説明

車両の周辺監視装置

【課題】レーダデータと赤外線カメラデータの同期ずれを補正する。
【解決手段】車両の周辺の物体を検出するレーダと、車両の周辺の画像を撮像するカメラと、を備える車両周辺監視装置において、レーダが検出した物体の位置に対応する、カメラが撮像した対応画像上の所定領域を特定して当該所定領域内の前記物体を特定する手段とを備え、特定された対応画像上の所定領域の移動量の時間変化と、カメラが撮像した画像上での所定物体の移動量の時間変化との位相ずれ量を算出する手段と、位相ずれ量がゼロになるように、レーダまたはカメラの出力信号の位相補正をおこなう位相補正手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の周辺監視装置に関し、より具体的には、車両の周辺監視装置におけるレーザとカメラの同期ずれ(位相ずれ)を検出し補正することに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、歩行者検出装置を開示する。この歩行者検出装置は、スキャン式のレーザレーダと赤外線カメラを併用し、レーザレーダから得られる歩行者候補の検出情報を基に赤外線画像中の歩行者を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−302470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、レーザレーダと赤外線カメラの出力信号に同期ずれ(位相ずれ)があると、両者の検出範囲(位置)がずれてしまい、レーザレーダの検出情報に対応した赤外線画像中の歩行者を検出することができない場合が生ずる。この同期ずれは、スキャンを伴うレーザレーダによる物体の検出時間(例えば約120ms)が赤外線カメラによる当該物体を含む画像の取得時間(例えば約33ms)よりも長くなってしまうことが原因で生ずる。
【0005】
特許文献1に記載の装置では、このレーザレーダと赤外線カメラの同期ずれに対する補正については何ら考慮していない。
【0006】
したがって、本発明は、得られた画像情報からレーダとカメラの出力信号の同期ずれ(位相ずれ)を検知し補正することによって、レーダによって特定されたカメラ画像上での所定物体の抽出精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両の周辺の物体を検出するレーダと、車両の周辺の画像を撮像するカメラと、前記レーダが検出した物体の位置に対応する、前記カメラが撮像した対応画像上の所定領域を特定して当該所定領域内の前記物体を特定する手段とを備える、車両の周辺監視装置を提供する。その周辺監視装置は、特定された対応画像上の所定領域の移動量の時間変化と、カメラが撮像した画像上での所定物体の移動量の時間変化との位相ずれ量を算出する手段と、位相ずれ量がゼロになるように、レーダまたはカメラの出力信号の位相補正をおこなう位相補正手段と、を有する。
【0008】
本発明によれば、カメラが撮像した画像上での移動量の時間変化をモニターすることで、レーダとカメラの出力信号の同期ずれ(位相ずれ)に起因する、レーダによって特定されるカメラ画像上の領域の位置とカメラによって撮像される所定物体の位置の位置ずれを補正することが可能となり、その結果レーダによって特定されたカメラ画像上での所定物体の特定(抽出)精度を向上させることが可能となる。
【0009】
本発明の一形態によると、位相補正手段は、車両と所定物体との相対位置の時間変化量が所定量以上の場合に位相補正をおこなう。
【0010】
本発明の一形態によれば、車両と所定物体との相対位置の時間変化量が所定量以上の場合における画像上の移動量の時間変化をモニターすることにより、レーダとカメラの出力信号の同期ずれ(位相ずれ)補正をより安定した適切なタイミングで確実におこなうことが可能となる。
【0011】
本発明の一形態によると、位相補正手段は、車両の走行中において、レーダが複数の物体を検出した場合に、当該車両の進行にともなって発生する複数の物体の位置の時間変化を結合して得られる変化量が所定量以上の場合に位相補正をおこなう。
【0012】
本発明の一形態によれば、車両の進行にともなってレーダによって検出される複数の静止物体の動き(移動量)を全体的に捉えた上で同期ずれ補正をおこなう区間(時間)を選択することで、レーダとカメラの出力信号の同期ずれ(位相ずれ)補正をより安定した適切なタイミングで確実におこなうことが可能となる。
【0013】
本発明の一形態によると、位相補正手段は、相対位置の時間変化が所定時間以上の区間を結合して相対位置の時間変化量を得る。
【0014】
本発明の一形態によれば、複数の相対位置の時間変化量を結合することでレーダとカメラの出力信号の同期ずれを検出できる必要十分なデータを得ることができ、その検出精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の車両の周辺監視装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の画像処理ユニットにおける処理フローを示す図である。
【図3】本発明の変化量の時系列データの取得フローを示す図である。
【図4】本発明の一実施例に従う画像上での所定領域と歩行者像を示す図である。
【図5】本発明の位相ずれ量の算出フローを示す図である。
【図6】本発明の位相補正のフローを示す図である。
【図7】本発明の変化量の時系列データの取得を説明するための図である。
【図8】本発明の変化量の時系列データの取得を説明するための図である。
【図9】本発明の位相ずれ量の算出方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。図1は、この発明の一実施形態に従う、車両の周辺監視装置の構成を示すブロック図である。周辺監視装置は、車両に搭載され、レーザレーダ10と、赤外線カメラ12と、赤外線カメラ12によって撮像された画像データに基づいて車両周辺の物体を検出するための画像処理ユニット14と、その検出結果に基づいて音または音声で警報を発生するスピーカ16と、赤外線カメラ12の撮像を介して得られた画像を表示すると共に、運転者に車両周辺の物体を認識させるための表示を行う表示装置18とを備える。
【0017】
なお、レーザレーダ10は、例えばスキャン式レーザレーダが該当し、各方向にスキャンするビームの物体からの反射光を受光することにより、検出点として各方向における物体(候補)の位置(領域)とそれまでの距離を検出する。なお、レーザレーダ10は、他の種類のレーダ(例えばミリ波レーダ等)であってもよい。また、赤外線カメラ12も、赤外線以外の他の波長帯の光(例えば可視光)を利用するカメラであってもよい。したがって、以下の説明では、赤外線カメラ12が撮影したグレースケール画像を対象としているが、これに限定されるものではない。さらに、ナビゲーション装置を備える車両においては、スピーカ16および表示装置18として、ナビゲーション装置が備える該当機能を利用してもよい。
【0018】
図1の画像処理ユニット14は、ブロック141〜145で示される手段(機能)を含む(実行する)。すなわち、画像処理ユニット14は、レーザレーダ10からの信号を受けて車両の周辺の物体の位置を特定する物体位置特定手段141と、赤外線カメラ12が撮影した車両の周辺の画像をグレースケール画像として取得する画像取得手段142と、物体位置特定手段141が特定した物体の位置に対応する、取得された対応するグレースケール画像上の所定領域を特定して当該所定領域内の物体を特定する手段143を含む。なお、物体位置特定手段141は、レーザレーダ10の一部の機能として構成、すなわちレーザレーダ10に一体的に組み込んでもよい。
【0019】
画像処理ユニット14は、さらに、レーザレーダ10により特定された対応画像上の所定領域の移動量の時間変化と、赤外線カメラ12が撮像した画像上での所定物体の移動量の時間変化との位相ずれ量を算出する手段144と、位相ずれ量がゼロになるように、レーダまたはカメラの出力信号の位相補正をおこなう位相補正手段145と、を有する。
【0020】
画像処理ユニット14は、さらに、自車両の速度(車速)を検出する車速センサ、加速度センサ、ヨーレート(旋回方向への回転角の変化速度)を検出するヨーレートセンサ等からの検出信号を受けて必要な処理をおこなう機能を有する。
【0021】
各ブロックの機能は、画像処理ユニット14が有するコンピュータ(CPU)によって実現される。なお、画像処理ユニット14の構成は、ナビゲーション装置の中に組み込んでもよい。
【0022】
画像処理ユニット14は、ハードウエア構成として、例えば、入力アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路、デジタル化した画像信号を記憶する画像メモリ、各種演算処理を行う中央演算処理装置(CPU)、CPUが演算に際してデータを記憶するのに使用するRAM、CPUが実行するプログラムおよび用いるデータ(テーブル、マップを含む)を記憶するROM、スピーカ16に対する駆動信号および表示装置18に対する表示信号などを出力する出力回路を備えている。レーザレーダ10と赤外線カメラ12の出力信号は、デジタル信号に変換されてCPUに入力されるよう構成される。
【0023】
次に、本発明の一実施形態におけるレーダまたはカメラの出力信号の位相補正の方法について説明する。
【0024】
図2は、画像処理ユニット14によって実行される処理フローを示す図である。図2の処理フローは、画像処理ユニット14のCPUがメモリに格納している処理プログラムを呼び出して、所定の時間間隔で実行される。図2のステップS1において、同期(位相)ずれ補正をおこなうためのデータ区間を特定するために時系列データを取得する。
【0025】
図3は、図2のステップS1の変化量の時系列データを取得するフロー(ルーチン)を示す図である。図3のステップS11において、レーザレーダ10からの信号を受けて車両の周辺の所定の物体の位置を特定する。その特定には任意の方法を用いることができるが、例えば以下のようにおこなう。
【0026】
レーザレーダ10としてスキャン式レーザレーダを使用して、その検出点群の幅から物体、例えば歩行者候補の位置を特定する。具体的には、スキャン式レーザレーダでは、各方向にスキャンするビームの物体からの反射光を受光することにより、検出点として各方向における物体までの距離を測定する。レーザレーダの位置を原点としてY軸をレーダの正面方向とする2次元座標系にこれらの検出点の位置をプロットして検出点の集合を得る。これらの検出点の集合から、各検出点の相互の間隔が所定値以下のものを検出点群としてグループ化し、グループ化した検出点群のうち、広がり幅が所定値以下のものを所定の物体候補(例えば歩行者候補)とみなしてその位置を特定する。
【0027】
ステップS12において、赤外線カメラ12の出力信号(すなわち、撮像画像のデータ)を入力として受け取り、これをA/D変換して、画像メモリに格納する。格納される画像データは、輝度情報を含んだグレースケール(白黒の濃淡)画像である。対象の温度が高い部分ほど高輝度となる赤外線カメラでは、高輝度部分の明暗値が高い画像データとなり、その温度が低く(低輝度に)なるにつれて明暗値が低い画像データとなる。
【0028】
ステップS13において、取得されたグレースケール画像に所定の物体を検知する範囲となる所定領域を設定する。この所定領域は、ステップS12においてレーザレーダ10によって特定された所定の物体候補の位置(領域)を含む領域である。この所定領域の設定は、任意の方法を用いることができるが、例えば物体の位置として歩行者の位置を特定する場合を例にとると、歩行者候補の位置を含む所定サイズの領域(検出点群)を赤外線カメラ12のカメラ座標系に変換し、グレースケール画像中にマッピング(重畳)して、対応するグレースケール画像上の所定領域として設定する。
【0029】
ステップS14において、画像上での所定の物体を特定する。この特定は、ステップS13において設定された画像上の所定領域を基準としてその領域内あるいはその近傍の領域内においておこなう。この特定は、任意の方法によりおこなうことができるが、例えば、グレースケール画像を2値化処理して得られる白黒画像から対象物を照合する。具体的には、最初に予めメモリに保管している除外対象物の特徴を有するか否かを調べる。除外対象物とは、例えば発熱体ではあるが明らかに形状等が異なる物体(4足動物、車両等)を意味する。除外対象物に該当しない場合、所定の物体の特徴に該当するか否かを調べる。例えば、所定の物体が歩行者である場合、歩行者の頭部の特徴として丸みを帯びた白部が存在し、その下に胴体、脚部の部分に相当する細長い白部が繋がっていること等が含まれる。また、周知のパターンマッチングを利用し、予め保管してある歩行者を表す所定のパターンとの類似度を算出し、その類似度を歩行者であるか否かの判断材料としてもよい。さらに、歩行者の歩行速度はほぼ一定であることから、レーザレーダ10から得られる物体の移動速度の情報を判断材料の1つとして用いてもよい。
【0030】
ステップS15において、所定の物体が特定できたか否かを判定する。この判定がNoの場合は処理を終了して戻る。ステップS15での判定がYesの場合、ステップS16に進む。ステップS16において、ステップS13において設定された所定領域の重心を算出する。ステップS17において、ステップS14において特定された歩行者像の重心を算出する。
【0031】
図4を参照しながらステップS16およびS17の重心の算出について説明する。図4は、2値化処理後の白黒画像上の所定領域と所定物体(歩行者)の例を示す図である。なお、図4では線を認識させるために、線の部分を除いて全体が白くなっているが、実際には所定物体である歩行者像22、24の回りの背景部分は黒く表示される。
【0032】
図4において、赤外線カメラ12により取得された2値化処理後の白黒画像20内に所定物体として歩行者像22、24が映っている。(a)の像22は歩行者が静止している場合であり、(b)の像24は歩行者が図の右方向に移動している場合に相当する。符号21、23で指示される枠はレーザレーダ10により歩行者の位置(領域)として特定された所定領域である。(a)の歩行者像22は所定領域21内に収まっており両者の位置ずれは小さいのに対して、(b)における両者の位置ずれは大きくなっている。(b)での位置ずれは、主にレーザレーダ10の出力信号(処理)の遅れに起因しており、レーダとカメラの同期ずれが比較的大きい場合に相当する。一方(a)の場合は両者の同期ずれがほとんどないか小さい場合に相当する。同期ずれ補正が特に必要となるのは(b)のような場合である。
【0033】
図4の(a)において、所定領域21の重心はQ1の位置上にあるとして、歩行者像22の重心はP1の位置上にあるとしてそれぞれ算出される。両者の重心は、位置ずれ量d1分だけずれているがその位置ずれ量は小さい。同様に(b)において、所定領域23の重心はQ2の位置上にあるとして、歩行者像24の重心はP2の位置上にあるとしてそれぞれ算出される。両者の重心は、位置ずれ量d2分だけずれておりその位置ずれ量は大きい。なお、各重心は所定のタイミング毎に算出され、その位置情報および時間変化量がデータとしてメモリに保管される。また、ステップS16およびS17において、重心の代わりに他の任意の基準により定まる位置、例えば所定領域および歩行者像の水平方向の最大幅の中点等を算出してもよい。
【0034】
図3のステップS18において、所定領域の重心と物体の重心それぞれの時間変化量が所定量よりも大きいか否かを判定する。図4の例で言えば、同期ずれ補正が特に必要となる(b)において、所定領域23の重心と歩行者像24の重心それぞれの時間変化量が所定量よりも大きいか否かを判定する。この判定を行うのは、時間変化量の比較的大きな箇所のデータのみを位相ずれ検出に利用するためである。この判定がNoの場合は処理を終了して戻る。この判定がYesの場合は、ステップS19において、所定領域の重心のデータ(時間変化量を含む)を時系列データとしてメモリに保管する。同様に続くステップS20において、物体の重心データ(時間変化量を含む)を時系列データとしてメモリに保管する。
【0035】
図2に戻って、ステップS2において、ステップS1において得られた所定領域および重心の時系列データの量が所定量以上であるか否かを判定する。この判定を行うのは、時間変化量のデータが十分に蓄積し位相ずれ検出が効果的に得られる状態にするためである。この判定がNoの場合はステップS1に戻り、所定量以上の時系列データが得られるまでデータ取得が繰り返される。
【0036】
ここで、この所定量以上の時系列データ取得に関してさらに説明する。位相ズレの補正には、レーダとカメラの位相ずれが比較的大きく発生する期間、すなわちレーダまたはカメラが検出する物体の時間的な位置変化量が比較的大きくレーダとカメラの位相ずれ量が検出しやすい期間においてその位相ずれ量を検出することが検出精度の観点等から好ましい。しかし、例えば車両が一般道を走行している場合、その補正に必要な変化を連続的に安定して観測することは困難である。そこで、例えば以下のような方法により、一定時間にわたってデータが時間的に変化している時系列データを取得する。
【0037】
図7はレーダまたはカメラが検出する物体の時間的な位置変化量が大きい区間A〜Dの部分のみを寄せ集めて、連続する区間A´〜D´を作ることを説明するための図である。図7において、上側に示される時間的な位置変化量が大きい区間A〜Dの各部分を寄せ集めて、図の下側の時間T1における連続する区間A´〜D´を作る。図7における物体の時間的な位置変化量が大きい区間は、例えば車両の旋回中のヨーレート、あるいは加/減速時の車速等、車両状態の変化が大きい場合の車両の走行状態を示す各種検出信号から得ることが望ましい。このように、物体の時間的な位置変化量が大きい区間のみを結合し、その結合した区間でのレーザとカメラの位相ずれ量を検出して補正をおこなうことにより、その補正の精度、信頼度を向上させることが可能となる。
【0038】
図8は、所定量以上の時系列データを取得する他の例を説明するための図である。自車が移動(走行)する車載環境では、静止ターゲットは頻繁に入れ替わるため、一般道で補正に必要な変化を連続的に安定して観測することは困難である。そこで、図8の例では、異なる静止ターゲット(歩行者等)の移動速度をつなげることで時間的に連続したデータを生成する。
【0039】
図8の(a)では車両30の進行方向において3つの静止ターゲット1〜3が存在する。車両30の進行にともない3つの静止ターゲット1〜3は徐々に車両30に近づいてくる。(b)はその場合の車両30の速度変化32と静止ターゲット1〜3の速度変化33を示している。静止ターゲット1〜3の速度変化33は、図示したように、各静止ターゲット1〜3の速度変化A〜Cをつなげることで得ており、車両30の速度変化32に対して対称(負)な関係(グラフ)となる。これにより、車両と静止ターゲットの相対的な速度が変化する区間を得ることができ、図7の場合と同様に、その区間におけるレーザとカメラの位相ずれ量を検出して補正をおこなうことにより、その補正の精度、信頼度を向上させることが可能となる。
【0040】
図2のステップS2の判定がYesになった後、ステップS3において、レーダとカメラの出力信号の位相ずれ量を算出するルーチンを実行する。図5は、その位相ずれ量の算出フローを示す図である。ステップS31において、所定領域の重心および物体の重心の時系列データから位相ずれ量ΔTを算出する。
【0041】
図9は、位相ずれ量ΔTの算出方法を説明するための図である。(a)は図4の(b)の部分を抜き出した2値化後の白黒画像20であり、図4と同じ符号番号を付けてある。図4の説明において既に述べたように、レーザレーダ10により歩行者の位置(領域)として特定された所定領域23は、赤外線カメラ12により取得された2値化処理後の歩行者像24よりもずれて表示される。
【0042】
図9の(b)は(a)の場合に対応する白黒画像20上の歩行者像24の移動量の時間変化Aと所定領域23の移動量の時間変化Bを示す図である。(b)のデータは、例えば上述した図7または図8の例によって得られるような比較的変化の大きい連続した区間における各移動量データを切り出して得られるデータの一部である。(b)のグラフから、所定領域23の移動量変化Bは、歩行者像24の移動量変化AよりもΔT1時間だけ位相(信号の立ち上がり)が遅れていることがわかる。したがって、この場合の位相ずれ量はΔT1となる。この位相ずれ量ΔT1は、(a)の画像上での位置ずれ量d2に対応している。
【0043】
このように、所定区間(時間)における画像上の所定領域および所定物体像の移動量の時間的な変化をモニターすることで両者の位相ずれ量を得ることができる。この位相ずれ量はレーザレーダ10と赤外線カメラ12の出力信号の同期ずれ量に対応している。なお、2つの移動量変化の立ち上がり時刻のずれを見る代わりに、両者の相互相関係数を求めてあるいは位相限定相関法を利用して、得られる関数の周期から位相ずれ量を求めてもよい。
【0044】
図2のステップS4において、位相補正をおこなうルーチンを実行する。図6は、その位相補正のフローを示す図である。ステップS41において、ステップS41において得られた位相ずれ量ΔTが所定のしきい値ΔTthよりも大きいか否かを判定する。しきい値ΔTthは、位相補正の必要がある位相ずれ量がある場合のみを選択できるように設定される。例えば、上述した図4及び図9の例では、図4(b)における位相ずれ量ΔT1はしきい値ΔTthよりも大きい場合に該当し、図4(a)における位相ずれ量はしきい値ΔTthよりも小さい場合に該当する。この判定がNoの場合、処理を終了して戻る。判定がYesの場合、次のステップS42に進む。
【0045】
ステップS42において、カメラ画像上の物体位置またはレーダによる特定領域(所定領域)をΔT分だけずらす。具体的には、レーザレーダ10の出力信号の処理と赤外線カメラ12の出力信号の画像処理において、図9(b)の位相ずれ量ΔT1が無くなる(ゼロになる)ように補正(調整)する。例えば、赤外線カメラ12の出力信号の立ち上がり時刻を位相ずれ量ΔT1に相当する分だけ遅らせる、あるいは所定のクロック(タイミング)信号に同期して、レーザレーダ10および外線カメラ12の出力信号が立ち上がるようにする等の処理をおこなう。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において改変して用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
10 レーザレーダ、
12 赤外線カメラ、
14 画像処理ユニット
16 スピーカ、
18 表示装置、
20 カメラ画像
21、23 レーダで検出された所定領域
22、24 歩行者像
30 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺の物体を検出するレーダと、車両の周辺の画像を撮像するカメラと、前記レーダが検出した物体の位置に対応する、前記カメラが撮像した対応画像上の所定領域を特定して当該所定領域内の前記物体を特定する手段とを備える、車両の周辺監視装置であって、
特定された前記対応画像上の所定領域の移動量の時間変化と、前記カメラが撮像した画像上での前記所定物体の移動量の時間変化との位相ずれ量を算出する手段と、
前記位相ずれ量がゼロになるように、前記レーダまたは前記カメラの出力信号の位相補正をおこなう位相補正手段と、を有する車両の周辺監視装置。
【請求項2】
前記位相補正手段は、前記車両と前記所定物体との相対位置の時間変化量が所定量以上の場合に前記位相補正をおこなう、請求項1に記載の周辺監視装置。
【請求項3】
前記位相補正手段は、前記車両の走行中において、前記レーダが複数の物体を検出した場合に、当該車両の進行にともなって発生する前記複数の物体の位置の時間変化を結合して得られる変化量が所定量以上の場合に前記位相補正をおこなう、請求項1に記載の周辺監視装置。
【請求項4】
前記位相補正手段は、前記相対位置の時間変化が所定時間以上の区間を結合して前記時間変化量を得る、請求項2に記載の周辺監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−227029(P2011−227029A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99536(P2010−99536)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】