説明

車両の制御装置

【課題】蓄電装置を搭載し外部充電が可能な車両において、蓄電装置を構成するセルの電圧を検出する検出部の診断を確実に実行する。
【解決手段】外部充電が可能な車両100のECU300は、蓄電装置110のSOCを演算するためのSOC演算部310と、蓄電装置110内の複数のセルCL1〜CLnの各々についての電圧を検出する検出部DT1〜DTnの自己診断を実行する判定部330と、充電装置200を制御するための充電制御部350とを備える。判定部330は、SOCが基準範囲内であるときに自己診断を実行することができるように設定され、外部充電の実行中にSOCが基準範囲内となった場合に、充電動作を一時的に中断して自己診断を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関し、より特定的には、外部電源からの電力によって車載の蓄電装置の充電が可能な車両における、蓄電装置の診断技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に配慮した車両として、蓄電装置(たとえば二次電池やキャパシタなど)を搭載し、蓄電装置に蓄えられた電力から生じる駆動力を用いて走行する車両が注目されている。このような車両には、たとえば電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池車などが含まれる。そして、これらの車両に搭載される蓄電装置を発電効率の高い商用電源により充電する技術が提案されている。
【0003】
ハイブリッド車においても、電気自動車と同様に、車両外部の電源(以下、単に「外部電源」とも称する。)から車載の蓄電装置の充電(以下、単に「外部充電」とも称する。)が可能な車両が知られている。たとえば、家屋に設けられたコンセントと車両に設けられた充電口とを充電ケーブルで接続することにより、一般家庭の電源から蓄電装置の充電が可能ないわゆる「プラグイン・ハイブリッド車」が知られている。これにより、ハイブリッド自動車の燃料消費効率を高めることが期待できる。
【0004】
このように外部充電が可能な車両においては、外部充電中に車載機器の診断を行なう場合がある。
【0005】
特開2010−012897号公報(特許文献1)は、外部充電が可能なハイブリッド車両において、エンジンが回転していなければ診断を行なうことができない車載機器の診断について、外部充電中に電動モータによってエンジンを回転するモータリングを行ない、そのモータリング中に上記の診断を行なう技術を開示する。
【0006】
特開2010−012897号公報(特許文献1)によれば、モータリングによって車載バッテリから消費される電力を、外部電源からの電力によって補充することができるので、燃費への影響を低減しつつ上記診断を行なうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−012897号公報
【特許文献2】特開2010−032431号公報
【特許文献3】特開2008−289307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような車両に搭載される蓄電装置は、一般的に、複数のセルを積層することによって所望の出力電圧が得られるように構成されている。そして、蓄電装置の各セルおよび/または一群のセルの電圧を検出するための検出部が設けられる場合がある。
【0009】
これらの検出部に異常があると、蓄電装置の充電状態を適切に推定することができずに、過充電や過放電を引き起こす要因となり得る。そのため、このような車両においては、この検出部の異常の有無を診断する機能が備えられる場合がある。
【0010】
この検出部の異常診断(以下、本明細書では「自己診断」とも称する。)については、基本的には、蓄電装置のセルに電流が流れていない状態で実行することが必要であり、そのため、走行の終了時あるいは終了後に実行される場合がある。しかしながら、この自己診断を実行する際に、蓄電装置の充電状態などの他の実行可能条件が成立せずに診断ができない場合が起こり得る。
【0011】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、蓄電装置を搭載し外部充電が可能な車両において、蓄電装置を構成するセルの電圧を検出する検出部の診断を確実に実行することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による制御装置は、複数のセルを有する蓄電装置と、複数のセルの各々についての電圧に関連する信号を検出するための検出部とを有し、外部電源からの電力を用いた外部充電が可能な車両の制御装置である。制御装置は、外部充電の実行中に、蓄電装置の充電状態が所定の範囲内となった場合に、外部充電を一時的に中断して検出部の自己診断を実行することを特徴とする。
【0013】
好ましくは、制御装置は、車両が、走行中および外部充電中のいずれでもない状態の場合に、充電状態が所定の範囲内となっていなかったために自己診断が実行できなかった回数をカウントし、自己診断が実行できなかった回数が、予め定められたしきい値以上になったときに、外部充電を一時的に中断して自己診断を実行する。
【0014】
好ましくは、車両は、蓄電装置からの電力により駆動される負荷装置と、蓄電装置と負荷装置とを結ぶ経路に設けられ、蓄電装置と負荷装置との間の電力の供給と遮断とを切換えるための切換装置とをさらに有する。制御装置は、外部充電を一時的に中断して自己診断を実行するときは、切換装置により蓄電装置と負荷装置との間の電力を遮断する。
【0015】
好ましくは、制御装置は、蓄電装置に電流が流れておらず、かつ、充電状態が所定の範囲内である場合に、複数のセルの各々についての電圧に関連する信号に基づいて、検出部の異常の有無を判定することによって自己診断を実行する。
【0016】
好ましくは、検出部は、複数のセルの各々に対応して設けられ、複数のセルの各々に並列に接続された第1および第2のコンデンサを含む。制御装置は、第1および第2のコンデンサの一方のコンデンサが充電されたときに検出される電圧レベルと、他方のコンデンサが充電されたときに検出される電圧レベルとの差が基準値を上回った場合に、検出部に異常が有ると判定する。
【0017】
好ましくは、制御装置は、外部充電を一時的に中断して自己診断を実行した場合に、自己診断が完了したことに応答して外部充電を再開する。
【0018】
好ましくは、制御装置は検出部に異常が有ると判定した場合には、外部充電の再開を禁止する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、蓄電装置を搭載し外部充電が可能な車両において、蓄電装置を構成するセルの電圧を検出する検出部の診断を確実に実行することができ、蓄電装置の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態に従うECUが搭載された車両の全体構成図である。
【図2】電圧検出装置の詳細および電圧検出装置の自己診断を説明するためのブロック図である。
【図3】自己診断の実行可能条件および問題点を説明するための図である。
【図4】比較例における問題点を説明するための図である。
【図5】本実施の形態における自己診断制御の概要を説明するための図である。
【図6】本実施の形態において、ECUで実行される自己診断制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下において、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0022】
(車両の全体構成)
図1は、本実施の形態に従うECU300が搭載された車両100の全体構成図である。
【0023】
図1を参照して、車両100は、蓄電装置110と、電圧検出装置111と、システムメインリレー(以下、SMR(System Main Relay)とも称する。)115と、負荷装置160と、制御装置(以下、ECU(Electronic Control Unit)とも称する。)300と、警報出力部240とを備える。また、負荷装置160は、PCU(Power Control Unit)120と、モータジェネレータ130と、動力伝達ギア140と、駆動輪150とを含む。
【0024】
蓄電装置110は、充放電可能に構成された電力貯蔵要素である。蓄電装置110は、たとえば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池または鉛蓄電池などの二次電池、あるいは電気二重層キャパシタなどの蓄電素子のセルを含んで構成され、これらの複数のセルが積層されることによって所望の電圧が出力される。
【0025】
蓄電装置110は、SMR115を介して、モータジェネレータ130を駆動するためのPCU120に接続される。そして、蓄電装置110は、車両100の駆動力を発生させるための電力をPCU120に供給する。また、蓄電装置110は、モータジェネレータ130で発電された電力を蓄電する。蓄電装置110の出力は、たとえば200Vである。
【0026】
電圧検出装置111は、蓄電装置110に含まれる各セルの電圧に関する信号を検出し、検出信号VCLをECU300へ出力する。電圧検出装置111の詳細については、図2で後述する。
【0027】
SMR115に含まれるリレーの一方端は、蓄電装置110の正極端子および負極端子にそれぞれ接続される。SMR115に含まれるリレーの他方端は、PCU120に接続された電力線PL1および接地線NL1にそれぞれ接続される。そして、SMR115は、ECU300からの制御信号SE1に基づいて、蓄電装置110とPCU120との間での電力の供給と遮断とを切換える。
【0028】
PCU120は、コンバータ121と、インバータ122と、コンデンサC1,C2とを含む。
【0029】
コンバータ121は、ECU300からの制御信号PWCに基づいて、電力線PL1および接地線NL1と電力線PL2および接地線NL1との間で電圧変換を行なう。
【0030】
インバータ122は、電力線PL2および接地線NL1に接続される。インバータ122は、ECU300からの制御信号PWIに基づいて、コンバータ121から供給される直流電力を交流電力に変換し、モータジェネレータ130を駆動する。
【0031】
コンデンサC1は、電力線PL1および接地線NL1の間に設けられ、電力線PL1および接地線NL1間の電圧変動を減少させる。また、コンデンサC2は、電力線PL2および接地線NL1の間に設けられ、電力線PL2および接地線NL1間の電圧変動を減少させる。
【0032】
モータジェネレータ130は交流回転電機であり、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型同期電動機である。
【0033】
モータジェネレータ130の出力トルクは、減速機や動力分割機構によって構成される動力伝達ギア140を介して駆動輪150に伝達されて、車両100を走行させる。モータジェネレータ130は、車両100の回生制動動作時には、駆動輪150の回転力によって発電することができる。そして、その発電電力は、PCU120によって蓄電装置110の充電電力に変換される。
【0034】
なお、本実施の形態においては、モータジェネレータおよびインバータの対が1つ設けられる構成を一例として示すが、モータジェネレータおよびインバータの対を複数備える構成としてもよい。
【0035】
また、本実施の形態においては、車両100は、上述のように、電気自動車を例として説明するが、車両100の構成は、車両駆動力を発生するための電動機を搭載する車両であればその構成は限定されない。車両100は、図1のような電動機により車両駆動力を発生する電気自動車のほかに、エンジンを搭載したハイブリッド車両あるいは燃料電池自動車などを含む。
【0036】
ECU300は、いずれも図1には図示しないがCPU(Central Processing Unit)、記憶装置および入出力バッファを含み、各センサ等からの信号の入力および各機器への制御信号の出力を行なうとともに、車両100および各機器の制御を行なう。なお、これらの制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0037】
ECU300は、蓄電装置110に含まれるセンサ(図示せず)からの電圧VBおよび電流IBの検出値を受ける。ECU300は、電圧VBおよび電流IBに基づいて、蓄電装置110の充電状態SOC(State of Charge)を演算する。
【0038】
また、ECU300は、電圧検出装置111からセル電圧の検出値VCLを受ける。ECU300は、受信した電圧検出値VCLに基づいて、各セルの電圧を監視するとともに、後述するような電圧検出装置111の自己診断を行なう。
【0039】
なお、図1においては、ECU300は1つの制御装置として記載されているが、各機器または機能ごとに個別の制御装置を設ける構成としてもよい。
【0040】
警報出力部240は、ECU300によって車両の各機器に異常が発生したことが検出された場合に、ECU300からの制御信号ALMに従って、操作者に異常を通知するための装置である。警報出力部240は、たとえば、ランプ、LED、または表示パネルなどのように視覚的に警報を出力するもの、およびブザーやチャームなどのように聴覚的に警報を出力するものが含まれる。
【0041】
車両100は、外部電源30からの電力を用いて蓄電装置110を充電するための構成として、充電装置200と、充電リレーCHR210と、接続部230とをさらに備える。
【0042】
接続部230は、外部電源30からの電力を受けるために、車両100のボディに設けられる。接続部230には、充電ケーブル400の充電コネクタ420が接続される。そして、充電ケーブル400の電源プラグ410が、外部電源30のコンセント32に接続されることによって、外部電源30からの電力が、充電ケーブル400の電線部430を介して車両100に伝達される。また、充電ケーブル400の電線部430には、外部電源30から車両100への電力の供給と遮断とを切換えるための、充電回路遮断装置(以下「CCID(Charging Circuit Interrupt Device)」とも称する。)440が介挿される。
【0043】
充電装置200は、電力線ACL1,ACL2を介して接続部230に接続される。また、充電装置200は、CHR210を介して蓄電装置110と接続される。そして、充電装置200は、ECU300からの制御信号PWDに基づいて、外部電源30から供給される交流電力を、蓄電装置110が充電可能な直流電力に変換する。
【0044】
CHR210に含まれるリレーの一方端は、蓄電装置110の正極端子および負極端子にそれぞれ接続される。CHR210に含まれるリレーの他方端は、充電装置200に接続された電力線PL3および接地線NL3にそれぞれ接続される。そして、CHR210は、ECU300からの制御信号SE2に基づいて、充電装置200から蓄電装置110への電力の供給と遮断とを切換える。
【0045】
(自己診断の説明)
次に、図2を用いて、電圧検出装置111の自己診断について説明する。図2は、電圧検出装置111の詳細および電圧検出装置111の自己診断を説明するためのブロック図である。図2で説明されるブロック図に記載された各機能ブロックは、ハードウェア的あるいはソフトウェア的な処理によって実現される。
【0046】
図2を参照して、蓄電装置110は、直列に接続された複数のセルCL1〜CLnを含む。また、電圧検出装置111は、複数のセルCL1〜CLnにそれぞれ対応する、複数の検出部DT1〜DTnを含む。複数の検出部DT1〜DTnの各々は、対応するセルの正極端および負極端に接続される。
【0047】
なお、図2においては、単独のセルが直列に複数個接続される構成が示されるが、他の実施形態においては、複数のセルの一部が並列に接続されていてもよい。あるいは、たとえば、2個または3個のセルが直列および/または並列に接続されたブロックに対して、1つの検出部が接続される構成としてもよい。以下、検出部の詳細を、検出部DT1を例として説明する。
【0048】
検出部DT1は、コンデンサC11,C12と、スイッチS11〜S14とを含む。直列に接続されたコンデンサC11およびスイッチS11が、セルCL1に並列に接続される。また、直列に接続されたコンデンサC12およびスイッチS12も、セルCL1に並列に接続される。スイッチS13は、コンデンサC11の正極端とコンデンサC12の正極端とを結ぶ経路に設けられる。スイッチS14は、スイッチS11の負極端とS12の負極端とを結ぶ経路に設けられる。コンデンサC12の正極端およびスイッチS12の負極端は、後述するECU300の判定部330に接続される。
【0049】
検出部DT1のスイッチS11〜S14は、ECU300からの制御信号によって、セルCL1からの電圧を用いてコンデンサC11,C12が個別に充電されるように制御される。そして、コンデンサC11またはコンデンサC12の充電電圧VCL1が判定部330に送られる。
【0050】
判定部330では、コンデンサC11が充電された場合、およびコンデンサC12が充電された場合の充電電圧VCL1の値を比較することによって、検出部DT1の自己診断を実行する。具体的には、判定部330は、コンデンサC11が充電された場合の充電電圧VCL1と、コンデンサC12が充電された場合の充電電圧VCL1との差の大きさが、予め定められた基準値以内であるときに正常と判定し、基準値を上回るときに異常であると判定する。
【0051】
図2においては検出部DT2〜DTnの詳細は示されないが、検出部DT2〜DTnは検出部DT1と同様の構成を有し、内部に含まれるコンデンサの充電電圧VCL2〜VCLnが判定部330へ送られる。そして、判定部330は、検出部DT1の場合と同様の手法によって、検出部DT2〜DTnの各々についての異常の有無を判定する。
【0052】
ECU300は、判定部330に加えて、SOC演算部310と、診断制御部320と、リレー制御部340と、充電制御部350と、警報制御部360とを含む。
【0053】
SOC演算部310は、蓄電装置110から、蓄電装置110全体の電圧VBと、蓄電装置110に入出力される電流IBを受ける。SOC演算部310は、これらの情報に基づいて、蓄電装置110のSOCを演算して、演算結果を診断制御部320および充電制御部350へ出力する。
【0054】
充電制御部350は、外部充電が行なわれる場合に、SOC演算部310からのSOCに基づいて充電装置200を制御して、蓄電装置110の充電を行なう。
【0055】
診断制御部320は、SOC演算部310で演算されたSOCを受ける。また、図2には示されないが、診断制御部320は、車両100が走行中であることを示す信号、および充電中であることを示す信号を受ける。
【0056】
診断制御部320は、車両100が走行中でも充電中でもない状態において、SOCが予め定められた基準範囲内である条件が成立すると、電圧検出装置111内の検出部DT1〜DTnの自己診断を開始する。これによって、診断のための制御信号DIAGが、電圧検出装置111、判定部330、リレー制御部340、および充電制御部350へ出力する。
【0057】
リレー制御部340は、車両100の走行時にはSMR115を閉成し、外部充電時にはCHR210を閉成するように制御する。また、リレー制御部340は、診断制御部320からの制御信号DIAGを受けると、蓄電装置110からの充放電が行なわれないようにするために、制御信号SE1,SE2によってSMR115およびCHR210の両方を開放する。なお、SMR115およびCHR210を開放しなくても、蓄電装置110からの充放電が防止できる場合には、SMR115およびCHR210を開放しないようにしてもよい。
【0058】
充電制御部350は、診断制御部320からの制御信号DIAGを受けると、充電装置200を停止して外部充電を停止する。
【0059】
電圧検出装置111は、診断制御部320からの制御信号DIAGに従って、検出部DT1〜DTn内のスイッチを動作させて、コンデンサの充電および放電動作を行なう。
【0060】
判定部330は、診断制御部320からの制御信号DIAGに従って、検出部DT1〜DTn内のスイッチの動作に連動して、充電電圧VCL1〜VCLnをサンプリングする。そして、判定部330は、上述のように、検出部DT1〜DTnの異常の有無を判定する。
【0061】
判定部330は、検出部DT1〜DTnのいずれかに異常が検出された場合には、リレー制御部340および充電制御部350に対して、充電禁止信号STPを出力する。リレー制御部340および充電制御部350は、充電禁止信号STPを受けると、自己診断動作が完了した後も、異常が検出された検出部に所定の処置が行なわれるまで、外部充電が実行されないように、それぞれCHR210を開放状態とするとともに、充電装置200を停止状態とする。
【0062】
また、判定部330は、検出部DT1〜DTnのいずれかに異常が検出された場合には、警報制御部360に、異常信号FLRを出力する。警報制御部360は、この異常信号FLRに従って警報出力部240に警報を出力させ、操作者へ異常の発生を通知する。
【0063】
判定部330によって、検出部DT1〜DTnのいずれにも異常が検出されなかった場合には充電が再開される。
【0064】
(自己診断における問題点)
このような自己診断を行なう条件として、蓄電装置のSOCが所定の基準範囲内にあることが定められる場合がある。これは、たとえば、従来のハイブリッド車両において、蓄電装置のSOCが上記のような基準範囲内となるように制御されていたことに基づいている。
【0065】
ところが近年では、ハイブリッド車両においても、CO2の排出量をさらに低減するとともに燃費の向上を行なうために、電力を用いてより長い距離を走行することが望まれている。そうすると、ハイブリッド車両においても電気自動車と同様に、外部充電時には蓄電装置のSOCの上限近くまでできるだけ多くの電力を充電するとともに、走行時には蓄電装置のSOCの下限近くまで電力を消費するような状況が増加する。そうすると、走行終了時または走行終了後において、SOCが基準範囲外となる状態となり得るので、電圧検出装置の自己診断が実行できない場合が発生し得る。
【0066】
図3は、上記の問題をより理解しやすくするための図である。図3の上段および下段のグラフは、いずれも横軸に時間が示され、縦軸にSOCが示される。図3において、ULおよびLLは、それぞれSOCの使用上の上下限値を表わす。また、α1およびα2は、上記のSOCの使用上の上下限の範囲内で、自己診断の実行が可能な基準範囲を示すしきい値である。すなわち、SOCがLL<α1≦SOC≦α2<ULを満たす場合に自己診断が可能となる。
【0067】
図3の下段のように、走行中に蓄電装置からの電力が消費されて曲線W11のようにSOCが低下し、走行が終了した時点(時刻t11)におけるSOCが、自己診断が可能な基準範囲に入っている場合には、走行終了時または走行終了後に自己診断を行なうことができる。
【0068】
一方、図3の上段のように、曲線W1で示されるように、走行開始時にはSOCが基準範囲よりも大きい状態(SOC>α2)まで充電されており、走行終了時にはSOCが基準範囲よりも小さい状態(SOC<α1)まで電力が消費された場合には、走行開始前および走行終了後のいずれの場合においてもSOCが基準範囲内とはなっていないために自己診断を行なうことができない。そして、走行終了後に蓄電装置が充電されて、図3の初期状態のように蓄電装置の上限値近くまで充電されてしまうと、充電後においても自己診断ができなくなってしまう。
【0069】
電気自動車の場合、および、ハイブリッド車両においてもできるだけ電力を用いた走行を行なうような場合には、上述のような充放電の状況が繰り返されることが多くなるので、自己診断を実施する機会が減少する可能性がある。そうすると、万一、電圧検出装置に異常が発生していた場合に、その異常を検出することが遅れてしまうおそれがあり、それによって蓄電装置の故障や劣化を引き起こす可能性がある。
【0070】
なお、図4のように、ハイブリッド車両において、走行終了時にSOCが基準範囲より小さくなってしまう場合(時刻t21)に、エンジンを用いた走行に切換えたり、エンジンを駆動して走行終了時にSOCが基準範囲内となるように蓄電装置を充電したりする手法も考えられるが、その場合には、逆にエンジンの駆動によって燃費を悪化させてしまうことになり得る。
【0071】
また、上述の基準範囲を拡大することによって、自己診断の実行制限を緩和する手法も考えられるが、コスト低減の観点から従来の制御部品が共有される場合がある。
【0072】
そこで、本実施の形態においては、走行終了後に外部充電を行なう際に、SOCが上記の基準範囲内となった場合に一時的に充電動作を停止して自己診断を実行し、自己診断完了後に再度充電動作を開始するような自己診断制御を行なう。
【0073】
このような構成にすることによって、走行終了時点でSOCが基準範囲内となっていなくとも、次回の走行開始までに自己診断を行なうことが可能となるので、電圧検出装置の異常を早期に発見して蓄電装置の故障や劣化を事前に防止することができる。
【0074】
(本実施の形態における自己診断制御の説明)
図5は、本実施の形態における自己診断制御の概要を説明するための図である。図5においては、横軸に時間が示され、縦軸にはSOC、走行中・充電中を示すフラグ、および自己診断が実行されなかった自己診断不可回数のカウント値の状態が示される。
【0075】
図5を参照して、時刻t30の走行開始時においては、SOCが上限値ULに近い満充電状態であり、時刻t30の時点では、その前において自己診断が実行されており、自己診断不可回数はゼロに設定されているものとする。
【0076】
時刻t30から時刻t31までの間、車両の走行が行なわれ、それに伴ってSOCが減少する。そして、時刻t31において走行が終了した時点においては、SOCは基準範囲よりも小さい状態まで消費される。
【0077】
時刻t31から時刻t32の間は、走行および充電のいずれも実行されていないが、SOCが基準範囲内ではないので自己診断は実行されない。そして、時刻t32において外部充電が開始され、このとき、走行および充電のいずれも実行されていない状態で自己診断が行なわれなかったことを示す自己診断不可回数のカウント値が「1」に設定される。
【0078】
時刻t33において、蓄電装置が満充電状態となったことに応じて充電動作が終了するが、この状態においてもSOCが基準範囲内とはなっていないので、時刻t33から時刻t34までの間で自己診断は実行されない。そして、時刻t34にて次回の走行が開始されると、自己診断不可回数のカウント値がインクリメントされて「2」に設定される。
【0079】
時刻t34から時刻t35の間、再び走行が行なわれ、走行終了時の時刻t35においては、時刻t31と同様に、SOCが基準範囲内よりも小さい状態となる。そのため、時刻t35から時刻t36までの間についても自己診断が実行されず、時刻t36において外部充電が開始されたときに、自己診断不可回数が「3」に設定される。
【0080】
このとき、自己診断不可回数が、予め定められたしきい値Nth(この例においては3)に到達する。そうすると、時刻t36から開始した外部充電の途中で、SOCが、自己診断が可能な基準範囲内となった状態において、他の所定の条件が成立すると、一時的に充電動作が中断される(時刻t37)。そして、充電動作が停止されている時刻t37から時刻t38の間に自己診断が実行される。
【0081】
そして、時刻t38において、充電動作が再開されるとともに、自己診断不可回数のカウント値がゼロにリセットされる。
【0082】
なお、図5においては、自己診断不可回数のしきい値Nthが「3」に設定された場合を例として説明したが、このしきい値Nthは任意の値に設定可能である。たとえば、しきい値Nthを「1」に設定することによって、外部充電が行なわれる度に、毎回自己診断が実行されるようにすることも可能である。
【0083】
図6は、本実施の形態において、ECU300で実行される自己診断制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。図6に示すフローチャート中の各ステップについては、ECU300に予め格納されたプログラムを所定周期で実行することによって実現される。あるいは、一部のステップについては、専用のハードウェア(電子回路)を構築して処理を実現することも可能である。
【0084】
図2および図6を参照して、ECU300は、ステップ(以下、ステップをSと略す。)100において、現在車両が走行中であるか否かを判定する。
【0085】
走行中の場合(S100にてYES)は、自己診断を行なうことができないので、処理は終了する。
【0086】
走行中でない場合(S100にてNO)は、ECU300は、次にS120にて、現在車両が充電中であるか否かを判定する。
【0087】
充電中でない場合(S120にてNO)は、ECU300は、処理をS300に進めて、SOCが基準範囲内(α1≦SOC≦α2)であるか否か、すなわち自己診断の実行が可能か否かを判定する。
【0088】
SOCが基準範囲内の場合(S300にてYES)は、処理がS310に進められ、ECU300は、図2において説明したような手法によって自己診断処理を実行する。
【0089】
その後、ECU300は、S320にて、自己診断不可回数のカウントNをリセットし、処理を終了する。
【0090】
SOCが基準範囲外の場合(S300にてNO)は、処理がS330に進められ、ECU300は、次回の走行または充電が開始されたことに応答して、自己診断不可回数のカウントNをカウントアップする。その後、ECU300は処理を終了する。
【0091】
一方、車両が充電中の場合(S120においてYES)は、処理がS130に進められ、ECU300は、自己診断不可回数Nがしきい値Nth以上であるか否かを判定する。
【0092】
自己診断不可回数Nがしきい値Nth以上の場合(S130にてYES)は、処理がS140に進められ、次にECU300は、SOCが基準範囲の下限α1より小さいか否かを判定する。
【0093】
SOCが基準範囲の下限α1より小さい場合(S140にてYES)は、処理がS140に戻されて、ECU300は、SOCが基準範囲の下限α1以上となるのを待つ。
【0094】
SOCが基準範囲の下限α1以上の場合(S140にてNO)は、ECU300は、S150にて、SOCが基準範囲の上限α2より大きいか否かを判定する。
【0095】
SOCが基準範囲の上限α2以下の場合(S150にてNO)、すなわち、SOCが基準範囲内である場合には、ECU300は、S160にて、充電動作を一時的に中断する。具体的には、充電装置200が停止されるとともに、CHR210およびSMR115が開放される。そして、ECU300は、S170にて、電圧検出装置111の自己診断を実行し、自己診断が完了すると、自己診断不可回数のカウント値をリセットする(S180)。
【0096】
次に、ECU300は、S190において、自己診断の結果について、検出部DT1〜DTnのいずれにも異常が発見されず正常な状態であるか否かを判定する。
【0097】
自己診断結果が正常でない場合(S190にてNO)は、処理がS230に進められ、ECU300はアラームを出力して操作者に対して異常の発生を通知する。異常が発生している状態で充電を行なうと、蓄電装置110の故障や破損の原因になり得るので、ECU300は、S220にて充電動作を完全に停止して処理を終了する。
【0098】
自己診断結果が正常な場合(S190にてYES)は、処理がS200に進められ、ECU300は、充電動作を再開する。そして、ECU300は、S210にて、SOCが満充電状態になったか否かを判定する。
【0099】
SOCが満充電状態になっていない場合(S210にてNO)は、処理がS210に進められ、ECU300は、SOCが満充電になるまで待つ。
【0100】
SOCが満充電状態になった場合(S210にてYES)は、処理がS220に進められ、ECU300は充電動作を停止して処理を終了する。
【0101】
自己診断不可回数Nがしきい値Nthより小さい場合(S130にてNO)、または、自己診断不可回数のカウント値Nがしきい値Nth以上であるがSOCが基準範囲の上限α2より大きい場合(S150にてYES)は、いずれも外部充電を一時的に中断して自己診断を行なわないので、ECU300は、処理をS210に進める。そして、ECU300は、SOCが満充電になる(S210にてYES)と、充電動作を停止して(S220)、処理を終了する。
【0102】
なお、本実施の形態における「SMR115」は、本発明の「切換装置」の一例である。
【0103】
以上のような処理に従って制御を行なうことによって、電圧検出装置内の検出部の自己診断を実行可能なSOCの範囲が、SOCの使用範囲の一部分に限定されているような場合であっても、外部充電の途中で自己診断を実行することができる。その結果、検出部の異常を速やかに検出することができるので、蓄電装置の故障や劣化を抑制することが可能となる。
【0104】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0105】
30 外部電源、32 コンセント、100 車両、110 蓄電装置、111 電圧検出装置、115 SMR、120 PCU、121 コンバータ、122 インバータ、130 モータジェネレータ、140 動力伝達ギア、150 駆動輪、160 負荷装置、200 充電装置、210 CHR、230 接続部、240 警報出力部、300 ECU、310 SOC演算部、320 診断制御部、330 判定部、340 リレー制御部、350 充電制御部、360 警報制御部、400 充電ケーブル、410 電源プラグ、420 充電コネクタ、430 電線部、440 CCID、ACL1,ACL2,PL1〜PL3 電力線、C1,C2,C11,C12 コンデンサ、CL1〜CLn セル、DT1〜DTn 検出部、NL1,NL3 接地線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルを有する蓄電装置と、前記複数のセルの各々についての電圧に関連する信号を検出するための検出部とを有し、外部電源からの電力を用いた外部充電が可能な車両の制御装置であって、
前記制御装置は、
外部充電の実行中に、前記蓄電装置の充電状態が所定の範囲内となった場合に、外部充電を一時的に中断して前記検出部の自己診断を実行することを特徴とする、制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記車両が、走行中および外部充電中のいずれでもない状態の場合に、前記充電状態が前記所定の範囲内となっていなかったために前記自己診断が実行できなかった回数をカウントし、前記自己診断が実行できなかった回数が、予め定められたしきい値以上になったときに、外部充電を一時的に中断して前記自己診断を実行する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記車両は、前記蓄電装置からの電力により駆動される負荷装置と、前記蓄電装置と前記負荷装置とを結ぶ経路に設けられ、前記蓄電装置と前記負荷装置との間の電力の供給と遮断とを切換えるための切換装置とをさらに有し、
前記制御装置は、外部充電を一時的に中断して前記自己診断を実行するときは、前記切換装置により前記蓄電装置と前記負荷装置との間の電力を遮断する、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記蓄電装置に電流が流れておらず、かつ、前記充電状態が前記所定の範囲内である場合に、前記複数のセルの各々についての前記電圧に関連する信号に基づいて、前記検出部の異常の有無を判定することによって前記自己診断を実行する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記複数のセルの各々に対応して設けられ、前記複数のセルの各々に並列に接続された第1および第2のコンデンサを含み、
前記制御装置は、前記第1および第2のコンデンサの一方のコンデンサが充電されたときに検出される電圧レベルと、他方のコンデンサが充電されたときに検出される電圧レベルとの差が基準値を上回った場合に、前記検出部に異常が有ると判定する、請求項2に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御装置は、外部充電を一時的に中断して前記自己診断を実行した場合に、前記自己診断が完了したことに応答して外部充電を再開する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記検出部に異常が有ると判定した場合には、外部充電の再開を禁止する、請求項6に記載の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−147522(P2012−147522A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2098(P2011−2098)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】