説明

超音波強度監視装置

【課題】経時変化や故障、人為的ミス等により所定の閾値を超えた場合に当該事実を自動報知することが可能な極めて実用性に秀れた超音波強度監視装置の提供。
【解決手段】洗浄液1が貯留される洗浄槽2に該洗浄液1に超音波振動を付与する振動部3が設けられ、この超音波振動が付与される洗浄液1により被洗浄物を洗浄する超音波洗浄装置に設けられる超音波強度監視装置であって、前記洗浄槽2に接合部材を介して設けられ前記超音波振動を感知して前記洗浄槽2に伝達される超音波強度を検出する超音波強度検出センサ4と、この超音波強度検出センサ4と接続され該超音波強度検出センサ4で検出した前記超音波強度が所定の上限閾値若しくは下限閾値を超えた際、この上限閾値若しくは下限閾値を超えたことを報知する報知機構を有する制御部5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波強度監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に開示されるような、洗浄液に超音波振動を付与することで洗浄液に浸漬した被洗浄物を洗浄する超音波洗浄装置は、例えば精密電子部品、半導体デバイス若しくはシリコンウェハなどを洗浄するために利用されている。
【0003】
ところで、近年、半導体技術の高密度化及びその他電子機械関連部品の清浄度向上の要求が厳しくなっているものの、洗浄品質を左右する超音波洗浄装置の超音波の管理(性能確認)は頻繁にはされておらず、年に数回の定期点検の度に行われる程度であるのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−221534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の精密電子部品等の被洗浄物は、処理工程数が多く、よって、超音波強度の低下(洗浄性能の低下)により清浄度が悪化した被洗浄物が、次工程にて不良品と認識された時点で超音波洗浄装置が異常であると気付いたのでは、生産効率に大きな影響を与えることとなる。
【0006】
そこで、例えば既存の超音波強度を視覚的に表示できる超音波モニターなどを用いて人手により随時観測を行うことが考えられるが、それだけ人的コストがかかることになり、生産コストに影響してしまう。
【0007】
本発明は、上述のような現状に鑑みなされたもので、洗浄槽の超音波強度を自動的に監視して経時変化や故障、人為的ミス等により所定の閾値を超えた場合に当該事実を自動報知することが可能な極めて実用性に秀れた超音波強度監視装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
洗浄液1が貯留される洗浄槽2に該洗浄液1に超音波振動を付与する振動部3が設けられ、この超音波振動が付与される洗浄液1により被洗浄物を洗浄する超音波洗浄装置に設けられる超音波強度監視装置であって、前記洗浄槽2に接合部材を介して設けられ前記超音波振動を感知して前記洗浄槽2に伝達される超音波強度を検出する超音波強度検出センサ4と、この超音波強度検出センサ4と接続され該超音波強度検出センサ4で検出した前記超音波強度が所定の上限閾値若しくは下限閾値を超えた際、この上限閾値若しくは下限閾値を超えたことを報知する報知機構を有する制御部5とを備えたことを特徴とする超音波強度監視装置に係るものである。
【0010】
また、請求項1記載の超音波強度監視装置において、前記制御部5は、前記振動部3の発振出力を任意の値に設定した際に前記超音波強度検出センサ4で検知した超音波強度を基準とし、この基準となる超音波強度の任意の範囲で前記上限閾値若しくは下限閾値を設定する閾値設定機構を有するものであることを特徴とする超音波強度監視装置に係るものである。
【0011】
また、請求項2記載の超音波強度監視装置において、前記超音波洗浄装置は前記洗浄槽2が複数設けられているものであり、この各洗浄槽2に夫々前記超音波強度検出センサ4が設けられ、この各超音波強度検出センサ4の出力端子が夫々別々の前記制御部5に接続されていることを特徴とする超音波強度監視装置に係るものである。
【0012】
また、請求項2記載の超音波強度監視装置において、前記超音波洗浄装置は前記洗浄槽2が複数設けられているものであり、この各洗浄槽2に夫々前記超音波強度検出センサ4が設けられ、この各超音波強度検出センサ4の出力端子が一の前記制御部5に夫々接続され、この制御部5の前記閾値設定機構は前記各洗浄槽2に設けた前記超音波強度検出センサ4毎に前記閾値を設定するように構成されていることを特徴とする超音波強度監視装置に係るものである。
【0013】
また、請求項1〜4いずれか1項に記載の超音波強度監視装置において、前記超音波強度検出センサ4として圧電素子が採用されていることを特徴とする超音波強度監視装置に係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上述のように構成したから、洗浄槽の超音波強度を自動的に監視して経時変化や故障、人為的ミス等により所定の閾値を超えた場合に当該事実を自動報知することが可能な極めて実用性に秀れた超音波強度監視装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施例の構成概略説明図である。
【図2】本実施例の閾値の設定を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0017】
洗浄槽2の洗浄液1に被洗浄物を浸漬させ超音波洗浄を行う際、超音波強度検出センサ4により常時振動部3により洗浄液1に付与される超音波振動を感知し、超音波強度を検出する。
【0018】
ここで、経時変化や故障、人為的ミス等により超音波強度が所定の閾値を超えると、制御部5の報知機構により閾値を超えたことが報知される。
【0019】
従って、例えば、超音波強度が上限閾値より大きくなったこと若しくは下限閾値未満となったことを直ちに判別でき、状態異常を迅速に検出することが可能となり、また、これに応じて振動部3の発振出力(超音波強度)を調整することで被洗浄物の清浄度の悪化等を可及的に抑えることが可能となる。
【0020】
また、超音波強度検出センサ4と制御部5とを設けるだけで既存のシステムにも容易に後付け適用が可能であり、極めて汎用性及び実用性に秀れたものとなる。
【0021】
更に、洗浄槽2から洗浄液1に付与される超音波強度を実際に検出することで異常検知等を行えるため、洗浄液に超音波振動を付与する超音波発振器の異常を、この超音波発振器に接続される超音波発振器制御用のコントローラにより該超音波発振器の電流や電圧を測定して検出する場合に比し、より実態に則した監視・報知が可能となり、より精度の高い異常管理が可能となる。
【実施例】
【0022】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0023】
本実施例は、洗浄液1が貯留される洗浄槽2に該洗浄液1に超音波振動を付与する振動部3が設けられ、この超音波振動が付与される洗浄液1により被洗浄物を洗浄する超音波洗浄装置に設けられる超音波強度監視装置であって、前記洗浄槽2に接合部材を介して設けられ前記超音波振動を感知して前記洗浄槽2に伝達される超音波強度を検出する超音波強度検出センサ4と、この超音波強度検出センサ4と接続され該超音波強度検出センサ4で検出した前記超音波強度が所定の上限閾値若しくは下限閾値を超えた際、この上限閾値若しくは下限閾値を超えたことを報知する報知機構を有する制御部5とを備えたものである。
【0024】
各部を具体的に説明する。
【0025】
洗浄槽2は、金属製の上部が開口した容体であり、この洗浄槽2には洗浄液1としての水が被洗浄物が浸漬し得る程度に満たされている。尚、金属製に限らず、ガラス製や樹脂製等、他の材質から成る洗浄槽2を採用しても良い。また、洗浄液1として水以外の液体を採用しても良い。
【0026】
洗浄槽2の底面外側には振動部3が設けられている。振動部3は周知の固定式の超音波振動子であり、例えばセラミックスなどから成る圧電素子に発振器から所定周波数の交流電圧を加えることで、周波数が20kHz〜3MHz程度の超音波を発生するものである。また、発振出力(超音波強度)は300〜4000W程度に設定される。この振動部3は、上記の発振周波数及び発振出力を被洗浄物に応じて適宜し得るように構成されている。
【0027】
超音波強度検出センサ4は圧電素子から成り、可及的に振動が減衰せず洗浄槽2に伝わる振動を低下させることなく超音波強度検出センサ4に伝達可能な適宜な接合部材を用いて洗浄槽2の周面外側に接着されている。接合部材としては本実施例においては接着剤を採用しているが、他の接合部材を採用しても良い。
【0028】
本実施例においては、前記超音波洗浄装置として前記洗浄槽2が複数設けられているものが採用され、この各洗浄槽2に夫々超音波強度検出センサ4が設けられ、この各超音波強度検出センサ4の出力端子が一の制御部5に夫々接続されている。
【0029】
制御部5は、振動部3の発振出力を任意の値(例えば超音波洗浄装置を通常運転する際の最大値など)に設定した際に超音波強度検出センサ4で検知した超音波強度を基準とし、この超音波強度の40〜80%の範囲で上限閾値及び下限閾値(閾範囲)を設定する閾値設定機構を有しており、この閾値設定機構は各洗浄槽2に設けた超音波強度検出センサ4毎に前記閾値を設定するように構成されている。本実施例においては、基準となる超音波強度の40%の値を下限閾値に、80%の値を上限閾値に設定する。尚、超音波強度の閾範囲は、洗浄槽2の容量や被洗浄物に応じて必要な洗浄性能を維持できる範囲で設定することになるが、基準となる超音波強度の50〜70%程度の値に設定するのが洗浄性能及び振動子の使用期間を両立する観点から最も好ましい。
【0030】
具体的には、制御部5は超音波強度検出センサ4の出力端子からの出力(超音波強度に対応する出力電圧)を増幅する増幅器6と、超音波強度検出センサ4からの出力と上記閾値とを比較する比較器7とを備え、この比較器7で超音波強度検出センサ4からの出力と閾値とを比較し超音波強度検出センサ4からの出力が上限閾値より大きくなるか下限閾値未満となった場合(閾範囲外となった場合)に、報知機構を作動させる信号を出力する。尚、超音波強度検出センサ4の感度によっては増幅器6は必ずしも必要でない。
【0031】
本実施例においては、比較器7は発振器に接続される報知機構としての警報ブザー10に接続され、報知機構に比較器7からの作動信号が入力されると、警報ブザーを鳴動させることで超音波強度が閾範囲外となっていることを周囲の人間に報知するように構成している。尚、警報ブザーに限らず、警報ランプを点灯させたり超音波洗浄装置を設置した敷地内に警報放送を放送したりするなど、他の方法によって超音波強度が閾範囲外となっていることを報知するように構成しても良い。
【0032】
従って、本実施例では、予め各洗浄槽2毎に超音波振動子の発振器を所定の発振出力とした際の超音波強度出力センサからの超音波強度(基準出力電圧)を基準出力電圧記録装置8に夫々記録し、この基準出力電圧を100%とし、図2中Aのように基準出力電圧に対する割合で閾値(本実施例では下限閾値:基準となる超音波強度の40%の値、上限閾値:基準となる超音波強度の80%の値)を各洗浄槽2毎に夫々設定し、閾値記録装置9に夫々記録する。即ち、例えば図2中Aより基準出力電圧が小さい図2中B1を図2中Aと同じ値を閾値とするのではなく(絶対値を閾値として用いるのではなく)、図2中B2のように図2中Aとは独立して基準出力電圧に対する割合で閾値を規定するから、各洗浄槽2毎に最適な超音波強度制御が可能となる。
【0033】
尚、本実施例は上述のように一の制御部5に各洗浄槽2に設けた超音波強度検出センサ4を夫々接続しているが、各検出センサの接続端子を夫々別々の制御部5に接続する構成としても良い。この場合、各制御部5毎に閾値を設定でき、上記同様に確実に超音波強度を制御可能となる。
【0034】
また、本実施例は上述のように上限閾値及び下限閾値を設定することで一定範囲の幅を持つ閾範囲を設定し、検出された超音波強度がこの閾範囲外となった場合に所定の処理を行うように構成しているが、上限閾値若しくは下限閾値のいずれか一方のみを設定しても良い。例えば、基準となる超音波強度の40%の値を下限閾値に設定し、検出される超音波強度がこの下限閾値未満となった場合にのみ所定の処理を行うように構成したり、基準となる超音波強度の80%の値を上限閾値に設定し、検出される超音波強度がこの上限閾値より大きくなった場合にのみ所定の処理を行うように構成したりしても良い。
【0035】
また、本実施例においては超音波強度検出センサ4からの出力が閾範囲外となった場合に、比較器からの作動信号を報知機構に入力して該報知機構を作動させるように構成しているが、前記作動信号を超音波強度が前記閾範囲内となるように振動部3の発振出力を制御する発振出力制御機構に入力するように構成しても良い。
【0036】
本実施例は上述のように構成したから、洗浄槽2の洗浄液1に被洗浄物を浸漬させ超音波洗浄を行う際、超音波強度検出センサ4により常時振動部3により洗浄液1に付与される超音波振動を感知して超音波強度を検出することで、経時変化や故障、人為的ミス等により超音波強度が所定の閾範囲外になると、制御部5の報知機構により閾範囲外となったことが報知される。
【0037】
従って、超音波強度が閾範囲外になると自動報知されるため、状態異常の検出や所定の清浄度を維持するための処置(発振出力の異常な変化が生じていた場合には手動で振動部3の発振出力を調整するなど)を迅速に行うことが可能となる。
【0038】
また、超音波強度検出センサ4と制御部5とを設けるだけで既存のシステムにも容易に後付け適用が可能であり、極めて汎用性及び実用性に秀れたものとなる。
【0039】
更に、洗浄槽2から洗浄液1に付与される超音波強度を実際に検出することで異常検知等を行うため、より実態に則した監視・報知が可能となり、より精度の高い異常管理が可能となる。
【0040】
よって、本実施例は、洗浄槽の超音波強度を自動的に監視して経時変化や故障、人為的ミス等により所定の閾範囲外となった場合に当該事実を自動報知することが可能な極めて実用性に秀れたものとなる。
【符号の説明】
【0041】
1 洗浄液
2 洗浄槽
3 振動部
4 超音波検出センサ
5 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液が貯留される洗浄槽に該洗浄液に超音波振動を付与する振動部が設けられ、この超音波振動が付与される洗浄液により被洗浄物を洗浄する超音波洗浄装置に設けられる超音波強度監視装置であって、前記洗浄槽に接合部材を介して設けられ前記超音波振動を感知して前記洗浄槽に伝達される超音波強度を検出する超音波強度検出センサと、この超音波強度検出センサと接続され該超音波強度検出センサで検出した前記超音波強度が所定の上限閾値若しくは下限閾値を超えた際、この上限閾値若しくは下限閾値を超えたことを報知する報知機構を有する制御部とを備えたことを特徴とする超音波強度監視装置。
【請求項2】
請求項1記載の超音波強度監視装置において、前記制御部は、前記振動部の発振出力を任意の値に設定した際に前記超音波強度検出センサで検知した超音波強度を基準とし、この基準となる超音波強度の任意の範囲で前記上限閾値若しくは下限閾値を設定する閾値設定機構を有するものであることを特徴とする超音波強度監視装置。
【請求項3】
請求項2記載の超音波強度監視装置において、前記超音波洗浄装置は前記洗浄槽が複数設けられているものであり、この各洗浄槽に夫々前記超音波強度検出センサが設けられ、この各超音波強度検出センサの出力端子が夫々別々の前記制御部に接続されていることを特徴とする超音波強度監視装置。
【請求項4】
請求項2記載の超音波強度監視装置において、前記超音波洗浄装置は前記洗浄槽が複数設けられているものであり、この各洗浄槽に夫々前記超音波強度検出センサが設けられ、この各超音波強度検出センサの出力端子が一の前記制御部に夫々接続され、この制御部の前記閾値設定機構は前記各洗浄槽に設けた前記超音波強度検出センサ毎に前記閾値を設定するように構成されていることを特徴とする超音波強度監視装置。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項に記載の超音波強度監視装置において、前記超音波強度検出センサとして圧電素子が採用されていることを特徴とする超音波強度監視装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−16081(P2011−16081A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162826(P2009−162826)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(301011327)株式会社アイエスエンジニアリング (3)
【出願人】(509193980)株式会社 ナコム (2)
【Fターム(参考)】