説明

車両のレンジファインダ

【課題】車両の走行レンジを最適に予測する。
【解決手段】車載システム100は、ハードコードデータ、車両のセンサからのデータ、外部センサからのデータ、ユーザコードデータ、遠隔データベースから受信したデータ、ブロードキャストデータステムから受信したデータ、又は車両使用中に蓄積されたデータを含む入力手段を備え、車両速度、モータの毎分回転数、モータトルク、バッテリ電圧、バッテリ電流、及びバッテリ充電レベル等に関する情報を提供する。システムのプロセッサ装置に具備されるシミュレータコア120は、入力手段からの情報に基づいて予想走行車両レンジを算出する。算出結果は、ディスプレィ装置上でユーザに表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のリアルタイムレンジを推定するためのデバイス、システム及び方法に関し、より詳細には、車両の走行可能距離に影響を与える内的及び外的条件を考慮して、車両の走行範囲を推定するためのデバイス、システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者は、通常、ガソリン車の給油が必要になるまでに、あと何マイルを走行できるかについておよその見当がつけば満足する。車両の走行レンジが長いこと、至る所に存在する補給施設、燃料補給が短時間ですむこと、及び燃料が携帯できること等から、距離の見込み違いが発生するのはまれであり、通常は受容できる結果に至る。一方、代替的な燃料車両は、レンジが短いこと、補給施設の間隔が離れていること、燃料補給に時間がかかること、及び/又は燃料が容易に持ち運びできないこと、にしばしば悩まされる。そのため、燃料が切れるという状況がより頻繁におこり、且つそれを解決するのはより困難になる。「およその見当」は、ガソリン車に関しては受容されるのが通常であるが、代替的な車両の運転者には不十分であるのが通常である。天気、地形、運転スタイル、及び別の要素によって、車両のレンジは変化し、且つ、レンジが短い程、誤差問題の増大が予測される。例えば、電気車両又はハイブリット車両が登坂する際に、バッテリはすぐに消耗してしまう(ゲージを下げる原因となる)が、下り坂で、バッテリは再充電される(例えば、回生制動を介して)。このようにして、燃料補給又は再充電が必要になるまでどれくらい走行できるかを、消費者は正確に決定することができない。このことは電気車両に関して特に重要である。なぜならバッテリに蓄電可能なエネルギ量がガソリン車両に比べて制限されるため、誤差に対する許容範囲も制限されるからである。さらに、該車両のシステムもまた誤差の発生に寄与してしまい、いつ燃料補給又は再充電が必要になるかを顧客が推定するタスクをさらに複雑化させている。例えば、予想される地形が分からないことから、ハイブリッド車両は自身のジェネレータをあまりに遅く(傾斜面が始まった後)又はあまりに早く(所望の目的地に到着する直前)始動してしまう場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記した従来例の1又は複数の問題を克服することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、いくつかの実施形態の中で、複数の入力を含む車載システムを備えている。入力は、1つのハードコードデータ、車両のセンサからのデータ、外部センサからのデータ、ユーザコードデータ、遠隔データベースから受信したデータ、ブロードキャストデータステムから受信したデータ、又は車両使用中に蓄積されたデータを含む。入力は、車両速度、モータの毎分回転数、モータトルク、バッテリ電圧、バッテリ電流、及びバッテリ充電レベル等に関する情報を提供する。搭載されるシステムはさらに、複数の入力からの情報を受信し、且つ、少なくとも1つの予想車両レンジを算出する、プロセッサ装置を備えている。プロセッサ装置によって実行された算出結果は、ディスプレイ装置に出力として供給され、該装置上で情報がユーザに表示され、又は、車両の他のサブシステムに供給される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】本発明の一実施形態を概略的に示す図である。
【図2】電気車両で用いられる本発明の方法を概略的に示す図である。
【図3】ハイブリッド又は化学燃料のみの車両で用いられる本発明の方法を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、燃料補給が必要になるまでに車両が走行できる距離、すなわち車両の予想レンジ、を決定するためのデバイス、システム、及び方法からなる。本発明は任意のタイプの車両で使用可能であるが、自動車、トラック等のモータ付陸上交通機関に対して最も有用である。内燃機関、電気モータ、又は両方を組み合わせて用いる車両が適合しており、本明細書において「モータ」は、内燃機関、電気モータ、エンジン及びモータを組み合わせたデバイス、並びに別個にエンジン及びモータを有する車両を総称して用いられる。適合する車両のための燃料は、化学燃料(例:ガソリン、ディーゼル、天然ガス、水素等)、電気、又はこれら両方の組み合わせを含んでおり、「チャージ」は、車両で使用されている化学燃料、電気、及び化学燃料と電気の組み合わせを称して用いられる。「チャージレベル」は、バッテリ内であれ燃料タンク内であれ、車両に貯蔵されたエネルギ残量を表現するために用いられる。「リチャージング」及び「チャージング」は、車両に貯蔵されているエネルギを補充するプロセスを表現するために用いられる。リチャージング及びチャージングは、バッテリの充電だけでなく燃料の補給も包含する。バッテリの例には、電気化学的エネルギを貯蔵するデバイスが含まれる。キャパシタ等の電気エネルギを蓄電するデバイスもまた、バッテリという言葉に包含される。本発明で用いられるバッテリは、再充電可能であるのが望ましい。
【0007】
発明の概要
本発明の方法は、車両の予想レンジの算出を含む。これには、車両及び車両環境の現在の条件に関する初期情報を収集するステップ、車両の現在の効率を算出するステップ、及び車両のチャージレベルを監視するステップが含まれる。この方法はまた、チャージ残量及び/又は車両の予想レンジについての最新情報をユーザに提供するステップも含む。
本方法はまた、チャージ残量及び/又は車両の予想レンジを、意図している目的地と比較するステップと、車両がチャージ残量で目的地に到達できるかを判定するステップを含む。上記方法はさらに、車両に1番近い補給施設を確認し、この情報をユーザに対して表示するステップも含む。該方法はまた、ハイブリッド車両においてジェネレータを始動又は停止するステップ、あるいは、アクセサリによるエネルギ消費を低減又は除去するステップ等、所望の経路に関する予測電力消費に基づいて、車両システムを制御するステップも含む。
本発明のデバイス及びシステムは上述の方法で実現され、且つ複数の入力、バックエンド及びフロントエンドを備えている。バックエンドは、入力された情報を処理し、且つフロントエンドで表示するために情報を送信する。
【0008】
実施形態
第1の実施形態では、本発明の方法を実行するためのプログラム等のシステムが、車両のデバイス及びシステム内に記憶される。これは、該デバイス及びシステムが車両のOEM装置として販売されて、本発明の方法が実行されることを意味する。組み込まれるデバイス及びシステムの統合の度合いは可変である。システムは、車両の製造段階でインストールされ、且つ、以後インストールの必要はほとんどなく、車両のユーザによる初期化がわずかに必要となるのみである。他方においてコンポーネントは、車両の製造段階では一部のみが、例えば入力及びバックエンドが、インストールされる。この場合、ユーザはアフターマーケットフロントエンドを準備して、該フロントエンドにより別のコンポーネント及び/又は車両に恒久的又は一時的に接続することになる。別の構成では、コンポーネントのいくつかが車両製造段階でインストールされて、以後のある時点で他のコンポーネントが接続されることも可能である。
【0009】
第2の実施形態では、本発明の方法を用いたデバイス及びシステムは、車両から独立している。これは、該デバイス及びシステムが、車両のためのアフターマーケット装置として販売されることを通常は意味する。車両と一体化させる必要はないが、なんらかの統合は可能である。独立型デバイス及びシステムは、入力、バックエンド及びフロントエンドの全てを、単一の装置(例:ナビゲーション装置等)に組み込むこともできるし、あるいは、コンポーネントをいくつかのデバイス(例:バックエンド装置及びフロントエンド装置)に分散することもできる。
【0010】
第3の実施形態では、本発明の方法は、汎用の算出プラットホームで実行されるソフトウェアに組み込まれ、該プラットホームは、クライアント・サーバ構成、ワークステーション、ラップトップ、ネットブック、携帯端末、携帯電話であってもよいし、あるいはプロセッサ、メモリ、記憶装置、通信技術、ディスプレイ、又はこれらを組み合わせたものを備える別のデバイス又は構成であってもよい。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、目的地、経路、車両モデル、運転者プロフィール、又はこれらを組み合わせたものに関連する1又は複数の入力と、入力を受信し且つ予想車両レンジを算出するバックエンドモジュールと、ユーザに予想車両レンジを表示するフロントエンドモジュールとを備える、ソフトウェアアプリケーションである。
【0012】
図1には、本発明の一実施形態の概略図が示されている。デバイス及びシステム100に関して、入力はセンサデータ(及び関連処理)102、高度データ104、天候データ106、トラフィック(交通)データ108、地図データ110を含む。これらのデータを用いた検索又は算出に係る任意の関連処理は、バックエンドで実行される。高度データ、天候データ及びトラフィック(交通)データは、所望のデータをフェッチする(取り出す)一連のスクリプト112〜118によって、外部又は遠隔のデータベースから検索される。入力はデータを、バックエンドの核を形成するシミュレータコアすなわちプロセッサ装置120に送る。プロセッサ装置は、車両の予想レンジ、複数の補給施設までの距離等を算出するが、補間器122の使用を介して算出することが望ましい。バックエンドは、グラフジェネレータ124も備えている。バックエンドからの情報は、フロントエンド126に出力される。フロントエンドは、主としてユーザに情報を表示する。表示される情報は、バックエンドから供給されるのが通常であるが、地図データ110等の別のソースから得られることもある。さらに、補給施設の位置に関するデータ128もフロントエンドで表示される。補給施設の位置データは、所望のデータをフェッチする一連のスクリプト130によって、外部又は遠隔のデータベースから検索される。このデータを用いた検索又は算出に係る関連処理は、バックエンドで実行される。
【0013】
図2は、電気車両における予想車両レンジを決定する方法のフロー図を示している。すなわち、図2は、所望の経路上で車両の走行をシミュレートする際に実行されるステップを示しており、また、車両がいつどこでチャージが尽きるかの推定を提供するものである。初期化ステップ200は、車両タイプ、目的地、経路等のデータを、入力から取得する。運転者をモデル化するステップ202は、ユーザの運転スタイルに関する情報を取得するステップ、すなわち運転スタイル(例:攻撃的)を算出に組み入れるために、訂正ファクタを既得のデータに適用するステップを含む。車両にかかる力を決定するステップ204は、モータのトルクを算出するための基礎となるパラメータを算出するステップを含む。トルク、RPM(回転数/分)及びバッテリ電圧を決定するステップ206は、車両効率のこれらのパラメータのそれぞれを算出するステップを含む。電流を決定するステップ208は、所与のトルク、RPM、及び電圧での既知の電流ポイント間の補間処理を含む。パック効率を決定するステップ210は、バッテリパックの効率を算出するステップを含む。チャージ残量を調節するステップ212は、効率調整ワーク(電流×電圧×継続時間÷効率)をチャージレベルから差し引くステップを含む。この時、車両の予想レンジも算出される。チャージがゼロ以下に下降する時、車両のチャージは使い果たされており、その時点がその経路上の走行の限界距離に対応する。
【0014】
フロントエンドを更新するステップ214は、バックエンドからの出力を送信するステップを含む。目的地確認ステップ216は、プロセスを反復するか、又は終了してフロントエンド(ステップ218)を更新するかを決定するステップを含む。これらのステップは別個に示されているが、複数のこれらのステップを1つのステップにまとめてもよい。同様にして、電流を決定するステップを駆動系ロスを算出するステップ及びモータ/インバータロスを算出するステップに分割する等、任意の1ステップを細分化してもよい。また同様にして、これらのステップは連続的に示されているが、これらのステップのいくつか又は全ては、互いに並列して達成されてもよく、あるいは、リチャージングせずにユーザが目的地に到達できるようにするには、どの経路が最適かを決定するために、共通の複数出発点及び異なる複数目的地を用いて、又は共通の1出発点及び目的地並びに複数の異なる経路を用いて等、いくつかのシミュレーションが並列して実行されてもよい。
【0015】
図3は、化学燃料車両における予想車両レンジを決定する方法ステップのフロー図を示している。この図における参照番号は、図2の参照番号と概ね対応している。化学燃料車両に関しては、バッテリ電圧を算出する必要はなく、バッテリパック効率も重要ではないが、それは、これらがわずかであって駆動系の効率のファクタとして考えてよいためである。結果的に、これらのステップ又はステップの一部は不要である。
ハイブリッド車両に関しては、図2及び図3に示される方法を組み合わせて用いることで、車両の予想レンジを決定する。
【0016】
車両の予想レンジを算出する方法
本発明の方法は、充電又は燃料が尽きるまでの距離、すなわち車両の予想レンジを決定するステップを含む。シミュレーションモードにおいて、予想レンジの算出は、ユーザが所望の目的地までの走行を開始する前、あるいはユーザが目的地に到達する前のある時点で実行される。このモードでは、選択された目的地までの所望の経路上を、車両がどのように運転されるかのシミュレーションが、後述するステップ及びパラメータのいくつか又は全てを考慮に入れて行われる。このように、予測される気象条件の変化(例:風向及び風速の変化)又は道路条件の変化(例:標高差)、車速が一定ではないこと等が、予想レンジの算出において考慮されることになる。これらの将来的な条件は、車両効率の算出において、パラメータとして処理される。
【0017】
リアルタイムモードでは、以下で述べるパラメータにおける変化を考慮にいれ、且つパラメータに有意な変化が発生していないかを確認するために、予想レンジの算出は走行中に再度実行される。算出の再実行は、所定の時間又は距離間隔で、あるいは後述のパラメータの1又は複数で有意な変化がある時(例:5%以上)に行われる。再実行はまた、交差点、管轄区の違い(速度制限の違いに関連する)等、地理的に重要な位置で行われる。ある程度までは、算出再実行の頻度は、利用可能な計算能力に依存している。
【0018】
シミュレーション及びリアルタイムの両モードにおいて、車両の予想レンジを算出するために、同じ一連のステップが用いられる。ユーザの視点からでは、2つのモードの差異は殆ど認識不可能であろう。
【0019】
両モードにおいて、車両の予想レンジを算出するステップは、1つの基本演算を繰り返し適用する、すなわち、車両の現在の条件で必要なエネルギをチャージレベルから差し引いた後に、その時点の車両の効率で除算するというステップを、ユーザが選択した経路にかかる残存時間の一瞬一瞬に対して実行する。両モードにおいて、チャージレベルは、算出された車両効率で走行した距離に基づいて調整される。該方法は、走行する距離(シミュレーションモードで)又は走行した距離(リアルタイムモードで)によって増分された後に、反復される。経路のある瞬間においてチャージレベルが車両の最低チャージレベル以下である場合に、該算出は終了する。すなわち、車両のチャージレベルがゼロの時点で、車両のレンジの限界に達したことになるからである。
【0020】
以下で論述される、補間処理の開始点として使用される既知のデータポイントは、製品仕様書から、すなわち関連コンポーネントの型式及びモデルが、現実の状況下でどの程度類似したパフォーマンスをするかに基づいて得られる。後述の算出及び補間処理で用いられるパラメータに関する情報は、ハードコードデータ、車両のセンサからのデータ、外部センサからのデータ、ユーザコードデータ、遠隔データベースから受信されたデータ、ブロードキャストデータステムから受信されたデータ、又は本発明の別の部分の演算によって、時間の経過とともに蓄積されたデータから得られる。例えば、所与の一連の条件下で運転者がどの程度の加速をする傾向にあるかが記憶されているので、シミュレーションによって同様の条件が発生することが予測される場合は、運転者が同様の速度で加速すると予測できる。
【0021】
チャージレベル
本発明の方法において、チャージレベルに関する妥当性のある信頼できる情報を提供する任意の技術により、チャージレベルは監視される。これには、この情報又は既知の開始チャージレベルに基づいて算出された後に補間された情報を提供するための多様なセンサが含まれる。
【0022】
車両の効率を算出するステップ
車両の効率を算出するステップは、電気車両の場合は、バッテリパックの効率を算出するステップ及び駆動系の効率を算出するステップを含む。この2つのアスペクトを掛け合わせることで、車両の現在の効率が求められる。実際には、駆動系によって引き出される電流を計算し(「駆動系の効率を算出するステップ」を参照)、その後に(電流にアクセサリの負荷が追加された後)、バッテリパックの効率で電流を除算するステップによって、この方法は最も容易に利用できる。これによって、車両の効率で調整された、車両が使用している電流が求められる。
【0023】
バッテリパックの効率を算出するステップ
電気駆動車両に関しては、バッテリパックの効率は、既知のバッテリパック効率のデータポイントから補間される。さらに、補間には、多様なパラメータを考慮に入れることも含まれており、該パラメータには、周辺温度、チャージレベル、バッテリパックの劣化、及びバッテリから引き出される電流等が含まれるが、それらに限定するものではない。
化学燃料車両に関しては、タンクから燃料を抽出することに関わる関連ロスがなければ、燃料タンクの効率は100%であると考えられる。
【0024】
駆動系の効率を算出するステップ
駆動系の効率を算出するステップは、最初に、少なくとも、モータのRPM、モータトルク及びバッテリ電圧等の車両の現在の条件を含む、複数のパラメータを決定するステップを備えている。これらのパラメータは、駆動系に関する多数の既知のデータポイントと共に補間器に提供され、補間器は所望の値、例えば効率自体又は効率がスケールされた電流、電圧、又は燃料消費を提供する。
【0025】
バッテリ電圧
電気駆動車両に関しては、駆動系における電圧は、バッテリ電圧とほぼ同じである。化学燃料車両に関しては、バッテリは極めて小さく、車両の残りの部分との相互作用は効率面にほとんど影響しないため、バッテリに関する任意の非効率性の要因は、駆動系自身にあるとするのが最も単純である。ハイブリッド車両に関しては、両方の方策が同時に実行される。すなわち、ガソリン駆動系に何が起こっているかを考慮するステップと、電気駆動系に何が起こっているかを考慮するステップとが、個別に処理される。バッテリ電圧は、既知のバッテリデータポイントから補間される。さらに、補間では、周辺温度及びチャージレベルのパラメータのいくつか又は全てが考慮される。
【0026】
モータRPM
モータRPMは、車両速度及びギア比と正比例する。モータRPMは、走行中に直接測定する(リアルタイムモードで)か、又は補間を用いてトランスミッションをモデル化する(両モードで)ことによって測定される。ギア比は、既知のギア比のデータポイントから補間される。さらに、補間では、車速及びモータトルクのパラメータのいくつか又は全てが考慮される。
【0027】
モータトルク
モータのトルクは、最も決定が難しいパラメータである。モータのトルク量に影響を与える4つの主要なパラメータは、空気抗力、転がり抗力、重力の抗力、及び加速である。モータトルクは、これらのパラメータの総和(抗力の符号が加速の符号と反対の状態で)を有効シャフト長(ギア比/(2*Pi))で乗算したものである。
【0028】
空気抗力
空気抗力(aerodynamic drag)は、空気が車両に当たることから生じる。空気の質量密度はまず、以下の式によって演算される。
空気効力
=1.29kg/m3 * (CurrentAirPressure / 101,325Pa)
* (CurrentTemperature / 273.15K)
上記の式において、CurrentAirPressureは現時点の空気圧であってパスカルで表され、CurrentTemperatureは現時点の温度であってケルビンで表される。そして風が車両の座標フレームに回り込み、「水平」(横風)及び「垂直」(向かい風/追い風)の成分に分解される。
AirflowX(X軸方向の空気量)
=VehicleSpeed * sin(VehicleDirection)
−WindSpeed * sin(WindDirection)
AirflowY(Y軸方向の空気量)
=VehicleSpeed * cos(VehicleDirection)
−WindSpeed * cos(WindDirection)
HorizontalFlow(水平方向の空気量)
=AirflowX * cos(−VehicleDirection)
+AirflowY * sin(−VehicleDirection)
VerticalFlow(垂直方向の空気量)
=AirflowY * cos(−VehicleDirection)
−AirflowX * sin(−VehicleDirection)
上記の式において、VehicleSpeedは車両速度であって毎秒メートルで表され、VehicleDirection及びWindDirectionは車両走行方向及び風向であって両方ともラジアンで表される。
【0029】
空気抗力の合計は、以下の式から算出される。
空気抗力
=0.5 * MassDensity * (DragArea+DragAreaIncreaseWithCrosswinds
* fabs(HorizontalFlow)) * pow(VerticalFlow,2.0)
上記の式において、DragAreaはドラグエリア(抗力領域)で平方メートルで示され、DragAreaIncreaseWithCrosswindsは横風によるドラグエリアの増大分で単位のないパラメータである。また、関数fabs(x)はxの浮動小数点絶対値をあらわし、fabs(x)=|x|であり、pow(VerticalFlow, 2.0)=VerticalFlow2を表している。この式の演算結果は、VerticalFlowの方向を考慮するために、符号を訂正する必要がある。
【0030】
空気抗力を算出するためのより洗練された方法は、完全な算出流体力学(CFD)シミュレーションを実行することである。これは、通称では仮想風洞シミュレーションとして知られている。この方法は、計算能力及び時間の観点から使用できないのが通常であるが、将来的に計算能力にかかるコストが下降したならば使用可能になるであろう。中間的なアプローチは、温度、気圧、車両に関する風ベクトル等、多様なパラメータに対するCFDシミュレーションの結果をキャッシュ記憶及び補間することである。また、ドラグエリア及び横風の相互作用は、より詳細で決定論的な式を用いることにより、より明確化することができる。
【0031】
転がり抗力
転がり抗力(rolling drag)は、正確に算出するのが恐らく最も困難な抗力であろう。転がり抗力の概算は、次式で算出できる。
転がり抗力
=LoadedVehicleMass * 9.81m/s2 * TireRollingCoefficient
上記の式において、LoadedVehicleMassは車両の負荷質量でありキログラムで示され、TireRollingCoefficientはタイヤの回転係数であり単位がない。しかしながら、多様なファクタがこれに影響を与えている。タイヤ圧が上昇すると、サイドウォール及びトレッドの屈曲性が低減されることによって、転がり抵抗は低下する。温度の上昇よって、タイヤ圧が上昇するので、転がり抗力は低下するが、ヒステリシスのロスにも影響を与えてしまう。速度は、高速時にタイヤで生じるスタンディングウェーブに起因する、弱いが2次的スケールの転がり抗力の増加の原因となるが、これは相反する結果である高速時におけるタイヤ温度(それゆえ圧力も)の上昇よりも、大きいのが通常である。タイヤの使用によってタイヤ温度が上昇することに起因して、運転するにつれてタイヤ圧は上昇し、それにより転がり抗力は低下する。濡れた路面は、部分的には水の移動に起因するが、主としてタイヤ表面の気化冷却に起因して、転がり抗力を増大させ、内部圧力を低減させる。悪路は、サスペンションロスを増加させるが、サスペンションロスは転がり抗力と一体にされるのが通常である。どの程度までこれらのファクタの全てがモデル化される必要があるかは、製品に要求される正確性に依存しており、また、一般物理学から導き出すよりも、既知の現実の一連データに適合するような多項式(ax+bx2+cx3+・・・)を作成することにより、最適にモデル化することができる。
【0032】
重力抗力
重力抗力(gravity drag)
=9.81m/s2 * LoadedVehicleMass * sin(SurfaceSlope)
と定義される。LoadedVehicleMassは車両の負荷質量でキログラムで表され、SurfaceSlopeは路面の傾斜角度でラジアンで示される。該重力抗力は、起伏の多い地形でかなり大きくなることが多いが、これは同程度に正にも負にもなりうる。SurfaceSlopeを算出するには、地形の地勢図を知る必要がある。地勢図は、自身のデータソースからの高度データポイントを備える経路データ、自身のデータソースからの斜面データを備える経路データ、あるいは米国標高データセット(National Elevation Datasset)又はシャトルレーダトポグラフィミッションデータセット(Shuttle Radar Topography Mission datasets)等の高度データポイントのグリッドに対する線形補間のいずれかから求めることができる。道路データと高度データの不整合、山を通るトンネル及び渓谷に架かる橋等の不調和によって、極端な勾配が誤算出されてしまうことがある。このようなエラーは、検出して訂正する必要がある。こういった膨大な量のデータを即時に迅速に処理するためには、データを圧縮ブロックに分割し、且つキャッシングアルゴリズムを維持する必要がある。各ブロックは、適切な補間を可能にするために、近傍のブロックとオーバーラップしていなければならない。勾配の適正な算出を保証するために、垂直解像度は、水平解像度と比べて100倍高いことが理想的である。
【0033】
加速
加速力は、運転者が加速しているか減速しているかによって、正にも負にもなり得る。しかしながら、摩擦ブレーキからの加速力は、駆動系にかかる力に寄与することはない。加速は、算出されるのではなくモデル化されるのが望ましい。最初に、ターゲット速度が選択され、次に運転者モデル(すなわち、運転者の攻撃性の目安)が用いられて、該運転者がどれくらい早くターゲット速度に到達しようとするかを決定する。ターゲット速度は、速度制限、速度制限に対して運転者がどのくらいの速度での運転を望んでいるか、運転者がどのくらいの速度で運転しそうか、既知の交差点又は交通制御デバイスが経路上に存在するか、現在の交通データ、及び別のパラメータの組み合わせによって変動する。この変動は、環境保護庁(EPA)のFTP及びUS06ドライブサイクル、NEDC、又は任意の別の国際的に認められるドライブサイクルに従ってモデル化された複数のサインの重ね合わせ(superposition of sines)に基づいているのが理想的である。
【0034】
このように、これらの4つのパラメータは、車両に加わる正味の力である。車両に加わる正味の力に、有効シャフト長を乗ずると、モータタルクが求められる。有効シャフト長とは、モータ速度で除された車両速度であり、全て2Piによって除算されている。モータ速度で除された車両速度は、ギア比とも称される。
車両に加わる正味の力は、現在の条件でのタイヤの最大安全静止摩擦力と随意に比較され、この値を超過していれば、車両がコントロール下にある点まで減速される。
【0035】
車両の現在の条件
車両の現在の条件は、駆動系エネルギ消費に影響を与え、且つ車両にかかるアクセサリ及びパラサイト(寄生)負荷を表すような、別のパラメータを包含している。これらは、車両の電気システムの電流量と関連していることが多い。例えば、車両のエンタテイメントシステムの操作によって、車両を前進させるためにバッテリパック又は駆動系で使用できるはずの電流が利用されている。別のパラメータは、車両のアクセサリ(ヘッドライト等)、車両の気候制御設定、車両のソーラパネル(もしあれば)のソーラ照明等の電流引き込みを含む。これらのアクセサリ電流は、電気車両では、駆動系電流に追加され、又、ガソリン車両では、オルタネータの負荷が高まるため、エンジンが発揮する必要のあるトルク量を増加させる。
【0036】
すなわち、車両の現在の条件は、現存する全てのパラメータの累積された影響である。使用されるパラメータが多ければ、車両のエネルギ消費はより精密にわかる。それによって今度は、車両の予想レンジもより正確に決定することが可能となる。
現在の条件下で駆動系を稼動するために必要となる電流又は燃料は、後述のように補間処理を介して算出される。補間によって、現在の条件が駆動系の性能の限界を超えていることがわかれば、トルクが(加速を含む、トルクに関連する全ての別のパラメータとともに)、一連のレンジ内条件が整うまで、繰り返し低減される。この状況は主に、運転手が車両の性能以上に過度の加速を試みた時に発生する。
【0037】
補間処理
駆動系の効率を決定する際のパラメータのいくつかは、補間によってさらに正確に決定することができる。補間は反復プロセスであって、ローカル又はグローバルの最低又は最大位置を求めるために算出が繰り返される。補間ステップには、ブレーキに特定した燃料消費チャート、別の同様の効率又は消費のグラフから得られるデータポイント、既知のデータポイントを決定するためのラボラトリテスト、又は実際の運転データに基づく推定が用いられる。各データポイントは、Nスペース内のポイントと見なされる。ここでのNは、各データポイント(モータRPM、モータトルク、バッテリ電圧、バッテリ電流又は効率等)で利用可能なパラメータの数である。該パラメータの全てには物理的関係があるので、パラメータを任意の順序又は関係に整えることができる。既知のデータポイントが等間隔又はなんらかの既知の幾何図形的な間隔にある場合は、算出されたエネルギ消費は線形補間によって抽出される。既知のデータポイントが等間隔でない場合は、データポイントは、Nスペース内のN−1面体の相互接続されたメッシュに配置されなくてはならない。つまり、各データポイントに関して、3つのパラメータが利用可能な場合、データポイントは3次元スペース内の三角形の相互接続されたメッシュに配置されなくてはならないが、4つのパラメータが利用可能な場合は、4次元スペース内の4面体の相互接続されたメッシュになる。これらは、多様なアルゴリズムによって確立され、該アルゴリズムは、3Dスペースの場合に関して幅広く研究されており(より高次元にも適用可能である)、マーチングキューブ(Marching Cube)、マーチングトライアングル(Marching Triangles)、及びボールピボット(Ball Pivoting)を含む。一度メッシュが現れると、アルゴリズムが調べようとするデータポイントをテストして、どのエレメントにメッシュが含まれているかを確かめることができ、それから、エレメントの角頂点間のエネルギ消費を補間して、エネルギ消費を取得することができる。
【0038】
高次元になるにつれて増加する複雑さを軽減するために、データポイントを「層」に細分割することで、問題を軽減することができる。例えば、データポイントにつき4つのパラメータ、すなわち等間隔にないモータRPM、モータトルク、バッテリ電圧、及びバッテリ電流がある場合、電圧を層にグループ化して、各層におけるデータポイントの全てが同じ電圧を共有するようにすることで、次元の複雑性は低減される。これによって、その層のポイントクラウドを3次元スペース内の三角形メッシュに作成することができ、これは4Dスペース内の4面体メッシュよりも、数学的及び概念的にはるかに処理しやすくなる。ある例では、データポイントよりも高電圧の最接近層の電流及び、データポイントよりも低電圧の最接近層の電流間で、線形補間が用いられる。
【0039】
エネルギ消費(すなわち、バッテリから失われていく電力の量)は、同程度に有効な2つの方法で表現される。1番目の方法は、さまざまな条件(RPM、トルク等)下でのエネルギ消費を直接列挙するものである。この方法の強みは、ゼロRPM又はゼロトルク等の境界条件において、妥当な数値を提供することができることであるが、弱点は、データポイント間の非直線スケーリングファクタにより、補間が不十分なことである。2番目の方法は、さまざまな条件下での効率を列挙することができるものである。この方法では、データポイント間を充分にスケールすることができるが、境界の条件を充分に表現することができない。例えば、非常に緩やかな回生制動−わずかに負のトルク−を実行する電気車両は、回生量よりも多い電力を使用する。効率100%の駆動系が100ワット(−100W)を回生(再生成)しながらも、現実の駆動系の正味では1ワット(+1W)しか使用されない場合、−10000%という不当な効率数字が生じてしまい、近接するデータポイントに関する任意の補間の結果を狂わせてしまう。最適なシステムは、バッテリ電流及び駆動系効率を見出すために、両方の方法を組み合わせたものである。組み合わせた方法は、境界不連続の可能性がある別の状況においても、望まれている。
【0040】
最終的には、重要なのはバッテリのチャージレベルであって、且つ、予想される車両の走行レンジの算出は、いつバッテリが使い果たされるかを決定することである。バッテリのチャージレベルがゼロに到達する時、出発地から経路上のその地点までの距離が、予想される走行レンジである。この方法は、以下のように要約できる。チャージレベル×車両効率で電流が求められる。電流×電圧で電力が求められる。電力×時間で仕事量が求められる。仕事量÷バッテリ効率で、その瞬間にバッテリから消費されたエネルギの量が求められる。チャージレベルから該量を差し引くことで、チャージレベルは更新されて、算出が再び実行される。このように、シミュレーションでは、チャージレベルがゼロに至るまで、経路上のポイント毎でチャージレベルが算出され、出発点及びチャージレベルがゼロの点間の距離が測定されて、予想走行レンジが決定される。
【0041】
車両のシステムを制御する方法
さらに、予想走行レンジの算出後、1又は複数の車両システムが算出結果に応答して制御が実行される、すなわち、適宜のシステム電源の遮断、低減、又は非常電源の使用、が実行される。例えば、算出によって、ユーザが所望の目的地に到達できそうにないことが分かれば、エンタテイメントシステムが遮断される。同様に、内蔵ジェネレータが始動する(そして、目的地に到達できる電力に至るとすぐに停止する)。このようにして、車両の任意のシステムは、車両の最高速度すなわち車両の最大加速の制限も含めて制御される。該システムは、制御の尺度が、車両を目的地に到達させるために充分なものであると保証するために、この尺度を査定することができ、充分でない場合は、より厳しい尺度を採用する。該システムは、目的地に安全に到達できそうにない場合は、ユーザが立ち往生する前にレッカー車又は緊急車両に通報する、というオプションもユーザに提供できる。
【0042】
ユーザに警告する方法
本発明の方法はまた、経路上の複数の補給施設までの距離を決定するステップ及び、バッテリチャージが尽きる距離(D0)が、1番近い補給施設までの距離(Drc1)よりも長いが、2番目に近い補給施設(Drc2)までの距離よりは短い時に、ユーザに警告するステップを含む。言い換えると、該方法では、Drc2>D0>Drc1の状況を算定する。この状況は、車両が次の補給施設に到達する前にチャージが尽きて、ユーザを立ち往生させる可能性がある状況である。
【0043】
デバイス及びシステム
本発明のデバイス及びシステムは、複数の入力、バックエンド及びフロントエンドを備えている。
【0044】
入力
入力は、ハードコードデータ、車両のセンサからのデータ、外部センサからのデータ、ユーザコードデータ、又は遠隔データベースから受信したデータである。
入力は、車両タイプ(例:型式、モデル、及び/又はオプション装置)を含む。車両タイプは、固定又はユーザによって選択可能である。車両タイプは、重量又は質量、空気抗力(抗力係数、抗力領域、物理的形状、又は類似)、タイヤ転がり抗力係数、異なる状況(例えばさまざまなトルク、RPM及び電圧レベル等であるが、それに限定するものではない)における駆動系効率及び/又は駆動系エネルギ消費、ギア比及びどのような条件下で各ギア比が使用されているか、そして電気駆動の車両の場合は、異なる状況下(温度やチャージ残量等)でのバッテリパック電圧、及び異なる状況下(異なる電圧レベル等)でのバッテリパック効率、を少なくとも含む多様な情報を包含する。
【0045】
車両タイプに包含される、別の随意的情報は、車両の空気抗力に与える横風の影響、車両の空気抗力に与えるワイパ使用の影響、車両のアクセサリによる電力消費、さまざまな温度すなわち温度条件の相違における気候制御による電力消費、微量なソーラパネル電力のレーティング、ソーラパネルの形状、ターゲットタイヤ圧、ターゲットタイヤ負荷のレーティング、タイヤの摩擦係数、前輪及び後輪の数、どのタイヤが駆動しているか、重量配分、最高車両速度、パラサイト電力消費、及び最大バッテリパック電流、を含む。実施例によっては、ユーザが車両の入力をカスタマイズできるようになっている。
【0046】
入力は、パラメータを決定するために使用されるデータを備えており、パラメータは、運転者の運転プロフィールをモデル化するために使用される。これらのパラメータには、攻撃性、平均速度、最高速度、並びにさまざまな運転条件下で所与の力で加速又は減速する可能性が含まれる。これらのパラメータを算出するための入力は、アクセルトラベル(accelerator travel:アクセルの動き)、アクセル圧力(accelerator pressure)、ブレーキトラベル(brake travel:ブレーキの動き)、ブレーキ圧力(brake pressure)、車両速度、及び加速を含む。パラメータは直接設定することが可能である。入力によって、運転者は、それらのプロフィールを選択することが可能になる。
【0047】
走行をモデル化するために用いられる入力は、上記した運転者のプロフィール、経路及び最初にチャージした州を、少なくとも備えている。別の随意的な入力には、走行日、積荷の質量又は重量、ターゲット速度、速度制限に応じたターゲット速度、最大速度、タイヤ圧、最大道路勾配、道路の質、気候制御のターゲット、温度に対する乗員の許容範囲がターゲットより高いか低いか、フロントガラスのワイパ速度、ヘッドライトの使用、車内灯の使用、ステレオの使用、種々雑多な電力の使用、天候データ、交通データ、及び地形が含まれる。これらは、ユーザの入力又は車両のセンサによって提供される。
【0048】
天候データは、ユーザ又はセンサによって、あるいは測候所から自動的に取り寄せられて特定され、地形上の座標に固定すなわち結び付けられ、且つ、温度、気圧、太陽照度、風速、風向、降水量、湿度等を含むが、それに限定するものではない。天候データは、ヘッドライト又はフロントガラスのワイパ等、車両の別の入力が可能であるか不可能であるかを予測するために、随意に用いられる。
【0049】
ユーザコード情報は、ユーザによる入力を介して提供された、上述された任意のデータである。例えば、ユーザは予想される展開を比較するために、推定車両速度を入力できる。ユーザは、車両にコード化されているデフォルト、又は車両の型式及びモデルのプロフィールを手動で変更することができる。ユーザによる変更は、フロントエンドを介して入力される。代替的には、バックエンドのコンフィギュレーションファイルを介して変更が実行される。遠隔データベースからのデータは、上述された任意のデータである。例えば、現在の風向及び風速は、車両の現在地がわかれば、ウェブサーバから取得できる。
【0050】
バックエンド
提供された入力を用いて、バックエンドは車両の予想レンジ、すなわち、リチャージングが必要になるまでの残存距離を決定するためにプロセッサを使用する。さらに、バックエンドは、ソフトウェア、グラフィックプロセッサ、メモリ、格納庫、通信リンク及び/又は別のハードウエアを備えている。バックエンドはまた、デバイス又はシステムの操作のための別の機能も実行する。バックエンドはフロントエンドで使用される(例:表示される)出力を生成する。予想車両レンジに加えて、バックエンドからの出力は予測チャージレベル、走行情報の要約、グラフ、又はユーザにとって有益な別の情報を含む。例えば、車両が目的地に到達した時又はチャージが尽きた時は、バックエンドはフロントエンドに、この走行の概要を提供し、この情報を利用できるようにする。
【0051】
その際に、上記のプロセスが反復的に遂行される。残存する燃料又は充電から、そのサイクルにおいて車両によって消費されたジュール数の分が低減され、ジュール数は、電気車両の場合は電流×電圧に応じて決定され、科学燃料車両の場合は消費された燃料で決定される。シミュレーションされた車両速度は、加速によって調整される。フロントエンドでは該算出の結果を更新し、且つバックエンドではこれに関する新規のグラフを生成して利用できるようにする。車両が数メートル前進すれば該算出が繰り返えされることになる。
【0052】
フロントエンド
フロントエンドはバックエンドからの出力を使用するが、追加的な情報の地図及びデータベースも随意に使用して表示を行う。フロントエンドの動作は、ユーザに対する情報表示の任意の組み合わせ(例:チャージが尽きるまでの距離、地図上の異なる場所でのチャージ状態、経路の動画風景(animated street view)等)を含む。さらに、フロントエンドは、バックエンドからの出力を用いて、車両システム(プラグインハイブリッドにおけるジェネレータの始動又は停止等)を、直接又はバックエンドを介して制御する。
【0053】
フロントエンドはさらに、経路の地図上のデータベースから補給施設をプロットする等(補給施設の場所、種類、連絡先情報、現在利用されているかどうか、充電コネクタ、充電電圧、充電電流、充電フェーズ、コードの利用可能性及び長さ、費用、ユーザからの評価、写真、及びそのエリアでの娯楽、及び補給施設に関するコメント又は修正を残す機能を任意に含むが、それに限定するものではない)、別の情報を表示することもできる。フロントエンドはバックエンドからの結果を即時又は適時に表示し、地図上の運転シミュレーションの結果を提供する。フロントエンドによる表示では、視覚的、聴覚的、触覚的、又はコンビネーション信号をユーザに提供する。視覚信号は、液晶ディスプレィ、車両のダッシュボードに埋め込まれた画面、ヘッドアップディスプレイ、携帯電話の画面、携帯端末又はナビゲーションデバイス(例GPS装置)、又はこれらを組み合わせたもの、での表示を含む。聴覚信号は、ビープ音や着信音等の任意のノイズを含む。触覚信号は、任意の振動運動であり、特に携帯電話、携帯端末又はナビゲーション装置の振動運動である。
【0054】
加えて、フロントエンドは、ユーザからの情報を入手するために、タッチ画面、キーパッド、マウス、指示デバイス等の1又は複数のユーザ入力デバイスを備えている。例えば、ユーザは目的地及び/又は目的地までの所望の経路を選択できる。ユーザは経路をドラッグすなわち変更することができる。さらに、ユーザは、どのような情報がフロントエンドに表示されるべきかについての指示を提供できる。例えば、ユーザは経路上の10分以内にあって別のユーザからの評価が高い無料の補給施設SAEJ1772を見つけたい場合がある。あるいは、ユーザは異なる車両速度による、チャージが尽きるまでの距離の推定を参照したい場合もある。
【0055】
フロントエンド及びバックエンドはクライアント−サーバモデルで作動するのが通常である、つまりサーバが情報を処理してから、その結果をクライアントに戻すことになる。クライアント−サーバモデルはハードウエア、ソフトウェア、及びその2つの組み合わせを介して実装される。このため、本発明のデバイス及びシステムにおけるコンポーネントの配置には柔軟性が生まれる。例えば、フロントエンド及びバックエンドは、車両内に取り付けられるOEM又はアフターマーケットデバイス等、バックエンドが算出を実行し、フロントエンドがその結果をユーザに表示するような単一デバイスでもよい。この場合、1つのサーバが1つのクライアントに接続されており、且つ、サーバ及び/又はクライアントはソフトウェアモジュール及びハードウエアコンポーネントの組み合わせである。分散型は、携帯電話又はラップトップ上にフロントエンドがあり、且つバックエンドは遠隔に位置しているので、単一のバックエンドが複数のフロントエンドに接続されており、ウェブサーバに近い。
【0056】
本デバイス及びシステムの実施形態例は、車両に搭載されたシステムを含む。この実施形態では、車両の型式、モデル、及びオプションが車両すなわち搭載システム内の格納庫又はメモリにハードコード化されており、用いるべき重量、モータサイズ、駆動系の効率、及び別の入力を指令している。これは、搭載された製品の格納庫からデータを直接伝えるか、又は車両の型式、モデル及びオプションをバックエンドに伝えて、バックエンドが格納庫又はメモリから必要な情報を取得できるようにする。それからバックエンドは、車両のレンジ及び別の情報を算出して、結果がフロントエンドに伝えられ、ユーザに警告を表示する等で使用される。
【0057】
本デバイス及びシステムの別の実施形態例は、遠隔バックエンド及びユーザによって携帯されるフロントエンドを利用する、分散型システムを備えている。ユーザによる経路、車両タイプ、及び別の情報の入力は、通信リンク(例:ワイファイ、セルラーネットワーク、第3世代ネットワーク)を介してバックエンドに送信される。バックエンドは予想走行レンジを算出し、その結果がフロントエンドに戻されて表示される。車両内の1又は複数のセンサは、車両速度、バッテリ電圧、バッテリ電流、バッテリチャージレベル、周辺温度、GPS座標等に関するデータを、バックエンドに提供する。するとバックエンドは、車両の走行レンジ及び別の情報を算出し、それらはフロントエンドに伝えられて、ユーザに警告を表示する等で使用される。
【0058】
さらに、複数のコンポーネント又はステップの機能又は構造は、単一のコンポーネント又はステップにまとめられてもよく、又1つのステップ又はコンポーネントの機能又は構造が複数のステップ又はコンポーネントに分散されてもよい。本発明は、これらの組み合わせの全てを考慮している。特に明記しない限り、本明細書で説明されたさまざまな構造の次元及び形状は、本発明を限定することを意図しておらず、別の次元及び形状であってもよい。複数的構造のコンポーネント及びステップは、単一に統合された構造又はステップによって提供されてもよい。あるいは、単一に統合された構造又はステップが別個の複数のコンポーネント又はステップに分割されてもよい。さらに、本発明の1特徴は、図示された実施形態の1つのみに照らして記述されたが、こういった特徴は、任意の所与のアプリケーションに関して、別の実施形態の1又は複数の特徴と組み合わせてもよい。上記から理解されるように、本明細書における固有の構造の製作及びその操作もまた、本発明による方法の構成要素である。本発明はさらに、本明細書に記載の方法の実行によって生まれた中間製品及び最終製品も包含する。「備える」「含む」という言葉の使用には、列挙された特徴から「主として成る」「成る」実施形態も考慮されている。
【0059】
本明細書で提示された説明及び図示は、当業者に対して本発明、発明の原理、発明の実践的な応用を知らせることを意図している。当業者は、本発明を特定の使用の要求に最も適するように、多数の形態において採用及び応用できる。従って、記載された本発明の特定の実施形態は、本発明を網羅又は限定するものではない。すなわち本発明の範囲は、上記の記載を参照することによってではなく、添付の請求項及び請求項の権利が及ぶ同等のものの全範囲を参照することで規定されるべきである。特許出願及び公報を含む全ての論文及び参考文献は、参照によって本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるシステムであって、
ハードコードデータ、車両のセンサからのデータ、外部センサからのデータ、ユーザコードデータ、遠隔データベースから受信したデータ、ブロードキャストデータステムから受信したデータ、あるいは、これらが累積又は結合されたデータであって、車両速度、モータ毎分回転数、モータトルク、バッテリ電圧、バッテリ電流、及びバッテリチャージレベルの1又は複数に関する情報の内の1又は複数を提供するデータを提供する複数の入力手段と、
複数の入力手段と接続されたプロセッサ装置であって、プロセッサへの入力から、予想走行レンジを算出して出力とするプロセッサ装置と、
プロセッサ装置と接続されたディスプレィ装置であって、プロセッサ装置からの出力を表示するディスプレィ装置と
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、入力手段はさらに、車両の経路、車両の目的地、充電消費、燃料消費、周辺温度、周辺気圧、風速、風向、タイヤ圧、スロットルトラベル、ブレーキトラベル、ブレーキ圧力、GPS位置及び高度、バッテリパック温度、アクセサリ電流、積荷重量、道路の質、気候制御の設定、太陽照射、ギア比、補給施設の位置、又はこれらを組み合わせたものに関するデータを提供するよう構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2記載のシステムにおいて、車両の経路は、車両の出発地、車両の目的地、出発地及び目的地間における複数の高度変化、出発地及び目的地間における現在の周辺天候条件、及びこれらを組み合わせたものを含むことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項2記載のシステムにおいて、プロセッサ装置はさらに、車両から1番近い補給施設までの第1距離を算出し、次に近い補給施設までの第2距離を算出し、第1距離及び第2距離を予想走行レンジと比較し、予想走行レンジが第2距離より短く第1距離よりも長い場合には、プロセッサ装置から出力を生成するよう構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項2記載のシステムにおいて、プロセッサ装置は、予想車両レンジを車両の目的地までの距離と比較し、予想車両レンジが車両の目的地までの距離よりも短い場合には、プロセッサ装置から出力を生成して1又は複数の車両システムで使用できるようにすることを特徴とするシステム。
【請求項6】
コンピュータにより実行可能なソフトウェアアプリケーションであって、
目的地、経路、車両型式、運転者プロフィール、及びこれらを組み合わせたものに関する1又は複数の入力と、
入力を受信し、且つ予想車両レンジを算出するバックエンドモジュールと、
予想車両レンジをユーザに対して表示するフロントエンドモジュールと
を備えることを特徴とするソフトウェアアプリケーション。
【請求項7】
請求項6記載のソフトウェアアプリケーションにおいて、バックエンドモジュールはさらに、1又は複数のセンサから入力を受信することを特徴とするソフトウェアアプリケーション。
【請求項8】
請求項6記載のソフトウェアアプリケーションにおいて、フロントエンドモジュールは、車両のサブシステムを制御するために用いられることを特徴とするソフトウェアアプリケーション。
【請求項9】
請求項6記載のソフトウェアアプリケーションにおいて、フロントエンドモジュールはさらに、1又は複数の遠隔データベースから入力を受信することを特徴とするソフトウェアアプリケーション。
【請求項10】
請求項6記載のソフトウェアアプリケーションにおいて、フロントエンドモジュールは、複数の補給施設までの距離を算出することを特徴とするソフトウェアアプリケーション。
【請求項11】
請求項6記載のソフトウェアアプリケーションにおいて、フロントエンドモジュールは、予想車両レンジが1番近い補給施設よりも長く、且つ次に近い補給施設までの距離より短い場合に、警告を発生することを特徴とするソフトウェアアプリケーション。
【請求項12】
請求項6記載のソフトウェアアプリケーションにおいて、フロントエンドモジュールは、1又は複数の補給施設を表示することを特徴とするソフトウェアアプリケーション。
【請求項13】
請求項6記載のソフトウェアアプリケーションにおいて、フロントエンドモジュールは、補給施設に関して、ユーザによる情報の収集、コメント、情報の修正、又は登録を可能にすることを特徴とするソフトウェアアプリケーション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−22136(P2011−22136A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118447(P2010−118447)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(510143538)セラドン・アプリケーションズ・エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】