説明

走行車輌

【課題】 車体カバーの支持剛性図りつつ、車体カバーを取外しての入力伝動部材及び出力伝動部材のメンテナンスが上側からフレーム等が邪魔にならずに容易に行えるようにする。
【解決手段】 本発明は、車体カバーに沿う左右の前後方向に延びるフレーム(40),(40)で車体カバーを支持する構成とし、前記左右のフレーム(40),(40)の内側にミッションケース(20)を位置させて設け、ミッションケース(20)への入力伝動部材(23)とミッションケースからの出力伝動部材(30)とを左右フレーム(40),(40)の内側で左右並列状に配置し、平面視で入力伝動部材(23)と出力伝動部材(30)との左右間には車体カバー支持体(43)を別途設け、平面視で車体カバー支持体(43)と左右フレーム(40),(40)との間は車体カバー支持部材を欠く構成としてあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、田植機等のような走行車輌の車体カバー支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示されているように、中央の前後方向に沿うメインフレームの前部から上向きにコ字型フレームが突設され、その上端部に左右横方向の横フレームの中間部が連結され、この左右横フレームから前方に向けて左右に平行な2本の内側フレームと左右に平行な2本の外側フレームがそれぞれ設けられ、これら内外各フレームの前端部がバンパフレームによって連結されており、そして、これら左右横フレームと前後方向の内外各フレームと前端のバンパフレーム等からなるフレーム構成の下方にミッションケースを配置し、その上方に車体カバーを支持する構成になっている。
【特許文献1】特開2001−211705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のものでは、車体カバーを支持するフレーム構成が複雑であり、車体カバーを取外しても、上側からフレーム等が邪魔になり、ミッションケースや、ミッションケースへの入力伝動部材、ミッションケースからの出力伝動部材等のメンテナンスが容易に行えない問題があった。
【0004】
本発明の課題は、上記問題点を解消し、簡単なフレーム構成でありながら剛性強化を図り、車体カバーを取外してのメンテナンス性の容易化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、車体カバー(45)に沿う左右の前後方向に延びるフレーム(40),(40)で車体カバー(45)を支持する構成とし、前記左右のフレーム(40),(40)の内側にミッションケース(20)を位置させて設け、ミッションケース(20)への入力伝動部材(23)とミッションケースからの出力伝動部材(30)とを左右フレーム(40),(40)の内側で左右並列状に配置し、平面視で入力伝動部材(23)と出力伝動部材(30)との左右間には車体カバー支持体(43)を別途設け、平面視で車体カバー支持体(43)と左右フレーム(40),(40)との間は車体カバー支持部材を欠く構成としてあることを特徴とする。
【0006】
車体カバー(45)を支持するフレーム構成は、主として、内側にミッションケース(20)を介在位置させる前後方向に延びる左右一対のフレーム(40),(40)と、ミッションケース(20)への入力伝動部材(23)とミッションケース(20)からの出力伝動部材(30)との左右間に別途設けた車体カバー支持体(43)とからなり、前後方向に沿う左右のフレームは前後端を結ぶだけで良く、中間部分は車体カバー支持体(43)によって車体カバー(45)を受けるのみの簡単な構成で剛性強化が図られ、車体カバー(45)を取り外した場合には、ミッションケースや入力伝動部材、出力伝動部材などの上方には邪魔になる支持部材がないため、上側からのメンテナンスが容易に行える。
【発明の効果】
【0007】
要するに、本発明によれば、簡単なフレーム構成で剛性強化を図ることができ、車体カバー(45)を取り外しての入力伝動部材(23)並びに出力伝動部材(30)等のメンテナンスを上側からフレーム等が邪魔にならない状態で容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1及び図2は、走行車輌の一例として4条植田植機を示すものであり、走行車体1の前後には走行車輪としての左右一対の前輪2,2及び後輪3,3が架設されている。車体上前部には操作ボックス4及びステアリングハンドル5等を有する操縦装置が設置され、また、車体後方部には昇降可能な苗植付部6が装備されている。操縦装置の後側に運転席9が設置され、運転席の下側に田植機の各部に動力を伝達するエンジンEが搭載されている。
【0009】
前記ステアリングハンドル5は、該ハンドルの旋回操作によりステアリングポスト10内のステアリング軸からステアリングケース内を経て減速回転される出力軸、ピットマンア−ム及び操向ロッド等を介して左右の前輪2,2を操向させ操舵するようになっている。
【0010】
苗植付部6は、車体の後部に昇降リンク機構7を介して昇降可能に装着され、昇降用油圧シリンダ8の伸縮作動により昇降する構成であり、その操作は植付昇降レバー15によって行う。
【0011】
また、この苗植付部6には、マット苗を載せて左右に往復動し苗を一株分づつ各条における前板11aの苗取出口11b,…に供給すると共に横一列の苗を全て苗取出口11b,…に供給すると苗送りベルト11c,…により苗を下方に移送する苗タンク11、植付具12で一株分の苗を切取って土中に植込む4条分の苗植付装置13,13、苗植付面を滑走しながら整地するフロ−ト(サイドフロ−ト)14,14、センタフロ−ト14S等を備えた構成としている。
【0012】
走行車体1の前部側にミッションケ−ス20が配置され、そのミッションケ−ス20の左右側面部から前輪アクスルケース16が側方に延び、その左右両端に変向可能に設けた前輪ファイナルケ−ス17,17に前輪2,2が回転自在に軸支されている。また、ミッションケ−ス20の背面部にメインフレ−ム21の前端部が固着されており、そのメインフレ−ム21の後端部から左右側方に延びるリヤフレーム22の先端部に固定して設けた後輪伝動ケ−ス18,18に後輪3,3が回転自在に支承されている。
【0013】
原動機となるエンジンEはメインフレ−ム21の上部に搭載されてあり、そして、このエンジンEの回転動力は、ミッションケース20への入力伝動部材23として、エンジン出力プーリ24からベルト25を介して油圧式無段変速装置(HST)26の入力プ−リ27、入力軸28に伝えられ、この入力軸28から油圧ポンプ29を駆動するようになっており、更に、HST26の出力軸からミッションケ−ス20内のミッションに伝達されるようになっている。該ケ−ス20内のミッションに伝達された回転動力は、ケ−ス20内のトランスミッションにて変速された後、走行動力と外部取出動力とに分岐して取り出される。そして、走行動力は、前輪2,2及び後輪伝動軸19から後輪伝動ケ−ス18,18のギヤ機構を介して後輪3,3を駆動する。また、外部取出動力は、ミッションケース20からの出力伝動部材30として、安全クラッチケース31内の安全クラッチを介して植付伝動軸32に伝達され、更に、植付伝動軸32によって苗植付部6へ伝動されると共に、施肥装置33へも動力伝達されるようになっている。
【0014】
ミッションケース20及びエンジンEを挟む左右両側方には、該ケース及びエンジンより上方において前後方向に延びる左右一対の左右フレーム40,40が設けられ、走行車体1上に一体的に固着支持されている。左右フレーム40,40の前端部は左右横方向の前横フレーム41によって連結され、後端部はリヤフレーム22から上方に突設する支持ステー42を介して連結保持されている。要するに、このフレーム構成は平面視で前後方向の左右フレーム40,40と左右横方向の前フレーム41とリヤフレーム22とによって連結一体化した四角形状の構造とすることにより、剛性強化を図っている。そして、この四角形フレームの空間内に前記ミッションケース20、入力伝動部材23、出力伝動部材30等が介在配置されることになり、上方に設置される車体カバー45を取り外した場合に上側からのメンテナンスが容易に行えるようになっている。また、前記左右フレーム40,40は、前端と後端のみが接続されるが、中間部分は前記入力伝動部材23と出力伝動部材30との左右間において前記メインフレーム21の前端部から車体カバー支持体43のみが突設された構成になっている。
【0015】
車体カバー45は、操作ボックス4の各種操作機構を覆うボンネット部45aと、エンジンEの上部を覆うエンジンカバー部45bと、後輪3,3を覆うフェンダー部45cと、オペレータが歩行移動可能な水平状のステップフロア部45dとによって構成されている。
【0016】
なお、前記HST26は、ボンネット部45aの下方に配置してあり、ボンネット部45aの上部近傍には、該HSTを駆動する変速レバ−34が配置され、この変速レバ−34の前後方向の操作でHST26を駆動し機体の前進及び後進制御を司るように構成されている。
【0017】
図4〜図6に示す実施例では、リヤフレーム22の上方に、左右横方向に延びる後横フレーム48が該リヤフレーム22から突設する昇降リンク機構7のリンク支持フレーム49を介して連結支持されている。右側の右フレーム40の後端部と前記後横フレーム48の右端部との間には、植付土壌面の硬軟度を調節する感度調節レバー50を任意の位置で係止保持する係止溝51a付プレート51が設けられ、両者を一体連結することにより、フレームの補強材として共用する構成としている。また、左右のフレーム40,40には乗降用補助ステップ52が設けられ、これと一体化した構成としている。更に、左側のフレーム40には、入力伝動部材23のベルトカバー53が設けられ溶接手段等により一体化した構成としている。
【0018】
前記苗植付部6において、苗タンク11の前板11aの左右端部を防護する前板ガード56が、図7に示すように、前板11aの端部より外側方に突出されて左右横方向に架設された軸杆57の両端に取り付けられている。そして、この前板ガード56は、図8に示すように、使用時と収納時とに切り替えできるように構成してあり、つまり、図8(イ)に示すように、前板ガード56には固定用のピン孔56aが一つ設けられ、この前板ガード56を差し込む角パイプ58に二つのピン孔58a,58bが設けられている。従って、固定ピン59を角パイプ58のピン孔58aと前板ガード56のピン孔56aとに差し込むことで、前板ガード56は、図8(ロ)に示すように使用時姿勢となり、また、固定ピン59を角パイプ58のピン孔58bと前板ガード56のピン孔56aとに差し込む場合には、前板ガード56は、図8(ハ)に示すように収納時姿勢となるようになっている。
【0019】
図9及び図10に示すように、従来、フロート14Sと感知ケーブル60とを結ぶフロートリンク61の位置決めは、支持プレート62に固着したピン軸63によりスプリング64を介して行うようにしている。この方式によると、フロートリンクの倒れ防止のため、スプリング64の側面をフロートリンク61に接当させる構成となり、フロートリンクはスプリングに強くこすられながらスライドするため、フロート感知に悪影響を及ぼす。本例では、図11及び図12に示すように、フロートプレート61に設けた長溝65に支持プレート62の前端部を上下動自在に挿通することにより、フロートリンクの横方向の位置決め及び上下方向のスライド案内機能をもたらすように構成している。従って、従来例のように、フロートリンクは、これにスプリングが強く当たってこすられることがなく、スムースにスライドすることができる。
【0020】
また、図に示すように、感知ケーブル60をこの引き方向が支持プレート62のプレート平面と一直線状になるように引っ掛け構成しておくと、ピン軸に引っ掛ける従来方式のものに比べてねじれ力がかからず、それに見合う強度アップの必要がなくなり安価に実施できる。また、感知ケーブル60を引くフロートリンク61の前後方向の位置決めをしている支持プレート62のピン軸63には感知スプリング66を係止する構成としている。フロートリンク61の少なくともフロート側取付端部61aは、フロートに取り付けられたコ字型取付金具67への取付方向の逆側にL字型に曲げて剛性をもたせた構成としている。
【0021】
ステアリングハンドル5近くに変速レバー34を設置してある乗用田植機において、操作ボックス4の前部位置には、手で握って車体前部を押し下げ操作するハンド操作部70と、オペレータが乗って体重により押し下げ操作するステップ操作部71とからなるフロント操作具72が走行車体から突設した支持杆73に装着支持されている。圃場より脱出する場合、或は畦越えする場合、ハンド操作部70を握って車体前部の浮き上がりを防止し、又は、ステップ操作部71に乗って浮き上がりを防止しながら変速レバー34の操作によって圃場からの脱出、或は畦越えが容易に行える。なお、前記ステップ操作部71は、ステップフロア部45d上面より下方に設定しておけば、乗降が楽になり、変速レバーのコントロールが可能となる。前記フロント操作具72の左右中間部にはセンターマスコット74が立設されている。
【0022】
また、車体前部にフロント操作具72を設置したものにおいて、このフロント操作具72の左右中間部に設けたセンターマスコット74は、図13に示すように、通常のものより長く構成して前後方向に傾倒固定自在に設け、そして、そのセンターマスコット74の先端側にはステアリングハンドル5を係止固定するためのフック75を設けることにより、畦越え時には、センターマスコット74を図のように後方へ傾倒操作して係止固定する。これによれば、畦越え時に軽い力でステアリングハンドルを固定でき、安全に畦越えすることができる。
【0023】
図14は、水田車輪の実施例を示すもので、車輪2(又は3)のホイルキャップ80の形状にあって、車輪径の途中に中抜き穴80aを設けた形状にし、しかも、このホイルキャップ80の内面側が外端側から内端側まで順次傾斜する傾斜面80bを有した構成であり、スポーク81に固定するようになっている。ホイルキャップの中抜きと内面の斜面によって内側から外側への泥抜きが容易となる。
【0024】
また、図15に示すホイルキャップ82は、ラセン形状のラセン翼82aと各ラセン翼82a,…間に形成して設けた泥抜き穴82b,…とからなるラセン状ホイルキャップとすることで、泥水が内外に抜けるようになり流動性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】田植機の側面図
【図2】田植機の平面図
【図3】同上要部の平面図
【図4】車体カバーフレーム構造の平面図
【図5】同上側面図
【図6】同上背面図
【図7】苗植付部の要部の平面図
【図8】前板ガードの取付構造を示す斜視図
【図9】フロートリンクの従来例を示す側面図
【図10】同上正面図
【図11】フロートリンクの本例を示す側面図
【図12】同上正面図
【図13】田植機の一部の側面図
【図14】水田車輪の切断背面図
【図15】ホイルキャップの側面図
【符号の説明】
【0026】
E エンジン 1 車体
20 ミッションケース 21 メインフレーム
22 リヤフレーム 23 入力伝動部材
26 HST 30 出力伝動部材
40 左右フレーム 41 前横フレーム
42 支持ステー 43 車体カバー支持体
45 車体カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体カバー(45)に沿う左右の前後方向に延びるフレーム(40),(40)で車体カバー(45)を支持する構成とし、前記左右のフレーム(40),(40)の内側にミッションケース(20)を位置させて設け、ミッションケース(20)への入力伝動部材(23)とミッションケースからの出力伝動部材(30)とを左右フレーム(40),(40)の内側で左右並列状に配置し、平面視で入力伝動部材(23)と出力伝動部材(30)との左右間には車体カバー支持体(43)を別途設け、平面視で車体カバー支持体(43)と左右フレーム(40),(40)との間は車体カバー支持部材を欠く構成としてあることを特徴とする走行車輌。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−327400(P2006−327400A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153763(P2005−153763)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】