説明

路面標示プレート

【課題】運転者や歩行者から路面標示が見やすく、しかも十分に高い耐荷重性を実現可能な路面標示プレートを提供すること。
【解決手段】本発明の路面標示プレート10は、プレート本体1に複数の光源2が設けられたものであって、プレート本体1は並行する複数の光源設置用溝1aが上側表面F1に設けられており、各光源2はこの光源設置用溝1a内に収容されている。この路面標示プレート10は、プレート本体1の光源設置用溝1aの長手方向と路面の長手方向とが略一致する向きとなるように道路に設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレート本体に複数の光源が設けられた路面標示プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等が通行する道路の表面には、交通の安全や円滑を図るための路面標示が設けられている。路面標示の具体例としては、車道中央線や境界線などの区画線、直進又は右折・左折を示す矢印などの記号、「止まれ」や「徐行」などの文字が挙げられる。これらの路面標示は、一般に塗料を用いて設置される。
【0003】
路面標示のなかには、運転者や歩行者(以下、「運転者等」という。)から見やすいように、発光ダイオード(LED)などの発光素子が用いられたものがある。例えば、特許文献1には、路面標示用のLEDが多数埋設された覆工板が記載されている。また、特許文献2には、路面にLEDで文字を表示する装置が記載されている。
【特許文献1】特許第3256488号公報
【特許文献2】特開平10−37112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、LEDなどの発光素子は、荷重が加わると容易に破損してしまう。そのため、路面標示に使用する際には、従来、発光素子を路面下に埋設して頑丈に保護しなければならず、装置全体が大掛かりなものとなっていた。また、発光素子を用いた従来の路面標示は運転者等からの見やすさの点においても未だ改善の余地があった。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、運転者や歩行者から路面標示が見やすく、しかも十分に高い耐荷重性を実現可能な路面標示プレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の路面標示プレートは、プレート本体に複数の光源が設けられたものであって、プレート本体は並行する複数の光源設置用溝が上側表面に設けられており、各光源はこの光源設置用溝内に収容されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の路面標示プレートにおいては、光源設置用溝内に路面標示用の各光源が収容されているため、プレート本体上を自動車等が通過しても光源に荷重が加わることがない。しかも、プレート本体の上側表面に並行に設けられた複数の溝といった比較的簡易な構成によって、優れた耐荷重性を達成可能であるから、光源のための大掛かりな保護構造が不要である。
【0008】
また、本発明の路面標示プレートは、プレート本体の光源設置用溝の長手方向と路面の長手方向とが略一致するように配置されることによって、この路面上を通行する運転者等が複数の光源の発光により形成される路面標示を視認しやすいという利点がある。この理由は以下のように説明される。
【0009】
例えば、各光源が発光している状態の路面標示プレートを光源設置用溝の長手方向と直交する方向から見ると、各光源からの光は光源設置用溝の側壁で遮られるため、光源設置用溝の長手方向と略一致する方向から見た場合と比較すると暗い印象を受ける。これに対し、光源設置用溝の長手方向と略一致する方向には、各光源からの光を遮る側壁がないから、他の方向から見た場合と比較すると、路面標示が明るく見えて視認性が高い。
【0010】
本発明の路面標示プレートは、光源の上方に配置された透光性の光拡散カバーを更に備えることが好ましい。この構成を採用することにより、光拡散カバーの下面に向けて出射された光は、光拡散カバー内で拡散されて、この光拡散カバーの上面が広く発光する。これにより、路面標示の視認性が一層向上する。
【0011】
また、本発明の路面標示プレートにおいて、光源の出射光は、光源設置用溝の長手方向に対して斜め上方に出射されるように、プレート本体の上側表面に対して所定の仰角を有していることが好ましい。この構成を採用することにより、路面標示プレートに近づいてくる運転者等の方向に光を出射させることができ、路面標示の視認性がより一層向上する。
【0012】
また、本発明の路面標示プレートにおいて、プレート本体の表面には滑り止め加工が施されていることが好ましく、これにより、路面標示プレート上を通行する自動車や通行人がスリップして生じる事故を未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、運転者や歩行者から路面標示が見やすく、しかも十分に高い耐荷重性を実現可能な路面標示プレートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る路面標示プレートの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
(第1実施形態)
本発明に係る路面標示プレートの第1実施形態について、図1〜図4を参照しながら、複数の白色LEDで右折を示す矢印を標示する場合を例に挙げて説明する。図1は、本実施形態の路面標示プレートを示す斜視図である。同図に示された路面標示プレート10は、プレート本体1に設けられた複数の白色LED(光源)2が発光して右向き矢印を標示する。図2は、路面標示プレート10の右向き矢印が自動車の前方で発光している状態を示す図である。図3は路面標示プレート10のIII−III線部分断面図であり、図4は路面標示プレート10のIV−IV線部分断面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る路面標示プレート10は、プレート本体1と、複数の白色LED2と、白色LED2を覆うように設置される光拡散カバー3とを備えている。
【0017】
プレート本体1は、矩形の鋼鉄製プレートであり、その上を自動車等が通行しても破壊されない強度を有している。プレート本体1の上側表面F1には滑り止め加工が施されている。これにより、路面標示プレート10上を通行する自動車がスリップして生じる事故を未然に防止することができる。また、プレート本体1の上側表面F1には、並行する複数のLED設置用溝(光源設置用溝)1aが設けられている。
【0018】
このLED設置用溝1aの内部には、右向きの矢印をかたどるように複数の白色LED2が配置されている。LED設置用溝1a内に各白色LED2が収容されているため、プレート本体1上を自動車等が通過しても白色LED2に荷重が加わることがない。したがって、白色LED2のための大掛かりな保護構造は不要である。しかも、LED設置用溝1a内に各白色LED2を配置するといった比較的簡易な手段によって優れた耐荷重性を達成可能であるから、路面標示プレート10の軽量化が図られている。
【0019】
複数の白色LED2は、図1及び図2に示すように、プレート本体1のLED設置用溝1aの長手方向とこの上を通過する自動車の進行方向とが一致するように設置されたときに、右向きの矢印をかたどるように配置される。このように白色LED2をLED設置用溝1a内に配置することで、例えば、自動車の進行方向とLED設置用溝1aの長手方向とが互いに直交するようにプレート本体1が設置されたときに、右向きの矢印をかたどるように白色LED2を配置した場合と比較すると、運転者が右向きの矢印を視認しやすいという利点がある。この理由は以下のように説明される。
【0020】
すなわち、例えば、各白色LED2が発光している状態の路面標示プレート10をLED設置用溝1aの長手方向と直交する方向から見ると、各白色LED2からの光はLED設置用溝1aの側壁1bで遮られるため、LED設置用溝1aの長手方向と略一致する方向から見た場合と比較すると暗い印象を受ける。これに対し、LED設置用溝1aの長手方向と略一致する方向には、各白色LED2からの光を遮る側壁1bがないため、他の方向から見た場合と比較すると、右向きの矢印が明るく見えて視認性が高い。
【0021】
LED設置用溝1a内に配置された各白色LED2は、図3に示すように、略円柱形状の本体部2aと、本体部2aの中央に設けられた発光部2bとを備え、本体部2aの両端に電流供給用の配線が接続される。各白色LED2は、本体部2aの長手方向がLED設置用溝1aの底面1cに対して、所定の角度で傾斜するように設置されている。各白色LED2を傾斜させて設置することで、白色LED2の出射光は、LED設置用溝1aの長手方向に対して斜め上方に出射される。これにより、路面標示プレート10が設置された位置に近づいてくる運転者の方向に光を出射させることができ、右向きの矢印の視認性がより一層向上する。
【0022】
なお、白色LED2は同一のLED設置用溝1aに収容された所定の個数ずつが直列に接続されて一つのユニットをなし、それぞれのユニットが電源(図示せず)に接続される。プレート本体1には、LED設置用溝1aの底面1cから下側表面F2にかけて貫通する貫通孔1dが所定の間隔で設けられており、この貫通孔1dを通じて各ユニット用の配線をプレート本体1の下側に引き出して、電源に接続できるようになっている。
【0023】
透光性の光拡散カバー3は、ポリカーボネートからなり、図4に示すように、その長手方向の断面はコ字状の形状を有している。光拡散カバー3は、各白色LED2の出射光を拡散させる機能を有している。この光拡散カバー3を、各白色LED2の上方でこれを覆うように設置することで、光拡散カバー3の下面に向けて出射された光は、光拡散カバー3内で拡散されて、光拡散カバー3の上面が広く発光する。これにより、右向きの矢印の視認性が一層向上する。
【0024】
光拡散カバー3は、LED設置用溝1aの底面1cに設けられたスペーサー5とビス止めされる。なお、図3に示すように、光拡散カバー3及びこれをビス止めするビス5aは、LED設置用溝1a内に収容されている。これらをプレート本体1の上側表面F1よりも上方には突出しないように設けることで、プレート本体1の上を自動車等が通行しても光拡散カバー3や白色LED2が破損することを防止できる。
【0025】
上述の通り、路面標示プレート10は、LED設置用溝1aの長手方向とこの上を通過する自動車等の進行方向とが一致するように設置されることで、明るく発光して運転者から見やすい右向き矢印を標示できる。また、路面標示プレート10によれば、LED設置用溝1a内に白色LED2及び光拡散カバー3を収容することで、十分に高い耐荷重性が達成される。
【0026】
(第2実施形態)
【0027】
図5は、本発明に係る路面標示プレートの第2実施形態を示す平面図である。同図に示す路面標示プレート20は、直進を示す矢印と右折を示す矢印とを切り替えて標示可能な構成となっている以外は、第1実施形態に係る路面標示プレートと同一の構成である。
【0028】
図5に示された領域A、領域B、領域Cにはそれぞれ複数の白色LED2がLED設置用溝1a内に設置されており、これらの白色LED2のうち、所定の領域にあるものだけを点灯させることで、直進を示す矢印を標示したり、右折を示す矢印を標示したりすることができる。より具体的には、領域A及び領域Cにある白色LED2を点灯させると、直進を示す矢印が標示され、領域B及び領域Cにある白色LED2を点灯させると、右折を示す矢印を標示される。
【0029】
(第3実施形態)
図6は、本発明に係る路面標示プレートの第3実施形態を示す平面図である。同図に示す路面標示プレート30は、各LED設置用溝1aの長手方向の一端から他端にかけて多数の白色LED2が並べて設置されて、各白色LED2の点灯と消灯とを制御して所望の路面標示を行うことができる構成となっている以外は、第1実施形態に係る路面標示プレートと同一の構成である。
【0030】
路面標示プレート30においては、LED設置用溝1a内に配置された各白色LED2は、制御ユニット50に接続されており、この制御ユニット50から所定の白色LED2に電流が供給される。路面プレート30によれば、設置場所に応じて、車道中央線や境界線などの区画線、直進又は右折・左折を示す矢印などの記号、「止まれ」や「徐行」などの文字を標示できる。また、所定の時間又は道路の状況に応じて所望の路面標示を行うように制御ユニット50を設定してもよい。
【0031】
以上、本発明に係る路面標示プレートの実施形態について詳しく説明したが、本発明は更に下記のような形態であってもよい。
【0032】
例えば、上記実施形態にあっては、光源として白色LED2を使用する場合を例示したが、面実装タイプのLED又は白熱電球やハロゲンランプなどを使用してもよい。また、光の色も白色に限られず、路面標示の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、最高速度を示すための路面標示には、オレンジ色の光に発光するLEDを使用すればよい。
【0033】
また、プレート本体1は、鋼鉄製プレートに限定されず、十分な強度を有するものであれば、例えば、鉄筋コンクリート構造のプレートを使用してもよい。また、光拡散カバー3の材質としては、ポリカーボネートに限定されず、光を拡散する性質を有し且つ十分な強度を有する材質であれば他の種類のものであってもよい。ポリカーボネートの他に好ましい材質として、ABS樹脂などが挙げられる。また、使用する光源の色を変更する代わりに、光拡散カバー3に所定の色が着色されたものを使用してもよい。
【0034】
なお、上記実施形態に係る路面標示プレート10,20,30は、一般の道路に常設して使用してもよく、また、工事現場の仮設道路等に設置して使用してもよい。後者の具体例としては、上記実施形態に係る路面標示プレートを覆工板の用途に使用することが挙げられる。覆工板とは、地下トンネルなどの工事現場において、掘削された地下空間を覆うように設置されるプレートである。
【0035】
図7は、路面標示プレート10を用いて構成された覆工板を示す斜視図である。同図に示す覆工板40は、路面標示プレート10と、その下側表面F2に溶接により設けられた4本のH形鋼8とを備えている。4本のH形鋼8は、路面標示プレート10を補強するためのものである。これらのH形鋼8は、互いに離間してプレート本体1の下側表面F2に設置され、その間から白色LED2用の配線を下側表面F2側に引き出せるようになっている。このような構成の覆工板40は以下の利点を有している。
【0036】
一般に、覆工板は地下工事の作業によって撤去又は再設置が繰り返されるところ、路面標示プレート10は、白色LED2のための大掛かりな保護構造が不要で十分に軽量化が図られているため、これを用いて構成される覆工板40は撤去作業又は再設置作業を効率的に行うことができる。
【0037】
また、このような覆工板が使用される地下工事は夜間に地上の車線を規制しながら行われることが多く、日中とは車線を変更することが多い。したがって、例えば、日中は直進車線であった車線に覆工板40を設置して右向き矢印を光らせることで、通行している車線が右折車線に変更されていることを夜間であっても運転者に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る第1実施形態の路面標示プレートを示す斜視図である。
【図2】図1に示された路面標示プレートの右向き矢印が自動車の前方で発光している状態を示す図である。
【図3】図1に示された路面標示プレートのIII−III線部分断面図である。
【図4】図1に示された路面標示プレートのIV−IV線部分断面図である。
【図5】本発明に係る第2実施形態の路面標示プレートの平面図である。
【図6】本発明に係る第3実施形態の路面標示プレートの平面図である。
【図7】図1に示された路面標示プレートを用いて構成された覆工板を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1…プレート本体、1a…LED設置用溝(光源設置用溝)、2…白色LED(光源)、3…光拡散カバー、10,20,30…路面標示プレート、F1…プレート本体の上側表面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレート本体に複数の光源が設けられた路面標示プレートにおいて、
前記プレート本体は、並行する複数の光源設置用溝が上側表面に設けられており、前記各光源は、前記光源設置用溝内に収容されていることを特徴とする路面標示プレート。
【請求項2】
前記光源の上方に配置された透光性の光拡散カバーを更に備えることを特徴とする、請求項1に記載の路面標示プレート。
【請求項3】
前記光源の出射光は、前記光源設置用溝の長手方向に対して斜め上方に出射されるように、前記プレート本体の前記上側表面に対して所定の仰角を有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の路面標示プレート。
【請求項4】
前記プレート本体の前記上側表面には滑り止め加工が施されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の路面標示プレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−240448(P2008−240448A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85166(P2007−85166)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】