説明

車両のバッテリ取付構造

【課題】 車両のコンパクト化という要請を満足しつつ、コスト増大を防止できるバッテリ取付構造を提供する。
【解決手段】 本発明のバッテリ取付構造は、バッテリ2から電力が供給される電動機を駆動力源として走行する車両のバッテリ取付構造において、バッテリ2が、車内のフロアパネル1上方位置、かつ乗員が着座するシート4下方位置に配置されることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機を駆動力源として走行する車両のバッテリ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動機を駆動力源として走行する車両がある。このような車両には、車両推進用の電力を電動機に供給するための大規模なバッテリが搭載される。こうした大規模バッテリは、その取付位置によっては、車両のコンパクト化を阻害してしまう。コンパクト化のために、バッテリをフロアパネル下方位置(車外)に配置するものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術では、バッテリが車外に配置されるため、水の浸入によるバッテリ故障を防止すべくバッテリのケースに防水加工を施す必要があり、バッテリケースの構造が複雑化しコストが増大するといった問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、車両のコンパクト化という要請を満足しつつ、コスト増大を防止できるバッテリ取付構造を提供することを目的とする。
【特許文献1】特開2001−138753号公報(同公報の第1図)
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のバッテリ取付構造は、バッテリから電力が供給される電動機を駆動力源として走行する車両のバッテリ取付構造において、前記バッテリが、フロアパネル上方位置、かつ乗員が着座するシート下方位置に配置されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の車両のバッテリ取付構造によれば、バッテリが、フロアパネル上方位置、かつシート下方位置に配置される。すなわち、車内の空き空間に配置される。したがって、車両のコンパクト化という要請を満足できる。しかも、バッテリが車内に配置されるので、バッテリケースに防水加工を施す必要がなくなりコスト増大を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は本実施形態における車両のバッテリ取付構造の概略構成を示す断面図、図2はバッテリ取付構造の概略構成を示す斜視図である。図3は前記バッテリを真上から見た図である。
【0009】
バッテリ取付構造は、図1および図2に示すように、フロアパネル1、バッテリ2、バッテリカバー3、シート4、およびシートレール5を有する。
【0010】
フロアパネル1は、キャビンの下面に配置されている。フロアパネル1の車両の幅方向中央には、排気通路等が格納されるよう、凸形状に変形され車両の前後方向に伸延するフロアトンネル6が設けられている。フロアパネル1の車両前後方向両端部には、車両の前後方向に伸延する一対のサイドシル7が設けられている。
【0011】
バッテリ2は、車両の駆動力源であるモータに電力を供給する強電バッテリであって、フロアパネル1上に配置されている。図3に示すように、バッテリ2は、サイドシル7とフロアトンネル6の間に配置されている。バッテリ2は、フロアパネル1上においてサイドシル7からフロアトンネル6に向かって形成されているビード8により車両の前後方向の位置が決められている。このビード8は、成型加工により形成され、凸形状をなすものである。
【0012】
また、図2に示すように、バッテリ2には、該バッテリ2上部にボルト等を通すねじ穴9が設けられ、そのねじ穴を通るボルト等により、バッテリカバー3およびシート4に固定される。固定の方法については後述する。
【0013】
バッテリカバー3は、金属薄板で形成され、乗員がバッテリ2に接触することを防止すべく、バッテリ2が車内に露出しないようバッテリ2を覆うとともにフロアパネル1上にボルト等により固定されている。このバッテリカバー3の上側には、乗員が着座するシート4がシートレール5を介して配置されている。このシートレール5は、シート4を固定するとともに該シートの前後方向の移動を可能にするものである。
【0014】
バッテリカバー3およびシートレール5には、それぞれねじ穴10およびねじ穴11が設けられている。これらのねじ穴10、ねじ穴11とねじ穴9は、バッテリ取付構造の組み立ての際には、同軸となるように位置合わせされ、共通のボルト等の固定手段が挿通されて、同時に固定される。
【0015】
バッテリカバー3の車両の幅方向中央には、フロアトンネル6等が格納されるよう段部12が形成され、バッテリカバー3が車両の幅方向にフロアトンネル6をまたぎつつ、該フロアトンネル6に交差する格好となっている。
【0016】
図4は、フロアトンネル付近のバッテリカバー3の形状を示す斜視図である。
【0017】
図4に示すように、段部12の車両の幅方向中央には、サービスプラグ用開口部13が設けられている。このサービスプラグ用開口部13は、バッテリ2のメンテナンス時、作業者が、作業前にバッテリ2を短絡させるサービスプラグを抜くことできるように設けられたものであって、作業を行わない通常時は、上下に開閉する蓋により閉じられている。
【0018】
図5は、車両のバッテリ取付構造の正面図である。図5に示すように、バッテリカバー3とサイドシル7は側面で結合し、該バッテリカバーと該サイドシルの高さは略同等である。また、バッテリカバー3の車両の幅方向の長さは、シート4の車両の幅方向の長さよりも長い。
【0019】
以下、図面を用いて車両の側面衝突時のバッテリカバー3とサイドシル7の様子を説明する。
【0020】
図6および図7は、車両の側面衝突時のバッテリカバー3とサイドシル7の様子を示す図である。したもので、図6はバッテリカバー3とサイドシル7が離れている場合を、図7はバッテリカバー3とサイドシル7が側面で結合している場合を示したものである。
【0021】
図6に示すように、バッテリカバー3とサイドシル7が離れている場合、図6に矢印で示す方向に車両が衝撃を受けると(図6(A))、サイドシル7が押しつぶされるように斜めに倒れる(図6(B))。サイドシル7が斜めに倒れることにより該サイドシルの角が最初にバッテリカバー3に衝突することになる。したがって、車両の幅方向から入力された衝撃はバッテリカバー3の側面の一部分に集中するので、バッテリカバーの側面の変形量が大きくなる(図6(C))。
【0022】
一方、図7に示すように、バッテリカバー3とサイドシル7が側面で結合している場合、図7に矢印で示す方向に車両が衝撃を受けると、サイドシル7はバッテリカバー3の側面で支持されているため、斜めに倒れるようなことはない。また、サイドシルに入力された衝撃は、サイドシル7の側面からバッテリカバー3の側面に伝わるため、衝撃が均等に分散され、サイドシル7およびバッテリカバー3の変形量が低減される。
【0023】
なお、図7に示すように、バッテリカバー3とサイドシル7の高さを略同等とすることにより、車両の側面衝突時、サイドシル7に入力された車両の幅方向の衝撃が効率よくバッテリカバー3に伝わるので、車両の幅方向の剛性が向上しサイドシル7の変形量が小さくなる。
【0024】
以下、本実施形態の効果について説明する。
【0025】
本実施形態の車両のバッテリ取付構造によれば、バッテリ2が、フロアパネル1の上方位置、かつシート4の下方位置に配置される。すなわち、車内の空き空間に配置される。したがって、車両のコンパクト化という要請を満足できる。しかも、バッテリ2が車内に配置されるので、防水加工を施したバッテリケースが不要となりコスト増大を防止できる。
【0026】
さらに、本実施形態の車両のバッテリ取付構造は、フロアパネル1上に配置され、バッテリ2が室内に露出しないよう該バッテリ2を覆うとともにシート4を支持するバッテリカバー3を有する。バッテリカバー3により、乗員がバッテリ2に接触することを防止できる。
【0027】
さらに、バッテリ2は上面と側面の少なくとも一方で、バッテリカバー3にねじ止めされるため、外部に露出したフロアパネル1にねじ穴を設ける必要がなくなる。したがって、ねじ穴に防水加工を施さなくて済み、コスト増大を防止できる。
【0028】
さらに、バッテリ2は、上面でシートレール5とともにバッテリカバー3にねじ止めされるため、シートレール5用のネジが不要となる。したがって、部品点数を削減でき、コストが削減できる。
【0029】
さらに、フロアパネル1は、車両の前後方向に伸延するサイドシル7とフロアトンネル6との間に車両の幅方向に伸延するビード8を有するため、バッテリ2の車両の前後方向の位置は該ビード8により決定され、また、車両の幅方向の位置は該サイドシル7および該フロアトンネルに6より決定される。したがって、バッテリ2を配置するに際して該バッテリの位置決めが容易となり、作業性が向上する。
【0030】
さらに、バッテリカバー3は、車両の前後方向に伸延するサイドシル7と結合しているため、車両の側面衝突時、サイドシル7に入力された車両の幅方向の衝撃がバッテリカバー3の側面に、部分的に伝わるのではなく、側面全体で伝わる。したがって、サイドシル7に入力された衝撃は、均等に分散されてバッテリカバー3に伝わるので、車両の幅方向の剛性が向上する。よって、車両の幅方向の変形量が低減され、乗員のスペースをより確保することができる。また、バッテリカバー3とサイドシル7が結合することで、該バッテリカバー3は、車両の幅方向の剛性を補強するクロスメンバの機能も有する。したがって、本来該バッテリカバー3付近に設けられていた該クロスメンバを廃止できる。結果として、部品点数を削減でき、コストを削減できる。
【0031】
さらに、前記バッテリカバーは、前記サイドシルと高さが同じであるため、車両の側面衝突時、該サイドシルに入力される車両の幅方向の衝撃が効率よく該バッテリカバーに伝わる。したがって、車両の幅方向の剛性が向上し、前記サイドシルの変形量が低減され、乗員のスペースをより確保することができる。
【0032】
さらに、バッテリカバー3は、シート4よりも幅が広いため、車両の側面衝突時、サイドシル7に入力される車両の幅方向の衝撃は、該シート4より先にバッテリカバー3に伝わる。したがって、バッテリカバー3に衝撃が吸収され、シート4に入力される衝撃を低減することができる。
【0033】
さらに、バッテリカバー3は、車両の前後方向に伸延するフロアトンネル6を車両の幅方向でまたぎ、該フロアトンネル6の上方位置に開口部13を有するため、以下の効果を得ることができる。
【0034】
すなわち、バッテリ2のメンテナンス時、通常、作業前にサービスプラグを抜くことによりバッテリを短絡させる。本実施形態では、フロアトンネル6がフロアパネル1中央に配置されているため、その両側にバッテリ2を分割して配置せざるを得ない。ここで、バッテリ2毎の配線をフロアトンネル6上にまとめ、そこでサービスプラグを配置する。このように一つにまとめられたサービスプラグの上方に開口部13を設けることによって、一回のサービスプラグの操作で前記バッテリを短絡させることができる。したがって、バッテリのメンテナンス時の作業性を向上できる。
【0035】
(第2実施形態)
バッテリ2の取付位置は、第1実施形態と同様なので説明を省略する。第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0036】
図8は、バッテリカバーを示す図であり、(A)はバッテリカバーの上面の形状を示す斜視図、(B)は(A)のB−B断面図である。
【0037】
図8に示すように、バッテリカバー3は、車両の前後方向に伸延する凸部14と凹部15とを有する。凹部15は、段部12に隣接して、すなわち、車両の幅方向内側に設けられている。凸部14は、凹部15から離れて、車両の幅方向外側に設けられている。凹部15および凸部14には、シートレール5が固定されている。凸部14と凹部15との間には、車両の幅方向にビード16が形成されている。このビード16は、成型加工により形成され、凸形状をなすものである。
【0038】
以下、本実施形態の作用について図を用いて説明する。
【0039】
図9は、車両の側面衝突時のバッテリカバー3の様子を示すものである。
【0040】
図9(A)に矢印で示す方向に車両が衝撃を受けた場合、凹部15は車両の幅方向に押しつぶされ、下方に飛び出す。一方、凸部14は車両の幅方向に押しつぶされ、上方に飛び出す。このように凹部15および凸部14が変形することにより、図9(B)に示すように、シート4が車両中心側に倒れるように作用する。
【0041】
以下、本実施形態の効果について説明する。
【0042】
バッテリカバー3は、上面に車両の幅方向外側に位置する凸部14と車両の幅方向内側に位置する凹部15とを有し、該凸部と該凹部とでシート4を支持するため、車両の側面衝突時、該凸部と該凹部は車両の幅方向に押しつぶされることにより、該凸部は上方に飛び出し、該凹部は下方に飛び出す。したがって、シート4が車両の幅方向中央側に倒れる。これにより、衝突時において側面衝突から逃げる方向に乗員のスペースを確保できる。
【0043】
さらに、バッテリカバー3は、凸部14と凹部15との間に位置するビード16を有するため、車両の側面衝突時、シート4が車両の幅方向中央に倒れるように該凸部と該凹部が変形する際、該バッテリカバーの凹部15と凸部14との間の部分の変形量を抑えることができる。したがって、確実にシート4を車両の幅方向中央側に倒すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第1実施形態における車両のバッテリ取付構造を示す横断面図である。
【図2】第1実施形態における車両のバッテリ取付構造を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態における車両のバッテリ取付構造の正面図である
【図4】第1実施形態におけるフロアトンネル上部のバッテリカバー上面の形状である。
【図5】第1実施形態における車両のバッテリ取付構造の断面図である。
【図6】サイドシルとバッテリカバーが離れている場合の車両側突時の様子を示した図である。
【図7】第1実施形態における車両側突時のサイドシルとバッテリカバーの様子を示した図である。
【図8】第2実施形態におけるバッテリカバーを示す図であり、(A)はバッテリカバーの上面の形状を示す斜視図、(B)は(A)のB−B断面図である。
【図9】第2実施形態における車両側突時のバッテリカバーの様子を示した図である。
【符号の説明】
【0045】
1…フロアパネル、
2…バッテリ、
3…バッテリカバー、
4…シート、
5…シートレール、
6…フロアトンネル、
7…サイドシル、
8…ビード、
9、10、11…ねじ穴、
12…段部、
13…開口部、
14…凸部、
15…凹部、
16…ビード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリから電力が供給される電動機を駆動力源として走行する車両のバッテリ取付構造において、
前記バッテリは、フロアパネル上方位置、かつ乗員が着座するシート下方位置に配置されることを特徴とする車両のバッテリ取付構造。
【請求項2】
前記フロアパネル上に配置され、前記バッテリが室内に露出しないようバッテリを覆うとともに前記シートを支持するバッテリカバーを有することを特徴とする請求項1に記載の車両のバッテリ取付構造。
【請求項3】
前記バッテリは、上面と側面の少なくとも一方で前記バッテリカバーに支持されることを特徴とする請求項2に記載の車両のバッテリ取付構造。
【請求項4】
前記バッテリは、上面で前記シートとともに前記バッテリカバーにねじ止めされることを特徴とする請求項3に記載のバッテリ取付構造。
【請求項5】
前記フロアパネルは、車両の前後方向に伸延するサイドシルとフロアトンネルとの間に、車両の幅方向に形成されるビードを有することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の車両のバッテリ取付構造。
【請求項6】
前記バッテリカバーは、上面に車両の幅方向外側に位置する凸部と車両の幅方向内側に位置する凹部とを有し、前記凸部と前記凹部とにより前記シートを支持すること特徴とする請求項2〜請求項5のいずれか一項に記載の車両のバッテリ取付構造。
【請求項7】
前記バッテリカバーは、前記凸部と前記凹部との間に車両の幅方向にビードが形成されていることを特徴とする請求項6に記載の車両のバッテリ取付構造。
【請求項8】
前記バッテリカバーは、車両の前後方向に伸延するサイドシルと結合することを特徴とする請求項2〜請求項7のいずれか一項に記載の車両のバッテリ取付構造。
【請求項9】
前記バッテリカバーは、前記サイドシルと高さが同じであることを特徴とする請求項8に記載の車両のバッテリ取付構造。
【請求項10】
前記バッテリカバーは、前記シートより幅が広いことを特徴とする請求項2〜請求項9のいずれかに記載の車両のバッテリ取付構造。
【請求項11】
前記バッテリカバーは、フロアパネルの車両の前後方向に凸形状に伸延するフロアトンネルをまたぐように交差し、該フロアトンネルの上方位置に開口部を有することを特徴とする請求項2〜請求項10のいずれか一項に記載のバッテリ取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−103628(P2006−103628A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296335(P2004−296335)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】