説明

赤外線センサ

【課題】ICチップの発熱に起因した赤外線センサチップの面内でのS/N比のばらつきを抑制することが可能な赤外線センサを提供する。
【解決手段】赤外線センサは、赤外線センサチップ100と、赤外線センサチップ100の出力信号を信号処理するICチップ102と、赤外線センサチップ100およびICチップ102が収納されたパッケージ103とを備える。赤外線センサチップ100は、複数の熱型赤外線検出部3が半導体基板1の一表面側においてアレイ状に配置されている。パッケージ103は、パッケージ本体104と、パッケージ本体104に接合されたパッケージ蓋105とを有する。ICチップ102は、パッケージ本体104に実装されている。赤外線センサチップ100は、パッケージ本体104に保持された支持部材106に支持され、パッケージ103内でICチップ102の厚み方向においてICチップ102から離れて配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、赤外線センサと、この赤外線センサの出力信号を信号処理する信号処理ICチップと、赤外線センサおよび信号処理ICチップが収納されたパッケージとを備えた赤外線センサモジュールが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
上述の赤外線センサは、例えば、サーモパイルからなる感温部を具備する複数の画素が、ベース基板の一表面側においてアレイ状に配置されている。ここにおいて、ベース基板は、シリコン基板を用いて形成されている。
【0004】
またパッケージは、赤外線センサおよび信号処理ICチップが横並びで実装されたパッケージ本体と、このパッケージ本体との間に赤外線センサおよび信号処理ICチップを囲む形でパッケージ本体に覆着されたパッケージ蓋とで構成されている。ここにおいて、パッケージ蓋は、赤外線センサへ赤外線を収束するレンズを備えている。
【0005】
上述の赤外線センサは、各画素において、感温部を備えた熱型赤外線検出部がベース基板の上記一表面側に形成されてベース基板に支持されている。また、赤外線センサは、熱型赤外線検出部の一部の直下に空洞が形成されている。また、赤外線センサは、感温部を構成しているサーモパイルの温接点が、熱型赤外線検出部において空洞に重なる領域に形成され、冷接点が熱型赤外線検出部において空洞に重ならない領域に形成されている。なお、赤外線センサは、各画素の各々に、上述の熱型赤外線検出部と画素部選択用スイッチング素子であるMOSトランジスタとを有している。
【0006】
特許文献1には、赤外線センサの製造方法に関して、空洞を形成する空洞形成工程が終了するまでの全工程はウェハレベルで行い、空洞形成工程が終了した後、個々の赤外線センサ(つまり、赤外線センサチップ)に分離する分離工程を行う旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−78451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の赤外線センサモジュールでは、赤外線センサの各画素それぞれの出力信号(出力電圧)に、信号処理ICチップの発熱に起因したオフセット電圧を含み、しかも、赤外線センサにおいて信号処理ICチップからの距離が異なる画素で温度がばらつき、赤外線センサの面内でS/N比がばらついてしまうことがあった。なお、信号処理ICチップからパッケージ本体を通る経路で赤外線センサのベース基板へ伝わる熱は、主に冷接点の温度を上昇させるのでマイナスのオフセット電圧を発生させる要因となる。
【0009】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、ICチップの発熱に起因した赤外線センサチップの面内でのS/N比のばらつきを抑制することが可能な赤外線センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の赤外線センサは、複数の熱型赤外線検出部が半導体基板の一表面側においてアレイ状に配置された赤外線センサチップと、前記赤外線センサチップの出力信号を信号処理するICチップと、前記赤外線センサチップおよび前記ICチップが収納されたパッケージとを備え、前記パッケージは、パッケージ本体と、前記赤外線センサチップでの検知対象の赤外線を透過する機能を有し前記パッケージ本体に接合されたパッケージ蓋とを有し、前記ICチップは、前記パッケージ本体に実装され、前記赤外線センサチップは、前記パッケージ本体に保持された支持部材に支持され、前記パッケージ内で前記ICチップの厚み方向において前記ICチップから離れて配置されていることを特徴とする。
【0011】
この赤外線センサにおいて、前記支持部材は、前記厚み方向において前記ICチップから離れて配置され且つ前記赤外線センサチップが接合部を介して接合されて前記赤外線センサチップを保持するチップ保持部と、前記チップ保持部と前記パッケージ本体との間に介在する支持脚部とを有し、前記チップ保持部は、前記赤外線センサチップにおける前記ICチップ側の面を露出させる開孔部を有することが好ましい。
【0012】
この赤外線センサにおいて、前記接合部を複数備え、前記接合部は、前記赤外線センサチップの平面視の外周方向において離間していることが好ましい。
【0013】
この赤外線センサにおいて、前記接合部は、樹脂により形成されてなることが好ましい。
【0014】
この赤外線センサにおいて、前記パッケージ本体は、一面側に凹部が形成され、前記凹部の内底面に前記ICチップが実装されてなることが好ましい。
【0015】
この赤外線センサにおいて、前記パッケージ本体は、前記凹部が、平面視において前記ICチップおよび前記支持部材が収まる大きさに形成されてなることが好ましい。
【0016】
この赤外線センサにおいて、前記ICチップは、回路部が形成された主表面側とは反対の裏面が、前記赤外線センサチップ側に位置していることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、ICチップの発熱に起因した赤外線センサチップの面内でのS/N比のばらつきを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1の赤外線センサに関し、(a)は概略断面図、(b)は赤外線センサチップの要部概略断面図である。
【図2】実施形態1の赤外線センサの概略斜視図である。
【図3】実施形態1の赤外線センサの概略分解斜視図である。
【図4】実施形態1の赤外線センサにおいてパッケージ蓋を取り外した状態の概略斜視図である。
【図5】実施形態1の赤外線センサにおいてパッケージ蓋を取り外した状態の概略平面図である。
【図6】実施形態1の赤外線センサにおける赤外線センサチップの平面レイアウト図である。
【図7】実施形態1の赤外線センサにおける赤外線センサチップの画素部の平面レイアウト図である。
【図8】実施形態1の赤外線センサにおける赤外線センサチップの画素部の平面レイアウト図である。
【図9】実施形態1の赤外線センサおける赤外線センサチップの画素部の要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は(a)のD−D’断面に対応する概略断面図である。
【図10】実施形態1の赤外線センサにおける赤外線センサチップの画素部の要部平面レイアウト図である。
【図11】実施形態1の赤外線センサにおける赤外線センサチップの画素部の要部平面レイアウト図である。
【図12】実施形態1の赤外線センサにおける赤外線センサチップの画素部の要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は(a)のD−D’断面に対応する概略断面図である。
【図13】実施形態1の赤外線センサにおける赤外線センサチップの冷接点を含む要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は概略断面図である。
【図14】実施形態1の赤外線センサにおける赤外線センサチップの温接点を含む要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は概略断面図である。
【図15】実施形態1の赤外線センサにおける赤外線センサチップの画素部の要部概略断面図である。
【図16】実施形態1の赤外線センサにおける赤外線センサチップの画素部の要部概略断面図である。
【図17】実施形態1の赤外線センサにおける赤外線センサチップの要部説明図である。
【図18】実施形態1の赤外線センサにおける赤外線センサチップの等価回路図である。
【図19】実施形態1の赤外線センサにおける赤外線センサチップの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図20】実施形態1の赤外線センサにおける赤外線センサチップの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図21】実施形態1の赤外線センサにおける赤外線センサチップの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図22】実施形態1の赤外線センサにおける赤外線センサチップの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図23】実施形態2の赤外線センサの概略断面図である。
【図24】実施形態3の赤外線センサにおいてパッケージ蓋を取り外した状態の概略平面図である。
【図25】実施形態4の赤外線センサに関し、(a)はパッケージ蓋を取り外した状態の概略平面図、(b)は概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態1)
以下、本実施形態の赤外線センサについて図1〜図18を参照しながら説明する。
【0020】
本実施形態の赤外線センサは、赤外線センサチップ100と、この赤外線センサチップ100の出力信号を信号処理するICチップ102と、赤外線センサチップ100およびICチップ102が収納されたパッケージ103とを備えている。なお、赤外線センサは、絶対温度を測定するサーミスタ101(図3〜図5参照)も、パッケージ103に収納されている。
【0021】
赤外線センサチップ100は、図1(b)に示すように、サーモパイル30aを有する熱型赤外線検出部3がシリコン基板からなる半導体基板1の一表面側に形成されている。また、赤外線センサチップ100は、複数の熱型赤外線検出部3が半導体基板1の上記一表面側においてアレイ状に配置されている。
【0022】
パッケージ103は、パッケージ本体104と、パッケージ本体104に接合されたパッケージ蓋105とを有している。ここで、パッケージ蓋105は、赤外線センサチップ100での検知対象の赤外線を透過する機能を有している。また、パッケージ蓋105は、導電性を有している。
【0023】
パッケージ蓋105は、パッケージ本体104の上記一表面側に覆着されたメタルキャップ152と、メタルキャップ152において赤外線センサチップ100に対応する部位に形成された開口窓152aを閉塞するレンズ153とで構成されている。ここにおいて、レンズ153が、赤外線を透過する機能を有し、さらに、赤外線センサチップ100へ赤外線を収束する機能を有している。
【0024】
ICチップ102は、パッケージ本体104に実装されている。また、赤外線センサチップ100は、パッケージ本体104に保持された支持部材106に支持され、パッケージ103内でICチップ102の厚み方向においてICチップ102から離れて配置されている。
【0025】
以下、各構成要素についてさらに説明する。
【0026】
赤外線センサチップ100は、複数の画素部2が、半導体基板1の上記一表面側においてアレイ状(ここでは、2次元アレイ状)に配列されている(図6参照)。ここで、画素部2は、図7および図9に示すように、熱型赤外線検出部3と画素選択用のスイッチング素子であるMOSトランジスタ4とを有している。本実施形態では、1つの半導体基板1の上記一表面側にm×n個(図6に示した例では、8×8個)の画素部2が形成されているが、画素部2の数や配列は特に限定するものではない。また、本実施形態では、熱型赤外線検出部3の感温部30が、複数個(ここでは、6個)のサーモパイル30a(図7参照)を直列接続することにより構成されている。赤外線センサチップ100の等価回路図である図18では、熱型赤外線検出部3における感温部30の等価回路を、感温部30の熱起電力に対応する電圧源で表してある。
【0027】
赤外線センサチップ100は、図7、図9および図18に示すように、各列の複数の熱型赤外線検出部3の感温部30の一端がMOSトランジスタ4を介して各列ごとに共通接続された複数の垂直読み出し線7を備えている。また、赤外線センサチップ100は、各行の熱型赤外線検出部3の感温部30に対応するMOSトランジスタ4のゲート電極46が各行ごとに共通接続された複数の水平信号線6を備えている。また、赤外線センサチップ100は、各列のMOSトランジスタ4のp形(p)のウェル領域41が各列ごとに共通接続された複数のグラウンド線8と、各グラウンド線8が共通接続された共通グラウンド線9とを備えている。さらに、赤外線センサチップ100は、各列の複数個の熱型赤外線検出部3の感温部30の他端が各列ごとに共通接続された複数の基準バイアス線5を備えている。しかして、赤外線センサチップ100は、全ての熱型赤外線検出部3の感温部30の出力を時系列的に読み出すことができるようになっている。要するに、赤外線センサチップ100は、半導体基板1の上記一表面側に熱型赤外線検出部3と当該熱型赤外線検出部3に並設され当該熱型赤外線検出部3の出力を読み出すためのMOSトランジスタ4とを有する複数の画素部2が形成されている。
【0028】
MOSトランジスタ4は、ゲート電極46が水平信号線6に接続され、ソース電極48が感温部30を介して基準バイアス線5に接続され、ドレイン電極47が垂直読み出し線7に接続されている。また、各水平信号線6の各々は、各別の画素選択用のパッドVselに電気的に接続されている。また、各基準バイアス線5は、共通基準バイアス線5aに共通接続されている。また、各垂直読み出し線7の各々は、各別の出力用のパッドVoutに電気的に接続されている。また、共通グラウンド線9は、グラウンド用のパッドGndに電気的に接続されている。また、共通基準バイアス線5aは、基準バイアス用のパッドVrefと電気的に接続されている。また、半導体基板1は、基板用のパッドVddに電気的に接続されている。
【0029】
しかして、本実施形態における赤外線センサチップ100では、MOSトランジスタ4が、順次、オン状態になるように各画素選択用のパッドVselの電位を制御することで各画素部2の出力電圧を順次読み出すことができる。例えば、基準バイアス用のパッドVrefの電位を1.65V、グラウンド用のパッドGndの電位を0V、基板用のパッドVddの電位を5Vとしておき、画素選択用のパッドVselの電位を5Vとすれば、MOSトランジスタ4がオンとなり、出力用のパッドVoutから画素部2の出力電圧(1.65V+感温部30の出力電圧)が読み出される。また、画素選択用のパッドVselの電位を0Vとすれば、MOSトランジスタ4がオフとなり、出力用のパッドVoutから画素部2の出力電圧は読み出されない。なお、図6では、図18における画素選択用のパッドVsel、基準バイアス用のパッドVref、グラウンド用のパッドGnd、出力用のパッドVoutなどを区別せずに、全てパッド80として図示してある。
【0030】
以下、熱型赤外線検出部3およびMOSトランジスタ4それぞれの構造について説明する。なお、本実施形態では、上述の半導体基板1として、導電形がn形で上記一表面が(100)面の単結晶シリコン基板を用いている。
【0031】
各画素部2の熱型赤外線検出部3は、半導体基板1の上記一表面側において熱型赤外線検出部3の形成用領域A1(図9参照)に形成されている。また、各画素部2のMOSトランジスタ4は、半導体基板1の上記一表面側においてMOSトランジスタ4の形成用領域A2(図9参照)に形成されている。
【0032】
赤外線センサチップ100は、半導体基板1の上記一表面側において熱型赤外線検出部3の一部の直下に空洞部11が形成されている。熱型赤外線検出部3は、半導体基板1の上記一表面側で空洞部11の周部に形成された支持部3dと、半導体基板1の上記一表面側で平面視において空洞部11を覆う第1の薄膜構造部3aとを備えている。第1の薄膜構造部3aは、赤外線を吸収する赤外線吸収部33を備えている。ここで、第1の薄膜構造部3aは、空洞部11の周方向に沿って並設され支持部3dに支持された複数の第2の薄膜構造部3aaと、隣接する第2の薄膜構造部3aa同士を連結する連結片3cとを有している。なお、図7における熱型赤外線検出部3では、複数の線状のスリット13を設けることにより、第1の薄膜構造部3aが6つの第2の薄膜構造部3aaに分離されている。以下では、赤外線吸収部33(第1の赤外線吸収部33と称する)のうち第2の薄膜構造部3aaそれぞれに対応して分割された各部位を第2の赤外線吸収部33aと称する。
【0033】
熱型赤外線検出部3は、第2の薄膜構造部3aaごとにサーモパイル30aが設けられている。ここで、サーモパイル30aは、温接点T1が、第2の薄膜構造部3aaに設けられ、冷接点T2が、支持部3dに設けられている。要するに、サーモパイル30aは、温接点T1が、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重なる第1の領域に形成され、冷接点T2が、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重ならない第2の領域に形成されている。
【0034】
また、熱型赤外線検出部3の感温部30は、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で、全てのサーモパイル30aが電気的に接続されている。図7の例では、感温部30は、6個のサーモパイル30aを直列接続してある。ただし、上述の接続関係は、複数個のサーモパイル30aの全てを直列接続する接続関係に限らない。例えば、それぞれ3個のサーモパイル30aの直列回路を並列接続した接続関係では、6個のサーモパイル30aが並列接続されている場合や、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて、感度を高めることが可能となり、6個のサーモパイル30aの全てが直列接続されている場合に比べて、感温部30の電気抵抗を低くできて熱雑音が低減されるから、S/N比を向上させることが可能となる。
【0035】
ここで、熱型赤外線検出部3では、第2の薄膜構造部3aaごとに、支持部3dと第2の赤外線吸収部33aとを連結する2つの平面視短冊状のブリッジ部3bb,3bbが空洞部11の周方向に離間して形成されている。ここで、赤外線センサチップ100は、2つのブリッジ部3bb,3bbと第2の赤外線吸収部33aとを空間的に分離し空洞部11に連通する平面視コ字状のスリット14が形成されている。熱型赤外線検出部3のうち、平面視において第1の薄膜構造部3aを囲む部位である支持部3dは、矩形枠状の形状となっている。なお、ブリッジ部3bbは、上述の各スリット13,14により、第2の赤外線吸収部33aおよび支持部3dそれぞれとの連結部位以外の部分が、第2の赤外線吸収部33aおよび支持部3dと空間的に分離されている。第2の薄膜構造部3aaは、支持部3dからの延長方向の寸法を93μm、この延長方向に直交する幅方向の寸法を75μmとし、各ブリッジ部3bbの幅寸法を23μm、各スリット13,14の幅を5μmに設定してあるが、これらの値は一例であって特に限定するものではない。
【0036】
第1の薄膜構造部3aは、半導体基板1の上記一表面側に形成されたシリコン酸化膜1bと、シリコン酸化膜1b上に形成されたシリコン窒化膜32と、シリコン窒化膜32上に形成された感温部30と、シリコン窒化膜32の表面側で感温部30を覆うように形成された層間絶縁膜50と、層間絶縁膜50上に形成されたパッシベーション膜60との積層構造部をパターニングすることにより形成されている。層間絶縁膜50は、BPSG膜により構成し、パッシベーション膜60は、PSG膜と当該PSG膜上に形成されたNSG膜との積層膜により構成してあるが、これに限らず、例えば、シリコン窒化膜により構成してもよい。
【0037】
上述の熱型赤外線検出部3では、シリコン窒化膜32のうち第1の薄膜構造部3aのブリッジ部3bb,3bb以外の部位が、第1の赤外線吸収部33を構成している。また、支持部3dは、シリコン酸化膜1bとシリコン窒化膜32と層間絶縁膜50とパッシベーション膜60とで構成されている。
【0038】
また、赤外線センサチップ100は、層間絶縁膜50とパッシベーション膜60との積層膜が、半導体基板1の上記一表面側において、熱型赤外線検出部3の形成用領域A1とMOSトランジスタ4の形成用領域A2とに跨って形成されており、この積層膜のうち、熱型赤外線検出部3の形成用領域A1に形成された部分が、赤外線吸収膜70(図9(b)参照)を兼ねている。本実施形態では、赤外線吸収膜70の屈折率をn、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、赤外線吸収膜70の厚さt2をλ/4nに設定しているので、検出対象の波長(例えば、8〜12μm)の赤外線の吸収効率を高めることが可能となり、高感度化を図ることが可能となる。例えば、n=1.4、λ=10μmの場合には、t2≒1.8μmとすればよい。なお、本実施形態では、層間絶縁膜50の膜厚を0.8μm、パッシベーション膜60の膜厚を1μm(PSG膜の膜厚を0.5μm、NSG膜の膜厚を0.5μm)としてある。
【0039】
また、各画素部2では、空洞部11の内周形状が矩形状である。連結片3cは、平面視X字状に形成されている。この連結片3cは、第2の薄膜構造部3aaの延長方向に交差する斜め方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士、第2の薄膜構造部3aaの延長方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士、第2の薄膜構造部3aaの延長方向に直交する方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結している。
【0040】
サーモパイル30aは、シリコン窒化膜32上で第2の薄膜構造部3aaと支持部3dとに跨って形成されたn形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35との一端部同士を第2の赤外線吸収部33aの赤外線入射面側で金属材料(例えば、Al−Siなど)からなる接続部36により電気的に接続した複数個(図7に示した例では、9個)の熱電対を有している。また、サーモパイル30aは、半導体基板1の上記一表面側で互いに隣り合う熱電対のn形ポリシリコン層34の他端部とp形ポリシリコン層35の他端部とが金属材料(例えば、Al−Siなど)からなる接続部37により接合され電気的に接続されている。ここで、サーモパイル30aは、n形ポリシリコン層34の上記一端部とp形ポリシリコン層35の上記一端部と接続部36とで温接点T1を構成している。また、n形ポリシリコン層34の上記他端部とp形ポリシリコン層35の上記他端部と接続部37とで冷接点T2を構成している。赤外線センサチップ100は、n形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35の各々において、ブリッジ部3bb,3bbに形成されている部位および半導体基板1の上記一表面側のシリコン窒化膜32上に形成されている部位でも赤外線を吸収することができる。
【0041】
また、赤外線センサチップ100は、空洞部11の形状が、四角錘状であり、平面視における中央部の方が周部に比べて深さ寸法が大きくなっているので、第1の薄膜構造部3aの中央部に温接点T1が集まるように各画素部2におけるサーモパイル30aの平面レイアウトを設計してある。すなわち、図7の上下方向における真ん中の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、図7および図10に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向に沿って温接点T1を並べて配置してある。また、図7の上下方向における上側の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、図7および図11に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向において真ん中の第2の薄膜構造部3aaに近い側に温接点T1を集中して配置してある。また、図7の上下方向における下側の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、図7に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向において真ん中の第2の薄膜構造部3aaに近い側に温接点T1を集中して配置してある。しかして、本実施形態における赤外線センサチップ100では、図7の上下方向における上側、下側の第2の薄膜構造部3aaの複数の温接点T1の配置が、真ん中の第2の薄膜構造部3aaの複数の温接点T1の配置と同じである場合に比べて、温接点T1の温度変化を大きくできるので、感度を向上することが可能となる。なお、本実施形態では、空洞部11の最深部の深さを所定深さdp(図9(b)参照)とするとき、所定深さdpを200μmに設定してあるが、この値は一例であり、特に限定するものではない。
【0042】
また、第2の薄膜構造部3aaは、シリコン窒化膜32の赤外線入射面側においてサーモパイル30aを形成していない領域に、第2の薄膜構造部3aaの反りを抑制するとともに赤外線を吸収するn形ポリシリコン層からなる赤外線吸収層39が形成されている。また、隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結する連結片3cには、当該連結片3cを補強するn形ポリシリコン層からなる補強層39b(図12参照)が設けられている。ここで、補強層39bは、赤外線吸収層39と連続一体に形成されている。しかして、赤外線センサチップ100では、連結片3cが補強層39bにより補強されているので、使用中の外部の温度変化や衝撃に起因して発生する応力による破損を防止することが可能となり、また、製造時の破損を低減することが可能となり、製造歩留まりの向上を図ることが可能となる。なお、本実施形態では、図12に示す連結片3cの長さ寸法L1を24μm、幅寸法L2を5μm、補強層39bの幅寸法L3を1μmに設定してあるが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。ただし、半導体基板1がシリコン基板であり、補強層39bがn形ポリシリコン層により形成される場合には、空洞部11の形成時に補強層39bがエッチングされるのを防止するために、補強層39bの幅寸法を、連結片3cの幅寸法よりも小さく設定し、平面視において補強層39bの両側縁が連結片3cの両側縁よりも内側に位置するように設計する必要がある。
【0043】
また、赤外線センサチップ100は、図12および図17(b)に示すように、連結片3cの両側縁と第2の薄膜構造部3aaの側縁との間にそれぞれ面取り部3d,3dが形成され、X字状の連結片3cの略直交する側縁間にも面取り部3eが形成されている。しかして、赤外線センサチップ100では、図17(a)に示すように面取り部が形成されていない場合に比べて、連結片3cと第2の薄膜構造部3aaとの連結部位での応力集中を緩和することが可能となる。これにより、この赤外線センサチップ100では、製造時に発生する残留応力を低減することが可能となるとともに製造時の破損を低減することが可能となり、製造歩留まりの向上を図ることが可能となる。また、この赤外線センサチップ100では、使用中の外部の温度変化や衝撃に起因して発生する応力による破損を防止することが可能となる。なお、図12に示した例では、各面取り部3d,3eをR(アール)が3μmのR面取り部としてあるが、R面取り部に限らず、例えば、C面取り部としてもよい。
【0044】
また、赤外線センサチップ100は、各熱型赤外線検出部3に、支持部3dと一方のブリッジ部3bbと第2の赤外線吸収部33aと他方のブリッジ部3bbと支持部3dとに跨るように引き回されたn形ポリシリコン層からなる故障診断用の配線(以下、故障診断用配線と称する)139を設けて、全ての故障診断用配線139を直列接続してある。しかして、赤外線センサチップ100では、m×n個の故障診断用配線139の直列回路へ通電することで、ブリッジ部3bbの折れなどの破損の有無を検出することが可能となる。
【0045】
要するに、赤外線センサチップ100は、製造途中での検査時や使用時において、m×n個の故障診断用配線139の直列回路への通電の有無によって、ブリッジ部3bbの折れや故障診断用配線139の断線などを検出することができる。また、赤外線センサチップ100では、上述の検査時や使用時において、m×n個の故障診断用配線139の直列回路へ通電して各感温部30の出力を検出することにより、感温部30の断線の有無や感度のばらつき(感温部30の出力のばらつき)などを検知することが可能となる。ここにおいて、感度のばらつきに関しては、画素部2ごとの感度のばらつきを検知することが可能であり、例えば、第1の薄膜構造部3aの反りや第1の薄膜構造部3aの半導体基板1へのスティッキングなどに起因した感度のばらつきを検知することが可能となる。ここで、本実施形態における赤外線センサチップ100では、平面視において、故障診断用配線139を複数の温接点T1の群の付近において折り返され蛇行した形状としてある。したがって、この赤外線センサチップ100では、故障診断用配線139へ通電することにより発生するジュール熱によって、各温接点T1を効率良く温めることが可能となる。上述の故障診断用配線139は、n形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35と同一平面上に同一厚さで形成されている。
【0046】
上述の赤外線吸収層39および故障診断用配線139は、n形ポリシリコン層34と同じn形不純物(例えば、リンなど)を同じ不純物濃度(例えば、1018〜1020cm−3)で含んでおり、n形ポリシリコン層34と同時に形成されている。また、p形ポリシリコン層35のp形不純物として例えばボロンを採用すればよく、不純物濃度を例えば1018〜1020cm−3程度の範囲で適宜設定すればよい。本実施形態では、n形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35それぞれの不純物濃度が1018〜1020cm−3であり、熱電対の抵抗値を低減でき、S/N比の向上を図ることが可能となる。なお、赤外線吸収層39および故障診断用配線139は、n形ポリシリコン層34と同じn形不純物を同じ不純物濃度でドーピングしてあるが、これに限らず、例えば、p形ポリシリコン層35と同じ不純物を同じ不純物濃度でドーピングしてもよい。
【0047】
ところで、本実施形態では、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139の屈折率をn、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139それぞれの厚さt1をλ/4nに設定している。しかして、赤外線センサチップ100では、検出対象の波長(例えば、8〜12μm)の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図ることが可能となる。例えば、n=3.6、λ=10μmの場合には、t1≒0.69μmとすればよい。
【0048】
また、赤外線センサチップ100は、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139それぞれの不純物濃度が1018〜1020cm−3である。これにより、赤外線センサチップ100は、赤外線の吸収率を高くしつつ赤外線の反射を抑制することが可能となり、感温部30の出力のS/N比を高めることが可能となる。また、赤外線センサチップ100は、製造時に、赤外線吸収層39および故障診断用配線139をn形ポリシリコン層34と同一工程で形成することが可能となるから、低コスト化を図ることが可能となる。
【0049】
ここで、感温部30の接続部36と接続部37とは、半導体基板1の上記一表面側において、層間絶縁膜50によって絶縁分離されている(図13および図14参照)。すなわち、温接点T1側の接続部36は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50a,50aを通して、両ポリシリコン層34,35の上記各一端部と電気的に接続されている。また、冷接点T2側の接続部37は、層間絶縁膜50に形成されたコンタクトホール50a,50aを通して、両ポリシリコン層34,35の上記各他端部と電気的に接続されている。
【0050】
また、MOSトランジスタ4は、上述のように、半導体基板1の上記一表面側においてMOSトランジスタ4の形成用領域A2に形成されている。
【0051】
MOSトランジスタ4は、図9および図16に示すように、半導体基板1の上記一表面側にウェル領域41が形成され、ウェル領域41内に、n形(n)のドレイン領域43とn形(n)のソース領域44とが離間して形成されている。さらに、ウェル領域41内には、ドレイン領域43とソース領域44とを囲むp形(p++)のチャネルストッパ領域42が形成されている。
【0052】
ウェル領域41においてドレイン領域43とソース領域44との間に位置する部位の上には、シリコン酸化膜(熱酸化膜)からなるゲート絶縁膜45を介してn形ポリシリコン層からなるゲート電極46が形成されている。
【0053】
また、ドレイン領域43上には、金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるドレイン電極47が形成され、ソース領域44上には、金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるソース電極48が形成されている。
【0054】
ゲート電極46、ドレイン電極47およびソース電極48は、上述の層間絶縁膜50によって絶縁分離されている。ここで、ドレイン電極47は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50dを通してドレイン領域43と電気的に接続され、ソース電極48は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50eを通してソース領域44と電気的に接続されている。
【0055】
赤外線センサチップ100の各画素部2では、MOSトランジスタ4のソース電極48と感温部30の一端とが電気的に接続され、感温部30の他端が基準バイアス線5に電気的に接続されている。また、各画素部2では、MOSトランジスタ4のドレイン電極47が、垂直読み出し線7と電気的に接続され、ゲート電極46が、当該ゲート電極46に連続一体に形成されたn形ポリシリコン配線からなる水平信号線6と電気的に接続されている。また、各画素部2では、MOSトランジスタ4のチャネルストッパ領域42上に、金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるグラウンド用の電極(以下、グラウンド用電極と称する)49が形成されている。このグラウンド用電極49は、チャネルストッパ領域42をドレイン領域43およびソース領域44よりも低電位にバイアスして素子分離するための共通グラウンド線8と電気的に接続されている。なお、グラウンド用電極49は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50fを通してチャネルストッパ領域42と電気的に接続されている。
【0056】
以上説明した赤外線センサチップ100は、第1の薄膜構造部3aが、複数の線状のスリット13を設けることによって、空洞部11の内周方向に沿って並設されそれぞれ熱型赤外線検出部3において空洞部11を囲む部位である支持部3dから内方へ延長された複数の第2の薄膜構造部3aaに分離されている。また、赤外線センサチップ100は、各第2の薄膜構造部3aaごとにサーモパイル30aの温接点T1が設けられるとともに、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で全てのサーモパイル30aが電気的に接続されている。しかして、赤外線センサチップ100は、応答速度および感度の向上を図ることが可能となる。また、赤外線センサチップ100は、全ての第2の薄膜構造部3aaに跨って故障診断用配線139が形成されているので、熱型赤外線検出部3の全てのサーモパイル30aを一括して自己診断することが可能となる。また、赤外線センサチップ100では、隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結する連結片3cが形成されていることにより、各第2の薄膜構造部3aaの反りを低減でき、構造安定性の向上を図れ、感度が安定する。なお、赤外線センサチップ100の使用時の自己診断は、ICチップ102に設けられた自己診断回路(図示せず)により定期的に行われるが、必ずしも定期的に行う必要はない。
【0057】
また、赤外線センサチップ100は、n形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35と赤外線吸収層39と補強層39bと故障診断用配線139とが同一の厚さに設定されているので、第2の薄膜構造部3aaの応力バランスの均一性が向上し、第2の薄膜構造部3aaの反りを抑制することが可能となる。これにより、赤外線センサチップ100は、製品ごとの感度のばらつきや、画素部2ごとの感度のばらつきを低減することが可能となる。
【0058】
また、赤外線センサチップ100は、上述のように、故障診断用配線139が、第1の熱電要素であるn形ポリシリコン層34もしくは第2の熱電要素であるp形ポリシリコン層35と同じ材料により形成されている。これにより、赤外線センサチップ100は、故障診断用配線139を第1の熱電要素もしくは第2の熱電要素と同時に形成することが可能となり、製造プロセスの簡略化による低コスト化を図ることが可能となる。
【0059】
また、赤外線センサチップ100は、赤外線吸収部33および故障診断用配線139を備えた複数の画素部2が、半導体基板1の上記一表面側でアレイ状に設けられているので、製造時や使用時の自己診断に際して各画素部2それぞれの故障診断用配線139に通電することにより、各画素部2それぞれの感温部30の感度のばらつきを把握することが可能となる。
【0060】
また、赤外線センサチップ100は、各画素部2ごとに感温部30の出力を読み出すためのMOSトランジスタ4を有しているので、出力用のパッドVout(図18参照)の数を少なくでき、小型化および低コスト化を図ることが可能となる。
【0061】
以下、赤外線センサチップ100の製造方法について図19〜図22を参照して説明する。
【0062】
まず、シリコン基板からなる半導体基板1の上記一表面側に第1の所定膜厚(例えば、0.3μm)の第1のシリコン酸化膜31と第2の所定膜厚(例えば、0.1μm)のシリコン窒化膜32との積層膜からなる絶縁層を形成する絶縁層形成工程を行う。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して、上記絶縁層のうち熱型赤外線検出部3の形成用領域A1に対応する部分の一部を残してMOSトランジスタ4の形成用領域A2に対応する部分をエッチング除去する絶縁層パターニング工程を行うことによって、図19(a)に示す構造を得る。ここにおいて、第1のシリコン酸化膜31は、半導体基板1を所定温度(例えば、1100℃)で熱酸化することにより形成し、シリコン窒化膜32は、LPCVD法により形成している。
【0063】
上述の絶縁層パターニング工程の後、半導体基板1の上記一表面側にウェル領域41を形成するウェル領域形成工程を行う。続いて、半導体基板1の上記一表面側におけるウェル領域41内にチャネルストッパ領域42を形成するチャネルストッパ領域形成工程を行うことによって、図19(b)に示す構造を得る。ここで、ウェル領域形成工程では、まず、半導体基板1の上記一表面側の露出部位を所定温度で熱酸化することにより第2のシリコン酸化膜(熱酸化膜)51を選択的に形成する。その後、ウェル領域41を形成するためのマスクを利用したフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して第2のシリコン酸化膜51をパターニングする。続いて、p形不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブインを行うことにより、ウェル領域41を形成する。また、チャネルストッパ領域形成工程では、半導体基板1の上記一表面側を所定温度で熱酸化することにより第3のシリコン酸化膜(熱酸化膜)52を選択的に形成する。その後、チャネルストッパ領域42を形成するためのマスクを利用したフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して第3のシリコン酸化膜52をパターニングする。続いて、p形不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブインを行うことにより、チャネルストッパ領域42を形成する。なお、第1のシリコン酸化膜31と第2のシリコン酸化膜51と第3のシリコン酸化膜52とで、半導体基板1の上記一表面側のシリコン酸化膜1bを構成している。
【0064】
上述のチャネルストッパ領域形成工程の後、ドレイン領域43およびソース領域44を形成するソース・ドレイン形成工程を行う。このソース・ドレイン形成工程では、ウェル領域41におけるドレイン領域43およびソース領域44それぞれの形成予定領域にn形不純物(例えば、リンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブインを行うことによって、ドレイン領域43およびソース領域44を形成する。
【0065】
ソース・ドレイン形成工程の後、半導体基板1の上記一表面側に熱酸化により所定膜厚(例えば、600Å)のシリコン酸化膜(熱酸化膜)からなるゲート絶縁膜45を形成するゲート絶縁膜形成工程を行う。続いて、半導体基板1の上記一表面側の全面にゲート電極46、水平信号線6(図7参照)、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39および故障診断用配線139の基礎となる所定膜厚(例えば、0.69μm)のノンドープポリシリコン層をLPCVD法により形成するポリシリコン層形成工程を行う。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して、上記ノンドープポリシリコン層をゲート電極46、水平信号線6、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39および故障診断用配線139それぞれに対応する部分が残るようにパターニングするポリシリコン層パターニング工程を行う。続いて、上記ノンドープポリシリコン層のうちp形ポリシリコン層35に対応する部分にp形不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってからドライブインを行うことによりp形ポリシリコン層35を形成するp形ポリシリコン層形成工程を行う。その後、上記ノンドープポリシリコン層のうちn形ポリシリコン層34、赤外線吸収層39、故障診断用配線139、ゲート電極46および水平信号線6に対応する部分にn形不純物(例えば、リンなど)のイオン注入を行ってからドライブインを行うことによりn形ポリシリコン層34、赤外線吸収層39、故障診断用配線139、ゲート電極46および水平信号線6を形成するn形ポリシリコン層形成工程を行うことによって、図20(a)に示す構造を得る。なお、p形ポリシリコン層形成工程とn形ポリシリコン層形成工程との順序は逆でもよい。
【0066】
上述のp形ポリシリコン層形成工程およびn形ポリシリコン層形成工程が終了した後、半導体基板1の上記一表面側に層間絶縁膜50を形成する層間絶縁膜形成工程を行う。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して層間絶縁膜50に各コンタクトホール50a,50a,50a,50a,50d,50e,50f(図13、図14、図16参照)を形成するコンタクトホール形成工程を行うことによって、図20(b)に示す構造を得る。層間絶縁膜形成工程では、半導体基板1の上記一表面側に所定膜厚(例えば、0.8μm)のBPSG膜をCVD法により堆積させてから、所定温度(例えば、800℃)でリフローすることにより平坦化された層間絶縁膜50を形成する。
【0067】
上述のコンタクトホール形成工程の後、半導体基板1の上記一表面側の全面に接続部36,37、ドレイン電極47、ソース電極48、基準バイアス線5、垂直読み出し線7、グラウンド線8、共通グラウンド線9および各パッドVout,Vsel,Vref,Vdd,Gndなど(図18参照)の基礎となる所定膜厚(例えば、2μm)の金属膜(例えば、Al−Si膜)をスパッタ法などにより形成する金属膜形成工程を行う。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して、金属膜をパターニングすることで接続部36,37、ドレイン電極47、ソース電極48、基準バイアス線5、垂直読み出し線7、グラウンド線8、共通グラウンド線9および各パッドVout,Vsel,Vref,Vdd,Gndなどを形成する金属膜パターニング工程を行うことによって、図21(a)に示す構造を得る。なお、金属膜パターニング工程におけるエッチングはRIEにより行っている。また、この金属膜パターニング工程を行うことにより、温接点T1および冷接点T2が形成される。
【0068】
上述の金属膜パターニング工程の後、半導体基板1の上記一表面側(つまり、層間絶縁膜50の表面側)に所定膜厚(例えば、0.5μm)のPSG膜と所定膜厚(例えば、0.5μm)のNSG膜との積層膜からなるパッシベーション膜60をCVD法により形成するパッシベーション膜形成工程を行うことによって、図21(b)に示す構造を得る。
【0069】
上述のパッシベーション膜形成工程の後、第1のシリコン酸化膜31、シリコン窒化膜32、層間絶縁膜50、パッシベーション膜60などを有し感温部30などが埋設された積層構造部をパターニングすることにより、第2の薄膜構造部3aaおよび連結片3cを形成する積層構造部パターニング工程を行うことによって、図22(a)に示す構造を得る。なお、積層構造部パターニング工程において、各スリット13,14を形成している。
【0070】
上述の積層構造部パターニング工程の後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して各パッドVout,Vsel,Vref,Vdd,Gndを露出させる開口部(図示せず)を形成する開口部形成工程を行う。次に、各スリット13,14をエッチング液導入孔としてエッチング液を導入し半導体基板1を異方性エッチング(結晶異方性エッチング)することにより半導体基板1に空洞部11を形成する空洞部形成工程を行うことで、図22(b)に示す構造の赤外線センサチップ100を得る。ここで、開口部形成工程におけるエッチングはRIEにより行っている。また、空洞部形成工程では、エッチング液として所定温度(例えば、85℃)に加熱したTMAH溶液を用いているが、エッチング液はTMAH溶液に限らず、他のアルカリ系溶液(例えば、KOH溶液など)を用いてもよい。なお、空洞部形成工程が終了するまでの全工程はウェハレベルで行うので、空洞部形成工程が終了した後、個々の赤外線センサチップ100に分離する分離工程を行えばよい。また、上述の説明から分かるように、MOSトランジスタ4の製造方法に関してみれば、周知の一般的なMOSトランジスタの製造方法を採用しており、熱酸化による熱酸化膜の形成、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術による熱酸化膜のパターニング、不純物のイオン注入、ドライブイン(不純物の拡散)の基本工程を繰り返すことにより、ウェル領域41、チャネルストッパ領域42、ドレイン領域43とソース領域44を形成している。なお、ウェル領域41、チャネルストッパ領域42、ドレイン領域43およびソース領域44の各々の導電形は、上述の説明とは異なる導電形でもよい。
【0071】
上述の赤外線センサチップ100では、半導体基板1として上記一表面が(100)面の単結晶のシリコン基板を用いて、エッチング速度の結晶面方位依存性を利用した異方性エッチングにより形成する空洞部11を四角錘状の形状としてあるが、四角錘状の形状に限らず、四角錘台状の形状でもよい。また、半導体基板1の上記一表面の面方位は特に限定するものではなく、例えば、半導体基板1として上記一表面が(110)面の単結晶のシリコン基板を用いてもよい。なお、赤外線センサチップ100の外周形状は、矩形状(正方形状ないし長方形状)である。
【0072】
ICチップ102は、ASIC(:Application Specific IC)であり、シリコン基板を用いて形成されている。なお、ICチップ102の外周形状は、矩形状(正方形状ないし長方形状)である。
【0073】
ICチップ102は、主表面側に、回路部(図示せず)が形成されている。この回路部は、例えば、赤外線センサチップ100を制御する制御回路、赤外線センサチップ100の複数の出力用のパッド80に電気的に接続された複数の入力用のパッドの出力電圧を増幅する増幅回路、複数の入力用のパッドの出力電圧を択一的に上記増幅回路に入力するマルチプレクサ、上記増幅回路の出力とサーミスタ101の出力とに基づいて温度を求める演算回路などを備えている。ここで、上記増幅回路の出力は、画素部2における温接点T1と冷接点T2との温度差に応じた出力である。また、サーミスタ101の出力は、絶対温度に応じた出力であり、画素部2における冷接点T2の温度に応じた出力であると想定している。そして、ICチップ102は、外部の表示装置に赤外線画像を表示させることができる。また、回路部は、上述の自己診断回路も備えている。なお、ICチップ102の回路部の回路構成は、特に限定するものではない。また、サーミスタ101は、必ずしも設ける必要はない。
【0074】
本実施形態の赤外線センサは、パッケージ本体104とパッケージ蓋105とで構成されるパッケージ103の内部空間(気密空間)を、窒素ガス(ドライ窒素ガス)雰囲気としてあるが、これに限らず、例えば、真空雰囲気としてもよい。
【0075】
パッケージ本体104は、金属材料からなる配線パターン(図示せず)および電磁シールド層(図示せず)が形成されており、この電磁シールド層により電磁シールド機能を有している。一方、パッケージ蓋105は、レンズ153が導電性を有し、レンズ153がメタルキャップ152に導電性材料により接合されている。これにより、パッケージ蓋105は、導電性を有している。そして、パッケージ蓋105は、パッケージ本体104の上記電磁シールド層と電気的に接続されている。しかして、本実施形態の赤外線センサでは、パッケージ本体104の上記電磁シールド層とパッケージ蓋105とを同電位とすることが可能となる。その結果、パッケージ103は、赤外線センサチップ100、ICチップ102、サーミスタ101、上述の配線パターン、後述のボンディングワイヤ(図示せず)などを含んで構成されるセンサ回路(図示せず)への外来の電磁ノイズを防止する電磁シールド機能を有している。
【0076】
パッケージ本体104は、平板状のセラミック基板により構成してある。そして、パッケージ本体104は、一面側に、上述の配線パターンの一部が形成されており、赤外線センサチップ100のパッド80およびICチップ102のパッド(図示せず)が、ボンディングワイヤを介して適宜接続されている。なお、赤外線センサにおいて、赤外線センサチップ100とICチップ102とは、ボンディングワイヤおよびパッケージ本体104の配線パターンなどを介して電気的に接続されている。各ボンディングワイヤとしては、Alワイヤに比べて耐腐食性の高いAuワイヤを用いることが好ましい。
【0077】
本実施形態では、パッケージ本体104の絶縁材料としてセラミックスを採用しているので、上記絶縁材料としてエポキシ樹脂などの有機材料を採用する場合に比べて、パッケージ本体104の耐湿性および耐熱性を向上させることが可能となる。ここで、絶縁材料のセラミックスとしては、アルミナを採用しているが、特に、アルミナに限定するものではなく、窒化アルミニウムや炭化珪素などを採用してもよい。なお、アルミナの熱伝導率は、14W/m・K程度である。
【0078】
また、パッケージ本体104は、上述の配線パターンの一部により構成される外部接続電極(図示せず)が、他面と側面とに跨って形成されている。しかして、本実施形態の赤外線センサでは、回路基板などへの2次実装後において、回路基板などとの接合部の外観検査を容易に行うことができる。
【0079】
また、ICチップ102は、パッケージ本体104に対して、ダイボンド剤を用いて実装されている。ダイボンド剤としては、エポキシ系樹脂やシリコーン系樹脂などの絶縁性接着剤、半田(鉛フリー半田、Au−Sn半田など)や銀ペーストなどの導電性接着剤を用いればよい。また、ダイボンド剤を用いずに、例えば、常温接合法や、Au−Sn共晶もしくはAu−Si共晶を利用した共晶接合法などにより接合してもよい。なお、エポキシ系樹脂の熱伝導率は、0.2W/m・K程度である。
【0080】
パッケージ蓋105は、パッケージ本体104側の一面が開放された箱状に形成され赤外線センサチップ100に対応する部位に開口窓152aが形成されたメタルキャップ152と、メタルキャップ152の開口窓152aを閉塞する形でメタルキャップ152に接合されたレンズ153とで構成されている。そして、パッケージ蓋105は、メタルキャップ152の上記一面がパッケージ本体104により閉塞される形でパッケージ本体104に気密的に接合されている。ここで、パッケージ本体104の上記一表面の周部には、パッケージ本体104の外周形状に沿った枠状の金属パターン147が全周に亘って形成されている。そして、パッケージ蓋105とパッケージ本体104の金属パターン147とは、シーム溶接(抵抗溶接法)により金属接合されている。これにより、パッケージ103は、気密性および電磁シールド効果を高めることができる。なお、パッケージ蓋105のメタルキャップ152は、コバールにより形成されており、Niめっきが施されている。また、パッケージ本体104の金属パターン147は、コバールにより形成され、Niのめっきが施され、さらにAuのめっきが施されている。コバールの熱伝導率は、16.7W/m・K程度である。
【0081】
パッケージ蓋105とパッケージ本体104の金属パターン147との接合方法は、シーム溶接に限らず、他の溶接(例えば、スポット溶接)や、導電性樹脂により接合してもよい。ここで、導電性樹脂として異方導電性接着剤を用いれば、樹脂(バインダー)中に分散された導電粒子の含有量が少なく、接合時に加熱・加圧を行うことでパッケージ蓋105とパッケージ本体104との接合層の厚みを薄くできるので、外部からパッケージ103内へ水分やガス(例えば、水蒸気、酸素など)が侵入するのを抑制できる。また、導電性樹脂として、酸化バリウム、酸化カルシウムなどの乾燥剤を混入させたものを用いてもよい。
【0082】
なお、パッケージ本体104およびパッケージ蓋105の外周形状は矩形状としてあるが、矩形状に限らず、例えば、円形状でもよい。また、パッケージ蓋105のメタルキャップ152は、パッケージ本体104側の端縁から全周に亘って外方に延設された鍔部152bを備えており、鍔部152bが全周に亘ってパッケージ本体104と接合されている。
【0083】
レンズ153は、平凸型の非球面レンズである。しかして、本実施形態の赤外線センサでは、レンズ153の薄型化を図りながらも、赤外線センサチップ100での赤外線の受光効率の向上による高感度化を図ることが可能となる。また、本実施形態の赤外線センサでは、赤外線センサチップ100の検知エリアをレンズ153により設定することが可能となる。レンズ153は、赤外線センサチップ100の半導体基板1とは別の半導体基板を用いて形成されている。更に説明すれば、レンズ153は、所望のレンズ形状に応じて半導体基板(ここでは、シリコン基板)との接触パターンを設計した陽極を半導体基板の一表面側に半導体基板との接触がオーミック接触となるように形成した後に半導体基板の構成元素の酸化物をエッチング除去する溶液からなる電解液中で半導体基板の他表面側を陽極酸化することで除去部位となる多孔質部を形成してから当該多孔質部を除去することにより形成された半導体レンズ(ここでは、シリコンレンズ)により構成されている。しかして、レンズ153は、導電性を有している。なお、この種の陽極酸化技術を応用した半導体レンズの製造方法については、例えば、特許第3897055号公報、特許第3897056号公報などに開示されている半導体レンズの製造方法を適用することができる。
【0084】
本実施形態では、赤外線センサチップ100の検知エリアを上述の半導体レンズからなるレンズ153により設定することができ、また、レンズ153として、球面レンズよりも短焦点で且つ開口径が大きく収差が小さな半導体レンズを採用することができるから、短焦点化により、パッケージ103の薄型化を図ることが可能となる。本実施形態の赤外線センサは、赤外線センサチップ100の検知対象の赤外線として、人体から放射される10μm付近の波長帯(8μm〜13μm)の赤外線を想定しており、レンズ153の材料として、ZnSやGaAsなどに比べて環境負荷が少なく且つ、Geに比べて低コスト化が可能であり、しかも、ZnSに比べて波長分散が小さなSiを採用している。
【0085】
また、レンズ153は、メタルキャップ152における開口部152aの周部に導電性接着剤(例えば、鉛フリー半田、銀ペーストなど)により固着されている。しかして、赤外線センサは、レンズ153がメタルキャップ152を介してパッケージ本体104の上記電磁シールド層に電気的に接続されるので、電磁ノイズに対するシールド性を高めることができ、外来の電磁ノイズに起因したS/N比の低下を抑制することが可能となる。
【0086】
上述のレンズ153には、赤外線センサチップ100での検知対象の赤外線の波長を含む所望の波長域の赤外線を透過し当該波長域以外の赤外線を反射する光学多層膜(多層干渉フィルタ膜)からなるフィルタ部(図示せず)を設けることが好ましい。このようなフィルタ部を設けることにより、所望の波長域以外の不要な波長域の赤外線や可視光をフィルタ部によりカットすることが可能となり、太陽光などによるノイズの発生を抑制することが可能となり、高感度化を図ることが可能となる。
【0087】
また、本実施形態では、パッケージ本体104が平板状に形成されているので、パッケージ本体104へICチップ102の実装が容易になるとともに、パッケージ本体104の低コスト化が可能となる。また、本実施形態の赤外線センサでは、支持部材106の高さによって、赤外線センサチップ100とレンズ153との間の距離を調整することも可能となり、高精度化を図ることが可能となる。
【0088】
支持部材106の材料としては、コバールを採用しているが、これに限らず、例えば、ステンレス鋼でもよいし、コバールやステンレス鋼に比べて熱伝導率の低い樹脂を採用してもよい。ここで、支持部材106は、例えば、押し出し加工などにより形成すればよい。また、支持部材106は、パッケージ本体104に対して、熱伝導率の低い材料(例えば、エポキシ樹脂などの樹脂)により固着することが好ましい。
【0089】
支持部材106は、ICチップ102の厚み方向においてICチップ102から離れて配置され且つ赤外線センサチップ100が接合部110を介して接合されて赤外線センサチップ100を保持するチップ保持部107と、チップ保持部107とパッケージ本体104との間に介在する支持脚部109とを有している。要するに、赤外線センサチップ100は、チップ保持部107に対してダイボンドされている。ここで、支持部材106は、チップ保持部107が、ICチップ102の厚み方向において、ICチップ102におけるレンズ153側に位置している。また、赤外線センサチップ100の平面視における外周形状は、矩形状であり、チップ保持部107の平面視における外周形状は、赤外線センサチップ100よりも大きな矩形状としてある。
【0090】
また、支持部材106は、支持脚部109を複数(図示例では、4つ)備えているが、支持脚部109の数は特に限定するものではない。また、チップ保持部107は、赤外線センサチップ100におけるICチップ102側の面を露出させる開孔部108を有している。ここで、開孔部108は、赤外線センサチップ100の平面視における外形サイズよりもやや大きい矩形の4つの角部を切り欠いた形状に形成されている。見方を変えれば、チップ保持部107は、開孔部108の内側面から、当該矩形の4つの角部に対応する部位に、ダイボンド部107bが延設されている。そして、本実施形態の赤外線センサでは、赤外線センサチップ100の4つの角部の各々が、接合部110を介して、ダイボンド部107bに接合されている。
【0091】
したがって、ICチップ102の厚み方向におけるICチップ102と赤外線センサチップ100との距離は、パッケージ本体104と支持脚部109との間に介在する第1接合層の厚み寸法と、支持脚部109の高さ寸法と、チップ保持部107の厚み寸法と、接合部110の厚み寸法との第1合計値から、パッケージ本体104とICチップ102との間に介在する第2接合層の厚み寸法と、ICチップ102の厚み寸法との第2合計値を減算した値を用いて規定することが可能である。
【0092】
接合部110の材料としては、熱伝導率の低い材料が好ましく、例えば、エポキシ樹脂などの樹脂を採用することが好ましい。これにより、支持部材106から赤外線センサチップ100への熱伝達を抑制することが可能となる。
【0093】
また、支持脚部109は、チップ保持部107の厚み方向を長手方向とする細長の矩形板状の形状であり、チップ保持部106の4つの角部から、チップ保持部106の厚み方向に沿って突設されている。なお、支持脚部109は、厚みが薄く、幅寸法が小さいほうが好ましく、これにより、パッケージ本体104から赤外線センサチップ100への熱伝達を、より抑制することが可能となる。
【0094】
以上説明した本実施形態の赤外線センサでは、ICチップ102が、パッケージ本体104に実装され、赤外線センサチップ100が、パッケージ本体104に保持された支持部材106に支持され、パッケージ103内でICチップ102の厚み方向においてICチップ102から離れて配置されているので、赤外線センサチップ100における各画素部2の各々の出力信号(出力電圧)に関して、ICチップ102の発熱に起因したオフセット電圧を低減することが可能となり、また、オフセット電圧のばらつきを低減することが可能となる。しかして、本実施形態の赤外線センサでは、ICチップ102の発熱に起因した赤外線センサチップ100の面内でのオフセット電圧のばらつきを抑制できて、赤外線センサチップ100の面内でのS/N比のばらつきを抑制することが可能となる。要するに、本実施形態の赤外線センサでは、赤外線センサチップ100の各熱型赤外線検出部3の出力のS/N比のばらつきを抑制することが可能となる。
【0095】
また、赤外線センサでは、上述のように、支持部材106が、上述のチップ保持部107と、支持脚部109とを有し、チップ保持部107が、赤外線センサチップ100におけるICチップ102側の面を露出させる開孔部108を有していることが好ましい。これにより、本実施形態の赤外線センサでは、パッケージ本体104から支持部材106を介して赤外線センサチップ100へ伝わる熱を低減することが可能となり、高感度化を図ることが可能となる。
【0096】
また、赤外線センサは、接合部110を複数備え、これら複数の接合部110が、赤外線センサチップ100の平面視の外周方向において離間していることが好ましい。これにより、赤外線センサは、パッケージ本体104側からの接合部110を通した熱伝達を、より抑制することが可能となり、赤外線センサチップ100の面内での温度のばらつきを低減することが可能となる。本実施形態の赤外線センサでは、赤外線センサチップ100の面内での冷接点T2の温度のばらつきを低減することが可能となり、画素部2ごとのオフセット電圧のばらつきを低減することが可能となる。また、本実施形態の赤外線センサでは、各画素部2の出力電圧のオフセット電圧を低減することが可能となる。
【0097】
また、この赤外線センサにおいて、接合部110は、樹脂により形成されていることが好ましい。これにより、赤外線センサは、接合部110が例えば銀ペーストや半田などにより形成されている場合に比べて、パッケージ本体104側からの接合部110を通した熱伝達を、より抑制することが可能となる。
【0098】
また、本実施形態の赤外線センサでは、パッケージ本体104が平板状に形成されているので、パッケージ本体104へのICチップ102および支持部材106の実装が容易になるとともに、パッケージ本体104の低コスト化が可能となる。
【0099】
また、本実施形態の赤外線センサは、パッケージ本体104において、上述の配線パターンのうち赤外線センサチップ100およびICチップ102それぞれのグランド用のパッド(図示せず)が接続される部位を、上記電磁シールド層に電気的に接続しておくが好ましい。これにより、赤外線センサは、赤外線センサチップ100およびICチップ102などにより構成されるセンサ回路への外来の電磁ノイズの影響を低減することが可能となり、外来の電磁ノイズに起因したS/N比の低下を抑制することが可能となる。なお、赤外線センサを回路基板などに2次実装する場合には、電磁シールド層を回路基板などのグランドパターンと電気的に接続することで、上述のセンサ回路への外来の電磁ノイズの影響を低減することが可能となり、外来の電磁ノイズに起因したS/N比の低下を抑制することが可能となる。
【0100】
(実施形態2)
本実施形態の赤外線センサの基本構成は実施形態1と略同じであり、図23に示すように、パッケージ本体104の上記一面側に凹部104aが形成されており、凹部104aの内底面にICチップ102が実装されている点などが相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0101】
本実施形態の赤外線センサでは、パッケージ本体104の上記一面側に凹部104aが形成されており、凹部104aの内底面にICチップ102が実装されているので、実施形態1の赤外線センサに比べて、ICチップ102の厚み方向におけるICチップ102と赤外線センサチップ100との距離を長くすることが可能となる。したがって、本実施形態の赤外線センサは、ICチップ102の発熱に起因した赤外線センサチップ100の温度の面内ばらつきを、より低減することが可能となり、赤外線センサチップ100の面内でのS/N比のばらつきを、より抑制することが可能となる。
【0102】
(実施形態3)
本実施形態の赤外線センサの基本構成は実施形態2と略同じであり、図24に示すように、平面視における赤外線センサチップ100とICチップ102との相対的な位置関係などが相違する。なお、実施形態2と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0103】
本実施形態の赤外線センサでは、赤外線センサチップ100およびICチップ102の平面視における外周線が正方形状であり、レンズ153の厚み方向に沿った中心線と赤外線センサチップ100の厚み方向に沿った中心線とICチップ102の厚み方向に沿った中心線とが一直線上にのり、赤外線センサチップ100の対角線とICチップ102の対角線とのなす角度を45度とするように赤外線センサチップ100を配置してある。そして、赤外線センサチップ100は、4つの角部の各々が、接合部110を介して、支持部材106のチップ保持部107に接合されている。
【0104】
したがって、本実施形態の赤外線センサでは、支持部材106の開孔部108の開口サイズが赤外線センサチップ100のチップサイズよりも大きい場合でも、赤外線センサチップ100を支持部材106により支持することが可能となる。また、本実施形態の赤外線センサでは、実施形態2に比べて、支持部材106の支持脚部109と赤外線センサチップ100との間の距離を長くすることが可能となり、パッケージ本体104側からの支持脚部109と接合部110とを通した熱伝達を、より抑制することが可能となる。
【0105】
(実施形態4)
本実施形態の赤外線センサの基本構成は実施形態2と略同じであり、図25に示すように、パッケージ本体104の凹部104aが、平面視においてICチップ102および支持部材106が収まる大きさに形成されている点などが相違する。なお、実施形態2と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0106】
本実施形態の赤外線センサでは、パッケージ本体104の凹部104aが、平面視においてICチップ102および支持部材106が収まる大きさに形成されているので、赤外線センサチップ100とレンズ153との距離を変えることなくパッケージ蓋105の低背化を図ることが可能となり、パッケージ103の低背化を図ることが可能となる。
【0107】
ところで、上述の各実施形態では、ICチップ102をフェースアップ実装しているが、ICチップ102を、回路部が形成された主表面側とは反対の裏面が、赤外線センサチップ100側に位置するように、パッケージ本体104に対して、フェースダウン実装(フリップチップ実装)してもよい。これにより、ICチップ102の回路部で発生した熱が赤外線センサチップ100に伝わるのを、より抑制することが可能となり、高感度化を図ることが可能となる。
【0108】
また、上述の各実施形態において、半導体基板1の空洞部11は、半導体基板1の厚み方向に貫通する形で形成してもよく、この場合は、空洞部11を形成する空洞部形成工程において、半導体基板1の上記一表面とは反対の他表面側から、半導体基板1における空洞部11の形成予定領域を、例えば誘導結合プラズマ(ICP)型のドライエッチング装置を用いた異方性エッチング技術を利用して形成すればよい。また、赤外線センサチップ100は、サーモパイル30aにより構成される感温部30を具備する複数の画素部2が半導体基板1の一表面側においてアレイ状に配置されたものであればよく、構造は特に限定するものではなく、感温部30を構成するサーモパイル30aの数も複数に限らず、1つでもよい。また、赤外線センサチップ100における熱型赤外線検出部3は、感温部30にサーモパイル30aを用いているが、これに限らず、感温部30として、焦電素子や、抵抗ボロメータなどを用いてもよい。
【0109】
また、半導体基板1もシリコン基板に限らず、例えば、ゲルマニウム基板や、シリコンカーバイド基板などでもよい。また、パッケージ蓋104において、レンズ153の代わりに、平板状のシリコン基板を配置して赤外線を透過する機能を有するようにしてもよい。また、パッケージ蓋104におけるレンズ153の配置も特に限定するものではなく、レンズ153をパッケージ蓋104の外側に配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1 半導体基板
3 熱型赤外線検出部
100 赤外線センサチップ
102 ICチップ
103 パッケージ
104 パッケージ本体
104a 凹部
105 パッケージ蓋
106 支持部材
107 チップ保持部
108 開孔部
109 支持脚部
110 接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱型赤外線検出部が半導体基板の一表面側においてアレイ状に配置された赤外線センサチップと、前記赤外線センサチップの出力信号を信号処理するICチップと、前記赤外線センサチップおよび前記ICチップが収納されたパッケージとを備え、前記パッケージは、パッケージ本体と、前記赤外線センサチップでの検知対象の赤外線を透過する機能を有し前記パッケージ本体に接合されたパッケージ蓋とを有し、前記ICチップは、前記パッケージ本体に実装され、前記赤外線センサチップは、前記パッケージ本体に保持された支持部材に支持され、前記パッケージ内で前記ICチップの厚み方向において前記ICチップから離れて配置されていることを特徴とする赤外線センサ。
【請求項2】
前記支持部材は、前記厚み方向において前記ICチップから離れて配置され且つ前記赤外線センサチップが接合部を介して接合されて前記赤外線センサチップを保持するチップ保持部と、前記チップ保持部と前記パッケージ本体との間に介在する支持脚部とを有し、前記チップ保持部は、前記赤外線センサチップにおける前記ICチップ側の面を露出させる開孔部を有することを特徴とする請求項1記載の赤外線センサ。
【請求項3】
前記接合部を複数備え、前記接合部は、前記赤外線センサチップの平面視の外周方向において離間していることを特徴とする請求項2記載の赤外線センサ。
【請求項4】
前記接合部は、樹脂により形成されてなることを特徴とする請求項2または請求項3記載の赤外線センサ。
【請求項5】
前記パッケージ本体は、一面側に凹部が形成され、前記凹部の内底面に前記ICチップが実装されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の赤外線センサ。
【請求項6】
前記パッケージ本体は、前記凹部が、平面視において前記ICチップおよび前記支持部材が収まる大きさに形成されてなることを特徴とする請求項5記載の赤外線センサ。
【請求項7】
前記ICチップは、回路部が形成された主表面側とは反対の裏面が、前記赤外線センサチップ側に位置していることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の赤外線センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−230010(P2012−230010A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98705(P2011−98705)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】