説明

調整弁およびその調整弁を備えた燃料電池システム

【課題】調整弁において、簡素化、及びコスト低減を図り、その調整弁を備えた燃料電池システムにおいて、簡素化、及びコスト低減を図る。
【解決手段】連結部37は、弁部42aが弁座33に当接したとき、軸部材36の移動方向が弁座33と直角な方向に対して第1許容角度a1範囲内で傾斜することによって弁部と弁座との間から流体が漏れる漏れ量が所定値以下となるように、弁体が軸線方向に対して第1許容角度a1範囲内での傾斜に応じて傾動することを許容する傾動許容部と、弁体35が調整位置にあるときに、弁体35が軸線方向に対して第1許容角度a1より大きい第2許容角度b1以上傾動することを規制する振動規制部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調整弁およびその調整弁を備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムに用いられる開閉弁の一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1では、特許文献1の図2に示されているように、流体が閉弁用圧力室50に供給されると、主ダイヤフラム46が押圧されることに伴って弁体本体62が下降動作し弁体本体62のシート部材が弁座に着座して空気流路を遮断する。一方、流体の供給が停止、若しくは開弁用圧力室に供給されると、弁体本体62が上昇動作する。これにより燃料電池用開閉弁が弁開放状態となり、該燃料電池用開閉弁の内部を空気が流通し流量調整を行なっている。
【0003】
また、特許文献2に示すものでは、バタフライバルブ本体42とシャフト422とをオフセットさせることにより、流量調整時にバタフライバルブ本体42とシート部とが接触しないようにして摩耗を抑制し耐久性を向上させている。
【0004】
さらに、燃料電池システム以外の遮断弁の他の一形式として、特許文献3に示されているものが知られている。特許文献3の図1に示されているように、ダイヤフラム式の弁26において弁座24の外側に設けた案内板68により水流を整流し弁26に複雑な方向の力が加わらないようにして弁座24の傾きを抑制しシール性を保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−146924号公報
【特許文献2】特開2010−135253号公報
【特許文献3】特開2007−218421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の開閉弁においては、空気側流路では大流量の空気が流れるため、シール径を大きくする必要がある。そしてシール径を大きくした状態で、組み付け等のばらつきによって弁体に僅かな傾きが発生すると弁体と弁座との間の傾きは増幅され大きくなってしまう。このためシール部のシール性を確保するためには弁体のシール部を形成するゴムをつぶして対応しなければならない。ゴムをつぶすためには弁体を大きな力で作動させるための大型のアクチュエータが必要となり、結局開閉弁が大型化されてしまう。また小型化のために、アクチュエータを小さくすると、バルブを高精度で高価なものにしなければシール性を満足させられず、高コストになってしまう。
【0007】
また、特許文献2に記載の開閉弁においては、流量調整は良好であるが、バタフライバルブは原理上、回転軸とシール面周辺にスキマができてしまい、シール性能を満足するのが困難である。
【0008】
また、文献3に記載の開閉弁は、流路に案内板68を設けることによって水流を整流し弁体と弁座24との間のシール性を向上させている。しかし、この案内板68は複雑な構造であり高コストの要因となる。
【0009】
本発明は、上述した各課題を解決するためになされたもので、調整弁において、簡素化、およびコスト低減を図り、その調整弁を備えた燃料電池システムにおいて、簡素化、およびコスト低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明である調整弁は、第1通路、前記第1通路と連通する第2通路、および前記第1通路と前記第2通路との間に介在し環状に形成された弁座が形成された弁本体と、前記弁座と直角方向に進退移動し、前記弁座と接離可能な環状の弁部が形成された弁体と、前記弁座に対し軸線方向に移動可能に前記弁本体に装架され、前記軸線方向に延在する円柱状の軸部材と、前記弁部が前記弁座に対して傾動可能に前記弁体を前記軸部材に連結する連結部と、前記軸部材と連結され前記弁部が前記弁座と当接する遮断位置と、前記弁座から離間する調整位置との間で前記弁体を位置制御可能に移動させる弁作動装置と、を備えた調整弁にして、前記連結部は、前記弁部が前記弁座に当接したとき、前記軸部材の移動方向が前記弁座と直角な方向に対して第1許容角度範囲内で傾斜することによって前記弁部と前記弁座との間から流体が漏れる漏れ量が所定値以下となるように、前記弁体が前記軸線方向に対して前記第1許容角度範囲内での前記傾斜に応じて傾動することを許容する傾動許容部と、前記弁体が前記調整位置にあるときに、前記弁体が前記軸線方向に対して前記第1許容角度より大きい第2許容角度以上傾動することを規制する振動規制部と、を備える。
【0011】
上記の課題を解決するため、請求項2に係る発明である調整弁は、請求項1において、前記連結部は、前記軸部材の先端部に形成された嵌合軸部に前記弁体に前記弁部より小径側で形成された嵌合穴が嵌合する嵌合部と、前記嵌合穴の両端部で前記軸部材の先端部に半径方向に突設された一対の支持突部と、を備え、前記傾動許容部は、前記嵌合軸部と前記嵌合穴との間に介在された弾性部材と、前記一対の支持突部のうちの前記軸部材の先端側に突設された支持部材に前記弁体の嵌合穴の端部が当接するように前記弁体を押圧する圧縮スプリングと、を備え、前記振動規制部は、前記第2許容角度以上の傾動を規制する前記嵌合軸部と前記嵌合穴との間の半径方向クリアランス、および前記弁体の前記嵌合穴の両端部と前記一対の支持突部との間の軸線方向のクリアランスの少なくとも一方を備える。
【0012】
上記の課題を解決するため、請求項3に係る発明である調整弁は、請求項1において、前記連結部は前記軸部材の前記弁体側端面と前記弁体の前記軸部材側端面とを連結する弾性部材であり、前記傾動許容部は、前記弾性部材であり、前記振動規制部は、前記軸部材の端面と前記弁体の端面とである。
【0013】
上記の課題を解決するため、請求項4に係る発明である調整弁は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記弁作動装置はモータを駆動源として作動する。
【0014】
上記の課題を解決するため、請求項5に係る発明である調整弁は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記弁作動装置はダイヤフラムを駆動源として作動する。
【0015】
上記の課題を解決するため、請求項6に係る発明である燃料電池システムは、請求項1乃至5のいずれか1項において、燃料が供給される燃料流路と酸化剤ガスが供給される酸化剤流路を有する燃料電池と、前記酸化剤流路の前記酸化剤ガスを導入する導入口に前記酸化剤ガスを圧送する圧送装置と、前記圧送装置と前記燃料電池との間に介装され前記圧送装置と前記燃料電池との連通を遮断する第1遮断弁と、前記酸化剤流路から酸化剤オフガスを導出する導出口を遮断する第2遮断弁と、前記導出口と前記第2遮断弁との間に介装され前記酸化剤流路の圧力を調整する圧力調整弁と、を備え、前記圧力調整弁として請求項1乃至請求項4に記載の調整弁を使用する。
【発明の効果】
【0016】
上記のように構成した請求項1に係る調整弁の発明によれば、弁体と軸部材とを弾性部材を介して連結する連結部は、傾動許容部と振動規制部とを備えている。傾動許容部は、弁部が弁座に当接したときに第1許容角度範囲内で傾斜する軸部材の傾動を傾斜に応じて許容することにより、弁部を弁座に倣って良好に当接させ流体の漏れ量を所定値以下とすることができる。また振動規制部は、弁体が調整位置にあるときに、弁体が軸線方向に対して第2許容角度以上傾動することを規制する。これによって、弁部の第2許容角度以上の傾動によって弁部と弁座との間を流れる流体の流れに起因する振動が弁部に発生する虞はなく流体の圧力または流量の変動を好適に抑制することができる。このように、傾動許容部と振動規制部とによってシール性及び安定した調圧性能または流量性能を同時に確保することができる。
【0017】
上記のように構成した請求項2に係る調整弁の発明によれば、請求項1において、弁体の嵌合穴、および軸部材の嵌合軸部が弁部の直径に対して小径側で形成されるので、弁体が小さな傾動をするだけで弁部が大きな変位を得ることができる。そして傾動許容部では、嵌合穴と軸部材との間に弾性部材が介在されているので弁体(嵌合穴)は弾性部材が許容する弾性力に抗して、小さな第1許容角度範囲内だけ傾動をすると弁部では容易に大きな変位を得て弁座に良好に倣うことができる。そして弁体を付勢する圧縮スプリングの付勢力によって弁体が安定し流体の漏れ量を所定値以下とすることができる。
【0018】
また、振動規制部では、半径方向クリアランス、および軸線方向のクリアランスによって弁体の傾動が許容されるが、嵌合穴が少なくとも一方のクリアランス分を移動(傾動)すると嵌合軸部、または一対の支持突部のいずれか一方と当接し傾動が確実に規制される。これにより弁体の傾動角度は第2許容角度を越えないので弁部の振動は抑制され流体の圧力または流量の変動を好適に抑制することができる。このように簡素化された低コストな構成によってシール性能が良好に確保されると共に、安定した調圧性能または流量性能を得ることができる。
【0019】
上記のように構成した請求項3に係る調整弁の発明によれば、請求項1において、連結部は弁部より小径側で形成され、傾動許容部では、弁体の端面と軸部材の端面とが弾性部材で連結され両端面間には適当な隙間が形成されている。これにより弁体が弾性部材が許容する小さな傾動をするだけで弁部では大きな変位を得られ弁座に良好に倣うことができるので流体の漏れ量を所定値以下とすることができる。
【0020】
また、振動規制部では、弁体が大きく傾動しても弁体の端面と軸部材の端面とが当接し傾動を第2許容角度以内で確実に規制する。これにより弁体の傾動角度は第2許容角度を越えないので弁部の振動は抑制され流体の圧力または流量の変動を好適に抑制することができる。このように簡素化された低コストな構成によってシール性能が良好に確保されると共に、安定した調圧性能または流量性能を得ることができる。
【0021】
上記のように構成した請求項4に係る調整弁の発明によれば、請求項1乃至3のいずれか1項において、弁作動装置はモータによって作動される。これにより高精度に弁体の位置制御が行なえ、さらに精度の高い調圧性能または流量性能を得ることができる。
【0022】
上記のように構成した請求項5に係る調整弁の発明によれば、請求項1乃至3のいずれか1項において、弁作動装置はダイヤフラムによって作動される。これによりさらに低コストな調整弁とすることができる。
【0023】
上記のように構成した請求項6に係る燃料電池システムの発明によれば、請求項1乃至5のいずれか1項において、燃料電池の酸化剤流路から酸化剤オフガスを導出する導出口と第2遮断弁との間に介装される酸化剤流路の圧力を調整する圧力調整弁として請求項1乃至請求項6に記載の調整弁を使用する。これにより燃料電池システムの運転の際には、精度よく酸化剤流路を調圧できるので、燃料電池において所望の発電量を精度よく発電させることができ効率的である。また燃料電池システムの運転停止の際には圧力調整弁で酸化剤オフガスを確実にシールできるので燃料電池の酸化剤流路を確実に密封することができる。このように、簡素化、コスト低減を図ることができる調整弁を備えることで、燃料電池システムにおいて、簡素化、コスト低減、及び信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による調整弁および燃料電池システムの第1の実施形態の概要を示す概要図である。
【図2】図1に示す調整弁の閉弁状態(遮断位置A)(a)、および開弁状態(調整位置B)(b)を示す部分断面図である。
【図3】図1に示す調整弁の連結部、及び弁部の拡大断面図である。
【図4】図3における弁部の各傾動状態(a)、(b)を示す図である。
【図5】嵌合穴39の穴径dと弁部42aの直径Dとの比率(d/D)に対する吸収可能角度の特性を示す参考図である。
【図6】従来の調整弁と本発明に係る調整弁のシール性能を比較した実験結果を示す図である。
【図7】本発明に係る調整弁の調整位置における流量性能の実験結果を示す図である。
【図8】第2の実施形態の調整弁を示す部分断面図である。
【図9】図8に示す調整弁の連結部の断面図9−9である。
【図10】図8に示す調整弁の弁部の各傾動状態(a)、(b)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明による調整弁およびその調整弁を備えた燃料電池システムの第1の実施形態について説明する。図1はこの燃料電池システムの概要図である。この燃料電池システムは、燃料電池10、圧送装置21、第1および第2遮断弁22、23、本発明に係る調整弁である圧力調整弁16、圧力センサP、および制御装置24を備えている。
【0026】
燃料電池10は、燃料が供給される燃料流路11と酸化剤ガスが供給される酸化剤流路12とを有している。燃料流路11は、燃料極に燃料を供給するものであり、酸化剤流路12は、酸化剤極に酸化剤ガスを供給するものである。燃料極と酸化剤極との間には図略の電解質膜が介装されている。本第1の実施形態では、燃料は水素ガスであり、酸化剤ガスは空気である。燃料電池10は、水素ガスと空気が化学反応して発電するものである。
【0027】
圧送装置21は、燃料電池10の酸化剤流路12に空気を圧送するものである。圧送装置21は、制御装置24からの駆動指令によって駆動され空気を圧送し、制御装置24からの駆動停止指令によって駆動が停止されて空気の圧送を停止する。なお、駆動が停止されると、圧送装置21の吐出口は大気に開放される。そして本第1の実施形態では、圧送装置21はコンプレッサである。
【0028】
燃料電池10の酸化剤流路12に酸化剤ガスを導入する導入口12aは、酸化剤供給管25を介して圧送装置21の吐出口に接続されている。酸化剤供給管25の途中には、酸化剤供給管25を開閉する第1遮断弁22が設けられている。圧送装置21の吐出口は、第1遮断弁22の入口22aに連通して接続しており、燃料電池10の導入口12aは、第1遮断弁22の出口22bに連通して接続している。
【0029】
燃料電池10の酸化剤流路12から酸化剤オフガスを導出する導出口12bは、オフガス排出管26を介して大気に開放されている。オフガス排出管26の途中には、オフガス排出管26を開閉する第2遮断弁23と本発明に係る調整弁である圧力調整弁16とが設けられている。燃料電池10の導出口12bは、圧力調整弁16の第1通路17の入出口17aに連通して接続している。また、第2遮断弁23の入口23aは圧力調整弁16の第2通路18の入出口18aに連通して接続しており、第2遮断弁23の出口23bは大気に開放されている。
【0030】
圧力調整弁16は制御装置24に電気的に接続され、酸化剤流路12を開閉し酸化剤オフガスの通過量を制御することにより燃料電池10内の酸化剤ガスの圧力の制御を行なう。圧力調整弁16と燃料電池10の導出口12bとの間には圧力センサPが設けられており、圧力センサPは制御装置24と接続されて燃料電池10の導出口12b、つまり燃料電池10の酸化剤流路12の圧力を検出し制御装置24に送信する。
【0031】
なお、本実施形態においては第1遮断弁22、および第2遮断弁23は、モータによって電気的に作動されるものではなく、ダイヤフラムによって作動させる構成となっている。具体的には、各遮断弁22、23の各入口22a、23a側と各出口22b、23b側との圧力差によって図略の弁体と一体で形成される図略のダイヤフラムが作動し、各入口22a、23a側が各出口22b、23b側より高い圧力になると開弁して空気を流通させる。また入口22a、および出口23b側が出口22b、および入口23a側より低い圧力になると閉弁して出口22b、および入口23a側からの酸化剤ガス、酸化剤オフガスの流れを遮断する。なお、第1遮断弁22、および第2遮断弁23は、この態様に限定されず制御装置24の指令によって作動するモータ、またはソレノイドなどによって構成してもよい。また制御装置24からの指令によってコンプレッサからの空気圧をダイヤフラム室に供給し弁体と連結されたダイヤフラムを作動させることによって弁体の位置制御をおこない、弁体の開閉を制御してもよい。
【0032】
圧送装置21と第1遮断弁22との間の酸化剤供給管25からは圧縮空気バイパス管27が分岐され、オフガス排出管26の第2遮断弁23の下流側に接続されている。圧縮空気バイパス管27の途中には、圧縮空気バイパス管27を開閉する開閉弁27aが設けられている。開閉弁27aは、制御装置24からの指示に従って開閉制御され、酸化剤供給管25を通って燃料電池10に供給される酸化剤ガスの流量の制御を行なうものである。開閉弁27aは、各種の動力により駆動可能に構成することができ、例えば、モータ、ソレノイドなどを用いることができる。
【0033】
次に第1の実施形態において本発明に係る調整弁である圧力調整弁16について主に図2、図3に基づいて説明する。図2(a)は、後述する圧力調整弁16の弁部42aが後述する弁座33と当接して閉弁し、酸化剤オフガスの流れを遮断する遮断位置A(閉弁状態)を示している。また、図2(b)は圧力調整弁16の弁部42aが弁座33から離間して開弁し酸化剤オフガスを流通させ、燃料電池10側のオフガス排出管26の圧力を制御装置24が要求する圧力に調整する調整位置B(開弁状態)を示している。図3は、連結部37の拡大図である。
【0034】
図2(a)、(b)に示すように、圧力調整弁16は、弁体35と、軸部材36と、弁体35と軸部材36とを連結する連結部37と、弁本体34と、蓋部材45と、ダイヤフラム43と、弁作動装置であるステッピングモータ38と、を有している。
【0035】
弁体35は、円筒外周壁35aと、円筒内周壁35bと、上壁35cと、軸受部35dと、弁部基材42と、を有している。円筒外周壁35aは弁部基材42側の端部に鍔部35eを有している。円筒内周壁35bは円筒外周壁35aと同軸に円筒外周壁35aの内周側に形成されている。そして図2において円筒外周壁35aと円筒内周壁35bとのステッピングモータ38側の端部同士が連結されて上壁35cが形成されている。図2における上壁35cの上面には後述するダイヤフラム43の内周シール部43aが後述するシール部固定部材64との間に挿入されて縮設されるための凹溝35hが弁体35の軸線回りに環状に凹設されている。凹溝35hを形成する内周側と外周側の各突部のうち外周側の突部の高さは、内周側の突部の高さよりもダイヤフラム43の受圧部である膜43cを形成する弾性材(例えば、基布入りゴム:材質EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム))の厚さ分よりも若干低くなるよう形成されている。
【0036】
凹溝35hの上方には前述したシール部固定部材64が固定されている。シール部固定部材64は弁体35の軸線と平面が直交する円環状に形成された円環部64aと、円環部64aの外縁から図2において上方に向かって立設される上方円筒部64bと、円環部64aの内縁から下方に向かって立設される下方円筒部64cとを有している。そして円環部64aの下面と弁体35の上壁35cの凹溝35hとの間でダイヤフラム43の内周シール部43aを挟持し、円環部64aの下面と凹溝35hを形成する外周側の突部との間で内周シール部43a近傍の膜43cを挟持して固定している。また下方円筒部64cの外周面と弁体35を構成する円筒内周壁35bの内周面とが嵌合してシール部固定部材64の位置決めを行なっている。このときシール部固定部材64の固定方法はどのようなものでもよいが、本実施形態においては円環部64a下面と上壁35cの凹溝35hを形成する内周側の突部の上面とを接触させた状態で接触部をプロジェクション溶接によって固定している。
【0037】
弁部基材42は円筒外周壁41の鍔部35eに一体成型によって形成されている。弁部基材42は円筒外周壁41と同軸で円板状に形成され、円筒外周壁41の鍔部35e下面よりも所定量だけ突出して環状に形成された弁部42aを有している。弁部42aの断面形状は凸状であり、弁部42aは後述する弁本体34に形成される弁座33に対して進退移動し、弁座33と接離可能となっている。弁部42aの直径D(図3参照)は、システム上要求される調圧特性(または流量特性)から決定される。弁部基材42、および弁部42aは本第1の実施形態においてはゴム製(例えばEPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム))である。しかし、これに限らず、弁部基材42は遮断弁30内を通過させる流体の種類、及び許容遮断量(透過量)等に応じて、適宜変更すればよく、例えばNBR(ニトリルゴム)やFKM(フッ素ゴム)等を使用することができる。
【0038】
軸受部35dは、円筒形状を有し、図2、図3における軸受部35dの上端と円筒内周壁35bの下端とが、2段の段部を有する段付き部35fを介して接続されている。段付き部35fにおいて、弁体35の軸線と直交する2つの平面のうち軸受部35d側の平面に後述する本発明にかかる圧縮スプリング46の一端面、および本発明に係る一対の支持突部48のうち他方の支持部材であるワッシャ48bを受ける受け面35gが形成されている。
【0039】
軸受部35dの内径部の嵌合穴39の穴径d(図3参照)は弁部42aの直径Dより小径側で形成されており、本実施形態においては弁部42aの直径Dの略1/6になっている。ただし、嵌合穴39の穴径dは弁部42aの直径Dの1/6に限るものではない。本発明においては、嵌合穴39の穴径dを弁部42aの直径Dより小径側で形成するのは、嵌合穴39に嵌合される嵌合軸部52に対する嵌合穴39(弁体35)の小さな傾動によっても弁部42aの軸線方向の大きな変位量を得るためのものである。そして嵌合穴39の穴径dと弁部42aの直径Dとの比率(d/D)は遮断位置Aにおいて弁部42aを変位させたい変位量に依って決定される。また該変位させたい変位量は弁部42aが設計上初期から有する吸収すべき弁座33に対する傾き角度に基づく。
【0040】
なお、参考として図5に、嵌合穴39の穴径dと弁部42aの直径Dとの比率(d/D)(横軸)に対する、弁体35が傾動し弁部42aが弁座33に倣うことが可能な角度である吸収可能角度(縦軸)のグラフを示す。このとき、弁部42aの直径Dを一定とし、径が変化する嵌合穴39の内周の一点が弁体35の傾動によって軸線方向に0.1mmだけ変位した場合の弁部42aの傾動角度(吸収可能角度)を示したものである。図5によれば嵌合穴39の穴径dと弁部42aの直径Dとの比率(d/D)が小さいほど2次関数的に吸収可能角度が増加していることがわかる。これにより必要な吸収可能角度に応じてd/Dの値を決定すればよい。
【0041】
軸部材36は円柱状を呈し、軸線方向に延在している。軸部材36は本体部51と、本発明に係る嵌合軸部52と、ボールネジ軸56とを有している。嵌合軸部52は、図2において本体部51の下方である軸部材36の先端部に本体部51より小径で同軸に形成されている。ボールネジ軸56は、本体部51の図2において上方に形成されている。ボールネジ軸56は、本体部51より小径で同軸に形成され本体部51とステッピングモータ38(本発明の弁作動装置に相当する)とを連結している。そして嵌合軸部52が軸受部35dの嵌合穴39に嵌合されて嵌合部54を形成している。
【0042】
本体部51は軸部材36が所定以上傾動しないよう弁本体34に固定される後述する蓋部材45と一体的に形成された支持円筒45aの内径部に係合され軸線方向に往復動可能に支持されている。
【0043】
ボールネジ軸56は軸線回りの回転を規制されてステッピングモータ38内に挿通され、制御装置24の指令によって回転制御されるステッピングモータ38内に設けられた図略のナットと螺合している。図略のナットは、軸部材36の軸線方向への移動を規制されており、これによって図略のナットが駆動されて回転するとナットに螺合され回転を規制されたボールネジ軸56が軸線方向に移動され軸部材36が上下方向に調整可能となる。なお、ボールネジ軸56の回転規制はボールネジ軸56の軸線方向の溝を設けておき、ステッピングモータ38内に該溝内に係合する突部を設けておけばよい。これによってボールネジ軸56は突部によって回転を規制され、軸線方向のみに移動可能となる。
【0044】
このように、ステッピングモータ38は、軸部材36と連結され弁体35の弁部42aが後述する弁本体34に形成される弁座33と当接する遮断位置A(図3(a)参照)と、弁座33から離間して圧力調整弁16の第1通路17側の圧力を調整する調整位置B(図3(b)参照)との間で弁体35を位置制御可能に移動させる弁作動装置である。なお、ステッピングモータ38は制御装置24からの指令によってパルス電力を入力し、入力したパルス数に応じて回転角度が制御される一般的に使用されるステッパモータであるので詳細な説明は省略する。
【0045】
嵌合軸部52は一対の支持突部48のうち図2、3において他方の支持部材であるワッシャ48bの内径部と係合する係合軸52cと、一対の支持突部48のうち一方の支持部材であるEリング48aと係合するとともにEリング48aを保持するEリング溝52aと、係合軸52cとEリング溝52aとの間に軸線回りに刻設されたOリング溝52bとを有している。
【0046】
連結部37は、弁部42aが弁座33に対して傾動可能となるように弁体35の軸受部35dの嵌合穴39と軸部材36の先端部の嵌合軸部52とを連結している。また連結部37においては前述したように一方の支持部材であるEリング48aと他方の支持部材であるワッシャ48bとが嵌合軸部52の半径方向にそれぞれ突設され、一対の支持突部48を形成している。そしてEリング48aとワッシャ48bとはそれぞれ軸受部35dの嵌合穴39の両端外側に配置されている。Eリング48aの図2における上面は軸受部35dの下端面と当接可能となっている。ワッシャ48bの図2における下面は嵌合穴39の上端であるとともに段付き部35fの平面部である受け面35gと当接可能となっている。これにより一対の支持突部48は軸受部35dの軸線方向の移動を規制しており、このときの移動の規制量が軸線方向のクリアランスACである(図3参照)。
【0047】
また、連結部37では、嵌合軸部52が軸受部35dの嵌合穴39に嵌合された状態において、Oリング58が嵌合軸部52のOリング溝52bと嵌合穴39との間に縮設されている(図2、図3参照)。そして、このとき嵌合軸部52と嵌合穴39との間で弁体35(嵌合穴39)がOリング58を圧縮しながら移動可能な量が半径方向クリアランスRCである(図3参照)。
【0048】
弁体35が図2(a)に示すように遮断位置Aに移動され、弁部42aが弁座33に当接したときには、軸部材36の移動方向は弁座33と直角な方向に対して初期から第1許容角度a1範囲内の傾斜を有している(図4(a)参照)。つまり弁体35、および弁本体34等の各部品の設計上の公差幅から予め所定の量が許容され許容された第1許容角度a1範囲内の角度だけ弁座33と直角な方向に対して傾斜している。このとき第1許容角度a1範囲は初期に弁部42aと弁座33との間に有する傾き角度に等しい。そして連結部37は、弁部42aと弁座33との間からの酸化剤オフガスの漏れ量が所定値以下となるように軸部材36の傾斜(第1許容角度a1範囲)に応じて傾動を許容する傾動許容部を備えている。これにより、本実施形態において第1許容角度a1範囲とは初期から弁部42aと弁座33との間に有する設計上の傾き角度範囲をいう。
【0049】
傾動許容部は嵌合軸部52と嵌合穴39との間に介在されたOリング58(弾性部材)と、一方の支持部材であるEリング48aに弁体35の嵌合穴39の端部が当接するように弁体35を押圧する圧縮スプリング46と、を備えている。圧縮スプリング46の下端面は、弁体35の段付き部35fの受け面35gに着座している。また、圧縮スプリング46の上端面は、蓋部材45の支持円筒45aに形成された固定された平面部45bに着座している。これによって圧縮スプリング46は弁体35の軸線方向の移動を抑制している。そして初期から設計上の傾きを有する弁体35の弁部42aが弁座33に当接し弁座33に倣うと圧縮スプリング46の付勢力は弁体35の姿勢を安定させる。
【0050】
傾動許容部において、Oリング58はOリング58が有する弾性力によって弁体35の半径方向の移動を抑制している。そして初期から設計上の傾きを有する弁体35の弁部42aが弁座33に当接し弁座33に倣うために傾き角度を変更させるときには、Oリング58の弾性力はその変更を第1許容角度a1範囲内で許容するよう設定されている。
【0051】
また連結部37は、弁体35が調整位置B(図2(b)参照)にあるときに、弁体35が軸線方向に対して第2許容角度b1を越える傾動をすることを規制する振動規制部を備えている。振動規制部は、調整位置Bにある弁体35(弁部33)と弁部33から離間した弁座33との間を酸化剤オフガスが流通するときに発生させる振動によって、弁体35自体が振動されないよう抑制するものである。
【0052】
振動規制部は、第1許容角度a1より大きい第2許容角度b1を越える傾動を規制する嵌合軸部52と嵌合穴39との間の半径方向クリアランスRC、および弁体35の嵌合穴39の両端部と一対の支持突部48との間の軸線方向のクリアランスACを有している(図3参照)。具体的には、図4(b)に示すように、軸受け部35dの下端面左方がEリング48aの上面に当接し、軸受け部35dの上端面右方がワッシャ48bの下面に当接することによって弁体35の傾動が第2許容角度b1で規制される。ただしこの規制態様に限らず、軸線方向のクリアランスACをさらに大きくし、かつ半径方向クリアランスRCを小さくし嵌合軸部52の一部が嵌合穴39に当接して弁体35の傾動を規制するようにしてもよい。なお、第2許容角度b1の大きさは発明者によって実験によって導出された値であり、第2許容角度b1以内の傾動であれば弁部42a(弁体35)が酸化剤オフガスの流れによって振動し圧力調整弁16の1次側通路の圧力特性に影響を与えることはない傾動角度である。よって第2許容角度b1は実施者が実験によってそれぞれ求め適宜設定すればよい。
【0053】
このとき、Oリング58の弾性力は第1許容角度a1範囲の時の弾性力に比べて変形を増した分だけ弁体35を傾動させない方向に大きくなる。また圧縮スプリング46も調整位置Bに移動したことにより圧縮された変位量にばね定数を乗じた分だけ荷重が大きくなり、弁体を傾動させない方向への付勢力が上昇する。これらにより、弁体35は第2許容角度b1まで傾動せずとも弁体35を傾動させない方向に大きな力を付与されるので、多くの場合は第2許容角度b1に到達するまでのいずれかの点で安定的に保持される。
【0054】
弁本体34は、通路部材44によって形成される第1通路17、第2通路18、及び第1通路17と第2通路18との間に介在し環状に形成された弁座33とを有している。図2(a)、(b)に示すように、第1通路17は、通路部材44の内部に形成され、通路部材44の内部空間が、ダイヤフラム43と、弁体35とによって区画されて形成されている。なお、本実施形態においてはダイヤフラム43を設けて第1通路17を区画形成したが、図2におけるダイヤフラム43の上方の空間が密封構造であり外部と連通しない構造を有している場合にはダイヤフラム43を設けなくともよい。第2通路18は、通路部材44の内部に形成され、第1通路17と略直交し前述した弁部42aと同軸で、かつ弁部42aの円環よりも若干径小に通路部材44の底壁44aに貫通して設けられている。
【0055】
通路部材44は第1通路17の図2(a)、(b)における右方に、燃料電池10の導出口12bから排出された酸化剤オフガスが導入される通路であって、大気に開放されているオフガス排出管26と接続を行なう連結フランジ44aを有している。また通路部材44は第2通路18の図2(a)、(b)における下方に、酸化剤オフガスを排出し第2遮断弁23の入口23aに送出するためにオフガス排出管26を接続するための連結フランジ44bを有している。
【0056】
弁座33は、第1通路17と第2通路18との間に介在し、第1通路17と第2通路18とを分離している。弁座33は連結フランジ44bと平行な面で、かつ第2通路18の外周縁に、弁部42aと同軸で円環状に設けられている。弁座33は、圧力調整弁16が閉弁状態(遮断位置A)となるときに弁部42aが当接して第1通路17から第2通路18への漏れ量が所定値以下となる良好な平面度を有して形成されている。なお、所定値以下の漏れ量とは、圧力調整弁16が使用されるシステム停止時において許容される弁座33と弁部42aとの間からの漏れ量のことをいい、本実施形態においては、0.2ml/minとする。
【0057】
弁本体34の第2通路18の図2(a)、(b)における上方には弁体35を収容するための収容空間34aが設けられている。そして収容空間34aに上述した弁体35と、弁体35と連結部37で連結された軸部材36とが収容されている。さらに収容空間34aの上方には弁座33と同軸に貫通孔34bが貫通されている。貫通孔34bの図2における上面には貫通孔34bから立設された立壁34cが円環状に所定の半径方向厚さで形成されている。立壁34cの外周側にはダイヤフラム43の外周シール部43bを受ける平面34dが立壁34cの上面より若干低く貫通孔34bと同軸で円環状に形成されている。
【0058】
平面34dのさらに外周側で図2において下方には平面34dと平行に形成された高さ規制面34eが平面34dと同軸で円環状に形成されている。平面34dと高さ規制面34eとの間の鉛直面には外周嵌合部34fが形成されている。
【0059】
蓋部材45は、弁本体34の上方でネジによって弁本体34に固定されている。蓋部材45は、下方が開口するカップ形状を呈し、下方に備える鍔部平面45b下面と平面34dとの間でダイヤフラム43の外周シール部43bを圧縮して固定している。また鍔部平面45bは外周部で下方に向かって直角に屈曲され軸線方向に所定の長さだけ延在され円筒嵌合部45cを形成している。円筒嵌合部45cの円筒内周面は弁本体34に形成された外周嵌合部34fに嵌合して蓋部材45の位置決めを行なっている。
【0060】
前述した円筒嵌合部45cの軸線方向の所定の長さは延在された下端が弁本体34に設けられた高さ規制面34eに当接したときに、鍔部平面45b下面の高さがダイヤフラム43の外周シール部43bを適切な量圧縮するとともに、鍔部平面45b下面と立壁34c上面との間に適切な隙間を設け外周シール部43b近傍の膜43cを好適に圧縮して固定できる長さにすればよい。
【0061】
蓋部材45の上面中央部からは、図2における下方に向かって順に小さく同軸に形成された大円筒45d、中円筒45e、および支持円筒45aが形成されている。大円筒45dと中円筒45e、および中円筒45eと支持円筒45aとはそれぞれ軸線方向と直交する平面によって連結されており、とくに中円筒45eと支持円筒45aとを連結する平面を平面部45fと称す。そして大円筒45dの内部空間は蓋部材45の上面に配置され固定されるステッピングモータ38の下部を収容し、中円筒45eは軸部材36のボールネジ軸56および、本体部51の一部を収容している。
【0062】
そして前述したとおり支持円筒45aは軸部材36の本体部51を支持し軸部材36が所定以上傾動しないようにしている。また、中円筒45eと支持円筒45aとを接続する平面である平面部45f下面には前述したように圧縮スプリング46の上端面が着座し付勢している。
【0063】
このような状態で蓋部材45が弁本体34と図略のボルトによって固定されている。そして軸部材36は、ステッピングモータ38、および蓋部材45を介して、弁座33に対し直角な軸線方向に移動可能に弁本体34に装架されている。
【0064】
次に、燃料電池システムの作動について説明する。燃料電池システムが起動され通常運転が開始されると圧送装置(コンプレッサ)21が駆動されて酸化剤ガス(空気)が第1遮断弁22の入口22aを介して圧送される。このとき第1遮断弁22の図略の弁体は入口22a側の圧力が出口22b側の圧力より高くなるので圧力差によって図略の弁体と一体で形成される図略のダイヤフラムが作動され、弁体を開弁して酸化剤ガスを圧力差の大きさに応じて流通させる。そして所定流量の酸化剤ガスが燃料電池10の導入口12aを介して酸化剤流路12に供給される。
【0065】
このような作動状態において、燃料電池10に供給する酸化剤ガスの流量調整は、酸化剤供給管25から分岐された圧縮空気バイパス管27に設けられた開閉弁27aを、制御装置24によって開閉させ、酸化剤ガスをオフガス排出管26から排出することによって行なう。そして、燃料電池10の酸化剤流路12内圧力は、導出口12bの下流側に設けられた本発明に係る圧力調整弁16の弁体35を制御装置24によって開閉させ調整している。
【0066】
このように所定の圧力、及び流量に制御された燃料電池10の酸化剤極の酸化剤ガスと、水素極に供給された所定の圧力の水素とが、電解質膜を介して反応し発電する。そして燃料電池10で消費されずに残った酸化剤ガスは燃料電池10の導出口12bから酸化剤オフガスとして導出される。
【0067】
次に圧力調整弁16の作動について詳細に説明する。なお、本実施形態においては圧力調整弁16の弁体35が有する弁部42aが調圧位置Bにおいて調圧する第1通路17側の圧力を例えば140kPa.abs一定とする。また圧力調整弁16の遮断位置Aにおいて弁部42aが弁座33に当接したときの第1通路17側から第2通路18側への漏れ量の許容値を例えば0.2ml/min以下として説明する。
【0068】
まず、運転中の燃料電池システムが停止され、調圧位置Bにあった弁部42aがステッピングモータ38を制御することによって軸線方向に移動し弁座33に当接し遮断位置Aとなる場合について説明する。
【0069】
燃料電池システムの運転が停止されると、制御装置24の指令によって圧送装置21の駆動が停止され、酸化剤ガスの圧送が停止されて圧送装置21に連結される酸化剤供給管25内が大気圧となる。これにより第1遮断弁22の入口22a側よりも出口22b側のほうが圧力が高くなり第1遮断弁22の図略の弁体が閉弁される。
【0070】
また略同時に圧力調整弁16も燃料電池システムの運転の停止に伴い制御装置24の指令によってステッピングモータ38が駆動され、調整位置Bにある弁体35が弁座33に向かって移動される。
【0071】
このとき弁体35、および弁体35を構成する弁部42aは弁座33に対して設計上の公差の範囲で所定の傾き(第1許容角度a1範囲)を有している。これにより、弁部42aは弁座33に対して第1許容角度a1範囲の傾きを有しながら弁座33に接近していくことになる。そして図4(a)に示すように、まず弁部42aのうち一点が弁座33に当接する。なお、このとき弁座33に対する弁部42aの傾きが所定範囲をこえると、弁部42aは弁座33範囲内に当接できなかったり、弁座33の内径部の第2通路18に落ち込み、良好に当接したりすることが望めなくなる。そこで弁座33に対する弁部42aの傾き角度(第1許容角度a1範囲)が所定の範囲内に収まるように、各部品の設計上の公差幅を決定している。
【0072】
そして弁座33に対して所定の傾きを有しながら一点が弁座33に当接した弁部42aは、弁体35が圧力調整弁16の1次通路17側の圧力によって付勢され連結部37が有する径方向クリアランスRCおよび軸線方向のクリアランスACの範囲内で傾動されて弁座33に倣い良好に弁座33と当接する。
【0073】
このとき本実施形態においては嵌合穴39の径が弁部42aの直径の略1/6の径になるよう形成されている。これによって弁部42aの傾動によって生じる嵌合穴39部の軸線方向の変位量に対する弁部42aの変位量は略6倍となり、嵌合穴39部での小さな傾動に関わらず弁部42aでは大きな変位量を得ることができる。これにより弁体35は嵌合軸部52と嵌合穴39との間に介在されたOリング58(弾性部材)が許容する弾性力に抗して、小さな第1許容角度a1範囲だけ傾動するとともに圧縮スプリング46の付勢力によって弁体35が弁座33に安定して着座する。これにより、弁部42aでは大きな変位を得て弁座33に良好に倣うことができ流体の漏れ量を所定値(0.2ml/min)以下とすることができる。
【0074】
次に弁部42aを調整位置Bの状態にする場合について説明する。調整位置Bとなるために圧送装置21が駆動されると必要流量の酸化剤ガスが第1遮断弁22と燃料電池10の酸化剤流路12とを流れ、酸化剤オフガスが圧力調整弁16の第1通路17に流入してくる。そして制御装置24は圧力センサPの値を確認しながらステッピングモータ38の図略のナットを回転制御して軸部材36の弁体35の弁部42aを弁座33から離間させる。これによって弁部42aと弁座33との間を酸化剤オフガスが弁座33からの離間距離に応じて流通する。制御装置24は第1通路17側の圧力が、目標とする例えば140kPa.abs一定となるよう第1通路17側の圧力を監視しながらフィードバック制御によって弁部42aを開弁方向、または閉弁方向に移動制御する。
【0075】
このとき、連結部37では半径方向クリアランスRCと軸線方向のクリアランスACとを有しているので、弁体35は各クリアランスRC、AC内で許容される範囲内において軸部材36に対して傾動可能である。しかし本発明においては、上述したように最大傾動角度である第2許容角度b1によって弁体35の傾動が規制されているので、弁部42aの振動は抑制され流体の圧力または流量の変動を好適に抑制することができる。
【0076】
なお、図6は、従来品、および本実施形態の圧力調整弁16の弁部42aが遮断位置Aにあるときの弁部42aからの漏れ量を実機にて実測した結果の図である。従来の遮断弁の測定結果は黒丸で示し、本発明に係る圧力調整弁16の測定結果は菱形で示している。図6の横軸は弁体35(弁部42a)と弁座33との初期の傾き角度(deg)を示し、縦軸は初期の傾き角度(deg)を吸収する動作後の弁部42aと弁座33との間の漏れ量(ml/min)を示している。そして漏れの目標値を0.20ml/minとしている。図6中において従来品とは、連結部は傾動せず、弁部と弁座との間が設計上の傾きを有している時には、弁部の一部を押圧して潰すことにより初期の傾き角度(deg)を吸収し弁部と弁座との間のシール性を確保するタイプのものである。図6をみて明らかな様に、従来品においては弁部42aと弁座33との傾きが0.5degに達する前に0.20ml/minを大きく越える漏れ量の発生が散見される。また0.6degを越えると全数が大きな漏れ量となっている。これに対し発明品においては、弁部42aと弁座33との傾きが設計上の理論値である1.35deg付近まで漏れ量は目標値とした0.20ml/min以下となっている。なお、図6における弁体の傾き角度、及び漏れ量の具体的な数値については、所定の実験条件における一結果であって、特別な意味を持つものではない。
【0077】
また、図7は、調整位置Bの1次圧を140kpa.abs一定とした状態における発明品の流量特性グラフである。図7は、横軸にステッピングモータ38のステップ数をとり、縦軸に弁部42aと弁座33との間を流れる流量(NL/min)をとったものである。図7をみて明らかな様に、全ての流量域において振動している域はなく良好な流量特性(調圧特性)が得られることがわかった。
【0078】
上述した説明から明らかなように、本第1の実施形態においては、連結部37では、弁部42aより小径側で形成された嵌合穴39に嵌合軸部52が半径方向クリアランスRCを有して嵌合されている。また、嵌合穴39の軸線方向両端部には一対の支持突部48がそれぞれ突設され、一対の支持突部48と嵌合穴39との間に軸線方向のクリアランスACを有している。そして、傾動許容部は、嵌合軸部52と嵌合穴39との間に介在されたOリング58(弾性部材)と、先端側に突設されたEリング48a(支持部材)に弁体35の嵌合穴39の端部が当接するように弁体35を押圧する圧縮スプリング46と、を備えている。このとき、嵌合穴39、および軸部材36(嵌合軸部52)は弁部42aの直径Dに対して小径側(d)で形成されるので傾動許容部では半径方向クリアランスRC範囲内、および軸線方向のクリアランスACの範囲内において、小さな傾動をするだけで弁部42aでは大きな変位を得ることができる。これにより弁体35(嵌合穴39)はOリング58(弾性部材)が許容する弾性力に抗して、小さな第1許容角度a1範囲内だけ傾動をすると弁部42aでは容易に大きな変位を得て弁座33に良好に倣うことができる。そして圧縮スプリング46の付勢力によって弁体35が安定し酸化剤オフガス(流体)の漏れ量を所定値以下(本実施形態においては0.2ml/min以下)とすることができる。
【0079】
また、振動規制部は、弁体35が第2許容角度b1以上傾動しないよう第2許容角度b1を規定する半径方向クリアランスRC、および軸線方向のクリアランスACを備える。これにより弁体35(嵌合穴39)が、主に弁体35の半径方向の移動を抑制する弾性部材の弾性力や、主に弁体35の軸線方向の移動を抑制する圧縮スプリング46の付勢力に抗して大きく傾動しても、嵌合穴39が少なくとも一方のクリアランス分を移動(傾動)して嵌合軸部52、または一対の支持突部48と当接し傾動が確実に規制される。これにより弁体35の傾動角度は第2許容角度b1を越えないので弁部42aの振動は抑制され酸化剤オフガス(流体)の圧力または流量の変動を好適に抑制することができる。このように簡素化された低コストな構成によってシール性能が良好に確保されると共に、安定した調圧性能または流量性能を得ることができる。
【0080】
また本第1の実施形態においては、弁作動装置はステッピングモータ38によって作動される。これにより高精度に弁体35の位置制御が行なえ、精度の高い調圧性能または流量性能を得ることができる。
【0081】
また本第1の実施形態においては、燃料電池10の酸化剤流路12から酸化剤オフガスを導出する導出口12bと第2遮断弁23との間に介装される酸化剤流路12の圧力を調整する圧力調整弁として、本発明に係る圧力調整弁(調整弁)を使用する。これにより燃料電池システムの運転の際には、精度よく酸化剤流路12を調圧できるので、燃料電池において所望の発電量を精度よく発電させることができ効率的である。また燃料電池システムの運転停止の際には圧力調整弁16で酸化剤オフガスを良好に遮断できるので燃料電池10の酸化剤流路12を適切に封止することができる。このように、簡素化、コスト低減を図ることができる圧力調整弁(調整弁)を備えることで、燃料電池システムにおいて、簡素化、コスト低減、及び信頼性の向上を図ることができる。
【0082】
次に、第2の実施形態について図8に基づいて説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態に対して軸部材と弁体との連結方法、弁座と弁部形状、および弾性部材の形状等が異なる。よって第1の実施形態と異なる部分のみ説明し、同一部材については同一符号を付して説明を省略する。
【0083】
第2の実施形態の圧力調整弁70は、弁体75と、軸部材76と、弁体75と軸部材76とを連結する連結部91と、弁本体74と、弁作動装置77である圧縮スプリング78および電動モータ69と、を有している。そして本実施形態においては、弾性部材が連結部91を兼ね、後述する弁部75aが弁座73に対して傾動可能となるように弁体75が弾性部材(連結部91)によって軸部材76に連結されている。
【0084】
弁体75は、弁座73に対して進退移動し、キノコ状に形成された基部75bと、弁座73と接離可能で基部75bに設けられた環状の弁部75aと、を有している。弁部75aはゴム製(例えばEPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム))である。ただし弁部75aは金属製でもよいし、樹脂製でもよい。弁体75は円環状に形成される基部75bと一体的に形成されている。そして軸部材76の軸線は弁部75a平面に対して直角になるように形成されている。
【0085】
弁本体74は、通路部材81と、通路部材81に形成される第1通路71と、第2通路72と、第1通路71と第2通路72との間に介在し環状に形成された前述の弁座73とを有している。弁本体74の図8における上方端面には電動モータ69の取付け面74aが形成されている。取付け面74aの下方には電動モータ69の嵌合部69a、押動軸92、軸部材76の一部、および圧縮スプリング78を収容する収容空間93が設けられている。収容空間93と第1通路71との間には仕切り壁94を有し、仕切り壁94には収容空間93と第1通路71とを連通し軸部材76を挿通するための貫通孔95が貫設されている。
【0086】
連結部91は、傾動許容部と振動規制部とを備え、傾動許容部は連結部91を形成する弾性部材(ゴム部材90)である。また振動規制部は、弁体75の軸部材76側の端面75d、および軸部材76の弁体75側の端面76cである。また連結部91は弁部73より小径側で形成される。そして第2許容角度b2以上の傾動を規制する距離Gに配置された弁体75の爪部75cに設けられた軸部材76側の端面75dと端面75dに対向する軸部材76の弁体75側の端面76cとを連結する弾性部材である。
【0087】
つまり4箇所の爪部75cの各端面75dと軸部材76の端面76cとの間の距離Gは、弁体75の傾動角度を第2許容角度b2以下に規制するため設定され、弁体75が傾動したときに4箇所の爪部75cのうちいずれか1つの爪部75cの端面75dが軸部材76の端面76cに当接して弁体75の傾動を規制する。爪部75cは図9の断面図に示すように4箇所設けられており各爪部75cが90度毎に等間隔で外周に沿って突設されている。このとき軸線方向において4箇所の爪部75cの上面である各端面75dと軸部材76下面である端面76cとの間にはゴム部材90は設けられていない。
【0088】
連結部91の弾性部材は剛性の高いゴム部材90であり、弁部75a(弁体75)が弁座73に対してゴム部材90の弾性によって傾動可能となるように弁体75を軸部材76に成型によって一体的に連結する。ただし弾性部材(ゴム部材90)の連結は成型によって一体的に連結するのみならず、別体の弾性部材を接着剤によって貼り付けてもよいし、ネジ等によって固定してもよい。また弾性部材(ゴム部材90)はゴムに限らず弾性を有する金属を適用してもよい。またこれらの弾性部材は縦弾性係数Eが比較的大きい材料が好ましい。これによって高剛性の部材を得ることができる。
【0089】
弾性部材(ゴム部材90)が兼ねる連結部91の軸径daは前述したように弁部75aの直径Daより小径側で形成され、具体的には略1/3で形成されている。
【0090】
傾動許容部は、弁体75が図8に示す遮断位置Cに移動され、弁部75aが弁座73に当接したときには、軸部材76の移動方向は弁座73と直角な方向に対して初期からの設計上の傾き範囲である第1許容角度a2の範囲内で傾斜をしている(図10(a)参照)。そして連結部91は、弁部73と弁座73との間からの酸化剤オフガスの漏れ量が所定値(0.2ml/min)以下となるように、弁体75が傾斜に応じて第1許容角度a2範囲内で傾動することを許容する。
【0091】
振動規制部は、図8に示す弁体75が調整位置Dにあるときに、弁体75が軸線に対して第2許容角度b2以上傾動することを爪部75c上面である各端面75dと軸部材76下面である端面76cとによって規制する。
【0092】
弁作動装置77は、第2の実施形態においては電動モータ69と圧縮スプリング78とによって構成されている。電動モータ69は、往復動する押動軸92の図8において下端が軸部材76の図8おいて上端と当接して連結され、押動軸92が軸部材76の上端を押動することによって軸部材76を下方に移動させる。また圧縮スプリング78は上方端面を後述する軸部材76の環状突部76bの着座面76cに着座させて軸部材76と連結され、軸部材76を図8において上方に付勢して移動させる。このように圧縮スプリング78が軸部材76を上方に移動させることにより弁部75aが弁座73と当接する遮断位置Cを実現する。また電動モータ69の押動軸92が圧縮スプリング78のばね力に抗して軸部材76を下方に押動することによって弁部75aが弁座73から離間する調整位置Dを実現する。このようにして電動モータ69および圧縮スプリング78は遮断位置Cと調整位置Dとの間で弁体75を位置制御可能に移動させる。
【0093】
軸部材76は円柱形状を呈し、弁座73に対し直角な軸線方向に移動可能に圧縮スプリング78を介して弁本体74に装架され軸線方向に延在している。また軸部材76は、電動モータ69の押動軸92と常に点で当接するためにSRで形成された球状突起部76aと、前述した圧縮スプリング78の上方側の座面を形成する環状突部76bとを有している。
【0094】
このように構成された第2の実施形態の圧力調整弁70の作動について説明する。まず、燃料電池システムが停止され、調圧位置Dにおいて弁座73から離間している弁部75aが遮断位置Cに接近していく場合について説明する。このとき、弁座73から離間している状態における弁部75aの弁座75に対する傾き角度は、前述したように初期からの設計上の公差範囲による傾き範囲である第1許容角度a2の範囲の傾斜を有している。そして図10(a)に示すように、まず弁部75aのうち一点が弁座73に当接する。
【0095】
本実施形態においては連結部91の軸径daが弁部75aの直径Daの略1/3の径になるよう形成されている。これによって傾動によって生じる連結部91での弁体75の軸線方向の変位量に対し、弁部75aでの変位量は略3倍となり連結部91での小さな傾動に関わらず弁部75aでは大きな変位量を得ることができる。このため遮断位置Cにおいて弁部75aを弁座73に良好に倣わせるための連結部91での弁体75の傾動は小さな角度によって実現することができる。
【0096】
これにより弁体75は連結部91のゴム部材90(弾性部材)が許容する弾性力に抗し、小さな第1許容角度a2の範囲内だけ傾動をするだけで、弁部42aでは大きな変位を得て弁部42aは弁座73に良好に倣うことができ流体の漏れ量を所定値(0.2ml/min)以下とすることができる。
【0097】
次に弁部75aを調整位置Dの状態にする場合について説明する。このとき、本発明においては、振動規制部は、弁体75および軸部材76のそれぞれの端面75d、76cである。これにより調整位置Dの状態において、大きな傾動が弁体75の弁部75aに発生しても上述した連結部91の弁体75側に設けた4箇所の爪部75cの端面75dのいずれか1つが所定の距離G(隙間)を有して配置された弁部材76の端面76cに当接することによって第1許容角度a2より大きい第2許容角度b2で確実に傾動が規制される。このとき第2許容角度b2は酸化剤オフガス(流体)の流れの影響によって弁部75aに振動が発生しない傾動角度となるように設定されているので流体の圧力または流量の変動を良好に抑制することができる。また傾動が大きくなるに伴って弁体75が受ける傾動とは逆の方向への弾性部材の弾性力も大きくなるので、多くの場合、弁体75は第2許容角度b2に至る前に傾動が停止されて安定し、酸化剤オフガスの流れに起因する振動をさらに確実に抑制することが期待できる。このように簡素化された低コストな構成によってシール性能が良好に確保されると共に、安定した調圧性能または流量性能を得ることができる。このように第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0098】
上述から明らかなように、連結部91は弁部75aより小径側で形成され、第2許容角度以上の傾動をしたときに相互に当接して傾動を規制する距離にそれぞれ配置された弁体75の端面75dと軸部材76の端面76cとを連結する弾性部材(ゴム部材90)である。そして、傾動許容部は該弾性部材(ゴム部材90)である。このとき、弁体75と軸部材76とを連結する弾性部材(ゴム部材90)の径daが弁部75aの直径Daに対して小径側で形成されるので、弾性部材(ゴム部材90)が小さな傾動をするだけで弁部75aでは大きな変位を得ることができる。これにより弁体75は弾性部材(ゴム部材90)が許容する弾性力に抗し小さな第1許容角度a2範囲内だけ傾動をすると弁部75aでは容易に大きな変位量を得て弁座73に良好に倣うことができ酸化剤オフガス(流体)の漏れ量を所定値(0.2ml/min)以下とすることができる。
【0099】
また、振動規制部では、第2許容角度b2以上傾動しないよう弁体75の端面75dが軸部材76の端面76cと当接して傾動を確実に規制する。これにより弁体75の傾動角度は第2許容角度b2を越えないので弁部75aの振動は抑制され酸化剤オフガス(流体)の圧力または流量の変動を好適に抑制することができる。このように簡素化された低コストな構成によってシール性能が良好に確保されると共に、安定した調圧性能または流量性能を得ることができる。
【0100】
なお、第1、および第2の実施形態においては弁作動装置としてステッピングモータ38や電動モータ69といった電気により作動するアクチュエータを適用した。しかしこの形態に限らず弁作動装置として空気圧を利用するダイアフラムアクチュエータ(図略)を使用してもよい。具体的には第1の実施形態のステッピングモータ38の位置にダイヤフラム室を設け、ダイヤフラムの膜と軸部材とを連結する。ダイヤフラム室は、制御装置24によって制御される図略のコンプレッサと連通されて接続される。そして制御装置24によってコンプレッサを駆動しダイヤフラム室内の圧力制御を行ない、これによって軸部材と連結される弁体を位置制御すればよい。これによっても同様の効果が得られる。なお、従来技術として示した特許文献1(特開2008−146924号公報)に記載のダイアフラムアクチュエータを使用してもよい。
【0101】
また、本第1の実施形態においては、弁体35の弁部42aにゴムを用いたがこれに限らず金属や樹脂によって形成してもよい。
【0102】
また、本実施形態においては、調整弁を、圧力を調整するための圧力調整弁として使用したが、これに限らず流量を一定に保持するための流量調整弁として使用してもよい。これによっても同様の効果が得られる。
【0103】
また、本実施形態を適用する燃料電池システム1は、燃料電池自動車(FCHV)、電気自動車、ハイブリッド自動車などの車両に搭載することができるが、もちろん車両のみならず各種移動体(例えば、船舶や飛行機、ロボットなど)や定置型電源にも適用可能である。
【0104】
また、本発明に係る圧力調整弁16、70を燃料電池システム1の燃料流路11の導入口の上流側、及び導出口の下流側に設け燃料流路11を調圧するようにしてもよい。
【0105】
また、本実施形態においては、圧力調整弁16、70を燃料電池システム1に設けたが、これに限らず、気体の圧力調整や流量調整を確実に実施するための各種機器に適用することができる。
【0106】
さらに、本実施形態においては、圧力調整弁16、70において酸化剤オフガスを入出口17aから導入し入出口18aから排出する形態とした。しかし酸化剤オフガスを入出口18aから導入し入出口17aから排出してもよい。このように圧力調整弁16、70は入出口17a、及び入出口18aのいずれからガスを導入しても使用可能である。
【符号の説明】
【0107】
10…燃料電池、11…燃料流路、12…酸化剤流路、12a…導入口、12b…導出口、21…圧送装置(コンプレッサ)、16、70…調整弁(圧力調整弁)、17、71…第1通路、17a、18a…入出口、18、72…第2通路、22、23…第1および第2遮断弁、24…制御装置、25…酸化剤供給管、26…オフガス排出管、27…圧縮空気バイパス管、27a…開閉弁、33、73…弁座、34、74…弁本体、35、75…弁体、36、76…軸部材、37、91…連結部、38…弁作動装置(ステッピングモータ)、39…嵌合穴、42…弁部基材、42a、75a…弁部、43…ダイヤフラム、46、78…圧縮スプリング、77…弁作動装置(電動モータ69および圧縮スプリング78)、A、C…遮断位置、B、D…調整位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通路、前記第1通路と連通する第2通路、および前記第1通路と前記第2通路との間に介在し環状に形成された弁座が形成された弁本体と、
前記弁座と直角方向に進退移動し、前記弁座と接離可能な環状の弁部が形成された弁体と、
前記弁座に対し軸線方向に移動可能に前記弁本体に装架され、前記軸線方向に延在する円柱状の軸部材と、
前記弁部が前記弁座に対して傾動可能に前記弁体を前記軸部材に連結する連結部と、
前記軸部材と連結され前記弁部が前記弁座と当接する遮断位置と、前記弁座から離間する調整位置との間で前記弁体を位置制御可能に移動させる弁作動装置と、
を備えた調整弁にして、
前記連結部は、
前記弁部が前記弁座に当接したとき、前記軸部材の移動方向が前記弁座と直角な方向に対して第1許容角度範囲内で傾斜することによって前記弁部と前記弁座との間から流体が漏れる漏れ量が所定値以下となるように、前記弁体が前記軸線方向に対して前記第1許容角度範囲内での前記傾斜に応じて傾動することを許容する傾動許容部と、
前記弁体が前記調整位置にあるときに、前記弁体が前記軸線方向に対して前記第1許容角度より大きい第2許容角度以上傾動することを規制する振動規制部と、
を備える調整弁。
【請求項2】
請求項1において、
前記連結部は、前記軸部材の先端部に形成された嵌合軸部に前記弁体に前記弁部より小径側で形成された嵌合穴が嵌合する嵌合部と、前記嵌合穴の両端部で前記軸部材の先端部に半径方向に突設された一対の支持突部と、を備え、
前記傾動許容部は、前記嵌合軸部と前記嵌合穴との間に介在された弾性部材と、前記一対の支持突部のうちの前記軸部材の先端側に突設された支持部材に前記弁体の嵌合穴の端部が当接するように前記弁体を押圧する圧縮スプリングと、を備え、
前記振動規制部は、前記第2許容角度以上の傾動を規制する前記嵌合軸部と前記嵌合穴との間の半径方向クリアランス、および前記弁体の前記嵌合穴の両端部と前記一対の支持突部との間の軸線方向のクリアランスの少なくとも一方を備える調整弁。
【請求項3】
請求項1において、
前記連結部は前記軸部材の前記弁体側端面と前記弁体の前記軸部材側端面とを連結する弾性部材であり、
前記傾動許容部は、前記弾性部材であり、
前記振動規制部は、前記軸部材の端面と前記弁体の端面とである調整弁。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記弁作動装置はモータを駆動源として作動する調整弁。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記弁作動装置はダイヤフラムを駆動源として作動する調整弁。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項において、
燃料が供給される燃料流路と酸化剤ガスが供給される酸化剤流路を有する燃料電池と、
前記酸化剤流路の前記酸化剤ガスを導入する導入口に前記酸化剤ガスを圧送する圧送装置と、
前記圧送装置と前記燃料電池との間に介装され前記圧送装置と前記燃料電池との連通を遮断する第1遮断弁と、
前記酸化剤流路から酸化剤オフガスを導出する導出口を遮断する第2遮断弁と、
前記導出口と前記第2遮断弁との間に介装され前記酸化剤流路の圧力を調整する圧力調整弁と、を備え、
前記圧力調整弁として請求項1乃至請求項4に記載の調整弁を使用する燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−225361(P2012−225361A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91179(P2011−91179)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】