説明

超伝導デマルチプレクサ回路用のシステム、方法、および装置

デマルチプレクサ回路用のスイッチングセルは超伝導入力信号経路、少なくとも2個の超伝導出力信号経路、および交差ノードと出力信号経路との各端部の間に配置されたトランスを含む。トランスを介して印加された磁束は信号が伝播する方向に影響を及ぼすことができる。スイッチングセルはまた、電源入力ノードを含んでいてもよい。スイッチングセルは、各種の構成、例えば2分木またはH木に配置されてもよい。超伝導インダクタラダー回路はデジタル/アナログ変換を実行することができる。個別スイッチングセルと共に磁束記憶構造を用いてもよい。ラッチング量子ビットを用いてもよい。カスケードエラーを減少または除去すべくスイッチングセルのバッファ段を用いてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、特許法119(e)に基づき2008年6月3日出願の米国仮特許出願第61/058494号「超伝導デマルチプレクサ回路用のシステム、方法、および装置」を優先権主張するものであり、その全文を本明細書に引用している。
【0002】
本システム、方法、および装置は一般に、スケーラブルな超伝導計算に関し、特に超伝導量子プロセッサの要素のプログラミングにおける対数アドレス指定およびデジタル/アナログ変換に関する。
【背景技術】
【0003】
超伝導量子ビット
多くの異なるハードウェアおよびソフトウェア的アプローチが量子コンピュータへの利用を検討されている。ハードウェア的アプローチの一つは、超伝導量子ビットを画定すべく、アルミニウムおよび/またはニオブ等の超電導材料で形成された集積回路を使用する。超伝導量子ビットは、情報の符号化に用いる物理的特性に応じていくつかのカテゴリに分けることができる。例えば、これらは電荷、磁束、および位相素子に分けることができる。電荷素子は、素子の電荷状態に情報を記憶して操作する。磁束素子は、素子のある部分を通る磁束に関する変数に情報を記憶して操作する。位相素子は、位相素子の2個の領域間における超伝導位相の差異に関する変数に情報を記憶して操作する。
【0004】
従来技術において多くの異なる形式の超伝導磁束量子ビットが実装されてきたが、成功した実装例は全て一般に、少なくとも1個のジョセフソン接合により遮断される超伝導ループ(すなわち「量子ビットループ」)を含む。いくつかの実施形態は、直列にまたは並列に(すなわち複合ジョセフソン接合)接続される複数のジョセフソン接合を実装し、いくつかの実施形態は複数の超伝導ループを実装している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
量子プロセッサ
コンピュータプロセッサは、アナログプロセッサ、例えば超伝導量子プロセッサ等の量子プロセッサの形式であってよい。超伝導量子プロセッサは、多くの量子ビットおよび2個以上の超伝導量子ビット等、付随する局所バイアス素子を含んでいてもよい。本システム、方法、および装置と共同で利用できる例示的な量子プロセッサの更なる詳細および実施形態は、米国公開特許第2006−0225165号、米国公開特許第2008−0176750号、米国特許出願第12/266,378号およびPCT特許出願第PCT/US09/37984号に記載されている。
【0006】
実装されている特定のハードウェアによらず、単一の量子ビットを管理する場合にも多くのパラメータの制御が必要になる。従来、この要件は、個々の量子ビットとの外部導通(すなわちプロセッサアーキテクチャの外部からの導通)を必要としていた。しかし、システム内の量子ビットの個数と共に全体的な処理能力が向上したため、従来型スーパーコンピュータの能力を超える高性能なプロセッサは多数の量子ビットを管理せねばならず、従って個々の量子ビットの複数のパラメータに対して外部制御を用いる従来の方式は、量子ビットパラメータのプログラミングのために複雑なシステムを必要とする。
【0007】
従って、量子プロセッサのスケーラビリティは、量子ビット制御システムの複雑さにより制約され、当該技術分野においてスケーラブルな量子ビット制御システムに対する必要性が残る。
【0008】
超伝導プロセッサ
コンピュータプロセッサは、超伝導プロセッサの形式であってよいが、超伝導プロセッサは従来の意味での量子プロセッサでなくてもよい。例えば、超伝導プロセッサのいくつかの実施形態は、量子トンネリング、重ね合せ、およびエンタングルメント等の量子効果に注目するのではなく、むしろ異なる原理、例えば古典的コンピュータプロセッサの動作を司る原理を強調することにより動作することができる。しかし、そのような超伝導プロセッサの実装には依然としてある種の効果があるだろう。固有の物理的特性により、超伝導プロセッサは一般に、非超伝導プロセッサよりもスイッチング速度が速く、且つ計算時間が短いため、特定の問題を超伝導プロセッサで解決する方がより実際的な場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
少なくとも1個の実施形態を要約すれば、リードスイッチングセル、第1のスイッチングセルの組、および第2のスイッチングセルの組を含む複数のスイッチングセルを含む超伝導デマルチプレクサであって、当該複数のスイッチングセル内の各スイッチングセルが、信号入力端、第1の信号出力端、および第2の信号出力端と、第1端および第2端を有し、当該第1端が当該信号入力端に結合される第1のジョセフソン伝送線と、第1端および第2端を有し、当該第1端が当該第1の信号出力端に結合されると共に当該第2端が当該第2の出力端に結合される第2のジョセフソン伝送線であって、当該第1のジョセフソン伝送線の当該第2端と交差ノードにおいて結合される第2のジョセフソン伝送線と、当該第2のジョセフソン伝送線上の第1のノードおよび第2のノードの両方に信号を誘導結合する磁束バイアス線であって、当該第2のジョセフソン伝送線上の当該第1のノードが当該交差ノードと当該第1の出力端の間に配置され、当該第2のジョセフソン伝送線上の当該第2のノードが当該交差ノードと当該第2の出力端の間に配置される磁束バイアス線とを含み、当該リードスイッチングセルの入力端が入力信号源から信号を受信すべく構成され、当該リードスイッチングセルの当該第1の出力端が当該第1のスイッチングセルの組からの第1のスイッチングセルの入力端に結合され、当該リードスイッチングセルの当該第2の出力端が当該第1のスイッチングセルの組からの第2のスイッチングセルの入力端に結合され、当該第1のスイッチングセル組内の当該第1および第2のスイッチングセルの両方の当該第1および第2の出力端が各々当該第1のスイッチングセル組内の別の各スイッチングセルの入力端に結合され、当該第2のスイッチングセル組内の各スイッチングセルの入力端が当該第1のスイッチングセル組内のスイッチングセルの各出力端に結合される、超伝導デマルチプレクサである。第2のスイッチングセル組内の少なくとも1個のスイッチングセルの少なくとも1個の出力端は、プログラム可能な素子に結合すべく構成されてもよい。プログラム可能な素子は、超伝導プロセッサの要素を含んでいてもよい。プログラム可能な素子は、超伝導磁束量子ビット、超伝導位相量子ビット、超伝導電荷量子ビット、超伝導ハイブリッド量子ビット、および超伝導量子ビットカプラからなる群から選択されてもよい。
【0010】
超伝導デマルチプレクサは更に、磁束記憶構造の組を含んでいてもよく、各磁束記憶構造が、第2のスイッチングセル組内の少なくとも1個のスイッチングセルの各出力端に結合され、各磁束記憶構造が、第1端および第2端を含んでいて第1端が第2のスイッチングセル組内の少なくとも1個のスイッチングセルの出力端に結合される第3のジョセフソン伝送線と、第3のジョセフソン伝送線と直列に結合される記憶インダクタと、第1端と記憶インダクタの間に配置されたノードにおいて第3のジョセフソン伝送線を遮断する複合ジョセフソン接合と、複合ジョセフソン接合に信号を制御可能に誘導結合させるべく配置されたリセット線とを含む。少なくとも1個の記憶インダクタが、少なくとも1個のプログラム可能な素子に信号を誘導結合すべく配置されてもよい。少なくとも1個の記憶インダクタが、超伝導インダクタラダー回路内の少なくとも1個の超伝導ループに信号を誘導結合すべく配置されてもよい。少なくとも2個の記憶インダクタが、超伝導インダクタラダー回路の少なくとも2個のループの各1個に信号を誘導結合すべく各々配置されてもよい。超伝導インダクタラダー回路が、少なくとも1個のプログラム可能な素子に信号を結合すべく配置されてもよい。少なくとも1個のプログラム可能な素子が、超伝導プロセッサの要素を含んでいてもよい。少なくとも1個のプログラム可能な素子が、超伝導量子プロセッサの要素を含んでいてもよい。少なくとも1個のプログラム可能な素子が、超伝導磁束量子ビット、超伝導位相量子ビット、超伝導電荷量子ビット、超伝導ハイブリッド量子ビットおよび超伝導量子ビットカプラからなる群から選択されてもよい。同一の磁束バイアス線が、少なくとも2個のスイッチングセルに信号を制御可能に誘導結合すべく配置されてもよい。
【0011】
少なくとも1個の実施形態を要約すれば、リードラッチング量子ビット、第1のラッチング量子ビットの組、および第2のラッチング量子ビットの組を含む複数のラッチング量子ビットにおいて各ラッチング量子ビットが臨界温度未満で超伝導性を示す材料のループにより形成された量子ビットループ、および当該量子ビットループを遮断する複合ジョセフソン接合であって少なくとも2個のジョセフソン接合により遮断され、臨界温度未満で超伝導性を示す材料のループを含む複合ジョセフソン接合を含む複数のラッチング量子ビットと、第1のクロック信号線の組と、第2のクロック信号線の組と、当該第1および第2のラッチング量子ビット組内の各ラッチング量子ビットが制御線への誘導結合により信号を受信すべく配置される少なくとも1個の制御線とを含む超伝導デマルチプレクサであって、当該リードラッチング量子ビットが入力信号源から信号を受信すべく配置され、第1のラッチング量子ビット組内の第1のラッチング量子ビットが当該リードラッチング量子ビットの量子ビットループに誘導的に接続すべく配置され、当該第1のクロック信号線の組からの第1のクロック信号線が当該第1のラッチング量子ビット組内の当該第1のラッチング量子ビットの当該複合ジョセフソン接合に制御可能且つ誘導的に配置され、当該第1のラッチング量子ビット組内の当該第2のラッチング量子ビットが当該リードラッチング量子ビットの当該量子ビットループに誘導結合すべく配置され、当該第2のクロック信号線の組からの第1のクロック信号線が当該第1のラッチング量子ビット組内の当該第2のラッチング量子ビットの当該複合ジョセフソン接合に制御可能に誘導結合すべく配置され、当該第1のラッチング量子ビット組内の各ラッチング量子ビットの当該量子ビットループが当該複数のラッチング量子ビット内の3個の他のラッチング量子ビットに各々誘導結合すべく各々配置され、当該第1のラッチング量子ビットの組からのラッチング量子ビットの第1の割合の当該複合ジョセフソン接合が当該第1のクロック信号線の組からのクロック信号線に誘導結合すべく配置され、当該第1のラッチング量子ビットの組からのラッチング量子ビットの第2の割合の当該複合ジョセフソン接合が当該第2のクロック信号線の組からのクロック信号線に誘導結合すべく配置され、当該第2のラッチング量子ビット組内の各ラッチング量子ビットの量子ビットループが当該第1のラッチング量子ビット組内の各1個のラッチング量子ビットの量子ビットループに誘導結合すべく配置され、当該第2のラッチング量子ビット組内のラッチング量子ビットの複合ジョセフソン接合の第1の割合が当該第1のクロック信号線の組からのクロック信号線に誘導結合すべく配置され、当該第2のラッチング量子ビット組内のラッチング量子ビットの複合ジョセフソン接合の第2の割合が当該第2のクロック信号線の組からのクロック信号線に誘導結合すべく配置される、超伝導デマルチプレクサである。第2のラッチング量子ビット組内の少なくとも1個のラッチング量子ビットの量子ビットループはプログラム可能な素子に結合すべく構成されてもよい。プログラム可能な素子が、超伝導プロセッサの要素を含んでいてもよい。プログラム可能な素子が、超伝導量子プロセッサの要素を含んでいてもよい。プログラム可能な素子が、超伝導磁束量子ビット、超伝導位相量子ビット、超伝導電荷量子ビット、超伝導ハイブリッド量子ビット、および超伝導量子ビットカプラからなる群から選択されてもよい。第1のラッチング量子ビット組内の少なくとも2個のラッチング量子ビットが第1のクロック信号線の組からの同一クロック信号線に誘導結合すべく配置されてもよい。第1のラッチング量子ビット組内の少なくとも2個のラッチング量子ビットが、第2のクロック信号線の組からの同一クロック信号線に誘導結合すべく配置されてもよい。第1のラッチング量子ビット組内のラッチング量子ビットの第1の割合は約50パーセント、第1のラッチング量子ビット組内のラッチング量子ビットの第2の割合は約50パーセント、第2のラッチング量子ビット組内のラッチング量子ビットの第1の割合は約50パーセント、および第2のラッチング量子ビット組内のラッチング量子ビットの第2の割合は約50パーセントである。第2のラッチング量子ビット組内の少なくとも1個のラッチング量子ビットの量子ビットループが、超伝導インダクタラダー回路内の少なくとも1個の超伝導ループに誘導結合すべく配置されてもよい。第2のラッチング量子ビット組内の少なくとも各2個のラッチング量子ビットの量子ビットループは各々、超伝導インダクタラダー回路内の少なくとも2個の超伝導ループの各1個に誘導結合すべく配置されてもよい。超伝導インダクタラダー回路が、少なくとも1個のプログラム可能な素子に信号を結合すべく配置されてもよい。少なくとも1個のプログラム可能な素子が、超伝導プロセッサの要素を含んでいてもよい。少なくとも1個のプログラム可能な素子が、超伝導量子プロセッサの要素を含んでいてもよい。少なくとも1個のプログラム可能な素子が、超伝導磁束量子ビット、超伝導位相量子ビット、超伝導電荷量子ビット、超伝導ハイブリッド量子ビット、および超伝導量子ビットカプラからなる群から選択されてもよい。
【0012】
少なくとも1個の実施形態を要約すれば、入力端および2個の出力端を含む第1のスイッチングセルと、第1の追加的スイッチングセルの組において各スイッチングセルが入力端および2個の出力端を含むと共に少なくとも1個のバッファセルを含む第1の追加的スイッチングセルの組と、当該第1のスイッチングセルに入力信号を制御可能に結合すべく構成された入力信号源とを含むデマルチプレクサ回路であって、当該第1の追加的スイッチングセルの組が各スイッチングセルの各出力端が別のスイッチングセルの各入力端に結合するように実質的に2分木を形成すべく配置され、各スイッチングセルの各入力端が少なくとも1個の他のスイッチングセルの少なくとも1個の出力から少なくとも1個の入力を受信し、少なくとも1個のバッファセルの入力端が少なくとも各2個のスイッチングセルから各1個の出力端を受信し、少なくとも1個のバッファセルの2個の出力端が各々スイッチングセルの入力端に結合するデマルチプレクサ回路である。第1の追加的スイッチングセルの組が、一組の段として配置されて少なくとも1段が少なくとも2個のバッファセルを含んでいてもよい。スイッチングセルは超伝導素子であってよい。
【0013】
デマルチプレクサは更に、各々が入力端および2個の出力端を含む第2の追加的なスイッチングセルの組を含んでもよく、第2の追加的なスイッチングセル組内の各スイッチングセルの入力端は第1の追加的なスイッチングセルからの各スイッチングセルの少なくとも各1個の出力端に結合し、第2の追加的なスイッチングセル組内の少なくとも1個のスイッチングセルの少なくとも1個の出力端はプログラム可能な素子に結合すべく構成される。プログラム可能な素子が、超伝導プロセッサの要素を含んでいてもよい。プログラム可能な素子が、超伝導磁束量子ビット、超伝導位相量子ビット、超伝導電荷量子ビット、超伝導ハイブリッド量子ビット、および超伝導量子ビットカプラからなる群から選択されてもよい。
【0014】
少なくとも1個の実施形態を要約すれば、複数の超伝導信号経路を提供するジョセフソン伝送線のネットワークを含む超伝導デマルチプレクサ回路であって、各超伝導信号経路が、各超伝導信号経路が同一の入力端を共有すべく入力端および出力端を含み、各超伝導信号経路の出力端は個別の複合ジョセフソン接合および個別の超伝導インダクタを含み、各超伝導信号経路は複数の磁束バイアス線に誘導結合により制御信号を受信すべく配置される超伝導デマルチプレクサ回路である。少なくとも1個の超伝導インダクタが少なくとも1個のプログラム可能な素子に誘導結合すべく配置されてもよい。少なくとも1個の超伝導インダクタが、超伝導インダクタラダー回路の超伝導ループに誘導結合すべく配置されてもよい。各超伝導インダクタが、少なくとも1個の超伝導インダクタラダー回路内の超伝導ループの各1個に誘導結合すべく配置されてもよい。
【0015】
少なくとも1個の実施形態を要約すれば、超伝導ラッチング量子ビットの2分木構造であって、各超伝導ラッチング量子ビットが超電導材料のループにより形成された量子ビットループと当該量子ビットループを遮断する複合ジョセフソン接合を含み、当該複合ジョセフソン接合が少なくとも2個のジョセフソン接合により遮断される超電導材料の閉ループを含み、当該量子ビットループおよび当該複合ジョセフソン接合が閉超伝導電流経路を形成し、各超伝導ラッチング量子ビットの当該量子ビットループが少なくとも1個の入力信号および少なくとも2個の出力信号を誘導結合すべく配置され、各超伝導ラッチング量子ビットの当該複合ジョセフソン接合がクロック信号線への誘導結合によりクロック信号を受信すべく配置される超伝導ラッチング量子ビットの2分木構造と、制御信号を少なくとも2個の超伝導ラッチング量子ビットの各々の量子ビットループに誘導結合すべく配置される少なくとも1個の制御信号線とを含む超伝導デマルチプレクサ回路である。
【0016】
図面において、同一の参照番号は類似要素または動作を識別する。図面中の要素の大きさおよび相対位置は必ずしも同縮尺では描かれていない。例えば、各種の要素の形状および角度は同縮尺では描かれておらず、これらいくつかの要素は図面が見易いように任意に拡大されて配置される。更に、描かれた要素の特定の形状は特定の要素の実際の形状に関する何らの情報も伝達することは意図しておらず、単に図面を分かりやすくするために選択されているに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】例示的なデマルチプレクサ回路の模式図である。
【図2】例示的なデマルチプレクサ回路のサンプル動作を示す図である。
【図3】本システム、方法、および装置によるデマルチプレクサ回路に用いる個別スイッチングセルの実施形態の模式図である。
【図4】一例示的実施形態による超伝導インダクタラダー回路の模式図である。
【図5】図3の個別スイッチングセルで利用すべく設計された磁束記憶構造の実施形態の模式図である。
【図6】超伝導プロセッサの要素のプログラミングで用いるデマルチプレクサデジタル/アナログ変換システムの実施形態の模式図である。
【図7】H木構造に配置されたデマルチプレクサ回路の実施形態の模式図である。
【図8】ラッチング量子ビットを個別スイッチングセルとして実装するデマルチプレクサデジタル/アナログ変換回路の実施形態の模式図である。
【図9】単一のスイッチングセルに不具合がある例示的なデマルチプレクサ回路を示す図である。
【図10】カスケードエラーのリスクを減らす機構を含むデマルチプレクサ回路の実施形態の模式図である。
【図11】カスケードエラーのリスクを減らすべくバッファ段を含むバッファ型デマルチプレクサ回路の実施形態の模式図である。
【図12】カスケードエラーのリスクを減らすべくバッファ段を含む別のバッファ型デマルチプレクサ回路の実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の説明において、開示された各種の実施形態が完全に理解されるよう、特定の具体的詳細事項を記述している。しかし、当業者には、以下の実施形態はこれら具体的詳細事項の1個以上が無くても、あるいは他の方法、構成要素、材料等により実施可能であることが認識されよう。他の例において、実施形態の説明を無用に分かり難くすることを避けるために、量子素子、結合素子等の量子プロセッサ、およびマイクロプロセッサやドライブ回路を含む制御システムに関連付けられる公知の構造については詳述していない。本明細書および添付の請求項全体を通じて、用語「要素」および「要素群」を用いて、量子プロセッサに関連するあらゆる構造、システム、および装置、並びに関連するプログラム可能なパラメータをカプセル化する。
【0019】
以下の本明細書および請求項全体を通じて、別途文脈から必要とされない限り、用語「含む」および「含んでいる」等の変型を開放的、包含的すなわち「を含むがこれに限定されない」という意味に解釈されたい。
【0020】
本明細書全体を通じて、「一実施形態」または「ある実施形態」への言及は、当該実施形態に関連して記述されている特定の特徴、構造、または特性が少なくとも1個の実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体を通じて各種の場所に現れる「一実施形態において」または「ある実施形態において」という語句は必ずしも全てが同一の実施形態を指している訳ではない。更に、特定の特徴、構造、または特性は、任意の適当な仕方で1個以上の実施形態に組み込まれてもよい。
【0021】
本明細書および添付の請求項で用いられているように、単数形の冠詞「a」、「an」、および「the」は、内容が別途明示しない限り複数の指示対象を含む。また、用語「または」は一般に、内容が別途明示しない限り「および/または」を含む意味で用いられることに注意されたい。
【0022】
本明細書で提供する見出しおよび要約書は単に便宜的なものに過ぎず、実施形態の範囲または意味を解釈するものではない。
【0023】
本明細書に記述する各種の実施形態は、超伝導量子プロセッサ等の超伝導プロセッサの要素を局所的にプログラミングするスケーラブルなシステム、方法、および装置を提供する。本明細書および添付の請求項全体を通じて、用語「量子プロセッサ」は、少なくとも2個の量子ビット、および少なくとも2個の量子ビット間で情報を伝達するための少なくとも1個の素子、例えば量子ビットカプラ、を含むシステムを記述すべく用いる。量子プロセッサのいくつかの実施形態は、数十、数百、数千、または数何百万個の量子ビットおよび量子ビットカプラを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、量子プロセッサの構成要素全体が超伝導量子プロセッサチップ等の単一の構造内に含まれてもよい。他の実施形態において、量子プロセッサの構成要素は、互いに導通する複数の構造にまたがって分散されてもよい。
【0024】
上述のように、単一の量子ビットを管理する場合にも多くのパラメータの制御が必要になる。従来、この要件は、個々の量子ビットとの外部導通(すなわち、プロセッサの外部からの導通)を必要としていた。しかし、システム内の量子ビットの個数と共に全体的な処理能力が向上したため、従来型スーパーコンピュータの能力を超える高性能なプロセッサは多数の量子ビットを実装する場合がある。従って、量子プロセッサのスケーラビリティは、量子ビット制御システムのスケーラビリティに高度に依存している。この問題は、米国公開特許第2008−0215850号で対処され、超伝導量子プロセッサの要素の局所的プログラミングの概念が導入された。米国公開特許第2008−0215850号は、例えば米国公開特許2009−0082209号に記述されたデジタル/アナログ変換器を用いて超伝導デジタル/アナログ変換の実装を提案している。米国公開特許第2008−0215850号もまた、超伝導量子プロセッサの要素のプログラミングにおいて超伝導デマルチプレクサ回路を実装するという考えを導入している。超伝導デマルチプレクサ回路のいくつかの実施形態が当該技術分野において公知である(例えば、Miller et al., “A Single-Flux-Quantum Demultiplexer”, IEEE transactions on applied superconductivity, Vol. 7, Issue 2, June 1997, pp. 2690 - 2692)。しかし、本システム、方法、および装置は、超伝導量子プロセッサへの利用に適した超伝導デマルチプレクサ回路の新規な設計を提供し、いくつかの実施形態において、特に米国公開特許第2009−0082209号に提案された超伝導デジタル/アナログ変換の原理と合わせて用いるのに適している。当業者には、いくつかの実施形態において、これらの素子が全て超伝導量子プロセッサの要素と同一のチップに含まれ得ることが認識されよう。他の実施形態において、これらの素子は、超伝導量子プロセッサの要素を含むチップとは別であってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書に記述する素子はマルチチップモジュール内に含まれてもよく、その場合少なくとも1個のチップが超伝導量子プロセッサの要素を含む。
【0025】
当該技術分野で公知のように、デマルチプレクサ(または「demux」)は、入力信号を受け取り、これを複数の出力経路のうち選択された1個に向ける電子素子である。これは典型的に、各セルが第1の信号入力線と、第1および第2の信号出力線を有するスイッチングセルの組により実現される。動作時において、セルは自身の第1の信号入力線を介して入力信号を受信して、当該信号を自身の第1または第2の信号出力線に制御可能にルーティングできる。そのような複数のセルが、2分木に似た一組の段として配置されてもよく、各々の連続する段のセルの個数は一般に前段の2倍(すなわち、第(i+1)段のセルの個数は、第i段のセルの個数の2倍)である。
【0026】
本明細書全体を通じて、素子のレイアウトまたは配置を「段」または「複数段」を有すると表現する場合がある。当業者には、これらの用語が単に図示目的だけに用いられていて、本明細書に記述する各種の実施形態のレイアウトおよび配置を限定することを意図していないことが認識されよう。当業者には、回路レイアウトが任意の空間設計に対応すべく適合できることが認識されよう。
【実施例】
【0027】
図1は、例示的なdemux回路100の模式図である。demux100は、4個の段131〜134に配置された15個のほぼ類似した個別スイッチングセル101(図では1個のみ示す)を含む。第1段131は1個のセル101を含み、各々の連続する段のセルの個数は前段の2倍である。例えば、段132は2個のセルを含み、段133は4個のセルを含む。当業者には、demuxが、実装されている特定のシステムの要件を満たすべく任意の個数の段および任意の個数の個別スイッチングセルを含んでいてもよいことが認識されよう。
【0028】
図面が煩雑にならないよう、またdemux100内の15個のスイッチングセルの各々がセル101とほぼ類似しているため、図1には1個の個別スイッチングセル101のみを示す。従って、以下のセル101の記述は全て、demux100の他の14個のセル(各々三角形で表されている)に適用できる。
【0029】
上述のように、スイッチングセル101は、1個の信号入力線111および2個の信号出力線121、122を含む。各スイッチングセル101はまた、出力線121、122の一方を選択するための制御信号を搬送する制御線(図示せず)を含んでいてもよい。demux100の動作において、スイッチングセル101を用いて入力信号を入力線111から出力線121または出力線122のいずれかへ選択的にルーティングする。本明細書および添付の請求項全体を通じて、用語「リードスイッチングセル」を用いてdemux回路内の入力信号源に接続すべく構成された第1のスイッチングセルを指す。例えば、demux100の第1の段131の単一スイッチングセル101を「リードスイッチングセル」と呼ぶ。段131内のリードスイッチングセル101から段132内の特定のセルに信号をルーティングし、そこから段133内の特定のセルへルーティングすることができ、以下同様である。demux回路、例えばdemux100の目的は、単一の入力信号線から複数の出力経路の任意の1個へ入力信号をルーティングすることである。いくつかの用途において、複数の出力経路は、各々のプログラム可能な素子、または少なくとも1個の素子の各々のプログラム可能な部分で終端してもよい。本システム、方法、および装置によれば、超伝導プロセッサ)のプログラム可能な素子に信号をルーティングするのに特に適したdemux回路の変型例、例えば超伝導量子プロセッサについて記述する。
【0030】
本明細書および添付の請求項全体を通じて、用語「プログラム可能な素子」および「プログラム可能な素子群」を用いて、プログラミングが望まれる量子プロセッサの各種の要素の任意のものを記述している。プログラム可能な素子の例として、量子ビット、量子ビットカプラ、量子ビットおよび量子ビットカプラの特定の構成要素等が含まれる。例えば、超伝導磁束量子ビットは、2個の構成要素すなわち量子ビットループおよび複合ジョセフソン接合を含んでもよく、各々の個別データ信号はこれら構成要素の各々にプログラミングすることができる。
【0031】
図2は、例示的なdemux回路200のサンプル動作を示す図である。demux200は、図1のdemux100とほぼ類似しており、15個の個別スイッチングセル(201〜204、但し図では4個のみ示す)を含んでいて各々が2個の出力経路の一方に沿って選択的に入力信号をルーティングすべく用いられる。本例では、入力信号はdemux200を介して段234内のセル204にルーティングされる。この例示的な動作で入力信号に遭遇するこれらのセル(201〜204)を図2に黒色で示す。入力信号は入力信号線211を通ってdemux200に入り、ここで信号は段231内のリードスイッチングセル201に送られる。リードスイッチングセル201を用いて入力信号を段232内のセル202に選択的にルーティングし、信号は次いで段233内のセル203へ選択的にルーティングされる。信号はセル203から段234のセル204へ選択的にルーティングされる。同様に、demux200を用いて段231内のリードスイッチングセル201から、段234内の任意のセルに入力信号をルーティングすることができる。demux200等の典型的なdemux回路においてセル出力の単一且つ一意な組合せにより最下段(234)の各セルに到達する。demuxの最下段(234)から入力信号をプログラム可能な素子に与えることができる。本システム、方法、および装置によれば、そのようなプログラム可能な素子は、超伝導量子プロセッサの要素を含んでいてもよい。
【0032】
demux回路の概念は当該技術分野で公知であるが、本システム、方法、および装置は、特に超伝導量子プロセッサの用途に適した新規のdemux回路を記述する。この新規なdemux回路は、基本スイッチングセルとして用いられる新規の素子を含む。この素子は、磁束バイアス線に誘導結合するジョセフソン伝送線(「JTL」)スプリッタおよびスイッチを組み込む単一の磁束量子(「SFQ」)素子である。
【0033】
図3は、本システム(方法と装置)によるdemux回路に用いる個別スイッチングセル300の実施形態の模式図である。例えば、セル300は図1のdemux100内の15個のスイッチングセル101の各々として用いることができる。スイッチングセル300は、入力信号線311および2個の出力信号経路321、322を含む複数の超伝導電流経路を含む。当業者には、これらの超伝導電流経路が臨界温度未満で超伝導性を示すニオブまたはアルミニウム等の材料で製造できることが認識されよう。図3に示すように、出力321と322の間を導通させる超伝導電流経路はJTLとほぼ類似しており、本明細書ではJTL350と呼ぶ。JTL350は、図3においてトランス341、342で表す少なくとも2箇所で磁束バイアス線331に誘導結合する。入力信号経路311は、入力信号が入力311から出力321へ、または入力311から出力322へのいずれに進むかに磁束バイアス線331が影響を及ぼすように、トランス341、342の間のある位置でJTL350と交差している。
【0034】
図3に示すように、スイッチングセル300はまた、5個の電源入力ノード351〜355を含む。このうち4個の電源入力ノード351〜354はJTL350に電力を供給すべく構成され、1個の電源入力ノード355は入力信号経路311に電力を供給すべく構成される。しかし、当業者には、スイッチングセル300の代替的な実施形態において異なる個数および/または異なる配置の電源入力ノードを用いてもよいことが認識されよう。
【0035】
JTLの動作は当該技術分野においてよく理解されている。この素子は通常、2点間でSFQ信号を伝達すべく用いられ、伝播には一般に少なくとも1個の磁束量子の再生成が含まれる。JTL350はセル300においてこのように利用される。セル300の動作において、入力信号が入力信号経路311からスイッチングセル300に入ることにより、ジョセフソン接合361に出力パルスを発生させる。この信号はJTL350内の交差ノード371に伝播し、そこで入力信号が分割されて、入力信号の少なくとも一部が出力321の方向(図3では左)に進み、入力信号の少なくとも一部が出力322の方向(図3では右)に進む。出力321の方向に進む入力信号の部分は、それだけではジョセフソン接合362をスイッチングさせるには不十分である。同様に、出力322の方向に進む入力信号の部分は、それだけではジョセフソン接合363をスイッチングさせるには不十分である。しかし、磁束バイアス線331に電流が通された場合、各々の磁束信号が磁束バイアス線331からトランス341、342を通ってJTL350に誘導結合される。磁束バイアス線331を用いて、JTL350に追加的な電流を結合することにより、入力信号が伝播する方向に影響を及ぼすことができる。従って、磁束バイアス線331は、スイッチングセル300への制御線または入力として機能する。例えば、図3の右側へ(すなわち、スイッチングセル300の出力322の方へ)進む電流により磁束バイアス線331が起動された場合、トランス342における磁束バイアス線331、JTL350間の誘導結合が、トランス342においてJTL350の左側へ進む電流を誘導する。この誘導電流は、ジョセフソン接合363を介してルーティングされた入力信号の部分に追加され、ジョセフソン接合363のスイッチングを生じさせる。これが生じたならば、ジョセフソン接合363、364の間におけるJTL350の部分382の全電流は、ジョセフソン接合364をスイッチングさせて、出力322でスイッチングセル300から出る出力パルスを生じるのに十分大きい。
【0036】
この同じ例では、スイッチングセル300のもう一方の端(すなわち、出力端321)において、トランス341における磁束バイアス線331とJTL350の間の誘導結合が、トランス341においてJTL350の左側へ進む電流を誘導する。この誘導電流は、ジョセフソン接合362を介してルーティングされた入力信号の部分から減少しており、従ってジョセフソン接合362はスイッチングしない。磁束バイアス線331が右側(図3の方位に関して)への電流を搬送する場合、出力321の方向に進む入力信号の部分は出力321まで伝播せず、代わりにジョセフソン接合391がスイッチングして単一の磁束量子を放出する。
【0037】
上述のものと同様の機構により、スイッチングセル300はまた、磁束バイアス線331を通る左側(すなわち、図3の出力321の方)への電流を印加することにより、入力311から出力321に入力信号をルーティングすべく用いることができる。従って、磁束バイアス線331を通る電流(例えば、正または負電流)の方向を用いて、入力信号を入力311から出力321または出力322のいずれかへ選択的にルーティングすることができる。いくつかの実施形態において、磁束バイアス線331における第1の方向の電流によりスイッチングセル300が入力311から出力321に入力信号をルーティングすることが可能になり、磁束バイアス線331の第2の方向の電流によりスイッチングセル300が入力311から出力322に入力信号をルーティングすることが可能になる。
【0038】
SFQ回路において正および負の供給電流を印加することは、当該技術分野においてテスト目的で見られてきた。本システム、方法、および装置において、本システムの機能特徴として正および負の供給電流を印加するSFQ回路の実施形態について記述されている。更に、本明細書に記述する各種の実施形態は、入力311を通る正または負の入力信号と共に、電源入力ノード351〜355を通る正または負の電力を用いて、スイッチングセル300を通る正または負の磁束量子を与えることができる。
【0039】
本システム、方法、および装置によれば、図1のdemux100と同様のdemux回路を形成すべく複数の個別スイッチングセル構造300を配置することができる。図1の2分木型の配置は、各スイッチングセル300の2個の出力の各々を、他の2個のスイッチングセル300の入力の各々に接続することにより実現できる。従って、複数のスイッチングセル300を段の組に配置することができ、第(i+1)段のスイッチングセルの個数は第i段のセルの個数の2倍である。更に、必要な磁束バイアス線の個数がdemuxの段の個数に等しくなるように、同じ段の全てのスイッチングセル300を同じ磁束バイアス線331に結合することができる。このように、動作用の制御線が極めて少なくて済むため、複数のスイッチングセル300を相互接続して高度にスケーラブルな完全demux回路を実現することができる。このようなdemuxは、超伝導量子プロセッサでの利用に適している。
【0040】
代替的な実施形態において、各々異なる段に配置された少なくとも2個のスイッチングセルの両方を同じ磁束バイアス線に結合してもよい。当業者には、信号の一意な組合せにより各セルが制御される複数のセルを提供すべく多くの代替的な幾何および/または結合配置を実装できることが認識されよう。
【0041】
本システム、方法、および装置のいくつかの実施形態において、demux回路を用いて、超伝導量子プロセッサの要素へ局所的に制御信号をルーティングすることができる。demux回路の主な利点は、N個の要素をプログラムするのに必要な線の個数が、logN個の磁束バイアス線331に加えて1個の入力線で済むことである。demux回路によりルーティングされる信号は、信号の大きさに関してほとんどまたは全く情報が無い状態で各信号が事実上「オン」か「オフ」である点で本質的にデジタルである。いくつかの実施形態において、信号を超伝導量子プロセッサの要素に結合する前に、demux回路内のデジタル出力をアナログの形式に変換することが望ましいだろう。このデジタル/アナログ変換は、例えば超伝導インダクタラダー回路を使用して実現でき、その完全な詳細は米国公開特許第2009−0082209号に記述されている。この素子の要約を以下に与える。
【0042】
古典的電気回路において、デジタル/アナログ変換を実現する一般的な方法は、「抵抗器ラダー」または「R−2Rラダー」として知られる回路を用いるものである。そのような回路は「分圧器」の原理に依存しており、当該技術分野で良く確立されている。超伝導インダクタラダー回路は、古典的抵抗器ラダーの超伝導的等価物である。超伝導インダクタラダー回路(「ラダー」)は、マルチビットデジタル信号を受信し、マルチビットデジタル信号の個別ビットをアナログ信号に結合して、当該アナログ信号を例えば少なくとも1個のプログラム可能な素子に与えることにより機能する。ラダーは、磁束量子の形式で信号を受信および管理することができる。
【0043】
図4は、一例示的実施形態によるラダー400の模式図である。図示するように、ラダー400は並列に接続された4個の超伝導ループ401〜404(破線ボックスで示す)を含む。Nビットのデジタル信号がラダー400にロードされ、超伝導ループ401〜404の各々がNビットの各1個を受信する。例えば、ラダー400は4ビットのデジタル信号を受信することができる。古典的電気回路において、このようなデジタルビットを電圧により表すことができる。しかし、超伝導回路では、このようなデジタルビットを磁束量子により表すことができる。従って、古典的抵抗器ラダーは、電圧分割回路を実装できるが、ラダー400は磁束分割回路の形式で超伝導的等価物を実装する。
【0044】
動作時において、4ビットのデジタル信号の個別ビットは各々超伝導ループ401〜404の各1個に入れられる。しかし、超伝導ループ401〜404は並列に接続されるため、個別のビット信号は結果的に隣接する超伝導ループ間で共有される。この信号共有において、所与の超伝導ループ401〜404内に含まれる磁束の一部だけが隣接する超伝導ループに与えられる。例えば、超伝導ループ401は、4ビットのデジタル信号から単一デジタルビットの代表として1個の完全な磁束量子を受け取ることができる。超伝導ループ401はまた、同じ4ビットのデジタル信号の他のビットから超伝導ループ402〜404に分散された磁束量子の部分を受け取ることができる。このように、4ビットのデジタル信号を構成する離散的磁束量子がラダー400の超伝導ループ401内の1個のアナログ信号に結合され、そこから例えばプログラム可能な素子430に与えられる。
【0045】
図4に示すように、ラダー400内の各超伝導ループ401〜404は、直列結合された、すなわち「縦方向」超伝導インダクタL(411〜414)および並列結合された、すなわち「横方向」超伝導インダクタL(421〜424)を含む。超伝導ループ401〜404間での信号共有の程度はこれらのインダクタンスの大きさに支配されている。具体的には、各種の連続すなわち縦方向超伝導インダクタ411〜414と、並列すなわち横方向超伝導インダクタ421〜424の大きさの比率は、超伝導ループ401〜404の間でデータ信号が受け渡される仕方に影響する。この比率に基づく信号分散は、古典的抵抗器ラダー回路全体にわたり、いくつかの点で非超伝導データ信号の良く理解されている受け渡しと同様に実現することができる。
【0046】
本システム、方法、および装置によれば、超伝導デマルチプレクサ回路は、超伝導インダクタラダー回路にデジタル信号を与えるべく適合させることができる。いくつかの実施形態において、demux回路内の最終(または最下)段の個別スイッチングセルからのデジタル磁束信号を保存して、これらの信号を超伝導インダクタラダー回路内の少なくとも1個の超伝導ループに結合すべく構成された少なくとも1個の磁束記憶構造によりこれは実現される。本システム、方法、および装置は、図3の個別スイッチングセル300での利用に特に良く適合された磁束記憶構造を記述する。
【0047】
図5は、図3の個別スイッチングセル300で利用すべく設計された磁束記憶構造500の実施形態の模式図である。磁束記憶構造500は、個別スイッチングセル300の出力(すなわち321または322)に接続する入力511を含む。磁束記憶構造500の入力511は、セル300の出力321、322のいずれかにおけるJTL350の拡張であるJTL550から始まる。磁束記憶構造500は、複合ジョセフソン接合520により遮断され、より大きいインダクタ541で終端する短いJTL550と見なすことができる。いくつかの実施形態において、インダクタ541は超伝導性を示す。JTL550は、入力511で入力信号が受信された際に出力パルスを放出する少なくとも1個のジョセフソン接合561を含む。ジョセフソン接合561により放出される出力パルスは、少なくとも1個または複数の磁束量子を保持すべく十分に大きいインダクタ541に保存される。このように、入力511における複数の入力信号は各々ジョセフソン接合561からの各出力パルスを生成して、これらのパルスの全てを組み合わせてインダクタ541に保存することができる。インダクタ541に保存された磁束は、リセット線571を起動させることにより制御可能に「リセット」または「消去」することができる。選択的にリセット線571を通過する電流は、複合ジョセフソン接合520に結合することにより、ジョセフソン接合562、563の両方をスイッチングさせて(複合ジョセフソン接合520を形成する超伝導ループが全磁束量子を保持するにはインダクタンスが不十分なため、両方のジョセフソン接合はスイッチングする)、出力パルスを放出させる。従って、インダクタ541に保存された磁束は、リセット線571を用いる1個以上のステップの適用によりリセット/消去することができる。いくつかの実施形態において、インダクタ541は、超伝導インダクタラダー回路400の超伝導ループ(例えば、ループ401〜404のいずれか)である超伝導ループ530に誘導結合できる。
【0048】
本明細書全体を通じて、特定のデータ信号を表すべく用語「ビット」を頻繁に用いる。従来、用語「ビット」は、1単位の情報(例えば、1または0)で表現される「2進数」を意味する。本システム、方法、および装置で受け渡しするデータ信号は複数単位の情報(例えば、複数の磁束量子)で表現することができ、2進状態に限定されない。本システム、方法、および装置において、用語「ビット」は比喩的な便宜のためだけに用いる。
【0049】
本システム、方法、および装置のいくつかの実施形態において、複数のスイッチングセル300を含むdemux100は、ラダー400等の少なくとも1個のデジタル/アナログ変換器と導通すべく構成された複数の磁束記憶構造500で終端してもよい。このように、demux回路により実現可能な対数アドレス指定を用いて超伝導量子プロセッサの要素にマルチビット制御信号を提供することができる。図6は、超伝導量子プロセッサ等の超伝導プロセッサの要素をプログラミングに利用するdemuxデジタル/アナログ変換(「DAC」)システム600の実施形態の模式図である。demux−DACシステム600は、demux回路(破線ボックスにより境界を定める)610に入力する入力信号線601を含む。demux回路610は、15個の個別スイッチングセル611(図では1個のみ示す)を含み、各スイッチングセル611は図3のスイッチングセル300にほぼ類似している。15個のスイッチングセル611は2分木を形成すべく4個の段631〜634に配置されるが、当業者には任意の個数のスイッチングセルを各種の配置のいずれかで実装してもよいことが認識されよう。スイッチングセル611の幾何的配置によらず、各スイッチングセル611は2個の出力信号線621、622、および1個の入力信号線601を有する。demux回路610において、段631内のリードスイッチングセルの2個の出力信号線621、622は各々段632内の各スイッチングセルの入力信号線に直接入力し、段632内の各スイッチングセルの2個の出力信号線は各々段633内の各スイッチングセルの入力信号線に直接入力し、段633内の各スイッチングセルの2個の出力信号線は各々段634内の各スイッチングセルの入力信号線に直接入力する。
【0050】
demux回路610は、デジタル磁束信号を図4のラダー400等の少なくとも1個のデジタル/アナログ変換器に結合すべく構成される。このため、段634の各スイッチングセルの2個の出力は各々段635内の各磁束記憶構造641(図では1個のみ示す)の入力に直接結合している。段635は16個の磁束記憶構造641を含むが、当業者には他の実施形態で任意の個数の磁束記憶構造を用いてもよいことが認識されよう。いくつかの実施形態において、磁束記憶構造641の個数は、demux回路610の最後から2番目の段634内のスイッチングセル611の個数の約2倍に等しい。demux回路610において、各磁束記憶構造641は図5の磁束記憶構造500にほぼ類似している。demux−DACシステム600はまた、2個の超伝導インダクタラダー回路651、652を含み、各磁束記憶構造641はラダー651、652のうち少なくとも各1個の超伝導ループに誘導結合する。
【0051】
demux−DACシステム600は2個のラダー651、652を含み、その各々が8個の超伝導ループを含む。しかし、当業者には任意の個数のラダーを同様に用いてもよく、またラダーが任意の個数の超伝導ループを含んでいてもよいことが認識されよう。例えば、demux−DACシステム600の代替的な実施形態は4個のラダーを含み、その各々が4個の超伝導ループを含み、各ループが各磁束記憶構造641に誘導結合してもよい。設計の柔軟性を例示する代替的な実施形態として、demux−DACシステム600は、3個の超伝導ループを有する1個のラダー、7個の超伝導ループを有する1個のラダーに結合された7個の磁束記憶構造641、5個の超伝導ループを有する1個のラダーに結合された5個の磁束記憶構造641、および単一の超伝導ループに結合された単一の磁束記憶構造641に結合された3個の磁束記憶構造641を含んでいてもよい。demux−DACシステム600内の各々のラダー651、652は、超伝導量子プロセッサの要素等の少なくとも1個のプログラム可能な素子661、662にアナログ信号を結合することができる。いくつかの実施形態において、複数のラダーが同一のプログラム可能な素子に結合することができる。いくつかの実施形態において、単一のラダーが複数のプログラム可能な素子に結合することができる。
【0052】
動作時において、demux−DACシステム600の段631内のリードスイッチングセル611から段635内の特定の磁束記憶構造641への入力信号のルーティングに対応する任意の特定の経路が、複合ジョセフソン接合520を通って大型インダクタ541で終端する連続的なJTLを実質的に実現する。demux−DACシステム600は従って、複数の電源入力ノード(例えば、図3のセル300位の電源入力ノード351〜355)を含む。いくつかの実施形態において、これらの電源入力ノードは全て、同一の電源入力線(図示せず)に接続されてもよい。他の実施形態において、電源入力ノードへの電源の結合は、複数の電源入力線(図示せず)にわたり分散されてもよい。この連続的なJTLを通る特定のルーティングは、各段631〜634(図6に示さず)のスイッチングセル611に結合する磁束バイアス線(例えば、磁束バイアス線331)により決定される。従って、demux−DACシステム600を通って一組のデジタル磁束量子をルーティングして、demux回路610の最下段635内の磁束記憶構造641の大型インダクタ541に保存することができる。これらのデジタル磁束信号は少なくとも1個のラダー651、652に結合されて、超伝導量子プロセッサの要素等のプログラム可能な素子に結合されるアナログ信号を形成することができる。保存された磁束は次いで、各磁束記憶構造641の複合ジョセフソン接合520に結合されたリセット線571により、または回路を通る負の磁束量子をルーティングすることによりリセット(または消去)することができる。
【0053】
demux−DACシステム600の制御線の個数には、demux回路610内の段の個数に単一の入力信号線601を加えた数を含む。段631〜634の各々は各磁束バイアス線(例えば、磁束バイアス線331)を含み、段635はリセット線(例えば、リセット線571)を含む。しかし、いくつかの実施形態において、より多くの制御線に対応することができ、その場合、必要に応じて別々の制御線を用いてスイッチングセル611に磁束バイアス、および磁束記憶構造641にリセット線を提供することができる。当業者には、入力信号線601からの変調された入力信号を、各々の段631〜634への各々の変調された磁束バイアス信号と同期させて、デジタル磁束量子の任意の組合せまたは順列を磁束記憶構造641およびいくつかの実施形態ではラダー651、652に迅速にロードできることが認識されよう。
【0054】
当業者には、demux回路および/またはdemux−DACシステムの実際のレイアウトが図1、2および6に示すレイアウトとは異なり得ることが認識されよう。これらの図で使用するレイアウトは図示目的に過ぎず、実際のレイアウトは広範囲にわたる仕様に対応すべく適合される場合がある。例えば、いくつかの実施形態で、demux回路(従ってdemux−DACシステム)は「H木」レイアウトに配置されてもよい。図7は、H木レイアウトに構成されたdemux回路700の実施形態の模式図である。図7において、各々の個別スイッチングセル701(図では1個のみ示す)を円で表し、各磁束記憶構造711(図では1個のみ示す)を正方形で表している。このように、demux回路700は、15個のスイッチングセル701および16個の磁束記憶構造711を含む。いくつかの実施形態において、磁束記憶構造711は、図6のdemux−DACシステム600に示すものと同様のラダー回路(例えば、ラダー400)に結合されてもよい。H木レイアウトは、図1、2に示す段のレイアウトと同様の2分木型配置を実現する。すなわち、H木レイアウトの各スイッチングセル701は、2個の出力チャネルに分岐する第1の入力チャネルを有する。当業者には、他の任意の装置と同様に、demux回路700のH木レイアウトが任意の個数のスイッチングセル701および磁束記憶構造711に対応すべく適合できることが認識されよう。
【0055】
本明細書に記述するJTLに基づくdemux回路の実施形態は特に多くの用途に有用であるが、本システム、方法、および装置はまた、DC電源入力が必要とされないdemux回路の実施形態の代替的な組を記述する。この第2の組におけるdemux回路内の実施形態を本明細書で「ラッチング量子ビット」と呼ぶ量子磁束パラメトロン型素子に基づいている。ラッチング量子ビットの構造および動作の完全な詳細は米国特許出願第12/109,847号に開示されている。これらの素子の概要を以下に述べる。
【0056】
いくつかの実施形態において、ラッチング量子ビットは、超電導材料のループにより形成された量子ビットループおよび当該量子ビットループを遮断する複合ジョセフソン接合(「CJJ」)を含んでいてもよく、CJJは少なくとも2個のジョセフソン接合により遮断される超電導材料のループにより形成される。古典的電気回路におけるラッチングの概念は当該技術分野で公知である。本明細書および添付の請求項全体を通じて、超伝導信号を「ラッチ」するとは、瞬時信号をロードして、ソース信号内における摂動および発展にかかわらず瞬時信号を保持し、ラッチングが緩和されるまで瞬時信号を連続的に出力する処理を指す。ラッチング量子ビットのラッチング動作は、ラッチング量子ビットのCJJに誘導結合されたクロック信号により制御される。いくつかの実施形態において、クロック信号がパルスを発生する都度、ラッチング量子ビットは、ラッチング量子ビットの量子ビットループに誘導結合された入力信号をロードして、当該瞬時信号を保持し、クロックパルスが持続する間、出力(例えば、ラッチング量子ビットの量子ビットループに誘導結合する別の素子)へ送信する。
【0057】
当業者には、本明細書において用語「ラッチング量子ビット」を用いて、米国特許出願第12/109,847号に紹介されたような基本回路要素または論理素子として実装できる量子磁束パラメトロン型素子を記述していることが認識されよう。ラッチング量子ビットは、一般には量子2進数として演算されないにもかかわらず、構造の点で超伝導磁束量子ビットと同様であってよい。
【0058】
本システム、方法、および装置は、ラッチング量子ビットを基本スイッチングセル(例えば、セル101)として使用するdemux回路(図1のdemux100と同様)の実施形態を記述する。図8は、個別スイッチングセルとしてラッチング量子ビット801〜807を実装するdemux−DAC回路800の実施形態の模式図である。各ラッチング量子ビット801〜807は、超電導材料のループにより形成された量子ビットループ810(図では1個のみ示す)および当該量子ビットループを遮断するCJJ820(図では1個のみ示す)を含み、CJJは少なくとも2個のジョセフソン接合(図の各×印で表す)により遮断される超電導材料のループにより形成される。demux−DAC800は、図1のdemux100と同様の2分木を形成すべく3段に配置された7個のラッチング量子ビット801〜807を含む。しかし、当業者には、任意の個数のラッチング量子ビットが、図7に示すH木レイアウトを含む各種の広範なレイアウトで同様に使用できることが認識されよう。
【0059】
本明細書および添付の請求項全体を通じて、用語「リードラッチング量子ビット」は、ラッチング量子ビットを含むdemux回路内の入力信号源に結合すべく構成された第1のラッチング量子ビットを指す。
【0060】
図に示す実施形態において、リードラッチング量子ビット801の量子ビットループ810は信号入力線830に誘導結合され、リードラッチング量子ビット801のCJJ820はクロック入力線840に誘導結合される。クロック信号をCJJ820に誘導結合すべくクロック入力線840を用いることにより、リードラッチング量子ビット801は、入力信号線830を通って量子ビットループ810に適用された入力信号を制御可能にラッチできる。リードラッチング量子ビット801は、各々demux−DAC800の第2段における各々ラッチング量子ビット802、803への誘導結合871、872(図8の斜め破線で表す)により実現される2個の有効出力(図1のdemux100の出力121、122と概念的に同様)を有する。リードラッチング量子ビット801によりラッチされる入力信号は従って、図8左側ラッチング量子ビット802および/または図8右側ラッチング量子ビット803にルーティングすることができる。ラッチング量子ビット802(demux−DAC800の第2段の「左側」のラッチング量子ビット)のCJJは第1のクロック信号線851に誘導結合する。同様に、ラッチング量子ビット803(demux−DAC800の第2段の「右側」のラッチング量子ビット)のCJJは第2のクロック信号線861に誘導結合する。第1のクロック信号線851および第2のクロック信号線861(図では右側へのルーティング)を用いて、リードラッチング量子ビット801からの入力信号を左側ラッチング量子ビット802および右側ラッチング量子ビット803に各々選択的にルーティングする。更に、demux−DAC800の第2段の両方のラッチング量子ビット802、803の量子ビットループが同一の制御線831に誘導結合される。いくつかの実施形態において、制御線831は、ラッチング量子ビット801から左側ラッチング量子ビット802および/または右側ラッチング量子ビット803にラッチングされる信号とは逆符号且つより小さい制御信号により起動されてよい。いくつかの実施形態において、ラッチング量子ビット(例えば、図8の制御信号線831)を含むdemux回路の第2段の制御信号線が除外されてもよい。
【0061】
入力信号線830に入力信号が印加されたならば、クロック信号線840を介して印加されるクロック信号を適宜変化させることにより、リードラッチング量子ビット801により当該入力信号を選択的にラッチできる。いくつかの実施形態において、クロック線840内のクロック信号が高レベルである間、リードラッチング量子ビット801が入力線830からの入力信号を「遮断する」(すなわち送信しない)。そのような実施形態では、クロック線840のクロック信号が低下したならば入力線830からの入力信号がリードラッチング量子ビット801によりラッチされる。入力信号がリードラッチング量子ビット801によりラッチされたならば、次いでdemux−DAC800の第2段のラッチング量子ビット802、803のうち少なくとも1個に送信できる。しかし、リードラッチング量子ビット801の動作と同様に、ラッチング量子ビット802、803は各々この信号をラッチ/送信のいずれか、または信号の送信を遮断する。特定のラッチング量子ビットにより信号をラッチ/送信または遮断するか否かは、特定のラッチング量子ビットのCJJに結合されるクロック信号により制御される。従って、第1のクロック信号線851(図の左側)を用いて、リードラッチング量子ビット801からの入力信号を左側ラッチング量子ビット802にラッチ/送信し、第2のクロック信号線861(図の右側)を用いてリードラッチング量子ビット801からの入力信号を右側ラッチング量子ビット803にラッチ/送信することができる。
【0062】
demux−DAC800の第2段の左側ラッチング量子ビット802から、左側ラッチング量子ビット804および/または右側ラッチング量子ビット805により入力信号をdemux−DAC800の第3段にラッチできる。同様に、demux−DAC800の第2段の右側ラッチング量子ビット803から、左側ラッチング量子ビット806および/または右側ラッチング量子ビット807により入力信号をdemux−DAC800の第3段にラッチできる。一般にdemux回路により提供される対数アドレス指定を利用するには、demux−DAC800の同一段にある全ての左側ラッチング量子ビットを第3のクロック信号線(図の左側)に結合し、demux−DAC800の同一段にある全ての右側ラッチング量子ビットを第4のクロック信号線(図の右側)に結合することができる。例えば、左側ラッチング量子ビット804、806の両方が第3のクロック信号線852(図の左側)に結合され、右側ラッチング量子ビット805、807の両方が第4のクロック信号線862(図の右側)に結合される。一例として、第1のクロック信号線851および第4のクロック信号線862を用いてラッチング量子ビット802、805の各々においてラッチングを生起させることにより、入力信号をリードラッチング量子ビット801からラッチング量子ビット805にルーティングすることができる。図8に例示する実施形態において、第1のクロック信号線851および第3のクロック信号線852の両方を用いて入力信号を左側方向へルーティングする。従って、本明細書の残りおよび添付の請求項全体を通じて、第1のクロック信号線851および第3のクロック信号線852は、同じ第1のクロック信号線の組に含まれると言われる。同様に、第2のクロック信号線861および第4のクロック信号線862の両方を用いて入力信号を右側方向にルーティングする。従って、本明細書の残りおよび添付の請求項全体を通じて、第2のクロック信号線861および第4のクロック信号線862は、同じ第2のクロック信号の組に含まれると言われる。
【0063】
ラッチング量子ビットは、ラッチング動作が生起された際に正または負の信号のいずれかがラッチされるように振舞う。いくつかの実施形態において、ラッチされた信号の大きさは、ラッチング量子ビット自身の特性であって、一般に入力信号の符号または大きさによらず所与のラッチング量子ビット(または素子パラメータの所与の組合せ)に対して同一であってよい。ラッチング量子ビットの「状態」は従って、正、ゼロ、または負であると一般化できる。ラッチング動作を生起させる行為は、それが「認識する」大多数の入力信号が正または負かに応じて、ラッチング量子ビットを正または負の状態にラッチさせることができる。ラッチング動作が生起された際に入力信号が存在しない場合、ラッチング量子ビットは依然として正または負の状態にラッチできる。これは、特定のルーティング経路には含まれないが当該特定ルーティング経路に含まれるラッチング量子ビットとクロック信号線を共有するラッチング量子ビットは依然として、自身のラッチング機構が共有クロック信号線のクロック信号により起動され得ることを意味する。例えば、上述のようにリードラッチング量子ビット801からラッチング量子ビット805への入力信号のルーティングにおいて、クロック信号線862(第2のクロック信号線の組からの)を用いてラッチング量子ビット805内でラッチング動作を生起させる。しかし、クロック信号線862はまたラッチング量子ビット807に誘導結合されており、従ってラッチング量子ビット807内でラッチング動作が同時に生起される。この例では、ラッチング量子ビット803においてラッチされる入力信号は存在せず、従ってラッチング量子ビット807には、自身のラッチング動作がクロック信号線862により生起された際に認識する入力信号が存在しない。ラッチング量子ビット807においてラッチング動作が生起されたならば、たとえラッチング量子ビット803からラッチング量子ビット807に結合している入力信号が存在しなくても、正または負の信号がラッチされる。このため、demux−DAC800の第2および第3段で制御線831、832を用いて制御信号をラッチング量子ビット802〜803および804〜807の各々に結合する。いくつかの実施形態において、制御信号の大きさは入力信号とは逆符号且つラッチング量子ビットによりラッチされた信号より小さくてもよい。
【0064】
制御線831、832は各々、それらのラッチング動作が共有クロック信号線により生起された際に特定のルーティング経路に含まれないラッチング量子ビットによりラッチできる既知符号の小さい信号を提供することができる。いくつかの実施形態において、この既知符号は入力信号の符号とは逆である。上述したリードラッチング量子ビット801からラッチング量子ビット805への例示的なルーティング経路において、入力信号は第1の符号(例えば正)であってよい。この入力信号は、クロック信号線851の制御に従い(第1のクロック信号線の組から)ラッチング量子ビット802によりラッチできる。ラッチング量子ビット802内のラッチされた信号は次いでクロック信号線862の制御に従いラッチング量子ビット805によりラッチできる。この第2のラッチング動作の間、ラッチング量子ビット805、807はdemux−DAC800の同一段の2個の右側ラッチング量子ビットであり、従って本実施形態では同じラッチングクロック信号線862に結合されるため、ラッチング量子ビット807内で同時にラッチング動作が生起される。いくつかの実施形態において、入力信号とは逆符号である第2の符号(例えば負)の制御信号を制御線832に印加することができる。この制御信号は、demux−DAC800の第3段の各ラッチング量子ビット804〜807に結合され、たとえ特定のルーティング経路(例えばラッチング量子ビット807)内に存在しなくてもラッチング動作が生起されるラッチング量子ビットによりラッチされる既知信号を出力する。従って、ラッチング量子ビット807は、ラッチング量子ビット805がラッチング量子ビット802から大きさBを有する信号をラッチした際に、大きさAを有する制御信号を制御線832からラッチする。本実施形態において、制御信号が特定のルーティング経路(例えばラッチング量子ビット805)にあるラッチング量子ビットにも認識されるため、A<Bが好適である。ラッチング量子ビット802により出力される信号の大きさ(B)は制御線832からの制御信号の大きさ(A)より大きいため、ラッチング量子ビット805により最終的にラッチされる信号はラッチング量子ビット802による出力と同符号である。従って、ラッチング量子ビット805が大きさBの正信号をラッチし、制御線832が大きさAの負信号をラッチング量子ビット805、807に結合したならば(ここに|A|<|B|)、クロック信号線862を用いてdemux−DAC800の第3段で右側へのルーティングを生起させることで、ラッチング量子ビット805に大きさがラッチング量子ビット805のパラメータに依存する正信号をラッチさせることができ(B−A>0であるためラッチング量子ビット805は正入力を「認識する」)、一方、ラッチング量子ビット807は大きさがラッチング量子ビット807のパラメータに依存する負信号を同時にラッチする(ラッチング量子ビット807は負入力(A)だけを「認識する」)。いくつかの実施形態において、ラッチング量子ビット(例えば、demux−DAC800)に基づくdemux回路内の制御線の全てまたは一部(例えば、制御線831、832)は互いに直列に結合されてもよい。
【0065】
demux−DAC800のいくつかの実施形態において、第1の符号(例えば正)の入力信号を、ラッチング量子ビットの2分木型ネットワークを通ってネットワークの最下段の特定のラッチング量子ビットの方向へルーティングできる。いくつかの実施形態において、第2の符号(例えば負)の制御信号をラッチング量子ビットの2分木型ネットワークを通って同時にルーティングさせ、ネットワークの最下段の少なくとも1個のラッチング量子ビット、およびいくつかの例では複数のラッチング量子ビットに分散させることができる。
【0066】
demux−DAC800のいくつかの実施形態において、ラッチング量子ビット2分木型ネットワークの最下段の少なくとも1個のラッチング量子ビット804〜807によりラッチされた信号を、超伝導量子プロセッサの要素等の少なくとも1個のプログラム可能な素子に直接ロードできる。demux−DAC800のいくつかの実施形態において、ラッチング量子ビット2分木型ネットワークの最下段の少なくとも1個のラッチング量子ビット804〜807によりラッチされた信号を、図8に示すラダー880等のデジタル/アナログ変換器にロードできる。例示する実施形態において、demux−DAC800の最下段の各ラッチング量子ビット804〜807は、ラダー880内で各々の超伝導ループ881〜884に誘導結合される。上述のように、ラッチング量子ビット804〜807のデジタル出力はラダー880に組み込まれて、例えばプログラム可能な素子890に与えられるアナログ信号を生成することができる。
【0067】
一般に、当該技術分野において各種の形式のdemux回路が知られている。しかし、本明細書に記述するdemux回路内の各種の実施形態は、個別スイッチングセルとして新たに開発された素子(例えば、スイッチングセル300およびラッチング量子ビット801)を用いて構成される。いくつかの実施形態はまた、超伝導インダクタラダー回路等の超伝導磁束に基づくDACに(例えば磁束記憶構造500を用いて)情報のデジタルビットを提供する目的に特に適合される。このように、超伝導量子プロセッサ等の超伝導プロセッサの要素のプログラミングにおいて対数アドレス指定の利点を実現すべく特に適したdemux回路内の実施形態が開発されてきた。更に、本システム、方法、および装置は、多くの形式のdemux回路内に付随する共通の問題、すなわち、スイッチング素子の2分木型レイアウトに起因して、1個の素子が正常に動作しなければ、不具合が生じた素子から下方に分岐する全ての素子が影響を受け、最悪の場合には完全に使用不可になる問題に対処する。
【0068】
図9は、1個のスイッチングセル901に不具合が生じた典型的なdemux回路900を示す図である。demux900は15個のスイッチングセルを含むが、当業者には任意の個数の素子も同様に用いてもよいことが認識されよう。図9に示す実施形態において、スイッチングセル901に不具合が生じて、スイッチングセル902またはスイッチングセル903のいずれかに入力信号を送信するために使用できない。その結果、スイッチングセル902、903は、素子911〜914に入力信号をルーティングするために使用できない。このようなシナリオは、demux900の製作工程に何らかの不整合または不具合があった場合に生じる恐れがある。例えば、スイッチングセル901〜903が図3のスイッチングセル300を用いて実現される場合、製造されたジョセフソン接合が仕様通りに動作しなければそのような不具合が生じる恐れがある。典型的なdemux回路において、図9に示すような不具合の結果、回路のプログラミング能力に重大な支障が生じる恐れがある。上述のように、demux900内の1個のスイッチングセル(例えば、スイッチングセル901)の不具合により、demux回路全体が不具合のあるスイッチングセル901に接続する全ての素子(例えば911〜914)にプログラム信号をルーティングできなくなる。例示する実施形態において、demux900の最下段の素子の25パーセントが、1個のスイッチングセル901の不具合に起因してプログラム不可能になってしまう。実際、回路のより高い段で不具合が生じた場合、demux回路内の素子の不具合に起因する「カスケードエラー」の影響はより深刻になる。本明細書全体を通じて、用語「カスケードエラー」は、1個の素子におけるエラーが、そこから分岐する全ての素子に対して有害な影響を及ぼす状況を記述すべく用いる。例えば、demux900のスイッチングセル901について記述した場合と同様にスイッチングセル904が完全に故障した場合、demux900の最下段の素子の50パーセントがプログラム不可能になってしまう恐れがある。従って、demux回路の実装に、回路のより高い段のスイッチングセルの性能に特に依存するリスクが伴うことは明らかである。
【0069】
demux回路のスイッチングセルに生じる恐れのある不具合には様々なモードおよび程度がある。例えば、demux900に示すカスケードエラーは、スイッチングセル901内における完全な故障(結果的にゼロ信号送信となる)により生じる場合がある。同様に、demux900に示すカスケードエラーは、スイッチングセル904が左側へのスイッチングだけ可能で右側へのスイッチングはできない、すなわちスイッチングセル904の「一方向」故障により生じる場合がある。セル904が図3のスイッチングセル300により実現される場合、少なくとも1個のジョセフソン接合363または364に不整合、またはJTL350における他の何らかの非対称エラーがある場合、この種の一方の不具合が生じる恐れがある。
【0070】
本システム、方法、および装置は、demux回路におけるカスケードエラーのリスクを減らす機構を提供する。この機構は、各スイッチングセルが2方向の一方(例えば左または右)に信号をルーティングすべく設計され、特定の段でのルーティングステップが第1の方向(例えば左)に起動された際に当該特定段におけるルーティングステップが第2の方向(例えば右)には起動されないという事実を少なくとも部分的に利用する。従って、demux回路の第1段の第1のスイッチングセルからの右側の出力は、demux回路の第2段の特定のスイッチングセルの入力の方向に向けられ、demux回路の第1段の第2のスイッチングセルからの左側の出力は、demux回路の第2段の同一の特定スイッチングセルの入力の方向に向けられてもよい。この状況において、左および右へステップが同時に起動されなかった場合に、どのルーティングステップにおいても第1段からの1個のスイッチングセルだけが第2段のスイッチングセルと導通する。本明細書および請求項では用語「段」を用いて、特定の幾何的配置を指定するのではなく、階層的順序付けまたは階層内のレベルを記述する場合がある。そのような例をH木レイアウトの実施形態に示す。
【0071】
図10は、カスケードエラーのリスクを減らす機構を含むdemux回路1000の実施形態の模式図である。demux1000において、段1013のスイッチングセル1003は、段1012のスイッチングセル1001、1002の両方に選択的に結合する。ルーティング経路は、スイッチングセル1001から右へのルーティングステップに沿って、またはスイッチングセル1002から左へのステップに沿ってスイッチングセル1003に通じてもよい。このように、スイッチングセル1003の下で接続されるこれらのセル/素子(例えば1004および1005)に2個の独立したルーティング経路が到達できる。スイッチングセル1002が信号の送信を止めたか、または左方向に信号をルーティングできなくなった場合、セル/素子1004、1005には依然としてスイッチングセル1001から右へのルーティングステップにより到達することができる。同様に、スイッチングセル1001が信号の送信を止めたか、または右方向に信号をルーティングできなくなった場合、セル/素子1004、1005には依然としてスイッチングセル1002から左へのルーティングステップにより到達することができる。本明細書および添付の請求項全体を通じて、入力が複数のセル出力(例えばdemux1000のスイッチングセル1003)に接続されるスイッチングセルを「バッファセル」と呼び、バッファセルの段を「バッファ段」と呼ぶ。バッファ段は、第1段(バッファ段より上)のスイッチングセルを第2段(バッファ段の下)のスイッチングセルに接続する代替的な経路を提供することにより、demux回路におけるカスケードエラーのリスクを減らす。図10から12において、バッファセルを分かりやすくするため黒で塗りつぶしている。
【0072】
図11は、カスケードエラーのリスクを減らすべくバッファ段1101、1102を含むバッファ型demux回路1100の実施形態の模式図である。demux回路1100において、バッファ段1101、1102は、各々「2重段」のペアすなわち1111と1112、および1112と1113の間に配置される。本明細書および添付の請求項全体を通じて、用語「2重段」を用いて、前段(すなわち上段)のほぼ2倍多くのセルを含むことにより2分木型レイアウトの対数スケーリングを実現するdemux回路内のスイッチングセルの段を指す。demux1100に少なくとも1個のバッファ段を組み込むことにより、回路の最下段のどの素子にも代替的且つ冗長なルーティング経路で到達することができる。このように、スイッチングセルにおける不具合に起因するカスケードエラーのリスクが低減される。例えば図11から、demux1100の段全体を通じて左側/右側のルーティングステップのいくつかの組合せにより素子1121に到達できることが明らかである。demux回路内に少なくとも1個のバッファ段を実装することで回路内のスイッチングセルの個数当たりの制御線の平均個数は増えるが、制御線の平均個数は依然として回路内のスイッチングセルの個数に対して対数的に増大する。
【0073】
demux1100は、2重段とバッファ段を交互に含む(すなわち、段は1111、1101、1112、1102、1113の順である)が、当業者には、必要に応じて他のスキームを用いてもよいことが認識されよう。例えば、いくつかの実施形態において、demux回路により多くのバッファ段を組み込むことによりカスケードエラーのリスクを更に低減することができる。図12は、カスケードエラーのリスクを減らすべくバッファ段を含むバッファ型demux回路1200の別の実施形態の模式図である。demux回路1200において、バッファ段のペアは、各々の隣接する2重段の間に配置される。例えば、2個のバッファ段1211、1212は、隣接する2重段1201、1202の間に配置される。隣接する2重段の間のバッファ段の個数を増やすことにより、demux回路を通る代替的且つ冗長なルーティング経路の個数が増えるが、一方、制御線の個数は対数スケーリングが維持される。
【0074】
demux回路1200において、(集合的に)素子1231、1232だけが冗長な代替的経路に結合されていない。これらの素子には、各々のルーティング経路内の全てのスイッチングセルが正常に機能する場合にのみ到達できる。いくつかの実施形態において、冗長な代替的ルーティング経路は、独立した制御線1221、1222を用いて、これらの素子の組に提供することができる。
【0075】
明細書に開示するバッファ段の概念は多くの用途に適していよう。しかし、demux回路全体にわたりバッファ段を実装することで回路内の素子の個数が大幅に増加するため、素子に不具合が生じる可能性が増す恐れがある。当業者には、両方がプログラム可能な素子の同じ組に結合された2個の完全且つ異なるdemux回路を実装するだけで代替的なルーティング経路に同様に実現できることが認識されよう。従って、本システム、方法、および装置のいくつかの実施形態において、カスケードエラーが最も大きい影響を及ぼし得るdemux回路のより高い段だけでバッファセルおよび/またはバッファ段を使用することが好適である。例えば、いくつかの実施形態において、demux回路の上から4分の3、3分の2、2分の1、3分の1、または4分の1(等々)にあるだけを組み込むことが好適な場合がある。
【0076】
要約の記述内容を含め、例示した実施形態の上の説明は網羅的でなく、且つ実施形態を開示した形式そのものに限定することを意図していない。本明細書に例示目的で特定の実施形態および実施例を記述しているが、当業者には理解されるように、本開示の概念および範囲から逸脱することなく各種の等価な変更を行うことができる。本明細書で提供する各種の実施形態で与える教示は、必ずしも上で一般的に述べた例示的な超伝導量子コンピュータシステムに限らず、他の超伝導コンピュータシステムに適用することができる。
【0077】
通常、スイッチングセルは、信号が2個の(またはより多く)異なる分岐に沿ってルーティングされることを許す。これらの分岐は、例えば「A」と「B」、または「0」と「1」、「右」と「左」等である。任意の便利な仕方で表記できる。本明細書の記述および請求項では、特定の方向(例えば右と左)に言及することにより、これらの分岐を表記する。しかし、それらの用語およびこれらと類似した用語は説明の便宜のために過ぎず、文脈から別途明らかにされない限り、特定の図示に基づいている。例えば、用語「左側」および「右側」を用いて、特定の図に示したような分岐を説明する場合がある。しかしこのことは、何か特定の方向が必要なことを意味せず、且つ暗黙的に意味するものでもない。また、直径方向に反対向きの方向が必要なことを示唆する意味合いでもない。むしろ、これは単に分岐経路方向に言及する便利な仕方であって、無論別の表記も可能である。
【0078】
上述の各種の実施形態を組み合わせて更なる実施形態を提供することができる。本明細書で参照するおよび/または出願データシートに掲載された、2008年6月3日出願の米国仮特許出願第61/058494号「Systems,Methods and Apparatus for Superconducting Demultiplexer Circuits」、米国公開特許第2006−0225165号、米国公開特許第2008−0176750号、米国特許出願第12/266,378号、PCT特許出願第PCT/US09/37984号、米国公開特許第2008−0215850号、米国公開特許第2009−0082209号、および米国特許出願第12/109,847号を含むがこれに限定されない米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、非特許刊行物の全てについて全文を本明細書で引用している。必要ならば、これらの実施形態の態様を修正し、各種の特許、用途および刊行物のシステム、回路、およびの概念を用いて更なる実施形態を提供することができる。
【0079】
上で詳細な説明に照らして実施形態に上記その他の変更を加えることができる。一般に、以下の請求項で使用する用語は、本明細書および請求項で開示する特定の実施形態に当該請求項を限定するものではなく、当該請求項が有効である等価物の全範囲に沿うあらゆる可能な実施形態を含むものと解釈すべきである。従って、請求項は開示内容に限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードスイッチングセル、第1のスイッチングセルの組、および第2のスイッチングセルの組を含む複数のスイッチングセルを含む超伝導デマルチプレクサであって、前記複数のスイッチングセル内の各スイッチングセルが、
信号入力端、第1の信号出力端、および第2の信号出力端と、
第1端および第2端を有し、前記第1端が前記信号入力端に結合される第1のジョセフソン伝送線と、
第1端および第2端を有し、前記第1端が前記第1の信号出力端に結合されると共に前記第2端が前記第2の出力端に結合される第2のジョセフソン伝送線であって、前記第1のジョセフソン伝送線の前記第2端と交差ノードにおいて結合される第2のジョセフソン伝送線と、
前記第2のジョセフソン伝送線上の第1のノードおよび第2のノードの両方に信号を誘導結合する磁束バイアス線であって、前記第2のジョセフソン伝送線上の前記第1のノードが前記交差ノードと前記第1の出力端の間に配置され、前記第2のジョセフソン伝送線上の前記第2のノードが前記交差ノードと前記第2の出力端の間に配置される磁束バイアス線とを含み、
前記リードスイッチングセルの入力端が入力信号源から信号を受信すべく構成され、前記リードスイッチングセルの前記第1の出力端が前記第1のスイッチングセルの組からの第1のスイッチングセルの入力端に結合され、前記リードスイッチングセルの前記第2の出力端が前記第1のスイッチングセルの組からの第2のスイッチングセルの入力端に結合され、前記第1のスイッチングセル組内の前記第1および第2のスイッチングセルの両方の前記第1および第2の出力端が各々前記第1のスイッチングセル組内の別の各スイッチングセルの入力端に結合され、前記第2のスイッチングセル組内の各スイッチングセルの入力端が前記第1のスイッチングセル組内のスイッチングセルの各出力端に結合される、超伝導デマルチプレクサ。
【請求項2】
前記第2のスイッチングセル組内の少なくとも1個のスイッチングセルの少なくとも1個の出力端がプログラム可能な素子に結合すべく構成される、請求項1に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項3】
前記プログラム可能な素子が超伝導プロセッサの要素を含む、請求項2に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項4】
前記プログラム可能な素子が超伝導量子プロセッサの要素を含む、請求項3に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項5】
前記プログラム可能な素子が、超伝導磁束量子ビット、超伝導位相量子ビット、超伝導電荷量子ビット、超伝導ハイブリッド量子ビット、および超伝導量子ビットカプラからなる群から選択される、請求項2に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項6】
磁束記憶構造の組であって、各磁束記憶構造が前記第2のスイッチングセル組内の少なくとも1個のスイッチングセルの各出力端に結合され、各磁束記憶構造が、
第1端および第2端を含み、前記第1端が前記第2のスイッチングセル組内の少なくとも1個のスイッチングセルの出力端に結合される第3のジョセフソン伝送線と、
前記第3のジョセフソン伝送線と直列に結合される記憶インダクタと、
前記第1端と前記記憶インダクタの間に配置されたノードにおいて前記第3のジョセフソン伝送線を遮断する複合ジョセフソン接合と、
前記複合ジョセフソン接合に信号を制御可能に誘導結合させるべく配置されたリセット線と
を更に含む、請求項1に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項7】
少なくとも1個の記憶インダクタが、少なくとも1個のプログラム可能な素子に信号を誘導結合すべく配置される、請求項6に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項8】
少なくとも1個の記憶インダクタが、超伝導インダクタラダー回路内の少なくとも1個の超伝導ループに信号を誘導結合すべく配置される、請求項6に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項9】
少なくとも2個の記憶インダクタが、超伝導インダクタラダー回路の少なくとも2個のループの各1個に信号を誘導結合すべく各々配置される、請求項8に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項10】
前記超伝導インダクタラダー回路が、少なくとも1個のプログラム可能な素子に信号を結合すべく配置される、請求項9に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項11】
前記少なくとも1個のプログラム可能な素子が、超伝導プロセッサの要素を含む、請求項10に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項12】
前記少なくとも1個のプログラム可能な素子が、超伝導量子プロセッサの要素を含む、請求項11に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項13】
前記少なくとも1個のプログラム可能な素子が、超伝導磁束量子ビット、超伝導位相量子ビット、超伝導電荷量子ビット、超伝導ハイブリッド量子ビットおよび超伝導量子ビットカプラからなる群から選択される、請求項12に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項14】
同一の磁束バイアス線が、少なくとも2個のスイッチングセルに信号を制御可能に誘導結合すべく配置される、請求項1に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項15】
リードラッチング量子ビット、第1のラッチング量子ビットの組、および第2のラッチング量子ビットの組を含む複数のラッチング量子ビットにおいて各ラッチング量子ビットが臨界温度未満で超伝導性を示す材料のループにより形成された量子ビットループ、および前記量子ビットループを遮断する複合ジョセフソン接合であって少なくとも2個のジョセフソン接合により遮断され、臨界温度未満で超伝導性を示す材料のループを含む複合ジョセフソン接合を含む複数のラッチング量子ビットと、
第1のクロック信号線の組と、
第2のクロック信号線の組と、
前記第1および第2のラッチング量子ビット組内の各ラッチング量子ビットが制御線への誘導結合により信号を受信すべく配置される少なくとも1個の制御線と
を含む超伝導デマルチプレクサであって、
前記リードラッチング量子ビットが入力信号源から信号を受信すべく配置され、第1のラッチング量子ビット組内の第1のラッチング量子ビットが前記リードラッチング量子ビットの量子ビットループに誘導的に接続すべく配置され、前記第1のクロック信号線の組からの第1のクロック信号線が前記第1のラッチング量子ビット組内の前記第1のラッチング量子ビットの前記複合ジョセフソン接合に制御可能且つ誘導的に配置され、前記第1のラッチング量子ビット組内の前記第2のラッチング量子ビットが前記リードラッチング量子ビットの前記量子ビットループに誘導結合すべく配置され、前記第2のクロック信号線の組からの第1のクロック信号線が前記第1のラッチング量子ビット組内の前記第2のラッチング量子ビットの前記複合ジョセフソン接合に制御可能に誘導結合すべく配置され、
前記第1のラッチング量子ビット組内の各ラッチング量子ビットの前記量子ビットループが前記複数のラッチング量子ビット内の3個の他のラッチング量子ビットに各々誘導結合すべく各々配置され、前記第1のラッチング量子ビットの組からのラッチング量子ビットの第1の割合の前記複合ジョセフソン接合が前記第1のクロック信号線の組からのクロック信号線に誘導結合すべく配置され、前記第1のラッチング量子ビットの組からのラッチング量子ビットの第2の割合の前記複合ジョセフソン接合が前記第2のクロック信号線の組からのクロック信号線に誘導結合すべく配置され、前記第2のラッチング量子ビット組内の各ラッチング量子ビットの量子ビットループが前記第1のラッチング量子ビット組内の各1個のラッチング量子ビットの量子ビットループに誘導結合すべく配置され、前記第2のラッチング量子ビット組内のラッチング量子ビットの複合ジョセフソン接合の第1の割合が前記第1のクロック信号線の組からのクロック信号線に誘導結合すべく配置され、前記第2のラッチング量子ビット組内のラッチング量子ビットの複合ジョセフソン接合の第2の割合が前記第2のクロック信号線の組からのクロック信号線に誘導結合すべく配置される、超伝導デマルチプレクサ。
【請求項16】
前記第2のラッチング量子ビット組内の少なくとも1個のラッチング量子ビットの前記量子ビットループがプログラム可能な素子に結合すべく構成される、請求項15に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項17】
前記プログラム可能な素子が超伝導プロセッサの要素を含む、請求項16に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項18】
前記プログラム可能な素子が超伝導量子プロセッサの要素を含む、請求項17に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項19】
前記プログラム可能な素子が、超伝導磁束量子ビット、超伝導位相量子ビット、超伝導電荷量子ビット、超伝導ハイブリッド量子ビット、および超伝導量子ビットカプラからなる群から選択される、請求項18に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項20】
前記第1のラッチング量子ビット組内の少なくとも2個のラッチング量子ビットが前記第1のクロック信号線の組からの同一クロック信号線に誘導結合すべく配置される、請求項15に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項21】
前記第1のラッチング量子ビット組内の少なくとも2個のラッチング量子ビットが前記第2のクロック信号線の組からの同一クロック信号線に誘導結合すべく配置される、請求項20に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項22】
前記第1のラッチング量子ビット組内のラッチング量子ビットの第1の割合が約50パーセント、前記第1のラッチング量子ビット組内のラッチング量子ビットの第2の割合が約50パーセント、前記第2のラッチング量子ビット組内のラッチング量子ビットの第1の割合が約50パーセント、および前記第2のラッチング量子ビット組内のラッチング量子ビットの第2の割合が約50パーセントである、請求項15に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項23】
前記第2のラッチング量子ビット組内の少なくとも1個のラッチング量子ビットの前記量子ビットループが超伝導インダクタラダー回路内の少なくとも1個の超伝導ループに誘導結合すべく配置される、請求項15に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項24】
前記第2のラッチング量子ビット組内の少なくとも各2個のラッチング量子ビットの前記量子ビットループが各々、超伝導インダクタラダー回路内の少なくとも2個の超伝導ループの各1個に誘導結合すべく配置される、請求項23に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項25】
前記超伝導インダクタラダー回路が、少なくとも1個のプログラム可能な素子に信号を結合すべく配置される、請求項24に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項26】
少なくとも1個のプログラム可能な素子が超伝導プロセッサの要素を含む、請求項25に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項27】
少なくとも1個のプログラム可能な素子が超伝導量子プロセッサの要素を含む、請求項26に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項28】
少なくとも1個のプログラム可能な素子が、超伝導磁束量子ビット、超伝導位相量子ビット、超伝導電荷量子ビット、超伝導ハイブリッド量子ビット、および超伝導量子ビットカプラからなる群から選択される、請求項27に記載の超伝導デマルチプレクサ。
【請求項29】
入力端および2個の出力端を含む第1のスイッチングセルと、
第1の追加的スイッチングセルの組において各スイッチングセルが入力端および2個の出力端を含むと共に少なくとも1個のバッファセルを含む第1の追加的スイッチングセルの組と、
前記第1のスイッチングセルに入力信号を制御可能に結合すべく構成された入力信号源と
を含むデマルチプレクサ回路であって、
前記第1の追加的スイッチングセルの組が各スイッチングセルの各出力端が別のスイッチングセルの各入力端に結合するように実質的に2分木を形成すべく配置され、各スイッチングセルの各入力端が少なくとも1個の他のスイッチングセルの少なくとも1個の出力から少なくとも1個の入力を受信し、少なくとも1個のバッファセルの入力端が少なくとも各2個のスイッチングセルから各1個の出力端を受信し、少なくとも1個のバッファセルの2個の出力端が各々スイッチングセルの入力端に結合するデマルチプレクサ回路。
【請求項30】
前記第1の追加的スイッチングセルの組は、一組の段として配置されて少なくとも1段が少なくとも2個のバッファセルを含む、請求項29に記載のデマルチプレクサ。
【請求項31】
前記スイッチングセルが超伝導素子である、請求項29に記載のデマルチプレクサ。
【請求項32】
各々が入力端および2個の出力端を含む第2の追加的なスイッチングセルの組を更に含み、前記第2の追加的なスイッチングセル組内の各スイッチングセルの入力端が前記第1の追加的なスイッチングセルからの各スイッチングセルの少なくとも各1個の出力端に結合し、前記第2の追加的なスイッチングセル組内の少なくとも1個のスイッチングセルの少なくとも1個の出力端がプログラム可能な素子に結合すべく構成される、請求項31に記載のデマルチプレクサ。
【請求項33】
前記プログラム可能な素子が超伝導プロセッサの要素を含む、請求項32に記載のデマルチプレクサ。
【請求項34】
前記プログラム可能な素子が超伝導量子プロセッサの要素を含む、請求項33に記載のデマルチプレクサ。
【請求項35】
前記プログラム可能な素子が、超伝導磁束量子ビット、超伝導位相量子ビット、超伝導電荷量子ビット、超伝導ハイブリッド量子ビット、および超伝導量子ビットカプラからなる群から選択される、請求項34に記載のデマルチプレクサ。
【請求項36】
複数の超伝導信号経路を提供するジョセフソン伝送線のネットワークを含む超伝導デマルチプレクサ回路であって、各超伝導信号経路は、各超伝導信号経路が同一の入力端を共有すべく入力端および出力端を含み、各超伝導信号経路の出力端は個別の複合ジョセフソン接合および個別の超伝導インダクタを含み、各超伝導信号経路は複数の磁束バイアス線に誘導結合により制御信号を受信すべく配置される超伝導デマルチプレクサ回路。
【請求項37】
少なくとも1個の超伝導インダクタが少なくとも1個のプログラム可能な素子に誘導結合すべく配置される、請求項36に記載の超伝導デマルチプレクサ回路。
【請求項38】
少なくとも1個の超伝導インダクタが超伝導インダクタラダー回路の超伝導ループに誘導結合すべく配置される、請求項36に記載の超伝導デマルチプレクサ回路。
【請求項39】
各超伝導インダクタが少なくとも1個の超伝導インダクタラダー回路内の超伝導ループの各1個に誘導結合すべく配置される、請求項38に記載の超伝導デマルチプレクサ回路。
【請求項40】
超伝導ラッチング量子ビットの2分木構造であって、各超伝導ラッチング量子ビットが超電導材料のループにより形成された量子ビットループと前記量子ビットループを遮断する複合ジョセフソン接合を含み、前記複合ジョセフソン接合が少なくとも2個のジョセフソン接合により遮断される超電導材料の閉ループを含み、前記量子ビットループおよび前記複合ジョセフソン接合が閉超伝導電流経路を形成し、各超伝導ラッチング量子ビットの前記量子ビットループが少なくとも1個の入力信号および少なくとも2個の出力信号を誘導結合すべく配置され、各超伝導ラッチング量子ビットの前記複合ジョセフソン接合がクロック信号線への誘導結合によりクロック信号を受信すべく配置される超伝導ラッチング量子ビットの2分木構造と、
制御信号を少なくとも2個の超伝導ラッチング量子ビットの各々の量子ビットループに誘導結合すべく配置される少なくとも1個の制御信号線と
を含む超伝導デマルチプレクサ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−524131(P2011−524131A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512582(P2011−512582)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/045976
【国際公開番号】WO2009/149086
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(507209207)ディー−ウェイブ システムズ,インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】