね合わせた断層画像であってもよい。
【0012】
また、読影支援装置に、前記指示された注目領域の診断情報を入力する診断情報入力手段と、
前記診断情報に基づいて前記注目領域を指示した断面画像以外の断面画像が前記注目領域に関連する断面画像であるか否かを判定する判定手段とをさらに備えるようにして、
前記注目領域位置表示手段が、前記判定手段により前記注目領域に関連する断面画像であると判定した断面画像上において、前記注目領域の位置を認識可能に表示するものであってもよい。
【0013】
さらに、診断情報が前記注目領域の大きさを含むものであり、
前記判定手段が、前記大きさに対応して前記注目領域を指示した断面画像から所定の範囲内にある断面画像を前記注目領域に関連する断面画像であると判定するものであってもよい。
【0014】
注目領域が病変部の候補領域であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、表示された断面画像上に存在する注目領域を指示し、注目領域を指示した断面画像以外の断面画像上においても、注目領域の位置を認識できるように表示することにより、医師が一旦チェックした陰影であるか否かを判別するのが容易になる。
【0016】
また、指示した注目領域の診断情報を入力し、その診断情報に基づいて注目領域を指示した断面画像以外の断面画像が、注目領域に関連する断面画像であるか否かを判定することによって、関連する断面上のみに注目領域の位置を認識できるように表示することができ、すでに、チェックした注目領域であるか否かを判定することがさらに容易になる。
【0017】
また、診断情報に前記注目領域の大きさを含むようにすれば、その大きさに対応する範囲内にある断面画像が注目領域に関連する断面画像であると判定することができ、チェックした注目領域を正確に判定することが可能になる。
【0018】
さらに、注目領域が病変部の候補領域であれば、疾患を正確に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の読影支援装置について図を用いて説明する。図1に示すように、本発明の読影支援装置1は、被写体を撮影して得られた3次元医用画像100を記憶する3次元医用画像記憶手段10と、3次元医用画像の断面画像を複数表示する断面表示手段20と、表示された複数の断面画像うちのいずれかの断面画像上に存在する注目領域を指示する指示手段30と、指示された注目領域の位置を記録する位置記録手段40と、注目領域を指示した断面画像以外の断面画像上においても指示した注目領域の位置がわかるような表示をする注目領域位置表示手段50と、指示された注目領域の診断情報を入力する診断情報入力手段60と、診断情報に基づいて注目領域を指示した断面画像以外の断面画像で注目領域に関連する断面画像であるか否かを判定する判定手段70とを備える。
【0020】
3次元医用画像記憶手段10は、画像サーバなどの大容量の記憶装置である。CT撮影装置やMRI撮影装置などを用いて検査対象の被写体を撮影したCT画像やMRI画像は、3次元医用画像100として画像サーバに記憶され、必要に応じて、各被写体の3次元医用画像100が検索できるように記憶される。
【0021】
断面表示手段20は、3次元医用画像記憶手段10に記憶されている3次元医用画像100の断面画像を表示装置上に表示する。表示装置上の画面には、通常同じ方向で深さの違う断面画像を複数枚生成して表示を行う。表示する際には、生成した複数枚の断面画像を並べて表示したり、深さの違う断面画像を切り替えて表示する。また、面画上には、1つのモダリティで撮影された3次元医用画像の断面画像を表示するだけではなく、複数のモダリティで撮影された3次元医用画像の断面画像を表示するようにしてもよい。例えば、MRI撮影装置とCT撮影装置で撮影した3次元医用画像が3次元医用画像記憶手段10に記憶されている場合には、両方の断面画像を並べて表示したり、両方の断面画像を重ねて表示するようにしてもよい。
【0022】
このように、異なるモダリティで撮影された画像は画像上に現れる形態が異なるため、複数のモダリティで撮影された断層画像を並べたり、重ねて表示したものを観察して診断することにより、病変部の発見や、その病変部の状態を観察や、進行状況の診断などを正確に行うことができる。例えば、CT画像には骨が撮影されるがMRI画像には骨が撮影されないため、両方の画像を観察することにより、疾患の位置や状態を正確に判断することができる。
【0023】
指示手段30は、断面表示手段20で表示装置上に表示された複数の断面画像うちのいずれかの断面画像上に存在する注目領域を指示する(図2の○で囲んだ領域)。具体的には、マウスなどのポインティングデバイスを用いて、断面画像上にある陰影などを注目領域ROIとしてマークする。
【0024】
位置記録手段40は、指示手段30で読影者が指示した注目領域ROIの位置を記録する。具体的には、指示した断面画像が、複数枚ある断面画像のいずれの断面画像であるかがわかるように、断面画像の断面の方向と深さ方向の位置が記録され、さらにその断面画面上の位置を記録する。
【0025】
注目領域位置表示手段50は、注目領域ROIを指示した断面画像以外の断面画像上で、注目領域ROIに対応する位置がわかるようにマークを表示する。
【0026】
診断情報入力手段60は、指示手段30で指示した注目領域ROIを観察して診断した内容を診断情報として入力する。診断情報は発見したガンなどの異常陰影ごとにレポートとして入力され、指示手段30で指定された注目領域ROIと関連付けて記憶される。また、レポートは通常キーボードから文書データとして入力される(図3のREPORTを参照)。レポートには、異常陰影の大きさや特徴などの所見が入力される。
【0027】
判定手段70は、診断情報(レポート)に基づいて注目領域ROIを指示した断面画像以外の断面画像が、注目領域ROIに関連する断面画像であるか否かを判定する。レポートは文書データとして記憶されているので、文書データ中の文字列を字句解析して入力されている内容を解釈する機能を備えたものが好ましい。例えば、「半径5mm程度の異常陰影候補有り」という内容が記録されている場合には、注目領域ROIをマークした断面画像から上下5mm程度の断面画像に同じ異常陰影が表れている可能性が高く、注目領域ROIをマークした断面画像から上下5mm程度の断面画像を注目領域ROIに関連する断面画像であると判定する。
【0028】
ここで、医師などの読影者が胸部CT画像を観察してガンなどの異常陰影を読影する場合について、図4のフローチャートに従って読影支援装置1の動作を具体的に説明する。
【0029】
まず、医師は、読影支援装置1の断面表示手段20で、図2に示すようなAxial方向の断層画像を、深さを変えながら順次表示をしながら観察する(S100)。医師は、ある断面画像上に異常陰影らしい陰影を発見すると、指示手段30でマウスなどを用いてその陰影を注目領域ROIとしてマーク(図2の○)する(S104)。マークされた注目領域ROIの位置は、位置記録手段40で読影支援装置1のメモリ上に記憶される(S105)。さらに、医師は診断情報入力手段60で注目領域ROIの所見をレポートとして入力する(S106)。このレポートは、注目領域ROIの位置と対応付けて記憶される(S107)。
【0030】
さらに、医師は断面表示手段20で次の断面画像を画面上に表示する(S100)。このとき、注目領域ROIの位置の記録がある場合には(S101)、判定手段70で記録されている注目領域ROIのレポートを解析して、現在、画面上に表示されている断面画面が注目領域ROIに関連する断面画像であるか否かを判定する(S102)。例えば、断面画像が2mm程度のスライス間隔で作成されており、この注目領域ROIのレポートとして「半径5mm程度の異常陰影候補有り、現段階では病状は不明」と入力されていた場合には、図5に示すように注目領域ROIをマークした断面画像の上下2枚が注目領域ROIとしてマークされた陰影に関連する陰影が現れている可能性が高い。そこで、指定された断面画像の上下2枚の断面画像上に、注目領域ROIをマークした位置と同じ位置に、すでに医師がマークしたことがわかるように図3のように「2mm下で異常陰影のレポート済み」という表示をし、さらに、先ほどのレポートも表示する(S103)。注目領域ROIをマークした断面画像の次の断面画像上に、注目領域ROIをマークした位置と違う位置に異常陰影が存在するときには、マークした陰影とは違う異常陰影であることがわかる。
【0031】
以上のような動作を繰り返し、3次元医用画像の断層画像を観察する。
【0032】
上述では、マークした注目領域ROIに関連すると判定した断面画像上にのみ、すでにその関心領域がマーク済みであることを表示する場合について説明したが、全ての断面画像上に表示するようにしてもよい。
【0033】
あるいは、同じモダリティの断面画像だけではなく、他のモダリティの断面画像の対応する位置、あるいは、異なるモダリティの断面画像を重ね合わせた画像用の位置に、上述と同様の表示をするようにしてもよい。
【0034】
また、上述では、断面画像を切り替えながら表示する場合について説明したが、断面画像を並べて表示する場合であっても、1つの断面画像上で指示した異常陰影の箇所を他の断面画像上でもわかるように表示するようにしてもよい。
【0035】
以上、詳細に説明したように、医師が断面画像を観察して、一旦、チェックした陰影であるか否かを他の断面画像上でも確認できるため、多発性のガンのように多くの異常陰影が観察される場合であっても、同じ陰影を観察しているのか他の陰影を観察しているのかが区別しやすくなる。
【0036】
また、異なるモダリティで撮影された断面画像上、あるいは、異なるモダリティで撮影された断面画像を重ね合わせた画像上の同じ位置にチェックした陰影の位置がわかるような表示をすることにより、陰影を判断するための詳細な情報を得ることができる。
【0037】
さらに、注目領域としてマークする領域は、通常、ガンなどの異常陰影らしい陰影の現れたところであるが、正常な構造が現れた箇所をある断面画像上で注目領域としてマークしておいて、他の断面画像上で注目領域の位置を確認できるようにしてもよい。
【0038】
また、上記各手段をコンピュータ上に機能させるようなプログラムを記録した媒体を用いてコンピュータにインストールすることによって、読影支援装置として動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】読影支援装置の構成を示す構成図
【図2】注目領域にマークを付けた断面画像の一例
【図3】注目領域をマークした断面画像以外の断面画像上に注目領域が確認できるような表示をした一例
【図4】読影支援装置の動作を説明するためのフローチャート
【図5】注目領域に関連する断面画像の判定を説明するための図
【符号の説明】
【0040】
1 読影支援装置
10 3次元医用画像記憶手段
20 断面表示手段
30 指示手段
40 位置記録手段
50 注目領域位置表示手段
60 診断情報入力手段
70 判定手段
100 3次元医用画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮影して得られた3次元医用画像を記憶する3次元医用画像記憶手段と、
前記3次元医用画像の断面画像を複数表示する断面表示手段と、
該断面表示手段により表示された複数の断面画像うちのいずれかの断面画像上に存在する注目領域を指示する指示手段と、
該指示手段により指示された注目領域の位置を記録する位置記録手段と、
前記注目領域を指示した断面画像以外の断面画像上において、前記注目領域の位置を認識可能に表示する注目領域位置表示手段とを備えたことを特徴とする読影支援装置。
【請求項2】
前記指示された注目領域の診断情報を入力する診断情報入力手段と、
前記診断情報に基づいて前記注目領域を指示した断面画像以外の断面画像が前記注目領域に関連する断面画像であるか否かを判定する判定手段とをさらに備え、
前記注目領域位置表示手段が、前記判定手段により前記注目領域に関連する断面画像であると判定した断面画像上において、前記注目領域の位置を認識可能に表示するものであることを特徴とする請求項1記載の読影支援装置。
【請求項3】
前記診断情報が前記注目領域の大きさを含むものであり、
前記判定手段が、前記大きさに対応して前記注目領域を指示した断面画像から所定の範囲内にある断面画像を前記注目領域に関連する断面画像であると判定するものであることを特徴とする請求項2記載の読影支援装置。
【請求項4】
前記注目領域が病変部の候補領域であることを特徴とする請求項1から3いずれか記載の読影支援装置。
【請求項5】
被写体を撮影して得られた3次元医用画像3次元医用画像の断面画像を複数表示する断面表示ステップと、
該断面表示ステップにより表示された複数の断面画像うちのいずれかの断面画像上に存在する注目領域を指示する指示ステップと、
該指示ステップにより指示された注目領域の位置を記録する位置記録ステップと、
前記注目領域を指示した断面画像以外の断面画像上において、前記注目領域の位置を認識可能に表示する注目領域位置表示ステップとを備えたことを特徴とする読影支援方法。
【請求項6】
コンピュータを、
被写体を撮影して得られた3次元医用画像の断面画像を複数表示する断面表示手段と、
該断面表示手段により表示された複数の断面画像うちのいずれかの断面画像上に存在する注目領域を指示する指示手段と、
該指示手段により指示された注目領域の位置を記録する位置記録手段と、
前記注目領域を指示した断面画像以外の断面画像上において、前記注目領域の位置を認識可能に表示する注目領域位置表示手段として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−50045(P2007−50045A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235835(P2005−235835)
【出願日】平成17年8月16日(2005.8.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】