説明

車両のトノカバー装置およびトノカバー装置の組立方法

【課題】車体後面の開口部を開閉可能に覆うバックドアと、該開口部の前方に広がる荷室フロアとが備えられており、荷室の左右の側面において略上下方向に延設されたガイドレールと、荷室フロアの上方に離間して配置されたトノカバーと、前記バックドアの開閉に連動してトノカバーの後端側を前記ガイドレールに沿って上下動させる連動手段とが備えられた車両のトノカバー装置において、組立工数を削減して、組立性を改善可能な車両のトノカバー装置およびトノカバー装置の組立方法を提供する。
【解決手段】ガイドレール41及び連動機構40を、一体の組立体として構成すると共に、後部ピラー7のトリム11にサブアッシしてサブアッシ体を構成し、かつ、このサブアッシ体Sを車体のインナパネル9に組み付けることにより構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部の荷室フロアの上方でバックドアの開閉に連動して後端側を略上下方向に移動させる連動手段を有する車両のトノカバー装置およびトノカバー装置の組立方法に関し、車両における内装の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
車体後部には荷室フロアが設けられると共に、車体後面には該荷室フロアへの荷物等の搬出入のための開口部と、該開口部を開閉可能に覆うバックドアとが設けられる場合がある。
【0003】
このような車両においては、荷室フロアに載置した荷物等を後部ウインド等を介して車外から視認できないように、荷室フロア面の上方において略水平に展開可能なトノカバー装置が設けられる場合がある。
【0004】
例えば、このようなトノカバー装置として、後端が車体の左右の側部内面に取り付けられたガイドレールと、前端が車体の左右の側部内面に枢支され、後端がガイドレールに上下動可能に支持されたトノカバーと、前記スライダをバックドアの開閉に連動して前記ガイドレールに沿って上下動させる連動部材とを有し、バックドアを開くと、連係部材を介してスライダが上方へ移動させられることにより、トノカバーが前端側を中心として後端側が持ち上がるように回動し、バックドアを閉じると、連係部材を介してスライダが下方へ移動させられることにより、トノカバーが後端側が下がるように回動するように構成したものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。これによれば、荷室フロアへの荷物の搬出入等に際してトノカバーの持ち上げ操作が不要となり、利便性が向上する。
【0005】
【特許文献1】特許第3613581号公報(図2〜図4等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のトノカバー装置においては、前述したような多くの部品類を車体側に取り付けねばならないので、車両の組立時における組立工数が増加するという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、前述したような構造を採用した場合でも、組立工数を削減して、組立性を改善可能な車両のトノカバー装置およびトノカバー装置の組立方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0009】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、車体後面の開口部を開閉可能に覆うバックドアと、該開口部の前方に広がる荷室フロアとが備えられており、荷室の左右の側面において略上下方向に延設されたガイドレールと、荷室フロアの上方に離間して配置されたトノカバーと、前記バックドアの開閉に連動してトノカバーの後端側を前記ガイドレールに沿って上下動させる連動手段とが備えられた車両のトノカバー装置であって、前記ガイドレール及び連動手段は一体の組立体として構成されていると共に、該組立体は後部ピラーのトリムにサブアッシされてサブアッシ体を構成しており、このサブアッシ体を車体に組み付けることにより構成されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の車両のトノカバー装置において、前記組立体を前記後部ピラーのトリムに固定してアブアッシ体を形成する固定手段が備えられていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の車両のトノカバー装置において、前記後部ピラーのトリム及び前記組立体には車体へサブアッシ体を固定する固定部がそれぞれ設けられていると共に、これらの固定部が車体に対して締結部材により共締めされていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両のトノカバー装置において、前記連動手段には、トノカバーの後端を、ガイドレールに対して上下動可能に支持させるスライダが含まれていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両のトノカバー装置において、前記連動手段には、後部ピラーのトリムに設けられた開口部を貫通して延びる連係部材と、該連係部材の先端側に取り付けられ、バックドアに連結される連結部材とが含まれていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、車体後面の開口部を開閉可能に覆うバックドアと、該開口部の前方に広がる荷室フロアとが備えられており、荷室の左右の側面において略上下方向に延設されたガイドレールと、前端が車体の左右の側部内面に枢支され、後端がガイドレールに上下動可能に支持されたトノカバーと、前記スライダをバックドアの開閉に連動して前記ガイドレールに沿って上下動させる連動手段とが備えられた車両のトノカバー装置の組立方法であって、前記ガイドレール及び連動手段を一体の組立体として組み立てるステップと、該組立体を後部ピラーのトリムにサブアッシするステップと、このサブアッシ体を車体に組み付けるステップとを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
次に、本発明の効果について説明する。
【0016】
まず、請求項1に記載の発明によれば、ガイドレール及び連動手段は、一体の組立体として構成されていると共に、該組立体を後部ピラーのトリムにサブアッシしてサブアッシ体として構成し、このサブアッシ体を車体に組み付けることにより構成されている。したがって、トノカバー装置を構成する各種の部品を個別に車体に対して組み付ける手間が大きく削減されることとなり、トノカバー装置の組立性が大きく改善されることとなる。
【0017】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記組立体を前記後部ピラーのトリムに固定した状態で、車体に取り付けることができるようになる。すなわち、サブアッシ体を構成したとしても組立体がトリムに固定されていなけれは、運搬途中や、車体への取付途中等において分解してしまう虞があるが、本発明によれば、そのような虞が解消される。
【0018】
また、請求項3に記載の発明によれば、前記後部ピラーのトリム及び前記組立体にそれぞれ設けられたアブアッシ体固定部が車体に対して締結部材により共締めされているから、これらの部材を車体に対して締結する手間を削減することができると共に、車体への取付強度を向上させることができる。
【0019】
また、請求項4に記載の発明によれば、スライダを別途取り付ける手間が省けることとなる。
【0020】
また、請求項5に記載の発明によれば、連結部材を別途取り付ける手間が省けることとなる。
【0021】
また、請求項6に記載の発明によれば、請求項1で説明したのと同様の効果が得られることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る車両のトノカバー装置について説明する。
図1はトノカバー装置を装着した荷室の上方斜視図、図2はトノカバー装置を装着した荷室の側面図、図3はトノカバー装置を装着した荷室の下方斜視図である。
【0023】
本実施形態の車両1の荷室Tは、図1に示すように車体後部のリアシート5後方に設けられており、荷室フロアを構成するリアフロアパネル2と、車体側面部3(図2参照)と、車体後面に設けられたバックドア4と、リアシート5のシートバック5aと等により区画された空間とで構成されている。
【0024】
リアフロアパネル2は、車体後部で略水平に設けられており、その上面に荷物を載置可能に構成されている。また、その後部には、下方に凹設して車幅方向に延びるサプトランク部2aが形成されている。このサブトランク部2aは、上方からトランクボード2bで覆われている。
【0025】
車体側面部は、車体側部で車両前後方向に延び、略上下方向に設けられている。車体側面部3には、その下部に後輪形状に対応して車室内方側に膨出するホイールハウス3aが形成され、また、その上方に、クオーターウィンドウガラス6が装着されている。
【0026】
クオーターウィンドウガラス6の車体後方側には、上下方向に前傾して延びる後部ピラー7が設けられている。この後部ピラー7は、車体デザイン上、比較的大きく前傾していると共に、上方側ほど左右のピラー7,7の間隔が狭くなるように車幅方向内側に内倒れしている。
【0027】
バックドア4は、その上端が回転ヒンジ4aを介して車体後部の上端に軸支されており、車体後面の開口部1aを開閉自在に覆うように構成されている。また、このバックドア4の上部には、後方視界を確保するためバックウィンドウガラス8が装着されている。
【0028】
側面部3の車体を構成するインナパネル9は、後部ピラートリム11、トランクサイドアッパトリム12、トランクサイドロアトリム13等により車室内側から覆われている。また、ルーフ部においてはルーフトリム14等により覆われ、バックドア4においてはドアトリム15等により覆われている。
【0029】
荷室T内には、リヤフロアパネル2の上方に離間して略水平方向に展開するトノカバー装置10が配設され、荷室T内の荷物が外部から視認できないようになっている。
【0030】
トノカバー装置10は、車体前方側に設けられるボード状の前部トノカバー20と、車体後方側に設けられる巻取り式の後部トノカバー30と、前部トノカバー20の後端と後部トノカバー30の前端を、バックドアの開閉に連動して略上下方向に移動させる連動機構40とを有し、
【0031】
前部トノカバー20は、合成樹脂材又は合板等によって形成した複数のボード部材21,22,23,24によって構成されており、トランクサイドアッパトリム12に車両前後方向に延びるように形成された棚部12aに、左右両端部が載置される。
【0032】
各ボード部材21,22,23,24は、その上面及び下面がそれぞれ被覆材によって連続的に被覆されており、上下の被覆材を隣接するボード間において縫合糸等で縫い合わせることにより、各ボード部材21,22,23,24を一体とされており、これにより、前部トノカバー20が、折り曲げ及び折畳み可能に構成されている。
【0033】
第1ボード21は、前後方向長さが最も長い略長方形形状の板材で形成している。この第1ボード21の下面左右両側には、図3に示すように(図3では一方のみ)、ヒンジピン27aを備えたヒンジユニット27が固定されている。
【0034】
このヒンジピン27aは、図4に示すように、トランクサイドアッパトリム12の棚部12aに形成されたホルダー凹部12bに対して上方から差し込むことで、ホルダー凹部12bに固定保持される。こうしてヒンジピン27aがホルダー凹部12bに固定保持されることで、トノカバー装置10の荷室Tでの位置が規定される。
【0035】
トノカバー装置10は、折畳み可能に構成されており、第1ボード21の下面には、図3に示すように、トノカバー装置10を車体から取り外して折畳んだ状態で保持させるための締結バンド28,28が設けられている。
【0036】
締結バンド28は、左右それぞれ一本ずつ設けられており、一端部28aが第1ボード21の下面に接合固定され、他端部に金属製のフック28bが設けられている。そして、このフック28bを利用して、左右の締結バンド28,28を連結すれば、展開時に下方に垂れ下がらないようになっている。
【0037】
図3に示すように、第4ボード24の後方には、後部トノカバー30の巻取りユニット31を固定する固定ボード29が設けられている。この固定ボード29は、第4ボード24の後端部の下面に、3つの連結部材29aを介して、第4ボード24に対して回動可能に連結されている。また、固定ボード29には、車幅方向に延びる巻取りユニット31が固定ボルト29bにより固定されており、前部トノカバー20と後部トノカバー30とを連結している。
【0038】
一方、後部トノカバー30は、図2、図3に示すように、巻取りユニット31と、巻取りユニット31から引き出されるシート部材32と、シート部材32の先端(後端)に固定される係合ハンドル部33,33とを有している。
【0039】
このうち巻取りユニット31は、車幅方向に延びる略角柱上のケーシング31aを有し、その内部には、シート部材32を巻き取る巻取りローラ34が設けられている。この巻取りローラ34には、シート部材32を巻取り方向に引き込む付勢部材(図示せず)が設けられている。
【0040】
また、巻取りユニット31は、トノカバー装置10の開放時、第4ボード24が上方に変位していく際に、第4ボード24と一体的に変位するように構成されている。また、巻取りユニット31の車幅方向両側端部には、後述するスライダー部材に嵌合支持(連結)される係合ボス部36,36が、車幅方向に延びるように設けられている。
【0041】
シート部材32は、車幅方向全幅にわたって展開する幅広の合皮製又は布製のシート材によって構成されており、巻取りユニット31の後部下端で、車幅方向に延びる引出し口(図示せず)から、車体後方側に向って引き出されるようになっている。
【0042】
そして、シート部材32は、図2に示すように、途中まで引き出されることで荷室Tの後部上方を覆い、バックドア4との係合を外した際には巻取りユニット31内に巻き込まれ、バックドア4を開放した際にはバックドア4に追従して大きく上方へ引き出され、荷室T上部と車体後部との間で略上下方向にスクリーン状に展開するようになっている。
【0043】
また、シート部材32には、その両側位置に略半円状に切欠いた側方凹部(図示せず)が形成されている。この側方凹部は、シート部材32をスクリーン状に展開した際に、車体後面の開口部1aの側縁との干渉を防ぐために設けられている。
【0044】
係合ハンドル部33は、図3に示すように、シート部材32の後端に左右2つ設けられており、ベース33aと、ベース33a内に設けたピン33bとで構成されている。そして、この係合ハンドル部33のピン33bを、図5に示すように、バックドア4に設けた係止フック91の上下の係止部91a,91bに嵌め込むと、係合ハンドル部33がバックドア4に固定されるようになっている。なお、シート部材32を巻取りユニット31内に収容する場合には、係止フック91からピン33bを取り外せばよい。
【0045】
次に、連動機構40について説明する。すなわち、連動機構40は、図6に示すように、後部ピラー7のインナパネル9(車体構成部材)と後部ピラートリム11との間の空間に配設されており、図7に示すように、ガイドレール41と、該ガイドレール41に沿ってスライド可能なスライダ42と、該ガイドレール41の両端部に設けられたプーリ支持ケース43,44と、該支持ケース43,44内に回動可能に収容支持された一対のプーリ45,46と、ガイドレール41の長手方向ほぼ中央に取り付けられた回転部材支持ケース47と、該回転部材支持ケース47内に回動可能に収容支持された回転部材50と、前記プーリ45,46及び第1回転部材50に巻き掛けられた第1連係ワイヤ51と、バックドア4の内面(トリム15)に固定される連結部材52と、一端が該連結部材52に、他端側が前記第2回転部材49に巻き掛けられて連結された第2連係ワイヤ53とを有している。なお、連動機構40は、左右のリアピラー7,7にそれぞれ設けている。なお、連動機構40は、特許請求の範囲における連動手段とガイドレールとの両方を含むものであり、ガイドレール41はガイドレールに対応し、連動機構40におけるガイドレール41を除くものが、連動手段に対応する。
【0046】
プーリ支持ケース43,44は、プーリ45、46を収容可能な空間を構成する一対の半割りケース43a,43b,44a,44bで構成されている。
【0047】
そのうち、後部ピラー7内において上方に位置する方のプーリ支持ケース43は、ガイドレール41の端部に直接固定されているが、他方のプーリ支持ケース44は、ガイドレール41の両端部にケース支持部材54を介してガイドレール41の長手方向に移動可能に取り付けられている。ケース支持部材54とプーリ支持ケース44との間には、該ケース44をガイドレール41の長手方向であって該レール41から離反する方向に付勢するバネ55が設けられている。
【0048】
回転部材50は、同一回動軸心上に配置された第1、第2回転部材48,49で構成されている。第1、第2回転部材48,49には、それぞれ位置決め部49c(図9においては第1回転部材の位置決め部は紙面裏側に位置しており、あらわれていない)が設けられており、これらの位置決め部49cを係合させることにより、1、第2回転部材48,49の周方向位相が所定の位相に合わされるようになっていると共に、一体回転するようになっている。
【0049】
第1回転部材48の外周部には2本の溝48a,48bが平行に設けられ、第2回転部材49には1本の溝49aが設けられている。
【0050】
第2回転部材49の外径は、第1回転部材48の外径よりも大きくされている。なお、外径の比は、前記スライダ42が下端位置から上端位置まで移動した場合における第2連係ワイヤ53の引き出し量を考慮して設定される。
【0051】
回転部材支持ケース47は、回転部材50を収容可能な空間を構成する一対の半割りケース47a,47bで構成されている。一方の半割りケース47bの外面側には、ぜんまいばね機構56(図示せず)が取り付けられている。
【0052】
このぜんまいばね機構56は、詳しくは図示しないが、ぜんまいばねと、該ぜんまいばねを収容する空間を前記外側の半割りケースとで形成し、ぜんまいバネの一端が固定されるぜんまいばね収容ケースと、半割りケース47bを貫通し、ぜんまいばねの他端が固定される矩形状の軸部材56aとを有している。
【0053】
ガイドレール41は、断面略C形の溝形鋼材により構成されており、両端部には、蓋部材41a,41bが取り付けられている。
【0054】
スライダ42には、ガイドレール41のスリット41cを介してガイドレール41の外部に延びるホルダ取付ブラケット57が固定されている。ホルダ取付ブラケット57の先端側は、後部ピラートリム11に、ガイドレール41に平行となるように形成されたスリット11r(図2参照)を介して後部ピラートリム11の表面側に臨んでおり、該ホルダ取付ブラケット57の先端側には、前記巻取りユニット31の両端の係合ボス部36,36部を保持する略矩形形状のホルダー部材58が固定されている。なお、スリット11rの幅は、ホルダー部材58の寸法よりも小さくされている。なお、ホルダー部材58は、特許請求の範囲におけるスライダを構成する。
【0055】
ガイドレール41の下端側の蓋部材41bから長手方向に所定距離離れた位置には、ストッパ部材59が取り付けられており、スライダ42が当該蓋部材41b側に移動してきたときに、ホルダ取付ブラケット57が当接するようになっている。
【0056】
ホルダー部材58には、巻取りユニット31の係合ボス部36を嵌め込むための嵌合溝部58aが形成されており、この嵌合溝部58aに係合ボス部36を上方から嵌め込むことにより、巻取りユニット31がホルダー部材58に支持されるようになっている。
【0057】
第1連係ワイヤ51は、一端部51abがスライダ42の一端部に固定され、他端側が、第1プーリ45を介して第1回転部材48の第1溝48aに巻き掛けられて、その端部51aaが第1回転部材48の第1係合部48cに係止された第1部材51aと、一端部51bbがスライダ42の他端部に固定され、他端側が第1回転部材48の第2溝48bに第1部材51aとは逆回転方向に巻き掛けられて、その端部51baが第1回転部材48の第2係合部48dに係止された第2部材51bとで構成されている。第1、第2部材51a,51bの長さは、それぞれ、スライダ42がガイドレール41における一端部から他端部まで移動可能な長さとされている。
【0058】
第2連係ワイヤ53は、一端部が前述のように前記連結部材52に連結され、他端側が第2回転部材49の溝49aに巻き掛けられて、その端部53aが第2回転部材49の係合部49bに係止されている。なお、第2連係ワイヤ53は、後部ピラートリム11の後縁部に形成された車内側への凸部11pに設けられた貫通孔11qを介して後部ピラートリム11の外部に導かれている(図2参照)。
【0059】
バネ55は、前記第1、第2連係ワイヤ51,53が巻きかけられた状態の回転部材50を回転部材支持ケース47内にその側方から移動させて収容する際、プーリ支持ケース44をケース45側に押してネ55を圧縮させることにより、第1連係ワイヤ51の張力を緩め、回転部材50を回転部材支持ケース内47に収容しやすくさせることを目的として設けられている。
【0060】
連結部材52には、クリップ部材76(図8参照)を収容可能なクリップ係合部が形成されており、バックドア4に固定されたクリップ部材76をクリップ係合孔に差し込むことにより、該連結部材52がバックドア4に固定されるようになっている。そして、連結部材52は、固定状態において、クリップ部材76を中心として回動可能に支持される。
【0061】
次に、この連動機構40の取付構造について説明する。
【0062】
連動機構40は、図6に示すように、ガイドレール41にネジ止めや接合等に固着された複数のブラケット71,72,73を介して、後部ピラートリム11や車体を構成するインナパネル9へ固定されている。
【0063】
第1ブラケット71は、ガイドレール41の長手方向に沿う長い矩形状のもので、下端側においてこれに直行する方向であって車両後方側に延びる第1取付部71bと、長手方向ほぼ中央でこれに直行する方向であって車両前方側に延びる第2取付部71aとを有している。第1取付部71b及び第2取付部71aは、後部ピラートリム11の内面に膨出形成されたボス部11a,11bにネジN,Nにより固定されている。
【0064】
第2ブラケット72は、基端部72aがガイドレール41の下部側に第1ブラケット71の下部側に重ねて固着され、先端側がこれに直行する方向であって車両前方側に、後部ピラートリム11の前縁部下部に突出形成された取付部11cにまで延びる舌状形状をしている。第2ブラケット72の先端部72b及び後部ピラートリム11の取付部11cには、それぞれボルト挿通孔72c(ピラートリム11側の孔は図示されていない)が形成されており、先端部72b及び取付部11が重ねられた状態で、両ボルト挿通孔72cにボルトB1が挿通されて、車体のインナパネル9に共締めされている。
【0065】
第3ブラケット73は、基端部73a(図6にはあらわれていない)がガイドレール41の上端側に固定され、先端側が上方に延びる舌状形状をしており、先端部73bには、ボルト挿通用の孔73cと、位置決め用孔73dとが形成されている。一方、後部ピラートリム11の上部には、車幅方向外側に凹む凹部11dが形成されていると共に、該凹部11dの底部には、車幅方向外側に位置決めピン11e及びボルト挿通孔11f(図示せず)が突出形成されている。そして、凹部11dの底部の位置決めピン11eと第3ブラケット73の先端部73bの位置決め孔73dとが嵌合された状態で、両ボルト挿通孔73c,11fにボルトB2が挿通されて、車体のインナパネル9に共締めされている。
【0066】
また、後部ピラートリム11の上部後側内面に突出形成されたボス部11gには、前記インナパネル9へ固定するためのクリップ11hが突出形成されている。また、後部ピラートリム11の上下方向略中間部後側内面に突出形成されたボス部11iには、同様のクリップ11jと、インナパネル9に対して位置決めするための位置決めピン11kが形成されている。
【0067】
また、後部ピラートリム11の下縁部後部には、下方に突出する取付部11mが形成されており、該取付部11mに形成された孔部11n、及び車体のインナパネル9における前記孔部11nに対応形成された孔部に別体のクリップC1が挿通されることにより、後部ピラートリム11の下部側が車体に対して固定されるようになっている。
【0068】
なお、後部ピラートリム11の凹部11dの共締め用ボルトB2は、凹部11dに表面側から蓋16をすることにより覆い隠されるようになっている(図2参照)。また、トランクサイドアップトリム12を後部ピラートリム11の後で車体に対して取り付けることにより、共締め用ボルトB1及びクリップC1についても、トランクサイドアップトリム12により覆い隠されるようになっている。
【0069】
次に、このように構成されたトノカバー装置の動作について説明する。
【0070】
まず、バックドア4が完全に閉じられた状態では、図2に示すように、連動機構40の連結部材52は、後部ピラー7の後縁の近傍に位置し、第2連係ワイヤ53は最も引きだされていない状態となっている。そして、スライダ42は、図11に示すように、ブラケット57がストッパ59に当接する下端位置に位置している。したがって、前部トノカバー20は、図2に示すように、これを構成する複数のボード部材21〜24が、左右のトランクサイドトリム12の棚部12aに左右両端部が載置された状態であり、ほぼ平坦な状態となっている。一方、後部トノカバー30は、後部側がバックドア4に連結され、前部側が前方に引っ張られていることにより、シート状でありながら、ほぼ水平な状態となっている。すなわち、荷室フロア2から上方に離間した位置で、その下方を覆った状態となっている。
【0071】
そして、バックドア4を開いていくと、連動機構40の連結部材52がこれに伴って後方上方へ移動することにより、第2回転部材49に巻き付けられた状態の第2連係ワイヤ53が、図10に示すように、ぜんまいばね機構56のばねによる巻取り力(付勢力)に抗して引き出されることとなる。また、このとき、第1回転部材48が第2回転部材49と共に一体回転し、その結果、第1連係ワイヤ51a,51bを介してスライダ42がガイドレール41に沿って上方に移動することとなる。
【0072】
そして、これにより、前部トノカバー20は、後端側が前方上方へ移動して、その前端側枢支部と後端側連結部との距離が徐々に短くなることにより、後側のボード部材23,24間から順に折れ曲がり、かつ後側のボード部材24から持ち上がり始める。
【0073】
一方、後部トノカバー30は、巻取りユニット31から巻取り力に抗して引き出されることとなる。なお、このとき、後部トノカバー30は、巻取りユニット31の巻取り力により、下方へ垂れ下がるのが防止される。
【0074】
そして、図11に示すように、バックドア4を完全に開くと、第2連係ワイヤ53が先に引き出されることにより、スライダ42が図10に示すようにガイドレール41の上端部にまで移動し、その結果、前部トノカバー20が折れ曲がった状態で持ち上がると共に、後部トノカバー30は、後端が上方に持ち上がってスクリーン状に展開することとなる。したがって、荷室フロアへの荷物の搬出入を容易に行うことができるようになる。
【0075】
その場合に、本実施の形態においては、前述のように、バックドア4側と、第1連係ワイヤ51とは、連結部材52、第2連係ワイヤ53、及び回転部材50を介して連結されているが、第2連係ワイヤ53はバックドア4の開閉に連動して回転部材50を回転できさえすればよいので、第2連係部材53の移動方向と一対のプーリ45,46の配設位置等の関係を自由に設定することができる。したがって、第2連係部材53のバックドア4への連結部の位置や、回転部材50及び一対のプーリ45,46の配設位置等を自由に設定することができる。換言すれば、車両の側面、例えば後部ピラー7等の形状に対する制約が解消され、車両の設計の自由度が向上することとなる。例えば、後部ピラー7がほぼ鉛直方向に延びているような場合でも、前記各部材を配設しつつ、所用の機能を達成することができる。
【0076】
また、回転部材50は、第1連係部材51が巻き掛けられ、または巻き付けられる第1回転部材48と、前記第2連係部材53が巻き付け係止される第2回転部材49とで構成されていると共に、第1回転部材48の径と第2回転部材49の径とが異なっており、かつ、第1回転部材48と第2回転部材49とが同一回転軸心上に設けられ、一体回転するように構成されているので、第1回転部材48の径と第2回転部材49の径との比を調整することにより、図11に示すように、バックドア4の開閉時における、第1連係部材51とトノカバー10との連結部の移動量X(スライダ41の移動量)と、第2連係部材53の第2回転部材49からの引き出し量Yとを自由に独立して設定することができる。すなわち、移動量Xにかかわらず、バックドア4の開閉可能角度等を自由に設定することができる。また、第2連係部材53の移動方向と一対のプーリ45,46の配設位置等の関係や、後部ピラー7の形状等を任意に設定しつつ、バックドア4の開閉可能角度等を自由に設定することができる。
【0077】
次に、本実施の形態に係るトノカバー装置の組立方法について説明する。
まず、最初のステップとして、ガイドレール41及び連動機構40を構成する前記各種部品をネジ等を用いて組み立てて一体の組立体として構成する。なお、第1〜第3ブラケット71〜73はガイドレール41に予め取り付けられているが、ホルダー部材58および連結部材52は取り付けられていない。
【0078】
次のステップとして、この組立体を、後部ピラートリム11に取り付ける。すなわち、スライダ41のブラケット57を後部ピラートリム11のスリット11rに挿通しながら、後部ピラートリム11の位置決めピン11eと第3ブラケット73の先端部73bの位置決め孔73dとを嵌合させる。そして、後部ピラートリムの第1、第2ボス部11a,11bと、第1、第2取付部71a,71bとをネジ止めする。そして、第2連係ワイヤ53の端部を後部ピラートリム11のワイヤ引き出し用の貫通孔11qを介して該トリム11の表面側に通すと共に、第2連係ワイヤ53の端部に連結部材52を取り付け、かつ、ブラケット57にホルダー部材58をネジにより取り付ける。そして、これにより、前記組立体と後部ピラートリム11とがサブアッシ体として構成される。
【0079】
次のステップとして、このサブアッシ体を、車体のインナパネル9に取り付ける。なお、このとき、トランクサイドアッパトリム12は、まだ取り付けられていない。まず、後部ピラートリム11の上部及び中間の位置決めピン11e,11jをそれぞれ、車体のインナパネル9に形成された位置決め孔(図示せず)にあわせる。そして、その状態で、このサブアッシ体をインナパネル9側に押し込んでいくと、クリップ11k,11gがインナパネル9に形成されたクリップ係合孔(図示せず)に係合される。これにより、サブアッシ体が車体に対して仮止めされる。
【0080】
そして、このとき、重ねられた状態となっている後部ピラートリム11の凹部11d及び第3ブラケット73の取付部73bに形成されたボルト挿通孔73c(後部ピラートリム側は図6においてあらわれていない)、並びにこれらの孔に対応して形成されたインナパネル9のボルト挿通孔(図示せず)に、後部ピラートリム11の表面側から、ボルト部材B2を挿通して、インナパネル9側に設けられたウェルドナットにねじ込んで固定する。
【0081】
また、このとき、重ねられた状態となっている後部ピラートリム11の取付部11c及び第2ブラケット72の先端部72bに形成されたボルト挿通孔72c(後部ピラートリム側は図6においてあらわれていない)、並びにこれらの孔に対応して形成されたインナパネル9のボルト挿通孔に、後部ピラートリム11の表面側から、ボルト部材B1を挿通して、インナパネル9側に設けられたウェルドナットにねじ込んで固定する。
【0082】
また、後部ピラートリム11の下部取付部11mに形成されたクリップ挿通孔11n及びこの孔に対応して形成されたインナパネル9のクリップ挿通孔に、樹脂製クリップCを挿通して係合させる。
【0083】
そして、後部ピラートリム11の凹部11dに蓋16(図2参照)をして共締め用ボルトB2を覆い隠す。また、トランクサイドアッパトリム12を車体に対して取り付ける。こうすることにより、共締め用ボルトB1及びクリップC1についても、トランクサイドアップトリム12により覆い隠される。したがって、美観が十分に担保される。
【0084】
そして、サブアッシ体の車体への取付が完了することとなる。
【0085】
以上のように、本実施の形態によれば、ガイドレール41及び連動機構40は、一体の組立体として構成されて、後部ピラートリム11にサブアッシしてサブアッシ体として構成されていると共に、このサブアッシ体を車体に組み付けることにより構成されている。したがって、トノカバー装置10を構成する各種の部品を個別に車体に対して組み付ける手間が大きく削減されることとなり、トノカバー装置10の組立性が大きく改善されることとなる。
【0086】
また、ホルダー部材58を取り付けるためのブラケット57を、後部ピラートリム11のスリット11rを介して該トリム11の表面側に露出させる必要があるが、本実施の形態においては、後部ピラートリム11側に予め取付ておくので、寸法精度を厳しくすることができ、スリット11fの幅を小さくすることができる。すなわち、例えば車体側にガイドレール等が取り付けられる場合には、寸法精度を緩くしてスリットの幅を大きくしておく必要があり、そのため見映えが悪化しやすいが、本実施の形態においては、そのようなことが防止されることとなる。
【0087】
また、組立体を後部ピラートリム11に固定した状態で、車体に取り付けることができるようになる。すなわち、サブアッシ体を構成したとしても組立体がトリム11に固定されていなけれは、運搬途中や、車体への取付途中等においてサブアッシ体が分解してしまう虞があるが、本実施の形態によれば、そのような虞が解消される。
【0088】
また、後部ピラートリム1及び組立体にそれぞれ設けられた固定部11c,72b,11d,73bが、車体に対してボルトB1,B2(締結部材)により共締めされているから、後部ピラートリム1及び組立体を車体に対して締結する手間を削減することができる。
【0089】
また、スライダ41に取り付けられたホルダー部材58を一体で取り付けることができ、車体への組付時に取り付ける必要がなくなる。
【0090】
また、連結部材52を一体で取り付けることができ、車体への組付時に取り付ける必要がなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、車体後部の荷室フロアの上方でバックドアの開閉に連動して後端側を略上下方向に移動させる連動手段を有する車両のトノカバー装置に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両後部の上方斜め前方からの斜視図である。
【図2】車両後部の側面図である。
【図3】車両後部の下方斜め前方からの斜視図である。
【図4】前部トノカバーの側部の車体側部内面への支持部の拡大図である。
【図5】後部トノカバーの後端部のバックドアへの連結部の拡大図である。
【図6】後部ピラーへの連動機構の取付部の拡大図である(後部ピラートリムの裏面側からの斜視図である。)
【図7】連動機構の分解図である(その1)。
【図8】連動機構の分解図である(その2)。
【図9】連動機構の基本構造図である。
【図10】連動機構による効果の説明図である。
【図11】バックドアを全開とした状態での車両後部の側面図である。
【符号の説明】
【0093】
1 車両
2 荷室フロア
4 バックドア
7 後部ピラー
10 トノカバー装置
11 後部ピラートリム
11a,11b ボス部(固定手段)
11c,11d 取付部(固定部)
72b,73b 先端部(固定部)
20 前部トノカバー(トノカバー)
30 後部トノカバー
40 連動機構
41 ガイドレール
42 スライダ
45,46 プーリ(一対のプーリ)
48 第1回転部材
49 第2回転部材
50 回転部材
51 第1連係ワイヤ
52 連結部材
53 第2連係ワイヤ
71a,71b 取付部(固定手段)
N ネジ(固定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後面の開口部を開閉可能に覆うバックドアと、該開口部の前方に広がる荷室フロアとが備えられており、
荷室の左右の側面において略上下方向に延設されたガイドレールと、
荷室フロアの上方に離間して配置されたトノカバーと、
前記バックドアの開閉に連動してトノカバーの後端側を前記ガイドレールに沿って上下動させる連動手段とが備えられた車両のトノカバー装置であって、
前記ガイドレール及び連動手段は一体の組立体として構成されていると共に、該組立体は後部ピラーのトリムにサブアッシされてサブアッシ体を構成しており、
このサブアッシ体を車体に組み付けることにより構成されていることを特徴とする車両のトノカバー装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の車両のトノカバー装置において、
前記組立体を前記後部ピラーのトリムに固定してアブアッシ体を形成する固定手段が備えられていることを特徴とする車両のトノカバー装置。
【請求項3】
前記請求項1または請求項2に記載の車両のトノカバー装置において、
前記後部ピラーのトリム及び前記組立体には車体へサブアッシ体を固定する固定部がそれぞれ設けられていると共に、
これらの固定部が車体に対して締結部材により共締めされていることを特徴とする車両のトノカバー装置。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両のトノカバー装置において、
前記連動手段には、トノカバーの後端を、ガイドレールに対して上下動可能に支持させるスライダが含まれていることを特徴とする車両のトノカバー装置。
【請求項5】
前記請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両のトノカバー装置において、
前記連動手段には、後部ピラーのトリムに設けられた開口部を貫通して延びる連係部材と、該連係部材の先端側に取り付けられ、バックドアに連結される連結部材とが含まれていることを特徴とする車両のトノカバー装置。
【請求項6】
車体後面の開口部を開閉可能に覆うバックドアと、
該開口部の前方に広がる荷室フロアとが備えられており、
荷室の左右の側面において略上下方向に延設されたガイドレールと、
前端が車体の左右の側部内面に枢支され、後端がガイドレールに上下動可能に支持されたトノカバーと、
前記スライダをバックドアの開閉に連動して前記ガイドレールに沿って上下動させる連動手段とが備えられた車両のトノカバー装置の組立方法であって、
前記ガイドレール及び連動手段を一体の組立体として組み立てるステップと、
該組立体を後部ピラーのトリムにサブアッシしてサブアッシ体を構成するステップと、
このサブアッシ体を車体に組み付けるステップとを有していることを特徴とする車両のトノカバー装置の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−56998(P2009−56998A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227671(P2007−227671)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】