説明

車両のピラー構造

【課題】
ピラーの断面積を小さくし、妨害角を少なくして視認性を高めることができる車両のピラー構造を提供すること。
【解決手段】
少なくとも車外側に位置するボディサイドアウター(アウタピラー)20と、車内側に位置するインナピラー30とを有し、それぞれの端縁壁(端縁)21、31を一体的に接合して閉断面Hを形成すると共に、この閉断面H内に充填部材50を介在させた車両のピラー構造であって、インナピラー30の端縁壁31には、ボディサイドアウター20に接合される複数の凸状部33を形成し、この凸状部33とボディサイドアウター20とが接合した接合部16が閉断面Hの周面に沿うと共に、充填部材50を、凸状部44との間に間隙を設けた状態で配設するようにあらかじめ形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも車外側のアウタピラーと、車内側のインナピラーとを接合して閉断面を形成すると共に、この閉断面内に充填部材を介在させた車両のピラー構造に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来から、図9に示す車両のピラー構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ピラーPは、車外側に位置するアウタピラー1と、車内側に位置するインナピラー2と、このアウタピラー1及びインナピラー2の間に位置するレインフォース3とを備えている。そして、アウタピラー1とレインフォース3との間には、発泡樹脂材からなる充填材4が介在されている。
【0004】
アウタピラー1は、断面コ字状の本体部1aと、この本体部1aの両端部からそれぞれ外方に向けて突出したフランジ部1bとによって断面ハット状に形成されている。
【0005】
また、インナピラー2も、断面コ字状の本体部2aと、この本体部2aの両端部からそれぞれ外方に向けて突出したフランジ部2bとによって断面ハット状に形成されている。
【0006】
さらに、レインフォース3も、断面コ字状の本体部3aと、この本体部3aの両端部からそれぞれ外方に向けて突出したフランジ部3bとによって断面ハット状に形成されている。
【0007】
そして、アウタピラー1のフランジ部1bとインナピラー2のフランジ部2bとの間に、レインフォース3のフランジ部3bを配置し、アウタピラー1側とインナピラー2側の2方向から挟み込むスポット溶接によって一体に溶接固定することで、閉断面Hを形成している。
【0008】
また、充填材4は、予めアウタピラー1の本体部1aとレインフォース3の本体部3aとの間に配設され、閉断面Hを形成した後に、加熱されて発泡膨張するようになっている。
【特許文献1】特開2002−173049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述のピラー構造では、本体部1a、2a、3aの両端部から外方に向けて突出したフランジ部1b、2b、3bが溶接固定されている。そのため、閉断面Hから外方に向けてフランジ部1b、2b、3bが突出し、ピラーPの断面積を小さくすることができないという問題が生じていた。
【0010】
また、これにより、妨害角が多くなって運転手の視野範囲が狭まり、視認性が劣るという問題も生じていた。
【0011】
そこで本発明は、ピラーの断面積を小さくし、妨害角を少なくして視認性を高めることができる車両のピラー構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、少なくとも車外側に位置するアウタピラーと、車内側に位置するインナピラーとを有し、それぞれの端縁を一体的に接合して閉断面を形成すると共に、この閉断面内に充填部材を介在させた車両のピラー構造において、前記インナピラーの端縁には、前記アウタピラーに接合される複数の凸状部を形成し、該凸状部と前記アウタピラーとが接合した接合部は前記閉断面の周面に沿うと共に、前記充填部材は、前記凸状部との間に間隙を設けた状態で配設されるようにあらかじめ形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
このように構成された本発明によると、インナピラーに形成された凸状部がアウタピラーに接合されると共に、アウタピラーとインナピラーの凸状部とが接合した接合部が閉断面の周面に沿っている。
【0014】
これにより、閉断面から外方に向けて接合部が突出することがなくなり、ピラーの断面積を小さくすることが可能となる。そして、妨害角を減少させて、運転手の視野範囲を広げ、視認性を高めることが可能となる。
【0015】
また、アウタピラーはインナピラーに形成された凸状部と接合されるので、この凸状部によって支持された状態で接合することができ、容易に接合することができる。
【0016】
さらに、充填部材が凸状部との間に間隙を設けて配設されるようにあらかじめ形成されているので、充填部材は、アウタピラーとインナピラーとを接合する際に生じる熱の影響を受けず、表面を滑らかな状態のまま介在させることができる。
【0017】
そのため、この充填部材によって車両前面から入力された荷重を円滑に伝達することができ、効率的に車室側からの反力を高めることができる。また、この充填部材で閉断面を内部から支持でき、ピラーの変形が抑制され、曲げ剛性の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明に関わる車両のピラー構造を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に示す車両Sは、車両前後方向に延びたサイドルーフレール10の前部と、車両前後方向に延びたサイドシル11の前部との間に設けられると共に、ほぼ上下方向に延びるフロントピラー12を備えている。ここで、Rは車室であり、フロントピラー12は車室Rの側方に設けられた開口部13の前縁部を形成している。
【0020】
なお、図1、図2及び図3(a)中に示す矢印OUTは車両Sの正面から見て左側のフロントピラー12の車外側を示し、矢印INは車両Sの正面から見て左側のフロントピラー12の車内側を示している。
【0021】
このフロントピラー12は、図1に示すように、上方に位置するアッパピラー14と、このアッパピラー14の下方に位置するロアピラー15とを備えている。
【0022】
そして、図2に示すように、アッパピラー14は、車外側に位置するボディサイドアウター(アウタピラー)20と、車内側に位置するインナピラー30と、このボディサイドアウター20とインナピラー30との間に配設されたレインフォース40とを備えている。
【0023】
ボディサイドアウター20は、サイドシル11にまで延設されており、ロアピラー15のアウタパネルと一体になっている。
【0024】
また、このボディサイドアウター20の一方の短手方向端縁には、端縁壁21が形成されている。この端縁壁21は、側壁22を車内側に向って屈曲することによって形成されている(図3(a)参照)。なお、この端縁壁21は車両上方に面しており、車両下方に面した他方の短手方向端縁は省略する。
【0025】
また、インナピラー30は、後述するダッシュサイド近傍部17を覆うように延在されている(図2参照)。
【0026】
このインナピラー30の一方の短手方向端縁には、端縁壁31が形成されている。この端縁壁31は、側壁32を車外側に向って屈曲することによって形成されている(図3(a)参照)。なお、この端縁壁31は車両上方に面しており、車両下方に面した他方の短手方向端縁は省略する。
【0027】
そして、この端縁壁31には、図3(a)に示すように、後述する切欠部44内に嵌合すると共に、車両Sの上方側に向って突出した複数の凸状部33が形成されている。
【0028】
各凸状部33は、端縁壁31の端部31aに形成されており、レインフォース40の板厚とほぼ同じ高さだけ突出している。そして、切欠部44の内周縁44aにほぼ沿う矩形状を呈している。
【0029】
さらに、レインフォース40は、ロアピラー15の中間部にまで延在されている。
【0030】
このレインフォース40の一方の短手方向端縁には、端縁壁41が形成されている。この端縁壁41は側壁42を車内側に向って屈曲することによって形成されている(図3(a)参照)。なお、この端縁壁41は車両上方に面しており、車両下方に面した他方の短手方向端縁は省略する。
【0031】
そして、この端縁壁41には、図3(a)に示すように、ボディサイドアウター20の端縁壁21に接合する複数の接合片43と、この複数の接合片43と交互に位置する複数の切欠部44とが形成されている。
【0032】
この接合片43及び切欠部44は、端縁壁41の端部41aに形成されており、レインフォース40の長手方向に沿って延びる矩形状を呈し、互いにほぼ同じ大きさに形成されている。
【0033】
そして、各端縁壁21、31、41は一体に接合され、図4にその一部を示すような閉断面Hが形成されている。このとき、ボディサイドアウター20の端縁壁21及びレインフォース40の端縁壁41と、インナピラー30の端縁壁31とが互いに逆方向に向った状態で重ねあわされている。
【0034】
ここで、各端縁壁21、31、41が接合されている部分を接合部16という。この接合部16は、端縁壁21、41と端縁壁31とが互いに逆方向に向っているので、閉断面Hの周面に沿って形成されることとなる。つまり、接合部16は閉断面Hから外方に向って突出せず、閉断面Hの周面と一体になっている。
【0035】
なお、ボディサイドアウター20とレインフォース40の側壁22、42は、図4に示すように接合部16近傍ではほぼ密着した状態で重ねられている。しかしながら、次第に間隙が開くように適宜屈曲されてもよい。
【0036】
さらに、この閉断面H内のインナピラー30とレインフォース40との間には、図2に示す充填部材50が介在されている。
【0037】
充填部材50は、ここでは、ハニカム構造を呈したアルミニウム合金等の軽合金によって、あらかじめ閉断面Hとほぼ同じ形状となるように形成されている。また、この充填部材50は、接合部16の内側にもほぼ密着するように介在されているが、インナピラー30に形成された凸状部33との間には間隙Kが開くように形成されている(図4(b)参照)。
【0038】
ここで、「ハニカム構造」とは、六角形の多数の孔が開いている蜂の巣のような構造のことであり、周知であるのここでは詳細な説明を省略する。
【0039】
さらに、この充填部材50は、図2に示すように、アッパピラー14とロアピラー15とが一体となるダッシュサイド近傍部17にまで充填されている。
【0040】
なお、「ダッシュサイド近傍部」とは、車室RとエンジンルームEとを隔てるダッシュパネルDの側部及びその周囲を含む部分である(図1参照)。
【0041】
次に、この発明の車両のピラー構造の作用について説明する。
【0042】
フロントピラー12を組み立てるには、まず、図3(b)に示すように、ボディサイドアウター20とレインフォース40とを溶接によって接合する。
【0043】
このとき、ボディサイドアウター20の端縁壁21の車内側の面とレインフォース40の端縁壁41の車外側の面とを重ね合わせる。つまり、ボディサイドアウター20の端縁壁21によってレインフォース40の端縁壁41を覆う。そして、ボディサイドアウター20側と、レインフォース40側の2方向から挟みこむようにしてスポット溶接を行う。
【0044】
このスポット溶接とは、溶接したい部材を重ね合わせ、これを電極で挟んで通電加圧し、点状に圧接する方法である。
【0045】
スポット溶接を行う箇所は、ここでは図3(b)中SYで示しており、レインフォース40の接合片43と、ボディサイドアウター20とが対向している箇所である。
【0046】
なお、ここでは一つの接合片43に対し、長手方向に並んだ状態でスポット溶接を二回行っているが、一つの接合片43に対してスポット溶接を一回行うだけでもよい。また、図示しない他方の短手方向端縁も溶接によって接合する。
【0047】
このように、ボディサイドアウター20とレインフォース40とを接合したら、あらかじめ形成しておいた充填部材50をインナピラー30の車内側に配置する。
【0048】
そして、図3(c)に示すように、インナピラー30とボディサイドアウター20とを接合する。なお、図3(c)では、充填部材50を省略している。
【0049】
このとき、レインフォース40の端縁壁41の車内側の面と、インナピラー30の端縁壁31の車外側の面とを重ね合わせる。つまり、レインフォース40の端縁壁41によってインナピラー30の端縁壁31の少なくとも一部を覆う。
【0050】
また、このとき、レインフォース40に形成した切欠部44内にインナピラー30に形成した凸状部33が嵌合するように位置決めを行う。
【0051】
そして、切欠部44内に凸状部33が嵌合し、ボディサイドアウター20の端縁壁21がこの凸状部33と接触したら、ボディサイドアウター20側の一方向からレーザー溶接を行う。
【0052】
このレーザー溶接とは、レーザー光を溶接したい部材に集光した状態で照射し、部材を局部的に溶融、凝固させることによって接合する方法である。
【0053】
ここで、レーザー溶接を行う箇所は、図3(c)中LYで示しており、インナピラー30の凸状部33とボディサイドアウター20とが対向している箇所である。また、図示しない他方の短手方向端縁も溶接によって接合する。
【0054】
一方、充填部材50は、ボディサイドアウター20とインナピラー30とを接合する前に、あらかじめ形成されると共に、インナピラー30の車内側に配置されているので、ボディサイドアウター20の車内側に接合されているレインフォース40と、インナピラー30との間に介在されることとなる。
【0055】
このように、ボディサイドアウター20と、インナピラー30と、レインフォース40とによって閉断面Hが形成されると共に、この閉断面H内に充填部材50が配設されて、フロントピラー12が組み立てられる。
【0056】
このとき、充填部材50は、閉断面Hとほぼ同じ形状となるように成型されて、接合部16の内側にほぼ密着しているが、インナピラー30に形成された凸状部33との間には間隙Kが開くように形成されている(図4(b)参照)。
【0057】
そのため、この充填部材50は、ボディサイドアウター20とインナピラー30とをレーザー溶接によって接合する際に生じる溶接熱の影響を受けることがなくなる。これにより、充填部材50の表面が滑らかな状態のまま介在させることが可能となる。
【0058】
そして、この充填部材50によって車両前面から入力された荷重を円滑に伝達することができ、効率的に車室R側からの反力を高めることができる。また、この充填部材50で閉断面Hを内部から支持でき、フロントピラー12の変形が抑制され、曲げ剛性の向上を図ることが可能となる。
【0059】
また、この充填部材50は、図2に示すように、ダッシュサイド近傍部17にまで充填されるように形成されている。
【0060】
そのためこの充填部材50によって、アッパピラー14とロアピラー15との結合部分が支持されて結合剛性を向上させることができ、車体剛性にも寄与することが可能となる。
【0061】
さらに、充填部材50がアルミニウム合金等の軽合金によって形成されているので、ウレタン発泡材等の樹脂製の充填部材が介在されている場合と比較すると、フロントピラー12の曲げ剛性を約2.5倍〜3倍程度向上させることができる。
【0062】
鉄等の金属によって形成されたフロントピラーと比較しても、軽量化及び高剛性を向上させることが可能となる。
【0063】
そのため、フロントピラー12の閉断面Hの大きさを縮小しても十分な剛性を確保することができる。
【0064】
また、レインフォース40に形成された接合片43がボディサイドアウター20に接合されると共に、この接合片43と交互に位置する切欠部44内に嵌合するインナピラー30に形成された凸状部33がボディサイドアウター20に接合されるので、このボディサイドアウター20とレインフォース40とインナピラー30とを接合する接合部16が閉断面Hの周面に沿うこととなる。
【0065】
これにより、接合部16が閉断面Hから外方に向けて突出することがなくなり、フロントピラー12の断面積を小さくすることが可能となる。そして、運転手からの妨害角を減少させ、運転手の視野範囲を広げて視認性を高めることが可能となる。
【0066】
図5に、従来のフロントピラーによる妨害角の大きさを100%とした場合の、本願発明のフロントピラー12の妨害角の大きさの割合を示す。
【0067】
これによると、本願発明のフロントピラー12の妨害角の大きさは従来のフロントピラーと比較して約82%となり、約28%縮小することができたことがわかる。
【0068】
さらに、インナピラー30に形成された凸状部33は、インナピラー30の端縁壁31を閉断面Hの外方に向って屈曲することによって形成されている。
【0069】
そのため、この凸状部33の周囲の剛性が高まり、ボディサイドアウター20と凸状部33とを接合する際に、この凸状部33によってボディサイドアウター20の車内側の面が支持することができる。
【0070】
これにより、安定した状態でレーザー接合を行うことができ、ボディサイドアウター20やインナピラー30がずれたりせずに容易に接合することができる。
【0071】
また、この凸状部33は、レインフォース40の切欠部44内に嵌合するので、位置決めを容易に行うことができる。
【0072】
以上説明したように、この発明の車両のピラー構造では、少なくとも車外側に位置するアウタピラーであるボディサイドアウター20と、車内側に位置するインナピラー30とを有し、それぞれの端縁壁21、31を一体的に接合して閉断面Hを形成すると共に、この閉断面H内に充填部材50を介在させ、インナピラー30の端縁壁31には、ボディサイドアウター20に接合される複数の凸状部33を形成し、この凸状部33とボディサイドアウター20とが接合した接合部16が閉断面Hの周面に沿うと共に、充填部材50を、凸状部44との間に間隙を設けた状態で配設するようにあらかじめ形成している。
【0073】
そのため、閉断面Hから外方に向けて接合部16が突出することがなくなり、フロントピラー12の断面積を小さくすることが可能となる。そして、妨害角を減少させて、運転手の視野範囲を広げ、視認性を高めることが可能となる。
【0074】
また、凸状部33との間に間隙を設けて配設される充填部材50は、ボディサイドアウター20とインナピラー30とを接合する際に生じる熱影響を受けず、充填部材50の表面を滑らかに保持したまま閉断面H内に介在させることができる。
【0075】
これにより、この充填部材50によって車両前面から入力された荷重を円滑に伝達することができ、効率的に車室R側からの反力を高めることができる。また、この充填部材50で閉断面Hを内部から支持することができ、荷重入力によるフロントピラー12の変形が抑制され、曲げ剛性の向上を図ることが可能となる。
【0076】
また、この発明の車両のピラー構造では、ボディサイドアウター20とインナピラー30との間にレインフォース40が配置され、このレインフォース40の端縁壁41には、ボディサイドアウター20の端縁壁21に接合される複数の接合片43と、この複数の接合片43と交互に位置する複数の切欠部44とを形成し、この複数の切欠部44に凸状部33がそれぞれ嵌合すると共に、充填部材50は、レインフォース40とインナピラー30との間に配設される。
【0077】
このように、レインフォース40に形成した接合片43がボディサイドアウター20に接合すると共に、レインフォース40に形成した切欠部44にインナピラー30の凸状部33が嵌合するので、レインフォース40によってフロントピラー12の剛性を向上させても、閉断面Hから外方に向けて接合部16が突出することがなくなる。
【0078】
これにより、フロントピラー12の断面積を小さくすることが可能となり、妨害角を減少させて、運転手の視野範囲を広げ、視認性を高めることが可能となる。
【0079】
そして、フロントピラー12の断面積を小さくしても、十分な剛性を確保することが可能となる。
【0080】
以上、この発明にかかる実施の形態の一つを図面により詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施の形態に限らない。この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等はこの発明に含まれる。
【0081】
例えば、図6に示すように、接合部16を、ボディサイドアウター20よりも車外側に配置したウインドシールド51によって覆うと共に、このウインドシールド51の縁部51aを、ボディサイドアウター20との間に配設されたモール部材52によって覆ってもよい。
【0082】
これにより、接合部16から雨水等の浸入を防止でき、錆等の発生を抑制することが可能となる。
【0083】
また、上述の実施の形態では、充填部材50はハニカム構造を呈した軽合金によって形成されているが、多数の中空鉄球を接着剤によって一体にした中空鉄球の集合体によって形成してもよい。
【0084】
この場合であっても、充填部材50が凸状部33によって溶接熱の影響を受けないので、多数の中空鉄球を一体にする接着剤の劣化を防止し、充填部材50が変形することがなくなる。
【0085】
そのため、車両前面から入力された荷重を円滑に伝達することができ、効率的に車室R側からの反力を高めることができる。
【0086】
そして、上述の実施の形態では、ボディサイドアウター20とインナピラー30とはレーザー溶接によって接合されているが、図7(a)〜(d)に示すように、様々な方法によって接合してもよい。
【0087】
図7(a)では、ボディサイドアウター20の端縁壁21の端部21aと、凸状部33の中間部とが、一体的に溶接固定されている。この場合、MIG(metal inert gas welding)溶接やTIG(tungsten inert gas welding)溶接によって溶接固定される。ここで、図中Bは溶接ビードである。
【0088】
なお、MIG溶接とは、不活性ガスによりアークと溶接部とをシールドして溶接を行うイナートガスアーク溶接の一種で、溶接ワイヤを電極とする溶極式のものであり、TIG溶接とはMIG溶接同様イナートガスアーク溶接の一種で、タングステン電極を使用する非溶極式のものである。
【0089】
また、凸状部33の中間部とは、この凸状部33の端部31aよりも側壁32側に位置する部分であり、短手方向中央部である。
【0090】
これによれば、容易にボディサイドアウター20とインナピラー30とを接合することが可能となる。
【0091】
図7(b)では、ボディサイドアウター20の端縁壁21と凸状部33とをMIG−YAG(Yttrium Alminium Garnet)ハイブリッド溶接によって溶接接合している。ここで、図中Bは溶接ビードである。
【0092】
なお、MIG−YAGハイブリッド溶接とは、光エネルギーを用いたレーザー溶接と電気エネルギーを用いたアーク溶接とを組み合わせたものである。
【0093】
これによれば、溶接ビードBを小さくすることができ、見栄えを向上させることができる。
【0094】
図7(c)では、ボディサイドアウター20の端縁壁21と凸状部33との互いに対向する位置に挿通孔53a、53bを設け、各挿通孔53a、53bには一方向からの操作で固定可能なブラインドリベットBRが挿入されている。そして、このブラインドリベットBRによってボディサイドアウター20とインナピラー30とが接合されている。
【0095】
また、充填部材50のブラインドリベットBRに対向する部分には、凹部50aがあらかじめ形成されている。
【0096】
これによれば、溶接技術が必要なくなり、非常に容易にボディサイドアウター20とインナピラー30とを接合することが可能となる。
【0097】
図7(d)では、ボディサイドアウター20の端縁壁21の端部21aと凸状部33の端部31aとが、つき合わされた状態で摩擦攪拌溶接(FSW;Frictin Stir Welding)によって溶接固定されている。ここで、図中Yは溶接領域である。
【0098】
なお、摩擦攪拌溶接とは、溶接したい部材の突合せ部分に溶接ツールを回転させながら押し込み、摩擦熱によって軟化した部材を攪拌して接合するものである。
【0099】
これによれば、ボディサイドアウター20と凸状部33とが重ならないので、軽量化を図ることが可能となる。
【0100】
さらに、図8に示すように、ボディサイドアウター20の端縁壁21の端部21aと、レインフォース40の接合片43と、切欠部44とをそれぞれ円滑に連続する波形状に形成してもよい。
【0101】
このとき、インナピラー30の凸状部33の周縁部には、ボディサイドアウター20の端縁壁21の端部21aにほぼ沿う第一円弧部34と、切欠部44の内周縁44aにほぼ沿う第二円弧部35が形成されている。
【0102】
ここで、ボディサイドアウター20の端縁壁21の端部21aは、最も車外側に位置する部分(図8(a)における点A)が接合片43の先端と対向し、最も車内側に位置する部分(図8(a)における点B)が切欠部44の最も車外側に位置する部分と対向している。
【0103】
これにより、レインフォース40の端縁壁41は、ボディサイドアウター20の端縁壁21によって完全に覆われるようになっている(図8(b)参照)。
【0104】
また、凸状部33の周縁部に形成された第一円弧部34と第二円弧部35とは連続しており、凸状部33は楕円形状を呈している。
【0105】
このようなフロントピラー12も、図8(b)に示すように、まずボディサイドアウター20端縁壁21とレインフォース40の接合片43とをスポット溶接によって接合する。
【0106】
そして、図8(c)に示すように、レインフォース40の切欠部44内にインナピラー30の凸状部33を嵌合させ、ボディサイドアウター20とインナピラー30とをレーザー溶接によって接合する。
【0107】
このように、ボディサイドアウター20の端縁壁21の端部21aと、レインフォース40の接合片43と、切欠部44とをそれぞれ波形状に形成すると共に、凸状部33に第一、第二円弧部34、35を形成したので、ボディサイドアウター20の端縁壁21及びレインフォース40の端縁壁41をそれぞれ滑らかに連続する曲線状に形成することができる。
【0108】
そのため、応力集中が生じにくくなって曲げ剛性の変化が小さくなる。また、荷重入力時にフロントピラー12の損壊基点がなくなり、このフロントピラー12の剛性をさらに向上させることができる。
【0109】
また、上述の実施の形態では、フロントピラー12について説明しているが、これに限らず、センタピラーやリヤピラーであってもよい。
【0110】
この場合でも、ピラーの断面積を縮小することができ、妨害角を小さくすることができて、運転手の視認性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】この発明の車両のピラー構造を示す一部破断斜視図である。
【図2】この発明の車両のピラー構造を示す分解斜視図である。
【図3】(a)はこの発明の車両のピラー構造の要部拡大斜視図であり、(b)はボディサイドアウターとレインフォースとを接合した状態を示す要部拡大斜視図であり、(c)はボディサイドアウターとインナピラーとを接合した状態を示す要部拡大斜視図である。
【図4】(a)は図3(c)におけるSA−SA断面図であり、(b)は図3(c)におけるSB−SB断面図である。
【図5】この発明の車両のピラー構造の効果を示すグラフである。
【図6】この発明の車両のピラー構造の他の例を示す要部断面図である。
【図7】(a)はこの発明の車両のピラー構造の他の例を示す要部断面図であり、(b)はこの発明の車両のピラー構造の他の例を示す要部断面図であり、(c)この発明の車両のピラー構造の他の例を示す要部断面図であり、(d)この発明の車両のピラー構造の他の例を示す要部断面図である。
【図8】(a)はこの発明の車両のピラー構造の他の例の要部拡大斜視図であり、(b)はこの他の例においてボディサイドアウターとレインフォースとを接合した状態を示す要部拡大斜視図であり、(c)はこの他の例においてボディサイドアウターとインナピラーとを接合した状態を示す要部拡大斜視図である。
【図9】従来のピラー構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0112】
16 接合部
20 ボディサイドアウター(アウタピラー)
21 端縁壁(端縁)
30 インナピラー
31 端縁壁(端縁)
33 凸状部
50 充填部材
H 閉断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも車外側に位置するアウタピラーと、車内側に位置するインナピラーとを有し、それぞれの端縁を一体的に接合して閉断面を形成すると共に、この閉断面内に充填部材を介在させた車両のピラー構造において、
前記インナピラーの端縁には、前記アウタピラーに接合される複数の凸状部を形成し、該凸状部と前記アウタピラーとが接合した接合部は前記閉断面の周面に沿うと共に、
前記充填部材は、前記凸状部との間に間隙を設けた状態で配設されるようにあらかじめ形成されていることを特徴とする車両のピラー構造。
【請求項2】
前記アウタピラーと前記インナピラーとの間にはレインフォースが配置され、該レインフォースの端縁には、前記アウタピラーの端縁に接合される複数の接合片と、該複数の接合片と交互に位置する複数の切欠部とを形成し、該複数の切欠部内に前記凸状部がそれぞれ嵌合すると共に、
前記充填部材は、前記レインフォースと前記インナピラーとの間に配設されることを特徴とする請求項1に記載の車両のピラー構造。
【請求項3】
前記接合部は、ウインドシールドに覆われ、このウインドシールドの縁部は、前記ピラーアウタとの間に配設されたモール部材によって覆われていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両のピラー構造。
【請求項4】
前記充填部材は、ハニカム構造の軽合金や中空鉄球の集合体によって形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の車両のピラー構造。
【請求項5】
前記アウタピラーの端縁は、前記凸状部の中間部と一体的に溶接固定されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の車両のピラー構造。
【請求項6】
前記アウタピラーの端縁と前記凸状部との互いに対向する位置には、それぞれ挿通孔が設けられ、各挿通孔には一方向からの操作で固定可能なブラインドリベットが挿入され、該ブラインドリベットによって前記アウタピラーと前記インナピラーとが接合されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の車両のピラー構造。
【請求項7】
前記アウタピラーの端縁と前記凸状部の端縁とは、突き合わされた状態で溶接固定されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の車両のピラー構造。
【請求項8】
前記アウタピラーの端部と、前記レインフォースの接合片と、該接合片と交互に位置する切欠部とをそれぞれ波形状に形成すると共に、前記インナピラーの凸状部の端部には前記アウタピラーの端部及び前記切欠部の周縁にほぼ沿う円弧部を形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の車両のピラー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−151160(P2006−151160A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343949(P2004−343949)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】