説明

超音波合成イメージングの装置と方法

【課題】平面波合成超音波イメージングの方法の改善を可能とする新しい合成超音波イメージングの方法を提供する。
【解決手段】
本発明に係る超音波イメージングの方法は少なくとも、
a)送信工程であって、複数の超音波が画像化領域へ送信され、それぞれのローデータの集合はそれぞれの超音波に応じたトランスデューサのアレイによって取得され、該超音波はさまざまな空間周波数成分を有するものと、
b)コヒーレンス向上工程であって、該画像化領域の複数の仮の送信焦点域それぞれについて、該ローデータの各集合から少なくとも一のコヒーレントデータの集合が合成されるものと、
c)整相工程であって、それぞれの該仮の送信焦点域に含まれる複数の場所それぞれについて、イメージ画素が該コヒーレントデータの集合を利用した整相によって演算されるものと、
を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波合成イメージングの装置と方法に関し、特に医用イメージングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波標準イメージング
標準的な超音波イメージングは、任意の点に焦点を合わせた円筒波による媒体への高周波の照射からなる。この単一の高周波照射の後方散乱エコーを利用して、動的受信整相工程を用いたイメージの完全な輪郭線が演算される。完全なイメージを構築するために、所定深さ(焦点面という)を横方向に沿ってスキャンする一組の収束波を送ることによってこの工程が繰り返される。各々の収束波に対して動的整相が実施され各行ごとの完全なイメージが得られる。動的整相は、受信モードにおける均一な集束を保証するのに対して、送信モードでは所定深さに焦点が固定される。最終的なイメージは、焦点面において、そして、焦点の軸方向の長さに対応した媒体の限定された領域において最善である。しかしながら、この領域の外側では回折の法則が課されることとなり、イメージの質が他の深さ(焦点ビームの近く又は遠くの領域)において急速に劣化する。
【0003】
この制限を克服するための古典的な解は、イメージ全体に渡って一様な質を得るために異なる複数の送信焦点深度が用いられる多焦点イメージングを実施することである。所定の焦点深度における各々の送信は、軸方向焦点距離で区切られた領域の部分的なイメージを取得することを可能とする。最終イメージは、様々な深さに対応したこれらの部分的なイメージの再結合により得られる。最適な多焦点イメージは、典型的には数十の焦点面を要する。そしてこれは、超音波イメージングにとって典型値が毎秒10フレーム未満であることは受け入れられないため、フレームレートの制限を受ける結果となる。イメージの質とフレームレートの間の良い妥協点は4程度の焦点深度のイメージである。
【0004】
超音波合成イメージング
イメージの質の改善は合成動的送信フォーカリゼーションの実施によって予測される。そのようなアプローチは、整相のあとに一組の異なる高周波照射を結合することによって動的送信集束(言い換えれば、イメージ中の画素の焦点深度と同数)を再合成することである。
【0005】
合成開口とコヒーレント平面波合成の、2の主要な実施が考えられる。
【0006】
i)合成開口
合成開口のアプローチでは、例えばUS-6 689 063に開示されるように、超音波アレイが素子ごとに始動され、完全な一組の送信受信素子間の信号応答は整相され、記録される。そして、イメージの各画素に集束した送信受信両方に基づく合成イメージを生成するためのこれらのデータの後工程が可能となる。文献では、合成イメージングが従来のBモードイメージよりも良いイメージを提供できるか、そしてそれらが限定されたSN比や組織運動によってどのように影響されるかについて集中的に議論された。合成開口イメージングの基本的な問題は、発射に単一の素子が用いられているためイメージのSN比が悪いことである。これにより、従来のイメージングで用いられたいっぱいに開いた口径を用いる場合と比較して発射されるエネルギーが非常に低減され、その結果浸透深さを制限する。
【0007】
ii)合成平面波のアプローチ
合成平面波イメージングは少なくとも部分的には合成開口イメージングの制限を解決するアプローチである。これは例えばUS-6 551 246に開示されるように、媒体中に異なる複数の角度で送信平面波を備え、後方散乱信号の受信の整相をし、その後最終イメージを再合成するために異なるイメージを結合する。完全なアレイでの平面波の送信は、合成開口のアプローチよりも高い圧力場を発生させる。その上、やわらかい組織を伝播しているときには回折と減衰の効果は、単一素子送信と比較して超音波平面の場合極めて低いものである。
【0008】
合成動的送信集束のアプローチは、従来のイメージの質/フレームレートの境界を妥協することを強いる。光学イメージの質は、より高いフレームレート(>10Hz)で得ることができる。
【0009】
しかしながら、現在知られている平面波のアプローチを使用する合成超音波イメージングの方法は、依然としてイメージの精度に関して改善が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明のひとつの目的は、従来の平面波合成超音波イメージングの方法の改善を可能とする新しい合成超音波イメージングの方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明の一実施形態によれば、少なくとも以下の工程を備える超音波イメージングの方法が提供される。
a)送信工程であって、複数の超音波が画像化領域へ送信され、それぞれのローデータの集合はそれぞれの超音波に応じたトランスデューサのアレイによって取得され、該超音波はさまざまな空間周波数成分を有し、該領域の複数の画像化された場所のそれぞれについて、ローデータの各集合は対応する超音波に応じた該トランスデューサによって受信された時間信号を示すものと、
b)コヒーレンス向上工程であって、該画像化領域の複数の仮の送信焦点域それぞれについて、該ローデータの各集合から少なくとも一のコヒーレントデータの集合が合成されるものと、
c)整相工程であって、それぞれの該仮の送信焦点域に含まれる複数の場所それぞれについて、イメージ画素が該コヒーレントデータの集合を利用した整相によって演算されるもの。
【0012】
これらの処置の結果、整相の前のステップbでローデータの空間コヒーレンスが元の状態に戻り、これによりいろいろな超音波の送信から受信されたデータの正確な結合が可能となる。空間コヒーレンスの回復は、空間的に広く拡がった波動場で画像領域を照らしたとき、媒体から戻るエコーは画像領域にランダムに分布する非干渉性のソース(散乱体)からの波動場であるとみることができ、そのためローデータにおいて波動場の空間コヒーレンスが失われうる(または非常に弱くなる)という事実から当然必要となる。
【0013】
そして、コヒーレンスリカバリー工程で得られたコヒーレントデータに整相が実施され、より正確な画像化ができる。
【0014】
一方、従来技術の合成超音波イメージングの方法では、最初にローデータに整相が行われ、その後その結果生じたいろいろな平面波に対応する画像が結合されるものであるが、整相工程で沢山の情報が失われ、従来技術の実施によるイメージの結合では空間コヒーレンスの回復ができなかった。
【0015】
上述した発明の実施形態の超音波イメージングの方法に従ったさまざまな実施形態において、以下の処置の一つまたは複数を採用することができる。
【0016】
該超音波はさまざまな伝播方向を有する平面波である。
【0017】
該超音波はさまざまな伝播方向を有する発散波である。
【0018】
該超音波は時空間的にコード化された励振である。
【0019】
該コヒーレンス向上工程は固定された音速値を利用して実施される。
【0020】
該コヒーレンス向上工程は該画像化領域の広域音速値の見積もりを含む。
【0021】
該コヒーレンス向上工程は、該領域の画像化された場所それぞれについての広域音速の見積もりを含む。
【0022】
該コヒーレンス向上工程は位相収差の補正を含む。
【0023】
該コヒーレンス向上工程では、それぞれの仮の送信焦点域は該トランスデューサアレイに垂直な直線である。
【0024】
該コヒーレンス向上工程は、
該領域での音速は一定であると仮定して、該仮の送信焦点域に焦点を合わせた仮の動的送信を行うために、該ローデータに遅延を適用することにより、それぞれの仮の送信焦点域についてのコヒーレントデータ集合を演算する第一サブ工程と、
該第一サブ工程で演算された該コヒーレントデータ集合に基づく該画像化領域での収差を見積もることにより該遅延が補正され、該補正された遅延は、該仮の送信焦点域に焦点を合わせた仮の動的送信を実施することによる新たなコヒーレントデータ集合の演算に用いられる第二サブステップとを備える。
【0025】
少なくとも該第二サブステップ(すなわち、第二サブステップまたは、第一、第二サブステップの両方)は複数回実施される。
【0026】
該第二サブステップでは、それぞれのコヒーレントデータ集合についてさまざまなトランスデューサに対応した該コヒーレントデータを相互相関させることによって該収差の見積もりが行われる。
【0027】
本発明の他の目的は、
部位における複数の画像化領域のそれぞれのためのさまざまな空間周波数成分を有する複数の超音波を該部位へ送信する手段と、
それぞれの超音波に対応して取得されたローRFデータの各集合を取得する手段と、
該部位における複数の仮の送信焦点域のそれぞれについてのローデータの各集合から合成された少なくとも一のコヒーレントデータの集合を合成する手段と、
それぞれの仮の送信焦点域が含められる複数の場所のそれぞれについてのコヒーレントデータの集合を利用して、少なくとも一方向にそって整相された信号を演算する整相手段と、
を備えた超音波イメージングの装置を提供することである。
【0028】
本発明の他の特徴や長所は以下の、制限されない例として与えられる実施形態の詳細な記載および付属する図面により明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態による合成超音波イメージング装置を表す概略図である。
【図2】図1の装置の一部を表すブロック図である。
【図3】図1、2の装置によって実施される合成超音波イメージングを説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図面においては、同一符号は同一又は類似する要素をあらわす。
【0031】
図1に示される装置は、例えば生体組織そして特に患者の人体組織である領域1の合成超音波イメージングに適している。当該装置は例えば以下を含む。
例えば、通常の超音波検査プローブから既知となるX軸に沿って並置された典型的には数十のトランスデューサ(例えば100−300)を含む線形アレイなどの超音波トランスデューサアレイ2(アレイ2は領域1の2次元イメージングを実施できるように構成されるが、アレイ2は領域1の3次元イメージングも実施できる2次元アレイであるように構成されうる)。
トランスデューサアレイを制御しそこから信号を受け取るエレクトロニックベイ3。
エレクトロニックベイ3を制御し、エレクトロニックベイから得られた超音波イメージを閲覧するマイクロコンピュータ4(この変形として、エレクトロニックベイ3とマイクロコンピュータ4の全ての機能を満たす単一の電子装置)。
【0032】
図2に示すように、エレクトロニックベイ3は例えば以下を含む。
トランスデューサアレイ2のn個のトランスデューサ(T−T)へ個々に接続されたn個のアナログ/デジタルコンバータ5(A/D−A/D)。
n個のアナログ/デジタルコンバータ5に個別に接続されたn個のバッファーメモリ6(B−B)。
マイクロコンピュータ4およびバッファーメモリー6と通信する中央処理装置8(CPU)。
中央処理装置8と接続されたメモリー9(MEM)。
中央処理装置8と接続されたデジタル信号プロセッサ10(DSP)。
【0033】
図3は図1、2の装置を用いて本発明の方法の実施の一例を示すものであり、以下の主要な三工程を含む。
a)送信とデータ記録
b)コヒーレントRFデータの合成
c)受信整相
これらの方法の工程は、主にデジタル信号プロセッサ9の補助を伴う中央処理装置7によって制御される。
【0034】
ステップa:送信とデータ記録
トランスデューサアレイはイメージ化されるべき媒体(例えば患者の体)に接触され、そしてトランスデューサアレイ2によって傾斜されたNの超音波平面波が連続的に領域1へ送られる。傾斜された平面波の数Nは例えば2と100の間程度である。超音波の周波数は例えば0.5と100MHz、あるいは1と10MHzの間である。
【0035】
各々の傾斜された平面波は、Z軸に関する伝播の方向からの傾斜角αによって特徴付けられる(Z軸は線形トランスデューサアレイ2のX軸に垂直であり、X軸のイメージング平面を定義する)。
【0036】
各々の傾斜された平面波は、何度も散乱され、アレーの各々のトランスデューサT−Tnが後方散乱された信号を受け取れるように、トランスデューサアレイ2の方へ後方散乱される。nのトランスデューサの後方散乱された信号は、そのあとアナログ/デジタルコンバータ5によって個別にデジタル化され、nのバッファーメモリ6に記録される。平面波の送信のあとにバッファーメモリに保存されたデータは以後、ローRFデータと呼ぶ。このように、ローRFデータは平面波の送信後のアレイ2の全てのトランスデューサによって受信された時刻信号を代表するマトリックスと考えることができる。RFとは技術的には通常の語であり、単に(たいてい0.5〜100MHzの範囲である)超音波の周波数をいうが、この表現はなんら制限的なものではない。
【0037】
超音波平面波は、異なる伝播方向を有する異なる超音波によっても置き換えることができることに留意すべきである。
【0038】
全ての場合において超音波は時空間的にコード化され得るもので、これは例えば異方向のいくつかの超音波の同時送信、処理を可能とする。
【0039】
ステップb:コヒーレントRFデータの合成
加算処理と延伸時間遅延を利用して、取得されたNのローRFデータマトリックスからMのコヒーレント合成RFデータマトリックスが演算される。後方散乱されたエコーに対応するMの演算されたマトリックスのそれぞれは、所定の仮の動的送信集束ラインによりもたらされる。これは以下に述べる工程に従うことにより達せられる。
【0040】
1)サブステップb.1:媒体全体の音速が一定であると仮定した、コヒーレントRFデータの第一組の合成。
単純化のため、波動場は時刻t=0において、x=0、z=0に位置するトランスデューサで発せられるとする。仮の送信焦点位置F(x、z)について考える。もし、媒体が傾きαの平面波を用いて高周波を当てられた場合、波が媒体中のF(x、z)に到達するまでに要する時間は以下の通りである。
τec(α,x,z)=(zcosα+xsinα)/c
・・・式(1)
ここで、xとzはX軸、Z軸に沿い、またcは領域1における音速である。音速cはあらかじめ決められうる値、あるいは全体から見積もられた値である。
【0041】
xにある所定のトランスデューサへ戻るのに要する時間は以下の通りである。
τrec(x,x,z)=(√(z+(x−x))/c
・・・式(2)
走査された平面波の照射のためのトータル移動時間τは以下のようになる。
τ(α,x,x,z)=τec+τrec=(1/c)[(zcosα+xsinα)+(√(z+(x−x))]
・・・式(3)
トータル移動時間τは以下のとおり、仮の送信焦点位置F(x、z)のための、ローRFデータ(RFraw(x,z,α))と空間コヒーレントRFデータ(RFcoherent(x1,x,z))との間の関連を与える。
【0042】
【数1】

・・式(4)
【0043】
ここで、B(α)は各角度の寄与の重み関数である。仮のフォーカリゼーションラインとは、同じ横方向の位置xについての全ての仮の焦点F(x,z)によって定義される。所定のラインxに沿ったそれぞれの仮のフォーカリゼーションラインは、2次元コヒーレントRFデータマトリックスであるマトリックスRFコヒーレント(x,x、z)によって表される。
【0044】
それらのコヒーレントRFマトリックスのうちMが演算されるが、Mは演算されることが必要な仮の送信フォーカリゼーションラインの数である(すなわち、xの複数のMの値を得るためである)。
【0045】
Mは例えばアレイ2におけるトランスデューサの数に対応するものであっても、あるいはそれよりも大きい数でああってもよい。
【0046】
2)サブステップb.2:収差の補正による、媒体の正確なフォーカリゼーション規則の決定。
先の結論には、超音波伝播をゆがめうる、媒体の潜在的な収差については考慮されていない。それらのような局所的な収差は、たとえば音速、密度、吸音などの局所的な音響的特性の変化によってもたらされ得る(医用超音波では、音速が概ね脂肪に対する1460m・s−1から筋肉に対する1560m・s−1まで分布するといった不均一が存在する)。そのような収差は、合成された信号の空間的干渉性および、最終的な超音波イメージの質を劣化させるという欠点もたらす。
【0047】
そのような欠点を補正するために、既知の複数の収差補正法が利用できる。ラインxからのコヒーレント合成RFデータへこれらの方法を適用することにより、一組の遅延時間δ(x1,x,z)によって表現される補正された集束規則が見積もることができ、それぞれの移動時間へ付加される。
τrew(α,x,x,z)=τ(α,x,x,z)+δ(x,x,z)
・・・式(5)
ここで、δは、円筒形のフォーカリゼーション規則を想定することによって引き起こされる欠点のための遅延補正である。
【0048】
ステップb.1のMのコヒーレント合成データマトリックスは、式(4)におけるτ(α,x,x,z)の新たな値であるτnew(α,x,x,z)を利用して再度演算される。
【0049】
これらの位相収差の補正は、領域1の画像化された場所それぞれについての音速の局所的な見積もりを行うことと等価である。
【0050】
収差補正の方法は記録された波動場の空間的干渉性に依存する。
【0051】
波動場の空間的干渉性はその空間的共分散によって測定される。それは2点で測定された場の値の間の相関をその2点間の間隔の関数として測定する。この相関関数は、非干渉性の源によって形成される波動場の空間的変動の二次統計と一致する。
【0052】
光学の重要な定理の一つであるVan Cittert-Zernikeの定理はそのような波動場のこれらの二次統計について記述する。Van Cittert-Zernikeの定理は、観測面のx、xの2点で測定された波動場の空間共分散は空間周波数(x−x)/λzで取得したソース開口関数のフーリエ変換と等しい(λは波長であり、zは観測面とソースの間の距離である)ことを規定する。
【0053】
直接の結果として、非干渉ソーススポットが鋭いほど、異なる2点で測定された波動場が良く類似する観測面の面積が増大する。
【0054】
医用超音波イメージングにおける収差補正技術は主にこの結果に基づいている。確かに、もしトランスデューサのアレイで記録された波動場が、小さな空間スポット(焦点)に位置する一組の非干渉性のソースからくる後方散乱エコーと一致する場合、アレイの一つの素子で受信された波動場は隣接する素子で受信された波動場とよく類似するだろう。そして、隣接する素子で受信された信号間の単純な相互相関は、これらの信号間の遅延時間を正常な状態に戻すことを可能とする。この概念をアレイ全体の素子に適用することで、全ての素子間の時間遅延を入手でき、それゆえに収差のある媒体を完全に記述できる(収差補正技術は収差のある層は薄くアレイと近接するとの仮定を与え、アレイの素子に時間シフトのみを導入するものであり、これは良く知られた位相スクリーン近似である)。
【0055】
3)最後にサブステップb.2を繰り返す。
最後にステップb.2が繰り返される。繰り返しの数はあらかじめ定められているか、または繰り返しの中止はあらかじめ定められた制限より悪いエラー値により決められる。エラー値は例えば、
【0056】
【数2】

【0057】
であっても良いし、あるいは他のものでも良い。
【0058】
サブステップb.2だけを繰り返す代わりに、遅延規則の見積もりを精錬するためにサブステップb.1とb.2の両方の繰り返しも可能である。
【0059】
ステップc:受信整相
ステップbのあとには、最終的な超音波イメージを演算するためにMのコヒーレントRFデータマトリックスのそれぞれに受信整相が実施される。用いられた遅延規則は、次の収差補正法によって演算されたものである。
【0060】
イメージの点(x,z)は各散乱体の寄与を干渉的に付加することによって得られるものであり、換言すれば、RFx(x,t)信号をτnew(x,x,z)によって遅延させ、それらをアレイ方向Xに付加する。
【0061】
【数3】

・・式(6)
【0062】
ここでAは、最終イメージのラインx1の作成のためのxの関数としての受信アポディゼーション関数である。したがって、イメージはMのラインを備える。
【0063】
変形
収差ディストーションの見積もりの分散の改良は、前の実施のわずかな改良によって可能となる。
ステップbではMの演算されたマトリックスの各々が、異なる角度αのチャネルデータ毎に全体加算することによって得られる所定の仮の動的送信集束ラインに起因する後方散乱エコーと対応する。
【0064】
しかしながら、場合によっては、ある所定のラインx1に対応した同一マトリックスの独立傾斜Kを合成することをステップbで実施することは興味深い。
例えば、そのような独立傾斜は、いくつかの低減された角度αの各角度だけに使用することで容易に構築できる。
【0065】
ある所定ラインx1に対応した同一マトリックスの独立傾斜Kを得るほかの方法は、ステップaを、アレイのトランステデューサの連続したサブセットへNの傾斜平面波を送れるように変えることである(すなわち、連続した連続的なサブ開口である)。そして、ステップ2ではラインx1に対応した仮のマトリックスの傾斜Kが、アレイのそれぞれのサブ開口から取得されたNのローRFデータのセット利用することで構築される。
【0066】
ステップb.2での収差ディストーションδ(x,x,z)の見積もりは、これらの収差は仮のラインxに対応したマトリックスのそれぞれの傾斜Kについて同様であるはずだから改善し得る。それ故単純に、同じマトリックスの異なる傾斜Kについてδ(x,x,z)を平均化することで見積もりの分散を低減できる。
【0067】
さらに複雑な再結合、例えばDORT技術が実施できる(例えば、Prada C, Thomas JL. Experimental subwavelength localization of scatterers by decomposition of the time reversal operator interpreted as a covariance matrix. JOURNAL OF THE ACOUSTICAL SOCIETY OF AMERICA 114 (1): 235-243 JUL 2003 および、Prada C, Manneville S, Spoliansky D, et al. Decomposition of the time reversal operator: Detection and selective focusing on two scatterers. JOURNAL OF THE ACOUSTICAL SOCIETY OF AMERICA 99(4): 2067-2076 Part 1 APR 1996.を参照する)。
【0068】
本発明による方法は例えば以下のように用いられる。
送信と受信にて動的に集束された少なくとも一の2次元か3次元の超音波イメージ生成の実施。
送信と受信にて動的に集束された一組の操作型超音波イメージであって、合成されたイメージの生成のために非干渉的にまとめることができるものの生成の実施。
送信と受信にてそれぞれ動的に集束された、少なくとも一の2次元か3次元の超音波イメージ生成と、一の2次元か3次元のカラーフローイメージ生成の実施。
少なくとも一の2次元か3次元の高品質である超音波組織ハーモニックイメージ生成の実施。
注入された造影剤を利用した、少なくとも一の2次元か3次元の高品質である超音波コントラストイメージ生成の実施。
送信と受信にて動的に集束され、また、例えば集束されたカラーフローやハーモニックイメージングなどの他の従来型手段と結合された、少なくとも一の2次元か3次元の超音波イメージ生成の実施。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信工程であって、複数の超音波が画像化領域へ送信され、それぞれのローデータの集合はそれぞれの超音波に応じたトランスデューサのアレイによって取得され、前記超音波はさまざまな空間周波数成分を有し、前記領域の複数の画像化された場所のそれぞれについて、ローデータの各集合は対応する超音波に応じた前記トランスデューサによって受信された時間信号を示すものと、
コヒーレンス向上工程であって、前記画像化領域の複数の仮の送信焦点域それぞれについて、前記ローデータの各集合から少なくとも一のコヒーレントデータの集合が合成されるものと、
整相工程であって、それぞれの前記仮の送信焦点域に含まれる複数の場所それぞれについて、イメージ画素が前記コヒーレントデータの集合を利用した整相によって演算されるものと、
を備えた超音波イメージングの方法。
【請求項2】
前記超音波はさまざまな伝播方向を有する平面波であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記超音波はさまざまな伝播方向を有する発散波であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記超音波は時空間的にコード化された励振であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記コヒーレンス向上工程は固定された音速値を利用して実施されることを特徴とする請求項1−4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記コヒーレンス向上工程は前記画像化領域の広域音速値の見積もりを含むことを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記コヒーレンス向上工程は、前記領域の画像化された場所それぞれについての広域音速の見積もりを含むことを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記コヒーレンス向上工程は位相収差の補正を含むことを特徴とする請求項1−7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記コヒーレンス向上工程では、それぞれの仮の送信焦点域は前記トランスデューサアレイに垂直な直線であることを特徴とする請求項1−8に記載の方法。
【請求項10】
前記コヒーレンス向上工程は、
前記領域での音速は一定であると仮定して、前記仮の送信焦点域に焦点を合わせた仮の動的送信を行うために、前記ローデータに遅延を適用することにより、それぞれの仮の送信焦点域についてのコヒーレントデータ集合を演算する第一サブ工程と、
前記第一サブ工程で演算された前記コヒーレントデータ集合に基づく前記画像化領域での収差を見積もることにより前記遅延が補正され、前記補正された遅延は、前記仮の送信焦点域に焦点を合わせた仮の動的送信を実施することによる新たなコヒーレントデータ集合の演算に用いられる第二サブステップと、
を備えたことを特徴とする請求項1−9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
少なくとも前記第二サブステップは複数回実施されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第二サブステップでは、それぞれのコヒーレントデータ集合についてさまざまなトランスデューサに対応した前記コヒーレントデータを相互相関させることによって前記収差の見積もりが行われることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
部位における複数の画像化領域のそれぞれのためのさまざまな空間周波数成分を有する複数の超音波を前記部位へ送信する手段と、
それぞれの超音波に対応して取得されたローRFデータの各集合を取得する手段と、
前記部位における複数の仮の送信焦点域のそれぞれについてのローデータの各集合から合成された少なくとも一のコヒーレントデータの集合を合成する手段と、
それぞれの仮の送信焦点域が含められる複数の場所のそれぞれについてのコヒーレントデータの集合を利用して、少なくとも一方向にそって整相された信号を演算する整相手段と、
を備えたことを特徴とする超音波イメージングの装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−219876(P2009−219876A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61469(P2009−61469)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(509073992)
【Fターム(参考)】