説明

超音波測定用プローブの位置検出方法およびその位置検出装置

【課題】超音波測定用プローブ位置の誤検出を防止することができる超音波測定用プローブの位置検出方法およびその位置検出装置を提供すること。
【解決手段】超音波測定用プローブ1の位置に設けられ、超音波測定用プローブ1の位置から2種類の伝搬速度が異なる波動である赤外線および超音波を同時または所定間隔をおいて送波する赤外線送波器11および超音波送波器10と、予め既知の位置に所定の間隔Lを隔てて配置され、前記送波された各波動を受波する複数の受波器15a,15bと、各受波器15a,15bが検出した前記2種類の波動の到達時間差をもとに超音波測定用プローブの位置を検出する演算処理回路と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波測定用プローブによる測定時に該超音波測定用プローブの位置を検出することができる超音波測定用プローブの位置検出方法およびその位置検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、超音波探傷用のセンサを備えたプローブに固着された発信機と、この発信機から射出された信号を受信する受信機と、この受信機からの信号に基づいて前記プローブの位置を算出する処理装置、とを備えた超音波探傷装置が記載されている。この超音波探傷装置によれば、超音波探傷用のプローブの位置及び/又は傾きを正確に検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−226230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたものでは、発信機からの信号の射出を、処理装置からケーブルを通じて送られる電気信号によって行っていた。このため、発信機と受信機との間にケーブルが介在し、このケーブルが障害物となって信号が遮断されることから、プローブの位置検出に誤差が生じてしまう、あるいはプローブの位置検出ができなくなってしまうという問題点があった。
【0005】
すなわち、特許文献1に記載されたものでは、超音波探傷作業中に探傷員の手などによって走査されるプローブに固着された発信機のケーブルは、プローブの動きに応じて色々な位置へ引き摺られるため、このケーブルが発信機と受信機との間に入ってしまうことがあり、このケーブルが障害物となってプローブ位置の誤検出などを招き易かった。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、超音波測定用プローブ位置の誤検出を防止することができる超音波測定用プローブの位置検出方法およびその位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる超音波測定用プローブの位置検出方法は、超音波測定用プローブの位置から2種類の伝搬速度が異なる波動を同時または所定間隔をおいて送波し、予め既知の位置に所定間隔を隔てて配置された複数の受波器のそれぞれが、前記送波された各波動を受波し、各受波器が検出した前記2種類の波動の到達時間差をもとに前記超音波測定用プローブの位置を検出することを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる超音波測定用プローブの位置検出方法は、上記の発明において、前記2種類の波動は、超音波と光とであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる超音波測定用プローブの位置検出方法は、上記の発明において、前記2種類の波動は、超音波と電波とであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる超音波測定用プローブの位置検出装置は、超音波測定用プローブの位置に設けられ、該超音波測定用プローブの位置から2種類の伝搬速度が異なる波動を同時または所定間隔をおいて送波する送波器と、予め既知の位置に所定間隔を隔てて配置され、前記送波された各波動を受波する複数の受波器と、各受波器が検出した前記2種類の波動の到達時間差をもとに前記超音波測定用プローブの位置を検出する位置検出部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる超音波測定用プローブの位置検出装置は、上記の発明において、前記2種類の波動は、超音波と光とであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる超音波測定用プローブの位置検出装置は、上記の発明において、前記2種類の波動は、超音波と電波とであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる超音波測定用プローブの位置検出装置は、上記の発明において、前記超音波測定用プローブによる検出結果と前記位置検出部が検出した超音波測定用プローブの位置とを対応付けて映像化する処理表示部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、超音波測定用プローブに取り付けられた送波器にケーブルを接続することなく、送波器が独立して動作でき、ケーブルが障害となることによる誤検出の問題を防止することが可能となった。さらに、位置検出用ケーブルをなくすことにより、超音波測定用プローブの走査に対する制約を排除することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかる超音波測定用プローブの位置検出装置の概要構成を示す模式図である。
【図2】図2は、超音波測定用プローブとして漏洩表面波プローブを用いた超音波測定用プローブの位置検出装置の構成を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明の実施例による測定ピッチ1mmのときの映像化結果を示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施例による測定ピッチ0.5mmのときの映像化結果を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施例による測定ピッチ0.2mmのときの映像化結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照して、本発明にかかる超音波測定用プローブの位置検出方法およびその位置検出装置について説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態である超音波測定用プローブの位置検出装置の概要構成を示す模式図である。この超音波測定用プローブの位置検出装置は、大きく、超音波プローブ2と、2つの受波器15a,15bとを有する。超音波プローブ2には、超音波測定用プローブ1の中心を合わせるようにして超音波送波器10が取り付けられている。超音波送波器10は、圧電素子を円筒形状に成型することにより作られており、360°の全方位にわたり超音波を送波することができる。また、超音波測定用プローブ1には、赤外線送波器11が取り付けられている。赤外線送波器11は、必ずしも超音波測定用プローブ1の中心と合わせて取り付ける必要はない。もちろん、超音波測定用プローブ1の中心と合わせて、超音波送波器10の上段あるいは下段に取り付けてもよい。なお、超音波プローブ2には、送波回路15が設けられ、この送波回路15は、超音波送波器10から超音波を送波させるための駆動回路と、赤外線送波器11から赤外線を送波させるための駆動回路と、バッテリー等の電源とを有する。送波回路15は、超音波送波器10からの超音波送波と赤外線送波器11からの赤外線送波とを同時に送波し、あるいは、所定の時間間隔をおいて送波する制御を行う。
【0018】
受波器15a,15bは、それぞれ超音波受波器12a,12bおよび赤外線受波器13a,13bを有し、超音波受波器12aと赤外線受波器13a、および超音波受波器12bと赤外線受波器13bは、それぞれ中心をあわせて上下一体にして構成されている。超音波受波器12a,12bは、超音波送波器10と同様に、圧電素子を円筒形状に成型することにより作られており、360°の全て方位にわたり超音波を受波することが可能である。なお、赤外線受波器13a,13bは、必ずしも超音波受波器12a,12bの中心と合わせて上下に取り付ける必要はない。この装置では、このような受波器15a,15bを少なくとも2個以上、所定の間隔Lを隔てて配置される。間隔Lは通常、10cm程度としている。
【0019】
ここで、受波器15a,15bの位置は既知であり、上述したように間隔Lを隔てて配置される。そして、赤外線送波器11および超音波送波器10から同時にそれぞれ赤外線および超音波が送波されると、赤外線受波器13a,13bおよび超音波受波器12a,12bがそれぞれ赤外線および超音波を受波する。赤外線は光速で伝搬し、超音波は音速で伝搬するため、受波器15a,15bでは、赤外線よりも超音波を遅く受波する。赤外線は光速であるため、送波とほとんど同時に赤外線受波器13a,13bによって受波されるため、この赤外線受波の時点から超音波受波の時点までの遅延時間を計測することによって、超音波プローブ2と受波器15aとの間の距離x1,x2を求めることができる。この結果、三角測量による前方交会法によって超音波プローブ2の位置を検出することができる。
【0020】
さらに、図2を参照して、この位置検出装置の動作について詳述する。ここでは、超音波測定用プローブ1として漏洩表面波を検出する漏洩表面波プローブ1Lを用いている。漏洩表面波プローブ1Lは、超音波送受信器50に接続され、超音波送受信器50から一定の繰返し周期によって印加される高電圧パルスにより超音波パルスを被検体との間の水中に送波する。この超音波パルスにより、被検体表面に漏洩表面波が励起され、さらに、被検体表面を伝搬した漏洩表面波は、モード変換により水中縦波となって漏洩表面波プローブ1Lで受波される。受波され電気信号に変換された漏洩表面波信号は、超音波送受信器50によって適当な振幅に増幅される。この増幅後の漏洩表面波信号は、ゲート回路51に送られ、ゲート回路51は、漏洩表面波による信号成分のみを抽出してピーク値検出回路52に送出する。ピーク値検出回路52は、入力された漏洩表面波による信号の振幅を検出し、検出結果を処理表示装置に送る。処理表示装置53は、送られた検出結果に対するデータ処理および画像表示処理を行う。
【0021】
一方、超音波送波器10および赤外線送波器11からは、定期的に超音波および赤外線が同時に送波され、受波器15a,15bによって受波される。受波された波動に基づいて、各受波器15a,15bに接続される演算処理回路16は、上述したように漏洩表面波プローブ1Lの位置を検出する。演算処理回路16は、処理表示装置53に接続され、処理表示装置53は、検出された漏洩表面波プローブ1Lの位置情報と対応付けて漏洩表面波による信号の振幅を収集する。この結果に基づいて、処理表示装置53は、漏洩表面波による2次元走査映像を生成し、表示する。
【0022】
ここで、上述したように、赤外線の波動が空間を伝搬する速度は、超音波の伝搬速度に比べて極めて大きいため、赤外線を受波したタイミングがほぼ超音波を送波したタイミングに等しいとみなすことができる。よって、赤外線受波器13a,13bによって赤外線を受波したタイミングと超音波受波器12a,12bによって超音波を受波したタイミングとの時間差は、超音波送波器10と超音波受波器12a,12bとの間を超音波が伝搬するのに要した時間に等しいとみなすことができる。
【0023】
この時間差(≒超音波が伝搬するのに要した時間)と空気中での超音波の伝搬速度とから、超音波送波器10と超音波受波器12a,12bとの間の距離x1,x2を求めることができる。このようにして求めた2つの距離x1,x2と受波器15a,15b間の間隔Lとから、上述した前方交会法によって、超音波送波器10の平面上の位置、すなわち漏洩表面波プローブ1L(超音波測定用プローブ1)の平面上の位置を求めることができる。
【0024】
(実施例)
つぎに、上述した超音波測定用プローブの位置検出法を用いて、疲労クラックを映像化した実施例について説明する。この実施例では、図2に示した漏洩表面波プローブ1Lを用い、漏洩表面波を用いた局部水浸法によって、被検体の表面に発生したクラックを検出した。
【0025】
この漏洩表面波プローブ1Lに用いられる超音波振動子は、球面に成型され、中央に孔がもうけられ、断面が円弧となっており、ごくうすい電極および保護膜を介して超音波伝達媒体である水に接する構造を有している。この超音波振動子としては,PVDFやP(VDF−TrFE)などのいわゆる高分子圧電体が好適である。また、漏洩表面波プローブ1Lの中央には給水孔が設けられており、図示しない給水装置から給水チューブ5を通して水が供給され、漏洩表面波プローブ1Lの中央から水が流れ出ることにより局部水浸法による超音波測定が可能になっている。
【0026】
この漏洩表面波プローブ1Lの上部には、漏洩表面波プローブ1Lと中心を合わせるようにして超音波送波器10が取り付けられており、さらに赤外線送波器11および送波回路15が取り付けられている。
【0027】
被検体として、肉厚3mmの鋼板からなる部材に発生した疲労クラックを用い、被検体に対して漏洩表面波プローブ1Lを手動で2次元走査し、漏洩表面波プローブ1Lの位置を検出するとともに、被検体の疲労クラックを、漏洩表面波を用いて検出し、図3〜図5に示すように映像化した。
【0028】
図3〜図5に示した漏洩表面波による2次元走査映像は、映像輝度を受波した漏洩表面波の振幅に応じて設定するようにして生成した。すなわち、受波した漏洩表面波の振幅が大きい場合には明るく、受波した漏洩表面波の振幅が小さい場合には暗く表示している。なお、漏洩表面波プローブ1Lとして、振動子材質:P(VDF−TrFE)、周波数50MHz、振動子直径8mm、水中焦点距離6mmの仕様の超音波プローブを用いた。
【0029】
図3〜図5に示した映像化結果から、極めて良好に疲労クラックの映像化が可能なことがわかる。そして、この実施例による漏洩表面波プローブ1L位置の誤検出の発生は皆無であった。
なお、超音波および赤外線の送波タイミングは必ずしも同時である必要はなく、時間間隔Tをおいて別々に送波を行ってもよい。この場合には、時間間隔Tを勘案して超音波測定用プローブ1と各受波器15a,15bとの距離x1,x2を求める。
【0030】
また、超音波送波器10から送波される超音波は、20kHz〜200kHz程度の低い周波数の超音波であることが好ましい。さらに、被検体に対する測定状態によって、超音波測定用プローブ1と受波器15a,15bとの間の距離を長くしたい場合、低い周波数の超音波を用いるとよい。たとえば、80kHzや100kHz程度に用いる。なお、超音波計測用プローブ1から送波される超音波の周波数は、解像度を得るため、通常、5MHz〜50MHzである。
【0031】
なお、上述した実施の形態および実施例では、赤外線と超音波とを送波するようにしていたが、これに限らず、赤外線と高周波電波とを送波するようにしてもよい。すなわち、送波される波動の速度が異なっていればよい。
【符号の説明】
【0032】
1 超音波測定用プローブ
1L 漏洩表面波プローブ
5 給水チューブ
10 超音波送波器
11 赤外線送波器
12a,12b 超音波受波器
13a,13b 赤外線受波器
15a,15b 受波器
15 送波回路
50 超音波送受信器
51 ゲート回路
52 ピーク値検出回路
53 処理表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波測定用プローブの位置から2種類の伝搬速度が異なる波動を同時または所定間隔をおいて送波し、
予め既知の位置に所定間隔を隔てて配置された複数の受波器のそれぞれが、前記送波された各波動を受波し、
各受波器が検出した前記2種類の波動の到達時間差をもとに前記超音波測定用プローブの位置を検出することを特徴とする超音波測定用プローブの位置検出方法。
【請求項2】
前記2種類の波動は、超音波と光とであることを特徴とする請求項1に記載の超音波測定用プローブの位置検出方法。
【請求項3】
前記2種類の波動は、超音波と電波とであることを特徴とする請求項1に記載の超音波測定用プローブの位置検出方法。
【請求項4】
超音波測定用プローブの位置に設けられ、該超音波測定用プローブの位置から2種類の伝搬速度が異なる波動を同時または所定間隔をおいて送波する送波器と、
予め既知の位置に所定間隔を隔てて配置され、前記送波された各波動を受波する複数の受波器と、
各受波器が検出した前記2種類の波動の到達時間差をもとに前記超音波測定用プローブの位置を検出する位置検出部と、
を備えたことを特徴とする超音波測定用プローブの位置検出装置。
【請求項5】
前記2種類の波動は、超音波と光とであることを特徴とする請求項4に記載の超音波測定用プローブの位置検出装置。
【請求項6】
前記2種類の波動は、超音波と電波とであることを特徴とする請求項4に記載の超音波測定用プローブの位置検出装置。
【請求項7】
前記超音波測定用プローブによる検出結果と前記位置検出部が検出した超音波測定用プローブの位置とを対応付けて映像化する処理表示部を備えたことを特徴とする請求項4〜6のいずれか一つに記載の超音波測定用プローブの位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−117850(P2012−117850A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265730(P2010−265730)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(510315261)インサイト株式会社 (1)
【Fターム(参考)】